投稿日 2015年3月27日(金)05時56分 投稿者 柴田孔明
2015年3月26日10時21分(JST)に打ち上げられたH−IIAロケット28号機の打ち上げ経過記者会見が、種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室で同日正午から行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます。また内容についても一部省略させていただきます)
・第一部登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 下平 幸二
文部科学省 大臣官房 審議官 磯谷 桂介
宇宙航空研究開発機構 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙ドメイン 副ドメイン長 石井 泉
(側面列席者)
文部科学省 宇宙開発利用課長 千原 由幸
内閣府 宇宙戦略室 参事官 守山 宏道
三菱重工株式会社 宇宙事業部長 阿部 直彦
打ち上げ結果報告・石井副ドメイン長
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから本日(平成27年3月26日)10時21分(日本標準時)、情報収集衛星光学5号機を搭載したH−IIAロケット28号機(H−IIA・F28)を予定通り打ち上げました。
ロケットは正常に飛行し、情報収集衛星光学5号機を分離したことを確認しました。
ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、東の風5.0m/s、気温17.1度Cでした。
情報収集衛星光学5号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打上成功でH−IIAは22機連続成功、H−IIBをあわせると26機連続、通算成功率約96.9%となりました。無事打ち上げることが出来、安堵しております。
当社はこれからも皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力ご支援を賜りました。あらためまして関係者の皆様に心より御礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたくお願い申し上げます。
打ち上げ結果報告・奥村理事長
打ち上げは成功し、打ち上げ輸送サービス業者として今回の打ち上げを執行していただいた三菱重工業殿に御礼申し上げたいと思います。今回の打ち上げに際して私達JAXAの任務である安全管理業務の役割を果たしたことをご報告申し上げたいと思います。
今回の打ち上げに際しても関係機関の多大なご支援ご協力をいただいております。改めて厚く御礼申し上げます。
平成26年度はJAXAにとってかなりの打ち上げ機会があった。5月の24号機に始まり、10月の「ひまわり8号」、12月の「はやぶさ2」、1月の情報収集衛星、今回の28号機で、特に後半の半年で4機の打ち上げ機会に恵まれた。これについても三菱重工様と私共JAXAが打ち上げ期間の短縮に努力してきた結果でないかと考えている。今後とも確実な打ち上げに協力できるように誠心誠意頑張って参りたいと考えています。
・下平所長
本日打ち上げられたH−IIAロケット28号機により、搭載されていた情報収集衛星光学5号機を所定の軌道に投入できました。この場をお借りして、今回の打ち上げに尽力いただいた方々、支援ご協力をいただいた方々に感謝御礼申し上げる。今運用している光学3号機と光学4号機のうち、光学3号機は平成21年11月に打ち上げて既に設計寿命を迎えている。衛星による情報収集を確実なものにする観点で、後継機の光学5号機を打ち上げた。内閣衛星情報センターとしては情報収集衛星の確実な運用を通じて引き続き我が国の安全保障と危機管理に必要な情報収集に鋭意取り組んで参る所存である。
・磯谷審議官
今回の打ち上げ成功によりH−IIAロケットとして22機連続、H−IIBロケットとイプシロンもあわせた我が国の基幹ロケットとしては27機連続で成功したことになる。このことは我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものと考えている。打ち上げに際してご尽力、ご支援いただきました関係者の方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。また、今後も情報収集衛星が順調に飛行を続けることを期待しています。
文部科学省としては今平成26年度よりH−IIA/Bロケットの後継として、我が国の宇宙輸送の自立性を確保すると共に国際競争力を更に高める新型基幹ロケットの開発に着手した。新型基幹ロケットは東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に初号機を打ち上げる予定で、着実に開発を推進していく。文部科学省として、今後とも宇宙開発利用を支える基幹ロケットの高度化と信頼性の向上、「はやぶさ2」などの宇宙科学探査等、最先端の科学技術の振興と強化、環境観測に貢献する衛星の開発など、防災安全保障あるいは産業振興など宇宙利用拡大に資する取り組みなどを推進して参りたいと考えている
・質疑応答
NHK・成功で4機体制が確実となったが、どう受け止めるか。強化などはどうするか。
下平・今回の打ち上げによって情報収集衛星の体勢が維持できる。光学衛星とレーダー衛星を運用しながら、危機管理と安全保障に必要な情報収集をやってきている。それが今後、一定期間確実に出来る体制を確立できたことで大変嬉しく思っており、その中で鋭意情報収集に努めたい。現在の体制を運用し、様々な運用上の問題も我々は認識している。1月に策定された宇宙基本計画で情報収集衛星の体制の強化が謳われている。私共が現体制で情報収集の業務をやってきて感じている、あるいは判った問題点を報告していく。あるいは今後の技術動向を見極めながら我々としてどのような体制が適正なのかを検討しながら将来に向かって体制の強化をしたいと考えている。
NHK・年間5機打ち上げで過去最高であり、前回打ち上げから最短の53日だったがどのように受け止めているか。
石井・53日間と短い期間で打ち上げを成功させるためにJAXAから試験装置の増強など大きな支援をいただき、打ち上げ期間の短縮が実現できた。下半期で4機という短い期間での打ち上げを完遂したことは、大変な自信になる。今後の衛星打ち上げ需要の推進に力になる。
南日本新聞・運用上の問題点とは何か。
下平・この場では細部は遠慮させてもらうが、一般論では安全保障環境の問題、大規模な自然災害を見たときに、たとえば撮像頻度や即時性の問題など、そういったものに対しては問題意識は芽生えている。今後どういった形で克服するかというものがある。
産経新聞・情報収集衛星は5年ごとに設計寿命が来て経費がかかる。故障で予備機の追加や、シングルロンチが続いて費用が大きくなっている一方で国民に成果が見えにくい。現状に於いて国民の理解が得られているのか。
下平・情報収集衛星にはそういった特性があるが、私共の衛星への、国としての危機管理上の期待度は高まっていると肌で感じている。重要になっているとの認識の下で、財政状況も勘案しながら体制の整備に努めている。ニーズに応じて確実に体制を進めてきている。
国民の理解に関しては、私共のユーザーは首相官邸や利用省庁で、そこで関連する業務に反映されている。それは言ってみればエンドユーザーの国民の方々の安心や大規模災害時の安全等にもつながっていることから、私共としては理解は得られていると考え業務を進めている。
私共が置かれている安全保障環境の問題、世界中で起こっている危機への的確な情報収集の手段としての情報収集衛星として価値があると考えている。
朝日新聞・撮像頻度や即時性で問題があるとの認識だが、後継衛星の開発も始まったが、機数を増やすしかないが、省庁から撮像をもっと増やしてほしいという要望が出ているのか。増やすとすれば1日何回くらい撮像するのか。
下平・撮像頻度は機数を増やすこと以外に、衛星の俊敏性を上げることでもかなり確保できる。限られた衛星の数でも、新たな技術を導入して追求していきたい。機数増は私どものニーズだけでなく、機関としての独自の考え方もあり、利用省庁のニーズと財政事情と最新の技術動向も考え検討を進めたい。
第二部・ブリーフィング
登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター調査官 新田 浩史
宇宙航空研究開発機構 鹿児島宇宙センター所長 打上安全管理責任者 長尾 隆治
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 技監・技師長 打上げ執行責任者二村 幸基
質疑応答
産経新聞・打ち上げを振り返って、今回の状況をお聞きしたい。
二村・具体的な数値は出せないが、公表した時間で打ち上げ、打ち上げ日のトラブルも無くスムーズな作業であった。天気にも恵まれた。作業を進めるにあたって私共が懸念事項は無かった。打ち上げ後のフライトシーケンスや衛星分離もほぼ計画通り。衛星側の評価をいただくことになるが、軌道も比較的良い精度で入った。
鹿児島テレビ・H−IIAの22機連続成功の成功率は何%か。
司会・H−IIAのみで96.43%。H−IIA/B両方で96.88%。32機中31機の成功。
朝日新聞・衛星の状態はどうなっているか。
新田・しばらく状況を見ることになるが、現在のところ問題はありません。
NHK・打ち上げ期間が53日で実施できたJAXAの支援とは何か。
二村・二種類ある。打ち上げ後に射点の痛みを綺麗にすることと、機能が保全されているかを点検する必要がある。その点検整備に必要な設備を二つ用意していただいて平行して作業できるようになった。また、異常が発生した場合のリペアに必要な予備品を用意していただいた。
読売新聞・今回の光学衛星は解像度の性能アップしているとの話だが。
新田・解像度については示したことがないので控えさせていただく。
南日本新聞・製造開発費はいくらか。
新田・光学5号機の開発製造に325億円。ロケット制作打上の経費は約106億円。予算として合計431億。
共同通信・世界中の一点を一日一回撮像は諸外国と比べてどうなのか。また古くないか。
新田・諸外国の情報収集も正確に公開されていないので比較できない。平成10年の閣議決定を完成させたのは平成25年で、今回の5号機で初めて継続できた。積み重ねを踏まえ議論していきたい。
産経新聞・宇宙基本計画で機数増を含めた強化がある一方、コスト削減に努めるとあるが、これの理解は。
新田・難しい質問だが、個々の衛星をどう最適化していくかの問題。トータルでどういった体制を組むかで、ミニマムのインプットで最大のアウトプットを引き出す。ユーザーのニーズによっても解が異なる。絶対値が上がるか下がるかはわからないが、予算制約内でどう達成するかの課題である。
産経新聞・前回打ち上げの後相乗りで衛星打ち上げをドバイから受注したが、その意義は。
二村・打ち上げ輸送サービス事業からすれば日本国内だけではまかないきれない。世界に打って出る必要がある。ドバイの衛星に相乗りで機会を提供することで受注させていただいた。今年のテレサットもある。頻度と数を高めることで、世界市場に参入していく。
南日本新聞・光学5号で全6機だが、運用はどうなるか。
新田・税金で作られた衛星であり軌道上にあるうちは有効活用していきたい。
NHK・ドバイの衛星受注の背景はどうなっているか。
二村・H−IIAの打ち上げ輸送価格は他国に比して安いわけではないが円安があった。またオンタイムで信頼度が高まってきた。それが相まって受注に至ったのではないか。
読売新聞・世界に打って出ることについて具体的に教えていただきたい。
二村・打ち上げ間隔53日はカレンダーで達成したが、打ち上げ輸送サービスとして運ばせていただいているのが衛星である。お客様の希望する時期に希望する軌道に乗せるのが我々の使命。これまでのような大きな打ち上げ間隔が必要なロケットではなく、比較的短期間で打ち上げられて、顧客から見て使えるロケットに近づいたのではないかと認識されていると思っています。
以上です。
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