投稿日 2015年2月2日(月)05時07分 投稿者 柴田孔明
2015年2月1日10時21分に打ち上げられたH−IIAロケット27号機の打ち上げ経過記者会見が、種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室で同日12時から行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます。また内容についても一部省略させていただきます)
・第一部登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 下平 幸二
文部科学省 大臣官房 審議官 磯谷 桂介
宇宙航空研究開発機構 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 取締役常務執行役員 防衛・宇宙ドメイン長 水谷 久和
内閣府 宇宙戦略室 参事官 内丸 幸喜
・打ち上げ結果報告・水谷
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成27年2月1日10時21分(日本標準時)に、情報収集衛星レーダ予備機を搭載したH-IIAロケット27号機(H−IIA・F27)を予定通り打ち上げました。ロケットは正常に飛行し、情報収集衛星レーダ予備機を分離したことを確認しました。
なお、ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北北東の風(4.9m/s)、気温10.4度Cでした。
情報収集衛星レーダ予備機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打上成功でH−IIAは21機連続成功、H−IIBをあわせると連続25機の成功となります。また、通算31機中30機の成功であり、成功率も96.8%となります。無事打ち上げることが出来て安堵しております。
当社はこれかも皆様方に安全で確実な打ち上げを提供できますよう、さらに心を引き締めまして細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
今回のH-IIAロケット27号機打ち上げ実施にご協力頂きました関係各方面に深甚の謝意を表し、引き続きご支援賜りたくよろしくお願い申し上げます。
・宇宙航空研究開発機構・奥村
今回の打ち上げに際して三菱重工株式会社様がサービス事業者としての役割を果たされたことを、まずは厚く御礼申し上げたいと考えております。JAXAは安全管理業務を滞りなく行ったことをご報告させていただく。また、関係機関、地元の方のご協力に厚く御礼申し上げます。
新しい宇宙基本計画でJAXAは、政府の宇宙開発事業を技術で支える中核的実施機関という位置づけを与えられており、この役割を果たすべく、今後の打ち上げに際しても確実に安全管理業務を果たしていく所存であります。皆様方のご理解とご支援を賜りたいと思います。
・内閣衛星情報センター所長・下平
本日打ち上げられた27号機に搭載された情報収集衛星レーダ予備機を所定の軌道に乗せることができた。この打ち上げにご尽力いただいた方、また、ご協力ご支援いただいた方に感謝を申し上げたいと思います。
私共、内閣衛星情報センターとしましては、光学衛星2機、レーダ衛星2機の4機体制の確立を目指して体制の整備に努めてきたところであります。
その途上にありまして、レーダ衛星につきまして、レーダ1号機が平成19年3月、レーダ2号機が平成22年8月に、それぞれ設計寿命に達する前に運用障害が発生し、運用できる衛星を喪失する期間が発生しました。この事象を受け、4機体制を確実な物にするためには予備機を打ち上げて運用することが必要であるという考えに基づき、このレーダ予備機を導入することとした。内閣衛星情報センターとしては今後とも情報収集衛星の確実な運用を通じて、引き続き我が国の安全保障と危機管理に必要な情報収集に鋭意取り組んで参りたい。
・文部科学省 大臣官房 審議官・磯谷
今回の成功により、日本の基幹ロケットは26機連続で成功したことになります。これは我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものと考えています。ロケット打ち上げに関わった三菱重工、JAXAなど関係者のご尽力に心から敬意を表するものであります。また、情報収集衛星が順調に飛行を続けることを期待しています。
我が国の基幹ロケットが、これからも国民生活の向上や国際貢献などに資する宇宙開発事業を支えるとともに、国際市場で活躍できることを期待しています。新たな宇宙基本計画に沿って文部科学省としても技術の高度化や信頼性の向上に努めて参ります。
※配布文書より安部晋三内閣総理大臣のコメント
本日、種子島宇宙センターから、H−IIAロケット27号機が打ち上げられ、搭載していた情報収集衛星レーダー予備機を所定の軌道に投入できました。
政府としては、本レーダ予備機も含めて、我が国の衛星による情報収集体制を確実なものとし、我が国の安全保障及び危機管理に万全を期す所存です。
・質疑応答
NHK鹿児島・4機体制のための予備機が成功したが、どう受け止めているか。
下平・約2年前の打ち上げで当初の目標としてきた4機体制は確立し運用しているが、それを有効に活用しつつ、さまざまな要求に対応しうるような情報収集活動はできていると認識している。が、他方で4機体制を維持していることによっての、それなりの問題認識を持っている。それを基に、更なる体制整備に向けていきたい。
今回のレーダー予備機の成功に関しては、4機体制を確実なものにするには必須なものと思っている。情報収集衛星を的確に運用して真に必要とされている情報の収集に臨みたいと思っている。
日本経済新聞社・今回の成功で96.3%の成功率だが、海外からの受注についてはどうか。
水谷・連続して成功を延ばしているので、世界の衛星のお客様から評価される項目のひとつになっているかと思う。さらにH−IIAの高度化と、昨年から開始した新型基幹ロケットも含め、打ち上げ輸送サービスの量的質的な向上を図って期待に応えていきたいと考えている。
南日本新聞・今回の成功で単年度での大型ロケットの最多打ち上げになるが、その受け止めと、安定した打ち上げ回数確保のための課題は何か。
水谷・4月からの年度単位で4機目の打ち上げになる。過去、7月−6月で見ると4機の実績はあるが、年度で見ると初めて。打ち上げ準備作業の効率化で、前の号機から次まで70日強の日数がかかっていたものが、今回とその前は50日ちょっとの間隔になった。その日数で上げることに実力を少しつけたかなと思っている。準備作業の質的向上が図られてきている。今後も持続し成長させていきたい。
産経新聞・予備機だが、過去の寿命前の運用終了や打ち上げ失敗があって単機打ち上げが続くなど、想定よりコストがかかっていると感じているが、国民の理解は得られているか。
下平・一定額の予算を執行しているが、対価として得られているかの評価は難しいので言及は避ける。私共としては、情報収集衛星から取得した画像で分析・評価したプロダクトは、我が国と国民のためになっていると自負している。従ってそういった意味で理解は得ていると思ってやっている。
朝日新聞・今朝のテロのニュースもある。安全保障という意味はテロを相手にしてどんどん変わっている。大きなコストに対してどれほど役立っているかなかなか出てこない。今後、情報発信の考えをお聞きしたい。
下平・外交防衛の安全保障と災害対応をやっているが、安全保障という意味では、衛星の性能や画像の保全は厳格に管理されなければならない。他方で災害対応に関しては、我々の持っている情報を提供することにより問題が合理的に解決するなら、その方策を我々は追求すべきである。安全保障の面でも危機管理の面でも、我々が直面している事象に関して、最も合理的な方法で情報を提供していくが、情報の保全がきわめて大きな扱いになる。今後ともそれぞれの状況に応じて合理的と考えられる方法で情報を提供していきたい。
補足すると、東日本大震災では画像情報を基に被災状況地図を作成し内閣情報調査室に提供した。それ以降のご指摘や教訓を生かし、フィリピンの台風被害時の被災図、マレーシア航空機行方不明時に我々が持っていた情報、小笠原付近の違法操業の状況や西之島の状況など、合理的と思われる手法で情報を出しており、ホームページにも掲載している。
NHK・例年の一定額の予算に対して効果が見えにくい。その検証はどうするのか。宇宙基本計画で情報収集衛星の体制強化は具体的にどうか。
下平・分析評価した結果を、内閣情報調査室を経由して利用省庁や総理官邸などに提供している。政府部内ではあるが、そういった所からのさまざまな意見を聞きながら、さらに効果的な提供を追求していく。もう一つはホームページ等を通して政府外にも提供を努めていくので、ご意見ご指摘等を受ければ、反映できるところは反映してやっていきたいと思っている。
体制整備は機能拡充強化、即時性速報性のためのデータ中継衛星の導入など、研究開発に注力する。4機体制を2年続けた教訓と、衛星導入当初の頃からの我々を取り囲む安全保障環境の変化、自然災害の発生の蓋然性等を考えれば、自ずと方向性が見えてくる。
・第二部(ブリーフィング)登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター調査官 新田 浩史
宇宙航空研究開発機構 鹿児島宇宙センター所長 長尾 隆治
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 技監・技師長 打上げ執行責任者二村 幸基
質疑応答
産経新聞・情報収集衛星なのでシーケンスの数値が出ていないが、打ち上げは計画通りだったか。
二村・ほぼノミナルのシーケンス。衛星軌道もノミナル。ロケット側の精度が良かった。
産経新聞・機体移動の時間が早かったが理由は何か。
二村・当初の移動時刻である21時頃は風速が強く10m/sくらいが予測され、その前は若干弱いと予測されていた。作業安全上15m/sをこえると作業に入れないため、時間的余裕をとりたかった。
(※当初の1月28日は21時から機体移動が開始されたが、延期後の同31日は20時から行われた)
朝日新聞・現状でわかる範囲で衛星の状態をお聞きしたい。
新田・確認中ですが現時点で正常です。
朝日新聞・年度内ということは次も50日弱で打ち上げるのか。今回の間隔は正確には何日か。
二村・次は設定されていないが、今回の実績をもとに最善の努力をする。前回から53日、その前は54日だった。ただし間に正月休みがあったので、53日にプラス4日がある。
NHK・ここ数年、情報収集衛星の結果がHPが出るようになったが、全く出なかった頃からの変化は何か。
新田・公表できるものは公表するようにしている。安全保全に支障が出ないものを探って問題ないものを公表している。これまでの運用の実績によるもの。
毎日新聞・レーダー予備機はレーダー3、4号機が故障したら使うのか。また5機体制と違うのか。
新田・導入も目的は予備機で、過去の1、2号機の事例から用意した。ただ、税金をかけて作ったものであり有効活用はある。5機あるが4機体制を維持するための予備機である。地球上のどの地点も一日一回以上観測できる事に変わりは無い。
日本経済新聞・光学衛星の予備機は計画に無いのだが、2機で十分なのか。
新田・予算が限られている中でレーダー予備機の導入を決めた。宇宙基本計画において機能の拡充があり、今後の体制は予備機に限らず総合的に検討しなければならない。
南日本新聞・計画では今年度5機打上げだが、国際競争力を高めるため何機以上を安定的に上げたいか。
二村・競争力の点でもっと多くが望ましいが、諸事情として生産設備と射場再整備の制約の関係で、現実的にはコンスタントに年間4機以上を目指す。
産経新聞・情報収集衛星関連は特定秘密保護法によって指定されたが、これによってこれまで公開していたものが影響を受けるか。
新田・今回制度化されたが、以前から保全されている。ルールが出来たが、これまでの延長でひとつひとつの事案で、公開できるものとできないものを考えていくことになる。基準が変わるわけではない。
読売新聞・宇宙基本計画の中で、衛星の機数増と即応性のどちらを優先するか。
新田・どちらが優先という意味ではない。即応性についてはデータ中継衛星が予算要求案に出ている。機数が増えると即時性が上がるので両輪で考えなければならない。
以上です。
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