宇宙作家クラブ
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No.2242 :小型回収カプセルの側面 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年12月12日(水)01時17分 投稿者 柴田孔明

再突入時に上部となった方のテープが高温になって溶けて無くなっている。


No.2241 :小型回収カプセルの報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年12月12日(水)01時13分 投稿者 柴田孔明

 2018年11月27日午前、筑波宇宙センターにて、「こうのとり7号機」に搭載され、2018年11月11日に地球に帰還した小型回収カプセル本体の報道公開が行われました。

・登壇者
JAXA 有人宇宙技術部門 HTV技術センター HTV搭載小型回収カプセル開発チーム長 田邊 宏太
JAXA 有人宇宙技術部門 HTV技術センター HTV搭載小型回収カプセル開発チーム チーム長代理 渡邊 泰秀


・HTV搭載小型回収カプセルの飛行結果について(配付資料より)

 ・カプセルの飛行状況
  ・軌道プロファイル(高度プロファイル)
   6時14分 HTV最終軌道離脱制御終了
   6時24分 小型回収カプセル分離(約300km)
   6時37分 再突入姿勢移行(約150km)
   6時42分 揚力誘導開始(100km以下)
   6時50分 パラシュート開傘(約15km)
   7時04分 着水
   ・以前の7:06分着水確認の情報は、着水後に浮袋が膨らんでイリジウムの通信機が作動し筑波で確認するまでの時間であり、正確な着水時刻は7時04分となる。
   ・揚力誘導中の加速度は3.5G以下を達成。(※目標は4G以下)

 ・カプセルの機体状況
  ・熱防護系
   ・はやぶさの約1/5の軽量化を図った新規開発アブレータの外観上、大きな破損や亀裂などの構造上の問題は無く良好でした。
   ・再突入時に高温側となるアブレータの減少量(損耗量)から、想定通り表面側の最大温度は1700〜2000度C程度になったと考えられるが、アブレータ裏面側の温度上昇は要求温度の半分以下と十分に低く、カプセル内部を熱から守る良好な熱防護性能を有することが確認できた。

  ・緩降下、回収系
   ・高度約15km地点でパラシュートを開傘し緩やかに降下、ペイロード収納容器を含む小型回収カプセル本体を損傷することなく着水させることに成功。(11月11日7時4分頃)
   ・着水後、浮袋(炭酸ガス)により浮上し、視認性向上のためシーマーカにより海面を着色するとともに、着水1分後には着水位置のイリジウム通信機(フローテーションバッグ、通信バッグに1機ずつ搭載)による送信を開始。
   (※炭酸ガスボンベには和紙製のスイッチがあり、海水に浸かることで作動する)
   (※炭酸ガスの浮袋の他に、パラシュート頂部に空気で膨らむアペックスバックがある)
   ・緩降下・回収系に設けた回収用インターフェースを用いて船上に揚収。
   ・回収船に乗っていて、遠くから見て綺麗に(浮袋が)3つが浮かんでいて、カプセルは水の中に沈んでいる状態でなかなか見えないが、引き上げる中で徐々に見えてきて非常に嬉しかった。(渡邊)

  ・ペイロード系(公開済み)
   ・真空二重断熱保冷容器について、ISSで閉じたタイミングから回収船の中で取り出すまで5日と15時間かかっているが、4度C付近で0.4度Cの幅の範囲で制御できた。
   (※要求値は4度Cで±2度Cの範囲)


・質疑応答
時事通信・カプセル回収までの全体的な評価。加速度の3.5Gは有人宇宙船並と言えるのか。
田邊・全体的な統括では非常にうまくいった。ほぼ計画通りの日程で全てうまくいった。いくつか気になっていた関門はあるが、ひとつひとつクリアしていって、我々ではどうすることもできない天候も非常に良好で、もし天候が悪ければそのタイミングで落とせなくて、暫く軌道上で待機することも考えていたが、そういう事も無く当初計画した通りのスケジュールでここまで持ち帰ることができたということで、自信を持ってうまくいったと言えると思います。もう一つの3.5Gに関しては答えとしてはイエスで、有人宇宙船並の加速度が実現できた。ただこの1回限りで満足するという訳ではなくて、有人宇宙船に繋げていくには実績を積まないといけないと思います。今回3.5Gの加速度を実現できましたけれども、継続的に積み重ねていくことが大事だと思います。

時事通信・あえて点数をつければ100点か、それ以上か。
田邊・私は100点以上をあげたいです。

NHK・100点ということは、このカプセルとしては技術として実証できたと言えるのか。
田邊・我々としては技術的な目標を掲げていて、ひとつひとつこれから評価していかなければならない。今日、速報としてご報告しましたけれども、まだ膨大なデータがあって、我々は「宝の山」と呼んでおりますけども、データを評価して技術的にどうだったのか、そこはきっちりとしていかなければならないと思っています。

NHK・概ね評価できると感じているのか。
田邊・揚力誘導も成功し、概ね評価できると思っています。ただデータを細部にわたって評価した場合に、想定違いは当然出てくる。次はどうするか、なぜそうなったのかというところは、しっかり評価しなければならない。

ライター林・着水時にどれくらいのGを受けたか。また、カプセルの片側が真っ黒になって、片側は耐熱テープが残っているのは、どういった飛び方をしたのか。
田邊・着水の衝撃はデータを多角的に解析中。姿勢センサ、加速度センサ、容器のデータなどを評価中で今日の段階ではこの辺りとは申し上げられない。今後のキーポイントだと思うので、しっかり評価したいと思います。
渡邊・熱の受け方で、カプセルの大気圏突入姿勢(揚力誘導)の関係で、いちばん高い加熱を受けるのが上面側で、反対側は低い加熱になる。
(※撮影時の説明より:これから推定していくことになるが、高い方は1700〜2000度C、耐熱テープが残っている方は400〜500度C)

ライター林・焦げた方が上、そうでない側が下か。
渡邊・その通りです。

不明・今後の開発スケジュールについて。
田邊・まだ具体的な計画は定まっていない。今回の評価を受けて、次は自律的に再突入できるようなシステムにしたいと思っています。というのは、今回の小型回収カプセルは「こうのとり」に搭載されて再突入したが、「こうのとり」がないと再突入ができない。ミニチュア版「こうのとり」みたいなモジュールで、戻したいときにステーションから戻せるとか、ほかのロケットに乗せて帰したりとか、そういった機能を付加したいと思っている。そうすることによってユーザーさんの要求というか、実験の利便性というものを向上できると思いますので、今回の評価をしっかりした上で次はそういう方向に向かっていければと思います。

不明・いつぐらいに実現したいか。
田邊・HTV9号機までには難しいが、HTV−Xに搭載することなどを検討中です。


・その他(※カプセル撮影時の説明&質問より抜粋)

・側面パネル(3枚)はパラシュート放出時に外れて回収できないが、それが飛ぶ際にカプセル上部の構造に当たったものと思われる。柔らかい素材で、これが割れるということは温度が低くなっており、大気圏突入時には問題が無かったと考えている。
(※カプセル上部の円周型の断熱材が半分剥がれている件について)

・側面パネルがパラシュートを引き出す。また中にエアバッグのようなものがあり、ガスを供給することで側面パネルを押し出す。

・電子系は詰め込むのに苦労した。なかなか収まらなかった。

・一部はメーカーがつかなくてJAXAで制作した。

・スラスタは8カ所。それぞれ噴射口の向きが違う。

Q・船にはJAXA側は何人くらい乗ったか。
A・JAXA側はカプセルのチームから2人、研究開発本部からどの地点に落ちたかを観測する研究チームから1人、広報など撮影の方を含めて3人。他、船員は19人。飛行機には7人。

Q・外側のアブレーターについている焦げたものは何か。アブレータが溶けたものか。
A・茶色いものはカプトンのテープ。銀色のものは断熱テープ。
A・ISSに持ち込む際、アブレータから粉などが飛ばないように安全に配慮した形にもなっている。また、軌道上を回っている間は低温になるため、バッテリの温度を保たなければならない。

Q・耐熱と断熱と二つ言葉があるが違いは。
A・耐熱はアブレータなどで、断熱は銀テープで、宇宙空間で冷やされることから保護する。銀テープが残っていたのはびっくりした。

Q・焦げた匂いは何か。
A・アブレータの焦げた匂いです。

Q・この状態で再利用はできるか。
A・再利用はコストダウンには凄く有効な手段。今回海水に完全に浸かった状態で、引き上げたときから徐々に腐食が始まり、宇宙センターに持ってきてからは水で一生懸命洗っていた。綺麗な部分もあるので、どこまで再利用できそうか調査をしていきたい。

Q・アブレータはどれくらい溶けたか。
A・型紙をあてただけで誤差が大きいが、今のところ最大1センチくらい。元は4.5センチの厚さをもっている。想定では倍くらい減ると考えていたのでかなり少ない。飛び方による。

Q・底はどうなっているか。
A・真っ黒です。貼っていたものは全部無くなっている。

Q・テープが残っているなど熱が低かったのは揚力飛行のおかげか。
A・熱の受け方は2種類あって、ピークで加熱を受けるケースと、ゆっくり長く加熱するケースがある。ピークで受けるのは「はやぶさ」のように弾道飛行で、(再突入の)飛行時間は短くて全体の加熱は少ない。揚力飛行はスペースシャトルと同じように緩やかに降りてくるので、ピークは小さいけども全体の加熱量は大きい。今回は熱をいっぱい受ける想定だったが、比較的手前に落ちてきた。また思ったより誤差が少なかった。

Q・中の温度はどうだったか。
A・想定では底面の中が200度C以下、側面のペイロード側で60度C以下。80度Cパラシュートが溶けてしまう。

Q・アブレータの軽量化はどうやったか。
A・材料は同じ。詳しくは申し上げられないが、カーボン繊維にみっちり樹脂を染み込ませたものが「はやぶさ」のもので、今回は樹脂を減らしている。ただ、軽いと損耗が大きくなる。

Q・アブレータはこれからカットして解析するのか。
A・許可が下りればやります。

Q・パラシュート放出のための側面パネル放出は、内部と外部の気圧差をどうしたのか。中が真空だと出てこないのではないか。
A・カプセルには空気の通り道があり、そこから取り込んだ。またスラスタに使ったガスでエアバッグを膨らましてパネル3枚を放出した。

Q・その空気流入用の穴からプラズマは入り込まないのか。
A・迷路のような構造があり、そこで熱を吸収します。

以上です。


No.2240 :種子島宇宙センター特別公開2018 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月25日(日)20時07分 投稿者 柴田孔明

 2018年11月25日、種子島宇宙センター特別公開2018が快晴の中で開催されました。
 液体エンジン燃焼試験場や竹崎発射管制棟(LCC)など様々な施設の公開や、油井宇宙飛行士の講演などのイベントがありましたが、中でもVABの扉を開けた状態で撮影可能というのは珍しいですね。なお、この日の来場者は約1400名とのことです。


No.2239 :種子島宇宙センター打上げ50周年記念式典 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月24日(土)19時18分 投稿者 柴田孔明

 2018年11月24日、南種子町福祉センターにて、「種子島宇宙センター打上げ50周年記念式典」が行われました。式典には建設当時に宇宙センター敷地内から移転された方々なとが招待されています。また、打ち上げの度に協力いただいている方々への感謝状が贈呈されています(写真)。このあと油井亀美也宇宙飛行士による講演も行われました。


No.2238 :施設公開その4 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月22日(木)19時38分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ時、ロケットと射点は夜間になるとライトアップされているのですが、このように照明装置はトラックに乗せられていました。倒れないようにアンカーがあり、また窓が割れないようにとカバーもされています。近くで見ると噴射によって飛んできたものが当たったと思われる傷跡がたくさんあり、なかなか凄いことになっていますね。


No.2237 :施設公開その3 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月22日(木)19時30分 投稿者 柴田孔明

 大型ロケット組立棟に公開当日はロケットは入っておらず、H-IIB用の移動発射台のみが置かれています。夏にH-IIBロケット7号機を打ち上げたばかりですが、移動発射台は綺麗に塗り直されて、焦げた跡などはもうありませんでした。この写真はSRB-Aの炎を通す穴のようです。下から見ているのですが、大きくて移動発射台のどこだか判らない程です。


No.2236 :施設公開その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月22日(木)19時27分 投稿者 柴田孔明

 大型ロケット組立棟(VAB)の内部です。公開されたのはH-IIBロケットの組立を担当する側で、射点を一望できる宇宙が丘展望台から見た場合には反対側となります。
 展望台から見えている側はH-IIAロケット用です。また1つの建物に見えますが、ロケット組立を行う高層の建物の手前に、中層と低層の建物が島の陸側に向かって続いています。
 このVABは潮風が直撃する海沿いに建っており、それによる劣化が激しいとのことで、雨漏りなどもあるそうです。そのため現在、外装交換などの工事が行われています。また内部では油圧装置やトランスなどの経年劣化があり、中には古くて交換しようにも製品自体が無くなっているものもあって苦労されているとのことです。


No.2235 :施設公開その1 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月22日(木)19時21分 投稿者 柴田孔明

 2018年10月30日、種子島宇宙センターで報道向けの施設公開が行われました。内容は50年前に種子島宇宙センターから初めて小型ロケットを打ち上げた竹崎の射点跡地から始まり、宇宙センターが出来る前に大崎中型射点付近にあった大崎集落の跡地、地下にある吉信大型ロケット発射管制棟(B/H)、巨大な建物の大型ロケット組立棟(VAB)、前日にH-IIAロケット40号機を打ち上げたばかりの吉信第1ロケット射点(LP1)とH-IIBロケットを打ち上げる第2ロケット射点(LP2)、見学コースでもお馴染みの竹崎指令管制棟(RCC)、H3ロケット用に新しく作られた竹崎発射管制棟(LCC)が公開されています。このうち竹崎発射管制棟(LCC)は初公開です。多くの施設は、ここ最近では取材できなくなっており、宇宙作家クラブとしても久しぶりとなっています。ただ、VAB内部の公開は地上階のみで、以前(2001年頃)のような上階からの撮影はありませんでした。
(※当ニュース掲示板の過去ログのNo.488〜497に、当時の様子が報告されています)

 写真はH3ロケットのために新設された竹崎発射管制棟(LCC)で、まだ機材は搬入されておらず、がらんとした部屋になっています。機材搬入は2019年前半とのことです。
 ここで運用されるH3ロケットは、現行のH-IIAロケットよりも必要となる人数が少なくて済むため、吉信大型ロケット発射管制棟よりもだいぶ小さくなっています。
 また竹崎指令管制棟(RCC)との行き来が簡単になる一方、当然ながら射点へのアクセスは悪くなるとのこと。また現在の吉信大型ロケット発射管制棟の場合、ロケットに推進薬が入ると出入りができなくなり、中に長時間籠もる必用がありましたが、竹崎発射管制棟はその制限の範囲外に建っているため、仕事が終われば帰れるようになります。
 ただ、H3ロケットが使われるようになった後でも、H-IIAロケットを打ち上げる場合は、必要な人員の数が違うため、従来の吉信大型ロケット発射管制棟が使われます。 また、吉信大型ロケット発射管制棟には射点からの信号が集中しているため、竹崎発射管制棟への中継点として使われるとのことです。


No.2234 :飛行中のH-IIA F40 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月21日(水)22時59分 投稿者 柴田孔明

飛行中のH-IIAロケット40号機


No.2233 :H-IIAロケット40号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年11月21日(水)22時57分 投稿者 柴田孔明

 温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」および観測衛星「KhalifaSat」、相乗り小型副衛星「DIWATA-2B」「てんこう」「Stars-AO」「AUT-cube2」を搭載したH-IIAロケット40号機は、2018年10月29日13時08分00秒(JST)に種子島宇宙センターから予定通り打ち上げられました。
(※一部敬称を省略させていただきます。また外国語の箇所については一部簡略化させていただきます。またこちらの聞き取りが正確でない可能性があります)

・記者会見第1部
・登壇者
文部科学省 総括審議官 藤野 公之
環境省 環境事務次官 森本 英香
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター 総裁 ハマド・アル・マンスーリ 閣下
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター 長官 ユースフ・アル・シャイバーニ 閣下
宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦

・側面列席者
文部科学省 研究開発局 宇宙開発利用課長 藤吉 尚之
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長 大井 通博
国立環境研究所 理事 立川 裕隆

・打ち上げ結果報告(阿部)
 三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成30年10月29日13時08分00秒に、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」、「ハリーファサット」、ならびに相乗り小型衛星4基を搭載したH-IIAロケット40号機を予定通り打ち上げました。
 ロケットは計画通り飛行し、「いぶき2号」および「ハリーファサット」を正常に分離し、所定の軌道に投入したことを確認しました。「いぶき2号」「ハリーファサット」の分離はそれぞれ打ち上げ後16分9秒、24分15秒でした。また4基の小型副衛星についても、ロケット側からの分離信号の発出を確認いたしました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、西北西の風3.6m/s、気温23.7度Cでした。
 全ての衛星が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算40機中39機の成功、成功率は97.5%です。H-IIBを合わせると通算47機中46機の成功、成功率97.9%です。またH-IIA/H-IIB、41機連続の打ち上げ成功となりました。
 今回は2012年5月の「KOMPSAT-3」、2015年11月の「Telstar 12 VANTAGE」に続く3回目の商業顧客対応となりましたが、無事打ち上げる事が出来、大変安堵しています。
 当社は引き続き皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
 今回の打ち上げに際し、UAEからの関係者を温かく歓迎していただいた地元の方々をはじめ、これまでの打ち上げと同様、多くの方々にご協力ご支援頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 (※最後のお礼の部分は、英語による繰り返しがありました)

・打ち上げ結果報告(山川)
 ただいま三菱重工業株式会社から、種子島宇宙センターから温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」、および観測衛星「ハリーファサット」、さらに加えまして4基の小型副衛星を搭載しましたH-IIAロケット40号機の打ち上げ成功に係るご報告がありましたが、私からは今回の打ち上げにあたり、JAXAの役割でございます安全管理業務を達成したことをご報告致します。この打ち上げは地元の皆様をはじめとして、関係機関のご支援ご協力のもとに成し得たものでございます。本打ち上げに関し、ご支援ご協力をいただきました皆様に対して、あらためて御礼を申し上げます。今後とも確実な打ち上げが出来るよう誠心誠意取り組んでまいりたいと考えております。
 今回搭載しました主衛星のひとつ温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき2号」は、JAXAと環境省、国立環境研究所の3機関による共同プロジェクトでございまして、2009年に打ち上げた世界初の温室効果ガス観測に特化し、かつ全球分布の測定を行う「いぶき」の後継機であります。地球温暖化対策の国際的な枠組みパリ協定のもと、地球規模で温室効果ガスの排出抑制策を考え、その効果を測定するためには、全球の温室効果ガスの排出量を精度良く監視することが重要となります。「いぶき2号」は「いぶき1号」では観測していなかった一酸化炭素を観測できる機能を持っています。二酸化炭素の量は工業活動や燃料消費の人間活動だけでなく、森林や生物の活動によっても変動します。一方で一酸化炭素は主に人間の活動から排出されます。従来測定しておりました二酸化炭素・メタンの観測精度を高めるとともに、一酸化炭素を組み合わせて観測・解析することで人為起源の二酸化炭素の排出量の推定を目指します。またJAXAは国立環境研究所と共に、NASA、ESA、CNES、およびDLR、それぞれ米国、欧州フランス、ドイツの宇宙機関でございますけども、それら宇宙機関をはじめとする各国の宇宙機関と協定を締結し、衛星ごとのデータの齟齬を無くして、温室効果ガス観測データの均一性を図ることを目的とした取組も行っておりますが、「いぶき2号」においても同様な取組を継続する予定でございます。この進化した「いぶき2号」による宇宙からの高精度で均一な観測データによって、世界各国の温暖化対策に貢献してまいりたいと思います。以上JAXAからのご挨拶とさせていただきます。

・会見者挨拶(藤野)
 柴山文部科学大臣の談話にありますように、今回の打ち上げ成功によりまして、H-IIAロケットといたしましては34機連続成功、基幹ロケットといたしましては44機連続での成功となった訳であります。これは我が国のロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであります。たいへん喜ばしく思っております。今回のロケット打ち上げにご支援ご尽力いただきました関係者の皆様方にこの場をお借りいたしまして厚くお礼申し上げたいと存じます。文部科学省といたしましては、軌道投入された「いぶき2号」が今後予定されている重要なミッションを達成できるよう、引き続き関係機関とともに尽力してまいります。また基幹ロケットのさらなる安全性・信頼性の向上や、次期基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。

・会見者挨拶(森本)
 環境大臣の談話が配付されており、さきほど理事長からもお話ありましたように、「いぶき2号」が無事に所定の軌道に投入されたということで確認致しました。「いぶき2号」の共同開発者のJAXA、それから国立環境研究所をはじめとして、関係者の皆様のこれまでのご努力に、心から感謝を申し上げたいと思います。今年の猛暑、それから台風の巨大化、あるいは豪雨という形で、温暖化の影響もあると言われている気候変動が既に現実の問題となっております。そういった意味で「いぶき2号」は、2009年に打ち上げた「いぶき」の後継者として、今後の世界各国がパリ協定に基づいた取組を進めていく上で、気候変動対策の透明性というものの向上に資するものと期待してございます。環境省としては「いぶき2号」によって得られたデータを最大限活用して、世界の気候変動対策に一層貢献できるよう、国内外の関係機関とも連携して尽力していきたいと考えております。

・会見者挨拶(ハマド総裁)
 皆様、本日はUAEの宇宙開発において素晴らしい瞬間だったと思います。UAEスペースプログラムにとって大きな第一歩だったと思います。ハリーファサットを成功することができて、衛星開発で初めての100%UAE設計のものを軌道にのせることができました。非常に誇りに思っております。70名の男女のメンバーが6年間、一生懸命仕事をしてきました。これによって、打ち上げの準備が出来ました。UAEの目標の第一歩だけでなく、今後のUAEのミッションの目標にもなると思います。ハリーファサットは2006年から活動を開始しました。DubaiSat-1と2を開発しましたが、そのあとハリーファサットを開発しました。初めてUAEのラボで開発できたものです。UAEのスペースプログラムはこの地域にとって最も大きなもののひとつです。これには火星探査のミッションも含まれています。また宇宙飛行士育成プログラムもありますし、またマーズ2117のプログラムも含まれています。これによって世界中の各国が使えるようなデータを提供していきたいと考えています。皆様のために貢献したいと思います。ハリーファサットは、国家のトップの名前からとった名前であります。彼のリーダーシップのもとで、このプログラムを実施してまいりました。またドバイのプリンスのリーダーシップもあります。これによってこのプログラムを実現できました。今年、この衛星をローンチできたことは、今までのUAEのリーダーシップのコミットメントの証拠であると考えています。私としても非常に光栄と思っています。今回の打ち上げに参加できたことを非常に嬉しく思います。我々のリーダーに感謝したいと思いますし、またこれを実現できたのはパートナーのおかげだと思います。JAXAの関係者、そしてMHIの関係者、そして種子島宇宙センターの関係者の皆様に御礼申し上げたいと思います。

・会見者挨拶(ユースフ長官)
 皆様、まず第一にお礼を申し上げたいと思います。JAXAの皆様、そしてMHIの皆様に感謝しております。大変暖かく協力していただいております。また本日の成功に貢献された皆様にお礼申し上げたいと思います。素晴らしい仕事をしていただいていると思います。MBRSCの皆様にも、そしてUAEのリーダーの皆様に感謝申し上げたいと思います。ドバイのプリンスにもお礼申し上げたいと思います。大変暖かいサポートと信頼を受けています。本日1時8分のH-IIAロケットの打ち上げが成功しました。このロケットにはUAEで初の国内設計・開発されたハリーファサットを搭載していました。様々な点検と準備があって成功したと考えております。これからハリーファサットは低軌道衛星として高解像度の画像を各国に提供する役割を担っていきます。また環境の監視、そして自然災害の救助活動にも貢献していきたいと思います。非常に誇りに思っています。国内で100%開発設計された衛星として非常に嬉しく思っていますし、関係者の皆様に御礼申し上げたいと思います。

※配付資料より大臣談話

・内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話
 H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき2号」(GOSAT-2)及び「観測衛星ハリーファサット(KhalifaSat)」の打上げについて
(内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話)

 本日、H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき 2 号」(GOSAT-2)及び「観測衛星ハリーファサット(KhalifaSat)」の打上げが成功したとの連絡を受けました。
「いぶき2号」は、平成21年に打上げられた「いぶき」の後継機として、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)及びメタンの濃度をさらに高い精度で観測することを目的としており、各国の温室効果ガスの排出量の把握や削減取組の透明性の向上などを通じて地球温暖化防止の国際的な取組へ貢献することを期待しています。
 「観測衛星ハリーファサット」はアラブ首長国連邦の衛星を我が国のロケットで打ち上げるものであり、打上げサービスの国外受注としても意義あるものです。日本とアラブ首長国連邦の協力関係を深めるとともに、我が国宇宙産業基盤の維持・強化の観点からも重要な取組です。
 この取組をはじめ、内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後も引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。
 平成30年10月29日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 平井 卓也


・文部科学大臣談話
H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2) 及び観測衛星「KhalifaSat」の打上げについて
(文部科学大臣談話)

 本日、H-IIAロケット40号機の打ち上げに成功し、搭載していた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。また、今回、海外受注衛星として、アラブ首長国連邦ドバイ政府宇宙機関が開発した観測衛星「KhalifaSat」の打上げにも成功いたしました。
 今回の打上げ成功により、H-IIAロケットは34機連続、我が国の基幹ロケットとしては44機連続での打上げ成功となり、信頼性確立に向けて着実に実績を積み重ねていることを喜ばしく思っております。
 「いぶき2号」は2009年に打上げられた「いぶき」の後継機として、地球の温室効果ガス濃度をより高い精度で観測することで、環境行政に貢献することが期待されています。
 今後、打上げられた「いぶき2号」が所期の目的を達成できるよう、文部科学省としても関係機関とともに引き続き尽力してまいります。
 平成30年10月29日 文部科学大臣 柴山 昌彦


・環境大臣談話
温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)の打上げについて
(環境大臣談話)

 本日、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」が成功裡に打ち上げられ、所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 本衛星は、環境省が、国立環境研究所及び宇宙航空研究開発機構と共同で開発したものであり、関係機関の皆様方のご尽力に感謝申し上げます。
 「いぶき2号」は平成21年に打ち上げられた世界初の温室効果ガス観測専用衛星「いぶき」の後継機です。観測精度を飛躍的に向上させるとともに、人間活動により排出された二酸化炭素を特定する機能などを強化しており、気候変動に関する科学的知見の向上及び気候変動政策の推進に引き続き大いに役立つものと期待しています。
 環境省として、「いぶき2号」により得られるデータを最大限活用し、世界各国がパリ協定に基づき実施する気候変動対策の透明性の向上に貢献できるよう、関係機関とともに尽力してまいります。
 平成30年10月29日 環境大臣 原田 義昭

・質疑応答
読売新聞・海外からの受注の3例目が成功したが、その受け止めと、受注拡大への見通しや意気込みなど。
阿部・まず一言申し上げますと、非常に安堵しております。これからの意気込みは、ひとつひとつ積み上げていくしかございません。今回UAEと、この打ち上げを通していい関係を構築できたと思っています。さらに2年後には火星ミッションがございますので、そこに繋げていきたいと思います。また、新しいお客さんを、この信頼性とオンタイムの打ち上げで開拓していきたいと思っています。

共同通信・二酸化炭素が月平均で400 ppmを超えて世界的に厳しい状況になっています。その中で、本日打ち上げが成功した「いぶき2号」に期待すること、また「いぶき2号」で高精度の観測データが得られる立場になり、パリ協定に基づく排出削減策などで、世界の中でどのようなポジション、またリーダーシップを発揮したいか。
森本・「いぶき」に続いて「いぶき2号」が主要な温室効果ガスの二酸化炭素、それからメタンの世界分布を高精度に測定が出来るということ、それによって各国がパリ協定に基づいて温室効果ガスの排出量の報告が義務づけられていますけども、この「いぶき2号」のデータで、各国の排出量の比較評価に活用が出来る。そのことによってパリ協定のトータルとしてのCO2削減に有効だと考えています。特に人為起源のCO2の量、森林・緑による排出と分離して把握できるのは非常に有効でして、これからの化石燃料の使用であるとかそういったもののインパクトが計れる訳ですから、温暖化対策の基礎的なところ、データのベーシックなところで日本がリーダーシップをとれるだろうと考えております。

南日本新聞・H-IIAが40号機と節目を迎えたが、これまで打ち上げ実績を重ねてきた要因をどう総括しているか。
阿部・これまで40機まで打ち上げてきたロケットは日本で初めてでございます。これまで色々な方々にお世話になりながらやってきたが、先号機と一昨年の号機など、打ち上げ当日に見つかって延びたりすることがあり、まだまだやることが沢山あるのかなという風に思っています。

毎日新聞・海外受注を今後増やしていく上で、課題となっているところは何か。
阿部・我々の認識としては、打ち上げの信頼性だとか、オンタイムだとか、あといろいろな方々、特に地元の方々を含め迎えていただくときのホスピタリティとかは、他の打ち上げ事業者と遜色ないというか十分優れていると思います。何が課題かというと、価格的な部分がまだ今一歩及んでいない。今度のH3でそのあたりを解決して、さらに広げていきたいと思っています。
山川・我が国のロケット、H-IIA/B、イプシロンそれから今開発中のH3ロケットも含めまして、政府が取り組んでいる意義としては2つあると思っていまして、ひとつは我が国の宇宙活動の自立性を得るということですね。宇宙へのアクセスの自立性を持つということが大前提にございます。その上で、それを実現する意味でも国際競争力が非常に重要になってきまして、そういった意味で打ち上げサービス受注というのも極めて重要な活動だと考えております。問題点として、さきほど技術的な話も少しございましたけども、私としてはまだ3回目だということで、やはり実績をどんどん積み上げていくことが今一番重要なことであって、まだそういった段階にあると考えております。それが最大の課題だと思っています。

鹿児島テレビ・天気が良かったが、日本で打ち上げを見てどう思われたか。また2020年に打ち上げが控えているが、日本に期待することがあれば教えてください。
ハマド総裁・まず第1に日本人は非常にオンタイムで、本当に強いパートナーと組んでいると考えております。今回、MHIとJAXAからいただいているサービスに対して満足しております。素晴らしい関係が出来ていると思いますし、これからもその関係をさらに強化していきたいと考えています。

朝日新聞・今回、JAXAのロケットを選んだ理由はどういったところにあったか。価格に課題があるとJAXAも認識しているが、その中で選ばれたのはどういったところか。
ハマド総裁・日本の会社といろいろ話をしてまいりました。日本のものは品質が高いという評判がありますので、私達の衛星を載せるという意味では、日本のものは信頼できるとしてJAXAを選ばせていただきました。これからもこの関係を強化していこうと思います。

朝日新聞・ベストということか。
ハマド総裁・技術面の意味があってJAXAを選ばせていただきました。

・記者会見第2部

・登壇者
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長 大井 通博
国立環境研究所 衛星観測センター長 松永 恒雄
宇宙航空研究開発機構 GOSAT-2 プロジェクトマネージャ 平林 毅
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター KhalifaSat プロジェクトマネージャ アーメル・アル・サイエグ
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター KhalifaSat ロンチマネージャ アブダラ・ ハルムール
宇宙航空研究開発機構 鹿児島センター長 打上安全監理責任者 藤田 猛
三菱重工業株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 打上執行責任者 二村 幸基

・側面列席者
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室 小林 和史
東京大学 GOSAT-2サイエンスチーム チーフサイエンティスト 今須 良一
三菱電機 衛星情報システム部長 岡本 和久

・質疑応答
NHK・4年間開発に携わってきて、今の感想と2ヶ月半後の本格運用への意気込み。地球全体の温室効果ガスを観測できるのは「いぶき2号」が唯一ではないかと記憶しているが、世界にどういった貢献ができるか。
平林・思いですが、4年半開発に要しました。この間、様々な技術課題がありましたけども、多くの方々の尽力でこの打ち上げを迎えることができた。私自身、打ち上げは20年ぶりくらいになるのですが、あらためて打ち上げに参加しまして、非常に多くの方々のお力添えがあって打ち上げができるんだと、あらためて感じさせていただきました。今回本当に多くの方々の力の結集として打ち上げが成功したことを非常に嬉しく思います。またUAEの衛星と相乗りという形になりましたけども、打ち上げ成功を共に分かち合ったことも光栄だと考えております。今後2ヶ月半ほど初期機能点検という形で、衛星が性能を発揮しているのかを点検した後に観測運用をスタートさせます。一方で1号機については既に9年半を超えておりまして、5年間の寿命に対してかなり超えて運用しております。しっかりと1号機、2号機という形で運用の継続ができるように、2.5ヶ月のチェックアウトをしっかりやって観測に繋げていきたいと考えております。
 (現在は)それぞれの諸外国で温室効果ガスの二酸化炭素を観測する衛星、あるいはメタンを観測する衛星ということで、各国で衛星を打ち上げて運用しております。先ほど理事長の山川から申し上げた通り、そういった海外の衛星とも連携をとってデータの均一化を図って、より信頼性のあるデータとして、より広く使われるようにしてまいりたいと考えております。

NVS・衛星の状態について教えてください。
アーメル・日本時間の2時33分に初めて衛星からの信号を受信しました。素晴らしい瞬間でした。異常なく運用できていることが判明しています。太陽電池パドルか正しい位置にあることを確認できました。目標達成で非常に嬉しく思います。今、通信を継続的に受信しています。今のところでは異常はありません。時間をかけて検証し、そのあと衛星からの画像を受信したいと思います。

産経新聞・一酸化炭素を計測するのが「いぶき2号」の特徴で、それによって人為起源のCO2の推定ができるが、パリ協定で一酸化炭素の観測が望まれる文言などはあるか。
大井・パリ協定におきましては温室効果ガスが対象で、一酸化炭素については特段の定めは無い。

日刊工業新聞・地球観測衛星をどのように使っていきたいか。また自国での課題解決に使いたいという事はあるか。
アーメル・初めての衛星ではありません。DubaiSat-1と2もありました。今回ハリーファサットがユニークなのは0.7mの解像度を達成できることです。自国ではこの画像を使えることはたくさんあると思います。環境問題を解決するにも使えると思います。また都市計画や都市管理にも貢献できると思います。都市の変化も把握できるようになると思います。地域の機関に画像を提供しようと思います。またグローバルのユーザーにも提供したいと思います。今まで撮影した画像は、自然災害の救助活動に使ってきました。これからも継続的に、このような用途に使っていきたいと思います。自国だけでなく他国にもかなり高いレベルの画像を提供していきたいと考えています。

NVS・前回H-IIBの2段にはデータ収集装値がついていたと思うが今回はどうか。また今回は2段の制御落下が行われるか。
二村・今回のロケットには再突入時のデータ収集装値は積んでおりません。2段のコントロールリエントリ機能も実施しておりません。

産経新聞・前回H-IIBでのバルブの変形は、今回は検査点検したもので事なきを得たが、今後再発しないよう検討されている再発防止策はあるのか。
二村・結論から申しますと、まだ最終的な手段は確定しておらず検討中です。

産経新聞・検査の方法が未確定ということで、出来た製品の点検をすることで不具合が無いようにしているのか。
二村・もう少し申しますと、製造プロセスにおいて使っている治工具の改善だと思っています。それからバルブの単体を製造してから出荷するまでの間に検査を行いますけども、その検査手法および装値についても改善が必要が必用だと思っていまして、それの具体策については現在検討中です。

NHK・前回(*H-IIB)は天候などもあって延期が相次いだが、今回予定通りの打ち上げということで、執行責任者としての今回の評価と、UAEの方々と仕事をされて、その感想や今後の展望など。
二村・今回の打ち上げを先号機(*H-IIB)と比較するのはあまり適切ではないと私自身は思っていまして、最終的に打ち上げの成功に導くことが出来たという意味では同じように安堵感を持っております。ただ、前回天候に非常に悩まされたことと機体のトラブルもあったことに比べてしまいますと、非常に平穏に過ごして予定通り打ち上げる事ができたと言うことでは、比較的マイペースで仕事が出来たと思っています。それからUAEの方々と一緒に仕事をさせていただいた訳ですけども、我々としましてはペイロードインターフェースという機能を持った作業者がおりまして、彼等と日常的に密にコミュニケーションをとりながら、できるだけ快適にこの日本の生活をしていただいて、皆さんの作業に集中していただけるように、我々としては努力したつもりでございまして、それに対してはいずれ評価をいただければと思っています。

南日本新聞・理事長から海外衛星の実績を積み重ねることが大事だとの話があったが、今回3機目で、あと2つ決まっていると思うが、3つ目が積み上がってきたことの手応えと、実際に受注打ち上げをやってみて気付いたことや課題など。
二村・まず海外の衛星であるか国内の衛星であるかは、打ち上げ事業者からいきますと区別は無く、軌道に正確に、しかもお客様の希望した日時にお届けするのが我々のミッションです。そういった意味では特別差があって、特別何かをしている訳ではございません。海外の皆様からしますと、我々はそれを市場という意味で捉えれば、国内の市場よりは世界の市場にいかに出て行くか、我々のビジネススケールからいって大きな課題だと思っています。少なくとも我々の持っているロケットが、使っていただくに値するような信頼度があり、さらに我々の利便性といったものをいかに認知していただけるかということが非常に重要だと思っていますので、引き続き世界の衛星を我々のロケットで打ち上げさせていただけるように、更に我々としては営業をしていかなければならないと思っています。

南日本新聞・今後拡大していく上で、実際打ち上げて気付いたことはあるか。
二村・特別なことはございませんけども、それぞれの国の方々の風習といったものもございますので、我々としてはできるだけ快適に日本の生活を過ごしていただけるように、どういったサポートをすべきかということは、ひとつの経験を積ませていただいたと思っています。


・記者会見第3部(小型副衛星)
・登壇者
九州工業大学大学院工学研究院先端機能システム工学研究系 教授 奥山 圭一
北海道大学大学院理学研究院 教授 橋 幸弘
静岡大学工学部 教授 能見 公博
宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 部長 岩本 裕之

・衛星の状態など。
・九州工業大学・奥山「てんこう」
 ラフな格好で来ていますけども、これはチームのスタジアムジャンパーで、こういうのを着てみんなで頑張ってきました。JAXA様、それから三菱重工様のおかげで、予定通り無事に「てんこう」が打ち上げられまして、予定通り約2,000秒後に南極上空で切り離されました。すぐにアルゼンチン、それから南米の国々の方々が受信協力をしてくれまして、無事にアルゼンチンから「てんこう」が生きていると送信されたものが受信できたことが確認されました。中のデータも正常に入っています。「てんこう」は元気で、今宇宙で活動を始めました。まずご報告させていただきたいと思います。だいたい一週間くらいかけて初期運用をやりまして、早ければ一週間後ぐらいから通常運用の観測ミッションに入りたいと思っています。適時観測結果はご報告したいと思っていますので、その節はまたよろしくお願いいたします。

・北海道大学・橋(DIWATA-2B)
 これはフィリピンの衛星でして、北大、東北大、それからフィリピンの科学技術省のASTIという研究所と、フィリピン大学ディリマン校、この4社で開発してまいりましたDIWATA-2について申し上げたいと思います。資料では衛星名称がDIWATA-2Bとなっておりますけども、これは開発コードでして、今日の打ち上げ成功をもちましてDIWATA-2と呼ぶことにいたします。このプロジェクトはDIWATA-1というのが2016年4月にISSから放出される形で行われております。この4年のプロジェクトの間に衛星2基をフィリピンの学生を、北海道大学および東北大学で受け入れることによって開発指導を行い、JAXA様の機会を得ましてISSおよびH-IIAによる打ち上げをさせていただいたということでございます。この衛星はリモートセンシングということで地球を精密に観測する衛星です。これは50センチの50キログラムと小型ではありますが、非常に高い機能を備えておりまして、単に実験をする段階ではなくて半分実利用に入っていく衛星だと考えております。魚眼カメラによる台風のモニタリングは、フィリピンは台風の被害国であり、そういうところの気象予測に役立てたい。それからターゲットポインティングによる雲の立体撮像は、衛星から雲を違う角度から観測することにより、雲の立体構造を非常に精密に捉える。これはDIWATA-1で成功しておりまして、世界で最も詳しい雲の立体構造を捉えることが出来る衛星でございます。それから多波長スペクトルということで植生の観測、それから高解像度望遠鏡による災害の監視ということです。資料に機器名がいくつかありますが、メインは5台積んでありますリモートセンシングのカメラです。特に特色がありますのがマルチスペクトルイメージャというのでございまして、これは観測範囲が430から1020(*波長)で、これは目に見えるところから近赤外ですが、その範囲で光を590に分けて撮影ができる衛星です。この色を詳しく分けて見ることによって植生、つまり農作物とかあるいは森林を物凄く詳しく調べることができます。具体的にはフィリピンが直面しておりますバナナの感染のパンデミックで今危機的な状況に瀕しております。その病気を宇宙からとらえるという試験的な観測がDIWATA-1で成功しております。これをもう一歩進めて実運用まで持っていくのかDIWATA-2の目的のひとつになります。また台風あるいは集中豪雨をもたらす積乱雲の立体構造の観測という点においても世界の先端を切る、そういった衛星になると信じております。こうしたフィリピンの衛星というのは、他の東南アジア諸国にも非常に刺激を与えておりまして、将来的には日本を含めたアジア9カ国でコンステレーション、複数の衛星の連携運用を目指しておりますが、その皮切りとなる衛星のひとつでございます。今年中に北大・東北大を中心とした先端的な超小型衛星が5台をこえる予定となっておりますが、これをさらに拡大していく、そういった先駆けになる衛星という位置づけも持っております。

1:18:00

・静岡大学・能見(Stars-AO)
 我々はStars-AOという名前で1U、10センチ立方のキューブサットと呼ばれるものを開発して、今回打ち上げをしていただきました。愛称をつけておりまして、今回打ち上がって無事放出されたということで「あおい」という名前になっています。あおいというのは、このAOの「あお」というのと、静岡の徳川の葵の紋、これをかけて「あおい」という名前で、地域で公募しまして高校生が発案した名前になっています。肝心のミッションの方は民生の超小型カメラ、もともと衛星が10センチ立方なので、超小型で超高感度なカメラ、これが地上での最先端技術なんですね。超小型衛星はやはり最先端技術をすぐに宇宙へ持っていって試すということが特徴ですので、それを試すということが一つ目です。二つ目は宇宙を撮影しようとしていて、星などを撮ろうとしていますけども、その画像をダウンリンクする、多くの超小型衛星はアマチュア無線の周波数を使っているが、画像などを撮影した場合に地上に伝送する、これがスピードが遅いのでネックになっていた。それを今回我々は1200 bpsの100倍の速度を出すアマチュア無線を使って画像を降ろすとに挑戦する、この2つが大きなミッションになっています。今回静岡大学が中心とはなっていますけども、アマチュア技術者の方々に多く参加していただいて、学生とアマチュア技術者の方々が一緒に開発してきたという経緯があります。これで何をするかというのは、こだわっているのはやはり1U(10センチ四方)のキューブサットで、低コストなんですね。個人で買えるレベルの宇宙望遠鏡を作りたいというのが目標になっています。小学校で好きなときに好きな空を撮るとか、そのようなことに利用していこうと考えています。さらに我々研究室では宇宙テザーとか、宇宙ロボットということを、他の超小型衛星を使って実験しているが、そういう時でもいい画像が早くダウンリンクできれば非常に実験が効率的になる。こだわっているのはやはりアマチュア無線でして、アマチュア無線を使えば幅広い多くの方々、アマチュア無線は趣味でやるものですので、個人で買えるレベルの金額ですので、そういったところで生きていければと考えております。
 最後に現状なんですが、衛星がロケットから切り離されてCWビーコンの電波を発信し、地上で無事に受信されたことが報告されていますので、衛星は無事に起動したということになります。一週間くらいで初期チェックを終えてから、カメラ撮影のミッションとか高速のダウンリンクのミッションに入っていく予定になっております。

・JAXA岩本
 最初にこちらを欠席しております愛知工科大学の西尾先生からメッセージをいただいております。打ち上げまではいらっしゃったのですが、その後衛星の運用のため大学に戻られている最中です。
 『ロケットの打ち上げが成功し、ほっとしております。今後衛星からの信号受信を行い、衛星自身の動作確認を進めてまいります。今後が我々の勝負時です。頑張ってまいります。また、衛星の開発にあたり、地元蒲郡市の企業様方、信州衛星研究会の企業様、JAMSAT様、九州工業大学奥山研究所様、高知高専様、AIS総研様等、多くの方に協力いただきました。感謝致します』というお言葉をいただいております。
 次にJAXAとしてお話させていただきます。今回の相乗りミッションが、相乗り公募を始めてから8回目になります。今回の4基を足しまして、これまでで32基の相乗り小型衛星が打ち上がったことになります。もともとこの制度が、これから宇宙に参入して衛星等を作りたい企業さんですとか、それから大学等の教育という目的、その拡大を進めてまいりました。今まで実際に32基の打ち上げに関わった方々の何人かは宇宙の現場で活躍されています。我々は引き続きこういう機会をもうけていきたいと考えています。

・質疑応答
朝日新聞・衛星はそれぞれ予定通りの軌道に投入が成功したのか。
奥山・「てんこう」に関してはその理解でよろしいです。
高橋・DIWATA-2も地上で受信して、バス系が全て正常であると確認しています。
(※ロケットから切り離した軌道になる)

鹿児島テレビ・大分県内の企業4社との共同開発だったと思うが、ひとつの県にある中小企業が技術を出し合って衛星を打ち上げることの意味と意義と、開発の苦労、今後の展開等があれば教えてください。
奥山・みなさん人工衛星を作るのは初めての経験だったのですが、モチベーションがすごく高くて、宇宙で実際に動くものを作りたいということで、みんな集まってきました。ただ開発期間が1年半弱ととても短い期間で、本当に困難の連続だったが、皆さん熱意とモチベーションが高く、あと技術力が高くて無事にゴールにたどり着くことができました。おかげさまで無事に成功できたのですが、これで終わらずに次に向かって新しい挑戦を続けていきたいと思っています。

鹿児島テレビ・あらためて宇宙での活動を開始したことで、率直な感想を。
奥山・私自身も新しい4社の方々と仕事をして、本当に困難の連続だったが、月並みの言い方だがチームワークで1つのものを作り上げる大切さをあらためて感じた。それを実践できたということは本当に感慨深いです。

NVS・打ち上げ概要(資料)の中に民生品を活用したミッションがあり、その中に原子時計が入っていたが、23キロの衛星に乗る原子時計とはどんなものか。
奥山・当初の予定では原子時計を搭載する予定だったが、今回は搭載していない。ただ超小型衛星用の原子時計はあって30万円くらいで市販されています。今回それは搭載していませんが、ウルトラキャパシタやGNSSレシーバーなど今まで宇宙で使われたことが無いような民生品を衛星に搭載して、宇宙で使えるかどうか実証することもミッションとしています。

以上です。


No.2232 :H-IIAロケット40号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年10月29日(月)15時19分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット40号機は2018年10月29日13時08分00秒(JST)に打ち上げられました。


No.2231 :機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年10月29日(月)00時11分 投稿者 柴田孔明

2018年10月28日23時頃からH-IIAロケット40号機の機体移動が行われました。


No.2230 :第1回判断
投稿日 2018年10月28日(日)19時52分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット40号機、第1回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。
機体移動作業開始可です。


No.2229 :KhalifaSatの外観(模型)の太陽電池側 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年10月27日(土)23時28分 投稿者 柴田孔明

KhalifaSatの外観(模型)
太陽電池側です。


No.2228 :KhalifaSatの外観(模型) ●添付画像ファイル
投稿日 2018年10月27日(土)23時27分 投稿者 柴田孔明

KhalifaSatの外観(模型)