投稿日 2013年7月21日(日)13時29分 投稿者 柴田孔明
観測ロケットS−310−42号機/S−520−27号機の打ち上げ結果についての記者説明会
※一部敬称を略させていただきました
・登壇者
石井信明 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系教授 観測ロケット実験室長
阿部琢美 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 准教授
吉田裕二 宇宙科学研究所 保安主任
・宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、高度70km〜300kmにわたる希薄な超高層大気の観測研究を目的とした観測ロケット2機を、平成25年7月20日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げ、実験は成功しました。
・S−310−42号機:午後11時00分00秒打ち上げ。上下角74度。最高到達高度139km(打ち上げ185秒後)、打ち上げ360秒後に着水。
・打ち上げ後72秒から240秒間に高度60〜140km付近でTMA(トリメチルアルミニウム)を放出。
(※これは地上各地で観測ができています。また、実験用航空機「飛翔」でも観測しています。写真に点線のように写っている場合は、TMAの「1秒放出・1秒停止」を繰り返す様子が撮影できたことになります)
・S−520−27号機:午後11時57分00秒打ち上げ。上下角78度。最高到達高度316km(打ち上げ286秒後)、打ち上げ556秒後に着水
・打ち上げ後497秒から20秒間に高度120〜100km付近でリチウムを放出。
(※こちらは実験用航空機「飛翔」が観測に成功しています。また地上でも撮影に成功しているところがあります)
・ロケットに搭載した観測機器により、電場、磁場、電子密度、電子密度擾乱の観測及び地磁気と月光を利用した姿勢決定を予定通り実施しました。更に、ロケットから送信されるビーコン電波を地上局で受信しました。これらの結果を用いて、今後、超高層大気領域の擾乱に関する詳細な解析が実施されます。
・質疑応答
南日本新聞・発光以外の実験は成功だったのか。
阿部・観測ロケットは各種測定機器を搭載していたが、正常に動作した。
南日本新聞・発表文の小型GPS受信機で測位と再補足とは何か。
石井・計測装置の機能確認のため搭載した。
NVS・リチウム発光は期待した明るさであったか。
阿部・実験前、飛行機から見える程度と予想していたが、実際に飛行機で撮影したところ予想以上に明るかった。種子島で撮った写真にも写っている。考えた以上にリチウムが明るかった。
(※ただし発光の継続時間は短かった様子である)
NVS・TMAの輪っかは予想できていたか。
阿部・あの高度では過去の例からも、ある程度は予測していた。
(※TMAを撮影した写真には、輪を描いている様子が写っている。これは内之浦でも肉眼で観測できたほど明るかった)
NVS・地上観測地点では観測ができたか。
阿部・内之浦と種子島では観測できたが、四国の室戸は雲に覆われて観測できなかった。
(※実験用航空機「飛翔」による雲の上からの観測が可能であったため、全地上観測地点の天候は打ち上げの条件としていない様子)
南日本新聞・リチウム雲の月光反射による観測が成功したが、これが今後の観測の主流となるか。
阿部・夜間の高層風を計る手段がなかなか無かったが、このリチウムは特徴的な場所で観測ができる。アメリカで日中の観測(※ワロップスでの実験)が成功しているため、これまでの朝夕の実験も併せると、24時間どこでも使えることが判った。このため、今後いろいろな実験に使われていくだろう。ただし、月光反射については現在のところ日本だけのノウハウである。
同・今回のような2機打ち上げの実験は今後も行われるか。
石井・毎年はできないが、世界に誇れる実験なので進めていきたい。
NVS・2機連続の打ち上げだったが、新型になったアビオニクス切り替えなどについて。
石井・新型アビオニクスが搭載されたのと、宮原のテレメトリ装置が新しくなった。電波の関係で同時には打ち上げられないが、リハーサル等で切り替えをやっていた。今回は実験の要望で57分の間隔だったが、もっと短縮できる。
NVS・打ち上げの条件である電子擾乱は発生していたか。
阿部・夜間の擾乱は午後8時頃は活発でなかったが、打ち上げ1時間前には実験可能なレベルに達していた。
・その他
現地では夏休み期間に入ったことや、8月に打ち上げ予定のイプシロンロケットが話題になっていることもあり、いつもより多くの見物客が訪れたようです。またJAXAの阪本成一教授による打ち上げ前の説明も行われ、見るだけでなく学ぶこともできました。撮影者向けには観測ロケットの打ち上げ20分前に施設の照明が落とされ、ピント合わせが難しくなることや、フラッシュの使用は控えるようにとのアドバイスもありました。
以上です。
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