宇宙作家クラブ
トップページ 活動報告ニュース掲示板 会員ニュース メンバーリスト 推薦図書

No.2258 :打ち上げ時刻について
投稿日 2019年1月16日(水)13時18分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット4号機の打ち上げ時刻が発表されました。

打ち上げ日:2019年1月18日(金)
打ち上げ時刻:9時50分20秒(JST)
打ち上げ時間帯:9時50分20秒〜9時59分37秒(JST)
打ち上げ予備期間:2019年1月19日(土)〜2019年2月28日(木)

No.2257 :打ち上げ予定日の変更
投稿日 2019年1月15日(火)14時25分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット4号機の打ち上げ予定日は2019年1月17日から2019年1月18日に変更されました。
理由は17日の天候悪化が予想され、氷結層を含む雲が規定よりも厚くなる可能性が高いためです。

No.2256 :贈呈された千羽鶴 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)22時44分 投稿者 柴田孔明

 贈呈された千羽鶴。


No.2255 :肝付町ロケット交流会 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)22時43分 投稿者 柴田孔明

 2019年1月13日、イプシロンロケット4号機の打ち上げ予定日(2019年1月17日)が迫る中、「ふれあいドーム内之浦」にて、肝付町ロケット交流会が開催され、約340名の関係者と町の方々が参加し、大いに盛り上がりました。また、恒例の千羽鶴の贈呈式も同時に行われ、町女性会と旧内之浦婦人会の方々から二つの千羽鶴が贈られています。


No.2254 :イプシロンロケット4号機の機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)11時53分 投稿者 柴田孔明

 2019年1月17日に打ち上げが予定されているイプシロンロケット4号機の概要説明が2019年1月8日に、翌9日に打ち上げ前のリハーサルと報道向け機体公開が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA第一宇宙技術部門 イプシロンプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 骰s

・イプシロンロケット4号機について

  打ち上げ予定日:2019年1月17日(木)
  打ち上げ予定時間帯:9時50分20秒〜9時59分37秒(JST)
  打ち上げ場所:内之浦宇宙空間観測所
  ※打ち上げ時刻は打ち上げ2日前(1月15日)に決定し、発表する予定。

  ・イプシロンロケットとして初めて複数衛星同時打ち上げ。
  ・11月15日に全面施行となった宇宙活動法下における国内初の打ち上げ。
   <同日に以下の認定書・認定証を取得>
    形式認定書 認定番号 :形式18-001、形式認定 イプシロンロケット
    打上げ施設認定書 適合認定番号 :適合18-001、打上げ施設 内之浦宇宙空間観測所
    人工衛星等の打上げ許可証 許可番号 :打上18-001、号機番号 4号機

  ・4号機は、イプシロンロケットのオプション形態(小型液体推進系(PBS)付)に複数衛星搭載機構等を追加した形態。(※イプシロンロケットのオプション形態は3号機で使用)
  ・応援メッセージ掲載したシールを1段目に貼付。
  ・2018年9月19日に1段モータを射場に搬入。
  ・衛星(7基)のロケットへの結合を完了し、全段組立・点検作業も終了。


・質疑応答
鹿児島テレビ・一週間後という事で意気込みをお願いします。
井元・前回も言ったことなんですが、これまでは1つの衛星だったが、今回は7つの衛星を搭載する。学生をはじめとした宇宙空間・人工衛星にそれほど慣れていない方々の衛星を打ち上げる。ぜひその方々に、宇宙空間での技術実証をやっていただきたいので、打ち上げを確実に成功させたい。関係者一同協力してやっていきたいと考えています。

NHK・複数衛星の搭載は初めてだが、これまでも輸送能力的には複数の衛星を搭載可能だったが、複数衛星搭載構造を新たに開発することで可能になったのか。
井元・能力的には3号機と変わっておりません。3号機までの構造では複数は搭載できませんでした。それから分離する衛星の数が多いので、分離信号を出すパワーシーケンス、デストリビューションボックスというのがあるが、そちらも改修というか開発しまして能力を向上させ機能を搭載した。フライトソフトウェアも多数回PBSを燃焼させるために多少工夫いたしまして、そういう機能的な付加はありますけども、もともとのポテンシャルとしては複数衛星の搭載は可能でした。

NHK・海外受注の展望などに複数衛星搭載がどれくらい関わってくるか。
井元・これまでは1個のロケットで1個の衛星しか打ち上げられなかったので、自由度がある程度制限されていました。複数衛星を打ち上げる機能を付加することによりまして、打ち上げ機会の提供ができるようになりましたので、例えば我々は太陽同期軌道に600kgの衛星を打ち上げられるが、例えば300kg級の衛星1個だと能力が余る。しかし今回のように機能を付加したものを使いますと超小型衛星やキューブサットといったものを、余剰能力のところに搭載することができます。今まで機能が制限されたところが1段階次元が上がったというか、それぐらい大きく進化した所ではないかと私は考えています。

NHK・それをさらに5号機6号機にも適用するのか。
井元・革新的衛星技術実証2号機は5号機か6号機のどちらかに搭載する予定で、そちらも複数衛星の予定ですので、この4号機で開発したものを有効活用したいと考えています。

NHK・明日のリハーサルは午前3時から何時頃までやるのか。またどんな作業をやるのか。
井元・基本的に打ち上げと同じ作業を実施します。朝6時くらいにランチャを旋回するが、それまでには機体と設備の準備、電源の立ち上げですとか、外に出す準備、整備塔の中でできる点検、例えば1段ノズルのジンバル機構といった姿勢制御の点検を整備塔の中で実施します。その後ランチャを旋回するために床を跳ね上げて、その後ランチャの大扉を開放してランチャを旋回する。射座に据え付けた後は打ち上げ前と同じRF点検(電波系の点検)といったものや、当日の内之浦上空の風を計ってソフトウェアを多少書き換えて、機体のソフトウェアをロードして機能点検をする。最後は自動カウントダウンシーケンスを実施します。そしてX時刻を迎えます。今回はその後、電波干渉試験を機体の機能点検という意味で3号機のリハーサルよりも多少長くやりまして、その後ランチャを戻す。こういった作業を実施します。

南日本放送・確実に成功とのことだが、前段階として明日のリハーサルに向けての意気込み。
井元・これまで3回打ち上げているが、前回の打ち上げが1年前。打ち上げには独特の緊張感があります。その独特の緊張感をいきなり本番でやる前のリハーサルということで、本番と同じ気持ちで臨まないといけないと思っています。まずはしっかりと前回のことを思い出しつつ、きちっとやりたいと思っています。ここでデータをたくさんとるが、そのデータをきちんと評価して、ロケットの機能・性能が健全であることを確認した上で、次の打ち上げに臨みたいと思っています。

28:13

南日本放送・初めての複数衛星同時打ち上げに対しての気持ちや嬉しさなど。
井元・超小型の60kgの衛星ですとかキューブサットは、かなり需要がのびてくるのではないかと思っています。今回の大学の衛星ですとか流れ星の衛星ですとか、かなり先進的というか面白い興味深いミッションがたくさんある。そういったものに我々としてもいよいよ対応できることで、非常にわくわくしている。

南日本新聞・リハーサルは3時間くらいなのか、4時間くらいなのか
井元・リハーサルそのものは朝の3時くらいから、X−0の9時ちょっと過ぎまでで、それが6時間くらい。その後2時間くらいかかるので、全部で8時間くらいをリハーサルと考えていいと思います。

南日本新聞・リハーサルのX−0は何時か。
井元・打ち上げ予定時間帯のいちばん最初の9時50分20秒を目標に実施します。

南日本新聞・複数衛星の切り離しの順番はどういった風に決まったのか。
井元・まずRAPIS−1を最初に分離するのは最初から決めていました。もうひとつ順番が決まっているのはALE−1で、こちらはできるだけ軌道を下げてほしいというのがあったので、これをいちばん最後にしようと考えました。残りの超小型2機は特に制約は無く搭載している順番と位置によります。そのあとキューブサット2つという順番という感じで決めています。

南日本新聞・重い方から先に切り離すという事はないのか。
井元・殆ど微々たるものだが、沢山重たい物を乗せている時に軌道を変換する際には燃料がかかりますので、できるだけ重たいものは切り離した方がいい。基本的にそんなに変わらない。

鹿児島放送・複数の衛星打ち上げで7機は、これまでで最多なのか。
井元・イプシロンではこれまで1個なので最多です。他のロケット、世界を比べるともっと沢山のものがある。

鹿児島放送・世界ではどれくらいの数があるのか。
井元・確かインドがかなりの数で、10個というレベルではなくもっと沢山というものがおぼろげながら記憶にあります。

鹿児島放送・種子島では早めに打ち上げ時刻が何時何分何秒まで決められているが、今回のイプシロンが2日前に発表するのは何か理由があるのか。
井元・いえ、種子島と全く同じです。打ち上げ時間帯のどこで打ち上げをすると決めるだけで、それは通常のルーチンです。

34:04

産経新聞・今回の4号機の打ち上げコストはいくらか。それは3号機と比べてどうか。
井元・3号機は「ASNARO−2」の打ち上げということで、外部からの受託でJAXAが打ち上げるということで輸送費なので消費税がかからない。それに対して4号機は消費税がかかるという観点で、ロケットだけのトータルで55億程度です。3号機は消費税抜きですし、搭載構造なども抜きになりますので、確か45億くらいと記憶しています。

産経新聞・イプシロンロケットは低いコストで上げようというコンセプトがあったが、その点での3号機から4号機へのステップアップはあるか。
井元・その点ではステップアップは特にない。その点についてはシナジー・イプシロンの方で実現しようとして、現在研究段階にあります。

産経新聞・組み立てや整備の工程に変化は特に無いのか。
井元・複数衛星の搭載以外で、純粋にロケットのところについては特に変更はありません。

産経新聞・自動点検も3号機と同様か。
井元・3号機と同じです。3号機は自律のところはデータ取得だが、4号機でもデータ取得をする。

産経新聞・革新的衛星技術実証1号機を含めた打ち上げ全体の費用はいくらか。
井元・手元に持っていない。

産経新聞・ランチャ旋回は本番でも6時頃か。
井元・6時半前後と記憶しています。

時事通信・当初から打ち上げ費用は30億円を目指すとあったが、これはシナジーで実現するという目標は変わっていないのか。
井元・変わっていません。

時事通信・複数衛星を搭載する機能をつけたことで、同種のロケットと市場で戦う上で性能と機能は十分戦える対等なものが得られるのか、それともまだ開発要素があるのか。
井元・機能性能の面では全く遜色が無い。乗り心地の観点では世界トップレベルである。

時事通信・現状のイプシロンはこれで開発要素は無くなって定常の打ち上げ段階に入れるのか。
井元・はい。衛星のミッション対応(ミッションモディフィケーション)で、衛星の数が増えるなどに対応する細かい仕様の変更はあるが、基本性能・基本機能についてはこちらで開発が終わっています。

時事通信・組み立てや検査で工程変化なしとのことだが、H-IIAなどでは号機を重ねる中で簡素化やコストダウンが行われている。シナジー化前のイプシロンではそういった事はしないのか、それとも計画はあるのか。
井元・基本的な流れは変えていないと言ったが、一方で3号機までやってきた実績がありますので、例えば点検の期間を4日から3日に短くするとかそういったレベルでの改善は当然4号機でも図っています。5号機6号機も今後4号機の評価をきちっとした上で効率化できるとか自動化できるようなものがあれば、評価した上で実施してく予定です。

読売新聞・キューブサットの需要が伸びてくるのではないかということで期待される市場とのことだが、これに対して現状では開発段階でコストの面から市場に入っていけないということで、30億くらいに下げてから勝負するのか。
井元・基本はそうですが、5号機6号機でも市場に参入する気が無いわけではない。ニーズや我々の余力があれば当然対応していきたい。ただ本当に勝負できる・勝負するものについてはシナジー開発を適用したロケットと頭の中では考えています。

読売新聞・時期としてはいつごろか。
井元・H3ロケットの打ち上げが2020年でして、間隔をおかずできるだけ早く打ちたいと考えています。そこら辺の計画もいま検討している段階です。

読売新聞・宇宙活動法下での初の打ち上げだが、型式の認定を得る上で大変だった事はあるか。
井元・基本的にそれで設計を変えたことは一切なく、JAXAで設定した基準を元に機体を製造しています。そういった基準も特に変えていません。それに対して我々がやってきたことを必用な申請を実施して認可していただいたと考えています。特段新たなことをやったとかはありません。当然、資料をまとめることなどはありますが、通常の工程で変えたものはございません。

読売新聞・今後民間への例となると思うが、書類は大変ではなく普通の業務でこなせるのか。
井元・回答が難しいが、書類を整えること自体はロケットの情報が膨大なので、たとえば審査・評価をしていただく方にJAXAや製造メーカー、内之浦に来ていただいてかなり細かく見ていただいた。書類の方もきちんと整備する必要があるので、そこそこの手間だった。

読売新聞・宇宙活動法で民間企業が衛星やロケット開発に参入してくる事で、こういった民間企業の参入への期待感はどう考えられているか。
井元・非常に大歓迎。宇宙活動の裾野が広がるという観点で非常に良いこと。RAPIS−1は人工衛星だが、我々のロケットの分野でもいろんな候補があると聞いている。我々としても是非打ち上げに成功してほしいと思っています。

読売新聞・7機の衛星を搭載するため構造上工夫した点など。
井元・複数衛星搭載機構の構造(資料写真のリブ)で、ロケットは基本的に軽くしなければならない。軽くすると同時に乗り心地の良い物にする観点で、剛性を上げ、なおかつ軽くしないといけない。そういったものを工夫をこらして実現したと考えています。

朝日新聞・革新的衛星技術実証プログラムの1号機ということで、2号機までは企業などが選ばれているが、計4回ということはまだ2回ある。地方や中小企業など、これまで参入してこなかったところへの期待。特に出身の大分など。
井元・非常に期待しています。我々がイプシロンロケットを始めたのは、衛星の打ち上げは当然ながら、宇宙の裾野を広げることを目標にやってきています。そのために搭載の環境条件を緩和したり、軌道投入精度を向上したりしてきた。つまり乗りやすいロケットにすることで裾野を広げたいと考えておりますので、今まで人工衛星や探査機の経験が少ない方々にぜひイプシロンに乗っていただきたい。その観点で大分の方々には、私の出身地でありますけども、ぜひ頑張っていただきたい。大分に限らず、地方の方々や大学生・高校生でも大歓迎です。

朝日新聞・今年度最後とあるが、平成最後という理解で良いか。
井元・恐らくそうなる。

NHK・分離の成否確認を1周してからとあるが、おおよその時間は。
井元・ちょっとおぼろげな記憶だが、2時間後くらいにデータを取得したいと考えています。ここで気をつけないといけないのは、スペースデブリ発生防止の観点で、日本上空に戻ってくる前にPBSの推進薬をできるだけ排出しようということで、機体の姿勢が不定になっている。飛んでいる時は地上と電波リンクをとるために機体の姿勢を定めているが、日本の上空では姿勢がどうなっているかわからない。とれるかどうか非常に微妙です。射場系と言って地上で追いかけている方々に頑張ってもらって、なんとかデータを取得してほしいと考えています。

NHK・今回、IHIエアロスペースが一元化されているが、そもそもの経緯と今回の感想。
井元・3号機まではJAXAがいろんな企業の方々と直接契約して物を作っていただいていたが、4号機からIHIエアロスペースさん一元化にいたしました。IHIエアロスペースさんも、我々も多少主導したところもあるが、一生懸命きちっとやっていただきまして、ここまで機体をよくまとめてもらったと考えています。今後も5、6号機とさらに品質の改善につなげていってもらいたい。

以上です。


No.2253 :マイクロドラゴン ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)11時49分 投稿者 柴田孔明

マイクロドラゴン。


No.2252 :ALE−1 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)11時44分 投稿者 柴田孔明

人工流れ星実証衛星のALE−1。流れ星の元の放出口は複数衛星搭載構造側となり見えません。


No.2251 :複数衛星搭載構造 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)11時41分 投稿者 柴田孔明

複数衛星搭載構造。手前の衛星はRISESAT、下部にキューブサット放出機構が二つ見えています。
また、この上部にRAPIS−1が搭載されます。


No.2250 :革新的衛星技術実証1号機の報道公開と概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月14日(月)11時36分 投稿者 柴田孔明

 2018年12月13日、内之浦宇宙空間観測所にて革新的衛星技術実証1号機の報道公開と概要説明が行われました。なお、「革新的衛星技術実証1号機」とはイプシロンロケット4号機で打ち上げられる衛星全体(7機)を指し、最も大きい衛星は「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」ですが、これは今回の公開に含まれていません。今回は超小型衛星の3機(MicroDragon、RISESAT、ALE-1)と、複数衛星搭載構造(ESMS)、キューブサット放出装置(E-SSOD)が公開されました。
 またキューブサット3機(OrigamiSat-1、Aoba VELOX-IV、NEXUS)も、この放出機構に格納されて見ることができませんでした。
 (※敬称を一部省略させていただきます。また一部表現について、配付資料に従っているものと、こちらの事情により統一しているものが混在していますが、ご了承願います)

・登壇者(内之浦会場)
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 骰s

・登壇者(九州工業大学)
九州工業大学 宇宙環境技術ラボラトリー 教授 趙 孟佑

・登壇者(東京会場)
宇宙航空研究開発機構 研究開発部門 革新的衛星技術実証グループ長 香河 英史
慶應義塾大学 大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師 平松 崇
東北大学 大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 准教授 繻エ 聡文
株式会社ALE 代表取締役CEO 岡島 礼奈
東京工業大学 工学院 准教授 坂本 啓
日本大学大学院理工学研究科 博士前期課程2年 山口 清

・概要説明(配付資料より)

・イプシロンロケットについて(井元)
 ・小型衛星の打ち上げに我が国として自立的に対応するための、機動性・運用性に優れる固体燃料ロケット。
 ・3号機までの打ち上げは全て成功し、以下を達成。
  1.コンパクトな打ち上げ運用(発射管制、点検)
  2.世界トップレベルの衛星搭載環境。(※音響、正弦波振動、衛星分離衝撃)
  3.高い軌道投入精度。

 ・イプシロンロケット4号機では7基の衛星を同時に打ち上げる。
  1.複数衛星搭載構造(超小型衛星3基搭載)、キューブサット放出機構(3Uサイズ×2)
  2.複数衛星の分離に対応したアビオニクス、フライトシーケンス。

 ・今後の予定
  ・平成31年1月9日:打ち上げ(Y−0)リハーサル。(打ち上げと同じ時間帯で実施)
  ・平成31年1月17日9時50分20秒〜9時59分37秒(JST)打ち上げ予定。

・革新的衛星技術実証1号機について(香河)
 「革新的衛星技術実証1号機」は「革新的衛星技術実証プログラム」の1号機。
 ・「革新的衛星技術実証プログラム」とは
  ・宇宙基本計画上の「宇宙システムの基幹的部品等の安定供給に向けた整備計画」の一環として、民間企業や大学などが開発した機器や部品、超小型衛星、キューブサットに宇宙実証の機会を提供するプログラム。
  ・2年に1回、計4回の打ち上げ実証を計画しており、実証テーマは通年公募を行っている。
  ・2018年12月12日、2号機の15テーマを選定。
 ・国内の民間企業や大学の技術とアイディアを実際に宇宙で実証することで、日本の宇宙産業の発展につなげる。

 ・7機の衛星(13の実証テーマ)を高度500kmの太陽同期軌道に投入する。
 ・民間企業、大学、研究機関等の10の機関が参加。
 
 ※小型実証衛星1号機(RAPIS-1)については2018年12月18日開催の記者説明会記事(No.2246)を参照願います。

・「MicroDragon」(平松)
 ・実証テーマ名:海外新興国の衛星開発教育支援により衛星利用および海外市場を拡大するための地球観測マイクロ衛星。
 ・提案機関:慶應義塾大学
 ・ミッション概要:1.海色リモートセンシング
        2.エアロゾル偏光リモートセンシング
        3.ほどよしバスからの改良点(FOG等)の軌道上検証
        4.帯電防止用ATOコーティングの特性劣化測定。
 ・寸法:50×50×50 cm
 ・重量:50.5 kg
 ・実施責任者:大学院システム・マネジメント研究科 前野 隆司 教授
 ・共同実施者:東京大学、東北大学、北海道大学、九州工業大学、VNSC(ベトナム)

・超小型理学観測衛星 「RISESAT」(繻エ)
 ・実証テーマ名:高空間分解能スペクトル撮像技術の確立による新規地球環境計測及び農林水産鉱業市場の開拓と海外衛星利用市場の拡大。
 ・提案機関:東北大学
 ・ミッション概要:1.高分解能マルチスペクトル観測
        2.超小型高機能衛星バスシステムの動作性能実証
        3.光通信実験
        4.国際理学観測
 ・寸法:50×50×50 cm
 ・重量:59.3 kg
 ・実施責任者:工学研究科 繻エ 聡文 准教授
 ・共同実施者:北海道大学、情報通信研究機構、東京理科大学、福井工業大学、台湾國立中央大學、Czech Technical University in Prague、株式会社中島田鉄工所。
 ※高分解能マルチスペクトル望遠鏡
  ・液晶可変波長フィルタ(420〜1050 nm)
  ・地上分解能約 5 m

・人工流れ星実証衛星 「ALE−1」(岡島)
 実証テーマ名:流星源と放出装置を用いた人工流れ星の実現可能性と市場性の検証。
 提案機関:株式会社ALE
 ミッション概要:1.人工流れ星に関するエンターテインメントとしての技術検証と市場性の検証
       2.人工流れ星を利用し、高層大気の密度、風、成分等を観測
       3.人工流れ星の再突入による軌道の変化と現象の理解。
 ・寸法:60×60×80 cm
 ・重量:68.0 kg
 ・実施責任者:岡島 礼奈 代表取締役社長
 ・共同実施者:東北大学、首都大学東京、日本大学、神奈川工科大学

・多機能展開膜実証3Uキューブサット 「OrigamiSat−1」(坂本)
 実証テーマ名:3Uキューブサットによる高機能展開膜構造物の宇宙実証
 提案機関:東京工業大学
 ミッション概要:1.ブーム・膜複合構造による「多機能展開膜構造」の宇宙実証
       2.「2U+1U」サイズの「実験プラットフォーム」構築と宇宙実証
       3. 5.8Ghzアマチュア無線による高速ダウンリンクとUHF膜上アンテナ受信。
 寸法:10×10×34 cm (3Uサイズ)
 重量:4.1 kg
 実施責任者:工学院 坂本 啓 准教授
 共同実施者:日本大学、サカセ・アドテック株式会社(福井県)、株式会社ウェルリサーチ(千葉県)

・アマチュア通信技術実証衛星 「NEXUS」(山口)
 実証テーマ名:次世代アマチュア衛星通信技術の実証
 提案機関:日本大学
 ミッション概要:既存のアマチュア衛星より高速な衛星通信や操作可能なカメラを提供し、アマチュア無線家によるCubeSat開発、衛星通信を促進することで、衛星搭載部品産業、衛星通信用地上機器産業等、衛星関連産業の発展を促す。
 寸法:10×10×11 cm (1Uサイズ)
 重量:1.3 kg
 実施責任者:理工学部航空宇宙工学科 宮崎 康行 教授
 共同実施者:日本アマチュア無線連盟、日本アマチュア衛星通信協会

・月探査技術衛星 「Aoba VELOX−IV」(趙)
 実証テーマ名:ルーナーホライゾングロー撮影を目指した、パルスプラズマスラスタによるCubeSatの姿勢・軌道制御と超高層大気撮像高感度カメラの実証。
 提案機関:九州工業大学
 ミッション概要:1.パルスプラズマスラスタ(PPT)によるモーメンタムダンピング
       2.PPTによる軌道制御
       3.高感度カメラでの地球縁の超高層大気発光現象撮影等
 寸法:10×10×22 cm (2Uサイズ)
 重量:2.6 kg
 実施責任者:宇宙環境技術ラボラトリー 趙 孟佑 教授
 共同実施者:シンガポール南洋理工大学(NTU)、台湾国立成功大学(NCKU)
 ※パルスプラズマスラスタ(PPT):固体燃料を使った電気式推進器。
 ※ルーナーホライゾングロー(LHG):月の表面の昼夜の境界付近で月の砂が静電気によって舞い上がり、太陽光を散乱させ、月表面近くが明るく光る現象。


・質疑応答
鹿児島テレビ・様々なベンチャー企業が実証に取り組むが、JAXA側としてどういった効果を期待しているのか。
香河・革新的衛星技術実証プログラムには大きな目的が3つございます。1番目がそのものずばりのいろんな革新技術の実証をする産業育成の面、2番目と3番目がベンチャーを育成すること、あと新ビジネスや人材育成をするという大きな3つがございます。それを統合的に見ていて革新的な技術を実証する。ALEさんも今までに無かったビジネス、それからベンチャーさんですし、新たなビジネスを作るところを評価して採択させていただいております。テーマとは別にアクセルスペースさんという宇宙ベンチャー、宇宙スタートアップ企業さんも参画していただいて、そういったベンチャーを育成するというところをJAXA自ら業者として選定させていただくことで、そこを強化して推進していこうと考えてございます。

鹿児島テレビ・人工流れ星に期待することは何か。
香河・JAXAとして人工流れ星をしたい訳ではない。人工流れ星はいろんな見方があると思うが、あれっと思うようなミッションだが、それもJAXAがこれを実現するためにはどういったことを考えなければいけないのか、というところを本当に初期の頃から参加していただいて、こういったところをやれば国際的な理解が得られるというような所を話していただいて、ミッション自体を最初の基本設計のところから考えさせていただくというところからお手伝いさせていただきました。
 他にも、これは駄目なのではないかと思われているミッションを考えている方は日本の中に居て、それはもしかすると僕らが思いついていないが、日本の未来を大きく変えて作っていくミッションがあるのではないかと思っていますので、JAXAが思いついていなかったミッションを提案して欲しいという意味合いもありましてALEさんにご参画いただいている。

NHK・打ち上げまで1ヶ月あまりだが、ここまでの準備状況。イプシロンでは初めての複数衛星で、企業・大学の参加が多いところでの意気込み。
井元・4号機は格段点検を全て終了しまして、今日見ていただく超小型衛星とキューブサットを(複数衛星搭載構造に)搭載したところになっています。今後いちばん大きいRAPIS−1をロケット側に結合する作業になります。年内にロケットを全部組み上げて点検する状況になっていまして、今のところ順調に進行している。
 意気込みは、今日聞いていただいてわかると思いますが、テーマとしては面白いというか興味深い、楽しそうなテーマで、こういうテーマを基幹ロケットで実証するのはなかなか無いことではないかと思っています。それは、イプシロンというのは、伝統を受け継ぎ革新を続けるというキャッチフレーズがありますが、まさに革新プロジェクトということで、イプシロンにはぴったりのテーマだと思っています。あとイプシロンのEは、エボリューションとかエクスプロレーションとかがあるが、そのひとつにエデュケーション(教育)がある。エデュケーションは大学の方々、学生の方々が自分で頭を使って、自分の手を使って作った衛星というのもありますので、そういった皆さんの心のこもった、願いのこもった人工衛星、これをなんとか成功させたいということで、関係者一同が協力して、まずロケットが成功しないと話が始まりませんので、そこの所に向けて打ち上げの最後の最後まで気合いを入れて皆と協力していきたいと思っています。

NHK・ALE−1は、どのあたりからどんな弾をどうやって放出するのか。また打ち上がってからスケジュールはどうなるのか。
岡島・真下(衛星と複数衛星搭載構造の結合部)に放出口があり、衛星の重心を通る形で筒が配置されていて、そこを通って粒が出てくる。粒は1センチほどで、素材は企業秘密だが、JAXAさんの安全審査を通っている。スケジュールは、軌道降下ミッションの500kmから400kmまで降りてくるのは、その時の太陽活動にもよりけりなのでなかなか一概には言えないが、1年から1年半というスパンになります。最初の流れ星は2020年春に流そうと考えております。

・今回衛星を分離する際に高度を下げる軌道変更があるが、具体的に高度何メートルから分離するのか、またその理由は何か。
井元・まずRAPIS−1を分離するが、それが高度500kmの太陽同期軌道になります。一番最後に放出するのがALE−1で、こちらはちょっと楕円軌道になるが、近地点高度が約480km、遠地点高度が500kmくらいのところに入れる。それの間までに徐々に下げていく形になります。まずRAPIS−1からRISESATについては数キロ、PBSの噴射としてはほんの数秒で近地点高度を下げていく。これはまずぶつからないようにすること。その前にALE−1については宇宙ステーションの下の軌道に入って弾を放出するという所があるので、できるだけ低くしてほしいというものがありました。ALE−1については宇宙ステーションの軌道に干渉しないところで、我々のできるいちばん低いところにもっていく。数キロずつ徐々に下げていき、最後のALE−1はだいたい480kmのところまで持っていく。

・放出時の姿勢は地球から見て上か。
井元・そうです。

・姿勢を変える難しさや注意すべき点はあるか。
井元・PBSで姿勢を変える。それについては3号機で実証されていますので、姿勢制御についてはそれほど難しくない。姿勢制御をする頭の方、ソフトウェアといったところを今回新たに開発しましたので、そういった機能を使ってやっていく。それは実際、解析モデルを作ってシミュレーションをやっておりますので、そこについては自信を持っています。

・RAPIS−1をアクセルスペースに委託して作った理由は何か。
香河・JAXAがここしかないと選定している訳ではありません。ベンチャー等でいま衛星を作れるという方が日本国内に多数ございました。衛星を作るときに、そういったところにも門戸を開放しようということで、従来のJAXAの大きい衛星ですと、大きな衛星の製造会社の指名競争でやっておりましたけども、この指名をやめて衛星の開発実績のある方でやる気のある方は応札してくださいというような競争の調達方式をとりました。その中でアクセルスペース様が非常に早く実現可能である提案をいただきましたので、公平に選定させていただいた、という経緯でございます。

・RAPIS−1を公開できない理由。公開をしないまま打ち上げることになるか。
香河・本来ですと筑波の出荷前によく公開することがございますけども、筑波の方で開発をやっていて出荷の時期を考えると時間がとれなかったという事情がございました。作業の都合上でございまして、隠しているということではない。(公開は無くこのまま打ち上げるが)ミッションの説明会が12月18日に企画させていただいていて、衛星が無いのですが体感できるように対応させていただきます。

南日本新聞・ベトナムに向けて開発したが日本の大学のメリットは何か。
平松・マイクロドラゴンのプロジェクトで目指していた基本的なところは、衛星のシステム設計がメインです。それぞれの要素技術ではなくて、全くの初心者の人を集めて基本的な教育を施して、ここから自分達で何らかの課題を解決するためのミッションを作ってもらって、それに必用な衛星全体の設計をして、そこから製造試験から運用まで全てできることをひとつの目的にしています。そこで使った衛星の要素技術は基本的に日本の国内の企業・大学で開発したコンポーネント、既に軌道上実証が済んでいるコンポーネントになります。これには繻エ先生が開発されたものが複数搭載されています。そういったものをうまく組み合わせて、その用途に応じて衛星のシステムを手早く設計して組み合わせて実現する、そのサイクルを日本国内ではなく国外に向けて、これからそれを進めていこうと思っている新興国に対してどんどん広げていくことで利用を拡大することが、延いては日本国内のメーカーさんや、その元となる研究機関や大学の方々の要素技術の発展にもつながると考えています。

南日本新聞・分解能が上がって撮像のレベルが上がることで見えるようになるものを、たとえば農業分野での具体例を教えていただきたい。
繻エ・たとえば水田の稲が枯れていないか、病虫害が発生していないかといったことを宇宙から観測することができると考えられています。それによって適切な量の水や肥料、農薬などの最適化が図れると考えています。5mの分解能は比較的高い。軌道が低ければ空間分解能が上がるが、今回は500kmですので5mを下回りまして3mに近い分解能が出ると考えています。これが精度を向上する要素のひとつとなっています。マルチスペクトル観測ということで、5波長の観測に比べまして10波長とか15波長という数の観測を組み合わせることで取得できる情報の確度が格段に向上する。観測の理学的な観点に関しては北海道大学様が主体となって実施していただくことになるが、そういったところは今回の実証で詳しく見ていきたいと関係者一同で考えているところです。この装置の特徴として打ち上げた後に観測する波長帯を電気的に選択することができることが肝でございまして、たとえば森林を観測するときと、海洋を観測するときで異なる波長を選定する、最適な波長を10バンド選択してそれを用いる。用途を打ち上げた後でも適用して使う事が出来ることで、他と比べて競争力が非常に高い試みと考えています。

産経新聞・打ち上げ計画書のシーケンスの数値では高度が上がるように見えるが、ここはどう理解すれば良いか。
井元・打ち上げ計画書の高度は地表面高度になっています。地球は真円ではないということで、高度が高くなっているように見えますけども、実際はさほど変わっていない。分離した反対側が近地点高度になっていまして、そちらの高度を下げていく形になっています。

産経新聞・PBSは3回目になるが、多数回の燃焼を繰り返す技術的な自信とリスクの認識について。
井元・これほど多数回作動させるのは初めてになります。PBSはバルブを開いて噴射するが、そのバルブの作動については地上試験でかなりの回数・耐久性を確認していますので、その辺については全く心配していない。一方でミッション時間が長くなるというところがありますので、そちらについては、地上での解析によりまして、熱ですとか、電池といったものがきちんと持つかを確認しておりますので、ミッション時間が多少長くなるということで少し心配な点もありますけども、大丈夫だと自信をもっています。

ニッポン放送・打ち上げ後、7機の衛星が全部分離されるまでの時間はどれくらいか。
井元・約70分になります。

以上です。


No.2249 :運搬台車の単独走行 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月13日(日)13時59分 投稿者 柴田孔明

模擬移動発射台を降ろし、片方だけVAB方向に戻るデモ走行。車輪がユニット毎に向きを変えているのがわかります。また車輪は3種類あり、ブレーキ付、モーター付などでホイールの外観が異なっています。


No.2248 :運搬台車のデモ走行 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月13日(日)13時55分 投稿者 柴田孔明

模擬の移動発射台を搭載しての運搬台車デモ走行


No.2247 :H3ロケット用の新型ML運搬台車の報道公開と概要説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年1月13日(日)13時51分 投稿者 柴田孔明

 2018年12月05日に愛知県半田市の日本車輌製造株式会社において、H3ロケット用の新型ML運搬台車の報道公開と概要説明会が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット 技術領域主幹 服部 昭人
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 主席プロジェクト統括(地上システムプロジェクトマネージャ) 長田 真治
日本車輌製造株式会社 輸機・インフラ本部 技術部 次長兼ML運搬台車プロジェクト長 角田 保

・H3ロケット開発概要・服部(JAXA)
 ・H3主要設備の開発コンセプト
  ・H-IIA/B打ち上げで使用している種子島宇宙センターの設備を改修してH3を打ち上げ。
  ・機体にほぼアクセスすることなく機器の点検が可能 → 射場整備期間の短縮
  ・必用設備・装置の削減 → 維持費低減
  ・20年のライフサイクルを勘案し、可能なものは流用しつつ必用な設備を更新。

・運搬台車について・長田(三菱重工)
 ・使用目的
  ・ロケットは大型ロケット組立棟(VAB)において、移動発射台(ML)の上で組立・整備を実施。
  ・ML運搬台車は、組立・整備を終えたロケットをMLごと持ち上げて、VABから射座(LP)まで運搬する為に使用。
  ・ML運搬台車は、走行路に埋設された誘導体(マグネット)により、自動制御で走行/停止。
  ・VABからLPまでの約500mの距離を、約30分かけて移動。
  ・H3ロケットの他、現在打ち上げているH-IIA/Bロケットにも使用可能。
   H-IIAロケットの場合:VAB1からLP1へ移動。
   H3ロケット/H-IIBロケットの場合:VAB2からLP2へ移動。

 ・主要諸元
  ・車体寸法 : 全長 25400 mm、全幅 3300 mm、全高 2840〜3440 mm
   (他設備との制約により、現行台車と同等)
  ・車軸数 : 14軸(28ユニット・56輪)
  ・重量 : 車体重量 150t
  ・積載能力 : 1460t (2台当たり)
  ・最高速度 : 2km/h (積載時)
  ・自動制御(限界まで軽量化されたロケットを、優しく運ぶ)
   定点停止精度 : ±25 mm (前後左右)
   水平精度 : ±0.2度
   加減速度 : 0.08G以下

 ・特徴
  ・信頼性
   ・ML運搬台車は打ち上げの直前に使用するものであり、分単位で作業スケジュールが決められている打ち上げ準備作業に影響を与えないよう、高い信頼性が必用。
   ・重要な機能品は冗長化する等の対応により、万一運搬中に故障し停止しても、30分以内には復旧できるよう考慮。
  ・保全性
   ・H-IIA/Bロケットでの運搬経験を活かし、メンテナンス性を向上。
   ・セルフチェック機能の充実化等により、年間維持費を半減。
  ・デザイン
   ・MRJなどのデザインも手掛けている先進デザインセンターによる監修。
   ・造形デザインは、強固感・安定感を演出。
   ・カラーリングは、3色の基調カラーを採用。
    ブルー : JAXAコーポレートカラー
    ブラック : 宇宙空間
    ホワイト : 先進性・未来感
   ※本日の段階ではロゴ等はまだ入れていません。いったん分解して種子島に輸送した後、再度組み立てをして、仕上げの塗装をしてからロゴを入れる計画です。


・運搬台車の概要・角田(日本車輌)
  ・基礎要素技術
   ・キャリヤ[重量品搬送車両](※日本車輌は45年以上の実績)
    ・多軸走行
    ・全軸操舵
    ・ディーゼル発電
   ・AGV[無人搬送車](※同30年以上の実績)
    ・電動駆動技術
    ・マグネット誘導(※現行と同じ)
    ・無人運転制御
   ・ML運搬台車(1台あたり) (※軽量化:FEM解析によるフレーム設計)
    ・走行ユニット:電動 タイヤ56本
     最大44ton/ユニット
    ・操舵:電動 28ユニット
    ・マグネット誘導による自動走行
   ・ディーゼル発電機:4台(3台でも走行継続)
   ・油圧ポンプ:2台(1台でも走行継続)
   ・台車2台を1箇所(LT4)でコントロール(LT3でも可)
   …etc(※冗長性:FMEA、FTAを用いコンティンジェンシープランの作成)
   ・走行、操舵、昇降を自動で動作させ機能をチェック。
   ・センサのチェック
   …etc(※保全性:セルフチェック機能、部品管理機能)
   ※輸送のため3分割で構成されている。接続部は橋梁を繋ぐ技術を使っている。


・質疑応答
・車輪は、動輪、制動、制御等の3種類

NVS・新しい運搬台車で古い移動発射台が運べるとのことだが、古い運搬台車で新しい移動発射台は運べるのか。
服部・現状で古い運搬台車で新しい発射台を運ぶ機能は無い。
長田・ハードウェアを追加すれば使えるようになる。現状では無い。

フリー鳥嶋・発射台ごと移動させて打ち上げる方式は他の国ではなかなか無いが、この方式の利点や強みは何か。
服部・射点の制約や、運ぶロケットがそれぞれ違う。レールやキャタピラーで運んでいる例がありますが、単純にどちらがいいとか利点などは比較しづらいのが現状です。種子島の吉信射点におきましては、今のやり方が良い。

フリー鳥嶋・H-IIのときはレールだったが、H-IIAでタイヤに変えた。H-IIの運用を通して何か変えた方がいいという気づきがあったのか。
長田・H-IIロケットはVABから射点までレールが引かれていまして、レールの上を運んでいた。H-IIA、そのあとのH-IIBが出てきたときに、もう一つの射点(LP2)が追加されて、それが位置的に近かったこともあってS字カーブのような走行のようなことをしなければならない。直進や細かい場所の回頭性といったところを加味して考えた時には、多軸の制御ができる運搬台車を使った方がフレキシビリティがある。

不明・積載能力1670トンとあるが、H3ロケットはタイプ毎に重さが違う。何トンから何トンまでがロケットの重さで、移動発射台(ML)の重さは何トンか。
服部・H3だけでなくH-IIA/Bも運べる。一番重いのはH-IIBの形態。そのML3とH-IIBロケットの組み合わせが1460トンとなる。重量は後ほどお伝えします。

不明・移動発射台の機能を絞って安全性を高めたとあったが、H3の重さによって、走行パターンが異なるのか。パターンによって走行を変えるのか。
服部・H3のそれぞれの形態において、走行時のプログラムなどは変わることはない。全て同じやり方で搬送する。

不明・2センチ以内の精度があるとのことだが、ずれると打ち上げの流れの中で不具合は出るのか。
服部・射座に到着したときに、配管の繋ぎ込みをやらなければならいない。ずれると液体水素や液体酸素など、高圧ガス配管の接続に支障があるので、25ミリという厳しい精度にしている。

NVS・今、H3用の新しい移動発射台を種子島で組み立てているが、将来的にH-IIAロケットが引退し、H3ロケットがメインになったとき、移動発射台の追加はあるのか。
服部・信頼性の高い設計を入れているので、予備で新しいものを作る計画は無い。

宇宙作家クラブ・運用経験を活かし以前の運搬台車よりメンテナンス性が向上したとあるが、具体的にどんな改良点があるのか。
長田・物が壊れた場合に良品と交換しないといけないが、容易にアクセスして交換できるところに部品を配置したり、セルフチェックの機能をかなり充実したりすることで、どこのどういう部品が故障しているのかを運転席のパネルに表示し、即座に異常箇所を判別して良品に変えるといったような作業性の向上を図っています。

東京とびもの学会・セルフチェックは先代のMLには無いのか。
長田・セルフチェック機能は現行でも一部ある。今回新しく開発したものは、より具体的・詳細化を進めて、よりわかりやすくした。

東京とびもの学会・本日、誘導用のマグネットは片方だけだったが、どちらかの台車の下にマグネットがあれば協調して2台が運転できるのか。
長田・今日ご覧いただいた通り、マグネットは誘導路に1本が引かれている。連結して運ぶ場合は、片側の運搬台車が誘導体の情報を検知して動く。連結時は1つの情報で動かしている。LPからVABまでの返送で単車で走行する場合は、片側は誘導体に沿って誘導できるが、もう片側はマニュアルで返送します。

南日本新聞・今日公開した運搬台車は完成したのか、それとも5月の走行試験をパスして完成なのか。
長田・工場で組み立て、検査、走行試験は一通りやっていまして、運搬台車として持つべき性能についてはひととおり確認している。そういう意味では車体としては完成している。実際の走行路と本日のテストコースでは違うところがございますので、射場で最終的な検査をして初めて完成という形になると考えています。

南日本新聞・ほぼ完成形だと思うが、この段階での手応え、最終的な試験への意気込み。
長田・車体として持つべき機能・性能については、こちらの工場で検査結果が良好となっています。そういう意味では一定レベルまで仕上がっていると思います。ただいろんな不確定要素、たとえば今日ご覧いただいた通り模擬のMLという形になっておりますので、実際に運ぶMLとは一部違うところがございますし、路面の形態も違いますので、このあとも気を抜かず慎重に作業を進めて、間違いなくH3ロケットを運用できるように仕上げていきたいと考えています。

南日本新聞・H3に向けて車両系の開発で、ML運搬台車が果たす役割の重要性について。
服部・VABから射点のLPまで運ぶ、400mという短い間だが、この機器しか運ぶ手段がないので、極めて重要な機器だと考えています。信頼性が重要なファクターとして開発を進めてまいりました。

フリー大塚・射場運用でMLの下に入れて戻すなどの順番や作業の流れ。
長田・H3ロケットについてはこのあと詳細な運用計画が示されるので、おおよその流れだけを申し上げますと、まずML運搬台車を使って運ぶのは打ち上げの前日となりますので、その前日までに運搬台車についてはセルフチェック機能を活用して状態が健全かどうか、運ぶのに適した状態になっているか、機能確認を含め終わらせておきます。打ち上げの前日にMLの下にセットしまして、打ち上げの10何時間前というタイミングでMLを持ち上げることになります。射点まではだいたい30分を要しまして、停止してちゃんと運べたことを確認しMLを着座いたします。そのあと打ち上げの前に運搬台車はVABの方に返送して、それで打ち上げを行う。打ち上げが終わったMLをまた運搬台車が迎えに行って、MLをVABに返送する。といった流れで一連の作業となります。

共同通信・三菱重工さんと日本車輌さんの役割について。
長田・三菱重工はJAXAさんが示された開発仕様を元に、詳細の要求仕様、たとえばMLとのインターフェース上の各種設計を具体的にしまして、その情報を元に日本車輌さんが具体的な車両の設計図を引いて物作りをしていただいたという形になります。

共同通信・JAXAの仕様を元に三菱重工が設計し、日本車輌が作ったということか。
長田・詳細仕様を三菱重工が決めて、その結果をもとに具体的なものづくりを日本車輌さんに実施していただいた。

共同通信・今日のデモンストレーションの実績について、何メートルを何分だったのか。
長田・今回のテストコースは全体で150mくらいになります。
角田・今回VABからLPの方に走って、台車が元の場所に戻るという一連の流れで約36分かかっています。

中京テレビ・56個あるタイヤが、それぞれが自在に動くのか、それともユニットごとなのか。
角田・走行ユニットに2本のタイヤがついています。その単位で1つずつ動きます。曲線のときは内輪が遅く、外側がたくさん回る。固定された状態で回っている訳ではありません。
長田・タイヤ2個がついたものがユニットとなります。そのユニットがひとつの車両に28ユニットあります。その28ユニットが個別に動く形になります。

以上です。


No.2246 :小型実証衛星1号機(RAPIS-1)記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年12月20日(木)14時36分 投稿者 渡部韻

2018年12月18日、小型実証衛星1号機(RAPIS-1)の記者説明会が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます。)

◆登壇者

宇宙航空研究開発機構
研究開発部門
革新的衛星技術実証グループ長
香河 英史

株式会社アクセルスペース
代表取締役 CEO
中村 友哉

◆小型実証衛星1号機(RAPIS-1)の概要

RAPIS-1は革新的衛星技術実証プログラムの1号機で、同プログラムは宇宙基本計画上の「宇宙システムの基盤的部品等の安定供給に向けた環境整備」の一環として、民間企業や大学が開発した機器や部品、超小型衛星の軌道上実証の機会を提供するものです。

1号機では応募のあった32テーマの中から13件が選ばれ、これを高度500kmの太陽同期軌道に投入された7機の衛星で実証します。実証テーマには衛星推進系、展開物、電子部品単体といった、これまで実証機会の少なかったものが採用されています。今回紹介された小型実証衛星1号機(RAPIS-1)に搭載される実証テーマは以下の通りです。

■革新的FPGAの耐宇宙環境性能軌道上評価
(日本電気システムプラットフォーム研究所技術主幹 杉林 直彦)

通常のFPGAは回路情報をメモリに記憶されるが、革新的FPGAではこれを金属架橋によるスイッチに置き換えることで、放射線の影響を受けにくい高信頼化と小型低消費電力化を実現しました。

■X帯2-3Gbpsダウンリンク通信の軌道上実証
(慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任教授 平子 敬一)

20cm程の送信機と同じく20cm程度の送信用アンテナ(合計約7kg)で構成され、小型衛星に搭載可能なサイズながら地球周回軌道からX帯2-3Gbpsのダウンリングを実現します。

■グリーンプロペラント推進系(GPRCS)の軌道上実証
(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構 専務理事 久能木 慶治)

ヒドラジンよりも高性能だが燃焼温度の高いグリーンプロペラントを、推薬の流量や燃焼室の工夫で燃焼温度を下げることで、ヒドラジンと同程度の性能を確保しつつ耐熱性の低い安価な材料を用いることで低コスト化を実現しました。

またグリーンプロペラントは簡易作業服での充填が可能であり、更にヒドラジン(2℃)よりも凍結温度が低い(-68℃)ので軌道上で推薬が凍りづらく、ヒータ電力も低く抑えられます。

※GPRCSのスラスタは噴射方向が機体重心を貫く形で進行方向と逆側に取り付けられているので、実験を行う度にRAPIS-1の高度が上がることになります。またRAPIS-1は姿勢制御用のスラスタを備えていないので、このような実験による姿勢の変化は全てリアクションホイールで制御することになります。

※ちなみに開発コストを抑える為に、M-Vロケット2号機用の推薬タンク(!)や「あかつき」、ASTRO-Hなどの各種コンポーネントを流用しているそうです。

■粒子エネルギースペクトロメータ(SPM)の軌道上実証
(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構 専務理事 久能木 慶治)

広範囲な放射線粒子の計測が可能ながら、センサ構成の単純化で小型化・低下価化を実現することで、小型衛星を含めた様々な衛星への搭載を目指しています。RAPIS-1では同機搭載の宇宙環境計測装置(TEDA)で取得されたデータと比較することで、性能の実証を行います。

■深層学習を応用した革新的地球センサ・スタートラッカの開発
(東京工業大学理学院物理学系 助教 谷津 陽一)

従来の地球センサでは赤外線カメラで検知した地球のシルエットで衛星のロールとピッチ方向の姿勢を計測していましたが、革新的地球センサ(携帯電話用の小型カメラを使用)では撮影した地球の画像から陸・海・雲・植生などを軌道上でリアルタイムに識別し、これを地図データと照合することでロール・ピッチ・ヨー3軸の姿勢検知を可能にします。また、これにより地上の特定地域を高精度に追尾することも可能になります。

スタートラッカは抽出した点源から幾何パターンマッチングで恒星を同定して3軸姿勢制御に用いるもので、超小型衛星での使用を想定しています。

■軽量太陽電池パドル機構(TMSAP)
(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット 主任研究開発員 住田 泰史)

従来の太陽電池パドルは太陽電池の厚みだけでなく、それを貼り付けるアルミハニカムパネルの厚みから、フェアリング内に収まる太陽電池パドルのサイズも制限されていましたが、薄膜太陽電池をCFRPとカバーガラスで挟むことで、従来より薄く、また1/3の軽量化を実現しました。

そのままでは薄いパネルが打上げ時の振動で大きく変形し太陽電池の破損につながる恐れがあるので、障子の桟(さん)のようなフレームで保持しつつ、パネルを湾曲させることで機械的強度を保っています。ちなみに赤色はセルとパネルを接着する接着剤の色です。また今回の実験では発生した電力は抵抗で熱に変えられます。

パネル展開には最低4種類のディレイ機構が必要で、これを全て試すには最低5枚のパドルが必要なので、今回のパドルも5枚で構成されています。

■超小型・省電力GNSS受信機の軌道上実証
(中部大学工学部宇宙航空理工学科 准教授 海老沼 拓史)

本製品は既に製品化されていて搭載実績もありますが、これを軌道上で長期間動作させてデータを取得することが今回の目的です。切手大のGNSS受信機・Fireantは超小型衛星の自律化を支え、また地上から1機ずつ管制することが困難な、多数の超小型衛星による編隊飛行(swarm)の実現にもつながります。

◆衛星の設計・開発・運用を行うアクセルスペース社

これらのテーマをアクセルスペース社が衛星としてまとめあげ(2016年受注、2年半かけて開発)、打上げ後1年間ほどの運用も同社が担当します。これまでに企業依頼で3機の50-100kg級の人工衛星を作ってきた同社にとって200kg級は初めて。従来の小型衛星ではサイズの小ささからミッション系とバス系を一体で最適化させますが、今後もプラットフォームとして利用しやすいように両者を完全に分離させ、打上げ後の運用も考慮した設計としました。

一般的な衛星が冗長構成で信頼性を高めるのに対して、RAPIS-1では「絶対死なない衛星を作る」という方針の下、可能な限りシンプルな構成とすることで信頼性を確保しつつ、例えば放射線等で動作が不安定になった際には一旦シャットダウンしてリセットさせることで対処させます。過去の衛星で実証してきた自社開発および民生品の衛星コンポーネントを積極的に用いると共に、自律化・自動化により地上設備や運用を可能な限り省力化することでコストを抑えているのも特徴です。

◆「JAXAコーディネート」について

またJAXAは効果的な実証を実現する為に、実証環境や必要なリソース、計測・確認手段などを提案しています。例えば「革新的FPGA」の部品評価のためにJAXA開発の宇宙環境モニタ装置(TEDA)で取得した放射線環境データ等を提供すると同時に、この革新的FPGAをJAXA開発カメラの処理部に用いることで効果的に動作させ、更にこのカメラを「軽量太陽電池パドル機構」の展開確認に用いることで活用しています。


<質疑応答>

◆東京とびもの学会:先日スカパーJSAT・KSATとスバルバード局の運用で提携したが、RAPIS-1も同局での運用か。また初期運用ではJAXAの運用支援があるのか。

スバルバードを使うのはGRUSのみで、RAPIS-1で用いるのは全く別のシステム。(中村)

このシステムは「ほどよし1号」の実績を元に発注しているので、基本的には地上系含めて「ほどよし1号」のものを使って運用していく。(香河)

◆日刊工業新聞:衛星の開発だけでなく運用も含めて受託したことで、具体的にどのあたりが最適化されたのか

衛星本体を開発するチームと運用に向けたシステムを開発するするチームの間で日々のインタラクションが発生することで、例えば(コマンド体系において)ハードウェア側は「このようにしたらどうか」と提案した時、運用のしやすさや効率から考えてこのようにしたらどうか…といったディスカッションが生まれる。これによりシステムは洗練されてユーザーフレンドリーになり、効率的な管理が可能になる。(中村)

◆NHK:バス部とミッション部の具体的な分け方

テーマを実証するのがミッション。その為の部品を制御する基本的な通信・電源などのシステムがバス部。これまではミッション部も含めて全て我々がハンドルしてきたので多少ごちゃごちゃしていても中で解決出来た。今回はたくさんのユーザがいるので、これをごちゃごちゃにするととんでもないインターフェース調整が必要になる。バス部とミッション部がしっかり分かれていたことで作業量はある程度抑えられた。(中村)

◆荒船:ばらばらなコンポーネントの難しさ

今後に向けての反省も含めて、バス部とミッション部をつなぐインターフェースの調整が一番大変だった。。各テーマ側が相手にするのはアクセルスペース1社だが、アクセルスペース側では7つのミッション一つ一つを相手にしなくてはいけない。そこは今後の改善点としていけるとは思うが、これまでと違って大変だった。(中村)

ユーザーとのやりとりはJAXAがやりとりしてから渡すが、皆さん大勢いて要求もそれぞれ違った。こちらの要求を立てるとあちらが立たない…ということも多々あり、それらの調整中に別の話が止まってしまう点も非常に大変だった。(香河)

◆荒船:衛星を外部にお願いする一番の狙いは

この衛星の構想自体は宇宙基本計画に書いてある通りJAXAとして宇宙実証の機会を提供する、環境を作るのが国の要求。衛星を作ることが目的では無く「宇宙をつかう 未来をつくる」(革新的衛星技術実証プログラムのモットー)この枠組みを作ることがJAXAの責務。衛星自体は作れる会社にお願いした。(香河)

◆荒船:東工大の地球センサ・スタートラッカの実験には姿勢制御が伴うのでは

東工大側から「こちらの方向を見て欲しい」という観測要求をもらい、これをアクセルスペース側に伝えることで姿勢制御を行い、実験装置をオンにする。(香河)

◆荒船:普段の姿勢制御とは別にシステムがあるのか

それぞれの実験に適した姿勢がある。たとえばTMSAP(軽量太陽電池パドル機構)はきれいに見えないとよくわからないので太陽の向きの指定がある。この時は地球センサ・スタートラッカの実験には向いていいないのでお休みしてもらう、といった調整はある。(香河)

◆荒船:革新的衛星技術実証衛星は4号機まであるが、全てアクセルスペースが担当するのか

現時点でまだそこまで決まっていないが、プラットフォームを考えたような提案をしてください、という前提で業者選定を行った。(香河)

◆時事通信:革新的FPGAのように二つ以上の実験の組み合わせたは他に何があるのか。それらの調整はどこでどのように行ったのか

効果的な組み合わせを探る「JAXAコーディネート」は初期の段階で検討した。今回の場合は割とバラバラなので(FPGA以外は)放射線を測る(SPMの)2パターンぐらい。(香河)

◆時事通信:実証の為の(衛星の運用上の)要求を取りまとめたり判断する場所は

そこがアクセルスペース一番の売りである自動運用システムであり、Webシステムに各ユーザがいつ頃どんな実験をしたいか入力すると、自動的に衛星を運用するコマンドが生成され送られる。(香河)

◆時事通信:複数の実証実験の間でバッティングした際に人の手で調整する場はあるのか
色々考えたが、その辺りの基本的な部分は月に1回集まって調整する。(香河)

◆時事通信:その上で、この時間に…といった割当が決まり、それをWebブラウザで入力するのか。

その通り。(香河)

◆NVS:衛星には通信やスタートラッカなど基本的なものは備えていて、ミッション機器とは完全に別になっているのか。

ミッション機器が無いと動かない、というシステムにはなっていない。(中村)

◆NVS:グリーンプロペラントの実験は外乱となり他の実験に影響が出るのでは

当然吹けば姿勢が変わるので一番(アクセルスペースには)迷惑をかける実証だと思うので、スケジュールは十分に調整して行いたい。(久野木)

◆NVS:つまり〜月〜日に外乱が生じます、という形になるのか

そういう情報は当然共有される。(久野木)

◆NVS:衛星としては外乱が発生するのか、それとも意図した方向に吹く形になるのか

月の前半はGPRCSの実験を行い、月の後半は他の実験を行う、といった棲み分けをしている。基本的にTMSAPを前にして飛んでいて、GPRCSは後ろなので増速方向に吹くことになり、常に少しずつ軌道が上がることになる。そうした軌道情報が欲しい、たとえばFireantでは常に軌道情報をとっていて恐らくΔVの変化を一番見たいところなので、そういった情報はJAXAの方からお知らせすることになる。(香河)

◆大塚:GPRCSは値段も高くならず性能も現状と同等ということでデメリットが無さそうだが、何か課題があるのか

推薬自体には潜在力があるので、その力を溜めた状態で使うのは勿体ない。パワーを活用出来れば同じ分量で長く保つ等、別のメリットが生まれる。今のところは衛星側の事情として作業がラクになるというメリットが確保出来るが、次は衛星本体に影響を及ぼすことが出来れば更に良い。(久野木)

◆大塚:つまり今の時点で問題点はない?

今のままで良ければ。(久野木)

◆大塚:宇宙ステーションの中から放出する衛星に使うのは難しい?

液体なので充填方法を考えなくてはならない。放出もメカで行っているので、ここでの使用は考えていない。(久野木)

◆大塚:燃料はどのくらいで、軌道をどの程度変えるのか。

搭載量は3kg弱で、全て使い切る。燃焼時間は目標3000秒。これだけ吹けば通常の推進系として問題ないレベル。(岡)

◆産経:SHP163の素性・化学的な特徴

実証するのは初めてだがJAXAを中心に研究・開発してきた。細かい説明は別途行いたい。(久野木)

◆読売:地球センサ・スタートラッカの技術確立によるメリットは

陸地のパターンから三軸制御に利用出来る。今回は視野の広いカメラで地上を撮影しているので陸のパターン程度しか見えないが、もう少し分解能の高いカメラを用いれば船や土砂崩れの跡などをリアルタイムに識別出来るようになるので、これを細い回線でリアルタイムに配信したり、他の衛星でも同じ場所を追尾して観測するような運用が可能になる。(谷津)

◆荒船:TMSAPの太陽電池の配置の意味

衛星設計時には軌道上での使用年数に応じた劣化後の発生電力で衛星を設計するが、この放射線やUVなどによる劣化を各パラメータ毎に取得したいので各パネルにその役割を与えている。また各パネルに電流をモニタするセルが載っていて、これが(何らかのトラブルが発生した際の)光量モニタになるので、パネル毎の電流がわかれば軌道上での様子もわかる。

万一打上げ時に太陽電池が割れてしまった場合、開放電圧の方に影響が出る。パネルを桟で保持している構造上、パネルの真ん中や端がちょっと弱いので、それらを加味して電圧の取れるセルを配置することで、出来る限りセルのデータを取れるようにしている。(住田)

◆荒船:セルを全部貼らなかったのは、お金の問題なのか、それとも電力が不要だったからなのか。

両方。(住田)

◆荒船:パドルもこの大きさにした理由は?

元々、TMSAPのパネルの四隅の保持点を1ユニットとしてこの4倍の大きさ(2m×2m)のパネルを開発していたが、最低限1m各のユニットを実証していけば相似でいけるので、このサイズに決めた。(住田)

◆荒船:GPRCSで変えたのは推薬だけで、吹く機構は今までのものが使えるのか

材料的には使えるが、推薬が違うので構造は全てアレンジしている。(住田)

◆宇宙作家クラブ:TMSAPで発生した電力はどう処理しているのか

パネル裏面に発生した電圧・電流・電力をモニタする機械があり、ここでは抵抗に流してこれをモニタしている。この過程で熱に変換される。(住田)

◆日経:TMSAPに最低限必要なパネルの枚数は

パネル展開を制御する「からくり」(NECが担当)の組み合わせに最低限必要なディレイ機構が4種類、これを実証するのに必要なパネルは5枚。それ以上はこの応用で増やせる。(住田)

◆日経:RAPIS-1をこのパネルで動かすとしたら何枚必要か

TMSAPにセルを全て載せたら800W程度。(住田)

RAPIS-1に必要なのは100W。(香河)

◆テレビ朝日:薄膜太陽電池の変換効率32%とあるが、RAPIS-1本体の太陽電池との変換効率の違いはあるのか

一般的に使われている太陽電池の変換効率は30%程度。(住田)

◆片岡:FireflyおよびFireantの搭載実績は

既に販売されていて、JAXAの観測ロケットでも3回ほどフライトに使われている。衛星ではJAXAのEGG(柔軟エアロシェル)、東京大学のTricom、静岡大学のキューブサットでも使われている。

ミッションで使われているものはユーザーが独自に使っていて常にオンしているわけではない、取得されたデータも必ず我々の手元に届くわけではないので、どう動いているのか知る機会は無かった。今回はほぼ24時間フルで動かしている。放射線の影響でストップした場合や、どの程度測位出来ているかを長期間知ることが出来るのが今回の特徴。(海老沼)

◆片岡:どの測位システムに対応しているのか

GPS、GLONASS、QZSSに対応している。QZSS対応の宇宙機用受信機は今回が初めてでは。(海老沼)


なお、RAPIS-1は2019年1月17日に内之浦宇宙空間観測所からイプシロン4号機で打ち上げられる予定です。


No.2245 :小型回収カプセルのスラスタ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年12月12日(水)01時27分 投稿者 柴田孔明

スラスタ取り付け部分の様子。この写真ではわかりにくいが、先の写真で側面の輪のような部分にある穴が噴射口。


No.2244 :フローテーションバッグ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年12月12日(水)01時24分 投稿者 柴田孔明

カプセルを沈めないように海上で展開したフローテーションバッグ。炭酸ガスで膨らむ。
公開のため、膨らんだ状態を再現したもの。回収時にいったん萎んでいる。
また、パラシュート上部にもアペックスバックという空気による浮袋がある。