宇宙作家クラブ
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No.1809 :超小型深宇宙探査機PROCYONミッション概要説明会および機体公開(その2) ●添付画像ファイル
投稿日 2014年11月5日(水)18時36分 投稿者 渡部韻

ISAS 川勝康弘 准教授


No.1808 :超小型深宇宙探査機PROCYONミッション概要説明会および機体公開(その1) ●添付画像ファイル
投稿日 2014年11月5日(水)18時36分 投稿者 渡部韻

11月5日、東京大学で超小型深宇宙探査機「PROCYON(PRoximate Object Close flYby with Optical Navigation)」ミッション概要の説明会および機体公開が行われました。登壇者は東京大学の船瀬龍准教授(写真)、ISASの川勝康弘准教授です。

世界初の「50kg級の超小型探査機での深宇宙探査」実現を目指したPROCYONは、「はやぶさ2」の相乗り衛星として11月30日に種子島より打ち上げられ、1年間地球近傍で太陽を回った後地球スイングバイで地球近傍の小惑星へと向かい、小惑星のフライバイ観測を行う中で「GaN(窒化ガリウム)高効率X帯アンプ等の小型・軽量な深宇宙通信システム」「深宇宙で探査機の軌道を高精度で決定するVLBI航法」「小惑星の近接・高速フライバイ中の高分解能観測」といった深宇宙探査技術を実証予定です。

PROCYONは東京大学、北海道大学、東京理科大学、明星大学、立教大学、ISAS他が開発した搭載機器を東京大学がとりまとめる形で開発が進められ、特にISASはこれまでの深宇宙探査機開発の経験を元にコンポーネント開発だけでなく打ち上げ後の運用等も支援しています。開発期間は2013年9月の相乗り打ち上げ決定から約1年と非常に短期間でしたが、東京大学発のほどよしプロジェクトの成果および設備を最大限に利用することで機器開発期間を最大限に圧縮しました。

推進系にはほどよし衛星用に開発されたイオンスラスタ(軌道制御用、低加速度&高比推力)と機体各部に設けられたコールドガスジェット(軌道制御用、高加速度)、リアクションホイールアンローディング(姿勢制御用)を組み合わせた統合推進系を採用しています。コールドガスジェットはイオンスラスタ用のキセノンを(圧を下げる前に)分岐して使用しています。

PROCYONの目標天体は太陽からの距離(太陽電池の発生電力および温度に密接に関係)や安定した通信の確保を考慮して地球から1.5天文単位までの小惑星が対象です。現在10個ほど候補にあがっていますが、最終的に決定するのは、打ち上げから一ヶ月ほど経ってから運転を始めるイオンエンジンの性能評価後になります。またミッション期間は最短で1年半(1年後に地球スイングバイ+小惑星まで半年)、対象天体によっては2年半(もう1年太陽を回ってから地球スイングバイを実施+小惑星まで半年)が想定されています。

小惑星のフライバイ観測では、従来STARDUSTなど大型探査機によるフライバイ観測では天体への衝突の可能性やダストの影響等を考慮して高度200km程度(空間分解能15m程度)からの観測でしたが、PROCYONでは天体表面から数十キロの超近接・高速フライバイ撮影を目指しています。フライバイ撮影に用いる望遠鏡では光学系に小惑星を追尾する駆動ミラーを組み込むことで分解能の向上が図られています。

また理学ミッションでは、アポロ16号以来42年ぶりとなるジオコロナ(地球高高度に広がる水素大気の発光現象)の全球撮像を行うことで、ジオコロナの分布および地球スイングバイまでの1年間(場合によっては2年間)の変化を捉えることが期待されています。

なおPROCYONはこの後筑波で他の相乗り衛星2機と共にインテグレートされた後、種子島へと運ばれます。


No.1807 :はやぶさ2 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月28日(火)00時07分 投稿者 柴田孔明

打ち上げまであともう少し。


No.1806 :インパクタとターゲットマーカー ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月27日(月)23時59分 投稿者 柴田孔明

今回ははやぶさ2の下部に鏡が用意され、インパクタとターゲットマーカーを見ることができた。


No.1805 :イオンエンジン側から ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月27日(月)23時56分 投稿者 柴田孔明

イオンエンジン側


No.1804 :はやぶさ2 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月27日(月)23時55分 投稿者 柴田孔明

種子島宇宙センター第1衛星組立棟で報道公開された「はやぶさ2」。
燃料の充填が行われていないのと、保護カバーがついているだけで、ほぼフライト時の状態になっています。このあと燃料充填と最終的な検査の後、H-IIAに搭載されます。


No.1803 :小惑星探査機はやぶさ2の公開・種子島 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月27日(月)23時52分 投稿者 柴田孔明

 2014年10月27日13時より、種子島宇宙センターで小惑星探査機「はやぶさ2」の機体公開と概要説明が行われました。先日、相模原キャンパスで行われた報道公開(2014年8月31日)の時よりも機体の準備が進んでいます。
 この「はやぶさ2」はH-IIAロケット26号機に搭載され、2014年11月30日13時24分48秒(日本時間)に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA 月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム 
 プロジェクトマネージャ 國中 均

・概要説明
・「はやぶさ2」射場準備状況
  9月20日:相模原キャンパス搬出
  9月22日:種子島宇宙センター第1衛星組立棟搬入
  ※搬入後から現在までの主な作業
   :燃料タンク気密試験
   :再突入カプセル、分離カメラ、サンプラーホーン取り付け
   :キセノン充填
   :電気性能試験
   :無線通信試験
   :衝突装置(インパクタ)爆薬取り付けなど
  10月27日:探査機報道公開 質量測定
  ※今後の予定
   :燃料、酸化剤充填
   :最終外観検査
   :ロケットへの搭載・結合

・「はやぶさ2」の目的
 1.科学的意義 「我々はどこから来たか」−太陽系の起源と進化、生命の原材料の探求。
 2.技術的意義 「技術で世界をリードする」−日本独自の深宇宙探査技術の継承と発展。
 3.探査としての意義 「フロンティアへの挑戦」−科学技術イノベーション、産業、社会への波及、国際プレゼンス発揮、青少年育成等の効果…

・ミッション概要(航海の流れ)
 ・2014年冬 打ち上げ
 ・2015年11、12月 地球スイング・バイ
 ・2018年6、7月 小惑星到着
  ・小惑星のリモート・センシング
  ・小型ローバ・ランダの投下
  ・タッチダウン・サンプル取得(複数回)
  ・衝突装置放出→人工クレータの生成→人工クレータ付近からのサンプル取得の試み
 ・2019年11、12月 小惑星出発
 ・2020年11、12月 地球帰還(カプセルのみ再突入)

・はやぶさ2の技術(概要)
 ・数々の技術チャレンジが全て成立しないと成就しない「超・挑戦的計画」であった初号機ミッション。
 ・多くの困難に遭遇、それを知恵・努力で乗り越えた。
   ・3個中2個のリアクション・ホイールの故障。
   ・タッチダウン時の弾丸不発射
   ・ガスジェットの燃料漏れ、通信途絶
   ・イオンエンジンの全基機能停止
 ・「はやぶさ2」は、初号機の技術・経験を確実化し継承、さらに発展。本格的な宇宙探査・科学を実現できるシステムを構築することを目指す。
 ・「はやぶさ2」は、地上管制システムと一体となった、自律機能を備えた遠隔操作ロボット探査システムである。日本が誇る民生用技術を挑戦極限の世界へ挑戦することによりレベル・信頼性を高めて、民生品技術への波及効果も期待される。
 ・以下、主要技術の一例を世界の中での技術レベルや波及効果に触れながら記す。
  1.イオンエンジン
  2.自動・自律化技術
  3.初号機からの発展・改良

 ・イオンエンジン
  1.特徴・技術のレベル
   ・初号機の世界初の「マイクロ波放電方式」を継承。既実用化されている「直流放電方式」と異なり、プラズマ生成部に熱電子放出用陰極が不要で、寿命・信頼性に優れる。
   ・初号機で、地球/イトカワ間の往復航行を達成、4万時間(4台の合計)の運転実績を示した。
  2.2号機での改良点
   ・中和器:磁場の最適化により長寿命化をはかった。
   ・イオン源:イオン加速部の形状・推進剤供給方法の改良による推力の25%向上。
    (8mN→10mN)
  3.応用可能性
   ・化学推進の10倍の燃費効率。惑星間航行以外にも、静止衛星の軌道制御、低高度地球観測衛星の大気抵抗キャンセル用推進等への応用がある。
   ・企業と連携した北米での商用展開、並びにドバイ衛星への中和器搭載の協力を実施中。

 ・自動・自律技術
  1.特徴・技術のレベル
   ・往復40分の時間遅れ、アナログ電話級レート(8kbps)という通信環境の下、表面状態等が良く分からない小惑星に安全に着地し試料採取を行うために高度な「自動・自律機能」が不可欠。
   ・惑星探査の技術難易度4段階(フライバイ、オービタ、ランダ、サンプル・リターン)の最難関である無人の小惑星着陸・サンプルリターン技術は「はやぶさ」が世界初。
  2.2号機での特徴・改良点
   ・初号機の探査機自律と地上機能(計算機、運用者)の共同作業技術を発展・踏襲。
   ・具体的には、人間の総合判断・介入を制御ループの中に適宜入れる「遠隔操作」(GCP−NAV等)を広汎に取り入れている。また、小惑星の観察結果等を反映し、自律機能を効率的に変更・修正できるしくみ(GSP)を採用。
   ・初号機では着陸には成功したが、制御ソフトウェア設定のエラーにより弾丸発射に失敗した。2号機では、ソフトウェア検証を充実させ、確実度の高いシステム実現を目指す。
   ・さらに2号機では、小惑星観測データの科学的分析に基づき、科学的に価値が高い着地点を決定、人工クレータ周辺を含む狙った点への着地・サンプル採取を行う「ピンポイント・タッチダウン」も試みる。(「降りれるところに降りる」から「降りたいところに降りる」)
  3.応用可能性・期待される効果
   ・はやぶさ1、2の降下・着陸技術は、NASAが情報開示を要望する「日本の得意技術」。ミッションの成否や成果を大きく左右する先端技術を更に強化し、国際宇宙探査の我が国の取り組みにも繋げたい。

 ・初号機からの発展・改良
  1.衝突装置(Small Carry-on Impactor)
   ・宇宙風化を受けない内部物質の露出・採取の試み。
   ・インパクタ自身には誘導装置を省いて簡素化・軽量化。
   ・爆発成形侵徹体(Explosively Formed Projectile)技術の応用。
  2.Ka帯通信
   ・X帯(8Ghz)送受信に加え、Ka帯(32Ghz)送信(探査機→地球)機能を追加。
   (※8kbpsから32kbpsに向上)
   ・小惑星リモートセンシングデータの伝送量向上、伝送時間短縮による探査・科学の充実並びに、軌道決定精度の向上が図れる。
   ・国際的な深宇宙用周波数割り当ての変遷に対応した技術開発。
  3.信頼性の向上
   ・機器の冗長化(リアクション・ホイール:3台→4台。恒星センサ:1台→2台)
   ・化学推進系の燃料・酸化剤調圧系機能を分離。(「あかつき」不具合反映)

・はやぶさ2の科学
 ・太陽系の過去について
  ・太陽系の誕生と進化を解明する。
    ・どのような物質がどのような状態で存在していたのか?
    ・惑星はどのようにして誕生し進化したのか?
    ・生命の原材料(有機物・水)は何か?
 ・太陽系の現在について
  ・隕石のキャリブレーション(較正)をする。
    ・隕石と小惑星サンプルはどのような関係になっているか?
     ※膨大な数の隕石が収集されているが、これらは地球の大気や水等で汚染されているため、宇宙にあったときの状況を推定することが困難である。小惑星サンプルと比較することにより、隕石を貴重な試料に変えることができる。

 ・太陽系の誕生と進化を解明する
  1.惑星を作った物質を調べる。
   ・原始太陽系円盤にはどのような物質があり、惑星が誕生するまでにどのように変化したのか?
  2.惑星への成長過程を調べる。
   ・微惑星から惑星へ、天体はどのようにして成長していったのか?

・国際協力
 ・米国航空宇宙局(NASA)
   ・追跡・管制支援
   ・小惑星地上観測支援
   ・OSIRIS-REx(NASA小惑星探査計画)のサンプル提供等。
  ※JAXAはミッション運用への参加機会とサンプルを提供。
 ・豪州産業省(DOI)
   ・豪州への着陸許可の発行
 ・豪州国防省(DOD)
   ・着陸場所の有償利用
  ※JAXAは利用代金を支弁。
 ・ドイツ航空宇宙センター(DLR)
   ・追跡・管制支援
   ・微小重力実験支援
  ・フランス宇宙研究センター(CNES)
   ・MASCOT搭載科学機器の開発
  ※JAXAはDLRの小型ランダ(MASCOT)を搭載、小惑星に投下。

・質疑応答
毎日新聞・はやぶさ2の総開発費。初号機も。
國中・本年度まで289億円。ただしロケットのみの費用は開示できない。はやぶさ1は200億円で、これもロケット込み。

鹿児島テレビ・あらためて意気込みをお聞きしたい。
國中・なかなか難しい探査機だった。はやぶさ1から10年後であったこと、工期が短かったこと、2年半で仕上げることは大変な事業であった。協力いただいている企業様の努力と、トラブルを解決してきたJAXAのプロジェクトチームも関係企業と協力して頑張ってきたと私も自負している。いい探査機に仕上げることができたと自慢したい。

NHK・相模原での公開との違いはあるか。
國中・見た目はほぼ同じです。しかし燃料は入っていないが全て装着されている。インパクタも見える。完成直前で燃料を入れるだけの状態です。

南日本放送・はやぶさ1が注目され、はやぶさ2も注目されているが、そういった全国のファンの期待がある中での気持ちを伺いたい。
國中・計画通り粛々と作業を進めることが成功への近道。ロケット打ち上げは我々にとってスタートであり、帰還するまで2020年の7年間ものミッションである。本当の意味で完了するまで長く続く。ひとつひとつ精密に正確に成功させていく。

読売新聞・大きいプロジェクトのリーダーをやったことで大変だったこと、参考にしたことなど。
國中・2年半で探査機を完成させた。スケジュールはタイトだった。技術的トラブルがあったが、知見を備えた先生方がいて解決できた。日本が技術・産業力を持っている。とはいえ米欧の部品を使うこともあり、頼ることもある。トラブル時の交渉などが大変だが、日本から指摘して互いに間違いを認め合えるのは交渉のカードになる。従属的にならないこと。瑕疵を指摘できることで信頼を得ることができた。日本の50年の宇宙開発で蓄積があり、この探査機を完成できた。

日経BP・ミネルバの開発が遅れていたと聞いていたが間に合ったのか。苦労したところ。
國中・はやぶさ2にとってピギーパックのオプション機器。平成24年に開発を決めた際、日本国内の学会で公募。大学研究者グループがミネルバ2の2を開発。JAXAもロボット技術グループがミネルバ2の1(A、B)を開発。互いに協力して成立させた。
当初、はやぶさ2の搭載能力が決まっていなかったので、余力があればという条件でやってきた。搭載容量がわかってミネルバを搭載することになった。1キロ程度のロボットを成立させるため小さい部品でシステムを開発したため時間を要した。相模原で結合させるはずが、種子島で行ったほど。開発に成功して3基が搭載されている。

情報通信・はやぶさ1からの改良点で特に苦労したところ、プロマネでの立場で苦労したところをお聞きしたい。
國中・はやぶさ1、2の特徴だが分離ものが多い。今回はロボット4基、インパクタ、カプセル、DCAMなどたくさんある。分離ものはメカニカルで構成され、独自の電池があり、独自に機能する。それら全ての時期を合わせて完成させるのは難しかった。
これだけ難しい装置、いろんな技術を結集させて完成させることになる。大変多くのエンジニアの努力無くしては完成しない。プロマネとしては、個々の担当者が能力を発揮する環境を作っていくこと。しかし費用、納期、性能の条件を満たすための、要所要所でのプロジェクト判断は的確に行ってきたと思う。

朝日新聞・はやぶさ1のウーメラ帰還から4年での再スタートだが、今の気持ちは。今回のロケットはMVではなくH−IIAだが、これについてどう思われるか。
國中・宇宙ミッションは探査機作りではなく宇宙ミッションをすることに意義がある。ようやく全てを揃えることができた。よくやれたかなと思う。ただ、これはスタートラインに立ったところ。サンプルを科学者に送り届けることを履行したい。はやぶさ1はMVだった。今回はH−IIAだが、私の宇宙の活動は種子島のSFUの打ち上げから始まった。種子島で宇宙技術を勉強していった。そういった意味では原点に戻ったかなと思っている。

共同通信・はやぶさは非常に長いプロジェクトだが、モチベーションの維持はどうされてきたか、これからどう維持していくか。
國中・いろいろあるが、たとえばイオンエンジン技術は30年来の研究を行っていて、宇宙探査に使うため研究してきた。はやぶさ1の次の機会もあったことで私自身も嬉しい。しかし今回は若い人たちが関わって完成させることができた。私は一歩引いて、スーパーバイザとして経緯を見てきた。他にもいろいろあるが、はやぶさ1で努力した人が教育し託すことになった。正しい手順で、若い人がモチベーションを持ってやってきた。大変いい教育のロジックが働いた。
私としては、はやぶさ1はそれなりに往復探査ができたが、宇宙技術としては故障が多く幼稚だったと思っている。宇宙技術者として洗練され完璧なものを作らなくてはならない。2度目の探査で、より完成度の高いものを目指す。これがミッションを成功させようというモチベーションになる。

以上です。


No.1802 :ミッションマーク ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月20日(月)21時44分 投稿者 柴田孔明

段間部のミッションマークは「はやぶさ2」と「MASCOT」が見えた。
(※今回の撮影は柴田孔明)


No.1801 :H-IIAロケット機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月20日(月)21時41分 投稿者 柴田孔明

1段目の先頭と、2段目のエンジン側。


No.1800 :白い2段目 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月20日(月)21時40分 投稿者 柴田孔明

白い塗装の2段目。フライト中の水素蒸発量を低減する目的である。
(※広角レンズで撮影)


No.1799 :H-IIAロケット26号機1段目 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月20日(月)21時38分 投稿者 柴田孔明

公開されたH-IIAロケット26号機1段目。


No.1798 :H-IIAロケット26号機コア機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月20日(月)21時36分 投稿者 柴田孔明

 2014年10月20日午後より、三菱重工業株式会社飛島工場にてH-IIAロケット26号機の コア機体公開が行われました。H−IIAロケット26号機は小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載し、2014年11月30日13時24分48秒(JST)に種子島宇宙センターから打ち上げ予定です。
 (※コア機体とはH-IIAロケットの第1段機体と第2段機体を合わせた名称。そのためSRB−Aと衛星フェアリング、ペイロードは含みません)

(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
三菱重工業株式会社 宇宙事業部 技監・技師長 H-IIA/H-IIB打上執行責任者 二村幸基
三菱重工業株式会社 宇宙事業部 H-IIA/H-IIBロケットプロジェクトマネージャ 秋山勝彦

・計画概要
 ・目的
 1.小惑星探査機「はやぶさ2」を地球脱出軌道に投入する。
 2.打上能力の余裕を活用して、小型副ペイロード3基に対し、軌道投入の機会を提供する。
  ※小型副ペイロード
   九州工業大学「しんえん2」
   多摩美術大学「ARTSAT2−DESPATCH」
   東京大学(JAXAとの共同研究)「PROCYON」
  (※地球周回軌道ではないため、「はやぶさ2」を含めてペイロードと呼ぶ)

 ・コンフィギュレーション
  ・H-IIA202型(コア機体+固体ロケットブースタ(SRB-A)2本)
  ・直径4mシングル衛星フェアリング(4S型)
 ・打ち上げ時期
  ・打ち上げ予定日:2014年11月30日(日曜)
  ・打ち上げ時刻:13時24分48秒(JST)
 ・打ち上げ予備期間
  ・2014年12月1日〜2014年12月9日(10日間)
   (※打ち上げ予備期間の打上げ時刻は、打ち上げ日毎に設定する)
   (※予備期間では、毎日2分程度打ち上げ時刻が早まる)
 ・「はやぶさ2」は質量約600キログラムとH-IIAで通常打ち上げる衛星より軽いが、地球脱出軌道への投入のため、さほど余裕がある訳ではない。

 ・特記事項
  ・はやぶさ2ミッションの特徴に対応したロケット仕様を設定。
   ミッション時間が過去最長(約7000秒)であり、第2段機体仕様を長秒時フライトに対応させた。
    ・推進薬蒸発量低減対策:フライト中の水素蒸発量を、タンク断熱材表面に施工した白色塗装により低減させる。(※注:通常の断熱材は黄色かオレンジ色をしている。色の変化は時間の経過による)
    ・熱対策:温度変動を抑制するため、以下対策を実施する。
     ・慣性飛行中の機体ロール制御。(※バーベキューロール)
     →タンク側面への太陽光入熱を均等にするため。
     ・輻射断熱材(MLI)等の施工
  (MLI:Multilayer Insulator:多層断熱材)
 ・飛行計画:主要シーケンスより
  リフトオフして2段目の2回目エンジン始動は、地球を一周し日本上空付近の1時間39分23秒後。2段目2回目の燃焼終了が1時間43分24秒後、「はやぶさ2」分離が1時間47分15秒後。その後、「しんえん2」、「ARTSAT2−DESPATCH」、「PROCYON」の順に分離。最後の分離は打ち上げから2時間2分15秒後となる予定。
 ・搭載機器の削減によるコストダウン活動も継続実施。

 ・今後の予定
  ・コア機体は飛島工場での作業を終了し、出荷準備作業中。10月22日に射場へ向けて出荷予定。
  ・固体ロケットブースタ(SRB−A)は射場へ搬入済み。
  ・衛星フェアリングは9月29日に射場へ搬入済み。
  ・10月28日より種子島宇宙センターでコア機体起立以降の射場作業開始予定。

・質疑応答
日刊工業新聞:今回のコストダウンの内容はどんなものか。また、製造コストはいくらか。
二村:機体安定のフィードバックのため横加速度計(横に振られるような力を計測)を積んでいたが、2段目にも慣性航法センサ(IMU)を積んでいて、これで姿勢を全て検出できる。これのデータ蓄積で解明が進み確実になり、個別の横加速度計など個別のセンサを外せることになった。コストについては申し訳ありませんがお答えできません。

朝日新聞:今回のミッション時間は約7000秒だが、これまでの最長3000秒の詳細をお聞きしたい。
二村:過去の最長はH-IIAロケット21号機の3000秒で、小型副衛星「鳳龍弐号」の分離も含めての時間です。

読売新聞:(2段目の)白色塗装は21号機でもあったが、それについて。
二村:H-IIAロケット21号機の3000秒程度では本来なら白色塗装までは必要とせず、確認とデータ取得のために行った。ペイロード投入のために、必然で塗ったのは今号機が初めてである。
 今後もミッション時間が長い打ち上げの場合は塗装することがある。
(※参考:H-IIAロケット21号機は第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)と、韓国多目的実用衛星3号機(KOMPSAT-3)を打ち上げた。また、H-IIB初号機は段間部を白く塗装していたが、2段目は通常の断熱材の色をしていた。また今回とは意味が異なるが、初代「はやぶさ」を搭載したミューファイブロケット5号機でも、前号機と違って上段が白くなったと話題になった)

読売新聞:今後の打ち上げ受注活動について。円安が受注にプラスになるか。
二村:ここ最近はオンタイムの打ち上げが続いていて、それが高く評価を受けている。これらを積極的にアピールしていきたい。円安は、逆に材料の輸入価格の上昇になり、一言ではお答えしにくい。

不明:「はやぶさ2」以外の相乗りペイロードも地球脱出軌道になるのか。また、打ち上げまで準備期間が短いが余裕はあるのか。
二村:小型副ペイロードも「はやぶさ2」の軌道の延長だが、放出方向を少し変えてぶつからないようにする。基本的には同じ。
 打ち上げまで期間は非常に短い。前回の打ち上げから54日目でタイトだ。組立棟(VAB)からロケットを射座まで運ぶ移動発射台は2台あるが、一方はH-IIB用になっているため使えない。1台の移動発射台を使い回すパターンでは、今回が最短になる。機体を組み上げた後の試験やそのあとの準備作業は日程を詰めていない。設備のメンテナンスやセットアップを短縮し、機体を組み上げながら、機体の組み上げに関係ない設備側の準備作業は平行して行うなどの工夫して、この54日間を達成する計画である。
 (※注:移動発射台が2台ともH-IIA用だった頃、H-IIAロケット8号機と9号機の打ち上げ時期が近くて、殆ど同時に準備が進められた事がある。8号機が2006年1月24日打ち上げ、9号機が2006年2月18日打ち上げだった。ただし当初予定日からは多少変更されている)

SAC松浦:ダイレクト投入ではなく、パーキング軌道に投入する理由。バーベキューロール時の姿勢はどういったものか。2回目着火まで姿勢制御は行うか。
二村:ロケットよりも「はやぶさ2」側のオペレーションの要求。日本上空に戻ってから2回目を噴射し、停止後に分離だが、これはダウンレンジ局の都合と、コマンドを打つ場合に地球の裏側や一方向で飛ばすと厳しくなるため。このシーケンスなら初期動作までしっかり見られる。
バーベキューロールは太陽の光に対して直角。12分で一回転するものであり、姿勢としては難しい形になる訳ではない。2回目着火までの姿勢制御は行わない。

NVS:白色塗装の他に、ソフトウェア的な対応はあるか。
二村:基本的に他の号機と同じソフトウェア。もちろん時間のパラメータは変わる。

日経BP:横加速度計の省略によるコストダウン効果はどれくらいか。
二村:詳しくは言えないが数百万の単位よりは上である。

以上です。


No.1797 :衛星分離時の竹崎展望台 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月9日(木)07時07分 投稿者 柴田孔明

衛星分離のアナウンスの直後、竹崎展望台にて職員の皆さんが拍手。


No.1796 :空に残る噴射煙 ●添付画像ファイル
投稿日 2014年10月9日(木)00時06分 投稿者 柴田孔明

竹崎展望台から。
打ち上げは成功し「ひまわり8号」は予定された軌道に投入されました。

竹崎とリモートの撮影は柴田孔明。

(※再掲)


No.1795 :空に残る噴射煙
投稿日 2014年10月9日(木)00時04分 投稿者 柴田孔明

竹崎展望台から。
打ち上げは成功し「ひまわり8号」は予定された軌道に投入されました。

竹崎とリモートの撮影は柴田孔明。