宇宙作家クラブ
トップページ 活動報告ニュース掲示板 会員ニュース メンバーリスト 推薦図書

No.1716 :H-IIAロケット打ち上げ Y−1プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2014年2月26日(水)23時33分 投稿者 柴田孔明

2014年2月26日14時よりH-IIAロケット23号機/GPM主衛星打ち上げ前Y−1プレスブリーフィング及びGPM計画利用に関する記者説明会が行われました。
写真はY−1プレスブリーフィング時のものです。
・登壇者
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 製造・発射整備部長 MILSET長 並河 達夫
宇宙航空研究開発機構(JAXA) GPM/DPRプロジェクトマネージャ 小嶋 正弘
アメリカ航空宇宙局(NASA) GPMプロジェクトマネージャ Art Azarbarzin
アメリカ航空宇宙局(NASA) 地球科学部 飛行プログラム次長 Steven Neeck
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 鹿児島宇宙センター 射場技術開発室長 長田 弘幸

・打ち上げ日時:2014年2月28日3時37分(JST) 
・打ち上げ時間帯:午前3時37分〜4時37分(JST)
・予備期間:2014年3月1日〜2014年3月31日
・予備期間中の打ち上げ時刻は3時7分〜5時7分の間で別途設定。
(※機体移動は2014年2月27日13時頃に開始。終了後まもなく立ち入り規制が始まるので見学の方は注意してください)

・質疑応答より(一部省略しています)
NHK:意気込みなどをお聞きしたい。
並河:我々にとって全ての打ち上げと衛星が重要。作業と気象を確認しつつ確実に打ち上げを成功させる。

不明:天候について説明をお願いしたい。
並河:本日は一旦天候が悪化し、日付が変わる頃までに風雨が強まる。明日の機体移動までには回復し、深夜に向けて良くなっていく。打ち上げに支障がないと判断している。

毎日新聞:今回のH-IIAに特別な違いはあるか。
並河:特別にGPM向けとした仕様変更は無い。しかしコストダウンや部品枯渇対策は行っている。また今号からSSB取り付け部分を廃止し、約120kgを軽量化した。
(※SSB:以前、H-IIAロケットの2024型や2022型で使用していた小型の固体補助ロケット。現在は廃止され使用していない)

共同通信:衛星の試験とデータ提供はいつになるか。
小嶋:打ち上げ後順次チェックアウトを行い、ノミナルでは3日後に衛星の制御をOn、18日目後頃に全体をOnにして確認してゆく。データは研究者による確認が必要。半年後頃には一般の研究者にデータ提供が行われる予定。

共同通信:NASA側の開発費用はいくらか。
Neeck:GPMのNASA負担は9億2千800万ドル。これには開発、設計、作製、運用、データ解析等が含まれる。

NVS:世界的規模のプロジェクトだが、期待や反響はどうか。アメリカの天気予報に使う予定はあるか。
Azarbarzin:グローバルなプロジェクトで、参加している科学者から、非常に熱意を持った反応を得ている。
NOAA(アメリカ海洋大気庁)はNASAとのパートナーシップを持っている。GPMを使えないかと考え、機能のチェック時にNOAAも参加し、データが予報に使えるか判断していく。

SAC:以前のJAXA配付資料ではGPM計画に中国が含まれていたが、最近の資料には無い。これはどういった経緯か。
小嶋:GPM計画は開かれた計画で、衛星が増えれば精度が高まってゆく。中国の衛星は検討している段階。データが有用であれば、今後相互に協力していく可能性がある。今はパートナーに入っていない。

NHK:ウインドウが当初の発表より短く変更されているが、どういった解析が行われたのか。
長田:有人宇宙機(国際宇宙ステーション等)の最新の軌道解析から、ロケットとその分離物が干渉しない時間帯を選んだ。今回が初めてではなく、シャトルとの干渉から変更したこともある。
(※COLlision Avoidance解析・COLA解析)
延期した場合は最新の解析によって変わります。

時事通信:ハリケーンや干ばつなどが最近多い。どれくらい軽減に役立つか。
Azarbarzin:衛星のデータは1ヶ月後に入手するが、ハリケーンなど危急の場合は調整して使うことも可能だと思う。

鹿児島テレビ:日本の打ち上げ技術はどのように感じたか。
Azarbarzin:高技術で作られ正確であり感銘を受けた。

産経新聞:成功を確信しているか。アメリカから運んで打ち上げる経緯はどのようなものか。
Azarbarzin:H-IIAは成功率が高いロケットであり私たちは非常に高く信頼している。国際的なプロジェクトである件と、65度の角度がある。国際的なパートナーであることと、各機関が単独で行うと膨大な費用がかかることがあるためパートナーシップを組んだ。打ち上げはJAXAの貢献である。

NVS:衛星に愛称はつけるのか。
Azarbarzin:まだつけないが、軌道に乗ればたぶんつくでしょう。


No.1715 :公開された全球降水観測(GPM)計画主衛星その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年1月17日(金)18時33分 投稿者 柴田孔明

四角いものはKu帯降水レーダ(大:403kg)と、Ka帯降水レーダ(小:302kg)です。


No.1714 :公開された全球降水観測(GPM)計画主衛星 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年1月17日(金)18時29分 投稿者 柴田孔明

公開された全球降水観測(GPM)計画主衛星

パドルは収納されています。
銀色であるのは、低軌道のため原子状酸素に耐久性のある素材を使っているためです。


No.1713 :GPM衛星の公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年1月17日(金)18時25分 投稿者 柴田孔明

2014年1月17日、種子島宇宙センターにて、全球降水観測(GPM:Global Precipitation Measurement)計画主衛星の機体公開と概要説明が行われました。

登壇者
JAXA GPM/DPRプロジェクトマネージャ 小嶋正弘
NASA GPMプロジェクトマネージャ Art Azarbarzin

・配付資料より
 衛星バス:NASA
 設計寿命:3年2ヶ月
 質量:3,850kg
 軌道高度:407km
 軌道傾斜角:65度 (太陽非同期)
 DPR:JAXA,NICT
 GMI:NASA
 追跡・管制:NASA
 データ処理:NASA,JAXA(※データ送受信はTDRSを介して行う)
 打ち上げ:JAXA
 打ち上げ予定日:2014年2月28日
 打ち上げ予定時間帯:午前3時7分〜午前5時7分(JST)
 打ち上げ予備期間:2014年3月1日〜2014年3月31日
 打ち上げ予定場所:種子島宇宙センター大型ロケット発射場
 打ち上げロケット:H−IIAロケット23号機(202型、4Sフェアリング)

 全球降水観測計画(GPM)は、二周波降水レーダ(DPR:Dual-frequency Precipitation Radar)及びマイクロ波放射計(GMI:GPM Microwave Imager)を搭載した1機の主衛星と、マイクロ波放射計またはマイクロ波サンダを搭載した複数の副衛星群により、気候変動・水循環変動の解明の為、全球降水の高精度・高頻度観測を行う国際協力ミッションである。
 主衛星は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米国航空宇宙局(NASA)の共同開発であり、JAXAは情報通信研究機構(NICT)と共同でDPRの開発を行う。

・GPM計画の特徴(熱帯降雨観測衛星TRMMとの比較)
 ・観測領域の拡大
  観測域を緯度65度まで拡大することにより、地球全体の降水の95%を観測。
 ・降水レーダの観測感度を向上
  TRMM降雨レーダの感度:0.7mm/h
  GPM搭載DPRの感度:0.2mm/h
 ・2つの周波数を持つ降水レーダ(DPR)による観測
  熱帯や亜熱帯に多いスコールのような豪雨から、高緯度地域に多い、しとしと降る弱い雨や雪・氷までを観測。
  同じ雨を2つの周波数で観測することにより、降水の推定精度が向上
 ・観測頻度の向上
  主衛星はコンステレーション衛星の降水推定精度を向上させるハブとなる校正器の役割を果たす。
  複数のコンステレーション衛星データを使うことにより観測範囲が大きく広がると共に、時間的な変化が速い降水を高い頻度で観測。

・同日の質疑応答より抜粋

Q・DPRが世界唯一とはどういった意味であるか。
A・熱帯降雨観測衛星(TRMM)ではNASDAが衛星搭載型の降雨レーダ(PR)を開発した。これは当時世界で唯一であり、他に例が無い。DPRはそれを高精度化したもので、これも唯一である。(※雨量計)

Q・いつ観測データがユーザーに反映されるか。変化を感じることはあるか。
A・半年後くらい。気象庁では、データが利用可能になり次第反映してゆく。精度が向上していくと思う。

Q・GPMの開発費用はいくらか。
A・JAXA側はレーダー開発、処理システム、打ち上げ経費等で226億円。運用を除く。
(※NICTは30億円。東京での説明会より)
A・NASA側は9億3300万ドル。開発の他、地上施設開発等と3年間の運用を含む。

Q.TRMMは地球の降雨をどの程度カバーしていたのか。GPMはどうなるか。
A.今、数値の持ち合わせが無い。地球で最も雨が降るのが熱帯域で、その次に中緯度帯がくる。TRMMは中緯度帯が十分ではなかった。GPMは降っている雨の量で95%、表面積で90%をカバーする。

Q.宇宙から雨をどうやって測るか。
A.雨粒は微弱な電波を出している。それを「GCOM−W1:しずく」は受動的に観測している。しかしトータルで見るため垂直分布が判らない。レーダーは電波を出して反射を見るため精度が高くなる。また地表から頂上までの分布も判る。

Q.GPMがあれば予測できた災害などはあるか。
A.TRMMは既に天気予報等で使われているが、GPMでデータの量と質を増やせる。雨の性質などが判ることで、台風の進路だけでなく発達の強度の予測が期待される。

Q.衛星が銀色であるのと、太陽電池パドルの角が欠けている理由は何故か。
A.衛星の高度が400kmと低いため原子状酸素が多く、通常のサーマルブランケットでは劣化が大きい。そのためゲルマカプトンという素材を使っており銀色に見えている。
A.パドルについては、GMIの視野にパドルの角が入ることがあるため、そこをカットしている。

 (※衛星はアメリカで製造とテストが行われた後、C−5ギャラクシー輸送機で北九州空港に空輸され、そこから船で種子島に運ばれた。Art Azarbarzin氏によると、この輸送は悪天候で18時間も足止めされるなど、なかなか困難であったとのこと)


No.1712 :イプシロンロケット初号機の打ち上げ2 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月15日(日)00時55分 投稿者 柴田孔明

20mパラボラ下(衛星ヶ丘展望台)に設置したリモートカメラの映像。


No.1711 :イプシロンロケット初号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月14日(土)23時16分 投稿者 柴田孔明

報道席から見たイプシロン打ち上げの様子


No.1710 :イプシロン成功記者会見第二部 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月14日(土)17時56分 投稿者 松浦晋也

9月14日イプシロン打ち上げ成功記者会見第二部です。。

出席者は、森田泰弘・イプシロンプロジェクトマネージャーと、澤井秀次郎・SPRINT-Aプロジェクト・マネージャー

森田
 終わってみれば最高だった。隊員全員よくがんばってくれました。本当にありがとうございます。
 今日の打ち上げの状況について。ものすごくお天気も良く好調だったように見えたが、追跡局の小笠原追跡局の風が強かったり、高層風があばれていたりして、ぎりぎりまで我々はどきどきしていた。これほどきれいな打ち上げはいままでなかったかなと思う。
 打ち上げはほぼ決められた時刻に決められたイベントが実行された、全く正常な打ち上げだった。PBSの噴射は3段目までに発生した軌道誤差に対応して行うので、時刻が予測値からずれているのはPBSが正常に動作した証拠。投入軌道は非常に高精度で投入できた。
 イプシロンは宇宙研と旧NASDAの文化の良いところを集めて作ったロケット。統合10年目の節目の年に、日本のロケット開発集大成としてきれいに飛んでいったのはうれしい。イプシロンは、宇宙ファンの皆さん、内之浦の皆さんと二人三脚で開発してきたが、今回ほどありがたかたことはない。イプシロンの成功は始まりである。自律点検やモバイル管制で宇宙開発の新しい時代をロケットスタートを切ることができた。

澤井
 非常にきれいに打ち上げられ、衛星も健全な状態にある。先ほどの上空通過で衛星状態を確認。太陽電池パドルを開き、太陽にきちんと向けている。ロケット側に感謝している。
 衛星の名前は「ひさき」(HISAKI)。地元内之浦にとっての新しい夜明けを象徴したいということでこの名前を選んだ。意味は2つ、ひさきは観測対象は惑星。惑星が太陽の影響をどのように受けるかを観測するので、ひ「太陽」の先だからひさき。
 メインの理由は、内之浦の地名。津代半島の先端の火崎から。内之浦で一番最初に夜明けの光があたる土地。毎年正月に漁の安全を祈願する場所。イプシロンもまた内之浦を旅立つ船であり、安全を祈願するという意味で火崎とした。

森田
 ちょっとおちゃめな話をします。性能計算書の表紙。皆さん宇宙開発で一番大切なのは、なんだと思いますか。柔軟な発想です。性能計算書の表紙は、新燃(しんねん)です。その理由を話しましょう。
 M-V廃止の時、自分は大変悔しい思いをした。そのとき恩師で日本の固体ロケット研究を引っ張ってきた秋葉先生が「宇宙開発に“たら”も“れば”もない、いいロケットを作って未来を拓け」といわれた。それ以来、私たちはM-Vより良いロケットを作るという信念でここまで来ました。だから今回の性能計算書の表紙は新燃なんです。
 もう一つ話したいことがあるのですが・・・すいません、気持ちが静まったら話します。

読売新聞 打ち上がった瞬間の気持ちを聞きたい。
森田 射場に来てからの数ヶ月は大変鍛えられる日々だった。チーム一丸となって苦しくともがんばって良かった。終わってみたら最高です。日頃私は自信満々で語っているわけですが、内心は、眠れない夜を何日も過ごしたということもあった。チームを奮い立たせるために強気の発言をしてきたわけだが、その自分からしてこれほどの成功になるとは思っていなかった。

澤井
 うれしい、と拍子抜けと両方。衛星は必ずしも理想的に運ばれるわけではないので、100以上の異常対応の手順を組んで訓練してきた。それがすべて無駄になったので、あれっと拍子抜けです。

NHK カウントダウンと衛星分離の時の気持ちを。固体ロケットの伝統を引き継ぐことについて感想を。

森田
 カウントダウンは何回も練習してきたので、無心で静かな気持ちでした。何回も苦難を乗り越えたというのはたくさん練習できたということで良かったのかなと思う。今回、各段のロケットがきちんと燃えるだけでも、格段の感慨があった。各段がきちんと燃えることがこんなにありがたいとは。だから衛星分離の時は、みんなに拍手を送りました。これが7年間のみんなの努力の成果なんだな、と。
 自分の能力を超えるような事態にもぶつかったが、開発チーム、内之浦の皆さん、全国の宇宙ファンに
 夢中に走った7年間でした。みんなと一緒に走った7年でした。イプシロンは始まったばかりで、これからおもしろいミッションを実現していきたいと思います。

産経新聞 今までイプシロンの命名の半分がエクセレンスやエデュケーションの頭文字だがそれは半分だとおっしゃっていました。イプシロンの命名の理由の残りの半分は成功会見でということだったので。この場で話してもらえればと思います。

森田
 とても良い質問です。まずイプシロンの記号の意味。小さいけれど存在感はある。これが1/4。残りの1/4は今回初めて話します。
 3年前に開発承認された時、宇宙研の先輩に相談したところ「Mロケットの精神を忘れるな」と言われた。Mロケットの精神は、「世界の先を行け。自分の力で未来を拓け」ということ。M-VIでもないなと的川先生とM組立室でギリシャ文字を並べて相談していたところ、的川先生が「Mを回して横にすればEだよね」と言ったのです。Mでありながら、全く別次元に変身したロケットということでイプシロンと命名した。これからかわいがってください。

不明 リフトオフの瞬間の感想は。モバイル管制は何人で行ったか。その意義について。
森田 飛んだところで喜んだ。飛んだと心の中で叫んだ。そんなところで喜んではいけないと、姿勢とか軌道のデータを見つめた。
 モバイル管制事態はパソコン2台で3人で運用した。パソコンの前に2人、2人の動作を監督する人1人。同じ部屋に自分の他に8人いました。この人数は今後習熟するにつれてもっと減らせると思います。

東京会場
フリーランス秋山 PBSの修正量について。どの程度少なくて済んだのか。
森田 今日の最終飛行経路、ノミナル軌道に対して、一回目PBS燃焼は計画では4分強、実測も4分でした。

読売新聞 打ち上げ時に出た黒い煙はサイドジェットの燃焼か。
森田 その通りだ。サイドジェットあまり高温ガスではバルブが溶けるので、温度を下げて黒い煙がでるように作ってある。

喜多 祝電が届いています。「成功を祝す、私を引き合いに出すのはそろそろやめてくれ、固体ロケットは君らのものだ 糸川英夫」、返答をお願いします。
森田 イプシロンはずいぶん革新的なことをやりましたが、糸川先生からみるとまだまだなのではないかと思っています。これからも糸川先生に気に入られるようなロケットを作っていきます

NVS 視察はどれぐらい来たでしょうか。
森田 自分ではわからないので・・・
広報 後ほど回答します。

南日本新聞 内之浦にひとことお願いします。
森田
 皆さんのご支援が我々がここまで来れた最大の要因です。一心同体二人三脚でやってきたので、よかったね、と言ってあげたいです。8/27の延期で町にずいぶん迷惑をかけたのではないかと思います。もともとオペレーションも長く宿のみなさんも疲労困憊だったので、そこにさらに迷惑をかけてしまいました。宿のおばさんに、力いっぱいがんばりましたと報告したいと思います。
 8/27の延期は疲労の頂点で起きたので、落ち込みもしました。その中で応援の色紙やお便りは思い切り励みになりました。この二週間、励ましの言葉がなければここまでがんばれなかったと思います。皆さんのたくさんの夢を乗せたイプシロンが、打ち上げ成功をつかむことができました。どうもありがとうございます。

以上です。


No.1709 :イプシロン初号機打ち上げ成功を受けた記者会見第一部 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月14日(土)16時49分 投稿者 松浦晋也

9月14日午後4時15分からの、イプシロン初号機打ち上げ成功を受けた記者会見の様子です。

第一部 出席者は奥村直樹JAXA理事長と福井照文部科学省副大臣

奥村より打ち上げ経過の報告。ロケットは正常に飛行、打ち上げ後約61分39秒後にSPRINT-Aを正常分離。

地元肝付町など関係各位に謝辞あり。

 非常に新しいロケットシステムであり、技術実証ができたことは意義深い。新宇宙基本計画の宇宙利用の拡大という大きな政策方針にも続いた第一歩として、大がかりな準備を要しないロケットの打ち上げに成功したことは意義深い。新基幹ロケットの開発にも着手する。新たな我が国のロケットがそろう最初の年となった。

 IHIエアロスペースなどメーカーに対する謝辞。

 JAXA発足から10年、イプシロンにはNASDAやNALの技術も取り入れてあり、三機関統合の成果でもある。今後とも研究開発に邁進したい。

福井
 下村文部科学大臣のコメントの要旨読み上げ。SPRINT-Aに期待している。7年振りの固体ロケット打ち上げを喜ばしく思う。
 今回は内之浦打ち上げ400回目。地元と応援してくれた国民に感謝する。2回の延期を乗り越えた奥村理事長のリーダーシップに謝辞。組織内に検証チームを作って競わせたことを評価する。

質疑応答

朝日新聞 打ち上げ成功の所感は。
奥村 直前に2回の困難があったこともあり、感動した。
朝日 イプシロンでどのような市場でどのように戦っていくのか。
奥村 より小型で安価な衛星を高頻度で打ち上げていくという市場を中心にイプシロンを適用していけたらと思う。H-IIA/Bと補完することでマーケット対応力が上がってくるのではないかと思う。

朝日新聞 大きな教訓の得たという中身はなにか。
奥村 予定通りの日時に打ち上げられなかったことの原因を、次回に繰り返さないということ。発生原因というか派生原因を社内で検証していくということ。

時事通信 27日、物事がうまくいかなかった時の心境を教えて欲しい。
奥村 事象が起こった直接原因と、直接原因が起こる背景を両方考えて対処しないとなと考えていた。そのために打ち上げ関係者以外から直接原因を探ろうとして特別点検チームを組んで、原因究明をしてもらった。

読売新聞 イプシロンは2段階開発となっているが、今回の成功で2段階目をどう考えるか。
奥村 開発の一方でマーケット調査が必要。今の能力で対応できる衛星のニーズを発掘しつつ、第2段階を検討するということになるだろう。

南日本新聞社 地元の応援をどのように感じたか。
奥村 私も現地に宿泊しているわけだが、これまで自分が経験したことのない熱意を感じた。延期にもかかわらず外から見物に来られる方の対応を、地域を挙げてしてもらっていると強く実感した。内之浦の皆さんの応援は、大変大きな力になった。

東京会場
読売新聞 今後の打ち上げのスケジュールについて。この先の打ち上げ計画を文科省はどう考えているか。
福井 2号機予算を来年概算要求に提出した。それ以降はこれから。
読売新聞 イプシロンの打ち上げは何年間隔が適正と考えるか、
福井 今答える段階ではない。

東京新聞 宇宙ビジネスにどうつなげていくか、政府の考えを聞きたい。
福井 「2020年を契機として日本人を変えるのだ」という、下村大臣のオリンピック決定に関するコメントの中に、ロケットも入っている。オリンピックを4本目の矢と形容したけれども、ロケットもまた矢だろう。ロケットは超弩級の矢ですよね。

筑波会場
NVS 固体と液体のロケットがそろったわけだが、この2つのロケットをどう生かしていくのか。
内村 縦割りやメーカーの違いをどうやって乗り越えるかという質問と理解した。奥村理事長を評価するのはまさに今回乗り越えたから。
奥村 今後世界の宇宙ビジネスに打って出るなら、競合相手との相対的な力関係が重要になる。議論としてはそういう方向が出てくるだろう。

以上です。


No.1708 :宮原一般見学場から見るプレススタンドとイプシロン ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月14日(土)12時46分 投稿者 松浦晋也

 一般見学席からはイプシロンがプレススタンド越しに見える。


No.1707 :イプシロン、姿を現す ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月14日(土)11時30分 投稿者 松浦晋也

 午前10時45分過ぎ、イプシロンが姿を表しました。現地は風が強いです。平均で8m/s、最大10m/sぐらい。台風の影響でしょう。この程度なら打ち上げ可能ですが気になります。


No.1705 :9月13日午後1時からのイプシロン打ち上げY-1ブリーフィング(内之浦) ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月13日(金)14時03分 投稿者 松浦晋也

9月13日午後1時からのY-1ブリーフィングの様子です。

出席者は、森田泰弘・イプシロンプロジェクトマネージャーと、澤井秀次郎・SPRINT-Aプロジェクト・マネージャー

森田 ご心配をおかけしたイプシロンの打ち上げも明日。王手がかかった。直前の延期でご迷惑をおかけしたが、皆さんの応援で明日打ち上げを迎えることができる。

 8月27日以降の対応の説明。直接原因の究明だけではなく、水平展開による全体の見直しを実施。9/5に整備棟内で打ち上げシーケンスを走らすシーケンス試験実施。9/8に射点にロケットを出してリハーサル相当のシーケンス点検を実施。9/11に最終確認審査を実施して、最終準備が整っていることを確認。
 以下配布資料の説明。

澤井 衛星側は前回と同じ内容。
 以下配布資料解説。
 打ち上げ15分前に内部電源に切り替えてタイマーをスタートさせると、打ち上げ後4日までのシーケンスが動き出す。衛星側としてはこの15分前のタイマースタートが大きなイベントとなる。

森田 明日の天気。午前は雲が残るが午後は晴れ間も見えて、絶好の打ち上げ日和。その後はあまり天気が良くないので、チャンスは明日と考えてしっかり準備を進めていく。

質疑応答
NHK 前回の中止から二週間が経ったが、現在の心境は。
森田 かなり複雑なものがある。直前の中止で全国の宇宙ファンや内之浦にいらっしゃった皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。緊張が頂点に達したタイミングの出来事だったので、我々の精神的にも大変な出来事だった。多くの人々から激励の言葉をいただき、我々の励みになった。色紙やお守りまでもらった。厳しい思いも経験してきたが、いろいろな人に応援されてここまで来たと感じる二週間でもあった。
 頂いたメッセージの中には入院しているご老人や施設の子供たちからのものもあって、それぞれイプシロンに自分の気持ちを託して応援してくれていると思うと涙が出た。いろいろな人々の思いを託されてイプシロンは飛んでいくのだから、しっかり準備しようと思っている。

朝日新聞 澤井さんに。8/27でもT-15分のシーケンススタートをしたわけだが、それは止めたのか。
澤井 放っておくと太陽電池パドルが打ち上げ3700秒後に開く。ロケットと分離しない限り開かないという安全機構がついているが、誤動作もあり得るので非常時は3700秒までにシーケンスを止めることになっている。前回はトラブル発生から10分以内に非常時の手順に従って止めた。

朝日新聞 レイトアクセスについて。衛星センサーを真空ポンプで引いていると聞くが、アンビリカルで引いているのか。

澤井 アンビリカルでは引いていない。打ち上げ4時間前までレイトアクセスを生かして引いている。真空引きを停止してから10時間は、センサーに影響が事実上出ない。打ち上げ中止時は、真空引き停止後10時間以内に、真空引きを再開することになっている。8/27はロケットを整備棟に戻してからすぐに真空引きを再開した。

鹿児島テレビ 打ち上げがうまくいった場合、何秒前にロケットから煙がでるのか。
森田 発射の10秒前に、ロケットの姿勢制御を行う固体ロケットモーターに火がつく。」

読売新聞 イプシロンとしては、総点検で信頼度は増したのか。
森田 大変難しい質問だ。より広範囲な目でしっかり見てもらったので、我々としては外部の目から見ても大丈夫という確信が得られた。

読売新聞 前回は「打ち上げ成功間違いなし」という言葉があったが、今回は?
森田 人間が思い至らないことを機械が気づいて止めるというのがイプシロンのコンセプト。それが誤検知を引き出してしまった。前回は肩に力に入っていた。イプシロンは我々だけではなく多くの人々の思いを乗せて飛んでいく。絶対成功間違いなしの確信は変わらないが、二週間前に比べると平常心である。

毎日新聞 この二週間の延期でかかった金額は。
森田 計算中です。追って後日ということで。
毎日 体調はいかがですか。
森田 なにかふわふわした感覚で、食欲もなかったが、激励メッセージが届くようになって今は元気な状態に戻った。体重は確かに減ったが今は誤差の範囲内です。
毎日 宇宙ビジネスに展開するにあたって
森田 イプシロンと澤井さんが開発する小型衛星バスを組み合わせて市場に出て行きたい。よりコストを下げつつ性能を上げていきたい。打ち上げを重ねるたびに市場をリードする形でコスト低下と性能向上を進めていきたい。

東京会場に回る
東京新聞 カウントダウンシーケンスでの監視項目はH-IIAとどう違うのか。
森田 今すぐ違いが出てきません。監視の内容はイプシロンのほうが進化している。

NHK 衛星分離の映像がJAXA放送で流れるのは何秒後か。
広報 ダウンリンクから十数秒遅れで流したい。
NHK 分離映像が流れたら打ち上げ成功といっていいのか。
森田 ほぼそのタイミングで衛星が正しい軌道に投入できたかどうかが分かるはずだ。

筑波会場
日本放送 打ち上げ準備終了の確認はしたのか。その時の心境は。
森田 監視項目だけでも2000点近いデータを何十人の人が徹夜に近い努力ですべて点検した。そういった点検をやることでより安全になったことは間違いない。

NVS 天候が優れない場合は、ウインドウ内で粘るのか、
森田 なるべく打ち上げは粘りたい。あらためていつ打つのが良いかはそこから考えるものなので、

内之浦会場にマイク戻る
時事通信:この延期で今後の開発に得られた教訓はあるか。
森田 教訓はたくさんある。新しいものを作った場合の検証範囲を広げる必要を感じた。いつ不具合を発見するかは、効率の許す限り、打ち上げの

共同通信 森田プロマネは士気を高めるためにどんな話をしたのか。
時事通信 自分が暗い顔をしちゃいけないと思って仕事をした。最大限明るく振る舞った。

共同通信 今日の点検はどこまで進んでいるのか。
森田 ここにきちゃったので火工品確認作業終了は確認していません。

鹿児島テレビ 
森田 固体ロケットは町と二人三脚。内之浦の皆さんの協力なくしては成立しない。打ち上げ時の自宅からの待避など大変な負担をおかけしている。

鹿児島テレビ これまで天候で延期ということが多かったが、本当に明日の天気は大丈夫か。
森田 意気込みで悪い天気予報をここまでもってきた(笑)。台風も昨日みんなで進路が曲がるようにみんなで念力をかけました。

毎日新聞 澤井さんに。小型衛星の動向をどう考えるか。
澤井 私は未来は明るいと考えている。技術の進歩でより小さな衛星で同じことができるようになりつつある。光学系のようにサイズが大きくなると性能が上がるので大きな衛星で勝負せざるを得ない。大型と小型ではっきりと分かれるのではないか。
毎日新聞 衛星が撮影した画像はいつ頃公開されるのか。
澤井 11月です。しかし科学観測に特化しているで、あまりきれいな星の画像が出てくるというわけではありません。

森田 天気について、先ほどちょっと精神論を述べたが、打ち上げ隊としては慎重に構えて天候判断していきたい。

以上です。


No.1704 :イプシロンロケット試験機打ち上げ中止原因究明・対策結果および特別点検状況についての記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月12日(木)01時48分 投稿者 柴田孔明

2013年9月11日午後、イプシロンロケット試験機打ち上げ中止原因究明・対策結果および特別点検状況についての記者説明会が内之浦宇宙観測所で開催されました。

・説明者
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 森田泰弘
宇宙航空研究開発機構 信頼性統括/技術参与 (イプシロンロケット試験機特別点検チーム チーム長) 武内信雄

・原因究明対策の結果及び特別点検の状況について
 (※JAXA配付資料より、主に特別点検関連を抜粋)

 ・対策と水平展開
  1.本事象への対策として、LSCでの姿勢監視をOBCの姿勢計算値の受け取り後に開始するよう変更した。(※LCS:地上装置、OBC:ロケットの搭載計算機)
  2.今回の事象を踏まえ、通常の点検では実施しない詳細なレベルの活動を、注意深く徹底的に実施することとした。具体的には、機体が正常であることが適切に監視でき、かつ誤検知による打ち上げ中止が生じないよう、監視項目選定の妥当性、正常判定範囲および監視時間について、これまでに延期時及びシーケンス試験・点検で得られた最も詳細なデータに基づき、全ての監視項目について再確認した。
  3.さらに、打ち上げに向けて万全を期すために、信頼性統括を長とする特別点検チームを設置し、打上管制隊とは独立的に打ち上げ準備状況の再点検を行った。
  4.再点検期間に実施したロケットの外観点検において、フェアリング断熱材の一部接着不足を確認したため、補修作業を実施した。
 
 ・対策と再点検の妥当性確認
  本事象への対策と水平展開、及び特別点検チームによる再点検の妥当性を確認するために、シーケンス試験を9月5日に、シーケンス点検を9月8日に実施した。
  結果は以下の通りであり、イプシロンロケット試験機の打ち上げに向けて、対策及び再点検の妥当性が確認できた。またフェアリング断熱材の一部接着不足についても処置が完了したため、打ち上げ準備作業を再開する。

  1.シーケンス試験(2013年9月5日)
  整備塔内に機体を置いた状態で、テスト用の機体搭載ソフトウェアで自動カウントダウンからフライト以降のシーケンス(X−70秒〜X+5290秒)を実施。熱電池駆動と固体モータサイドジェット(SMSJ)点火を除く自動停止項目の検証を実施し、監視項目の見直し結果が妥当であることを確認した。併せて、機体の電気的作動・ノズル駆動の健全性確認を行った。
  ※試験後の評価において、判定の余裕を確保するために正常判定範囲の修正が必要と識別された2項目については、シーケンス点検前に修正を行った。
  (※テスト用の機体搭載ソフトウェア:実際の飛行と違い、試験中はロケットの姿勢等が変わらないため、ノズルの駆動などを抑制している)

  2.シーケンス点検(2013年9月8日)
  ランチャを旋回させて機体を射点に置いた状態で、フライト用の機体搭載ソフトウェアで自動カウントダウンシーケンス(X−70秒〜X−5秒)を実施。熱電池を駆動して計画通り打ち上げ5秒前に自動停止した。SMSJ点火を除く自動カウントダウンシーケンスについて、姿勢誤差異常検知を含み正常に動作することを確認すると共に、打ち上げに向け手順書の確認、各系の連携及び習熟度の向上を図った。
  ※シーケンス点検後に、監視項目データを評価した結果、監視設定が監視項目要求に対応していない2項目の修正を行うこととした。

・特別点検チームによる再点検
(1)特別点検チームの設置目的
 イプシロンロケット試験機の不具合による2度の打ち上げ延期を受け、プロジェクト外の知識・経験を結集して徹底的な点検を行い、イプシロンロケット試験機打ち上げ成功に向け万全の対策をとる。
 ※平成25年8月30日:イプシロンロケット特別点検チームを設置

(2)点検の基本的な進め方
 独自の視点で打ち上げ準備状況を点検し、懸念事項を洗い出し、打上管制隊と共同で検討の上、対策が必要な場合、その対策結果を確認し、妥当性を評価する。

(3)特別点検チームの視点及び点検・提言事項
 【視点1】ロケットと地上設備を含む全系確認の拡充
  1.自動停止監視項目設定の見直し
   ロケットの自動停止に関する監視項目について、地上設備での正常判定範囲および監視時間を見直すこと。この効果はシーケンス試験、シーケンス点検で確認した。
   シーケンス点検のデータは確認中。

  2.打上イベントに関する確認範囲の拡充
   ロケットの打ち上げイベントを自動カウントダウンシーケンススタート以降、可能な限り実施して確認範囲を拡充すること。このためシーケンス点検をX−18秒から、熱電池起動を伴うX−5秒まで拡充してロケットの健全性確認がより進んだ。
   自動停止監視項目に関しては17点ほど変更している。これはノイズなどで正常なものを止めることが無いようにしたもの。

 【視点2】打上管制隊各部門間の連携・習熟度の向上
  1.打上管制隊各部門が参加するドライランの実施
  このドライランはシーケンス点検に先駆けて実施され、全系の連携・習熟度向上に寄与した。
 【視点3】その他、チーム長が必要と判断する事項
  1.フェアリング断熱材一部接着不足の是正策
   今回の打ち上げに支障がない適切な対策になっていることを確認した。
  2.衛星健全性確認の前倒し
   打ち上げシステム全系の健全性確認を最終確認審査前までに行うため、衛星の健全性確認を前倒しすること。この確認は9月9日に実施され、結果は良好であった。


・質疑応答/内之浦会場
南日本放送・9月14日打ち上げに向けての総合評価はどうか。
武内・まだ打ち上げ日が決定した訳ではない。提言に対しての対応については問題がないが、点検中のデータの確認が残っている。念には念を入れている部分がある。

鹿児島テレビ・前回の中止の原因である「百分の7秒の見落とし」は、これはあり得るものなのか。再発防止策は行ったか。
武内・実際に見落としたのは現実であるが、気がつくべきタイミングはあった。見落とし対策は、自動停止監視項目設定の見直しで点検チームが確認した。点検チームの経験を反映している。

NHK鹿児島・フェアリングの断熱材で見つかった接着不足が放置され、このまま打ち上げていた場合はどうなるか。これは見落としなのか。
武内・実際に気がつかないまま飛んでしまった場合の解析はしていない。直す方が重要であると考えた。

読売新聞・フェアリングの接着不足の原因は何か。
武内・施工でつけ方が難しい場所。製造工程と要件でうまくいかなかった。

読売新聞・百分の7秒のずれ対策について。
森田・受け側・送り側の両方で対策した。地上のコンピュータがデータの時刻を見るようにした。また、200msの余裕をもって監視を開始するようにした。

毎日新聞・自動停止監視項目の見直しだが、17項目か。
武内・17項目が19項目になった。

毎日新聞・どういったタイミングなどを直したかの例。
森田・ロール角はデータが来てから監視するようにした。監視の設定値については、たとえば電流のモニタで、ノイズが入った場合に誤判定をしないように多めにとるような変更をした。

毎日新聞・フェアリングの接着不具合はどこか。
森田・イプシロンのフェアリングはコーン部とシリンダー部が結合されていて、半割りになっているが、結合部分の細い部分で見つかった。シリンダー部で1カ所、コーン部で数カ所。

時事通信・17項目の変更だが、数値を増やしたことで作業への影響は無いのか。対応していない2項目については、リハーサルで出てきたものなのか。
森田・監視を緩くしたが、これはノイズの影響を考慮したもので、不具合を検出しなくなるものではない。2項目は点検範囲を広げた結果見つかっている。
武内・データの点検の中でみつけた。点検チームが入ったことで、深みに行ける効果があった。

・東京会場
NHK・フェアリングの問題について、これは失敗に繋がりかねないものだと思うが、早めに見つける事が必要があったのではないか。
武内・ちゃんと直して飛ばすことである。早く見つけるのは必要だったと思う。

NHK・総点検で見つかった事に対してどう思われるか。
森田・イプシロンは旧宇宙研と旧NASDAの二つの文化を融合させて進めてきた。7年の研究開発で力を発揮してきた。更に延期になり特別点検を行い深く広く点検したことで、自信が更に深まったと感じている。

時事通信・修正した項目は、タイムスタンプを見て確認するということか。
森田・タイムスタンプの確認に加え、チェックの開始時間を変更した。

時事通信・もし200msを超えた場合はまた止まるのか。
森田・OBCのタイムスタンプを見て監視が始まるため、そういった事は無い。

時事通信・思いが至らなかった点について、旧宇宙研の造り方と違ったことなどがあるのか。
森田・それは違う。我々は世界初の革新的なことをやっている。自動監視の項目は1500件、70秒前からの自動シーケンスでも300件あり、これはISASにもNASDAにも無い、新しいイプシロンだからこそやっている事である。人間がやったらパソコンが30台、人が60人は必要。イプシロンはパソコン2台と3人でやっている。人力で300件を確認すると2〜3時間かかる。イプシロンは70秒でできる。不具合を乗り越えないと新しいものができない。これまでの文化は関係ない。新しい文化の、産みの苦しみである。

共同通信・フェアリングの断熱材の接着不足だが、部品の簡略化との因果関係はあるか。
森田・組み立て工程や部品を簡単にした事とは関係ない。ウレタンを外に貼っている工程。しかも細部の寸法調整で起こったもので、弱いところがあるという程度。直ちに脱落するようなものではない。事前に直して飛ばすことになる項目。

共同通信・監視項目要求に対応していない2項目の内容。
森田・あまり詳しく言えないが、監視開始時刻の設定で遅れ時間に不適切なものがあった。もうひとつは監視項目であったが、監視を行っていなかったもの。これは電流のモニタで、他の部分でやっているので監視できているが、念のため。

共同通信・フェアリングの断熱材だが、作る際に接着剤などの基準は。
森田・いろいろなものがあり、実際に真空で確認するものがあるが、今回のように小さくて試験が難しく、工程で確認するものもある。工程保証が難しいものではない。

共同通信・見つかったのは新たな調査でみつかったのか。
森田・通常の現場ではやらない特別な調査で見つかった。注射器のようなもので補修した。

共同通信・すぐ脱落しないものだが、もし気づかずに飛んでも支障はなかったのか。
森田・非常に小さい断熱材で、脱落して機体に影響するケースを事前に解析しにくい。事前の対策を行うことになる。

日経BP・シーケンス点検とシーケンス試験で見つかった問題は同じか。
森田・それは違う。

日経BP・自動監視が19項目になったということはどういうことか。
森田・これはシーケンス点検で見つかった。シーケンス点検前に17項目の変更が既にあり、点検後に2つ追加になった。

日経BP・監視時刻だが、タイムスタンプつきのデータは地上(LCS)と搭載(OBC)との時間差が最大200msあるということか。
森田・そうではない。搭載機器のデータの時刻を見て判定する。また監視をX−19秒と200ms後に開始する。

日経BP・点検のチェック項目があったのか。
武内・点検項目は決まっているので、いまのもので大丈夫であるかを確認した。チェックの結果、疑義があるものは確認して調整した。

産経新聞・00.7秒のずれに対する考慮が無かったのは、プロフェッショナルでもわからなかったものか。
森田・私の感覚では物凄く新しいものを作っている中で、極めて単純なところで問題が出た。この点についてはしっかり気づいていればと個人的に思っている。しかし、こういったものを乗り越えないと新しいものはできない。新しいものは簡単にはできないという、自分達の戒めにしたい。

産経新聞・今回、1回しか使えない熱電池を駆動した。以前はこれの事前のテストは行わないとしていたが認識を変えたのか。
武内・Hシリーズで使っており自信のある部分だが、この期に及んで念には念を入れて確認したところである。

NHK・姿勢監視の開始時刻を変更したことについて、固定値で簡単に説明できないか。
森田・厳密には、70msは固定値ではなく演算の処理時間で変動する値である。搭載機器から時刻を送って確認する。

NHK・交換用の熱電池は準備していたのか。
森田・熱電池起動後に緊急停止する可能性は常にあるため、いつも用意している。ミューロケットの頃も同様。

NHK・19項目の修正だが、これは70秒前からの300項目の中のものか。
武内・X−70秒〜0秒の範囲外のものもある。
森田・自動点検開始前、約1350の監視項目うちの19項目である。

不明・特別点検チームの人数と、総計何日かけて点検したか。
武内・総勢25人。30日から開始している。

不明・25人はイプシロンチームに対してどれくらいになるか。
森田・イプシロンは専任が20人、併任が50人くらい。

不明・特別点検チームの構成は。
武内・ミューロケットやH-IIA/Bの経験者、ソフトウェア、電気系、射場などの現役関係者。部署が変わった等の理由でOBとなっていた人等も含む。

フリー大塚・ロール角2度について、何故2度なのか。絶対的な向きはどうなっているのか。
森田・ロール角2度の説明は難しいが、ロケットが発射台の位置に行く際、旋回の課程でロール角が変わる。発射台にセットされた時のランチャ方位角は110度。一方、飛行計画では初期のピッチ角・ヨー角、ロール角について、最初に定義・設定して打ち上げる。本来の初期ロール角の値は誤差ゼロになるが、整備塔の改修と飛行計画が同時期だったため一致していなかった。そのため112度に設定していた。なお、飛行には影響が無い。

フリー大塚・イプシロン2号機で、このずれは解消されるか。
森田・2号機は本来の110度になると思っている。

大塚・今回、また初期値を使うことは無いのか。
森田・閾値は決められたもの。1度から3度の間としてチェックしている。
(※この解答については後日となっている。なお、OBCは演算開始前もデータを送信しており、それがゼロ度となっている)


・内之浦会場
KYT・14日の打ち上げ予定に向けて、現在の可能性としてどうなっているか。また、2度の延期後だが自信など。
森田・最終点検が今日か明日には終わる。明日には点検結果が出る。天候の問題もあり、今は確率が言いにくい。
自信だが、多少の問題はあったが十分に力を出し切ってきている。さらに特別点検チームの力もあって数値では表せないような割り増しがあった。しっかり作業を進めて、成功をつかみ取りたい。
武内・経験者を集めてやるべきことをやってきた。

毎日新聞・前回はX−70秒からX−19秒まで監視が順調だったが、新たな2項目の追加項目はどこになるか。電流の監視が行われていなかったとのことだが、これはどこのタイミングになるか。
森田・自動シーケンス開始前の監視項目である。


なお、森田プロマネは2kgほど痩せたそうです。イプシロンチームの皆さん、お体には気をつけてください。
以上です。


No.1703 :イプシロンロケットのシーケンス点検 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月8日(日)15時02分 投稿者 柴田孔明

 先月27日に打ち上げが中止されたイプシロンロケットですが、新たな打ち上げ日設定に向けてシーケンス点検が9月8日に行われました。ランチャ旋回が10時35分頃で、X時刻は13時45分に設定されていました。
 今回は打ち上げ5秒前までを模擬した点検ですが、熱電池の起動を行わずに停止させています。
 (※打ち上げ後までを含むシーケンスを模擬した点検も、ロケットを出さない状態で既に実施されています)


No.1702 :記者説明時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月31日(土)05時38分 投稿者 柴田孔明

森田プロマネ(左)と、長田打上管制隊企画主任(右)


No.1701 :イプシロン試験機 打ち上げ中止の原因究明記者説明会
投稿日 2013年8月31日(土)05時35分 投稿者 柴田孔明

2013年8月30日16時より、「イプシロン試験機打ち上げ中止の原因究明状況記者説明会」が内之浦宇宙空間観測所で開催されました。

・[説明者]
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 森田泰弘
・[説明補助者]
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 鹿児島宇宙センター 射場技術開発室長(打上管制隊企画主任) 長田弘幸

・森田プロジェクトマネージャより
 待望のイプシロンロケット打ち上げが発射直前で緊急停止したことで、全国の宇宙ファンのみなさん、内之浦の皆さん、現地に応援に来てくださった皆さん、JAXA放送等で全国から応援してくださった皆さん、報道陣の皆さん、いろいろな方にご迷惑をおかけして申し訳ないと思っています。MVロケットから7年が経過し、いろいろな方の応援でようやくここまでこられた。確実に成功するように今後もしっかり作業していきますので、今後も応援をお願いいたします。

・打ち上げ中止の経緯
 1.13時45分00秒の打ち上げに向け、打ち上げ時刻の70秒前に自動カウントダウンシーケンスを開始した。
 2.打ち上げ20秒前に地上装置(LCS)からの信号でロケットの搭載計算機(OBC)を起動。1秒後にOBCがロケットの姿勢計算を開始した。
  ※LCS:イプシロンロケットの点検・打上げを遠隔で操作するための地上設備であり、ロケットの発射点であるM(ミュー)台地から約2km離れた宮原地区のイプシロン管制センター内にある。いわゆるモバイル管制装置。
  ※OBC:イプシロン搭載のオンボードコンピュータ。
 3.LCSでは打ち上げ19秒前から姿勢データの監視を開始したが、ロール姿勢異常を検知して自動停止した。

・現時点で判明している原因は以下のとおりである。今後、さらに詳細な原因究明を行う。また、他の原因がないかを時間をかけて検証する。

 1.地上装置(LCS)による監視が、搭載計算機(OBC)の姿勢計算開始より約0.07秒早かったため、(地上装置が正しいデータを受け取る前に)姿勢異常と判定し、自動停止した。
 2.異常データが示された場合に即座に自動停止がかけられるように監視時間を厳しく設定していたことに加え、搭載計算機と地上装置の時間のずれに配慮できていなかったことが原因で、深く反省しているところである。
 3.8月20日と21日に実施したリハーサルでは、打上げ18秒前までのカウントダウンシーケンスを流してシステム全体の確認を実施したが、本件については以下の理由により検出することが出来なかった。
  ・8月20日のリハーサルでは、初めてロケットを搭載した状態でランチャ旋回を実施して、姿勢データを取得した。その結果、地上装置の監視設定値が適切ではないことが判明したため、自動停止項目から除外した。
  ・8月21日のリハーサルでは、監視設定値を適切に変更したが、天候不良によりランチャ旋回を行わず、カウントダウンシーケンスを模擬した。
 4.リハーサル終了後に、 取得データの評価により監視設定値の妥当性を確認したが、約0.07秒の微小な時刻ずれまでには思いが至らなかった。

・対応状況
 本事象への対策として、これが今回の原因と確定すれば、搭載計算機と地上装置の時間のずれを考慮した監視時間に変更する方向で検討を行う。
 併せて今回の事象を踏まえ、他の監視項目で似た事例がないかなど、徹底的に再点検を行い、次回の打上げに向けて万全を期す予定である。
 既に2回目の延期のため、単に直接原因の対策では済まされず、JAXAの総力をあげて総点検を行い、より成功確率をあげていく。総点検の結果をふまえて、あらためて対策を行い、打ち上げ作業の再開を行うため、今日の所は打ち上げ時期は決められない。


・質疑応答
KTS・打ち上げ時期は決められないとのことだが、ウインドウ(9月30日まで)のどこになりそうか。文部科学大臣は9月の早い時期に打ち上げたいと言っていたが。
森田・物凄く難しい。総点検の方法や実施、結果の反映のため、どのくらいになるかが読めない。大事な初号機なので、絶対成功が目的であり、時期を足枷にしない。

読売新聞・0.07秒のずれとは、どういった原因なのか。管制室までの距離が長くなったためなのか。
森田・地上のコンピュータから搭載コンピュータに起動の命令を出すが、そこに伝達するまでに時間がかかったと考えている。距離も原因としてあり得るが、演算処理の遅れもあるため、原因は一つではない。

共同通信・20日のリハーサルでは適切ではなかったというが、その時点で0.07秒の問題が出ていなかったのか。
森田・その時点で識別できていなかったが、その後の解析でずれが起こっていたのは確認している。はっきり言うと、見落としていたことになる。27日の夜、発射の自動シーケンス停止後の解析で気づいた。

共同通信・打ち上げ時期は、ウインドウ(9月30日)を超える可能性はあるか。超えた場合はどうなるか。
森田・再点検の結果による。ウインドウ内に上げる努力をしたい。期限を過ぎた場合、新たなウインドウの設定をすることになる。

産経新聞・0.07秒のずれだが、これに許された時間はどれくらいか。これまでの例はどうだったか。
森田・もともと監視を厳しくして、時間差が無いものとしていた。半分でもいいというものではなく、十分に小さいものでなくてはならなかった。この判定は初めてなので前例は無い。

共同通信・地上の機器は最新だったと聞いているが、搭載機器も最新も最新のものだったのか。
森田・ジャイロやコンピュータなどは、H-IIA用の機器をイプシロン用にマイナーチェンジしたもので新しいものである。また、この転用が問題の原因ではない。

産経新聞・再リハーサルは行うか。
森田・それも含めて検討中です。

南日本放送・20日の段階で、既にずれが生じていたのか。
森田・その通りでずれが起こっていた。必ず起こる、再現性がある。

南日本新聞・総点検のプロジェクトチームのメンバーはどうなるか。
長田・我々打ち上げ隊も関係者なので、打ち上げに関係していないJAXAの各部門から集めて、違う視点でやってもらう。既に有識者のレビューを始めているが、それ以外の方でこれからJAXA内部の他の部署で行うことになる。

南日本新聞・現時点で他の問題・不具合があるか。
森田・現時点では無い。

KYT・0.07秒のずれだが、19秒前に行うのは、地上側(LSC)が早かったのか。
森田・そうである。機体側のデータがまだ来ていない状態である。

KYT・20日の監視項目は緩かったのか。
森田・整備塔からランチャを旋回させたが、角度の初期値が、搭載のものと2度ずれていた。そのため閾値を変更した。

KYT・考慮した時間にするのは、監視を緩めるということか。
森田・緩めるのではなく、監視の開始タイミングを変える。

南日本新聞・20日と21日のリハーサルが想定通りに行われていたなら気づいていたか。
森田・大変悔いが残るが、雨が降らずにやれていれば検出できた。

南日本新聞・21日のあとにもう一回リハーサルをやることは考えなかったのか。
森田・それをやると打ち上げ日が遅れる。このチェック項目は単純なので、あとでデータを人がチェックすれば良しとしていた。

毎日新聞・0.07秒のずれが生じた理由は。
森田・主要なファクターとして、搭載機器の伝送経路にあるコンピュータの処理時間である。LCSからOBCに命令が届くのが0.07秒遅れた。

鹿児島テレビ・この0.07秒の遅延は必ず生じるのか。
森田・その通り。

鹿児島テレビ・この0.07秒だが、伝送時間を考慮していなかったということか。
森田・打ち上げ20秒前にLCSから起動信号を送り、19秒前にOBCからLCSに姿勢データを送るのだが、OBCが打ち上げ19秒前としていた時刻は、LCSより0.07秒遅かったことになる。
これはランチャを旋回しないと判明しなかった。

鹿児島テレビ・資料の「思い至らなかった」という表現について、どういう意味か。
森田・気づける人がいれば気づいたという意味である。

西日本・20日に自動停止の項目から除外していなければ気づけたのか。
森田・適切でない値のため、正しく監視できないとして外していた。この時点で正しい項目であったなら、気づいていた。

読売新聞・これは伝送ロスか、それとも演算処理の問題か。
森田・物理的には両方ゼロではないが、今回の0.07秒は伝送ロスではなく、主要なファクターとして伝送路にあるコンピュータの演算遅れと考える。

・東京会場
時事通信・0.07秒の遅れでは、仕様で盛り込んでいないのか。他の部分では起こらないのか。
森田・仕様として抜けていたのが正直なところ。設計には誤りが無いが、監視のタイミングの設定について遅れがある点が抜けていた。

時事通信・点検項目を20日のリハーサルでは外し、21日には悪天候で旋回しなかったということで、点検項目の漏れをチェックする仕組みはなかったのか。
森田・これは漏れではないと考える。ログの分析によりリハーサルを行った時と同様に確認ができると考えていた。確認の観点として不十分だった。

フリー大塚・0.07秒の遅れは片道か、往復のものか。
森田・片道のみで0.07秒である。OBCの起動以降はデータにタイムスタンプがつく。

フリー大塚・どんな機器が遅れたのか。
森田・主要な要因としてROSEを経由した際に遅れた。伝送経路の細かい要素の影響は小さい。

フリー大塚・20日のリハーサルで、監視設定値が適切でないのは、いつ気づいたのか。
森田・リハーサルの直前であった。もともとはゼロを中心としてプラスマイナス1度だが、正しくは2度を中心としてプラスマイナス1度、つまり2度から3度が正しい。

フリー大塚・27日にロール軸の閾値を超えたとあるが、0.07秒の遅れとの関係はどういったものか。ピッチとロールの値はゼロなので問題が出なかったということか。
森田・発射の瞬間の監視設定値は1度から3度に設定されていた。旋回後は2度になっていて、演算開始後にこれが範囲内だとして合格するのが正しいプロセスである。これが0.07遅れたため、演算前のゼロが来てファールとなった。ピッチとロールはもともとゼロで、遅れがあっても問題とならなかった。

日経BP・18秒前までしかリハーサルができない原因として熱電池の問題があるが、これのコストは。リハーサルでこれを使った場合は。
森田・コストは今データが無い。ただし熱電池の問題はコストではなく、準備期間である。火薬で電力を発生させるもので1回しか使えず、取り替えるのに最低でも2日かかる。これはMVロケットの頃から同じ。

日経BP・2日で交換できるならやった方がいいのではないか。
森田・熱電池は1回で使えなくなるため、実物での試験にはならない。

日経BP・熱電池を起動させれば、その他の部分の稼働は確認できるのではないか。
森田・例えばロール角の試験はランチャの旋回が必要だが、熱電池についてはランチャを出さなくてもできる。熱電池はロケットの組み立て工程でも試験ができる。いつ試験しても同じなので、なるべく早い時期に試験にするべきとの観点から工場で行っている。

NHK・リハーサルでトラブルがあったが、この遅れを見落とした原因は。他の問題の影響か。
森田・他のトラブルがあって見落としていたのではなく、監視項目で遅れを考慮していなかったため。

NHK・この数値を見る人はいなかったのか。
森田・人が見るよりも、自動監視のプロセスが通るか通らないかでやってきた。ロール角が0度でもOKという試験をしてしまったため、時間差が問題にならなかった。

NHK・0.07秒の遅れについて、通信の時間を想定していなかったのか、想像以上に時間がかかったのか。
森田・前者です。

東京新聞・自動停止の原因はROSEの遅延を考慮していなかったのか。
森田・ROSEだけでなく、OBCの中でも遅延があり、ROSEの有無にかかわらず今回の事象が起こったと思われる。

東京新聞・MVではどうだったのか。
森田・MVでは自動判定が無く、人がやっていた。

東京新聞・遅れがあったまま発射したらどうなっていたか。
森田・難しいが、仮に発射しても飛行自体には影響は無かったであろうと考えている。

東京新聞・延期に伴い費用の増加について。
長田・今正確な金額は出ないが、トラブルシュートの人員や、新たな打ち上げ日設定により陸上や海上が要因のお金がかかり、当初の27日の時よりも費用が増えることになる。

読売新聞・これから遅れを考慮した監視時間になる訳だが、ハードでは無理なのでソフトで対策するという意味なのか。
森田・これら監視設定値はもともとソフトで設定するものである。

読売新聞・イプシロンで新たに開発した機能に問題が生じたということか。
森田・人の思いつかない部分を指摘するという点で十分に機能した。こういった件を乗り越えていかないと、しっかりしたものができない。

読売新聞・今後、2号機以降への影響はあるか。
森田・コンピュータには問題は無い。監視システムのソフトの問題である。2号機のハード変更は必要ない。

朝日新聞・LCSにデータが戻るときの遅延はあるか。
森田・タイムスタンプがデータに付くのでそれは無い。

朝日新聞・打ち上げ中止により交換が必要なものはあるか。
森田・検討を進めているが、ただちに交換するものは無い。時間が経過すると再度点検が必要な物があり得るので洗い出しをしている。

朝日新聞・中止により衛星への影響はあったか。
森田・イプシロンは発射の直前まで清浄度の高い空気を送れるので問題は無い。

共同通信・0.07秒の問題だけに限定すると対策は難しくないのか。
森田・その通りで、多少の手直しで済む。対策と検証は1日か2日で済む。しかし2度目の延期なので、他の事象の確認を行う時間が必要。

共同通信・再点検では機体を分解して点検するのか。
森田・リハーサルで今回の事象以外を既に確認しているので、リハーサルで抜けている項目が無いか、Xマイナス18秒以降で問題が無いかを点検する。ロケットを分解するようなことは無い。

NHK・いくつかのコンピュータの遅れで0.07秒が送れたとのことだが、具体的にどこの部分で遅れたのか。
森田・大きな遅れはROSEの中の通過と、OBCの入り口で命令を受ける部分である。

NHK・ROSEに問題があったということか。
森田・そうではない。ROSEの通過とOBCの受けで遅れが発生するのはもともと避けられない。

NHK・当然ある遅延を事前にわからなかったのか。
森田・自動監視において、遅れを反映できていなかったのは事実である。

日本放送・打ち上げ前の会見で自信の大きさについて不安が小さいとおっしゃっていたが、小さい不安について、これはリハーサルでランチャ旋回ができなかったことか。
森田・今回のリハーサルで見過ごされた部分に対策を行い、さらに視野の広い特別点検をすることで、イプシロンに対する自信は揺るがない。

日本放送・打ち上げ中止後の見通しと、今の思いとの違い。
森田・打ち上げ中止後は、現象の特定もできるので、すぐ打てるだろうと思っていた。ただし、ここに事態が至ると不具合を直せばいいというものではなく、直接原因の対策だけでなく、隠れたものがないか第三者も含めて冷静にしっかりやっていかねばならない。

日本放送・見通しが甘かったことの認識はあるか。
森田・はやる気持ちを抑えきれなかったことはあるが、この事象に対策するだけでなく、しっかり仕切り直しをして、あらゆる事をやり尽くして打ち上げに臨むことがいちばんいい事となる。

フリー秋山・今後の対策として信号が届いてから監視するのか。
森田・その通り。届くタイミングで監視が開始するようにする。

フリー秋山・別の理由で問題が発生して全くデータが届かない場合、また停止するのか。
森田・監視開始の時刻を変えるだけなので、他の障害が発生するものではない。

ライター喜多・チームの皆さんは凹んでいないか。リーダーとしてモチベーションの維持はどうするか。
森田・8月27日に向けて緊張しつつ休み無くやってきたが、総点検で精神的には厳しい。しかしもともとの目標は、イプシロンの打ち上げ成功である。あと何日かかるか判らないが、7年間の苦労に比べれば頑張りきれるのではないかと考え、しっかりリードしていきたい。

・内之浦会場
産経新聞・慎重に行うとの趣旨だが、各方面の準備があるので、最速でどのくらいの期間がかかるかお聞きしたい。
森田・現時点では特別点検が始まる前であり難しい。しかし時間を無制限にかける訳ではない。

共同通信・ロケットでOBCの位置はどこか。
森田・イプシロンの計器部(3段目)だが、初号機はオプション形態で4段目があるので、その一部にある。姿勢センサと同じ位置である。

共同通信・有識者の数はどれくらいになるか。
長田・これからチームリーダーが人選して決めることになる。十数人規模になると考える。

以上です。