宇宙作家クラブ
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No.2293 :第1回判断はGo
投稿日 2019年9月10日(火)11時57分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機の第1回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。機体移動作業開始可と判断されました。

No.2292 :H-IIBロケット8号機打ち上げ前プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月10日(火)01時23分 投稿者 柴田孔明

 2019年9月9日14時より、種子島宇宙センターの竹崎展望台にてH-IIBロケット8号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・H-IIBロケット8号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機の打ち上げ時刻について
(※ブレスリリース・鈴木)
 三菱重工業株式会社は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)を搭載した H-IIBロケット8号機(H-IIB・F8)の打ち上げについて、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。
 打ち上げ日: 2019年9月11日(水)
 打ち上げ時刻: 6時33分29秒(日本標準時)
 打ち上げ予備期間: 2019年9月12日(木)〜2019年10月31日(木)(※)
 (※)予備期間中の打ち上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。

・H-IIBロケット8号機の打ち上げ準備状況(鈴木)

 ・H-IIBロケット8号機は飛島工場を6月29日に出荷後、射場作業を開始。
 ・以下の射場整備作業を良好に実施。
  機能点検(〜8月9日)
   機体の各機器が正常に作動することを確認。
  カウントダウン・リハーサル(8月20日)
   関係要員に対し打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
  「こうのとり」8号機とロケット機体の結合作業(8月24日)
  ロケット機体の最終的な機能点検(8月27日)
 ・発射整備作業を実施中(9月6日〜)

 ・整備組立棟VAB2を使用。
 ・打ち上げは第2射点(LP2)を使用する。
 ・9月8日にレイトアクセスでHTV8に荷物を搬入。
 ・機体移動予定時刻:2019年9月10日14時30分頃(日本標準時)
 
 ・打ち上げ制約条件から一部を抜粋。(※他にもあります)
  ・風:機体移動時は最大瞬間風速22.4m/s以下であること。
  ・風:発射時は最大瞬間風速20.2m/s以下であること。
  ・雲:積乱雲の中を飛行経路が通過しないこと。
  ・雷:発射前および飛行中において、機体が空中放電(雷)を受けないこと。
   1.射点を中心として半径10 km以内に雷雲の無いこと。
   2.飛行経路から20 km以内に発雷が検知された場合は、しばらく発射を行わない。
   3.飛行経路が雷雲や積乱雲(※)の付近を通過する場合には発射を行わないこと。
   (※氷結層を含み、鉛直の厚さが1.8 km以上の雲を含む)

・気象状況について

 2019年9月11日朝6時頃は概ね晴天で、にわか雨程度と予想されている。現在のところ打ち上げに支障となる気象予想はありません。

・宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)ミッション概要(辻本)

 ・世界最大の補給能力。9号機まで予定されている。

 全長: 10.0 m
 最大直径: 4.4 m
 打ち上げ時質量: 約15.6トン
 搭載補給物資質量: 約5.3トン(船内+船外物資)
 輸送目標軌道(ISS軌道):高度350 km〜460 km、軌道傾斜角51.6度
 ISSによる把持: 2019年9月14日(予定)

 ・「こうのとり」8号機の特徴
  ・新型補給機(HTV-X)の開発に向けた技術実証
   姿勢制御センサの変更(地球センサ → スタートラッカ:Jena Optronik社)
   新型ラックによる物資輸送能力の増強。
  ・将来ミッションにつながる技術の実証
   細胞培養装置追加実験エリア(CBEF-L)
   惑星表面の柔軟地盤の重力依存性調査(Hourglass)
   小型衛星光通信システム(SOLISS)
  ・低軌道利用の拡大に貢献する超小型衛星の輸送。
   NARSSCube-1(九州工業大学/NARSS(エジプト国立リモートセンシング宇宙科学機関))
   AQT-D(SpaceBD株式会社/東京大学)
   RWASAT-1(東京大学/Ministry of Commerce,Industry,& Tourism Rwanda Utilities Regulatory Authority Smart Africa secretariat(ルワンダ共和国))
  ・ISS運用の根幹を支える物資の輸送。
   船外物資:ISSバッテリ(6,7号機と同様に6台輸送)
   船内物資:窒素/酸素タンク(NORSタンク)、生鮮食品
   緊急搭載品:遠隔電力制御モジュール(RPCM)

・質疑応答
時事通信・遠隔電力制御モジュールを緊急搭載したが、どのような部品で、急ぎ積むことになった経緯は何か。
辻本・非常に簡単に言うとサーキットブレーカーの役目をするもの。バッテリから宇宙ステーションの各機器で使っているいろいろな装置にブレーカー的に入れていて、過電流が流れるなど非常時が起きたときに、下流の機器を健全に保つため電力をシャットダウンする。(ISSで使われている)具体的な数はわからないが、宇宙ステーションのいろいろな機器にそれぞれついているので、数としては相当数ございます。時々故障といったことがございまして、軌道上に交換品が置いてあるが、8月にも宇宙ステーションの機器で故障のような状態があったので確認したところ、このRPCMの故障だったということで交換したという事がございまして、ちょうと「こうのとり」を打ち上げる直前だったので予備をひとつ送りたいという情報があった。情報があったのは8月30日頃で、レイトアクセスの最後の最後に間に合ったので今回搭載することになった。

時事通信・確認だが故障は直ったが予備をもう1個ということか。
辻本・そうです。電力がシャットダウンされた時点で原因究明が行われ、下流の機器ではなくてRPCMそのものの故障だったということで、軌道上で交換を行った。

南日本新聞・誤差の範囲かもしれないが、(7月の機体公開時の時より)搭載物資が0.1トン少なくなった理由は何か。
辻本・5.4トンというのは機体公開時の値です。7月の機体公開当時には通常搭載は終わっていたが、レイトアクセスの物資はNASAと調整している最中でした。そのあと持っていく物資に多少の変更があったり、NASAからもらっていた計画地と実測値の差があったり、そういったことでは100キロも減ってはいないのだが、トータルとして少し減った。

鹿児島テレビ・あさっての打ち上げに向けた意気込み、気持ちなど。
鈴木・ここまで作業は順調に進んできている。今回に限ったことではないが、ロケットの打ち上げに関しましては、関係する各機関の皆様、南種子町をはじめとする各地域の皆様、それからJAXAさん、それから各社の皆様ほか、本当に多くの方に支援ご協力をいただいておりまして、おかげさまで今回ここまで順調に作業を進めることができたと考えており、深く感謝申し上げます。それもございまして、残り2日ということで、あらためて打ち上げを必ず成功させたいという気持ちを新たにしているところでございます。大切なことは平常心で、決められた作業を確実にひとつひとつ丁寧にこなして、冷静に判断していくということであると考えています。それを着実に実施することで必ず打ち上げを成功させたいと、このように考えております。

鹿児島テレビ・気象条件の説明があったが、今のところ機体移動と打ち上げを含めて心配はされていないということか。
鈴木・その通りです。心配ありません。

NHK・気象について先週までの時点では台風の進路が心配されたと思うが、それについていろいろ議論されたのか。宇宙活動法施行後、三菱重工として初めての打ち上げだが意気込みはどうか。
鈴木・この時期は台風の発生が非常に多くて、台風が発生する直後や直前の状態では、いろんな予報が日替わりになる状態で、今回の9月11日に向けての判断の過程においても、予報の推移というものに十分に注意を払って行ってきております。結果として、幸いなことに台風がいないときに打ち上げを実施できるので、これは大変ありがたいことだと思っております。活動法施行後初めての民間としての打ち上げに関して、活動法に関しましては手続きの面で大きく変わった。それに関してもこれまでJAXAさん内閣府さんから多大なるご協力をいただいて調整を重ねさせていただきました。現場といたしましては、ロケットの組立ですとか点検ですとか設備の運用に関しては、やることは同じでございます。三菱重工としてこれまでも実施してきたことを今回も同じように実施している。今回も淡々と冷静にやるべきことをやって、しっかり打ち上げに臨むことに尽きると考えています。
NHK・初号機と同じ打ち上げ日となったがお気持ちはどうか。
辻本・(初号機から)ちょうど10年。10年一昔という言い方が正しいかどうかわからないが、「こうのとり」にしましても、「きぼう」にしましても、10年前と比べまして、それぞれにおいていろんな成果が出て進化してきたと思っています。この先10年はといいますと、新型宇宙ステーション補給機の開発を進めていますし、Next ISSということで探査などそういった話も出て来ております。そういった意味で「こうのとり」8号機というのは、これまでの10年と、この先の10年の両方を見据えた機体と思っています。私どもも3月から作業を始めまして、ここまでかなり順調に来ました。残り1日しっかり作業して無事軌道に打ち上げまして、次は筑波の運用管制隊にスムーズにバトンタッチできるようにしたいと思っています。

NVS・打ち上げ日が延期した場合、時刻はどのようにずれていくか。
鈴木・1日の延期でおおよそ20分程度早くなると考えていただければと思います。

以上です。


No.2291 :H-IIBロケット8号機打ち上げ予定日時
投稿日 2019年9月9日(月)14時45分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機/宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機打ち上げ予定日時について発表がありました。
打ち上げ日:2019年9月11日(水)
打ち上げ時刻:6時33分29秒(日本標準時)
打ち上げ予備期間:2019年9月12日(木)〜2019年10月31日(木)
※予備期間中の打ち上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。

No.2290 :ロケットの断熱材 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月21日(水)02時16分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケットやH-IIBロケットに使われている断熱材。白いものは製造直後のもので、お馴染みのオレンジ色のものが外で太陽光線を浴びたもので、同一の素材です。このように製造されてからの時間でどんどん色が変わっていきます。


No.2289 :H-IIBロケット8号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月21日(水)02時11分 投稿者 柴田孔明

第1段の前でのインタビューの様子。


No.2288 :H-IIBロケット8号機の2段目 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月21日(水)02時04分 投稿者 柴田孔明

第2段の下部、LE−5B−2の部分。


No.2287 :H-IIBロケット8号機のコア機体 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月21日(水)02時02分 投稿者 柴田孔明

手前が第1段、奥が第2段と段間部。
(撮影の許可範囲と機体の長さの関係で斜めに撮影しています)


No.2286 :H-IIBロケット8号機コア機体の報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月21日(水)01時58分 投稿者 柴田孔明

 2019年6月26日、愛知県の三菱重工業株式会社飛島工場にてH-IIBロケット8号機のコア機体が報道公開されました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H-IIA/H-IIBロケット打上執行責任者 田村 篤俊
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H-IIA/H-IIBロケットプロジェクトマネージャ 徳永 建

・H-IIBロケット8号機の概要について(田村)
 ・目的
  H-IIBロケットにより宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機を所定の軌道に投入します。
  ミッションを終了した後に、ロケットの第2段については南太平洋上へ制御落下を行います。
 ・打ち上げ時期/予備期間
  現在調整中。
  (※後日、2019年9月11日午前6時33分頃の打ち上げ予定と発表された。予備期間は翌日から同年10月31日まで)
 ・基本コンフィギュレーション(※前号機と同じ)
  HTV用フェアリング(5S−H型)
  第2段エンジン(LE−5B−2):1基
  第1段エンジン(LE−7A):2基
  固体ロケットブースタ:4基
 ・特記事項
  MHIの打上げ輸送サービスでの5機目のH-IIB打上げ。
  HTV7号機(2018.09.23打上げ)以降、約1年ぶりのH-IIB打上げ。
  宇宙活動法施行後では初めてのH-IIA/B打上げ。
 ・ペイロードは宇宙航空研究開発機構さんの「こうのとり」8号機。
 ・飛行経路は種子島から南東の方に打ち上げ。飛行経路とシーケンスは2号機から同様。
 ・第2段は衛星分離後に南太平洋上に制御落下させる。2号機より継続運用中。
 ・コア機体は工場での機能試験を終了し、出荷準備中。
  6月29日に飛島工場より出荷し、7月1日に宇宙センターに搬入予定。
 ・固体ロケットブースターは、工場での作業を完了して射場へ搬入済。
 コア機体起立後にコア機体に結合予定。
 ・衛星フェアリングは射場へ向け現在輸送中。

・質疑応答
NVS・今号機で、前号機から変更した点はあるか。
田村・細かいところはあるが、紹介するような特記事項はございません。

NVS・H-IIBロケットは9号機までということで終わりが見えてきている。始めることと同様に終わらせることにも難しい点や苦労した点はあるか。
田村・正直、そんなに苦労しているところは無い。今まで積み上げたものをきちっと確実に地道に続けていくということで、最後まで成功を続ける。今までと同じ苦労ということになるのかなと思います。

NVS・工場内で9号機の作業にバックアップ無しとあった。
田村・必用なものはバックアップを用意している。もちろん最終号機でございますので、大物の構造体などはバックアップがありませんので、気をつけて確実に作業することになると思います。

NVS・既に生産ラインが閉じたものはあるか。
田村・ございません。

共同通信・H-IIBは成功を続けて9号機で最終号機となるが、これの工場はH3製造に使うのか。
田村・H-IIBは9号機で終了だが、H-IIAは続くので、その製造に使う。またH3にも使う事になる。

NVS・いつも打ち上げ2ヶ月前くらいに出荷しているが、今回もそのルーチンか。
田村・基本的にはルーチンの出荷と考えて良いと思います。

フリー鳥嶋・かつてH-IIB開発時のプロマネだと伺っていますが、思い入れや開発時の思い出など。今回、打上執行責任者として関わられることへの思い。
田村・私はH-IIBロケットのアシスタントプロジェクトマネージャを1年、プロジェクトマネージャを1年の計2年やっていました。その時はH-IIBのCFTの燃焼試験から2号機まででした。プロマネのときは2号機の打ち上げでした。2号機のいちばん大きなイベントは、2段の制御落下を初めてやったときでございまして、それを行うためにJAXAさんと協議したり調整をしたりと、そこがいちばん思い出深い。1時間40分くらい待って、機体が正常であることを確認した上で点けるということで、うまくいって良かったなと、プロマネのときの一番の思い出かなと思います。奇しくも私の責任者としての最初の号機がH-IIBになりますけども、特にH-IIAとH-IIBの区別はありません。連続成功を引き継いで成功していくのは、H-IIAとH-IIBで変わらず成し遂げてまいりたいと思います。

インプレス・落下して回収までされるのか。
田村・2段の燃え残りは海に沈みます。フェアリングは手前に落下します。

フリー鳥嶋・宇宙活動法施行後の初の打ち上げだが、何か変わった点はあったか。
田村・活動法になりましたけれども、これから我々が行う打ち上げに向けての作業ですとか、組み立て作業、打ち上げに向けての準備作業、打ち上げ作業、データの評価作業といった事につきましては基本的に変わりません。いちばん大きく変わるのは打上許可申請をいただくことになる形になる事でして、今まではJAXAさんが打ち上げ実施者ということで文科省の方に許可をいただいていましたけども、これからの活動法のもとではMHIが実施者ということで内閣府に申請する。申請の手続き等が変わってまいりますけども、我々の実行の作業としては殆ど変わりません。

以上です。


No.2285 :公開の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月20日(火)17時41分 投稿者 柴田孔明

第2射点に向かう新型移動発射台と運搬台車。
移動発射台はアンビリカルや配管が無い状態。また中央の赤黒いものはロケットを模したおもり。


No.2284 :H3ロケット用の新型移動発射台及び運搬台車の概要説明と報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年8月20日(火)17時38分 投稿者 柴田孔明

 2019年6月24日、種子島宇宙センターにてH3ロケット用の新型移動発射台及び運搬台車の概要説明と報道公開が行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場開発技術ユニット ユニット長 長田 弘幸
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場開発技術ユニット 更江 渉

・挨拶(長田)
 ご存じのようにH3ロケットは来年度打ち上げに向けて準備を進めているところであります。その中で私どもが担当しています地上設備、これにつきましては5年ほど前から開発を始めまして、これまで大きな問題も無く順調に進んで来ました。中でもH3用として新規に開発しました移動発射台と運搬台車、これにつきまして最終段階と言えます走行試験を行う段取りが整いましたので、今日は皆さんにお集まりいただいて、より理解を深めていただこうということで、今日この場を持たせていただきました。近くで物を見ていただいて、より理解を深めていただきたいと思います。

・概要説明(更江)
 H2、H2A、H2Bと使って来た射点は信頼性が高く、ずっと実績がございますので、それをなるべく活用した状態で、最低限H3用に改修する形で対応していきたいと思います。
 この中で新しく作るものは、移動発射台、それから移動発射台を動かすドーリーと呼ばれる運搬台車、この辺りが新製となっております。これはロケットと密接に関わりますので、その部分は新しく作るということになります。また発射管制棟が吉信エリアにありますが、(射点に)近いので打ち上げのときは地下から作業員がなかなか出られない。ですので今回そこから3キロ以上の警戒区域から離れた竹崎エリアという所に移しまして、新しく発射管制棟というものを作っております。ポイントといたしましては、今までは閉じ込められた環境のため、何かが起きたときの人員もその中に居なければならない。いろんな事を考えていろんな担当の方が中に居なければならない。それに対して、今回は打ち上げ直前でも人の出入りが出来るので最小限の人数に絞れるということで、コンパクトな態勢を目指しております。結果として従来の1/3から1/4に減らすということになります。あと隣にRCCという全体を統括する建物があり、そことの連携がやりやすくなります。残りの、機体を組み立てるVAB(整備組立棟)、こちらは今までのものをそのまま使っていきます。射点につきましては、LP1とLP2の2つがありますが、今H2Bの打ち上げで使っているLP2を改修して使っていきたいと思います。しばらくH3ロケットとH2Aロケットが共存する期間がございますので、その間H2AはLP1を使って、H3はLP2を使うということで、うまく使い分けていきたいと思います。残りの設備、冷却水ですとかガスや推進薬などの供給系などについては基本的に流用します。一部は能力を増強致しますが、基本的には流用したいと考えております。
 ロケットはMLの上で組み立てられ点検した後に、打ち上げる場所のLP2に機体を運んでくるという役割をMLは持っています。ルートにはマグネットが地面に埋め込んでありまして、そのマグネットを読んで自分の位置を見ながら自動搬送する形になります。LP2に行きましたら推進薬を充填して打ち上げるような流れとなっています。
 外形寸法などは従来のものと殆ど同じで、台座の部分は幅が22メートル、奥行きが25.5メートル(ここは旧型と僅かに違う)、台座の高さは下の部分から地面まで4メートル、上の部分まで約7メートル、厚さが3メートルという形で、寸法としては殆ど変わりません。
 では何が変わっているかと申しますと、外見で見えるところでは、マストの形状が今までは平べったい形をしておりましたが、これが円柱形状に変えております。また2つのマストの間をオーバーブリッジと呼んでいる構造体で繋いでおりましたが、こちらを無くしました。理由としましては、地上風揺動対策と申しまして、風が吹いてくると、マストや機体の部分で流れが剥離いたします。剥離しますと、規則的なカルマン渦が出来て機体がちょっと揺れるという状況が発生し得ます。それに対して今回いろいろ風洞試験や数値シミュレーションなどを行った結果、オーバーブリッジを無くして円柱形状にするのが非常に効果的だと確認しましたので、このように変更しております。
 もう一つは、今まではMLの上に台座があって、その上にロケットを乗せていましたが、新しいものにつきましては、MLの穴を大きくしてロケットの機体を埋没させるような形にいたします。どうやって(ロケットを)保持しているかと申しますと、穴の側面から4つほど発射固定台と呼ばれているものを出しておりまして、横側から支えているのが違います。この辺りが大きな違いです。
 何故そういう風にしているかと申しますと、ひとつは打ち上げ時にロケットエンジンから出てくる音波が衛星ですとかロケットの搭載機器に悪さをいたしますので、音響環境を低減するのが一つ目の理由です。二つ目としましては、打ち上がるときの固体モーターの噴炎によって発射台が熱の損傷を受けます。こちらを避けるために開口部を大きくしています。三つ目は、VABは既存のものを使いますが、H3ロケットが従来のH2Bよりも約7メートル身長が伸びています。これを従来のVABに収めるということで、天井が決まっていますので、下の支える位置を7メートル下に落としています。もう一つは、ロケットのバリエーションといたしまして固体モーターの無くて液体エンジンだけの30形態があります。今までは固体モーターがありましたので、液体エンジンが燃えて100%の推力になるまで固体モーターがおもりになって飛び上がることはありませんでした。今回、おもりとなる固体モーターが無いので、何もしないとロケットが飛んでしまう。海外には100%推力になる前に飛び上がるロケットもありますが、私達はやっぱりエンジンが100%まで作動して大丈夫だと確認した上で打ち上げたいと思っていますので、機体を飛ばないように押さえておくような機構を設けております。そちらをホールドダウンシステムと呼んでおります。横から出ている台座にロケットを乗せ、乗った上から押さえつけるような構造があります。そういったものが変更点となります。
 開口部を大きくした理由ですが、これまでは発射台の下に小さな穴が開いていました。SRB−Aのノズルの直径から1.7倍くらいの大きさの穴がそれぞれ開いています。そうしますとロケットが飛んで行くときの噴流が穴から溢れます。これが端に噴流が当たって干渉音が発生します。また噴流の速い流れと周辺の遅い流れの間に速度差が出て、この部分から音波(マッハ波)が出て発射台に反射したものが機体に戻ってきます。この二つの理由から音響環境的に大きくなってしまいます。
 これを今回全体の穴を大きくすることによりまして、隙間を倍近く大きくすることができました。これによりまして噴流がスムーズに流れていくことで干渉音が無くなりますし、反射する部分が無いのでマッハ波が反射し辛くなることで音響低減に繋げていけます。また音響関係で従来と違っているのは、今までは上側(ML)で水を流していました(上面注水)。今回は開口部を広げることで音響低減ができるので削除します。また従来はそれぞれの穴の中に水を流すデフレクタ注水がございましたが、今回は機体が中に入るためそれが出来ないため、下の地上設備側に移動しています。これにより地上設備とMLとの水配管、結構大きくて1メートルくらいですが、これを接続する作業が不要になります。これにより打ち上げ前の点検作業を簡素化できるメリットもございます。
 もう一つの熱損傷ですが、噴流が当たってまいりますので、穴の周りにかなりの耐熱材がありますが、これがかなりやられてしまいます。そのため毎回打ち上げ後は耐熱材を高圧水で削って取り外してまた着け直す作業をしています。それに対して(新型は)噴流がスムーズに下に流れるようになりまして、特に損傷の激しかった部分に空間が出来ていますので、今回は熱損傷が起きづらい構造になっています。そのため打ち上げ後の補修作業をぐっと短くできるものと考えています。
 また配管ですとかロケットを支えるための足場がH2B用のMLにはあります。こういうものがありますと、いざ熱損傷を受けた場合に補修しようとすると、高所作業となるため、足場を作るなど補修作業も大変になります。それに対して今回は基本的にフラットにしております。ですので基本的には熱損傷は無いと思っています。万が一あったとしても、補修を非常に楽にできるのがもうひとつのメリットと考えています。
 現在は打ち上げ後から次の打ち上げまでH2Bなどでは1.5〜2ヶ月くらいかかっていますが、その半分くらいが打ち上げ後の耐熱材などの補修に使っています。ここをぐっと短くして半分以下にして、1ヶ月以内に2機打ち上げられるようにしたいという要求もございますので、それに非常に貢献できていると考えています。

 続いて移動発射台を運ぶためのドーリーですが、2台からなっています。VABからLPまで機体を乗せた状態で運ぶ機能を持っています。約30分かけて運びます。H2AはLP1と呼ばれるところで打ち上げまして、H3/H2BはLP2という所で打ち上げます。
 新しいドーリーにつきましては、H3は当然ですが、H2A/Bも運べる設計にしております。いずれH3とH2Aが共用になったときには両方とも運べるようにしていきたいと考えています。
 新旧は外見としては色が違いますが、ポイントとしては3つございます。ひとつは信頼性の向上ということです。こちらは中の部品を冗長構成にしたり、もしくはアクセスしやすい所に部品を配置して何か起きたらすぐ部品を交換できるようにしたりといったことで、基本的には何かが起きても30分以内に復旧して、継続してVABから機体とMLを運べるようにするという事を考えています。例えばですが、新しい方は発電機を4機積んでいます。従来のドーリーは大きな物を2つ使っています。そのうちの1つが何らかの理由で止まってしまった場合は、外付けのトラックに発電機を乗せて外部から供給しないといけない。新型は小型のもの4台に分散しましたので、万が一4つのうちの1つが壊れてしまっても、残り3台で運び続けることができるような設計にしております。その他にも頭となるCPUの部分も冗長構成にしています。
 二つ目は、今回設備全体にかけられている課題なのですが、老朽化していく設備に対して維持費を下げましょうという要求がございます。それに関しまして今回のドーリーは大体半分以下の運用費(メンテナンス費)にする見通しを得ています。具体的にどうするかと申しますと、今のドーリーは打ち上げがあろうと無かろうと、毎年1回動作させて点検をしなければならないようになっています。それに対して新型は、作動履歴や機器の作動状況のデータを見て監視し蓄積して評価するシステムがあります。そういった事をやることによって、例えば年6機の打ち上げがあれば1年に1回、補正のために動かすことをやめるといったことが出来るようになります。万が一、1機や2機の場合はやらなければいけないと思いますが、それでも蓄積したデータをうまく使って効率的に進めていくことが出来る。
 また今回、日本車輌さんが三菱重工さんの下で作ってくださっています。彼等はいろんなプラントで、こういった自動運搬台車の実績が非常にあります。そちらで汎用品をよく使う技術を持っていまして、今回そういう汎用品を多用しています。現在のドーリーは基板にしても特注レベルで作ってしまっていますが、それらを汎用品にすることで入手性ですとかコスト、あとたくさんの予備品を抱えなくて済みますので、そういった点でも維持費を低減できます。
 最後に運用性の向上です。これは今のドーリーをいろいろ運用して学んだことを反映しています。いちばん簡単な話としては、アクセス性です。エンジンなどの機器を搭載している場所に、いかに簡単にアクセスできるか。例えばMLを載せた状態で、MLの脚などに隠れる場所にはなるべく機器を置かないで、それ以外のアクセスしやすい場所に置くなど、そういった事でメンテナンス性を良くしているということがございます。
 形状に関しては変わりはありません。射点やVABの制約でMLは物理的に決まっていきますので、その下に置くドーリーも物理的な制約は同じため、殆ど同じような大きさになっています。
 高さに関しては600ミリを上下させることができます。万が一何かあって緊急停止した時でも0.08G以下の加速度しかかからないようになっています。最高速度は直線で2km/h、曲線で1km/hで同じです。停止精度も要求としては前後左右プラスマイナスで25ミリ、高さ方向は10ミリで変わっていませんが、今のドーリーと比べて非常に停止精度がいいです。アナログ回路ではなくデジタル回路を使っているので、前回の走行試験をやったときには、ほぼプラスマイナスゼロで止まることができました。ただ風の条件などもございます。
 現在の物はコーナリング特性でゼロメートル、その場で旋回する性能もございましたが、実際に射点でその性能を使うかというと使わないため、そういう使わない機能は今回省いて開発費を下げる工夫をしています。
 排ガスについても気をつけておりまして、環境に配慮しています。

 本日の試験ですが、MLの上に(H3ロケットの)24形態(固体モーター4)で、重めの衛星が乗った場合の推進薬が無い状態を想定して360トンのおもりをMLの上に載せます。その状態でしっかり走れるかどうかという試験をやります。今日から3日間やりまして、今日が最初の試験になります。このテストによって、VABからLP2までのコーナリングとかそういったものができるか、最後のLP2やVABに入ったときに地上の設備と干渉しないか、精度良く停止できるか、水平度を保てるか、またセンサをあえてひとつ動かない状態にしてもちゃんと動けるかといった故障時の対応がしっかりできるかといったことを確認します。全体でそれをやるのですが、初日の今日はLP2の手前にMLが乗ったドーリーがございまして、そこからLP2の中に入っていくところをご覧頂くことになります。


・質疑応答
南日本放送・コスト削減など金銭的なことをおっしゃっているところがありましたが、この移動発射台とドーリーのそれぞれの開発費用はいくらか。
更江・H3全体としては1900億円で開発をやりきるということはございますが、内訳は申し上げられないことになっています。

読売新聞・ドーリーの維持費が半分以下になるとのことだが、現在はいくらかかっていていくらぐらいになるか。
更江・申し訳ないですがお金に関しては控えさせていただきます。

鹿児島テレビ・移動発射台ですが、これまでH2Bは7機上げているが、改良だけで済んでいるのか。
更江・全部新しくしています。

鹿児島テレビ・何機ぐらいの打ち上げに使おうとしているのか。
更江・年間6機で20年間は最低でも使いたいので、6×20で120機くらい。

NHK・今日の走行試験は(全行程の)片道なのか。
更江・VABからではなく、最後の部分の近傍をご覧いただく。

NHK・片道1回か。
更江・1回入るところになります。

NHK・時間と距離はどれくらいか。
長田・50mくらいで、10分もかかりません。カメラの方はベストポジションを見逃さないようにお願いしたいと思います。

NHK・発射台の近傍での公開は初めてか。
長田・初めてです。

NHK・いつ完成したのか。
長田・完成はまだしていない。あくまで開発の最終段階で、いろんな性能を確認するということで、今日走行試験を始めますということで案内させていただきました。ロケットに燃料を入れるための配管がまだついていないので、そういうものを全部つけて、来年の春先以降に、ガスを流して最終的な確認をしたり、あとは打ち上げ直前に極低温の液を流して、そういった機能を全部確認して打ち上げに備えていくことになります。

NHK・機体を使った走行試験もやるのか。
長田・正式には発表されていないと思うが、打ち上げの前に地上総合試験というものをやっていきますので、その中で機体を載せて射点まで運んで、全てのインターフェイスを全部確認して、打ち上げに臨むということになります。

NHK・音響の低減で変わるところは何か。これまで出来なかったことが出来るようになるところ。
更江・まず世界のロケットよりもいい性能、最高水準を目指すことにしています。具体的な数値はまだ公表しておりません。打ち上げまでには公表できると思います。
ポイントとしましては、設備の観点からすると、例えば水を出す装置はメンテナンス費がかかるが、そういったものは一切やらないで、形状を工夫することで音響を低減したところがひとつの大きなポイントかなと思っています。メンテナンス費用も安くすることができると思います。機体に対しては、出てくる推力に速度をかけたものを排気パワーと呼んでいますが、排気パワーに比例するということがあのですが、1〜2割ほどH3の方が上がっているが、それにもかかわらず射点を工夫することで従来より音を下げているという形になります。

NHK・それによって搭載する衛星は、これまでよりも良い環境になるのか。
更江・より優しい環境で打ち上げられるようになります。

・走行試験は3日間同じものか。
更江・3日間の試験は、それぞれ違う試験をやります。本日は最後のLP2に入るところをやります。明日以降はもう少し長い距離、VABの前からLP2に入るところまでをやる形になります。本当はVABの中に入れた方がいいが、今は他の機体が入っていますのでやらず、今年の秋くらいにやる予定です。その他、途中で緊急停止や故障模擬といったものを明日明後日やる予定です。

・現在のドーリーとMLは廃止するのか。
更江・現状のものはなるべく早く置き換えて、運用費を下げていきたいと考えています。具体的にいつ入れ替えるかは検討中です。

・新型のドーリーとMLは、H2AとH3の両方に使えるのか。
更江・ドーリーは使えるが、MLはそれぞれのロケットに合わせて作っている。H2A用のML、H2B用のMLというものがございます。新型のドーリーはH2A用のMLも、H2B用のMLも運べる。

フリー大塚・今回はMLを載せて運ぶのが初めてになるのか。ドーリー単体では動かしたことがあるのか。
更江・正確に申しますとMLだけ載せた試験は6月上旬にやりました。機体と同じ360トンの重さのおもりを載せた状態で運ぶのが、今日が初めてとなります。

フリー大塚・新型は誤差がプラスマイナス25ミリの要件がプラスマイナスゼロになったのは。
更江・6月の、おもりがない状態での試験です。マーキングとほぼ一緒だった。

フリー大塚・資料で従来のMLから削除して地上に移動したものについて。
更江・今までのものは熱と噴流を冷却する効果がありました。上のものはMLの上面を水で覆うのを目的にしていました。覆うことにより、まず熱の観点から言いますと、穴の周りからあふれ出る噴流から熱を奪う効果があります。音響の観点は専門的な話になりますが、水そのもので音を遮蔽するという訳ではなくて、水が蒸発してある大きさの水滴になります。その水滴が音波のエネルギーを吸収して音を減らす効果を期待したものです。こちらに関しては、形状を変えることで、それと同等以上の効果が得られると判りました。一方、下の部分は全体に広く撒くというよりは、紡錘状の水柱みたいなものをロケットの噴流に向けて突っ込むような形になります。それによって熱の観点では噴流の速度と熱エネルギーを下げて、デフレクタと呼んでいる煙道部の熱負荷を下げる。もう一つは噴流が出て来たところからの音波もございます。この出て来たところの音波を低減する効果があります。
長田・もうちょっと判りやすく言うと、まず上の菊の花のように開いている水設備というのは、もともと音を低減するための意味でつけていた。さきほど説明したように(新MLは)開口部を広げて音を低減できたのでいらなくなりやめた。下のものを削除した件は、作業性の改善や運用性の改善を掲げている。MLの中というのは水の配管が、だいたい800ミリのでかい配管がついていた。そうすると作業性が非常に悪くて、狭いところで作業していた。そこをなんとかしないと作業効率が上がらないということで、その配管を全部地上に降ろしました。結果としてMLの中に広い作業空間がとれて作業性が非常に上がったということで、打ち上げ期間を短く出来て年間6機の打ち上げができるようになった。そういうことで地上に降ろしています。

フリー大塚・海外で推力が100%出ないまま打ち上げる話があったが、具体的には。
更江・ロシアのロケットはそんな感じです。ソユーズなどは100に行かない状態で浮き上がっていきます。

フリー大塚・MLのブリッジを削減したとあるが、強度的に補強すれば大丈夫としたからか。
更江・そうです。あった方が剛性がいいが、無くても補強すれば大丈夫。

フリー大塚・現状のMLはVABの中にあり、新型(ML)は外で組み立てているのか。
更江・そうです。LP2の前の地盤補強をして作っている。

フリー大塚・今後の新型と現行のMLのやりくりについて。
更江・基本的には打ち上げ計画によるので、まだ検討中ということです。H2Bが先に終わる予定になっていますので、H2Bが終わった時点でH2B用のMLを廃棄することを考えています。H2Aは引き続き使い続けますので、H2A用のMLを使います。

フリー大塚・H2Bロケットはあと何回打ち上げられるか。
更江・あと2回。今年と来年です。
長田・スケジュールによっては並行して準備しなければならない状況になる可能性もあるので、そこは状況を見ながら柔軟に対応していくしかない。皆さん感じていると思いますが、車庫(VAB)は2つしかないが車(ML)は3つある。1台車庫からあふれる。本来は前の打ち上げ計画が終わって次の計画がちゃんと乗っていれば車庫は2つでいい。今のところ新しく作るにもお金がかかるし、スケジュール全体を眺めながら計画をしっかり立てていく。一時的に3台になっているので、一時的な場所に置くというのは暫くあるかもしれない。

NVS・H3用のMLはエンジンが下に入るが、VABの中での作業性という点でやりやすくなっているのか。
更江・やりやすくなっています。地面からノズルの下端まで1m程度なので、ちょっとした台があれば上まで届きます。上の狭いところなど、普段考えていないところにアクセスするのは、ちょっと大変なこともあるかもしれない。基本的に普段使うところはアクセスしやすい。

NVS・H2Aでは1段とMLの間に風対策のバーが入っていると思うが、H3には無いのか。
更江・無いです。H2Bも無いです。

南日本放送・移動発射台の大きさについて、マスト頂部高さ66.5メートルはドーリーを入れた状態か。それともあっても無くてもこの高さか。
更江・ドーリー無しで、地面にMLを置いた状態で。MLに足が4本ついていて、それを地面に着いた状態で、避雷鉄塔のてっぺんの高さになっています。

南日本放送・ドーリー入れて移動するときの高さは、66.5にドーリーの高さを足すのか。
更江・ドーリーは中に入って持ち上げる。その持ち上げる量が数十センチ。その数十センチ上がった状態で移動する。
長田・ドーリーの油圧シリンダーは35センチを持ち上げます。

南日本放送・約67メートルは建物では何階建てに相当するか。
長田・確認します。

NVS・配付資料のブレーキ軸などの数が合わない。
更江・申し訳ないです、資料の間違いです。
長田・ホイールの形で判る。ドライブが6軸。ブレーキが3軸。アイドル(フリー)が5軸。

NVS・ホールダウンシステムは機体をどう支えるのか。
更江・機体を上がらなくするホールダウンシステムは、機体を乗せる方は下に落ちて、機体を上がらなくする方は上から押さえつけて上に外れたあと、全体が下に下がるというちょっと複雑な動き。

渡部・一般見学で見せてもらったがMLにおもりが載っていて、それには足がついていたが、それは機体支持装置の上に乗るようになっているのか。
更江・ロケットの機体支持装置の部分に乗せている。

読売新聞・開発の最終段階とのことだが、移動発射台とドーリーの両方ともか。
長田・ドーリーは殆ど出来て、安全面を含めた最終的な機能確認をやる段階にあります。MLはどの時点が最終段階という言い方は難しいが、このあとは推薬を充填するための配管をつけて、最終的にはそれがついた状態で射点に持っていって液流し試験までやって開発が終わる。それが来年の春以降になります。なかなか難しいが、MLとドーリーの組み合わせは最終段階というつもりで私は申し上げた。動かすための最終局面にあるということです。

読売新聞・ドーリーは日本車輌が製造したが、発射台はどこが担当したか。
長田・三菱重工です。
更江・どちらも三菱重工さんが契約の相手方になっています。その下に日本車輌さんが入ります。

NVS・ドーリーのカラーリングに意味はあるか。
更江・三色ありますが、デザイナーの方と相談しまして、青はJAXAブルー、黒は宇宙の黒、白は力強さや先進性というものを表します。

NVS・MLの開発は日本車輌の中でやっていたが、そのときも移動発射台と同じ重さをのせた試験はやっているか。
更江・やっています。ただその時はMLはございませんので、鉄骨で重さと重心を合わせて作った治具となっています。

・移動発射台取材後の質問から

・明日以降、一般見学で試験の様子を見られるか。
長田・移動試験中は基本的に入れないと思います。たまたま退避しているタイミングだと見られるかもしれない。

・VABの扉に足場が組まれていたが、H3向けの何かなのか。
長田・H3という訳ではなく、VABも作って20年近く経過している。老朽化というのも新聞などに取り上げてもらいましたが、外板が錆びて穴とかがあいていた。今年は打ち上げ機会が少なくて、3機の予定ですけども、このタイミングを狙って外壁の取り替えをしている。

・扉だけでなく全体をやるのか。
長田・第2整備組立棟は昨年に大体終わった。残りの片側分をやっている。茶色いのが殆ど無くなって綺麗な状態になっていると思います。

・(正面から扉に向かって)右がH3で、左がH2A。
長田・そうです。H2Aもいずれ終わるので、(建物の)保全をやめるとか、撤去するなど計画をしていかなければならない

・改修して両方使うようにはしないのか。
長田・今のところは考えていない。もう一つを使えるようにするためには、もう一つの移動発射台を作らないといけない。移動発射台を作るとなるとそれ相応のお金がかかるし、一方で作ると維持費がかかる。費用半減の逆効果になってしまう。三菱さんが商業活動をしていく中で、結構な機数がとれれば、いずれあるかもしれない。

・VAB内部の改修はH2Bの8号機が終わってからか。
長田・一応、大体済んでいます。殆ど直径が変わらない。あとは機体のアクセスポイントが変わっていますので、切りかけを追加したり、穴を埋めたりしている。
更江・切り替えながら使えるようにしている。

・H2B8号機の打ち上げが終わってから、MLのクリアランスの確認などをやるのか。
長田・そうですね。

・ドーリー同士の距離と、今日動いた距離はどれくらいか。また明日動かす距離は。
長田・正確なところは確認します。冒頭で10分と申し上げたが、スタートしてから着座までだいたい10分は越えていた。定位置につくまでは7分くらいだが着座するまでは10分くらい。距離は50mは無いと思う。

(※南日本放送・約67メートルは建物では何階建てに相当するか)についての回答。
更江・高さは20階程度。
長田・難しくて、階層には4メートルや3メートルがある。オフィスは4メートルのバージョンだが、マンションなどは3メートル。1階層を約4メートルで計算するとそれくらいになる。

・今後のスケジュールはどうなるか。
長田・今はマストだけだが、あの中に配管をつけたりして、来年の春先からいろいろ試験をやって、最終的には地上施設を全部組み合わせた「設備組合せ」の試験を行います。液体水素、液体酸素の液流し試験をして、一通り設備として終わるのは来年夏ぐらい。

・断面図などはないか。
更江・ホールダウンなどノウハウがあるので、あまりオープンにしたくない部分がある。特に外国の競合のところにはオープンにしたくない。各国もあまりオープンにしていない。

・MLの開口部が大きくなったが、H3のコンフィギュレーションにかかわらず常にその状態か。
更江・そうです。SRBが無い場合でもあのままです。

・H2Aでは204に対し202では蓋をしているが。
更江・H3ではしない。
長田・蓋をしようにも梁が無い。
更江・蓋をすると損傷を受ける。蓋をするにも時間がかかる。

・来年にCFTをやるが、燃焼時間などはどれくらいの予定か。
更江・まだ検討中です。

・地上に固定しているとするとそんなに長く噴射はできないということか。
更江・そうですね。ある程度の長さはできるように注水の仕方などで工夫します。

・打ち上げ後の補修は今までは約1ヶ月かかっていたのか。
更江・そうです。

・それを半月にするのか。
更江・そうです。

・H2Bでも打ち上げ期間は約2ヶ月なので(H3と同様の)年間打ち上げ機数を達成できるのか。
更江・もうひとつ指標がありまして、1ヶ月に2機打ち上げられる。衛星のお客さんによっていつ打ち上げたいというウインドウのご希望があるので、1回打ち上げて次の打ち上げまで1ヶ月以内にやれることを目指しています。

・これまでは補修の問題だったのか。
更江・そうですね。1つの大きい問題はそれになっています。
長田・これまで打ち上げ間隔で最短50何日というのがあったが、あれが極端に言うと30日くらいになる。

・それくらいの打ち上げ間隔だと、種子島に機体を保管する場所が必用ではないか。
長田・それも確かに課題なので、そういうことも踏まえて地上設備の中でどういう対応ができるかというのを検討しています。まだお客さんが決まっていないが、それが決まってくると具体的に考えて具現化していかなければならない。
更江・機体の点検期間もぐっと短くなりますので、いつ発送するかも踏まえて計画します。

・横置きである程度整備してから吊り上げるのか。
更江・そうですね。ただ従来のように横置きで長い間整備するというのは無くて最低限となります。

・打ち上げ時の移動発射台とのクリアランスはどうなのか。
更江・今は3D(D:ノズル径)でやっているので、1メートル強くらいはある。風とか推力の軸がズレているとか、そういう事を考えても大丈夫なようにしている。

・新型移動発射台では上部構造を円筒にして風の影響を減らしたとあるが、そうすると打ち上げ時の風の条件は緩和されるのか。
更江・風の条件は同じです。ロケットを横から支える関係で剛性がちょっと弱くなっているので、そのぶん揺れやすくなっている。それを防いで従来と同じにするために今回の構造にした。

・機体のモックアップなどでのテストはやるのか。
更江・今のところ考えていません。
(※イプシロンロケットの開発段階では、イプシロンロケットに見立てた鉄の円筒をランチャに設置して試験をしている)

・H2Aの試験ではSRB−Aがモックアップでおもりの役割だったが、そういう事はやらないのか。
更江・はい。
長田・世の中の技術が進んでいるので、設計の段階から干渉やクリアランスなどを設計の中で徹底的にやってきていますので、そういうものをやらなくて済む時代になりつつある。

・ドーリーが持ち上げるのは350ミリで良いか。
長田・そうです。走っているときに計器だけでなく人間でも見ていて、途中途中で曲尺(金尺?)をあてて高さが変わっていないことをずっと確認していく。それで両方のバランスがとれていることを確認する。
更江・試験のときですね。運用のときはしません。
長田・実際はしている(笑)。我々の現場としては安心材料にしている。昔の職人のようだが、それが判りやすい。規定があり350ミリで持ち上げて、油圧が下がって何ミリ以下になったら危険なので、そこをモニターしながら運んでいる。規定以下になれば作業はいったん中断する。そういうことが無いように事前に油圧や配管の点検をやった上で問題が無いようにしている。

・路面のコンクリはどれくらいで交換しているか。
長田・交換していません。どこでもそうだが、舗装した後に下の地盤が沈下して空洞ができる。そういう状況で1400トンくらいのものを運ぶと地面が陥没する可能性があり、そんなことになったら大変な状況なので、空洞が無いかを定期的に確認しています。空洞が確認できれば、例えばそこにコンクリートを注入するなどの補修をしています。おかげさまで現状ではそういう状況にはなっていない。H3に向けてはどこかのタイミングでやらなければならないと思っている。そういう測定をする車があって、空洞化が無いことを確認しています。

・ガイド用の磁石の交換はやっているか。
長田・マグネットの力が弱くなってある基準を下回ると変えます。また、途中で千切れることもある。そういう所はマグネット棒を準備して即席で貼ってその上を通過する形で対応しています。またVABの扉のレールの上などはマグネットを引けないので、そういったマグネットを一時的に置いている。

・すると作業者は磁気を帯びたものは持ち込めないのか。
長田・基本的にしてはいけない。時計なども電池式のものは駄目など、安全上の制約があります。身なりも含めてきっちり管理しています。工具なども落とすとぶつかって影響することがありますので、テザーをつけて落ちないように腕に縛る工夫をしています。

以上です。


No.2283 :小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウへの第2回目タッチダウン運用に関する記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年7月18日(木)15時59分 投稿者 上坂浩光

2019年7月11日(木)、小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウへの第2回目タッチダウン運用に関する記者会見が行われました。2回目のタッチダウンは、1回目に続いて大成功。津田さんの口からは「100点満点だとすると1000点です」との言葉も聞かれました。この投稿では詳細な説明は他に譲り、撮影した写真と簡単な感想を書かせていただきます。

◆登壇者
JAXA宇宙科学研究所 
研究総主幹久保田 孝

「はやぶさ2」プロジェクトチーム
プロジェクトマネージャ 津田 雄一
ミッションマネージャ 吉川 真
プロジェクトエンジニア佐伯孝尚
プロジェクトサイエンティスト 渡邊 誠一郎

今回一番印象的だったのは、2度目のタッチダウンを行うかどうかという議論がなされ、それを乗り越えて運用を成功させたことです。勢いとか、想いとかではなく、きちんと論理的な検証がなされ、実行に移されました。当然失敗のリスクは0%ではない訳ですが、その前向きな決断に、宇宙研に脈づく“挑戦する姿勢”を感じました。このことは今後行われる様々なミッションにも、先例として影響を与えていくのではないでしょうか。

津田さんの「ほら、言ったとおりでしょ(笑)」と言った言葉がとても印象的でした。

(注)「2度目のタッチダウンに反対されていた國中さんに会ったら、なんと声をかけますか?」という質問に対しての津田さんの答えです。


No.2282 :燃焼試験その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年6月15日(土)22時30分 投稿者 柴田孔明

燃焼試験の様子。液体水素と液体酸素の燃焼であるのと、冷却などのために水を散布しているため、噴煙の殆どが雲と変わらない。ただ少し黄色っぽく見えました。


No.2281 :燃焼試験の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年6月15日(土)22時26分 投稿者 柴田孔明

2019年4月12日14時の燃焼試験の様子


No.2280 :エンジン上部 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年6月15日(土)22時23分 投稿者 柴田孔明

エンジン上部の様子。人と比較すると大きいことがわかります。


No.2279 :2基のLE−9 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年6月15日(土)22時21分 投稿者 柴田孔明

種子島で単体で試験された後、田代試験場に移送されて設置された2基のLE−9