投稿日 2020年2月11日(火)12時07分 投稿者 柴田孔明
情報収集衛星光学7号機を搭載したH-IIAロケット41号機は2020年2月9日10時34分(JST)に打ち上げられ、衛星は所定の軌道に投入されました。同日午後、竹崎展望台の記者会見室にて打ち上げ後の経過記者会見が行われています。
(※一部敬称を省略させていただきます)
・H-IIAロケット打上げ経過記者会見(第1部)
・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 宮川 正
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 企画課長 翁長 久
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 中川 尚志
・登壇者挨拶(宮川)
本日、種子島宇宙センターから、H-IIAロケット41号機が打ち上げられ、搭載しておりました情報収集衛星光学7号機を所定の軌道に投入できました。
今回の打ち上げに関しまして地元の皆様をはじめ関係機関のご支援ご協力に対し、この場をお借りいたしまして御礼申し上げます。
現在、光学衛星につきましては計2機を運用しておりますが、このうちの光学5号機につきましては今年の3月に設計寿命の5年を迎えます。その後継として計画的に本日の7号機を打ち上げたものであります。衛星によります情報収集体制を確実なものとし、さらに一層強化するためにも本衛星は非常に重要な衛星と考えております。今後、内閣衛星情報センターとして光学7号機の早期の運用開始に向けた所要の作業をしっかりと進めて、我が国の情報収集能力がより強固なものとなるよう全力を尽くしていく所存であります。今後ともよろしくお願いいたします。
・打ち上げ結果報告(中川)
内閣衛星情報センター、三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから本日10時34分00秒に情報収集衛星光学7号機を搭載したH-IIAロケット41号機を予定通り打ち上げました。ロケットは計画通り飛行し、情報収集衛星光学7号機を正常に分離、所定の軌道に投入したことを確認しました。
ロケット打ち上げ時の天候は快晴、北の風6.3m/s、気温12.3度Cでした。
情報収集衛星光学7号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所定の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算41機中40機の成功、成功率は97.56%になりました。H-IIBを併せると通算49機中48機の成功、成功率97.96%です。またH-IIA/IIB、43機連続の打ち上げ成功です。
今回は設備配管からの漏洩で2週間ほど延期して打ち上げとなりました。打ち上げを楽しみに種子島までお越しいただいた方々や、打ち上げを応援し支援いただいている方々には、大変申し訳なく感じていましたが、本日無事打ち上げる事が出来、大変安堵しています。
情報収集衛星としては1年半ぶりの打ち上げでした。原因は全く異なるものの、直近2回の打ち上げ延期を真摯に受け止め、次回の打ち上げに反映すべきは反映し、皆様に一層安定した打ち上げを提供できるよう、今一度心を引き締め、引き続き細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。今回の打ち上げに際し多くの方々にご協力ご支援いただきました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
・質疑応答
NHK・現状で情報収集衛星7機を運用されているが、今回の衛星の運用が始まれば8機になる。これは強化されると考えて良いのか。4機体制が確立されて5年以上経つが、今後の課題や方針を教えていただきたい。
宮川・今回の光学7号機は光学5号機が設計寿命を迎えるのでその後継としたものであります。ですから結果的に8機に運用がなったとしても、我が情報収集衛星の体制が変わってくるというものではなく、一時的に光学の能力が上がるかもしれませんが、体制は引き続きこれまでと同様と考えていただいて結構です。将来に関しては、行程表で決まっております10機体制に早くなるように、引き続き情報収集衛星の体制を作ってまいりたいと思っております。
NHK・10機体制の整備はここまで順調に来ているのか。どのように進められていくのか。
宮川・当面現在の4機体制から大きく移行していくのは、令和2年度に計画しておりますデータ中継衛星というものがありますので、これが打ち上げられるということは10機体制に一歩近づいていくと考えていただいて結構です。今後ですけども時間軸多様化ということで、違った時間帯の撮像とか、このようなものが始まりますとさらに10機体制に近づいていくということを現在計画しているところであります。
南日本新聞・光学7号機は光学5号機の後継ということで、技術として解像度などが進歩しているのか。10機体制のためには設計寿命を考えると1年か2年に1機打ち上げ続けることが続くと思うが、今後も予算をかけて続けていくのか。続けていくなら必要性はどういったところにあるのか。
宮川・情報収集衛星ですので細部の性能等はお答えは控えさせていただきたいと思っております。それを前提の上で一般論的に申し上げるのであれば、やはり日々技術というものは進歩しておりますので、それに沿ったような形で情報収集衛星の方もいろんな技術等を導入しながら継続して打ち上げているとご理解いただいていいと思います。今後の整備の仕方ですが、衛星の開発は非常に長期間かかってしまいます。衛星によりますけども、5年から7年くらいかけて開発と作成をしていきますので、結果的に設計寿命を超えたとしても途切れることなく衛星の開発というものは進めていく必用があるのではないかと思っております。あと非常に高額な予算をいただいて衛星を運用している訳ですから、その結果を国民の皆様に示す必要性があるのではないかというご質問がありましたが、我々も努力を継続して図っていきたいと思っております。具体的には、これは情報収集衛星ですので収集した内容については、具体的に多くの省庁等に利用していただいておりますので、間接的にそれが政策外交等に反映され、間接的に国民の皆様のところに届いているのかなと私自身は思っております。その他情報収集衛星は大規模災害等にも活用をしておりますので、例えば昨年で言えば台風19号で4日間に渡り100枚以上を内閣官房のホームページにアップしております。そこら辺を見ていただければ非常に有効に活用していただいているのかなということもあります。今後とも止まること無くさらに国民の皆様に理解していだけるように収集したものを色々なところで活用していけたらなと思っております。
南日本放送・来年度は初のH3打ち上げが計画されているが、今回のトラブルを乗り越えた上での打ち上げ成功はどう繋がっていくか。
阿部・今回に限らず前回もそうだったが設備系のところで打ち上げが延びた。今まで我々は機体の方に目がどうしても行きがちだったが、ロケットは地上系も含めた全体で初めて打ち上がるものだということを非常に真摯に受け止めています。H3の打ち上げにおいても、地上設備も含めてトータルのシステムとしてきちんと仕上げていきたいという風に思っております。
・H-IIAロケット打上げ経過記者会見後ブリーフィング(第2部)
・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 中川 尚志
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 企画課長 翁長 久
・質疑応答
NVS・衛星の状況について今判っていることを教えて下さい。
中川・とりあえず今の時点で順調です。
南日本新聞・10機体制を目指すとあるが、宇宙基本計画ではまだ途中までしか出ていない。10機体制はいつごろまでに整うのか。
中川・令和8年度以降に10機体制ということで計画を進めている。
南日本新聞・令和8年以降も10機体制を維持し続けるということか。
中川・今が4機体制で、計画で10機体制になります。今ある計画は10機体制なので、確立してそれを運用していくことになると思います。
NHK・今回、点検をしていたけれども直前に長年たまった雨水による腐食が見つかったことで、点検方法の見直しについて、どういう風に見直していくのか。
田村・打ち上げ前ブリーフィングでJAXA様からありましたが、今回の不適合の原因等を見定めながら、どこが足りなかったかということで対策を講じていくことになると思います。その点につきましては私どももJAXA様と一緒になって改善をしていきたいと思っています。
NHK・設備を管理するのはJAXA、打ち上げの執行者は三菱重工ということで、そこらの責任の棲み分けをあらためる必用はあるのか。そこで問題が生じているのか。
田村・私どもとしましては、責任の所在や棲み分けに大きな問題あるとは思っておりません。設備を管理するJAXA様と、我々が使う三菱と、連携良く、コミュニケーション良くできていると考えています。
NHK・H3ロケットも控えている中で、特異的とよくおっしゃっていたが、その事象をどう受け止めて今後どう打ち上げに臨まれていくのか。
田村・地上設備が原因で2回連続で打ち上げを延ばしていることは、我々打ち上げ事業者にとっても非常に残念なことでございます。設備はH3でも使用し続けていきますので、今回の教訓といいますか糧といいますか、それをきちんと反省すべきところは反省して改善に繋げて、今後のH-IIA/B、H3に繋げていきたいと思っています。
鹿児島読売テレビ・H-IIAとBを合わせて、機体トラブルや周辺施設トラブルでの機体移動後の中止は、今回を含めて6回あったが、ここ3年間で4回と、ここ最近に集中している印象があるが、これはタイミングが悪かったのか、それともここ最近に集中している事象があるのか。
田村・最近、オンタイム打ち上げというのが機体あるいは設備が原因で出来ていない。当初の予定日から天候以外の原因で延びていることは事実だと思います。そこは、しょうがないということではなくて、今回のような事に対しても、もうちょっとどうしてなのか原因を調査しながら、きちんと次の改善に向けて取り組んでいきたいと思っています。
共同通信・今回地上設備を20箇所くらい補修をされたが、H3を控えている中で大規模修繕など問題をクリアする考えはあるか。
田村・今回のトラブルが起きた原因を、もう少しJAXAさんと突き詰めていきながら、その中で改善して、それをどうH3に活かしていくかというのを、一緒に考えていきたい。
共同通信・具体的にはこれからなのか。
田村・はい、これからです。
共同通信・2度の延期経てようやく打ち上げられて成功したが、あらためて受け止めをお願いします。
田村・第一には内閣衛星情報センターの方々の信頼と期待に、1月28日から延びてしまったが、信頼とご期待に応えられたことに心から安堵しているのが正直なところでございます。
南日本新聞・1年前の計画で42号機にデータ中継衛星を載せるとあったが、少し遅れるのか。また遅れた理由は何か。
中川・基本的には我々は計画を立てて、衛星開発には長期間かかりますが、そういったものを踏まえて計画的に開発をやっております。いろいろあってもできるだけ計画通り上げるように開発等をやっているところです。データ中継衛星については来年度の打ち上げと、当初より変更してございます。我々の全ての衛星に共通しますが、具体的な打ち上げ日が決まれば公表させていただくので、今まで通りやりたいと思います。
南日本新聞・光学7号機かデータ中継衛星の開発が遅れたのではないか。
中川・データ中継衛星については、衛星側の問題で来年度に変更致しました。
南日本新聞・どういった点で遅れたのか。技術的なのか、トラブルがあったのか。
中川・トラブルか技術的かの違いについてはなかなか説明しにくいのであまり区別せずに言うと、衛星側の問題ということでご理解いただければと思います。
NHK・オンタイム打ち上げの件で、宇宙活動法の施行や、打上サービスの移管といったところで、事前と点検のやり方などが変わったり影響したりしているのか。
田村・活動法によって点検のやり方が変わったという事はございません。
NHK・民間移管についてはどうか。
田村・そのことが原因で点検の内容が大きく変わって今回の延期に結びついたとか、そういったことでは無いと思います。
NHK・理由についてはまだ調べているということか。
田村・そうです。
NHK・基本的にはJAXAの所有する設備だと思うが、20箇所で錆が点検で見つかったというのは、打ち上げには影響ないとおっしゃっていたが、どれくらいのリスクが生じるものだったか。
田村・今回の私どもの感覚としましても、先日JAXA様が話された20箇所の補修箇所が、すぐさま延期に繋がるレベルでは無いというのは同じ意見でございます。
以上です。
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