投稿日 2017年9月17日(日)19時34分 投稿者 渡部韻
「しきさい」(GCOM-C)概要説明(その2)
◆質疑応答
読売新聞
従来の観測は可視光によるものだったので陸かエアロゾルかわからなかったのか
杢野
陸域ではこれまで可視光だったが偏光と近紫外を使うことで陸域かエアロゾルかわかるようになった
読売新聞
エアロゾル、特に黄砂などは日常生活と関係が深いが、今後気象庁等現業部門がデータ同化に使いたい、という話は既にあるのか
杢野
同化という意味でははっきり申し上げられないが、黄砂の予報などにデータを使っていただく、という形で現在お話をさせていただいている
朝日新聞
陸域とエアロゾルの区別とは、陸域の雲とエアロゾルの判別なのか
杢野
陸上は凸凹しているので乱反射する形になるが、これを偏光で見るとエアロゾルの見え方と区別できる
村上
雲とエアロゾルの区別も出来るが、主眼としては、明るい陸面の上に霞のようなエアロゾルを宇宙から見てもあまり見えない。偏光を使って背景を暗くすれば微量なエアロゾルを区別しやすくなる。
朝日新聞
シリーズとしては「いぶき」を含めたものになっているのか
杢野
地球観測衛星は「いぶき」「しずく」「しきさい」があるが、対になっているのは「しずく」(GCOM-W)と「しきさい」(GCOM-C)で、水循環に関わるものを「しずく」、??(聞き取れず)循環やエアロゾルといったものを「しきさい」で観測していく。
日本テレビ
配付資料に現業機関、気象庁への準リアルタイムのデータ配信と書かれているが、これは黄砂など日常的な事象・情報についてのデータ配信なのか、エアロゾルや雲といった情報も気象庁気候情報課などを念頭に配信するのか
杢野
黄砂予報などに使っていただこうと気象庁さんと今最終的なお話をさせていただいている。中・長期的な数値予報モデルなどにも使っていただけるよう調整中。
NHK
「しきさい」の観測データは地球システムモデルの同化などに使われていくと思うが、現在の気候予測(地球温暖化)の予測精度はまだまだ不十分なのか。これが「しきさい」を使うことでどう変わるのか。
杢野
現在気候モデルは沢山あり、モデル間のばらつきが2度近くある。これを改善する為には更なる観測とモデルの改善が必要。(気温上昇を)2度に抑えたいというパリ協定に対してモデル間の誤差が既に2度ある現状では予測にならないので誤差を小さくする必要がある。
「しきさい」ではエアロゾルの観測によって気候変動の予測変動を上げていきたいが、少しでも予測精度が上がるだけでも、温度上昇が急なモデルと緩やかなモデル、どちらを辿るのかの見極めのつく時期が早くなる。時期が早くなれば温暖化によって引き起こされる問題に対して早めに対処出来る。2度の誤差がゼロになれば一番だが、わずかな改善でも効果があると考えている。
産経新聞
ホームページにおいてセンサーの比較対象に「みどりII」があげられていたが、この「みどりII」との性能の新規性について教えていただきたい
杢野
「みどりII」にはGLIというセンサーが載っていた。「しきさい」では偏光での観測機器が載っていることと、分解能の向上、250mで見えるチャンネルが増えている。
産経新聞
性能がアップした後継機と呼んでも差し支えはないか
杢野
「みどりII」のGLI(Global Imager)に対して今回はSGLI(Second Generation Global Imager)と読んでいるので、後継機と呼んでも差し支えはない
産経新聞
同種の役割をもつ海外の衛星はあるのか
杢野
Centinel、Aquaといった同種の衛星があるが、250m分解能や偏光観測機能は「しきさい」にしか無い
産経新聞
開発費は
杢野
打上げ費用込みで322億円
時事通信
CO2の吸収・放出は昼と夜や季節で色々異なるが、資料で紹介されている植生の違い以外にどのような推定方法があるのか
村上
様々な推定方法があるが、光を吸収して光合成を行う植生の緑の量、光の量、環境として温度や水の情報などが必要になる。水の情報は「しきさい」だけでは得られないが、光に関しては大気の雲やエアロゾルを観測することで地表に光がどのぐらい届き、植物がどのくらい光を使うかを出せる。これらを組み合わせることによって植物がどれだけCO2を吸収するか求められる
呼吸の方はより難しい研究要素があり、一番効くのは恐らく温度だと思うが、温度に関しては熱赤外のセンサーを積んでいるのでこれを使って推定することになると思う。ただこれだけでは決まらないのでモデルの研究機関と連携して推定していく
時事通信
吸収・放出のモデル、というのもあるのか
村上
JAXA単独でやっているわけではないが、共同研究という形で作っていく
時事通信
JAXAはモデルに入れる前のデータを提供するのか
村上
プロダクトとして標準的に出すものとして計画にあるのは、モデルに入れる前の段階の植物の量や光の量など
杢野
エアロゾルなどのデータは最終的に地球の予測モデルに連れて行かなければならない。これをJAXAだけで出来る訳ではないので、外部の方々と連携しながら成果の最大化を図っていきたい。
(写真はGCOMプロジェクト プロジェクトマネージャー 村上様)
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