H-ⅡAロケット47号機の打上げ中止記者会見(2023/08/28)

 2023年8月28日に予定されていたH-IIAロケット47号機の打上げは、上空の風が打上げ時の制約条件を満たさないため中止となりました。この後、11時30分頃から打上げ中止記者会見が行われています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 技師長 H-IIA打上執行責任者 徳永 建
宇宙航空研究開発機構(JAXA)鹿児島宇宙センター所長 打上安全監理責任者 川上 道生

・状況説明

 三菱重工業株式会社は、種子島宇宙センターから国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
JAXA )の「X線分光撮像衛星(XRISM)」及び「小型月着陸実証機(SLIM)」を搭載したH-IIAロケット47号機の打上げを2023年8月28日午前9時26分22秒 (日本標準時)に予定しておりましたが、高層風が打上げ時の制約条件を満たさないため、本日の打上げを中止することと致しました。
 なお、新たな打上げ日については、決定し次第お知らせいたします。

 高層風の制約条件は先日配付した資料のH-IIAロケット47号機打上げ主要制約条件の中の飛行安全系・射場系の高層風で、「射点近傍で破壊した場合に、落下破片等による警戒区域外への影響が無いこと」という制約でございます。

・質疑応答(※衛星は検討中のため、ロケット系について)
産経新聞・天候のことなので慎重な判断をしたと受け止めている。現時点で新たな打上げ日は決定出来ないという事だと思うが、決定出来ない要因は何か、その要因はいつ頃まで続くのか、いつ頃まで打上げが厳しいのか、出来ればいつ頃になりそうなのか。
徳永・新たな打上げ日についてはこれから慎重に決定させていただきたいと思っています。通常、打上げを再度行う場合は3日後くらいを想定しますが、現在公表されている気象条件、それから機体のこれからの状況も踏まえて、その辺を確認した上で慎重に判断していくということでございます。

産経新聞・どういう要因が具体的に決められない要因になっているのか。
徳永・今は気象条件とか詳細には確認できていないので、打上げに適した条件になるのか、この辺が現時点でははっきり申し上げられない状況にあり確認が出来ていないという事で今決められないと考えています。

産経新聞・少なくとも3日後までに打上げに適した条件にはならないと見ているということか。
徳永・今日の状態まで打上げ準備を進めていますと、再度の打上に向けた機体の準備に2日間を要しますので、最低限3日後というのが現状になります。

NHK・高層風が打上げ時の制約条件を満たさなかったのは、風速がどれくらいで風向きはどうだったのか。
徳永・その辺についてはJAXAさんからお願いしたい。
川上・昨日から本日にかけていわゆる高層風と言いまして、地上から高度20km辺りまでの風の状況をバルーンという気球をあげて観測します。最終的に中止を判断したときの風の状況ですが、高度5km~15kmの間で最大30m/s弱の強い風が吹いていたという事でございます。風向につきましても、東から北東の風ということで、陸側に吹いている状況でございました。

NHK・打上げの日程が設定されたら大体何日前に伝えてもらえるのか。
徳永・新たな打ち上げ日を設定する2日前には公表させていただきたいと考えています。

南日本新聞・今後の打上げスケジュールの見直しに関して、チェックポイントがかなりあると思います。例えば燃料抜き取り後のチェック、整備棟に戻してから本体の確認等諸々あると思います。その上で徳永さんが考えている今日以降の、気象として3日から1週間にかけて気になるポイントがあれば教えて下さい。
徳永・私もまだ詳しくは見ていないので、どの程度の気象条件になっているのかを把握していません。これから機体の推進薬を抜いて整備棟に戻した後、今度は打上に向けた点検を行います。その中で必要な作業を行いますが、ここの作業が安全に行える条件、作業場所に雷が出るとかそういった事が無いかというのが一つポイントがございます。その後、機体の準備が整った後に衛星の準備も整いましたら、打上げの制約条件を満足するかといったところを確認することが懸念事項になります。

南日本新聞・雷雲もあると思うが、気象概況を見た時に台風が接近することも視野に入れているのか。
徳永・そうです。今天気予報に出ているような台風が複数あって、それが入り乱れる形であるということは予測が非常に難しいでしょうから、その辺は慎重に見ていく必要があると思っています。

南日本新聞・打上げの設定期間は9月15日までということで、現時点ではそういった事も勘案しながら15日までの期間内という事で良いか。
徳永・はい、その通りで考えています。

MBC・打上げ前ブリーフィングでは関係者の皆さんにとって特別な打上げだという話があったが、相次ぐ延期をどのように受け止めているのか。また打上げを楽しみにされている方が多くいらっしゃったと思うが、そうした皆さんに伝えたい事はあれば教えて欲しい。
徳永・今回、従来以上に重きを置いて進めてまいりました。その上で慎重に打上げに向けての準備状況、または打上げに向けての条件が整っているかの判断をしてまいりました。打上げの30分前くらいに判断するのは非常に苦渋ではありましたけども、ギリギリまで粘らせていただいて、その上で中止を判断させていただきました。今回夏休みということもあって多くの方にご覧いただいている状況であったかと思うが、非常にがっかりさせてしまったかもしれないが、慎重に判断した結果ということでご理解いただきたいと思います。

日本経済新聞・先に広報から3~4時くらいに既に兆候があり、そこから気象状況を判断して8時59分に最終判断をしたと伺っているが、判断に時間をかけたのは、いつも通りの判断状況だったのか、それとも今回はH3やイプシロンと失敗が続いている中で、より慎重に判断した結果として8時59分の判断になったのか。
川上・打上げの前日から当日にかけて4回ほど風の観測をして、予測も含めて進めていくという段取りについては、従来からやっている方法でございます。

鹿児島読売テレビ・今、台風9号だったり10号が発生しているが、上空の風が強いのはその影響と見ているのか。
川上・今日に至るまで2度延期させていただいたのは雷でしたが、私も気象の専門ではございませんが、素人目に見ても台風がああいう風に複数存在する状況は珍しい事なのかと思います。今日もいけるということで設定して進んだ訳ですが、結果的に風が予測から外れていた。多かれ少なかれ台風がそういう所にあるということは影響していると思います。

NVS・機体の燃料を抜いて返送する事になると思うが、そのスケジュールの目処が立っていたら教えて欲しい。
徳永・現状は推進薬の排出作業に移りました。今のところ順調に作業を進めておりますので、概ね夕方の18時頃を想定しています。多少前後はあるかもしれませんが、それくらいを想定しています。

NHK・18時は機体が動く時間か。
徳永・私が言った時刻は移動を始める時間を想定しましたが、ぴったり決まっている訳ではなく、想定した予想の時間ということで申し上げました。

NHK・なかなか天候が読めない中で恐縮だが、週間予報を見ると早くて金曜、それ以降となると来週にかかってくるかと思うが、大体の目安が知りたい。
徳永・非常に難しい状況でございます。週間気象情報が出ていましてマーク(雷・強風・大雨等)が無い日がいいのではないかと見える反面、また変わってくるところもあって、本日打上げに臨むにあたってもその辺の変化を受けながら飛ばさせていただくということもありまして、現時点でここが確定的という見方は出来ていない状況です。

朝日新聞・天候が読めない中だが、もし仮に9月15日までの予備期間までに打上げが難しい場合、次の打ち上げ時期は何月頃か。
徳永・現時点においての今回のミッションなおいて、打上げが出来る想定できるところは定まっていません。9月15日までが今回の打上が可能な期間となっています。

フリーランス鳥嶋・延期とは直接関係が無いが、今回の47号機はH3の失敗を受けて共通している部分に対策されたと伺っているが、昨日からの打上げ準備と点検作業において何か変わった点はあったか、あるいは全て順調だったのか。
徳永・今回、H-IIAロケットとして対策したニューマティックパッケージと言われる搭載機器、またエキサイタスパークプラグというエンジンの点火器プラグについては、今回の打上げに向けた作業の中では実際に作動させている状況ではないので、機能的に本日において確認することはできていません。これまでの準備作業の中で確認を全て終えたという状況です。

共同通信・過去において天候を理由に直前のGo/NoGo判断でNOになったのは過去に例があるか。
徳永・天候の事由で打ち上げ直前に延期させていただくのはこれまでもありました。

共同通信・今回は珍しいと言えるか。
徳永・打上げ当日というのは少ないが数字は覚えていない。記憶では当日に氷結層という事由で延ばした事、また発雷の予測が出たという事でもあったと思うが、そういった事由ではありました。

KTS・今回の制約条件の高層風は、射点付近で指令破壊をした場合に破片が飛び散るということで、固体ロケットブースタが3kmより外に飛ぶとかそういった事では無いということか。
川上・指令破壊に限らずロケット自身の異常で破壊した場合、固体ブースタに限らずバラバラになりますので、それが飛散する範囲が警戒区域を越える可能性があるというものでございます。

KTS・通常のシーケンスで固体ロケットブースタが分離した場合はあまり関係無いのか。
川上・固体ブースタはかなり海上に出てから海域に落下しますので、地上や射点近辺に設けている警戒区域から外れた位置で間違いない。

KTS・5km~15kmに到達するのは打ち上げ後どれくらいか。
川上・即答できないが、何秒のオーダーだと思います。
徳永・確認して回答させていただきます。

フリーランス林・先ほど中2日で早くて3日後とおっしゃったと認識しています。今日が月曜ですから最低でも木曜日以降となりますが、その作業内容を確認したい。今日の18時頃に整備棟に戻すとなると、明日明後日にかけて2日間でロケットの総点検を行い、3日後に打上げという理解で良いか。
徳永・まず3日後に打上げられるかはまだ判っていません。ロケットは中2日、3日後に打上げられるように作られていまして、そのように出来る手順も整っております。あくまでうまくいく場合です。その場合の手順で申し上げますと、この後機体が戻りまして、本日の夜から明日にかけて機体の点検、そして外観点検も含めてやって、2日目で打上げに向けた再度の準備を行っていって、その次の日の打上げに備えるというのが3日後に打上げる場合の手順となります。

フリーランス林・それに衛星側の状態確認が加わって、そちらも良好であればということか。
徳永・はい。その辺の状況も機体を戻してから確認が必要なところですので、それも条件になると思います。

以上です。

打上げ直前だったH-IIAロケット47号機。