投稿日 2017年3月20日(月)21時06分 投稿者 柴田孔明
H-IIAロケット33号機が2017年3月17日10時20分00秒(JST)に種子島宇宙センターから打ち上げられました。このあと竹崎展望台の記者会見室にて打ち上げ経過記者会見が開催されています。
・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 木野村 謙一
文部科学省 科学技術・学術政策局 科学技術・学術総括官 神代 浩
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 副ドメイン長 阿部 直彦
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 技術部企画課長 一ノ瀬 宏昭
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 金子 忠利
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部総務課 主査 西本 裕志
・打ち上げ結果報告・阿部副ドメイン長
三菱重工業株式会社および宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成29年3月17日10時20分00秒(日本標準時)に、内閣衛星情報センターの情報収集衛星レーダ5号機を搭載したH-IIAロケット33号機を予定通り打ち上げました。
ロケットは計画通り飛行し、情報収集衛星レーダ5号機を正常に分離し、所定の軌道に投入した事を確認しました。
ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北西の風3.6 m/s、気温15.2度Cでした。
情報収集衛星レーダ5号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算33機中32機の成功、成功率は97.0%になりました。H-IIBと合わせると通算39機中38機の成功、成功率97.4%です。またH-IIA/B、33機連続の打ち上げ成功です。
天候により1日延期しましたが、前回の打ち上げ1月24日から最短52日での打ち上げとなりました。予定通り無事打ち上げることが出来、安心しています。
当社はこれからも安定的な打ち上げを継続できるよう、心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力ご支援を頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
・奥村理事
ただいま三菱重工様からH-IIA33号機による情報収集衛星レーダ5号機の打ち上げ成功に係るご報告がございました。今回の打ち上げにあたりまして私どもJAXAの役割でございます、打ち上げ安全管理業務を達成致しましたことをご報告させていただきます。
この打ち上げは毎度のことでございますが、地元の皆様をはじめ、関係機関のご支援ご協力のもとに成し得たものと理解してございます。そういった意味で今回の打ち上げに関しましても、
ご支援ご協力をいただきました皆様に、あらためて厚く御礼申し上げたいと思います。
今後ともJAXAとしても1機1機確実な打ち上げが出来ますように、誠心誠意取り組んで参りたいと考えてございます。
・木野村所長
一日順延となりましたが、本日種子島宇宙センターからH-IIAロケットの33号機が打ち上げられまして、それに搭載されております私どもの情報収集衛星レーダ5号機、これが所定の軌道に投入されました。現在レーダ衛星については3号機、4号機、そして予備機の3機を運用しておりますけども、今回の5号機は、3号機の後継として位置づけられております。衛星による情報収集体制をより確実なものにするだけでなく、強化するために今回の衛星は非常に重要な衛星と位置づけております。特に3号機については平成23年12月に打ち上げておりますので、もう既に計画寿命を過ぎております。こういった観点からも今回の5号機に期待するところが非常に大きいと考えております。これまで開発から打ち上げに携わっていただいた方に感謝を申し上げたいと思います。
今後CSICEとしましては、レーダ5号機は数ヶ月は初期運用の確認がございますけど、本格的運用になってから、これを引き続き安全保障と危機管理の観点から、必要な情報収集につとめて参りたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
(※CSICE:Cabinet Satellite Intelligence Center:内閣衛星情報センター)
・神代総括官
松野文部科学大臣の談話にもあります通り、今回の打ち上げ成功により基幹ロケットとしては35機連続での成功となりました。このことは我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、大変喜ばしく思っております。打ち上げに際しましてご尽力ご支援いただきました関係者の方々に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また今後も情報収集衛星が順調に飛行を続けることを期待しております。
平成28年度は宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機や、ジオスペース探査衛星「あらせ」などの打ち上げに成功いたしました。文部科学省においては今後も基幹ロケットの更なる安全性・信頼性の向上と共に、次期基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。
・質疑応答
NHK・着実に情報収集衛星の数が増えてきているが、これまでの積み上げの手応えを伺いたい。
木野村・数は増えている。現在我々は光学3機、今回の5号機を合わせてレーダ衛星が4機、あわせて7機を運用することになります。細部は申し上げられないが分解能が上がっている。情報収集という観点で、過去に比べて我々として非常に信頼できる衛星が入手できてきたという自負をしてきた。一方で我々として課題がまだまだある訳でして、これは将来という事になりますけど、能力の高くなった衛星を確実に運用する観点から、ひとつは確実な管制をやるということ、もうひとつは映像をいかに分析官が正ししい分析をするかということが、ますます我々にとって今後の課題になってくるだろうと考えております。
NHK・情報収集衛星の7機目だが今後いつまでにどれくらい増やしたいのか。
木野村・私どもの希望としてはいっぱいあった方がいいと思いますけど、政府としてはあくまで宇宙基本計画の行程表の中で謳っておりますように、最終的には10機体勢。基幹衛星を4機、時間軸多様化衛星を4機、そしてレーダ中継衛星2機ということで、我々が頑張りたいのは10機体制であります。
日経新聞・今回の打ち上げで成功率97%、インターバルが最短52日になったが、そのあたりは来たるべき国際競争というか、海外受注の拡大に向けてどういうインパクトがあるか。
阿部・成功率は高ければ高いほど当然のことながら競争力が高まってくる。衛星オペレータ、もしくはロケットの打ち上げサービスを調達される方には、やはり定時にきちんと上げてもらいたいということで、そのためにはお金を払ってもいいという方がおられますので、そういう方にとっては非常に付加価値を生んでくると理解しています。もう一点、インターバルの件ですが、インターバルが短くなるという事は要するに、その分だけお客様に提案できるロケットの打ち上げのスロットを広げられるという事ですので、自由度が増すということで、同じように競争力にとって大きな事だと理解しています。
産経新聞・情報収集衛星は安全保障上重要という観点から運用されているが、役に立っているかなかなか国民に見えにくいという課題がある。ここの点について、どのように努力されていかれるか。2年前に鬼怒川の画像の公開もあったが、災害だけでなく安全保障の面でどういう努力とか国民の理解を得られる工夫をされるかという辺りをお尋ねしたい。
木野村・危機管理については都度、頻度は多くないが提供させていただいている。しかし我々の最大の特性は、他の代替手段の無いところの写真を撮るというところですので、安全保障の部分がかなり大きなウェイトを占めています。これにはいろんな制約がございまして、一般の国民の方に目に見える形で、レーダも光学もそうですけど、お見せするという訳にもいきませんし、当然ながら資料から情報に加工して提供しているのですけど、これは官邸、それからいろんな各省庁のニーズに応えて提供しておりますけど、なかなか目に見える形で具体的に、客観的にその情報というのは難しいと思います。我々としては一般国民の人達の思いを受けて関係省庁または総理官邸に最大限努力してお渡しすることでしか恐らく還元はできないと思っております。
産経新聞・安全保障上で役に立っているということか。
木野村・はい。
産経新聞・先月からの北朝鮮のミサイル発射では役に立ったのか。
木野村・評価は、情報機関は自分で評価するものではございませんし、事柄が極めて機微なものでありますので具体的にお答えすることは今回できないと思います。我々としては重視しているところもありますし、課題としても我々としては反省する事項は多くありますので、ひとつでもふたつでも、国家や国民の方々に還元できる形で努力してまいりたいと思います。
朝日新聞・安全保障にどのように役に立っているか見えにくいという質問があったが、情報収集衛星の打ち上げが始まった頃は、いかに活用ということが公になるかということが今後の成功の鍵になるという話だったと思います。これが7号機が上がった今も変わっていないが、この点についてどう思われて、どう改善されていかれるのか
木野村・過去にもそういった問いがあったことは重々承知しておりますが、一方で国際情勢は日々動いておりますので、我々が知り得た情報について一般の方に直接公開するということが、安全保障上の問題から、逆に我々の脆弱な部分を露呈することにもなりかねませんので、間接的という言い方が適切な表現でないかもしれませんが、官邸や各省庁を通じて、各機関が我々が提供させていただいた情報に基づいて意思決定をして活動するということが、とりもなおさず我々の情報を使っていただいているということでしか回答のしようがないと思います。
朝日新聞・過去に情報収集衛星で撮影されたデータが外国の求めに応じて提示した、という形で役に立ったことはあるか。また他にも具体的に役に立った事例はあるか。
木野村・事柄の性質上、どのようなやりとりをどの国とやっているかなどは、現時点では申し上げられない。ただ、一般論という形であれば、我々はオールマイティではありませんので、他の国とある程度の情報共有をするひとつの手段として、提供することもあるだろうと申し上げることはできると思います。
鹿児島テレビ・今回、打ち上げの期間が52日と最短だったが、H3ロケットへのメリットなど、どう見られたか。
奥村・三菱重工さんからお話がありました通り、インターバルを短くすることは打ち上げの競争力にとって重要な要素であるとJAXAも認識しております。いろんな工夫を重工さんと私どもでさせていただいていて、そういう成果が少しずつ出ているのかなという自己評価をしております。来年度も行程表上、かなりの数を打ち上げる計画になっておりますので、そういった打ち上げ計画を確実に実施する第一歩として、今回の短いインターバルでの成功を私どもも大変喜んでいますし、ある種の自信になったと思っております。
朝日新聞・かつてJAXAは平和に資するというところから少し法律が変わってこういった活用にも従事するようになったと思うが、文科省として今後宇宙政策というものに対して、よりこういったものを強めていこうと考えているのか。
神代・一般的な言い方になりますが、いわゆる宇宙基本法、それから第五期の科学技術基本計画の中にも安全保障・科学技術に関することも書かれておりますので、その方針に沿ってやっていくことだろうと思います。
・打ち上げ経過記者会見後ブリーフィング(第2部)
・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 調査官 金子 忠利
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全管理責任者 藤田 猛
三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙ドメイン 技師長 打上執行責任者 二村 幸基
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部総務課 主査 西本 裕志
・質疑応答
鹿児島テレビ・最短の52日間を実現したのは、どういったところを工夫したのか。
二村・厳密に申し上げますと、H-IIAロケットを打ち上げるための移動発射台ですけども、それを1機続けて使い回している場合の最短という意味です。H-IIB用にはもうひとつ移動発射台がありまして、これとH-IIAを別の発射台にのせて打ち上げる場合はその限りではございません。今回、最短と言っていただいているのは、そういった意味でございます。
作業期間をそれだけ縮めていくためには、JAXAさんの設備で、非常に泥臭い話ではありますが、アンビリカルというものがございまして、打ち上がっていくときに切り離して地上側に残る訳ですが、これを次の打ち上げのために再整備をする時に、これまで、極端な言い方をしますと人力で持ち上げてロープで捕縛するようなことをやるということで、準備期間というかそういった作業時間が我々にかかるのに対して、今回吊り上げ用の小型のクレーンをそれぞれ設置していただきまして、それによってそういった作業が、非常に地味なところでありますが、そういった分の作業の期間が縮まる。またそれぞれの作業にいったいどれくらいの人がどれくらいの時間をかけているのかを分析しておりますので、そういったところで少しでも無駄があれば、その部分を削除する、あるいは直列的に仕事をしているものを少しでも重ねることができるのであれば、それを重ねるなどというような事を、何時間単位の事でございますけども、それらを組み合わせて打ち上げの間隔を縮めている。JAXAさんからそういった設備を追加していただくことで、かなり寄与しているところでございます。
産経新聞・衛星の状態と、今後のスケジュールで、分離後どのような今どのような状態か。あと、本格運用はいつ頃からか。
金子・衛星の状態は今まさに確認中でございます。今後の確認と運用スケジュールについては、通常は数ヶ月程度、初期運用のための準備にかかるのがこれまでの実績でございます。いつ頃から運用開始できるというのは今後の作業次第でございまして、確定的に申し上げることは、残念ながらできませんので、そのようにご理解いただけばと思います。所要の準備が整えば、そのあとに運用することになります。
南日本新聞・現在の射場設備では最短だったが、同時にH3の開発が進んでいる。H3を運用する上で間隔を短くすることがどのような意義があるか。
藤田・お客様の要望に非常にフレキシブルに応えることができる。幅が広がる。目指しているところは具体的な数字はあげられませんが、現状の半分以下で上げられるようになれば、とても強みになるのではないかと考えていて、それに向けて開発を進めていると理解していただければと思います。
日経新聞・海外受注を今後目指す上で、このあたりから受注したいというものはあるか。
二村・いろんなところにお客様がおられますので、世界中のお客様から我々としては認知をされて、打ち上げの受注をできれば良いと思っております。
鹿児島放送・情報収集衛星レーダ5号機と4号機との比較で、コストや技術的な面でどういった進化があるか。
金子・レーダ5号機につきましては、先ほどの第1部の会見でもありましたが、これまでと比べて性能向上を図っています。一般的な意味において不断に性能向上を図るのは、我々の使命に照らして重要ことだと思っています。レーダ5号機についてもそういったことで開発に取り組んできて、今般無事軌道に投入されたということです。残念ながら4号機との比較でどうであるとは事柄の性質上申し上げられませんけども、我々としては性能向上と計画的にやっていく、衛星開発と運用は長期スパンで考えることでございますので、我々と致しましては政府全体の宇宙基本計画と行程表に沿って効率的に、また我々の使命を十分に達成されるように日々努力することだと思います。
NHK・具体的な数値ではなく、解像度が上がったとか、悪天でも撮像が可能になったとか丸く表現できないか。
金子・重要な指摘ですが、どういった方向で目指しているか、どういった改善をしていること自体が私共の仕事の性格から詳らかに出来ないと考えております。
朝日新聞・10機体勢への途中経過だが、情報収集衛星はシステムとして一定水準だが更に強化するというレベルなのか、それとも国際標準からするとまだまだなのか。どの程度の到達度と認識しているか。
金子・重要なご指摘だと思います。数の面で言えば基幹衛星4機、時間軸多様化衛星4機、データ中継衛星2機といったところで、一昨年我々が取り組んだところです。一口に他国と国際的にどう見るのかという観点からのご質問と理解しましたが、この分野でどの程度やるのかは、その国の置かれた情勢に極めて密接に関連すると思いますので、一概にどう比較するかはなかなか難しい問題ではないかと思います。我々としては基幹衛星4機を情報センター設立以来10数年運用してみて、もっと多様な時間帯でこれを一層活用する必要があるというのが、我々のこれまでの実績というか、やってきた経験を踏まえての判断、更には我々の意思にプラスして政府部内で議論した結果として、政府全体としての閣議決定に基づく行程表にもそういった事が書かれたことが大きな意味ではないかと考えています。
産経新聞・おっしゃっていた課題の中で、衛星のハードだけでなく、衛星から得られた情報をいかに読み取って安全保障や危機管理に役立てていくかが極めて重要だと思います。この人材面で、いま運用上、満ち足りているのか。また、衛星の機数が増えると情報も増えてゆく。そういった読み取っていくところの課題や展望をお聞きしたい。
金子・我が国の安全保障に照らして、4+4+2ということでハードの面で充実する必要があり、それを分析するところの人材についても非常に重要な課題であると所長が申し上げた通り、我々も日々質的にも量的にも大きな課題であると認識しています。課題をひとつひとつ克服していくことかと思います。
鹿児島読売テレビ・来年度はもっと多くの打ち上げを予定しているとのことだが、確実に成功するための課題や改善しなければいけない点は。
二村・来年度もそれなりの機数の打ち上げをひかえております。我々の打ち上げロケットそのものが使い捨てタイプですので、製造にあたっては毎回新しいロケットを打ち上げていという意味では、作り込みの精度あるいはそれに対する試験といったものを、ひとつも省略することなく、あるいは変に合理化することも避けながら信頼度の作り込みを続けている訳で、この辺りは当然スキルを含めて継続をしていかなければならないと思っています。実際に作業にあたる人も含めますと、当然人材的なリソースを、それなりのスキルに維持し続けるということ。当然世代も変わっていきますので、そういったことも含めて、我々の作り込んでいる信頼度を維持出来るようなことを、まずはしっかりやっていかなければならないと思っています。
打ち上げに際しましては、我々はJAXAさんの宇宙センターを使わせていただいておりますけども、我々としては作業を確実に実施していくために必要な、たとえば設備の改良ですとか、我々の作業の工夫といったものも併せ実施していく必要があると思います。非常に些細な工夫であったとしても、それをJAXAさんと相談をしながら、そういった多数機の打ち上げに向けて確実に実行できるようにしていかないといけないという風に思っております。
以上です
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