投稿日 2018年11月21日(水)22時57分 投稿者 柴田孔明
温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」および観測衛星「KhalifaSat」、相乗り小型副衛星「DIWATA-2B」「てんこう」「Stars-AO」「AUT-cube2」を搭載したH-IIAロケット40号機は、2018年10月29日13時08分00秒(JST)に種子島宇宙センターから予定通り打ち上げられました。
(※一部敬称を省略させていただきます。また外国語の箇所については一部簡略化させていただきます。またこちらの聞き取りが正確でない可能性があります)
・記者会見第1部
・登壇者
文部科学省 総括審議官 藤野 公之
環境省 環境事務次官 森本 英香
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター 総裁 ハマド・アル・マンスーリ 閣下
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター 長官 ユースフ・アル・シャイバーニ 閣下
宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦
・側面列席者
文部科学省 研究開発局 宇宙開発利用課長 藤吉 尚之
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長 大井 通博
国立環境研究所 理事 立川 裕隆
・打ち上げ結果報告(阿部)
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成30年10月29日13時08分00秒に、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」、「ハリーファサット」、ならびに相乗り小型衛星4基を搭載したH-IIAロケット40号機を予定通り打ち上げました。
ロケットは計画通り飛行し、「いぶき2号」および「ハリーファサット」を正常に分離し、所定の軌道に投入したことを確認しました。「いぶき2号」「ハリーファサット」の分離はそれぞれ打ち上げ後16分9秒、24分15秒でした。また4基の小型副衛星についても、ロケット側からの分離信号の発出を確認いたしました。
ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、西北西の風3.6m/s、気温23.7度Cでした。
全ての衛星が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算40機中39機の成功、成功率は97.5%です。H-IIBを合わせると通算47機中46機の成功、成功率97.9%です。またH-IIA/H-IIB、41機連続の打ち上げ成功となりました。
今回は2012年5月の「KOMPSAT-3」、2015年11月の「Telstar 12 VANTAGE」に続く3回目の商業顧客対応となりましたが、無事打ち上げる事が出来、大変安堵しています。
当社は引き続き皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
今回の打ち上げに際し、UAEからの関係者を温かく歓迎していただいた地元の方々をはじめ、これまでの打ち上げと同様、多くの方々にご協力ご支援頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(※最後のお礼の部分は、英語による繰り返しがありました)
・打ち上げ結果報告(山川)
ただいま三菱重工業株式会社から、種子島宇宙センターから温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」、および観測衛星「ハリーファサット」、さらに加えまして4基の小型副衛星を搭載しましたH-IIAロケット40号機の打ち上げ成功に係るご報告がありましたが、私からは今回の打ち上げにあたり、JAXAの役割でございます安全管理業務を達成したことをご報告致します。この打ち上げは地元の皆様をはじめとして、関係機関のご支援ご協力のもとに成し得たものでございます。本打ち上げに関し、ご支援ご協力をいただきました皆様に対して、あらためて御礼を申し上げます。今後とも確実な打ち上げが出来るよう誠心誠意取り組んでまいりたいと考えております。
今回搭載しました主衛星のひとつ温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき2号」は、JAXAと環境省、国立環境研究所の3機関による共同プロジェクトでございまして、2009年に打ち上げた世界初の温室効果ガス観測に特化し、かつ全球分布の測定を行う「いぶき」の後継機であります。地球温暖化対策の国際的な枠組みパリ協定のもと、地球規模で温室効果ガスの排出抑制策を考え、その効果を測定するためには、全球の温室効果ガスの排出量を精度良く監視することが重要となります。「いぶき2号」は「いぶき1号」では観測していなかった一酸化炭素を観測できる機能を持っています。二酸化炭素の量は工業活動や燃料消費の人間活動だけでなく、森林や生物の活動によっても変動します。一方で一酸化炭素は主に人間の活動から排出されます。従来測定しておりました二酸化炭素・メタンの観測精度を高めるとともに、一酸化炭素を組み合わせて観測・解析することで人為起源の二酸化炭素の排出量の推定を目指します。またJAXAは国立環境研究所と共に、NASA、ESA、CNES、およびDLR、それぞれ米国、欧州フランス、ドイツの宇宙機関でございますけども、それら宇宙機関をはじめとする各国の宇宙機関と協定を締結し、衛星ごとのデータの齟齬を無くして、温室効果ガス観測データの均一性を図ることを目的とした取組も行っておりますが、「いぶき2号」においても同様な取組を継続する予定でございます。この進化した「いぶき2号」による宇宙からの高精度で均一な観測データによって、世界各国の温暖化対策に貢献してまいりたいと思います。以上JAXAからのご挨拶とさせていただきます。
・会見者挨拶(藤野)
柴山文部科学大臣の談話にありますように、今回の打ち上げ成功によりまして、H-IIAロケットといたしましては34機連続成功、基幹ロケットといたしましては44機連続での成功となった訳であります。これは我が国のロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであります。たいへん喜ばしく思っております。今回のロケット打ち上げにご支援ご尽力いただきました関係者の皆様方にこの場をお借りいたしまして厚くお礼申し上げたいと存じます。文部科学省といたしましては、軌道投入された「いぶき2号」が今後予定されている重要なミッションを達成できるよう、引き続き関係機関とともに尽力してまいります。また基幹ロケットのさらなる安全性・信頼性の向上や、次期基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。
・会見者挨拶(森本)
環境大臣の談話が配付されており、さきほど理事長からもお話ありましたように、「いぶき2号」が無事に所定の軌道に投入されたということで確認致しました。「いぶき2号」の共同開発者のJAXA、それから国立環境研究所をはじめとして、関係者の皆様のこれまでのご努力に、心から感謝を申し上げたいと思います。今年の猛暑、それから台風の巨大化、あるいは豪雨という形で、温暖化の影響もあると言われている気候変動が既に現実の問題となっております。そういった意味で「いぶき2号」は、2009年に打ち上げた「いぶき」の後継者として、今後の世界各国がパリ協定に基づいた取組を進めていく上で、気候変動対策の透明性というものの向上に資するものと期待してございます。環境省としては「いぶき2号」によって得られたデータを最大限活用して、世界の気候変動対策に一層貢献できるよう、国内外の関係機関とも連携して尽力していきたいと考えております。
・会見者挨拶(ハマド総裁)
皆様、本日はUAEの宇宙開発において素晴らしい瞬間だったと思います。UAEスペースプログラムにとって大きな第一歩だったと思います。ハリーファサットを成功することができて、衛星開発で初めての100%UAE設計のものを軌道にのせることができました。非常に誇りに思っております。70名の男女のメンバーが6年間、一生懸命仕事をしてきました。これによって、打ち上げの準備が出来ました。UAEの目標の第一歩だけでなく、今後のUAEのミッションの目標にもなると思います。ハリーファサットは2006年から活動を開始しました。DubaiSat-1と2を開発しましたが、そのあとハリーファサットを開発しました。初めてUAEのラボで開発できたものです。UAEのスペースプログラムはこの地域にとって最も大きなもののひとつです。これには火星探査のミッションも含まれています。また宇宙飛行士育成プログラムもありますし、またマーズ2117のプログラムも含まれています。これによって世界中の各国が使えるようなデータを提供していきたいと考えています。皆様のために貢献したいと思います。ハリーファサットは、国家のトップの名前からとった名前であります。彼のリーダーシップのもとで、このプログラムを実施してまいりました。またドバイのプリンスのリーダーシップもあります。これによってこのプログラムを実現できました。今年、この衛星をローンチできたことは、今までのUAEのリーダーシップのコミットメントの証拠であると考えています。私としても非常に光栄と思っています。今回の打ち上げに参加できたことを非常に嬉しく思います。我々のリーダーに感謝したいと思いますし、またこれを実現できたのはパートナーのおかげだと思います。JAXAの関係者、そしてMHIの関係者、そして種子島宇宙センターの関係者の皆様に御礼申し上げたいと思います。
・会見者挨拶(ユースフ長官)
皆様、まず第一にお礼を申し上げたいと思います。JAXAの皆様、そしてMHIの皆様に感謝しております。大変暖かく協力していただいております。また本日の成功に貢献された皆様にお礼申し上げたいと思います。素晴らしい仕事をしていただいていると思います。MBRSCの皆様にも、そしてUAEのリーダーの皆様に感謝申し上げたいと思います。ドバイのプリンスにもお礼申し上げたいと思います。大変暖かいサポートと信頼を受けています。本日1時8分のH-IIAロケットの打ち上げが成功しました。このロケットにはUAEで初の国内設計・開発されたハリーファサットを搭載していました。様々な点検と準備があって成功したと考えております。これからハリーファサットは低軌道衛星として高解像度の画像を各国に提供する役割を担っていきます。また環境の監視、そして自然災害の救助活動にも貢献していきたいと思います。非常に誇りに思っています。国内で100%開発設計された衛星として非常に嬉しく思っていますし、関係者の皆様に御礼申し上げたいと思います。
※配付資料より大臣談話
・内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話
H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき2号」(GOSAT-2)及び「観測衛星ハリーファサット(KhalifaSat)」の打上げについて
(内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話)
本日、H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号機「いぶき 2 号」(GOSAT-2)及び「観測衛星ハリーファサット(KhalifaSat)」の打上げが成功したとの連絡を受けました。
「いぶき2号」は、平成21年に打上げられた「いぶき」の後継機として、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)及びメタンの濃度をさらに高い精度で観測することを目的としており、各国の温室効果ガスの排出量の把握や削減取組の透明性の向上などを通じて地球温暖化防止の国際的な取組へ貢献することを期待しています。
「観測衛星ハリーファサット」はアラブ首長国連邦の衛星を我が国のロケットで打ち上げるものであり、打上げサービスの国外受注としても意義あるものです。日本とアラブ首長国連邦の協力関係を深めるとともに、我が国宇宙産業基盤の維持・強化の観点からも重要な取組です。
この取組をはじめ、内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後も引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。
平成30年10月29日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 平井 卓也
・文部科学大臣談話
H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2) 及び観測衛星「KhalifaSat」の打上げについて
(文部科学大臣談話)
本日、H-IIAロケット40号機の打ち上げに成功し、搭載していた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。また、今回、海外受注衛星として、アラブ首長国連邦ドバイ政府宇宙機関が開発した観測衛星「KhalifaSat」の打上げにも成功いたしました。
今回の打上げ成功により、H-IIAロケットは34機連続、我が国の基幹ロケットとしては44機連続での打上げ成功となり、信頼性確立に向けて着実に実績を積み重ねていることを喜ばしく思っております。
「いぶき2号」は2009年に打上げられた「いぶき」の後継機として、地球の温室効果ガス濃度をより高い精度で観測することで、環境行政に貢献することが期待されています。
今後、打上げられた「いぶき2号」が所期の目的を達成できるよう、文部科学省としても関係機関とともに引き続き尽力してまいります。
平成30年10月29日 文部科学大臣 柴山 昌彦
・環境大臣談話
温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)の打上げについて
(環境大臣談話)
本日、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」が成功裡に打ち上げられ、所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
本衛星は、環境省が、国立環境研究所及び宇宙航空研究開発機構と共同で開発したものであり、関係機関の皆様方のご尽力に感謝申し上げます。
「いぶき2号」は平成21年に打ち上げられた世界初の温室効果ガス観測専用衛星「いぶき」の後継機です。観測精度を飛躍的に向上させるとともに、人間活動により排出された二酸化炭素を特定する機能などを強化しており、気候変動に関する科学的知見の向上及び気候変動政策の推進に引き続き大いに役立つものと期待しています。
環境省として、「いぶき2号」により得られるデータを最大限活用し、世界各国がパリ協定に基づき実施する気候変動対策の透明性の向上に貢献できるよう、関係機関とともに尽力してまいります。
平成30年10月29日 環境大臣 原田 義昭
・質疑応答
読売新聞・海外からの受注の3例目が成功したが、その受け止めと、受注拡大への見通しや意気込みなど。
阿部・まず一言申し上げますと、非常に安堵しております。これからの意気込みは、ひとつひとつ積み上げていくしかございません。今回UAEと、この打ち上げを通していい関係を構築できたと思っています。さらに2年後には火星ミッションがございますので、そこに繋げていきたいと思います。また、新しいお客さんを、この信頼性とオンタイムの打ち上げで開拓していきたいと思っています。
共同通信・二酸化炭素が月平均で400 ppmを超えて世界的に厳しい状況になっています。その中で、本日打ち上げが成功した「いぶき2号」に期待すること、また「いぶき2号」で高精度の観測データが得られる立場になり、パリ協定に基づく排出削減策などで、世界の中でどのようなポジション、またリーダーシップを発揮したいか。
森本・「いぶき」に続いて「いぶき2号」が主要な温室効果ガスの二酸化炭素、それからメタンの世界分布を高精度に測定が出来るということ、それによって各国がパリ協定に基づいて温室効果ガスの排出量の報告が義務づけられていますけども、この「いぶき2号」のデータで、各国の排出量の比較評価に活用が出来る。そのことによってパリ協定のトータルとしてのCO2削減に有効だと考えています。特に人為起源のCO2の量、森林・緑による排出と分離して把握できるのは非常に有効でして、これからの化石燃料の使用であるとかそういったもののインパクトが計れる訳ですから、温暖化対策の基礎的なところ、データのベーシックなところで日本がリーダーシップをとれるだろうと考えております。
南日本新聞・H-IIAが40号機と節目を迎えたが、これまで打ち上げ実績を重ねてきた要因をどう総括しているか。
阿部・これまで40機まで打ち上げてきたロケットは日本で初めてでございます。これまで色々な方々にお世話になりながらやってきたが、先号機と一昨年の号機など、打ち上げ当日に見つかって延びたりすることがあり、まだまだやることが沢山あるのかなという風に思っています。
毎日新聞・海外受注を今後増やしていく上で、課題となっているところは何か。
阿部・我々の認識としては、打ち上げの信頼性だとか、オンタイムだとか、あといろいろな方々、特に地元の方々を含め迎えていただくときのホスピタリティとかは、他の打ち上げ事業者と遜色ないというか十分優れていると思います。何が課題かというと、価格的な部分がまだ今一歩及んでいない。今度のH3でそのあたりを解決して、さらに広げていきたいと思っています。
山川・我が国のロケット、H-IIA/B、イプシロンそれから今開発中のH3ロケットも含めまして、政府が取り組んでいる意義としては2つあると思っていまして、ひとつは我が国の宇宙活動の自立性を得るということですね。宇宙へのアクセスの自立性を持つということが大前提にございます。その上で、それを実現する意味でも国際競争力が非常に重要になってきまして、そういった意味で打ち上げサービス受注というのも極めて重要な活動だと考えております。問題点として、さきほど技術的な話も少しございましたけども、私としてはまだ3回目だということで、やはり実績をどんどん積み上げていくことが今一番重要なことであって、まだそういった段階にあると考えております。それが最大の課題だと思っています。
鹿児島テレビ・天気が良かったが、日本で打ち上げを見てどう思われたか。また2020年に打ち上げが控えているが、日本に期待することがあれば教えてください。
ハマド総裁・まず第1に日本人は非常にオンタイムで、本当に強いパートナーと組んでいると考えております。今回、MHIとJAXAからいただいているサービスに対して満足しております。素晴らしい関係が出来ていると思いますし、これからもその関係をさらに強化していきたいと考えています。
朝日新聞・今回、JAXAのロケットを選んだ理由はどういったところにあったか。価格に課題があるとJAXAも認識しているが、その中で選ばれたのはどういったところか。
ハマド総裁・日本の会社といろいろ話をしてまいりました。日本のものは品質が高いという評判がありますので、私達の衛星を載せるという意味では、日本のものは信頼できるとしてJAXAを選ばせていただきました。これからもこの関係を強化していこうと思います。
朝日新聞・ベストということか。
ハマド総裁・技術面の意味があってJAXAを選ばせていただきました。
・記者会見第2部
・登壇者
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室長 大井 通博
国立環境研究所 衛星観測センター長 松永 恒雄
宇宙航空研究開発機構 GOSAT-2 プロジェクトマネージャ 平林 毅
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター KhalifaSat プロジェクトマネージャ アーメル・アル・サイエグ
ムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター KhalifaSat ロンチマネージャ アブダラ・ ハルムール
宇宙航空研究開発機構 鹿児島センター長 打上安全監理責任者 藤田 猛
三菱重工業株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 打上執行責任者 二村 幸基
・側面列席者
環境省 地球環境局 総務課 研究調査室 小林 和史
東京大学 GOSAT-2サイエンスチーム チーフサイエンティスト 今須 良一
三菱電機 衛星情報システム部長 岡本 和久
・質疑応答
NHK・4年間開発に携わってきて、今の感想と2ヶ月半後の本格運用への意気込み。地球全体の温室効果ガスを観測できるのは「いぶき2号」が唯一ではないかと記憶しているが、世界にどういった貢献ができるか。
平林・思いですが、4年半開発に要しました。この間、様々な技術課題がありましたけども、多くの方々の尽力でこの打ち上げを迎えることができた。私自身、打ち上げは20年ぶりくらいになるのですが、あらためて打ち上げに参加しまして、非常に多くの方々のお力添えがあって打ち上げができるんだと、あらためて感じさせていただきました。今回本当に多くの方々の力の結集として打ち上げが成功したことを非常に嬉しく思います。またUAEの衛星と相乗りという形になりましたけども、打ち上げ成功を共に分かち合ったことも光栄だと考えております。今後2ヶ月半ほど初期機能点検という形で、衛星が性能を発揮しているのかを点検した後に観測運用をスタートさせます。一方で1号機については既に9年半を超えておりまして、5年間の寿命に対してかなり超えて運用しております。しっかりと1号機、2号機という形で運用の継続ができるように、2.5ヶ月のチェックアウトをしっかりやって観測に繋げていきたいと考えております。
(現在は)それぞれの諸外国で温室効果ガスの二酸化炭素を観測する衛星、あるいはメタンを観測する衛星ということで、各国で衛星を打ち上げて運用しております。先ほど理事長の山川から申し上げた通り、そういった海外の衛星とも連携をとってデータの均一化を図って、より信頼性のあるデータとして、より広く使われるようにしてまいりたいと考えております。
NVS・衛星の状態について教えてください。
アーメル・日本時間の2時33分に初めて衛星からの信号を受信しました。素晴らしい瞬間でした。異常なく運用できていることが判明しています。太陽電池パドルか正しい位置にあることを確認できました。目標達成で非常に嬉しく思います。今、通信を継続的に受信しています。今のところでは異常はありません。時間をかけて検証し、そのあと衛星からの画像を受信したいと思います。
産経新聞・一酸化炭素を計測するのが「いぶき2号」の特徴で、それによって人為起源のCO2の推定ができるが、パリ協定で一酸化炭素の観測が望まれる文言などはあるか。
大井・パリ協定におきましては温室効果ガスが対象で、一酸化炭素については特段の定めは無い。
日刊工業新聞・地球観測衛星をどのように使っていきたいか。また自国での課題解決に使いたいという事はあるか。
アーメル・初めての衛星ではありません。DubaiSat-1と2もありました。今回ハリーファサットがユニークなのは0.7mの解像度を達成できることです。自国ではこの画像を使えることはたくさんあると思います。環境問題を解決するにも使えると思います。また都市計画や都市管理にも貢献できると思います。都市の変化も把握できるようになると思います。地域の機関に画像を提供しようと思います。またグローバルのユーザーにも提供したいと思います。今まで撮影した画像は、自然災害の救助活動に使ってきました。これからも継続的に、このような用途に使っていきたいと思います。自国だけでなく他国にもかなり高いレベルの画像を提供していきたいと考えています。
NVS・前回H-IIBの2段にはデータ収集装値がついていたと思うが今回はどうか。また今回は2段の制御落下が行われるか。
二村・今回のロケットには再突入時のデータ収集装値は積んでおりません。2段のコントロールリエントリ機能も実施しておりません。
産経新聞・前回H-IIBでのバルブの変形は、今回は検査点検したもので事なきを得たが、今後再発しないよう検討されている再発防止策はあるのか。
二村・結論から申しますと、まだ最終的な手段は確定しておらず検討中です。
産経新聞・検査の方法が未確定ということで、出来た製品の点検をすることで不具合が無いようにしているのか。
二村・もう少し申しますと、製造プロセスにおいて使っている治工具の改善だと思っています。それからバルブの単体を製造してから出荷するまでの間に検査を行いますけども、その検査手法および装値についても改善が必要が必用だと思っていまして、それの具体策については現在検討中です。
NHK・前回(*H-IIB)は天候などもあって延期が相次いだが、今回予定通りの打ち上げということで、執行責任者としての今回の評価と、UAEの方々と仕事をされて、その感想や今後の展望など。
二村・今回の打ち上げを先号機(*H-IIB)と比較するのはあまり適切ではないと私自身は思っていまして、最終的に打ち上げの成功に導くことが出来たという意味では同じように安堵感を持っております。ただ、前回天候に非常に悩まされたことと機体のトラブルもあったことに比べてしまいますと、非常に平穏に過ごして予定通り打ち上げる事ができたと言うことでは、比較的マイペースで仕事が出来たと思っています。それからUAEの方々と一緒に仕事をさせていただいた訳ですけども、我々としましてはペイロードインターフェースという機能を持った作業者がおりまして、彼等と日常的に密にコミュニケーションをとりながら、できるだけ快適にこの日本の生活をしていただいて、皆さんの作業に集中していただけるように、我々としては努力したつもりでございまして、それに対してはいずれ評価をいただければと思っています。
南日本新聞・理事長から海外衛星の実績を積み重ねることが大事だとの話があったが、今回3機目で、あと2つ決まっていると思うが、3つ目が積み上がってきたことの手応えと、実際に受注打ち上げをやってみて気付いたことや課題など。
二村・まず海外の衛星であるか国内の衛星であるかは、打ち上げ事業者からいきますと区別は無く、軌道に正確に、しかもお客様の希望した日時にお届けするのが我々のミッションです。そういった意味では特別差があって、特別何かをしている訳ではございません。海外の皆様からしますと、我々はそれを市場という意味で捉えれば、国内の市場よりは世界の市場にいかに出て行くか、我々のビジネススケールからいって大きな課題だと思っています。少なくとも我々の持っているロケットが、使っていただくに値するような信頼度があり、さらに我々の利便性といったものをいかに認知していただけるかということが非常に重要だと思っていますので、引き続き世界の衛星を我々のロケットで打ち上げさせていただけるように、更に我々としては営業をしていかなければならないと思っています。
南日本新聞・今後拡大していく上で、実際打ち上げて気付いたことはあるか。
二村・特別なことはございませんけども、それぞれの国の方々の風習といったものもございますので、我々としてはできるだけ快適に日本の生活を過ごしていただけるように、どういったサポートをすべきかということは、ひとつの経験を積ませていただいたと思っています。
・記者会見第3部(小型副衛星)
・登壇者
九州工業大学大学院工学研究院先端機能システム工学研究系 教授 奥山 圭一
北海道大学大学院理学研究院 教授 橋 幸弘
静岡大学工学部 教授 能見 公博
宇宙航空研究開発機構 新事業促進部 部長 岩本 裕之
・衛星の状態など。
・九州工業大学・奥山「てんこう」
ラフな格好で来ていますけども、これはチームのスタジアムジャンパーで、こういうのを着てみんなで頑張ってきました。JAXA様、それから三菱重工様のおかげで、予定通り無事に「てんこう」が打ち上げられまして、予定通り約2,000秒後に南極上空で切り離されました。すぐにアルゼンチン、それから南米の国々の方々が受信協力をしてくれまして、無事にアルゼンチンから「てんこう」が生きていると送信されたものが受信できたことが確認されました。中のデータも正常に入っています。「てんこう」は元気で、今宇宙で活動を始めました。まずご報告させていただきたいと思います。だいたい一週間くらいかけて初期運用をやりまして、早ければ一週間後ぐらいから通常運用の観測ミッションに入りたいと思っています。適時観測結果はご報告したいと思っていますので、その節はまたよろしくお願いいたします。
・北海道大学・橋(DIWATA-2B)
これはフィリピンの衛星でして、北大、東北大、それからフィリピンの科学技術省のASTIという研究所と、フィリピン大学ディリマン校、この4社で開発してまいりましたDIWATA-2について申し上げたいと思います。資料では衛星名称がDIWATA-2Bとなっておりますけども、これは開発コードでして、今日の打ち上げ成功をもちましてDIWATA-2と呼ぶことにいたします。このプロジェクトはDIWATA-1というのが2016年4月にISSから放出される形で行われております。この4年のプロジェクトの間に衛星2基をフィリピンの学生を、北海道大学および東北大学で受け入れることによって開発指導を行い、JAXA様の機会を得ましてISSおよびH-IIAによる打ち上げをさせていただいたということでございます。この衛星はリモートセンシングということで地球を精密に観測する衛星です。これは50センチの50キログラムと小型ではありますが、非常に高い機能を備えておりまして、単に実験をする段階ではなくて半分実利用に入っていく衛星だと考えております。魚眼カメラによる台風のモニタリングは、フィリピンは台風の被害国であり、そういうところの気象予測に役立てたい。それからターゲットポインティングによる雲の立体撮像は、衛星から雲を違う角度から観測することにより、雲の立体構造を非常に精密に捉える。これはDIWATA-1で成功しておりまして、世界で最も詳しい雲の立体構造を捉えることが出来る衛星でございます。それから多波長スペクトルということで植生の観測、それから高解像度望遠鏡による災害の監視ということです。資料に機器名がいくつかありますが、メインは5台積んでありますリモートセンシングのカメラです。特に特色がありますのがマルチスペクトルイメージャというのでございまして、これは観測範囲が430から1020(*波長)で、これは目に見えるところから近赤外ですが、その範囲で光を590に分けて撮影ができる衛星です。この色を詳しく分けて見ることによって植生、つまり農作物とかあるいは森林を物凄く詳しく調べることができます。具体的にはフィリピンが直面しておりますバナナの感染のパンデミックで今危機的な状況に瀕しております。その病気を宇宙からとらえるという試験的な観測がDIWATA-1で成功しております。これをもう一歩進めて実運用まで持っていくのかDIWATA-2の目的のひとつになります。また台風あるいは集中豪雨をもたらす積乱雲の立体構造の観測という点においても世界の先端を切る、そういった衛星になると信じております。こうしたフィリピンの衛星というのは、他の東南アジア諸国にも非常に刺激を与えておりまして、将来的には日本を含めたアジア9カ国でコンステレーション、複数の衛星の連携運用を目指しておりますが、その皮切りとなる衛星のひとつでございます。今年中に北大・東北大を中心とした先端的な超小型衛星が5台をこえる予定となっておりますが、これをさらに拡大していく、そういった先駆けになる衛星という位置づけも持っております。
1:18:00
・静岡大学・能見(Stars-AO)
我々はStars-AOという名前で1U、10センチ立方のキューブサットと呼ばれるものを開発して、今回打ち上げをしていただきました。愛称をつけておりまして、今回打ち上がって無事放出されたということで「あおい」という名前になっています。あおいというのは、このAOの「あお」というのと、静岡の徳川の葵の紋、これをかけて「あおい」という名前で、地域で公募しまして高校生が発案した名前になっています。肝心のミッションの方は民生の超小型カメラ、もともと衛星が10センチ立方なので、超小型で超高感度なカメラ、これが地上での最先端技術なんですね。超小型衛星はやはり最先端技術をすぐに宇宙へ持っていって試すということが特徴ですので、それを試すということが一つ目です。二つ目は宇宙を撮影しようとしていて、星などを撮ろうとしていますけども、その画像をダウンリンクする、多くの超小型衛星はアマチュア無線の周波数を使っているが、画像などを撮影した場合に地上に伝送する、これがスピードが遅いのでネックになっていた。それを今回我々は1200 bpsの100倍の速度を出すアマチュア無線を使って画像を降ろすとに挑戦する、この2つが大きなミッションになっています。今回静岡大学が中心とはなっていますけども、アマチュア技術者の方々に多く参加していただいて、学生とアマチュア技術者の方々が一緒に開発してきたという経緯があります。これで何をするかというのは、こだわっているのはやはり1U(10センチ四方)のキューブサットで、低コストなんですね。個人で買えるレベルの宇宙望遠鏡を作りたいというのが目標になっています。小学校で好きなときに好きな空を撮るとか、そのようなことに利用していこうと考えています。さらに我々研究室では宇宙テザーとか、宇宙ロボットということを、他の超小型衛星を使って実験しているが、そういう時でもいい画像が早くダウンリンクできれば非常に実験が効率的になる。こだわっているのはやはりアマチュア無線でして、アマチュア無線を使えば幅広い多くの方々、アマチュア無線は趣味でやるものですので、個人で買えるレベルの金額ですので、そういったところで生きていければと考えております。
最後に現状なんですが、衛星がロケットから切り離されてCWビーコンの電波を発信し、地上で無事に受信されたことが報告されていますので、衛星は無事に起動したということになります。一週間くらいで初期チェックを終えてから、カメラ撮影のミッションとか高速のダウンリンクのミッションに入っていく予定になっております。
・JAXA岩本
最初にこちらを欠席しております愛知工科大学の西尾先生からメッセージをいただいております。打ち上げまではいらっしゃったのですが、その後衛星の運用のため大学に戻られている最中です。
『ロケットの打ち上げが成功し、ほっとしております。今後衛星からの信号受信を行い、衛星自身の動作確認を進めてまいります。今後が我々の勝負時です。頑張ってまいります。また、衛星の開発にあたり、地元蒲郡市の企業様方、信州衛星研究会の企業様、JAMSAT様、九州工業大学奥山研究所様、高知高専様、AIS総研様等、多くの方に協力いただきました。感謝致します』というお言葉をいただいております。
次にJAXAとしてお話させていただきます。今回の相乗りミッションが、相乗り公募を始めてから8回目になります。今回の4基を足しまして、これまでで32基の相乗り小型衛星が打ち上がったことになります。もともとこの制度が、これから宇宙に参入して衛星等を作りたい企業さんですとか、それから大学等の教育という目的、その拡大を進めてまいりました。今まで実際に32基の打ち上げに関わった方々の何人かは宇宙の現場で活躍されています。我々は引き続きこういう機会をもうけていきたいと考えています。
・質疑応答
朝日新聞・衛星はそれぞれ予定通りの軌道に投入が成功したのか。
奥山・「てんこう」に関してはその理解でよろしいです。
高橋・DIWATA-2も地上で受信して、バス系が全て正常であると確認しています。
(※ロケットから切り離した軌道になる)
鹿児島テレビ・大分県内の企業4社との共同開発だったと思うが、ひとつの県にある中小企業が技術を出し合って衛星を打ち上げることの意味と意義と、開発の苦労、今後の展開等があれば教えてください。
奥山・みなさん人工衛星を作るのは初めての経験だったのですが、モチベーションがすごく高くて、宇宙で実際に動くものを作りたいということで、みんな集まってきました。ただ開発期間が1年半弱ととても短い期間で、本当に困難の連続だったが、皆さん熱意とモチベーションが高く、あと技術力が高くて無事にゴールにたどり着くことができました。おかげさまで無事に成功できたのですが、これで終わらずに次に向かって新しい挑戦を続けていきたいと思っています。
鹿児島テレビ・あらためて宇宙での活動を開始したことで、率直な感想を。
奥山・私自身も新しい4社の方々と仕事をして、本当に困難の連続だったが、月並みの言い方だがチームワークで1つのものを作り上げる大切さをあらためて感じた。それを実践できたということは本当に感慨深いです。
NVS・打ち上げ概要(資料)の中に民生品を活用したミッションがあり、その中に原子時計が入っていたが、23キロの衛星に乗る原子時計とはどんなものか。
奥山・当初の予定では原子時計を搭載する予定だったが、今回は搭載していない。ただ超小型衛星用の原子時計はあって30万円くらいで市販されています。今回それは搭載していませんが、ウルトラキャパシタやGNSSレシーバーなど今まで宇宙で使われたことが無いような民生品を衛星に搭載して、宇宙で使えるかどうか実証することもミッションとしています。
以上です。
|