投稿日 2019年9月10日(火)01時23分 投稿者 柴田孔明
2019年9月9日14時より、種子島宇宙センターの竹崎展望台にてH-IIBロケット8号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)
・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司
・H-IIBロケット8号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機の打ち上げ時刻について
(※ブレスリリース・鈴木)
三菱重工業株式会社は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)を搭載した H-IIBロケット8号機(H-IIB・F8)の打ち上げについて、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。
打ち上げ日: 2019年9月11日(水)
打ち上げ時刻: 6時33分29秒(日本標準時)
打ち上げ予備期間: 2019年9月12日(木)〜2019年10月31日(木)(※)
(※)予備期間中の打ち上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。
・H-IIBロケット8号機の打ち上げ準備状況(鈴木)
・H-IIBロケット8号機は飛島工場を6月29日に出荷後、射場作業を開始。
・以下の射場整備作業を良好に実施。
機能点検(〜8月9日)
機体の各機器が正常に作動することを確認。
カウントダウン・リハーサル(8月20日)
関係要員に対し打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
「こうのとり」8号機とロケット機体の結合作業(8月24日)
ロケット機体の最終的な機能点検(8月27日)
・発射整備作業を実施中(9月6日〜)
・整備組立棟VAB2を使用。
・打ち上げは第2射点(LP2)を使用する。
・9月8日にレイトアクセスでHTV8に荷物を搬入。
・機体移動予定時刻:2019年9月10日14時30分頃(日本標準時)
・打ち上げ制約条件から一部を抜粋。(※他にもあります)
・風:機体移動時は最大瞬間風速22.4m/s以下であること。
・風:発射時は最大瞬間風速20.2m/s以下であること。
・雲:積乱雲の中を飛行経路が通過しないこと。
・雷:発射前および飛行中において、機体が空中放電(雷)を受けないこと。
1.射点を中心として半径10 km以内に雷雲の無いこと。
2.飛行経路から20 km以内に発雷が検知された場合は、しばらく発射を行わない。
3.飛行経路が雷雲や積乱雲(※)の付近を通過する場合には発射を行わないこと。
(※氷結層を含み、鉛直の厚さが1.8 km以上の雲を含む)
・気象状況について
2019年9月11日朝6時頃は概ね晴天で、にわか雨程度と予想されている。現在のところ打ち上げに支障となる気象予想はありません。
・宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)ミッション概要(辻本)
・世界最大の補給能力。9号機まで予定されている。
全長: 10.0 m
最大直径: 4.4 m
打ち上げ時質量: 約15.6トン
搭載補給物資質量: 約5.3トン(船内+船外物資)
輸送目標軌道(ISS軌道):高度350 km〜460 km、軌道傾斜角51.6度
ISSによる把持: 2019年9月14日(予定)
・「こうのとり」8号機の特徴
・新型補給機(HTV-X)の開発に向けた技術実証
姿勢制御センサの変更(地球センサ → スタートラッカ:Jena Optronik社)
新型ラックによる物資輸送能力の増強。
・将来ミッションにつながる技術の実証
細胞培養装置追加実験エリア(CBEF-L)
惑星表面の柔軟地盤の重力依存性調査(Hourglass)
小型衛星光通信システム(SOLISS)
・低軌道利用の拡大に貢献する超小型衛星の輸送。
NARSSCube-1(九州工業大学/NARSS(エジプト国立リモートセンシング宇宙科学機関))
AQT-D(SpaceBD株式会社/東京大学)
RWASAT-1(東京大学/Ministry of Commerce,Industry,& Tourism Rwanda Utilities Regulatory Authority Smart Africa secretariat(ルワンダ共和国))
・ISS運用の根幹を支える物資の輸送。
船外物資:ISSバッテリ(6,7号機と同様に6台輸送)
船内物資:窒素/酸素タンク(NORSタンク)、生鮮食品
緊急搭載品:遠隔電力制御モジュール(RPCM)
・質疑応答
時事通信・遠隔電力制御モジュールを緊急搭載したが、どのような部品で、急ぎ積むことになった経緯は何か。
辻本・非常に簡単に言うとサーキットブレーカーの役目をするもの。バッテリから宇宙ステーションの各機器で使っているいろいろな装置にブレーカー的に入れていて、過電流が流れるなど非常時が起きたときに、下流の機器を健全に保つため電力をシャットダウンする。(ISSで使われている)具体的な数はわからないが、宇宙ステーションのいろいろな機器にそれぞれついているので、数としては相当数ございます。時々故障といったことがございまして、軌道上に交換品が置いてあるが、8月にも宇宙ステーションの機器で故障のような状態があったので確認したところ、このRPCMの故障だったということで交換したという事がございまして、ちょうと「こうのとり」を打ち上げる直前だったので予備をひとつ送りたいという情報があった。情報があったのは8月30日頃で、レイトアクセスの最後の最後に間に合ったので今回搭載することになった。
時事通信・確認だが故障は直ったが予備をもう1個ということか。
辻本・そうです。電力がシャットダウンされた時点で原因究明が行われ、下流の機器ではなくてRPCMそのものの故障だったということで、軌道上で交換を行った。
南日本新聞・誤差の範囲かもしれないが、(7月の機体公開時の時より)搭載物資が0.1トン少なくなった理由は何か。
辻本・5.4トンというのは機体公開時の値です。7月の機体公開当時には通常搭載は終わっていたが、レイトアクセスの物資はNASAと調整している最中でした。そのあと持っていく物資に多少の変更があったり、NASAからもらっていた計画地と実測値の差があったり、そういったことでは100キロも減ってはいないのだが、トータルとして少し減った。
鹿児島テレビ・あさっての打ち上げに向けた意気込み、気持ちなど。
鈴木・ここまで作業は順調に進んできている。今回に限ったことではないが、ロケットの打ち上げに関しましては、関係する各機関の皆様、南種子町をはじめとする各地域の皆様、それからJAXAさん、それから各社の皆様ほか、本当に多くの方に支援ご協力をいただいておりまして、おかげさまで今回ここまで順調に作業を進めることができたと考えており、深く感謝申し上げます。それもございまして、残り2日ということで、あらためて打ち上げを必ず成功させたいという気持ちを新たにしているところでございます。大切なことは平常心で、決められた作業を確実にひとつひとつ丁寧にこなして、冷静に判断していくということであると考えています。それを着実に実施することで必ず打ち上げを成功させたいと、このように考えております。
鹿児島テレビ・気象条件の説明があったが、今のところ機体移動と打ち上げを含めて心配はされていないということか。
鈴木・その通りです。心配ありません。
NHK・気象について先週までの時点では台風の進路が心配されたと思うが、それについていろいろ議論されたのか。宇宙活動法施行後、三菱重工として初めての打ち上げだが意気込みはどうか。
鈴木・この時期は台風の発生が非常に多くて、台風が発生する直後や直前の状態では、いろんな予報が日替わりになる状態で、今回の9月11日に向けての判断の過程においても、予報の推移というものに十分に注意を払って行ってきております。結果として、幸いなことに台風がいないときに打ち上げを実施できるので、これは大変ありがたいことだと思っております。活動法施行後初めての民間としての打ち上げに関して、活動法に関しましては手続きの面で大きく変わった。それに関してもこれまでJAXAさん内閣府さんから多大なるご協力をいただいて調整を重ねさせていただきました。現場といたしましては、ロケットの組立ですとか点検ですとか設備の運用に関しては、やることは同じでございます。三菱重工としてこれまでも実施してきたことを今回も同じように実施している。今回も淡々と冷静にやるべきことをやって、しっかり打ち上げに臨むことに尽きると考えています。
NHK・初号機と同じ打ち上げ日となったがお気持ちはどうか。
辻本・(初号機から)ちょうど10年。10年一昔という言い方が正しいかどうかわからないが、「こうのとり」にしましても、「きぼう」にしましても、10年前と比べまして、それぞれにおいていろんな成果が出て進化してきたと思っています。この先10年はといいますと、新型宇宙ステーション補給機の開発を進めていますし、Next ISSということで探査などそういった話も出て来ております。そういった意味で「こうのとり」8号機というのは、これまでの10年と、この先の10年の両方を見据えた機体と思っています。私どもも3月から作業を始めまして、ここまでかなり順調に来ました。残り1日しっかり作業して無事軌道に打ち上げまして、次は筑波の運用管制隊にスムーズにバトンタッチできるようにしたいと思っています。
NVS・打ち上げ日が延期した場合、時刻はどのようにずれていくか。
鈴木・1日の延期でおおよそ20分程度早くなると考えていただければと思います。
以上です。
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