宇宙作家クラブ
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No.2177 :第1段のエンジン側から ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月25日(水)23時42分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット7号機の第1段。エンジン側から。


No.2176 :H-IIBロケットコア機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月25日(水)23時41分 投稿者 柴田孔明

 2018年7月23日午後より、三菱重工業株式会社飛島工場にて、H-IIBロケット7号機のコア機体の報道公開と概要説明が行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
三菱重工業株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 H-IIA/H-IIBロケット打上執行責任者 二村 幸基
三菱重工業株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H-IIA/H-IIBロケットプロジェクトマネージャ 徳永 建

・H-IIBロケット7号機概要説明・二村 (※説明及び配付資料より抜粋)
 昨日も今日も名古屋の異常な暑さの中、お越しくださいましてありがとうございます。今日は恐らく日本一くらいになってしまうのではないかと思います。
 お手元にH-IIBロケット7号機についてということで配付されておりますので、それに基づいて説明をさせていただきます。

 ・H-IIBロケットにより宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV7)を所定の軌道に投入する。
 ミッション終了後、ロケット第2段について、南太平洋上へ制御落下を行う。
 (※HTV:H-II Transfer Vehicle)
 ・打ち上げ予定時期:2018年9月11日
 ・打ち上げ予備期間:2018年9月12日〜2018年10月31日

 ・基本コンフィギュレーション
  ・HTV用フェアリング(5S-H型 :直径5メートル・シングル搭載・HTV用)
  ・第2段エンジン(LE-5B-2):1基
  ・第1段エンジン(LE-7A):2基
  ・固体ロケットブースタ:4基
  ・第2射点を使用。

 ・特記事項
  ・MHIの打ち上げ輸送サービスで4機目のH-IIB打ち上げ。(※4,5,6,7号機)
  ・H-IIAロケットに適用済みのコストダウン項目を適用。
   例)部品の統一(2段ヘリウムレギュレータをH-IIAと同型に変更)
   ※従来、2段階で必要な圧力に落としていたものを、1段階で必要な圧力に落とすという、構造としてはシンプルなレギュレータに変更。
  ・ロケット再突入データ取得システムを搭載。
   ※ロケット第2段が大気圏に再突入する際の空力加熱データ等を計測するためにJAXAが開発したシステム。

 ・主要シーケンスから抜粋。
  ※H-IIBロケット2号機以降は同じ飛行経路とシーケンスになっている。
  ※リフトオフ後15分11秒後、高度287 kmで「こうのとり」7号機を分離予定。
  ※2段ロケットはリフトオフ後1時間39分5秒で第2段エンジンの2回目の始動を行い、減速の後に南太平洋上に制御落下を行う。なお、再着火時に機体はエンジンが前を向いている。
  ※第2段の制御落下はH-IIBロケット2号機より継続運用中。全号機、計画した水域への落下成功。

 ・今後の予定
  ・コア機体は工場での機能試験を終了し、出荷準備作業中。
  ・2018年7月25日に飛島工場より出荷し、同年7月27日に宇宙センターに搬入予定。
  ※固体ロケットブースタ(SRB-A)は工場での作業を完了のうえ射場へ搬入済み。
   コア機体起立後にコア機体に結合予定。
  ※衛星フェアリングは、射場へ搬入済み。

 ・その他、三菱重工「種子島宇宙教室2018」について
  全国から小学5、6年生を招いて「種子島宇宙教室」を開催中。
  (※2014年〜、年1回開催、公募制)
  今年は2018年9月10日〜12日に計20名を招待予定。
  締め切り日は2018年8月1日。詳細は以下を参照。
  https://www.mhi.com/jp/news/story/1807135955.html
 https://www.mhi.com/jp/csr/news/story/others_180713.html

・質疑応答
・7号機の製造期間、費用など公開できる範囲で。
二村・正確な数字はなかなか申し上げにくい。材料手配から打ち上げるところまで概ね3年弱と思っていただければ。3年の内訳の中には当然ですが部品の加工ですとか、材料確保から部品の組み立て、さらには今日のような形に仕上げるための組み立て艤装といった話、さらに宇宙センターに持っていって概ね40日くらいかけて打ち上げまで持っていく。そういったものを込み込みで3年弱と思っていただけれは。費用については契約上の守秘義務があり、大変申し訳ありませんがお答えできません。

・米国では民間のスペースXなどが活発になってきているが、開発競争という意味ではどういった危機感を抱いているか、あるいは歓迎しているか。
二村・お話にありましたスペースXですとか、ブルーオリジンなど米国の民間で打ち上げ輸送ビジネスをやっている会社、ここに限らずヨーロッパではアリアンスペースやロシアにもあります。そういったロケットという手段を使って宇宙空間に物資を運ぶ、あるいは衛星を運ぶビジネスという意味では同じフィールドで戦っておりますので、我々としてはグローバルな意味ではCompetitorsにあたるという風に思っています。これは言い古された言い方になりますけども、H-IIA/H-IIBはスペースXといったような価格破壊的なところで市場に出て来た業者からすると、残念ながら割高な輸送手段になっていることは否めませんので、国も含めて我々としては輸送手段のコストを下げるということについては非常に大きな課題だと思っておりますので、このH-IIBは能力も高くて非常にいいロケットでありますけども、さらにコストを下げるという必要性は非常に高いと思っていますので、今日のスコープからずれますけども、次のシリーズとしてH3というロケットの開発をまさにやっている最中でありまして、これをもってグローバルな戦いができるようにしていこうとやっている途中であります。

日経新聞・費用面でH-IIAのコスト削減の工夫をH-IIBにも反映したとあるが、どの程度なのか。
二村・初号機から7号機に至る中で相対的にどれくらいという質問だと思うが、大変申し訳ないのですが、H-IIBそのものは我々が技術移転を受けて民間ビジネスとして使い始めたのが4号機からになります。1号機から3号機までの最終的な打ち上げコストは我々としては把握していないというのが正直なところになります。4号機から7号機ですと、基本的にH-IIBだけで安くしていることは殆ど無くて、H-IIAで採用したコストダウンの手法や物をH-IIBにも適用しているということになります。相対的にどれくらいかは正直把握できておりません。特記事項のH-IIAで適用済みのコストダウン項目をH-IIBにも適用し、2段レギュレータを安くしたことについて、単純にここだけで言いますと、規模感ではざっと軽自動車並というお答えしか持ち合わせていないというのが正直なところになります。

日経新聞・H3に向けて開発が佳境を迎えていると思うが、H-IIBの開発と製造のノウハウの面で、H3にはどういった形で生かされていくのか。H3に向けてのH-IIBの意義。
二村・H-IIBだけでなくH-IIAも含めて、我々の持っているヘリテージというか、そういった財産を次にどう繋ぐかという話だと思いますが、宇宙ロケットに関して言いますと、突然新しいものをつくるということはあまり無くて、これまで培ってきた技術的なノウハウ、あるいは打ち上げを繰り返すことによって得られたデータですとかそれに基づいた知見ですね、こういったものをベースに次なるものを開発するというのは当然なことでありまして、そのあたりについては継続性が大事という風に思っています。ただ、大きくコストを下げることについては、技術革新というのが避けて通れないというか非常に重要になりますので、例えば材料の使い方ひとつをとってみても、これまで培ってきた材料の特性を把握した上で、例えば今回思い切って曲げ方や削り方などを変えるといったものが、我々の過去の知見の上で成り立つという見通しがあればそれを採用することで大きくステップアップできるという風に思っております。これもスコープが外れますけども、H3に関して言いますと、当然世の中は3Dプリンタですとか新しいものが出て来ている訳で、そういった新しい生産技術といったものについて積極的に取り込みながら、先ほど言ったように材料特性については、全く知らないものを使う訳にはいきませんから、抱き合わせで次のステップに行くということになると思っています。

日経新聞・次世代に向けて射場の大型化などの改善はグローバルな競争での課題として議論されていると思うが、打ち上げ輸送業者サイドとして望むべき競争力のある射場はどういったものか。
二村・なかなかお答えしにくい質問。我々としては多方面にご要請をさせていただいているが、今ここで詳らかにするのは差し控えたいと思っています。ただ古くから我々が言わせていただいている中のひとつに、H-IIAであれH3であれ、衛星の輸送手段として宇宙センターの間近のところまで航空機で輸送ができないのは我々としてマイナスポイントで、他国のロケットは比較的射場の近くまで航空機でもって衛星を運べる。そういった利便性については残念ながら劣る面がある。これは自治体等と話をさせていただきながら各方面にご要請させていただいている。つまり国内だけで戦うなら問題無いが、グローバルで戦うならば当然お客様はベンチマークをする訳で、不利な点と有利な点をそれぞれ持ち合わせている訳で、我々としてスタートとして日本が不利だと思っている点については、いろんな方面にご協力要請させていただくこともあれば、我々として手をかけていく部分もある。具体例については差し控えさせていただきます。

共同通信・今後コストを下げるのが課題としいう話だが、どんな風に削ればコストを下げられるか。
二村・いろんなところで同じ事を言をさせていただいているが、今のH-IIA/Bロケットに関して言いますと、既に開発を終えたものを技術移転と言う形で使わせていただいているのが実態です。従いましてこのロケットの様々なところを勝手に改善とか変えてしまうことができない。従ってこのH-IIA/Bというシリーズにおいて、コストを下げるために地道には努力をしているが、ダイナミックというか大幅にコストを下げるには至れないと思います。そういう意味で、日本の基幹ロケットとしてコストをダイナミックに下げるという意味では、大きな開発を伴わないと実現できないということで、次のシリーズの開発が立ち上がっていると認識しています。

共同通信・オンタイムの打ち上げ率が高いが、世界を見渡して一番というくらい高いか。
二村・オンタイム打ち上げ率という言葉を我々は定義づけているが、これは我々民間企業が勝手に作っている訳ではなく文科省さんが出している。天候や天変地異などそういったことでの延期はカウントしない、例えば機体の異常とか、設備系の異常でもともと予定していた日に打てなかった場合はオンタイムでなかったとなります。逆に天候等による遅延を除いて予定通り打てたものはオンタイム打ち上げができたと定義づけています。その定義で他の国と比較すると、あくまで三菱重工調べではありますけれども、我々はトップクラスにあると認識しています。

共同通信・JAXAのメディアキットによると(HTV7は)実験ラックが過去最多・最重量とある。重い物を打ち上げるとすると、それだけコストがかかるのか。
二村・コストの範囲によるが、H-IIBロケットを打ち上げるサイドから言うと、HTVに何を積もうがあまり大きく変わらない。積み込む物はHTVが担保しているもので、ロケット側は関与しない。

共同通信・重さはこれまでとあまり変わらないのか。
二村・H-IIBロケットでHTVを打ち上げる時に関して言いますと、運ぶ側の衛星とロケット側の能力との綱引きで、それをインターフェース条件といいます。H-IIBで「こうのとり」というものを運ぶ時は、「こうのとり」本体+運ぶ物の総重量を16.5トンまでと切っておりまして、それを基本的には相手側に守っていただいて、我々のH-IIBロケットで打ち上げることになっています。もちろん多少の数字の増減は調整の範囲でコントロールできますが、基本的にはそこで切っています。「こうのとり」本体+運ぶ物の総重量16.5トンを超えない限り特に問題無い。

東京とびもの学会・ロケット再突入データ取得システムだが、第2段が再突入する際の空力加熱等のデータを計測ということですけども、今後のロケット開発のデータ取得目的で取り付けられるものか。
二村・おっしゃる通りです。このデータがどんな使われ方をするか、いろいろな捕まえ方があるが、いちばん簡単なのは、我々が物を大気圏に再突入させる、今回特に2段を大気に突入させる、単純に言うと壊して燃やして無害化してゴミを宇宙空間に残さないためのもの。これで得られるデータが、空気層の濃いところに突っ込んでいったときにどういった動圧というか圧力を受けて壊れていくのかとか、あるいは空力加熱といって空気のあるところに物があるスピードで入っていくと非常に加熱されるということで、熱の上昇のあり方ですとか、そういったことのデータはなかなかとる機会が無い。今後デブリ化させないために、大気圏に物を落として宇宙空間にゴミを残さないということを積極的に進めるために、そういった基礎データをしっかりとっていきたい。繰り返しになるが今後の開発に役立つものと思っています。

東京とびもの学会・第2段を落とすのはこれまでもあったのか、それとも今回が特殊なのか。
二村・H-IIBの2段は組閣的軌道が低いところにいることもあって、少し減速するだけで大気に落とせる。宇宙空間に2段を残してしまわないということで、H-IIBはそれを積極的にやろうということで2号機から継続してやっている。H-IIAに関しては残念ながらやっていません。

以上です。


No.2175 :小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星到着 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月22日(日)23時12分 投稿者 柴田孔明

 2018年6月27日午前10時半より、小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星到着に関する進捗状況の説明会がありましたが、そのときには「はやぶさ2」は既に小惑星に到着しており、速報的な到着会見となりました。また同日16時からは関係者が多数参加しての記者会見も行われました。
 このうち16時の記者会見から抜粋します。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム
 プロジェクトマネージャ 津田 雄一
 (JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)
 プロジェクトエンジニア 佐伯 孝尚
 (JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教)
 プロジェクトサイエンティスト 渡邊 誠一郎
 (名古屋大学大学院 環境学研究科 教授/JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 客員教授)
 ミッションマネージャ 吉川 真
 (JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
 光学航法カメラ担当 杉田 精司
 (東京大学大学院 理学系研究科 教授)
 スポークスパーソン 久保田 孝
 (JAXA 宇宙科学研究所 研究総主幹/宇宙機応用工学研究系 教授)

コメント・津田
 今日は非常に良い報告をさせていただきます。本日私達は人類未到の宇宙科学探査の入口に立つことができました。小惑星探査機「はやぶさ2」は日本時間2018年6月27日午前9時35分にリュウグウ上空約20キロメートルのホームポジションに到着しました。到着までの飛行時間は1302日、総飛行距離は32億キロメートルです。小惑星到着後の探査機の状態は正常で、はやぶさ2を観測に適したホバリング位置に維持させることに成功しています。今後「はやぶさ2」は1年半かけてリュウグウの詳細観測と着陸サンプリング等の小惑星表面にアクセスする運用を行ってまいります。「はやぶさ2」が非常に良い状態を維持したまま人類未到の天体の探査を開始できることを大変ありがたく思っております。「はやぶさ2」プロジェクトの実現と安定運用を後押ししていただいた日本及び全世界の皆様に感謝申し上げます。それと本日、到着ということで特筆したいのは「はやぶさ2」プロジェクトに携わった技術スタッフ運用メンバーです。これほど安定して、かつ極めて高い精度で32億キロメートルの宇宙航路を完走に導いたJAXA国内外研究機関メーカーの技術スタッフにおめでとうと申し上げさせていただきます。これから始まるリュウグウの本格探査の成果をぜひ楽しみに見守っていただければと思います。

コメント・佐伯
 本日リュウグウに無事我々が到着できたということで、まず最初の感想はほっとしております。非常に長い長い航海を経て目的の小惑星に、さきほどプロジェクトマネージャからありましたけども、探査機が非常に健全な状態で到着できたということで、これから先の運用に期待が持てるのではないかと思っております。一方これから小惑星リュウグウが支配する領域に入っていきますので、探査機はこれ以上に手をかけてあげないといけなくなります。放っておいたら落ちてしまうことになりますので、これから我々は一週間まるまる探査機をケアしてあげて、その裏でこれからのクリティカルな、例えばタッチダウンとかインパクターというものの準備を進めていかなければならない。手をかけつつ裏でいろんなことの準備をしていかなければならない状態になっていきますので、これ以上、今まで以上に気を引き締めて着々と進めていきたいと思っています。

コメント・渡邊
 今日無事に到着できて、まずは一安心ということですが、これからがまさにサイエンスが、リュウグウというものがどんな天体であるかというのを解き明かして、そこから最高のサンプルをとって帰れるように表面の科学的な評価をしていくということをしなければなりません。非常に限られた時間の中でそれをやっていくということで、工学系と理学が人馬一体の形で進めていくミッションとなります。タッチダウンをしてサンプルを取ることが目標になりますので、まず着いてから一ヶ月半くらいの間に、表面にどういうものがどういった分布をしていて、クレーターとか石がどういう風に存在しているかということを明らかにしていくことで、どこからサンプルをとってくればいいのか、そういった検討を進めていきたいと思います。ぜひ皆さんに関心を持って見ていただければと思います。

コメント・杉田
 今日まさにホームポジションに着いて、本格的な科学探査観測が始まる訳ですけども、既に発表で出ているように非常に面白い画像が撮れていまして、我々が到着したリュウグウという星が大変興味深い星だということまではもう既に判っていると言っていいと思います。あと問題はタッチダウンをして、ここに取りに行くぞという決断をするまでに、渡邊さんから説明があったように、ベストの情報を得てそれで臨みたいということで、理学研究者の力の見せ所はここということで楽しみにしているということです。

・質疑応答では、到着時の管制室の様子や、着陸地点を決めるのはいつ頃になるかなどがあり、着陸地点については8月半ばという回答がありました。


No.2174 :燃焼試験の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月22日(日)20時39分 投稿者 柴田孔明

2018年6月25日16時16分(JST)の燃焼試験。
 試験設備から約500mの地点で撮影。
 この日は風向きが良くなくて、噴射煙(冷却用の水の蒸気)がこちら側に向かってきてしまい、あまりよく見えませんでした。またそれなりに大きい音ですが、水の噴射による消音の効果が高いのと、SRB-Aのような固体モータが無いぶん、だいぶ大人しく感じられます。

 なお、計画では燃焼時間は235秒の予定でしたがこの日は218秒で停止しています。これはJAXAによると「液体水素ターボポンプの入口圧力が下限値に達したため、自動停止しました」とのことでした。


No.2173 :エンジン試験設備 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月22日(日)20時36分 投稿者 柴田孔明

同じく2017年11月14日に公開されたエンジンの試験設備。
こちら側に噴射煙が向かってくることになります。


No.2172 :LE-9公開時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月22日(日)20時35分 投稿者 柴田孔明

2017年11月14日に行われたLE-9公開の様子。
このときは燃焼試験はありませんでした。


No.2171 :LE-9実機型エンジン燃焼試験 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月22日(日)20時29分 投稿者 柴田孔明

 2018年6月25日に、種子島宇宙センターにてH3ロケット用LE-9実機型エンジンの燃焼試験が報道向けに公開されました。この試験に先立ち、竹崎展望台の記者会見室で概要説明が行われています。なお、計画では前日の6月24日に行われる予定でしたが、準備期間中に激しい雷雨があったことから翌日に延期されています。
 また、今回に先だって2017年11月14日にLE-9実機型エンジンの報道公開が行われており、エンジンに近づいての撮影は、その時に行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
JAXA 第一宇宙技術部門 H3プロジェクトチーム ファンクションマネージャ 沖田 耕一

・岡田
 ようやくこの日を迎えることが出来ました。一つ目の段階は、なるべく早く皆さんにエンジン試験を公開したいなという思いでいたのですが、なかなかタイミングがうまく合わなくて今日になってしまいました。また、本当は昨日の予定でいたんですけども、非常に種子島らしい雷に襲われまして、残念ながら前日の作業が十分に終えることが出来なかったので、やむなく深夜に1日延期させていただき今日になりました。おかげさまで天候は試験に支障の無い天候になっておりまして、午後雨が少しぱらつく予報にはなっているのですが発雷は無いです。また試験が予定通りいけば、ちょうどその辺りは雲が薄くなっているところではないかと思います。これから沖田にエンジンの話をさせていただきますけども、我々入社がほぼ同じくらいでして、つかず離れずロケット全体とエンジンということで開発を進めてきました。ではよろしくお願いいたします。

・沖田(※説明と配付資料より抜粋)
 さきほどご紹介ありましたけども、今日、燃焼試験235秒を実施する予定です。ほぼミッション・デューティー・サイクルです。今日実施する訳ですけども、LE-9エンジンの開発状況と実機型試験の状況についてご説明したいと思います。

 ・H3ロケットは、H-IIAロケットの後継機として、打ち上げの柔軟性・高信頼性・低コスト化の実現を目指し、2020年度に試験機の打ち上げを予定。
 ・H-IIAは長くても全長56メートルだが、(H3は)全長63メートルとかなり大きくなる。
 ・1段エンジンは抜本的な低コスト化が必要となり、LE-9エンジンを新規に開発中。
 (※LE-9…燃料:液体酸素/液体水素、推力:1471 kN、Isp:425 sec、サイクル:エキスパンダーブリード)
 ・2段エンジンはLE-5B-2エンジンを改良設計したLE-5B-3エンジンを適用予定。
 (※LE-5B-3…燃料:液体酸素/液体水素、推力:137 kN、Isp:448 sec、サイクル:エキスパンダーブリード)
 ・エンジンはロケットの中で難度が高く、信頼性とコストに大きく影響。
 ・エキスパンダーブリードサイクルエンジンは本質的安全で簡素なため、低コストと高信頼性を両立可能。
 ・H3ロケットではLE-9/LE5B-3ともにこのエンジンサイクルを採用。

 ・LE-9エンジンのコンセプト
  ・現行のLE-7Aに比べ、簡素なシステム。
   ・コンポーネントを20%削減すること。
   ・高信頼性と低コストを両立させる。
  ・推力:1.4倍(ジャンボジェットエンジン5基分に相当)
   ・高性能ターボポンプ(燃料を送り込む装置)
   ・毎秒700回転で700リットルの水素を供給。
  ・出口のガスの速さ:マッハ5。
  ・新技術の適用
   ・大推力エキスパンダーブリードサイクル。(大推力では初めて)
   ・3D造形。(低コスト化のため)
   ・世界初の大型電動弁による可変推力。

  ・大推力エキスパンダーブリードサイクル
   1.副燃焼器なし。(燃焼室を冷却する水素を使う)
   2.高温/高圧部位削除(約20%部品点数削減)
   3.エンジン内部で水分発生しない(パージ不要)
    →本質安全
      ・リークやエンジンバランス異常時にパワーダウン方向に緩やかに遷移。
      ・ロバストな起動過渡特性。
    →低コスト
   4.タービン駆動系統がメイン燃焼器系統と独立。
    (燃焼室圧力増大、ターボポンプ出力低減)
    →大推力化。

  ・製造コスト低減への取り組み。
   Design To Cost活動、製造プロセス、サプライチェーンの見直しに加え、Additive Manufacturing(3D造形)等、最新の低コスト技術を導入。
   ※噴射器や噴射器エレメント、燃焼室マニホールド、配管などを3D造形(LMD、SLM)や粉末冶金で製作する。
   (実機型#1-2エンジンより抜本的に適用予定)

  ・世界初の大型電動弁による可変推力
   ・1回の燃焼試験で多数の動作点を連続的に試験可能。
    →検証度の深化・効率化
   ・領収燃焼試験の1回化→エンジン製造コスト低減
   ・アクセスレス点検・自動点検が可能。→機体運用コスト低減。

 ・LE-9エンジンの開発スケジュール
  ・実機型エンジン燃焼試験 2017年度〜
   ・設計意図通りの機能・性能を発揮することの確認、起動/停止シーケンスの確認、各コンポーネントの性能データの取得。
   ・台数(予定):4台(うち2台は、第1段肉厚タンクステージ燃焼試験用)
  ・認定型エンジン燃焼試験 2019年度〜
   ・実フライト用エンジンと同等の設計・製造方法のエンジンを使った設計の確定。
   ・台数(予定):2台
  ・第1段肉厚タンクステージ燃焼試験(BFT) 2018年度〜
   ・模擬タンクとエンジンを組み合わせ推進系としての機能・性能データを取得
  ・第1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT) 2020年度
   ・実フライト相当のタンクとエンジンを組み合わせ推進系としての最終確認。

 ・実機型エンジン燃焼計画
  1.広範囲で厳しい試験条件
   ・「製造ばらつき」、「フライト時のエンジン入口圧力/温度ばらつき」を考慮したエンジン作動状態を包絡する広範囲の作動条件(温度・圧力・流量)、累積作動秒時の試験を実施。
    →エンジンシステムの特性、コンポーネントの耐久性・特性データを取得。
   ・量産時には、製造ばらつきにより特定のコンポーネントに負荷がかかるエンジンが製造され得る。このようなエンジンがフライトした時に、コンポーネントにかかる最も厳しい状態をさらに上回る条件で試験。
   ・試験機および運用機の最大作動秒時を大きく上回る作動秒時・作動回数を累積し、寿命設計の妥当性を確認。

  2.課題を明らかにして設計に反映
   ・これまでのエンジン開発で得た知見に基づき網羅抽出した故障モードに対して個々に設計を実施。
   ・実機型エンジンで明らかになった課題は、都度、後続の実機型エンジンに対策を反映して検証し、認定型エンジン設計を固める。
   ・認定型エンジン燃焼試験で課題が発生すると開発に対する影響が大。実機型エンジンで課題の洗い出しを図る。

 ・実機型#1エンジン燃焼試験結果概要
  ・実機型供試体にて1シリーズ(全11回、累積270秒)の試験を実施。
  1.過渡特性の確認:電動バルブによる円滑な起動および停止特性を取得。
  2.定常性能の確認:定格の約90%の推力での定常性能を取得。
  3.作動点制御特性の取得:電動バルブによる推力混合比制御を実施。

 ・実機型#2エンジン燃焼試験実施状況
  ・主な試験目的は以下の通り。
   1.100%作動特性および長秒時特性の確認。
   2.始動停止・作動点制御シーケンスの確立。
   3.製造ばらつき・エンジン入口圧力/温度ばらつきを考慮した作動範囲における作動確認。
   4.寿命設計の妥当性確認。
   5.点検・予冷等・機体コスト低減技術(アクセスレス運用)のBFT事前検証。

  ・6月24日までに7回、累積1154秒の試験を実施し(累積秒時目標1086秒以上が認定試験実証要求)、1〜5に対応するデータを取得。

  ・8回目は235秒の試験を計画(推進薬の消費により短くなる可能性あり)。秒時を累積して寿命をさらに追い込むとともに、これまでに未確認のエンジン入口圧力/温度条件で試験を行う。

・岡田
 最初に申し上げなければいけなかったのですが、本当に遠路はるばる種子島までおいでいただきまてありがとうございます。我々、この試験が自信があるとか無いとかそういう次元をかなり超えていまして、ここまでやり尽くして準備も尽くしてきた試験ですので、ぜひ成功させたいと思っています。ただ技術データの取得の試験なので、打ち上げと違いまして何が成功で何が失敗かにあまり境目が無いのですね。なのでデータをしっかり取るということと、それから取られたデータを次のステップに生かすこと、それから何か想定外のことがあったときには、自動停止項目を山ほどつけて監視していますので、安全にエンジンを止めるということでやっていきたいと思います。今日の試験は235秒ということで、タイマーでセットしていますけども、その前に推進薬が全部無くなってしまうなど、自動で止まることはあると思います。その点はあらかじめご理解いただきますようお願いします。それから現在の試験の準備状況ですが、特に連絡がございませんので、推進薬がタンクに入っている状態から徐々に設備を冷やし始めて、最終的にはエンジンをキンキンに冷やした状態で準備が完了するという状況であります。

・質疑応答
鹿児島テレビ・エンジンの燃焼試験を繰り返しやってきたことで、国産ロケットのどういった未来、将来的なイメージがあるか。
岡田・エンジンの方の話からしますと、この沖田が研究を始めたのは10年前くらいで、最初は大きな開発なので、なかなか立ち上がる訳でもなくて、ある意味細々と信念を持って研究をし続けてきたエンジンがようやく形になりました。このエンジンが本当に出来ますと、信頼性と価格の面で非常に国際競争力の高い、単品としてはそういうことになるエンジンと思いますし、エンジンのシステムそのものはユニークでなかなか真似の出来ない芸当であるということで、それをロケットに組み込んで使えるということは、ロケット全体の国際競争力を高める非常に大きな要素になると思っています。もちろんエンジンだけでロケットは飛んで行きませんので、その他も含めて仕上げに入っていきたいと思っています。

南日本新聞・エキスパンダーブリードサイクルでLE-5Bの技術がLE-9に受け継がれているのは判るが、さきほどこれまでのエンジン開発で得られた知見、LE-7Aで得られた知見も反映されているという説明があった。仕組みは2段燃焼とエキスパンダーブリードサイクルと違うが、LE-7Aのこういった部分を反映・知見を得た部分は何か。
沖田・簡単なところというと接合とか溶接、そういったものは共通技術で、特に過酷な条件で使ったのがLE-7であったりLE-7Aでありました。このLE-9も3Dプリンタをたくさん使っているものの、どうしても溶接とか接合部分というのは存在してございまして、そういったものにはそこにどういうケアをしなければいけないか、どういう故障モードがあり得るかというのを事前にサーベイして設計上十分満足できるような仕掛けをちゃんと設計に組み込んでいくという風な類のものとか、あともっと遡るとターボポンプの軸振動の問題が非常に苦労したので、そういったものをできるだけ避けて通ろうといったところで、もともとの設計段階からターボポンプをコンパクトにしてローターを短く太くするとか、そういったものを適用・実施してございます。

南日本新聞・LE-7Aとかで故障があったものの知見という意味でしょうか。
沖田・基本的には故障等で、あと苦労したところ、運用性が悪いねといった、不具合は起きていないが検査をいっぱいしないといけない所を、なんとかやめたい。そういったできるだけ検査をミニマムにできるような設計に変えていくとか、そういった工夫をしてございます。

南日本新聞・前のエンジンから知見を得るにあたって、LE-7Aは成功率100%とあったが、LE-7Aが打ち上げ失敗に繋がる大きなトラブルが無く信頼性を勝ち得てきたことがLE-9に与える影響はあるか。
沖田・もちろんございます。例えば、設計するときにどれくらいの余裕を確保したら良いか、材料はどれくらいばらつきを見込んだら良いかといったところは、基本はLE-7Aのヘリテージを活用しながらLE-9の設計を進めていくといった作業をしてございます。

南日本新聞・認定試験は来年度と伺ったが資料では2018年になっている。
沖田・認定型は2019年度です。資料の記述間違いです。
司会・資料12頁の認定型エンジン燃焼試験の2018年を2019年と訂正致します。

南日本新聞・BFTは今年度の冬くらいか。
岡田・準備が出来次第なんですが、いまBFTはスタンドを作っていまして、このエンジンのシリーズが終わった次のエンジンとその次エンジンを種子島でチェックしたものを(田代に)持っていきますので、準備でき次第ということで今年度後半には始められると思います。

日経クロステック・エキスパンダーブリードサイクルの説明の中で、水素の流れでタービンを回すとはどんな理屈なのか。
沖田・ポンプから流れてきた水素を燃焼室で昇圧して、その水素ガスでタービンを駆動する。
岡田・燃焼室の温度は三千度Cくらいで金属(の融点)よりも高い温度になりますので、燃焼室そのものの壁を冷やしてあげないといけなくて、(燃焼室の図を示しながら)、中に溝が切ってあってそこで冷やす。冷やしたときに熱交換をしますので、冷やした水素自体の温度が上がって、その温度の上がった水素ガスを使ってタービンを回してあげている。

NHK・冒頭の挨拶で「ようやく本日を迎えることができました」とあったが、昨年のエンジン公開の時と比べて開発スケジュールが若干押している印象がある。そのあたりのスケジュールは実際どういう風になっているのか、また全体のロケット開発にどのような影響が出ているか。2020年度の初飛行に向けて、どういう風に考えているか。
岡田・必ずいただくご質問だと思っていました。エンジン試験は確かに当初想定よりずれ込んでいます。ただ開発というのは大体計画に対して早まったり遅くなったりする部分がありまして、このエンジン開発だけとってみますと当初計画より少し後ろに来ています。いくつかの理由がありますけども、試験と試験の合間を我々が当初考えていたよりも慎重にステップを切っていて、このエンジンは安全に試験を進めることが大事なので、かなり入念な検討、たとえば条件設定ひとつとって見ても1日で終わると思っていたのが3日くらいかけてやるとか、そういう風にやっていました。また点検やその間に部品の交換などもやりながら今日に至っています。そういう意味で一番最初に、ある意味やってもいないエンジン試験の計画を立てる訳なので、それよりは遅れています。ただ逆にエンジン試験をやりながら見えてきたこともあって、それは後ろのところで意外と早く工程が進む部分も見えています。例えばエンジンの製造が初めて作ってみると少し短めにできる部分もありますし、そういったことで開発全体でバランスをとりながらやっています。今我々は2020年度を目指していますけども、そこに対しての目標は変わらないと思っています。
沖田・あまり補足するところはない。今のところ機体とインターフェースをとりながら進めているが、打ち上げ計画に影響を与えるような状況には無いのを双方で確認しながら進めている次第です。

東京飛びもの学会・用語の確認だが、口頭で電磁弁と電動弁が出ていたが、どちらが良いか。
沖田・電動弁が正規です。

東京飛びもの学会・資料5頁にターボポンプによる水素供給量が出ているが、酸化剤の方の供給量はどれくらいか。(※水素は、毎秒約700回転で700リットル)
沖田・後ほど調べて回答します。

東京飛びもの学会・出口のガスの速さがマッハ5とあるが、燃焼室出口ではなくノズルスカート出口の速さか。
沖田・ノズルスカート出口の速さです。

中京テレビ・今回のコスト削減のひとつに3D造形があるが、これは世界の中では当たり前になっているのか。
沖田・今や当たり前になりつつあります。既にNASAでも試作試験を実施していますし、海外のロケットエンジンメーカーは基本的に3D造形でエンジンを作ることをどんどん始めている。

中京テレビ・3D造形は愛知県が得意と聞いたが、その辺りはどうか。
沖田・残念ながらこの装置自体は両方(LMD、SLM)とも海外の製造装置です。その中でLMDを一部取り扱っている会社が愛知県にもあるのは承知しているが、ここで言うLMDは海外の装置でございます。

中京テレビ・世界が3D造形の方向を目指しているが、例えば噴射機エレメントは大きさと実用に向けたところで結構リードしているのか。
岡田・実験用エンジンや小型エンジンではかなり世界中で色々な3D造形があると聞いている。今回のLE-9で言いますと噴射機エレメントで、大型かつ実用に向けて開発を進めているという意味で言うと、かなり先頭集団に居るのではないかと思っています。

宇宙作家クラブ・実機型エンジンの型番ですが、#1-1とか#1-2となっているのは意味があるのか。
沖田・実機型#1のコンポーネントを一部流用して使うので、実機型#1-2という名称にしています。実際にはコンポーネントも実機型#1と#2で得られた成果と課題を反映したものが実機型#1-2に用いられることになります。そういった課題が全く無いコンポーネントはそのまま使います。課題があるものは設計変更して改善したものを実機型#1-2にもっていく。

読売新聞・エキスパンダーブリードサイクルエンジンは日本オリジナルの技術とおっしゃったが、小型のエンジンではこれまでも採用されていたということか。
沖田・小型のエンジンでもLE-5AとかLE-5Bなどしか実運用には供されていない。

読売新聞・大推力では初めてということか。
沖田・エキスパンダーブリードサイクルというのは、燃焼ガスから吸熱して駆動させるという意味で、なかなか大推力には向かないと言われている。フルエキスパンダーは恐らく推力110〜120トンくらいが限界であろうと言われてまして、大型で150トンを実現するといったところは、まさにここの吸熱量を非常に効率的に吸熱させるのと、この吸熱ガスを活用してタービンでポンプを駆動させる訳ですけども、ここに高効率なタービンをデザインしなければいけない。この二つの大きい技術課題というのがあって、今まではなかなか大推力化はやられていなかった。そこがLE-X技術実証で見通しが十分ある。今まで机上検討で見通しがあると言っていたものを、実際に見通しがあるというのを示したことでエンジン開発を実現させた。

読売新聞・大推力化ができた技術的な肝は燃焼室の壁の形状か。
沖田・形状もそうですし、サイズもそうです。
岡田・タービンを駆動するときのガスに、いかにエネルギーを沢山与えてあげるかということで、熱をどれだけもらえるか、そこの技術が凄く難しいと思います。ギリギリのある種限界的な設計をきちっとして、熱が十分とれるような設計にして、そのとった熱でタービンを効率よく回してやるということが出来て初めてシステムが成立する。そこに形状とかいろいろなことが最適に入っていく。
沖田・エキスパンダーブリードサイクルは世界で実用化されているのは日本だけ。
岡田・小型でも上段エンジンとして実用していたものを、そのベースで大型化していっている。

読売新聞・H3が成功したら、エンジンが高性能で低コストということで、世界が追従してくる可能性はあるか。
沖田・世界は別のエンジンサイクルを3D造形で、例えばヨーロッパではプロメテウスエンジンという試作エンジンを開発し始めていますし、アメリカは民間企業が主体的になって、彼等はもっと高性能な方向性を目指している部分がある。それぞれが自分の得意分野で良いエンジンシステムを作ろうとしている。どこも隣の庭は良く見えるが、その通りにやろうというよりは、自分の所の強みをどう生かしてやるかというのが世界の流れではないかと考えています。

鹿児島放送・6月24日まで7回累積1154秒というのは、7回の試験でこれだけの秒数の燃焼試験を行ったということか。それを踏まえ、今回の235秒はどういう数字なのか。
沖田・7回で1154秒を累積してやった。途中で止まったりもしています。推進薬タンクいっぱいで150トンのエンジンの推力で燃やしていくといっぱいいっぱい使うと235秒になります。

鹿児島放送・今までの燃焼試験の最長は何秒か。
沖田・推力を下げるともっと秒時は長くなる。推進薬量が少なければ秒時は長く、多くすると短くなる。今回の場合は推力が高めのところをずっとやる試験なので秒時は比較的短めになっている。
司会・前々回は275秒くらいやっていたと思います。

南日本新聞・今日が終わっていないので総括するには早いが、1機目と2機目のデータを得られ一区切りになるが、感じている手応えなど。
岡田・ロケット開発全体で見たとき、いちばんのポイントがエンジン開発、特に新型の大型エンジンということで、誰が見てもここに一番のポイントがある。ここが鍵を握るというものなんですけども、それが大体一つ目の峠を越え始めている印象があります。もちろんエンジン開発は私が常々申し上げていますが魔物が潜んでいますので、何が起きるかわからないので安心はできませんけれども、フェーズ的には一つ目の山を越えつつある。今日きちっと試験をして、データをとって、まず最初の山の頂上に立ちたいと思っていますが、立てばその山の向こうに大きな山がまた見えると思いますので、引き続き頑張っていきたいと思います。

南日本新聞・今のところLE-7のときにあったような重大なトラブルは無いが、概ね期待したようなデータが順調にとれているのか。
岡田・非常に良いデータがとれています。

南日本新聞・BFTやCFTの重要な試験が進んで、なかなか気が抜けないことが続いていくと思うが、その中で注視して開発を着実に進めたいとか、大切にされている思いがあれば。
岡田・資料13頁(試験のスケジュール)を見れば見るほど、これからいかに大きな山が待っているかという所だと思いますけども、我々がいくら考えても思い通りにならないことは多々あります。そこはリスク管理というのですかね、いろんな事が起きることに常日頃備えるということが、計画をしている者としては大事にしないといけない、しっかりやっていかないといけない所だと思います。また非常に多くの関係者、JAXAだけでは全然物が出来ませんので、多くの企業の方々と一緒になってやっていますので、そこのコミュニケーションですね。おととい雷が来ましたけれども、その時も現場の方はなんとか昨日の試験を実現したいという思いで夜中まで粘って作業をしようとしてくださいました。もちろん労務的にはあまり良くないことかもしれませんが、そういう皆で思いをひとつにしていくということで、先ほど申し上げたような山を乗りきっていくことだと思います。ですから冷静にリスク管理をするということと、思いをひとつにすることだと思います。

以上です。


No.2170 :H-IIAロケット39号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年7月17日(火)23時29分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット39号機は2018年6月12日13時20分(JST)に打ち上げられ、同日15時20分頃から打ち上げ経過記者会見がJAXA種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室で行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 木野村 謙一
 文部科学省 文部科学審議官 伊藤 洋一
 宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
 三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦

・側面列席者
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 技術部企画課長 一ノ瀬 宏昭
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 金子 忠利
 文部科学省 研究開発局 宇宙利用推進室長 庄崎 未果

・打ち上げ結果報告(阿部)
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成30年6月12日13時20分00秒に、内閣衛星情報センター殿の情報収集衛星レーダ6号機を搭載したH-IIAロケット39号機を予定通り打ち上げました。ロケットは計画どおり飛行し、情報収集衛星レーダ6号機を正常に分離、所定の軌道に投入したことを確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北西の風9.0 m/s、気温25.0度Cでした。
 情報収集衛星レーダ6号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算39機中38機の成功、成功率は97.4%になりました。H-IIBを合わせると通算45機中44機の成功、成功率97.8%です。またH-IIA/H-IIB、39機連続の打ち上げ成功です。
 前回に引き続き情報収集衛星の打ち上げとなりました。天候により1日延期後の打ち上げとなりましたが、好天の中、無事打ち上げることが出来、大変安堵しています。当社はこれからも皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
 今回の打ち上げに際し多くの方々にご協力ご支援頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

・打ち上げ結果報告(山川)
 ただいま三菱重工業株式会社からH-IIAロケット39号機による情報収集衛星レーダ6号機の打ち上げ成功に係るご報告がありましたが、私からは今回の打ち上げにあたりまして、JAXAの役割であります安全管理業務を達成したことをご報告致します。私が理事長就任後初めての打ち上げになりますけれども、無事打ち上げが成功して安堵しております。この打ち上げは地元の皆様をはじめとして関係機関のご支援ご協力の下に成し得たものでございます。本打ち上げに関しましてご支援ご協力をいただきました皆様に対し、あらためて御礼申し上げます。なお今回の打ち上げは今年度最初の基幹ロケットの打ち上げとなります。今年度、種子島宇宙センターからは残り2機、内之浦宇宙空間観測所からは1機の打ち上げを予定しております。今後とも確実な打ち上げができるように誠心誠意取り組んでまいります。引き続きご支援ご協力のほどをよろしくお願いいたします。

・会見者挨拶(木野村)
 台風一過の美しい青空の下、ここ種子島の宇宙センターからH-IIAロケット39号機が打ち上げられました。搭載しておりました情報収集衛星のレーダ6号機を所定の軌道に投入できました。現在、センターとしましてレーダ衛星につきましては計4機を運用中であります。しかしながらこのうち2機は、その設計寿命である5年を越えて運用しておるところであります。さて、ここ種子島の自然の美しさとは全く無縁の如く、本日午前中には米朝首脳会談がシンガポールで行われる等、未だ国際情勢は流動的であり、いろいろな情報が錯綜している中で、まさに正しい情報を探求するためにも、本日打ち上げましたレーダ6号機は極めて重要な衛星と考えております。今後センターと致しましては、レーダ6号機の早期の本格運用に向けた所要の作業を着々と進め、我が国の情報収集能力がより強固となるよう全力を尽くしてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

・会見者挨拶(伊藤)
 本日お手元にも配付してございますように、林文部科学大臣の談話を見ていただければと思いますけども、今回の打ち上げ成功によりまして、いわゆる基幹ロケットとしては42機連続の成功となったことは、我が国が有するロケット技術の着実な発展、信頼性の向上を示すものであり、私としてもたいへん喜ばしく思っております。基幹ロケットはH-IIA、それからH-IIB、さらにはイプシロンロケットのこの3つを称して基幹ロケットと申しております。ロケットの打ち上げにご尽力ご支援いただきました関係者の方々に、あらためてこの場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。また今後も情報収集衛星が順調に運用され所期の目的を達成することを期待しているところであります。文部科学省におきましては、今後も基幹ロケットのさらなる安全性・信頼性の向上とともに、次期の基幹ロケットでありますH3ロケット、この開発に着実に取り組んでまいりたいという風に考えております。

・質疑応答
NHK鹿児島・米朝首脳会談が行われ合意文書に署名というところまで来ている。そういう日に事実上の偵察衛星の打ち上げ成功、将来的には10機の情報収集衛星の運用を目指しているところですが、今日この日ということを踏まえた上で、あらためて所感を伺えればと思います。
木野村・我々内閣衛星情報センターはご存じのようにイミントの機関であります。イミントの機関はエビデンスに基づいて分析するのが最大の役割だと認識しています。今回、午前中に米朝協議がありまして、まだトランプ大統領の記者会見が終わっておりませんので、細部については評価のしようがございませんけども、我々は今回どういう形で米朝協議の結論的な部分が公表されるかわかりませんけども、我々はこの公表結果を受けて、当然ながら関心国については本当にその同意をしたことが実証されているのかというエビデンスをしっかりと把握するというのが、今までもそうでしたけれども、今回のレーダ6号機の打ち上げを契機として新たな気持ちで取り組んでいきたいと考えています。

共同通信・トランプ大統領が北朝鮮の非核化のプロセスが迅速に進むといった趣旨の発言をされていたが、今関心国のエビデンスを把握するとおっしゃっていたのは、つまり非核化のプロセスがどう進んでいくのかに、今回の衛星等を含めて情報収集衛星が使われていくという理解で良いか。
木野村・具体的なことについては、ここではお答えできません。我々は最大の関心を持って言及されたことが行動に移っているかということが、我々にとって大事な責務だと思っているので、しっかりと見ていきたいと思います。

共同通信・今回打ち上げた衛星の運用開始はいつ頃か。
木野村・運用開始に向けた初期機能確認という行動につきましては、日にちは限定できませんけれども、一般論で申し上げますと数ヶ月から半年かかると現段階では考えています。

南日本新聞・国際情勢がいろいろ変化している中で、政府として10機体制を目指すという方針は変わらないのか。変わらないとすればその意義は。
木野村・現段階において10機体制は我々にとって極めて重要な目標と思っています。10機体制が確立されたならば、少なくとも今の機数、それから性能が向上することは間違いございませんので、今よりも大幅に情報収集能力が高まると自負している。

南日本新聞・理事長に就任されて初めての打ち上げだったが、所感とかお気持ちをいただければ。
山川・私は12年前までJAXAの宇宙科学研究所というところにおりまして、実際に内之浦宇宙空間観測所におきましてロケットの打ち上げの業務に関わっていましたので、今回12年ぶりに現場に戻ってきたという感覚でおりまして、やはり緊張感もありましたし、理事長としての決意というものも、従来のエンジニアとしての立場に加えて責任というものを非常に重く受け止めた、そういった打ち上げでありました。

産経新聞・北朝鮮とは別に、中国の動き、海洋での状況監視も情報収集衛星にとって大事な役割だと思うが、中国の偵察衛星に相当する地球観測衛星を日本より速いペースで打ち上げている。当然日本のことも監視している。上空からの監視能力が日本と中国で差が開き続けてきている現状についていかに考えているか。どうすればこのギャップを埋められるか。
木野村・ギャップがあることは十分認識しています。そのために我々は当面10機体制を1年でも2年でも早く早期に確立するのが大事だと思います。それとセンターが運用している情報収集衛星もオールマイティでは決してございませんので、いま質問があった事項については他国と連携をとってやること、更には今言われているように、将来的には小型衛星の活用も含めて総合的に判断せざるを得ないと考えます。それによって今よりも一歩でも二歩でも我々の情報収集能力を高める努力を、私自身もする必要があると痛感しております。

産経新聞・他国というのはアメリカなど西側の国のことか。
木野村・同盟国は当然ながら一緒にやっていくことになると思います。


・H-IIAロケット打ち上げ経過記者会見後ブリーフィング(第2部)

・登壇者
 内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 金子 忠利
 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全管理責任者 藤田 猛
 三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 打上執行責任者 二村 幸基
・側面列席者
 内閣衛星情報センター 管理部総務課 國藤主査

・質疑応答
NHK・情報収集衛星の10機体制の具体的な意味、何故10機なのか、いつごろを目処に構築するのか。
金子・10機体制は政府の宇宙基本計画工程表の中で具体化されているものでございまして、その意味するところにつきましては、まず内閣衛星情報センター設立以来の基幹衛星4機に加えて時間軸多様化衛星これを4機、さらにはデータを中継するところのデータ中継衛星2機、これをあわせてトータルで10機体制というところで進めているところでございます。この意義でございますけども、間違いなく時間軸多様化衛星というのは撮像機会これを増加する、高めるという意義、さらにはデータ中継衛星の意義でございますけども、データ量の拡大、あるいは即時性の向上といったような事で情報収集機能を強化するというのが先ほど所長の木野村が申し上げた通り、我が国が情報収集機能の強化を求められる中で必要だということで進められているものでございます。また達成年度でございますけども宇宙基本計画の工程表に基づけば、平成38年度以降ということになっております。

共同通信・現在運用中の衛星の具体的な内訳と、10機体制にいま何が足りない状況なのか、今回の衛星の出せる範囲での性能や軌道など。
金子・運用中の情報収集衛星は、光学衛星が2つでございます。レーダ衛星が4つでございます。運用中はトータル6機ということになります。そのうち設計寿命の5年を超過しているものがこのうち3つあるということになります。なお本年2月に打ち上げられたところの光学6号機でございますけども、まだ運用に至っていなくて必要な準備を行っているところでございます。
運用中の衛星の名称については光学4号機、光学5号機、レーダ3号機、レーダ4号機、レーダ5号機、レーダ予備機でございます。(設計寿命を超過しているものは)光学4号機、レーダ3号機、レーダ4号機の3つでございます。(性能について)今回打ち上げられたレーダ6号機のご質問かと思いますけども、一般的に情報収集衛星の機能の強化を図るといったところで不断に我々が取り組んでいるところでございますけども、果たしてどんな性能があるかといった情報収集能力が明らかになりますと、関心対象の方で隠蔽工作であるとか、そういった活動に支障のあることを招いてはいけませんので、詳細については申し上げられないという事でございまして、同様に軌道につきましても、いつ何時に情報収集することが可能かという情報については、そういった事を類推することに繋がる恐れがあるという事で控えているところであります。

南日本新聞・運用に至っていないものもあるが、全部で8機が軌道上にあるのか。
金子・軌道上は8機。確認します。

南日本新聞・情報収集衛星の運用が始まってから8機が軌道上にあるのは過去最多か。
金子・恐らくそうなるかと思いますが、確認して正確に申し上げたいと思います。

NHK・4機体制のとき、地球の特定地点を1日1回以上撮像できるという話だったが、今回打ち上げたものも含め8機全ての運用が始まると、特定地点の撮像回数は変わるか。
金子・純粋に軌道上にある衛星が増えますと、当然に撮像する機会が増えることになります。具体的にどの地点がどの程度増えるかというのは、個々の場所や軌道を類推に繋がる恐れがあるということで具体的なことは申し上げられませんが、衛星が増えると撮像機会が増えるということです。

NHK・以前10機体制の方針を打ち出した際、複数回という話が出ていたが、そうなるとデータ中継衛星2機と撮像する衛星8機で1日複数回という話だったと思うが、今回撮像する衛星が8機軌道上にあるということは1日に複数回、ある地点を撮像できるという話と違うのか。
金子・今の質問につきましても正確に答えると個々の地球上の特定の地点、具体的にはどういったところにどういった撮像機会があるのかという情報は、大変恐縮ながら軌道情報ですとかそういったことの類推に繋がる恐れがあることから詳細なお答えはひかえたいと思います。

NHK・衛星が増えるという事は複数回撮れるということで良いか。
金子・うまくお答えできなくて大変恐縮ですが、やはり正確に申し上げるとすれば個々の地点、何処を捉えるによっても答え方、正確な意味は変わってくると思いますので、大変恐縮ながら先ほどの答えの繰り返しとなります。

日本経済新聞・H-IIAのロケットとしては33回目の連続成功となると思うが、あらためて連続成功できた感想をお聞かせください。その上で今後の打ち上げ輸送サービスの更なる発展に向けての課題をどう捉えているか。20年のH3試験機の打ち上げに向けて開発が佳境に入っていると思うが、それに向けての現状と進捗についてもあらためて教えてください。
二村・お話にございましたように連続成功を続けているということ、これは私どもの事業の基盤を確固たるものにするという意味でも重要ですけれども、私どもはあくまで大事な衛星を運ばせていただいているいうことから、成功することで初めて衛星を利用していろいろなことをなさる方々がお仕事をできるということでございますので、そういった衛星を確実に軌道に運ぶということを続けることが、お客様の信頼を獲得できる唯一の方法だと思っています。今回も成功できたということで非常に安堵しているところでございます。打ち上げサービス事業は今申しましたように、あくまでも毎回毎回お客様が違っていたり、別の目的のものを運ばせていただいておりますので、そのお客様に非常に満足いく輸送を提供できるということを我々がひたすら追及し、それを継続することが、今後の輸送サービスをさらに発展させることができると思っています。最後にH3に関しての話がございましたけれども、私どもはあくまでH3ロケットに関しましては開発の一部を請け負わせていただいている業者でございますけども、H3はあくまでもH2までのヘリテージを使いながら次のロケットをさらに低コスト化し、さらに信頼度を上げるといったことを作り込んでいかなければならないロケットでありますので、この成功を続けている我々の技術とか、そういったノウハウ、我々はノーホワイと呼んでいますが、こういったものをH3の開発にフィードバックをかけていくということで、さらに良いH3の開発に対して我々も力を尽くしていきたいと思っています。

産経新聞・さきほども米朝首脳会談の話が出まして、同じ日に情報収集衛星を打ち上げることについて、打ち上げる側としてどのような気持ちで臨まれたのか。
二村・ずばり申し上げまして、全くそれを意識せず、お約束した時期に確実にロケットで衛星を打ち上げることに専念しておりました。

共同通信・今回、受注の価格とは違うと伺っているが、打ち上げ費用で100億以上かかったことについて、この費用をどのように捉えるか、削減を考えているのか、もしくは正当な費用でこれくらいはかかるのか。前回のレーダ5号機に対して、6号機はどれくらい開発費用が増えたか。
金子・まずお答えできるところから。レーダ6号機の開発費用の関係でお答えしている数字をお答えします。衛星の予算、開発費に充てた予算計上額は242億円ということでございます。また打ち上げ関係の予算でございますけども108億円ということになってございます。衛星センターとしては必要なものを措置するということで取り組んでおるところでございます。他方、宇宙基本計画の行程表、これは私どもの要求ではなくて政府全体の中で計画、我々の取り組んでいるところの将来的な計画、どうやってやっていくかというところにつきましては、いろいろな合理化というのも併せて必要だというのが全政府的な書き物として記載しているところでございます。しかしながら我々としては必要な物を措置してゆく、我々に課された任務役割とすれば、情報収集機能を強化することは確実にやっていく必要があると私どもは強く捉えていて、さきほど所長の方からもうあった通り、非常に重要な任務でありしっかりやっていく必要があると考えております。
レーダ5号機の開発関係の予算でございますけども、371億円でございます。打ち上げ費用を含むかは確認させてください。

南日本新聞・記憶の範囲ですが、2020年にH3初号機が打ち上がった以降も情報収集衛星は引き続き23年度くらいを目処にH-IIAで上げるという話が確かあったと思うが、その方針に今も変わりは無いのか。変わらないとするとH-IIAで上げるメリット・意味。
二村・これは私の方からお答えするのは適当ではないと思います。あくまでも宇宙基本計画に基づいて私どもは乗せるロケットをご提案して、必要な時期に打たせていただくことになっております。それ以上のことは私からはお答えできないと思っております。
金子・私の方から事実関係の部分でお答えできる部分をお答えしたいと思います。基幹ロケットのいずれかで打ち上げるかについては、繰り返し言及しているところの宇宙基本計画の工程表でありますけれども、これにつきましては35年度にレーダの8号機等が予定されているところでございまして、こういったところで政府全体の中で、いろいろな工程を検討していく中で政府として計画しているところでございます。

南日本新聞・H3が登場した以降もH-IIAで打ち上げて欲しいという意向なのか。
金子・そこは繰り返しになりますけれども、政府全体の中でいかに基幹ロケットを有効に利用していくかという点を含めて、総合的に勘案して政府として計画しているところでございます。

以上です。


No.2169 :H-IIAロケット39号機打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年6月12日(火)14時07分 投稿者 柴田孔明

2018年6月12日13時20分00秒に打ち上げられたH-IIAロケット39号機。


No.2168 :打ち上げ準備 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年6月12日(火)09時49分 投稿者 柴田孔明

2018年6月12日午前3時頃、H-IIAロケット39号機の第2回Go/NoGo判断会議の結果がGO(ターミナルカウントダウン作業開始可)と連絡がありました。写真は同日午前9時40分頃。


No.2167 :機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年6月11日(月)23時32分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット39号機の機体移動が2018年6月11日23時頃から行われました。


No.2166 :第1回GO/NOGO判断の結果はGO
投稿日 2018年6月11日(月)19時48分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット39号機の第1回Go/NoGo判断会議の結果は、Go(機体移動作業開始可)と連絡がありました。

No.2165 :H-IIAロケット39号機の打ち上げ時刻
投稿日 2018年6月10日(日)14時13分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット39号機の打ち上げ時刻が発表されました。

 打ち上げ日:2018年6月12日(火)
 打ち上げ時刻:13時20分00秒(JST)
 打ち上げ時間帯:13時20分00秒〜13時33分57秒(JST)
 打ち上げ予備期間:2018年6月13日(水)〜2018年7月11日(水)

No.2164 :H-IIAロケット39号機打ち上げ前ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2018年6月9日(土)22時55分 投稿者 柴田孔明

 2018年6月9日14時より、H-IIAロケット39号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。なお当初は2018年6月11日が打ち上げ予定日でしたが、同日は悪天候が予想されることから、翌日の2018年6月12日に変更されています。

・登壇者
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニット技術領域主幹 西平 慎太郎
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊

・打ち上げ延期について(平嶋)
 三菱重工業株式会社及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、種子島宇宙センターから情報収集衛星レーダ6号機を搭載したH-IIAロケット39号機の打ち上げを平成30年6月11日に予定しておりましたけれども、打ち上げ前日及び当日の天候悪化が予想されるため、下記のとおり打ち上げを延期いたします。

 打ち上げ日:平成30年6月12日(火)
 打ち上げ時間帯:13時20分00秒〜13時33分57秒(日本標準時)
 打ち上げ予備期間:平成30年6月13日(水)〜平成30年7月11日(水)

 なお、6月12日の打ち上げの可否については、明日以降の天候状況を踏まえて、再度判断いたします。

・ロケットについて
 ロケット:H-IIA202型
 フェアリング:4S型

・準備状況
 組み立て作業を終え、現在は発射整備作業中。

・作業実績と今後の作業予定
 ※6月9日の悪天候が予想されたことから、Y-3作業/Y-2作業/Y-1作業を1日前倒して実施した。
 6月6日:Y−3作業(完了)
  ・1/2段推進系・電気系・機構系点検作業
 6月7日:Y−2作業(完了)
  ・火工品結線
  ・2段ガスジェット推進薬充填
 6月8日:Y−1作業(完了)
  ・電波系統点検
  ・推進系最終クローズアウト
  ・機体アーミング
  ・機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  ・射点/貯蔵所系設備準備
 6月9日:本日(実施中)
  ・運用訓練
 ※6月10日、6月11日に天候悪化が予想されることから、打ち上げを6月12日に延期した。
 6月11日〜6月12日:Y−0作業(予定)
  ・機体移動
  ・射点設備系最終準備
  ・推進系最終準備
  ・ターミナルカウントダウン
  ・リフトオフ

・気象情報について
 台風5号が接近して平均風速も上がってきている状況で、明日6月10日に機体移動をするのは難しいというところで延期に至ることになりました。さらに6月11日は気圧の谷の影響で、打ち上げ制約条件にあります氷結層が相当な厚さが予想され、打ち上げ日を6月12日に延期した次第であります。6月11日から6月12日にかけては天候としては回復傾向と予想しておりまして、6月11日に機体を移動させて、6月12日の打ち明け時間帯につきましては安定した天候と予想しておりますので、6月12日に打ち上げると決定致しました。


・質疑応答
NHK・天候による延期だが、機体移動の時は風の影響、打ち上げは氷結層の影響とあるが、ロケットにどういった影響があるので延期と判断したのか。
平嶋・機体の移動については、機体の周りに作業員の方々が一緒に帯同しながら作業していくが、風が強いと作業安全に抵触する恐れがあるということで、機体が出せない懸念がある。
 6月11日は気圧の谷の影響ということで、必ず氷結層が厚くなるところがございまして、それがたまたまお昼前後に予想されていまして、それがかかってしまうと打ち上げ延期になる。6月11日の不安定な状況と6月12日を比べて、6月12日を選択した次第です。

NHK・氷結層がどう影響するのか。
平嶋・氷結層がある程度厚いと、その中をロケットが飛翔すると雷を作ることになりまして、雷をロケットから地上に落としてしまって、ロケット自体も機器が損傷して破壊される恐れがあるため打ち上げができない。

南日本新聞・機体移動時の風速の制約は何メートルで、今回何メートルの予報が出ているか。
平嶋・作業安全の観点で言うと高所作業は15m/sの突風が吹いてはいけない。予報ですとギリギリの所かなということで、突風率とかそういうのもありますので、機体を出せないことが懸念される。

南日本新聞・基準となる15m/sの風が吹く恐れがあるということか。
平嶋・はい。

南日本新聞・平均か最高か。
平嶋・いろんなとらえ方がある。高所では突風でもいけないという、より厳しい制約になります。

南日本新聞・相当な厚さの氷結層とおっしゃいましたが、どれくらいになりそうか。
平嶋・予報では1.7 kmとあって、予測ではギリギリではあるが、実際計ると多めに出ることもあり、1.8 km(制約)に対して1.7 km(測定値)だからいいのではないかとは、なかなか踏み込めない。

南日本新聞・延期の要因としては強風と氷結層のどちらが大きく作用しているか。
平嶋・両方ともです。

南日本新聞・(当初予定の)24時間後の11日深夜の機体移動時には突風はない、打ち上げ日の12日昼には氷結層が無いということか。
平嶋・はい、その通りです。

朝日新聞・新しいスケジュールはいつごろ発表するか。
広報・明日14時くらいに予定しています。

・延期の原因はあくまで天候で機体トラブルは無いのか。
平嶋・ご指摘の通りで、作業は順調に完了しています。

NVS・もし更に打ち上げ日が延びた場合は、ウインドウ(打ち上げ時間帯)は固定なのか、日によってずれるのか。
平嶋・日によらず固定と伺っています。

NHK・延期の原因は台風5号の影響という認識で良いか。
平嶋・その通りで台風5号の影響で強風が残っているところで打ち上げができない。

NHK・現在のところは最初の13時20分00秒で打ち上げるという認識で良いか。
平嶋・おっしゃるとおりです。時刻については明日(2018年6月10日)正式にリリースします。

以上です。


No.2163 :飛行するH-IIAロケット38号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年3月3日(土)20時26分 投稿者 柴田孔明

飛行するH-IIAロケット38号機。
今回は地表付近では陽炎のようなゆらぎの影響が強かったのですが、上空ではこのようにくっきりと見えました。