投稿日 2015年12月8日(火)08時11分 投稿者 柴田孔明
2015年12月7日に金星探査機「あかつき」の金星軌道投入が行われ、事前に運用状況の説明と、実施後に姿勢制御エンジン噴射結果の記者説明が行われました。
・「あかつき」運用状況の説明(2015年12月7日午前8時10分(日本時間))
・登壇者
久保田 孝 宇宙科学プログラムディレクタ/宇宙機応用工学研究系 教授
・運用状況について
「あかつき」は昨日に噴射姿勢に姿勢制御を行いました。そのあと今日のシーケンスを探査機に送り、正常に書き込まれたことを確認しています。今日は予定通りシーケンスに沿って軌道再投入を行う予定です。
本日は朝5時前から探査機の運用を開始し、正常に動作していることを確認しています。あとは粛々と運用を行う予定です。
運用室では中村プロマネが全体の指揮をとって運用を進めています。今「あかつき」チームは40人位で運用しています。
探査機の噴射予定時刻は午前8時51分(日本時間)です。「あかつき」と地球との通信は距離が約1億8千万キロありますから、データが地球に届くのに約9分かかります。こちらで状況が確認できるのは探査機が動作を開始してから約9分後になりますので、9時過ぎ頃からデータが出てくることになります。
非常にクリティカルな運用になり、これに専念させていただくため、状況は(記者室に設置された)運用室のモニタを見ていただければと思います。
運用は臼田局を使っています。状況の説明はデータが揃った12時頃に行う予定ですので、それまで見守っていただければと思います。
まもなく噴射を開始しますが、チームの皆さんは粛々と運用しております。既にシーケンスは送ってありますので、それがちゃんと動いていることをモニタで確認して運用しています。
・質疑応答
JAXA広報・管制室の雰囲気を教えてください。
久保田・時々刻々緊張が増してくるが、既に事前にやれることはやって、議論もいろいろ重ねていますので、緊張しつつ粛々と行っています。いろいろなケースを想定してリハーサルも十分に行っていますので、本番は平常心で運用する態勢が整っていると感じました。
産経新聞・いろいろなケースを想定したリハーサルとはどんなものか。
久保田・今回はメインエンジンが故障し補助エンジンで運用するので厳しい運用となります。時間も長く、20分も噴射します。8つのうち4つのスラスタを使いますが、これが不調の場合は姿勢を変えてもう一方のエンジンで噴射するなど、そういったやれることは全部考えてやりましょうというリハーサルです。
NHK・今後何かトラブルが出た場合、私達報道はどう知ることができるか。昼前に判るか。
久保田・軌道は何度か通信して確認するため今日はわかりません。噴射はいろいろなデータで判断すると正午頃になります。20分間の噴射だけでなく、バックアッププランもあるので9時では終わらず、オペレーションは11時頃までかかります。最終的なオペレーション後にデータを揃えて、説明を12時に行う予定です。お伝えする努力は致しますが、それまでは運用室を映すモニタで雰囲気を感じていただきたいと思います。
共同通信・8時51分にスタートだが、始まったことは画面で判るか。
久保田・リアクションで推定できると思います。詳しくはデータを見た後でないと判らない。運用室に大きな動きがなければ予定通りで順調だと思います。
読売新聞・今日のシーケンスを送ったのはいつか。
久保田・昨日の運用中に行っています。
読売新聞・撮像はいつ頃から行うのか。
久保田・噴射が終わったあと、場合によっては別のスラスタを使い、そのあと観測姿勢に戻すことになりますので、観測は今日の午後。13時以降は日本で見えず海外局を使うことになります。計画では今日の午後です。
読売新聞・5年前と違って遠近点が遠いのはエンジンの推力が小さいからか。
久保田・いろいろな理由があります。5年前予定したものより大きな楕円軌道。軌道を変えるには大きな推力が必要です。メインエンジンが壊れた段階で金星周回軌道に入れる方法を探した結果、みつけた軌道が少し大きな楕円軌道だった。打ち上げ後の軌道と、残っている燃料、補助エンジンを使うこと、熱や通信などの条件からいちばん確実なのが今回の軌道だった。遠くになると別の科学観測ができるので、必ずしも不利ではない。
朝日新聞・遠近点が大きい理由は、スラスタの推力が小さい事なのか。
久保田・噴射による減速という観点でそうです。
朝日新聞・我々に画面で判断してほしいというが、正確ではなくそれでいいのか。「はやぶさ2」のスイングバイのときと同様の対応をお願いしたい。
久保田・我々も正確な情報を伝えたいので時間が欲しい。
広報・今回も基本的に「はやぶさ2」の時と同じです。正確な記事のために少し時間をいただきたい。
・シミュレータ画面に表示では何キロが再接近なのか。
三浦(シミュレータ作成者)・あくまでシミュレータで実際の値を表していません。数値は金星表面との距離です。
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