投稿日 2019年1月14日(月)11時53分 投稿者 柴田孔明
2019年1月17日に打ち上げが予定されているイプシロンロケット4号機の概要説明が2019年1月8日に、翌9日に打ち上げ前のリハーサルと報道向け機体公開が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)
・登壇者
JAXA第一宇宙技術部門 イプシロンプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 骰s
・イプシロンロケット4号機について
打ち上げ予定日:2019年1月17日(木)
打ち上げ予定時間帯:9時50分20秒〜9時59分37秒(JST)
打ち上げ場所:内之浦宇宙空間観測所
※打ち上げ時刻は打ち上げ2日前(1月15日)に決定し、発表する予定。
・イプシロンロケットとして初めて複数衛星同時打ち上げ。
・11月15日に全面施行となった宇宙活動法下における国内初の打ち上げ。
<同日に以下の認定書・認定証を取得>
形式認定書 認定番号 :形式18-001、形式認定 イプシロンロケット
打上げ施設認定書 適合認定番号 :適合18-001、打上げ施設 内之浦宇宙空間観測所
人工衛星等の打上げ許可証 許可番号 :打上18-001、号機番号 4号機
・4号機は、イプシロンロケットのオプション形態(小型液体推進系(PBS)付)に複数衛星搭載機構等を追加した形態。(※イプシロンロケットのオプション形態は3号機で使用)
・応援メッセージ掲載したシールを1段目に貼付。
・2018年9月19日に1段モータを射場に搬入。
・衛星(7基)のロケットへの結合を完了し、全段組立・点検作業も終了。
・質疑応答
鹿児島テレビ・一週間後という事で意気込みをお願いします。
井元・前回も言ったことなんですが、これまでは1つの衛星だったが、今回は7つの衛星を搭載する。学生をはじめとした宇宙空間・人工衛星にそれほど慣れていない方々の衛星を打ち上げる。ぜひその方々に、宇宙空間での技術実証をやっていただきたいので、打ち上げを確実に成功させたい。関係者一同協力してやっていきたいと考えています。
NHK・複数衛星の搭載は初めてだが、これまでも輸送能力的には複数の衛星を搭載可能だったが、複数衛星搭載構造を新たに開発することで可能になったのか。
井元・能力的には3号機と変わっておりません。3号機までの構造では複数は搭載できませんでした。それから分離する衛星の数が多いので、分離信号を出すパワーシーケンス、デストリビューションボックスというのがあるが、そちらも改修というか開発しまして能力を向上させ機能を搭載した。フライトソフトウェアも多数回PBSを燃焼させるために多少工夫いたしまして、そういう機能的な付加はありますけども、もともとのポテンシャルとしては複数衛星の搭載は可能でした。
NHK・海外受注の展望などに複数衛星搭載がどれくらい関わってくるか。
井元・これまでは1個のロケットで1個の衛星しか打ち上げられなかったので、自由度がある程度制限されていました。複数衛星を打ち上げる機能を付加することによりまして、打ち上げ機会の提供ができるようになりましたので、例えば我々は太陽同期軌道に600kgの衛星を打ち上げられるが、例えば300kg級の衛星1個だと能力が余る。しかし今回のように機能を付加したものを使いますと超小型衛星やキューブサットといったものを、余剰能力のところに搭載することができます。今まで機能が制限されたところが1段階次元が上がったというか、それぐらい大きく進化した所ではないかと私は考えています。
NHK・それをさらに5号機6号機にも適用するのか。
井元・革新的衛星技術実証2号機は5号機か6号機のどちらかに搭載する予定で、そちらも複数衛星の予定ですので、この4号機で開発したものを有効活用したいと考えています。
NHK・明日のリハーサルは午前3時から何時頃までやるのか。またどんな作業をやるのか。
井元・基本的に打ち上げと同じ作業を実施します。朝6時くらいにランチャを旋回するが、それまでには機体と設備の準備、電源の立ち上げですとか、外に出す準備、整備塔の中でできる点検、例えば1段ノズルのジンバル機構といった姿勢制御の点検を整備塔の中で実施します。その後ランチャを旋回するために床を跳ね上げて、その後ランチャの大扉を開放してランチャを旋回する。射座に据え付けた後は打ち上げ前と同じRF点検(電波系の点検)といったものや、当日の内之浦上空の風を計ってソフトウェアを多少書き換えて、機体のソフトウェアをロードして機能点検をする。最後は自動カウントダウンシーケンスを実施します。そしてX時刻を迎えます。今回はその後、電波干渉試験を機体の機能点検という意味で3号機のリハーサルよりも多少長くやりまして、その後ランチャを戻す。こういった作業を実施します。
南日本放送・確実に成功とのことだが、前段階として明日のリハーサルに向けての意気込み。
井元・これまで3回打ち上げているが、前回の打ち上げが1年前。打ち上げには独特の緊張感があります。その独特の緊張感をいきなり本番でやる前のリハーサルということで、本番と同じ気持ちで臨まないといけないと思っています。まずはしっかりと前回のことを思い出しつつ、きちっとやりたいと思っています。ここでデータをたくさんとるが、そのデータをきちんと評価して、ロケットの機能・性能が健全であることを確認した上で、次の打ち上げに臨みたいと思っています。
28:13
南日本放送・初めての複数衛星同時打ち上げに対しての気持ちや嬉しさなど。
井元・超小型の60kgの衛星ですとかキューブサットは、かなり需要がのびてくるのではないかと思っています。今回の大学の衛星ですとか流れ星の衛星ですとか、かなり先進的というか面白い興味深いミッションがたくさんある。そういったものに我々としてもいよいよ対応できることで、非常にわくわくしている。
南日本新聞・リハーサルは3時間くらいなのか、4時間くらいなのか
井元・リハーサルそのものは朝の3時くらいから、X−0の9時ちょっと過ぎまでで、それが6時間くらい。その後2時間くらいかかるので、全部で8時間くらいをリハーサルと考えていいと思います。
南日本新聞・リハーサルのX−0は何時か。
井元・打ち上げ予定時間帯のいちばん最初の9時50分20秒を目標に実施します。
南日本新聞・複数衛星の切り離しの順番はどういった風に決まったのか。
井元・まずRAPIS−1を最初に分離するのは最初から決めていました。もうひとつ順番が決まっているのはALE−1で、こちらはできるだけ軌道を下げてほしいというのがあったので、これをいちばん最後にしようと考えました。残りの超小型2機は特に制約は無く搭載している順番と位置によります。そのあとキューブサット2つという順番という感じで決めています。
南日本新聞・重い方から先に切り離すという事はないのか。
井元・殆ど微々たるものだが、沢山重たい物を乗せている時に軌道を変換する際には燃料がかかりますので、できるだけ重たいものは切り離した方がいい。基本的にそんなに変わらない。
鹿児島放送・複数の衛星打ち上げで7機は、これまでで最多なのか。
井元・イプシロンではこれまで1個なので最多です。他のロケット、世界を比べるともっと沢山のものがある。
鹿児島放送・世界ではどれくらいの数があるのか。
井元・確かインドがかなりの数で、10個というレベルではなくもっと沢山というものがおぼろげながら記憶にあります。
鹿児島放送・種子島では早めに打ち上げ時刻が何時何分何秒まで決められているが、今回のイプシロンが2日前に発表するのは何か理由があるのか。
井元・いえ、種子島と全く同じです。打ち上げ時間帯のどこで打ち上げをすると決めるだけで、それは通常のルーチンです。
34:04
産経新聞・今回の4号機の打ち上げコストはいくらか。それは3号機と比べてどうか。
井元・3号機は「ASNARO−2」の打ち上げということで、外部からの受託でJAXAが打ち上げるということで輸送費なので消費税がかからない。それに対して4号機は消費税がかかるという観点で、ロケットだけのトータルで55億程度です。3号機は消費税抜きですし、搭載構造なども抜きになりますので、確か45億くらいと記憶しています。
産経新聞・イプシロンロケットは低いコストで上げようというコンセプトがあったが、その点での3号機から4号機へのステップアップはあるか。
井元・その点ではステップアップは特にない。その点についてはシナジー・イプシロンの方で実現しようとして、現在研究段階にあります。
産経新聞・組み立てや整備の工程に変化は特に無いのか。
井元・複数衛星の搭載以外で、純粋にロケットのところについては特に変更はありません。
産経新聞・自動点検も3号機と同様か。
井元・3号機と同じです。3号機は自律のところはデータ取得だが、4号機でもデータ取得をする。
産経新聞・革新的衛星技術実証1号機を含めた打ち上げ全体の費用はいくらか。
井元・手元に持っていない。
産経新聞・ランチャ旋回は本番でも6時頃か。
井元・6時半前後と記憶しています。
時事通信・当初から打ち上げ費用は30億円を目指すとあったが、これはシナジーで実現するという目標は変わっていないのか。
井元・変わっていません。
時事通信・複数衛星を搭載する機能をつけたことで、同種のロケットと市場で戦う上で性能と機能は十分戦える対等なものが得られるのか、それともまだ開発要素があるのか。
井元・機能性能の面では全く遜色が無い。乗り心地の観点では世界トップレベルである。
時事通信・現状のイプシロンはこれで開発要素は無くなって定常の打ち上げ段階に入れるのか。
井元・はい。衛星のミッション対応(ミッションモディフィケーション)で、衛星の数が増えるなどに対応する細かい仕様の変更はあるが、基本性能・基本機能についてはこちらで開発が終わっています。
時事通信・組み立てや検査で工程変化なしとのことだが、H-IIAなどでは号機を重ねる中で簡素化やコストダウンが行われている。シナジー化前のイプシロンではそういった事はしないのか、それとも計画はあるのか。
井元・基本的な流れは変えていないと言ったが、一方で3号機までやってきた実績がありますので、例えば点検の期間を4日から3日に短くするとかそういったレベルでの改善は当然4号機でも図っています。5号機6号機も今後4号機の評価をきちっとした上で効率化できるとか自動化できるようなものがあれば、評価した上で実施してく予定です。
読売新聞・キューブサットの需要が伸びてくるのではないかということで期待される市場とのことだが、これに対して現状では開発段階でコストの面から市場に入っていけないということで、30億くらいに下げてから勝負するのか。
井元・基本はそうですが、5号機6号機でも市場に参入する気が無いわけではない。ニーズや我々の余力があれば当然対応していきたい。ただ本当に勝負できる・勝負するものについてはシナジー開発を適用したロケットと頭の中では考えています。
読売新聞・時期としてはいつごろか。
井元・H3ロケットの打ち上げが2020年でして、間隔をおかずできるだけ早く打ちたいと考えています。そこら辺の計画もいま検討している段階です。
読売新聞・宇宙活動法下での初の打ち上げだが、型式の認定を得る上で大変だった事はあるか。
井元・基本的にそれで設計を変えたことは一切なく、JAXAで設定した基準を元に機体を製造しています。そういった基準も特に変えていません。それに対して我々がやってきたことを必用な申請を実施して認可していただいたと考えています。特段新たなことをやったとかはありません。当然、資料をまとめることなどはありますが、通常の工程で変えたものはございません。
読売新聞・今後民間への例となると思うが、書類は大変ではなく普通の業務でこなせるのか。
井元・回答が難しいが、書類を整えること自体はロケットの情報が膨大なので、たとえば審査・評価をしていただく方にJAXAや製造メーカー、内之浦に来ていただいてかなり細かく見ていただいた。書類の方もきちんと整備する必要があるので、そこそこの手間だった。
読売新聞・宇宙活動法で民間企業が衛星やロケット開発に参入してくる事で、こういった民間企業の参入への期待感はどう考えられているか。
井元・非常に大歓迎。宇宙活動の裾野が広がるという観点で非常に良いこと。RAPIS−1は人工衛星だが、我々のロケットの分野でもいろんな候補があると聞いている。我々としても是非打ち上げに成功してほしいと思っています。
読売新聞・7機の衛星を搭載するため構造上工夫した点など。
井元・複数衛星搭載機構の構造(資料写真のリブ)で、ロケットは基本的に軽くしなければならない。軽くすると同時に乗り心地の良い物にする観点で、剛性を上げ、なおかつ軽くしないといけない。そういったものを工夫をこらして実現したと考えています。
朝日新聞・革新的衛星技術実証プログラムの1号機ということで、2号機までは企業などが選ばれているが、計4回ということはまだ2回ある。地方や中小企業など、これまで参入してこなかったところへの期待。特に出身の大分など。
井元・非常に期待しています。我々がイプシロンロケットを始めたのは、衛星の打ち上げは当然ながら、宇宙の裾野を広げることを目標にやってきています。そのために搭載の環境条件を緩和したり、軌道投入精度を向上したりしてきた。つまり乗りやすいロケットにすることで裾野を広げたいと考えておりますので、今まで人工衛星や探査機の経験が少ない方々にぜひイプシロンに乗っていただきたい。その観点で大分の方々には、私の出身地でありますけども、ぜひ頑張っていただきたい。大分に限らず、地方の方々や大学生・高校生でも大歓迎です。
朝日新聞・今年度最後とあるが、平成最後という理解で良いか。
井元・恐らくそうなる。
NHK・分離の成否確認を1周してからとあるが、おおよその時間は。
井元・ちょっとおぼろげな記憶だが、2時間後くらいにデータを取得したいと考えています。ここで気をつけないといけないのは、スペースデブリ発生防止の観点で、日本上空に戻ってくる前にPBSの推進薬をできるだけ排出しようということで、機体の姿勢が不定になっている。飛んでいる時は地上と電波リンクをとるために機体の姿勢を定めているが、日本の上空では姿勢がどうなっているかわからない。とれるかどうか非常に微妙です。射場系と言って地上で追いかけている方々に頑張ってもらって、なんとかデータを取得してほしいと考えています。
NHK・今回、IHIエアロスペースが一元化されているが、そもそもの経緯と今回の感想。
井元・3号機まではJAXAがいろんな企業の方々と直接契約して物を作っていただいていたが、4号機からIHIエアロスペースさん一元化にいたしました。IHIエアロスペースさんも、我々も多少主導したところもあるが、一生懸命きちっとやっていただきまして、ここまで機体をよくまとめてもらったと考えています。今後も5、6号機とさらに品質の改善につなげていってもらいたい。
以上です。
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