宇宙作家クラブ
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●ダイナ★コン レポート
文:笹本祐一(1999年 10月9日)


 ダイナコンは宗教公園五色園という,こう字にするといかにもあやしいところで行われる。宗教法人の宿泊施設で,安手の旅館程度の宿泊設備のまわりには古今の歴史的風景を張りぼての人形で再現したあやしげな風景が所々にある。

 到着は四時,指定された部屋にいくとすでに江藤巌氏がいて,ピクチャリング・オブ・ボムという写真集を見せてくれる。これがなんと,エンリコ・フェルミの娘の撮影によるメイキング・オブ・マンハッタン計画。
 いやあ,すげえいやな写真集。日本で7000円の洋書なのだが,おれ,この本が自分の本棚にあるのはいやだ,というくらいいやな写真が満載。
 たとえば,あなた,臨界ってどうやって求められたか知ってます?
 ウランのさいころがいっぱいあるんだ。フルサイズ,四分の1サイズ,八分の1サイズ。これを積み木状にぎっしりかさねていって,中性子が出始めたら臨界だって。さすがにシャフトらしいので積み重ねられたウランのお城の中に小さなキューブを滑らせていく写真があったが,ナチスドイツならユダヤ人にやらせたところであろう。
 それから,例の半球型のウランをふたつあわせて爆発,という原子爆弾の原理。
 なにせやっているのがロス・アラモス研究所ですから,出て来るサンプルも本物で,うっかり合さらないようにあいだにドライバーをねじ込んで説明してたんだけれども,「あ!」という事故が二度ばかり起きたそうだ。以後素手でそのサンプルを扱うことは禁じられた。やめて欲しいわよねこういうネタ。
 最初の臨界事故を素手で起してケロイドになったそのアップとか,これでもかって言うくらい嫌なネタ満載である。
 本来江藤さんは今回の企画のためにアポロ計画関連の本,しかも宇宙飛行士本人の執筆によるもの,を日本書洋書問わず持って来ていたのだが,それより受けてるなあと感心しておられた。

 オープニングの後,夕食。夕食の後,遅れて到着した長谷川裕一氏と会う。持ち歩いていた,種子島土産の鉄砲鍛冶による手打ちのはさみを渡す。なんでも,その筋からの情報によると来年の戦隊物は未来からメカだけが送られて来るという逆ターミネーターパターンのタイムトラベル物らしく,「ほんとはもうやめようと思ってたんだけど,それならさぞかし突っ込み所あるだろうと思って,またやるって言っちゃいました」
 という訳で来年のSF大会でも長谷川氏の企画「すごい科学で守ります」が見られるようです。

 夕食後最初の企画は,アポロ計画回想。江藤巌氏が,わざわざアポロ1号からの乗組員と計画ナンバー,司令船,着陸船のシリアルナンバー,着陸地点などをプリントにしたものを持って来てくれてこれが参加者全員に配られ,それをもとにいろいろな話しが始まる。
 初めて聞いたのが,アポロの乗員とバックアップ乗員との関係。基本的に,三号あとの乗組員がバックアップをするということだったのだが,着陸船の開発が遅れた関係で八号は着陸船抜きで月軌道飛行を行うことになり,九号は地球軌道上で着陸船の開発を待って無重量状態での飛行実験を行うことになった。ほんとはこれ,当初の順番は逆だったそうで,月へ飛ぶことよりも月着陸船の実験の方を重要だと思った九号のクルーが後にまわり,それで八号が先に飛ぶことになり,八号のバックアップだった一一号のクルーが月着陸を行うことが確定した,という。
 もっともこの段階ではスケジュールにまだ不定な要素がいくつもあり,それで確定するとは当のアームストロングも思っていなかったのではないかと思う。もっともこの八号の月への飛行が一九六八年のクリスマス前後,暗殺されたケネディ大統領の約束の期限まであと1年という追い詰められたスケジュールにはなっていたのだが。
 月面までの降下高度15キロ,ほとんど一一号の飛行のリハーサルを行ったというアポロ一〇号も,なかなか大変だったらしい。なにせ,あのスタイルで実質着陸用のロケットと,離陸用のロケットと,二段ロケット,全重量の半分は推進剤という月着陸船である。一〇号で使われたものも軽量化が間に合わず,もし着陸していれば離陸条件がかなりシビアになったらしい。あげくのはてに着陸船は箔と薄紙で出来ていて,エンジンを噴かすとみしみしいう音が聞こえたという乗組員の証言があるくらいである。

 この企画のあと,宇宙作家クラブ同窓会。同窓会といっても三月にできたばっかりのクラブで同窓会ってもなあ。もっとも,今回のダイナコン,宇宙作家クラブのメンバーは笹本,江藤巌,小川一水,野尻抱介,横山信義,長谷川裕一,とけっこう潤沢である。取り合えず宇宙作家クラブ設立に至った経緯の説明とか,その後の活動とか,見に行ったものの上がらなかったH-II8号機の説明とか,あと秋山豊寛さんのところに援農に行った話などをする。

 担当の企画がはねたので,一二時からの長谷川裕一の企画を見に行く。長谷川「ヒーローもののアルバムも,最初のうちはいいんですが,五曲目,八曲目,一三曲目辺りになるとネタもやる気も切れて来ましてとんでもないのが入ったりして来ます。ここはそういうものを聞いて笑おうという部屋です」
 ショッカー怪人の数え歌とか,いろいろとんでもないものを聞かせていただく。

 さて,酒保こと酒場ことPXに戻ると,今年の星雲賞受賞を祝って,ジュール・ヴェルヌの月世界旅行の月に飛ぶ砲弾の中で開けられたワインをわざわざ用意してくださっているという。ニュイ・サン・ジョルジュ,自家葡萄園元詰めワインというやつで,なかなかおいしかった。ありがとうございました。