宇宙作家クラブ
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No.2359 :ブルーライトアップ ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月21日(木)13時37分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機の打ち上げ準備作業中に機体がブルーライトアップされました。これについてJAXAの山川宏理事長より説明がありました。
『これはこの度の新型コロナウイルス感染の世界的拡大という未曾有の状況の中、感染防止の最前線で必死に戦っていただいております医療に従事される方々及びそのご家族ならびにその関係者の皆様への感謝の気持ち、そして地元の方々をはじめ今回の打ち上げに対してご理解とご協力をいただいた全ての方々への感謝の気持ちを表現したものでありまして、打ち上げ実施者であります三菱重工業殿の協力を得て実施したものでございます。一刻も早く新型コロナ感染が終息することを願っております。あらためまして皆様に心から感謝致します。』
画像提供:JAXA


No.2358 :最終判断はGo
投稿日 2020年5月21日(木)02時24分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機の最終Go/NoGo判断会議」の結果はGoです。X−10分作業への移行可と判断されました。 ※2020/05/21 02:20頃に連絡がありました。

No.2357 :H-IIBロケット9号機の第3回判断はGO
投稿日 2020年5月21日(木)01時42分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機の第3回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。最終(X-60分)作業開始可)と判断されました。 ※2020/05/21 01:36頃に連絡がありました。

No.2356 :第2回判断の結果はGo
投稿日 2020年5月20日(水)16時19分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機の第2回Go/NoGo判断会議」の結果はGoです。ターミナルカウントダウン作業開始可と判断されました。※2020/05/20 16:15頃に連絡がありました。

No.2355 :機体移動より射点付近 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月20日(水)16時02分 投稿者 柴田孔明

第2射点に着いたH-IIBロケット9号機。
画像はJAXA提供の動画より。


No.2354 :H-IIBロケット9号機の機体移動より ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月20日(水)16時00分 投稿者 柴田孔明

機体移動時のVABからH-IIBロケット9号機を見下ろしているところ。
移動発射台に感謝などの文字が見えます。
画像はJAXA提供の動画より。


No.2353 :H-IIBロケット9号機の機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年5月20日(水)15時55分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット9号機は2020年5月19日10時:30分(JST)から機体移動を開始し、同11時02分に第2射点への移動を完了しました。画像はJAXA提供の動画より、VABから出たところ。


No.2352 :H-IIBロケット9号機打ち上げ前プレスブリーフィング
投稿日 2020年5月20日(水)10時54分 投稿者 柴田孔明

 2020年5月19日午後よりH-IIBロケット9号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。なお今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のため種子島及び宇宙センターでの取材は行わず、インターネットを介しての取材となっています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機の打上げ時刻について
(※三菱重工ブレスリリースより・鈴木)

 三菱重工業株式会社は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)を搭載した H-IIBロケット9号機(H-IIB・F9)の打上げについて、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。
 打上げ日 : 2020年5月21日(木)
 打上げ時刻 : 2時31分00秒(日本標準時)
 打上げ予備期間 : 2020年5月22日(金)〜2020年06月30日(火)(※)
 (※)予備期間中の打上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。

・はじめに(三菱重工配付資料より・鈴木)
 新型コロナウィルス感染症に罹患された皆さまとご家族および関係者の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。厳しい状況が続く中、社会生活を守り維持するために最前線でご尽力されている皆様に、深く感謝申し上げます。
 また、ロケット打上げ作業にご理解・ご協力を頂いております地域の皆様にも、心より御礼申し上げます。
 H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機の打上げに向けては、種子島へのウィルス持ち込みおよび感染拡大の防止のため、細心の注意を払って参りました。
 今後も打上げ関係者が一丸となって万全を期して参ります。

 加えてこの場をお借りしてお願いを申し上げます。ご存じの通り5月11日に種子島1市2町より、種子島への来島自粛のお願いが発表されています。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ロケット打ち上げ見学の自粛にご協力下さいますよう弊社からもあらためてお願いを申し上げます。

・H-IIBロケット9号機の打ち上げ準備状況(三菱重工配付資料より抜粋・鈴木)

 ・H-IIBロケット9号機は飛島工場を3月17日に出荷後、射場作業を開始。
 ・以下の射場整備作業を良好に実施。
  機能点検(〜4月20日)
   機体の各機器が正常に作動することを確認。
   ※電子部品の枯渇に伴う再開発機器を含む。
  「こうのとり」8号機とロケット機体の結合作業(5月2日)
  ロケット機体の最終的な機能点検(5月6日)
  カウントダウン・リハーサル(5月8日)
   関係要員に対し打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
 ・発射整備作業を実施中(5月15日〜)
  ・本日(5月19日)までほぼ計画通り順調に進んでいます。
  ・本日午前中にY−0作業移行可否判断会議を開催し、Y−0作業への移行が可能と判断。

 ・整備組立棟VAB2を使用。
 ・打ち上げは第2射点(LP2)を使用する。
 ・機体構成は前号機までと同じ。
 ・機体移動予定時刻:2020年5月20日10時30分頃(日本標準時)

 ・打ち上げ制約条件は従来のH-IIBと同じ。
 ・気象について、機体移動時は曇り一時晴れ、打ち上げ時は曇りの予報で、現在のところ支障は無い。

・宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)ミッション概要(JAXA配付資料より抜粋・辻本)
「こうのとり」最終号機となる9号機では、引き続きISS運用の根幹を支える物資や宇宙利用を拡大する実験機器などを運ぶとともに、将来に向けた宇宙技術の実証を行います。

 ・機体概要
 全長: 10.0 m
 最大直径: 4.4 m
 ハッチ: 1.3 m
 打ち上げ時質量: 約16.7トン
 搭載補給物資質量: 約6.2トン(船内+船外物資)
 輸送目標軌道(ISS軌道):高度350 km〜460 km、軌道傾斜角51.6度
 ISSによる把持: 2020年5月25日21時15分頃を予定。
 ISS離脱・再突入時期は未定。

 ・「こうのとり」9号機の特徴
 1.自動ドッキング技術の獲得に向けた技術実証(新型宇宙ステーション補給機HTV-X)
  →機体に搭載したカメラで撮影した動画を無線LANでISSにリアルタイム伝送する技術の実証試験を行う。
 2.「きぼう」日本実験棟で運用される実験装置の輸送。
  →ライフサイエンス実験用の顕微鏡システム(COSMIC)や、固体材料の燃焼実験で使用する装置(SCEM)の構成品など、「きぼう」日本実験棟内の微小重力環境下で運用される各種実験装置を輸送します。
 3.「きぼう」の民間利用促進を支える物資の輸送
  →現在、JAXAが進めている民間事業者(SpaceBD)による「きぼう」の利用促進に基づき実現したスペインの企業の船外実験(iSIM)や民間事業者等とのパートナーシップ型の新しい研究開発プログラムJ-SPARCで生まれた事業(宇宙メディア事業、宇宙アバター事業)の実現を支える、各種物資を輸送します。
 4.ISS運用の根幹を支える物資の輸送
  →これまでと同様な食料・生活物資に加え、ISSバッテリ、窒素、飲料水といった宇宙飛行士の長期滞在、ISSの運用維持に必要不可欠な物資を輸送します。


・質疑応答
鹿児島MBCテレビ・打ち上げ準備で新型コロナウイルスの影響は具体的にどういったものがあったか。
鈴木・新型コロナウイルスの対策に関しましては、種子島にウイルスを持ち込まない、それから種子島の中で感染を拡大させないということで、知恵を絞って対策を講じまして、細心の注意で実行してまいりました。おかげさまでここまでのところ1人の感染者も出すことなく、作業を進めることが出来ております。対策として、人数減らす対策も行っておりますけども、それによって作業への影響を無いように計画して進めてまいりましたし、また作業も順調に進んで来ております。

サイエンスポータル・HTVが最終号機と説明があったが、H-IIBも最終号機となる。この機会にあらためて開発とこれまでの実績の意義、今回の打ち上げに際しての所感、ご自身の関与についてお願いします。
鈴木・H-IIBロケットは初号機から成功を続けることが出来ました。初号機は試験機の搭載ではなく最初からHTVの実物を搭載しての運用ということでございましたけれども、ここまで8回の打ち上げで一度も貴重なHTVを失うということが無く成功を続けることが出来たことを大変嬉しく感じておりますし、ここまで支えてくださったパートナー各社の皆様、JAXA関連機関の皆様、それから打ち上げをずっと支えてくださった地域の皆様に心から御礼を申し上げたいと思います。
 H-IIBの開発にあたって私自身の関与を少しだけ紹介させていただくと、私は構造設計を担当しておりましたので、機体の外側の構造体そのものの開発を担当しておりました。開発にあたっては非常に短期間での開発でございましたので、後戻り作業が発生しないようにするということで、リスクを先出しするというところに注力いたしまして作業を進めてきたと思っております。打ち上げに向けての思いといたしましては、最終号機、必ず有終の美を飾りたいと強く思っておりますけども、我々現場の人間といたしましては、するべきことはこれまでの機体と同じように、ひとつひとつの作業を確実に丁寧に実施して、平常心で冷静に作業を進めていくことだと考えておりますので、必ず打ち上げを成功させることで、皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

南日本新聞・H-IIBの7号機と8号機ではバルブ異常や移動発射台のトラブルでの延期があったが、今回の打ち上げ準備段階で教訓になった部分、ソフト面ハード面で改善された点があれば教えてください。
鈴木・7号機8号機のトラブルに関しましては個々に具体的な対策を講じまして、そこからの反映を確実に9号機に反映しております。具体的に申し上げますと、7号機は機体に搭載しているバルブのトラブルでございましたけれども、これに関してはバルブを工場から出荷する前の点検方法を改善することによって再発防止を図っております。それから8号機では射点設備の火災というトラブルがございましたけれども、これに関しては今回は、射点で前回燃えてしまったそのものを撤去するという抜本的な対策をJAXAさんの方で実施していただいておりまして、今号機に対して万全を期しているというところでございます。

南日本新聞・出荷前の改善と燃えたもの撤去について、もう少し具体的に教えてください。
鈴木・7号機の詳細については技術事項になりますのでご容赦いただきたい。バルブを工場から出荷する前の段階で不適合を内包したままで、バルブを機体に組み付けてしまわないように工場の段階で実施している点検の方法を見直して、間違いの無いように実施できるようにしたということでご容赦願います。8号機の火災の対策ですけども、これは射点設備の一部を冷却から保護するために断熱材をつけていた部分がございましたが、この断熱材が高濃度の酸素雰囲気の中で燃焼してしまったのが8号機の時のトラブルでございましたので、これを機に燃えてしまう可能性のあるものを当該の部分から撤去して、そもそも燃えるものが無い状態にしたということでございます。

鹿児島テレビ・あらためて最終号機の「こうのとり」にかける思いなど。
辻本・正直に申し上げさせていただきますが、最終号機とよくお話はあるが、私自身はまだそれほど実感が無い。8号機が終わりまして、すぐ9号機の打ち上げ前の準備作業を始めまして、目の前で行われている作業というのは、他の号機と多少の違いはあれども同じ作業を粛々とミス無く慎重に進めるということで半年やってまいりましたので、正直これで終わりという実感の無いままここまで来ました。ただそれは変な感情を持ち込んでミッションに臨まないという意味では、今まで通りのやり方というので非常にいいことなのかなと思っています。明後日打ち上げられましたら、そのあと筑波で運用が始まります。恐らく筑波で運用の準備をするメンバーも、これまでと同じ平常心で対応すると思います。感傷的な思いをするのは、最後の再突入が終わるときで十分だと思います。それまではプロフェッショナルとしてしっかり準備していきたい、運用を進めるということを行っていきたいと思っています。

NHK・今回感染拡大の防止ということで、見学の自粛という初めての事態となっているが、そんな中でH-IIBとHTVの最終号機の打ち上げを迎えられての所感や思いなど。また感染防止対策で人を減らすとあったが、具体的にどの程度の削減か。
鈴木・見学してくださる方が今回現場にはいらっしゃらないことに関しては、正直少し残念に思うところもございますけども、いつもと変わらず動画等をご覧いただいてくださる方も大勢いらっしゃると思いますので、これまで同様に心強く感じております。見学の自粛やweb会見もそうですけども、非常に多くの方に工夫していただいたおかげで、打ち上げそのものを進めさせていだくことが叶っていると、打ち上げを許していただいていると感じております。この点に関しましては、ご協力くださった多くの方々、色々ご心配をおかけしております地域の方々に、あらためて感謝の気持ちを新たにしているところでございます。人を減らすと申し上げたところでございますが、当社の打ち上げ執行にかかる人員という意味で申し上げますと、全体で2割から3割程度の人員を減らしております。減らした中身は、例えば技術者に関しましては、従来は現場で技術評価に参加していたものをテレワーク、遠隔地でデータを見て評価する形に切り替えたり、あるいは当社としても打ち上げ視察のお客様の招待を全て取りやめたりしておりますので、それに必用とされている人員も削減してございます。これらによりましてトータルで打ち上げに関係する人員といたしましては2割から3割程度減らしております。
辻本・鈴木さんの答えに被るが、寂しいというか街中の雰囲気がやはり違うなというところはあります。ただ打ち上げが近くなって、地元の方にも今までと変わらぬ応援をしていただきまして、今も南種子町の街中には成功をお祈りしますという旗をたくさん出していただいておりますし、顔なじみの方には大変だけど頑張ってと声をかけていただいております。そういった意味で後我々がやるのは、着実に作業して打ち上げて成功してミッションを完遂させる、そういったことを進めることが全てだと思います。残る作業をしっかりやっていきたいと思っています。感染に対してどのような削減をしたかについては、これも三菱重工さんの回答と被るが、作業を実際にしていただく方はなかなか減らせない所はありました。ですので、違う作業が2つありますと、通常であれば作業者を交代するところを同じ方にしていただくことで往来の数を減らすということは多少ありました。それから技術評価をするような、メーカーにしろJAXAにしろ、そういった設計にあたる方につきましては、工場あるいは事業所でスタンバイしていただきまして、テレワーク・テレビ会議で対応してもらうといったことをしております。それから作業の節目節目でイベント的なデータレビューをしっかりやる会議があるのですが、そういったところはメーカーさんにしろJAXAにしても基本的にはテレワーク対応で、種子島に来るのは本当に必要最小限という対応をしてきました。減らした割合の正確な数字は把握していないが、トータルで2割程度は往来の数値で減っていると思っています。

読売新聞・新型コロナウイルスの対策で人員を削減したとのことだが、それにより作業が難しかったところなど具体的なエピソードがあれば教えていただきたい。
鈴木・人員を減らした点に関しましては、作業なりデータ評価に影響の無い範囲で実施しておりますので、これに関しては特に問題無く品質に影響することなく進めることができたと思っております。難しかったエピソードとしては、種子島は現在でも地域の皆様の懸命の努力によってコロナウイルスの感染者がゼロという状態を続けていらっしゃいます。我々は県外から出張で作業に来ている人間が多いものですから、我々がコロナウイルスに感染してしまうということは、他県からコロナウイルスを種子島に持ち込んでしまうということになって、それは地域の方々に本当に大きなご迷惑をおかけすることになると考えておりましたので、なんとしてでもこれを起こしてはならないという事で、知恵を絞って懸命に努力して参りました。その一環としましては、厳しい外出自粛ということもしてきておりまして、私自身を含めて外で食事をするようなこともしておりませんし、日頃の買い物に関しても、なるべくまとめて必要なものを急いで買ってすぐに宿に帰るというような事をすすめてきました。これは隊員1人1人も同じ取り組みでやってきておりまして、そういう意味では日頃楽しみにしている地域の方々との飲食店でのふれあいも、随分と長い間ご無沙汰しております。その点に関しましては今でも難しいというか、非常に苦労を続けております。
辻本・作業そのものにつきましては、支障のないように人員配置を行っておりましたので、作業上の苦労というのは正直ありませんでした。皆さんはテレワークをやっておられるので感覚的に判ると思いますが、インターネットが普及しているので、やってみるとさほど全体的に業務を行うのに支障がないことが多い所はありました。感染者を出さないということに非常に苦労した。それと出張で来ている人の健康管理、大丈夫かと気にするのは、ここ2ヶ月は気苦労としては正直ありました。体調が悪そうだと聞くと皆で大丈夫かなという雰囲気になる。私共は打ち上げが終われば「こうのとり」としては種子島では後片付けのようなものだけですが、今年度このあといろいろ打ち上げが予定されていますので、このタイミングで感染者が出てしまいますと、このあとの打ち上げそれから地元との長年の良好な関係といったところに影響しますので、「こうのとり」の関係者でそういうことが無いようにといった所は細心の注意をはらって対応してきました。

読売新聞・H-IIB9号機とHTV9の開発費はいくらか。
辻本・開発費という言い方が正しいか判りませんが、「こうのとり」9号機の機体の製造費は、過去号機と変わらず140億円です。
鈴木・H-IIBの関しましては申し訳ありませんがこの場での回答は差し控えさせていただきます。

朝日新聞・7号機と8号機の延期の話があったが、あらためてロケット打ち上げの難しさをお伺いしたい。また三菱重工のロケットビジネスの強みとしてオンタイムや成功率が海外競合に比べて高いとのことだが、どういったことで違いが出ているのか。
鈴木・ロケットの難しさですけども、7号機や8号機で経験してきたように、ロケットの打ち上げというのは、ロケット本体のみならず設備も加えた非常に大きなシステムの集大成として打ち上がっていく。そのうちほんのひとつ、一箇所でも重大な不適合があると打ち上げが実施できなかったり失敗してしまったりする。この点が非常に難しいところと認識しています。従いまして、ひとつひとつの不適合を確実に処置して、水平展開も広く行い、二度と類似の不適合を起こさないように丁寧に処置していくということが、次のロケットの成功に繋がっていくのではないかと考えております。

朝日新聞・他社との違い
鈴木・他社の内容をしっかり理解している訳ではございませんので、そこは明確にお応えできないが、私共としては丁寧に対応していくことを積み上げていくことで少しずつ信頼性を上げていけるのではないかと考えています。

朝日新聞・オンタイム率や成功率を支えるものはどういうところなのか。
鈴木・私どもとして大切だと思って一生懸命取り組んでいるところが、ひとつひとつの不適合に対して真摯に取り組んで同様の不適合が二度と発生することの無いように消し込みを行って次の号機にしっかり反映していくところだと認識しております。

日経新聞・今回の9号機で最後になるが、次のH3という新しい世代が控えているが、これまでノウハウをどう活かすのか。また「こうのとり」の特徴4点は全て初めてのことなのか。またそれが人の生活に直結するものがあるか。
鈴木・H-IIBとしては今号機が最後となります。今後H3の開発が進められていきますが、H-IIBに限らずH-IIA/H-IIBでこれまで培ってきた製造のノウハウ、不適合を出さないための技術評価のやり方、あるいは開発の後戻りが無いように進めていくための方法など、確実にこれまでの成果をH3に反映していきたいと考えております。
辻本・4のISSの運用を支える物資の輸送で、ISS向けバッテリやタンクや飲料水などは、これまで何度も輸送をしております。1〜3は類似のものはあったが基本的には初めてになります。我々の生活に近いところと言いますと、3の宇宙メデイア事業でありますとかアバターとか、こういったところは輸送したあと準備していただければ一般の方にも何らかの形で楽しんでいただける形になると考えております。また船外物資のISSバッテリにつきましては、日本のリチウムイオン電池の技術を使っておりますので、そういった意味でも我が国、我々の技術がISSという国際プログラムに協力している形のひとつではないかと思っております。

NVS・もし天候などで延期した場合、打ち上げ時刻は1日あたりどれくらいずれるのか。
辻本・打ち上げ時刻はISSの軌道の状況に応じて「こうのとり」側から決めさせていただいております。具体的には打ち上げ日が1日後ろに来ますと、打ち上げ時刻がおよそ24分早くなります。

以上です。

No.2351 :H-IIBロケット9号機の打ち上げ日時について
投稿日 2020年5月19日(火)15時50分 投稿者 柴田孔明

H-IBロケット9号機の打ち上げ予定日時は2020年5月21日午前2時31分00秒(JST)となりました。
機体移動は2020年5月20日午前10時30分頃に行われる予定です。

なお新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今回は現地での取材を行っておりません。

No.2350 :試験後のSRB-3供試体 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年3月23日(月)01時20分 投稿者 柴田孔明

燃焼試験後に試験場内からの撮影が行われました。
供試体にイプシロンとH3のロゴが描かれています。


No.2349 :SRB-3点火時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年3月23日(月)01時19分 投稿者 柴田孔明

SRB−3の地上燃焼試験。点火は2020年2月29日11時00分(JST)。
報道は大崎海岸からの撮影で、SRB−3は直接は見えませんでした。


No.2348 :SRB−3地上燃焼試験 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年3月23日(月)01時13分 投稿者 柴田孔明

 H3ロケットに使用される固体ロケットブースター・SRB-3の燃焼試験が2020年2月29日11時に種子島宇宙センターで行われ、同日に報道向けに試験の公開と概要説明が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
JAXA 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 骰s

(※配付資料から抜粋)
・H3ロケット開発試験の実施状況
 ・エンジン燃焼試験をはじめシステムレベルでの検証・統合を行いつつ、適宜設計へフィードバックをかけ、最新の状態で設計を維持。

 ・以下のサブシステムは、認定を終了。
  ・主な構造系(エンジン部、段間部等の一般構造部、タンク等)
  ・第2段エンジン LE−5B−3
  ・第2段姿勢制御装置の一部(主要コンポーネント)

 ・試験機については、設計の確定を確認しつつ順次製造中。
  ・概ね完成 … エンジン部、中央部等の一般構造部

 ・合わせて、多様化する国際打上げ市場(全電化衛星や小型コンステレーション衛星の台頭等)に対し、柔軟・迅速な対応を検討中。
  ・本プロジェクトの開発計画と平行し、第2段エンジンの複数回着火による複数軌道への投入、複数衛星搭載用アダプタ等の追加開発をはじめとする発展性の検討。

 ・2020年2月現在、これまで取り組んできた主な試験。
  1.第1段エンジン(LE−9)実機型エンジン燃焼試験:完了
  2.固体ロケットブースタ(SRB−3)実機大燃焼試験(認定型モータ・その1):完了
  3.SRB−3分離試験(その1):完了
  4.電気系最終システム試験:完了
  5.フェアリング分離放てき試験:完了
  6.第1段厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT):実施済・評価中
  7.LE−9認定型エンジン燃焼試験:実施中
  8.SRB−3実機大燃焼試験(認定型モータ・その2):本日

 ・以下の試験に向け準備中
  9.SRB−3分離試験(その2)
  10.第2段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)

 ・新製の射点設備(移動発射台、運搬台車)については、種子島で機能試験中。

・SRB−3のコンセプト

 ・SRB−Aの開発・運用実績に基づく技術を最大限活用し、シンプルな仕様・運用を追及することでH3が目指す打ち上げの柔軟性・高信頼性・低コスト化を同時に実現。
 ・イプシロンロケットの1段にも適用する計画であり、シナジー効果を追及。
  (※SRB−Aと似ているが設計は全面的に刷新)

 ・主要開発項目
  ・結合・分離方式の簡素化(結合点及び火工品の削減)
  ・モータケース他、各構成品の低コスト化/軽量化。
  ・H3とイプシロン共通で有効な推進特性の確立。
 
 ・結合方式
  ・SRB−Aは米国の既存モータをベースとして設計。ブースタとして使用するに際し、モータには推力伝達に伴う集中荷重の大きさに制約があった。推力伝達ポイントを2点とし荷重分散・平滑化を図るとともに、分離運動の成立性、結合構造にかかる質量を考慮しスラストストラット方式を採用。
  ・SRB−3ではモータケースを新たに設計、開発に取り組んでおり、集中荷重を前提に設計を行い、シンプルな結合方式を実現。

 ・TVCシステムの概要(イプシロンロケット) ※Thrust Vector Control(推力方向制御)
  ・ロケットは、計画した経路を飛行するために推力方向制御を行っている。
  ・イプシロンロケットでは、可動ノズルの方向をTVCシステムで制御することにより第1段燃焼中の推力方向制御を行っている。
  ・TVCシステムはイプシロンロケット固有の機器となることから、新規に開発を行っている。
  (※H3に適用されるSRB−3は推力方向制御機能を持たない固定ノズル)

  ・TVCシステムは、駆動用電池と2個の電動アクチュエータ及び可動ノズル等から校正される。
  ・QM2地上燃焼試験では、燃焼中にノズルを駆動しTVCシステムの設計の妥当性を確認する。

・地上燃焼試験の目的
  ・PM地上燃焼試験(2018年8月)
   ・詳細設計で確定したSRB−3仕様により、着火特性、燃焼特性、断熱材特性を取得。詳細設計の妥当性を評価し、必要に応じて実機設計に反映。
  ・QM1地上燃焼試験(2019年8月)
   ・地上燃焼試験フライトと同等仕様にて試験を行う。ノズルは固定ノズルを適用。
  ・QM2地上燃焼試験(本日)
   ・PM及びQM1地上燃焼試験で確認したモータ設計妥当性の再現性を確認する。
   ・イプシロンとのシナジー開発として、イプシロンロケット1段モータ用TVCシステムの設計妥当性についても評価する。
   ・あわせてプルーム輻射等のモータ環境条件を確認する。

・地上燃焼試験の概要
 ・試験場所:鹿児島宇宙センター固体ロケット地上燃焼試験場
 ・燃焼時間:100秒程度
 ・試験仕様:詳細設計結果として定義したSRB−3仕様。一部燃焼試験特有の仕様あり。
 ・実測項目:推力、燃焼圧力、各部温度・歪・加速度など計約320点。

・試験実施条件
 ・風向・風速
  ・ノズルから噴出される固形物(アルミナ粒子)が、JAXA敷地外の陸地へ落下することによる第三者への影響を極力避けるように設定。
   風向:大勢の人が屋外に集まるイベント等がある方向への風向でないこと。
   風速:3m/s以上。3m/s未満の場合はトレンドを監視して風向が安定していること。
   ※ガスが滞留しないように。
 ・雨
  ・3mm/h(試験場エリア)未満とする。

 ・試験時刻
  ・11時00分〜17時00分の間とする。
  ・作業安全の観点で、日没までに主だった試験後後処置を行える時間設定とする。


・質疑応答
南日本放送・従来型から軽量化したとのことだが、重量としてどれくらいか。
岡田・H-IIAのブースタから大きく軽量化したイメージは無い。数値については後ほど。

フリーランス大塚・今日の可動ノズルは、どれくらいの角度で動かすのか。能力としては最大何度動かせるのか。
井元・ノズルそのものはかなり広く動かせる。5.5度くらい。今回は横に何回か振るが、最大で5.5度くらい。正弦波応答などを確認する。ゆっくり振るだけではなくて、もっと早く振ることも考えています。

フリーランス大塚・現行のイプシロンロケットと、今回の可動ノズルにはどういった違いがあるか。
井元・ノズルそのものは、今のSRB−Aと今の強化型1段のフレキシブルジョイント(FJ)の技術を基本的に使っている。その点に関してはさほど変更はありません。一方で電動アクチュエータの方は、今までコントローラが別の箱だったが、電動アクチュエータの箱にそれぞれ配分して、電池とアクチュエータだけで構成されている。かなりシンプル化、信頼性向上といったものを図っています。

フリーランス大塚・前も電動だったのか。
井元・電動です。

フリーランス大塚・LE−9も電動アクチュエータになったが、共通点と違う点など。
岡田・電池もアクチュエータも最終的に同じ製造メーカーなので設計基準などは共通化しています。ただ発生する力などの違いはあるので、設計そのものは別々になっています。

フリーランス大塚・パワーが全然違うと考えて良いか。
緒方・そうです。

東京とびもの学会・イプシロンとのシナジー開発だが、2段目以降に変更を加える予定はあるか。
井元・今まさにそれを考えているところで、その計画を練っているところです。もうすぐ皆さんの前で報告できることになると思います。

東京とびもの学会・今回のSRBはイプシロンとのシナジーということで当初から開発が発表されていたが、それぞれのロケットに制約はあったか。
岡田・あまり無いと思います。考えないといけないことは、最初の基本設計のところで推進薬量をどのくらいにするとか、燃焼のパターンをどういう風にするかとか、これは全く飛び方の違うものを、全く同じ作り方でやるということはよく議論しました。最良の妥協というか、いい結果にはなっていますので、お互いそれを使っていくという意味では、もうちょっとこうしたいといったことはH3側では特に無いです。
井元・我々も推進薬量を増やすなど性能向上が図られておりまして、我々の飛行パターン、1段の推力パターンも考慮して設定しておりますので、非常に良いモーターになったのではないかと思います。

宇宙作家クラブ松浦・推力パターンはイプシロンとSRB−3が同じということか。
岡田・そこがミソです。同じです。

宇宙作家クラブ松浦・製造時に同じ中子を使うということか。
岡田・そうです。

宇宙作家クラブ松浦・分離機構などは今回の試験に含まないが、この部分はイプシロンとSRB−3とで力の受け方が違うと思うが、作り方は一緒か、それとも違うのか。
井元・そこは全く違います

宇宙作家クラブ松浦・モーターケースとノズルなど基本的な部分は同じで、力を受ける部分が別設計ということか。
井元・ノーズコーンはイプシロンでは必要ありませんので、モーターケースの上で1段と2段を繋ぐ段間部を結合しています。モーターケースの下の部分(後部筒)も、イプシロンは電動アクチュエーターを搭載しないといけないので、その関係上別物になっています。

宇宙作家クラブ松浦・SRB−3のピンの部分はどうなっているか。
岡田・ピンがつくのは結合構造の上の辺り。この構造はモーターケースとは別の部品です。構造体を含めてモーターとは別途結合するというイメージです。

宇宙作家クラブ松浦・結合のための構造体はモーターケースの下で結合しているのか。
岡田・この構造体はSRB−3の下の部分で繋ぐことになっています。イプシロンもモーターケースと繋ぐ部分は共通です。

宇宙作家クラブ松浦・カップの中に入っているようなものか。
岡田・そうです。

NHK・今日で一定の目処という形になると思うが、SRB完成まで道のりはどんなものか。
岡田・大きな山場は今日だと思っています。モーターと構造は別途に開発を進めています。構造で言えば、前方部分(SRB上部)の強度試験、後方部分(SRB下部)の構造試験など、残りの部分をこなしていくイメージです。既に着手はしているので徐々に進めていきます。(SRB−3の)先端のノーズコーンに関しては開発は終わっております。分離部は年度末から来年度にかけて適切なところを見計らって分離試験をもう一度行う。構造の試験を上と下で別途に進めています。これらが終わると開発完了です。
岡田(後で追加)・最終的にはモーターケースを付けた形で全体の強度試験は最後に行います。

NHK・イプシロンへの転用の狙い、メリットは何か。
井元・メリットはイプシロン側に多くあります。いろんなメリットがあるが、開発コストですとか効率化ができる。別々に作るよりは効率的でありますし、我々の技術といいますかH3の技術とイプシロンの技術を融合させるといったような効果があると思います。なおかつ、イプシロンというのは年間打ち上げ機数でいうとH2やH3より少ないので、量産効果が出ますので、価格の面でもメリットが出る。その他にもたくさんありますけど、大きなところで言うとそういう形になると思います。

NHK・今回のSRB−3が反映されることで、イプシロンは強化型とか名前が変わったりするか。
井元・強化型ではない新たなロケットと言う形で、名前も新たにつけたいと思っています。

NHK・それは何号機からか。
井元・まだ決まっていません。5号機は少なくとも強化型です。今検討している開発計画が定まった段階で何号機から適用するかといったところを決めていく。

NVS・アクチュエーター2つでXYを駆動しているようだが、写真では45度寝ているので、左右に振るだけでX軸もY軸もテストが出来るということか。(※地面に対しての位置)
井元・そうです。両方の駆動が確認できるということです。それとSRB−Aでも横に振って地燃をやってますので、デフレクターとか実績の範囲内でということもあります。

NVS・SRB−3だとノズルは固定で、今回のものは見えない部分にフレキシブルなパーツが入っているとのことだが、どこまで共通化されているか。固定パーツをフレキシブルなパーツに交換するだけなのか。
井元・基本はその通りです。固定しているものに対してフレキシブルのところを付け替えるというイメージをもっていただくと良いと思います。

東京とびもの学会・推力測定を先端に取り付けた器具で行うとのことだが、取付治具の中でモーターが多少自由度をもって動くことができるのか
岡田・(SRB−3は)吊ってあります。かつ、モーターは燃焼を始めると内圧がかかってばーんと伸びる。縦方向でガチガチに固定して吊ると門(治具)に対して力が入る。そこをうまく逃がす仕組みも作っていて、モーターケースは伸びながら、かつ縦方向、横方向、そして推力が同時に測れるように工夫してあります。

東京とびもの学会・消火装置は炭酸ガスなどを吹き込んで消火するのか。
岡田・そうです。液化炭酸ガスのタンクローリー車からノズル消火装置を介して送り込む形です。


・燃焼試験結果概要説明

・登壇者
JAXA 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
JAXA 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 骰s
JAXA H3プロジェクト ファンクションマネージャ 名村 栄次郎
IHIエアロスペース プロジェクトマネージャ 岸 光一

・試験について(岡田)
 おかげさまで無事試験が終了しました。まずは安全に試験ができたということで、一同ほっとしているところです。

・試験結果の概要(名村)
 一言で言うと大成功と言っていいと思います。
 ほぼ予測に合った結果が得られています。

  試験日時: 2020年2月29日(土)11時00分点火
  試験場所: 種子島宇宙センター 竹崎固体ロケット試験場
  天候: 曇り
  風: 2.7 m/s 
  気温: 19.1度C

 ・試験結果(※速報的な参考値)
  燃焼時間: 107.5秒 (予測値108.6秒)
  最大推力: 2173kN(予測値2145kN)
  最大燃焼圧力: 11.0MPa(予測値10.9MPa)
 (※点火から20秒くらいまで推力が高く、その後は少し落ちる燃焼パターンになっている)

・試験結果の補足(岸)
 今回のSRB−3は3回目の地燃になります。モーターの推進系としましては、燃焼圧力と推力のプロファイルも前回の試験とほぼ一致していて良好な結果が得られました。今回初めてイプシロン用のTVCを適用した試験になりましたが、こちらにつきましても舵角指令への追従性等、良好な結果が得られておりまして、非常に良い結果が得られた試験になりました。

・質疑応答

東京とびもの学会・実測と予測値のずれは想定範囲内ということか。
岸・はい、そう思っていただいて結構です。

南日本新聞・今回320点のデータを集めるということで、これは前回と同じか。またシナジー開発でイプシロンにって重要なデータは何か、どのような数値が出れば成功なのか。
岸・前回は300弱だったと思います。今回はTVCが付くということで、その分が増えている。
井元・シナジー関連データですが、いちばん重要なのは舵角です。舵角指令に対する追従性、これがいちばん重要でして、当然舵角そのものの大きさ、周波数応答特性のデータを評価した結果の制御性能、特性といったところをきちんと評価することが重要でして、そのデータがとれたということが重要です。

南日本新聞・良好なデータがとれたが、(H3は)2020年の打ち上げか、それとも2020年度の打ち上げか。SRB−3が最初につくのは何号機か。
岡田・まだ開発が残っているので安心はしていません。大きな一歩を踏み出したというのは事実だと思います。打ち上げ時期につきましては、我々が決めることが出来るものではなくて、我々が約束させていただいているのは2020年度のうちに打ち上げるという所までは決まっているので、その中でいろいろな関係方面と調整しながら、またプロジェクトの進捗具合を考えながら決めていきたいと思っています。ですから、まだ2020年度とご理解いただければと思います。固体ブースターが最初につくのは1号機です。2本つきます。

NHK・認定型は打ち上げ本番と同じと思って良いか。
岡田・そうです。基本的に認定というのはフライトさせるものと同じ型式もので認定するものです。ただ一般論ですが、何か軽微な修正事項があれば、それはそのまま修正して打ち上げて良いと判断されれば、それは修正する可能性は残っています。

NHK・これで追加の試験は必要ないということか。
岡田・どうでしょうか、さきほど名村が大成功と言ってしまいましたので、私も実はそれを聞いて安心したところです。たぶんその声からすると良かったのかなと思います。まだ私もデータを見ていないです。

NHK・試験機に搭載するSRB−3は、いつごろから製造するのか。
岸・製造を担当するIHIからお答えさせていただくと、試験機の製造は一部もう開始をしております。モーターケースの方ですね。これは製造を開始しておりまして、今回の結果を受けまして推進薬の工程に移行する計画になっております。

NHK・いつ頃完成させるスケジュールになっているか。
岸・SRB−3につきましては、秋口にH3に引き渡す計画で進めております。

NHK・ノズルで舵角指令の追従性というのは、向きを制御できるかどうかという理解で良いか。
井元・例えば左に5.5度向きなさいという事に対して5.5度をちゃんと向いているかどうかですね。あと周波数特性ということで、例えば正弦波みたいなものを入れて、それに対する追従性、周波数特性といったものを評価することになります。

NHK・今回は事前の説明だと5.5度くらいとのことで、何秒くらい動かしたのか。
井元・断続的に駆動していまして、感覚的に言うとトータルで半分くらいです。

南日本放送・打ち上げと同じ設計のものを使った最終試験という位置付けで良いか。また大成功という話を聞いての感想と今後への意気込みをお聞きしたい。
岡田・試験計画としては今回うまくいけば、それが最終試験です。ですのでこれからデータをしっかり評価して、追加の試験がいらないかどうかというのは、いま断言できるものではないが、先ほどの声を聞いた限りではこれで終わるだろうなと思っています。だいぶ長く開発を続けてきて最近感じるのは、ひとつひとつの仕上がりを実感してきている。秋田で3機の1段エンジンを束ねた試験も終わりましたし、そういった意味でひとつひとつが終わり、それが大きなシステムに徐々に統合されていっているところを凄く実感しているところです。これからそこを確実に仕上げていきたいと思っています。

宇宙作家クラブ松浦・今回の試験を受けて、シナジーイプシロンの方向性はどうなるか。
井元・今の強化型まで開発してきたイプシロンだが、それに対して国際競争力をもたせるところが一番大きいです。これまでの開発の中で軌道投入精度ですとか環境条件といったものは立派な物ができたと思っているが、それ以外のところで、例えば価格ですとか、あとは固体燃料ロケットの最大の特徴であります運用性といいますか、射場での取り扱い性が液体燃料ロケットに比べて比較的簡素である、こういったところの特長を最大限に活かすべく、そこで国際競争力をもつということを考えているところです。

宇宙作家クラブ松浦・サイズと打ち上げ能力とか固体の柔軟性というものは考えているか。例えば惑星間軌道への投入場合、固体は格段がある程度待てるが、そういったことをどう考えるか。
井元・サイズは基本的にSRB−AとSRB−3の違いですので、大きく変わることはないと考えています。一方で軽量化とか多少の性能向上、例えば推進薬量を増やすとかで性能は上がりますので、そういったような観点で多少というか検討中ですが、少し上がる方向で考えています。大きなサイズ感としては変えないということです。惑星関係ですが、基本的に固体の3段式に「はやぶさ」を打ち上げたときのようなキックステージを搭載して打ち上げるということなんですけども、イプシロンでもキックステージといったようなところを、宇宙研の方々と一緒に考えておりまして、そういったようなところで柔軟性を持たせる、そういうことも考えています。

フリーランス大塚・先日田代でBFTが順調に終わったが、今後の試験のスケジュールについて、種子島でやるCFTはいつぐらいになるか。またそのときはエンジンが2つなのか3つなのか。
岡田・時期は本当にまだ調整中です。できるだけ早くやりたいです。というのは発射のリハーサルも兼ねますので、また手直しも少しあると思います。またそのあと本番の試験飛行ということで、出来るだけ早くやりたいという思いがあるので、今何とも申し上げられないが、とにかく慌てず急ごうというと考えています。ただ東京オリンピックより後かなと思います。エンジンは試験1号機に合わせます。従ってエンジンは2基です。

東京とびもの学会・SRB−3関係ではこのあと第2回の分離試験があるが、この時に使う供試体はどんなものか。今回のような実機を模したものか。
岸・これから第2回の分離試験を行う予定ですが、供試体としてはモーターの部分はダミー品を使用します。質量特性を合わせた形でダミー品を使用するが、上下の分離スラスタの構造体部分はFMと同一品を使用することになります。

NVS・CFTについて、エンジン3基型の試験を実施する予定はあるか。
岡田・まだ計画としてどの程度のものにしたら良いか、少し先の話にしているので、判断を待っているところです。やった方がいいかなという思いと、2基形態の試験の結果を見て判断するところもあると思うので、まだ決めかねています。

NVS・H2Bロケットでの発射台火災を受けて、H3用の発射台で何か変更はあるか。
緒方・直接的には無いですね。発射台とロケットの取付関係が違うので、原因となる酸素が当たらないのが基本です。ただ、ああいったことがあると我々は水平展開という言葉をよく使っているが、思わぬことが無いかという意味では、やはり色々な審査とか、そういう目でも見てもらうとか、そういった事は考えています。直接的には無いです。

・重量について。
岡田・大体ですが、固体の推進薬を除いた構造部分について、H2A(のSRB−A)だと10.5トンくらい、SRB−3は9.5トンくらいで、10%くらい軽くなっています。軽くなっている要素は様々あるが、代表的なところで言うと、シナジーを活用したモーターケースそのものの軽量化と、結合構造がシンプルになっている部分でだいぶ軽くなっています。その他に各部の構造をIHIエアロスペースさんが随分工夫してくださって各部が軽くなっているところもあるので、トータルで10%程度の軽量化は出来ています。

以上です。


No.2347 :H3ロケット厚肉タンクステージ燃焼試験(その2) ●添付画像ファイル
投稿日 2020年2月19日(水)18時59分 投稿者 渡部韻

燃焼試験の翌日はテストスタンドが公開されました。後方の2基のLE-9は2基形態での試験でも用いられたエンジン、手前のノズルスカート補強用リブの数が少ないものが3基形態の試験で新たに加えられたエンジン(#1-3)で、こちらだけ3D造形製造法で作られた噴射器が適用されています。(他の2基は機械加工)

ちなみに各エンジンのノズル上部に取り付けられたフラフープのような配管は、吹き返しでエンジンを傷めないように下に向けて窒素ガスを吹くためのもの。



●燃焼試験の結果について(2月14日)

非常に良い試験が出来たと思う。データレビューは三菱を中心に行っていくが、今日私の方からは映像を紹介したい。3Dプリンタを使っているエンジンは外見から3Dプリンタを使っているかどうかは見えないが、ノズルのリブが少ないのが特徴。映像ではまずガス処理用のトーチが点く。その後20秒ぐらいするとエンジンがスタートしフルパワーに上がる。フルパワーに上がって6〜7秒でスロットルダウンするが1つだけ違う。タイミングの違いはエンジンの下の方に出る冠状のマッハディスクの動きで見て取れる。これは意図的にスロットルダウンを行っている。またカットオフの時も1つだけズレてカットオフしている。停止の時はキャントといって全てのエンジンが外側に向いて止まる。エンジン燃焼中にジンバル(首振り動作)を細かく行う。エンジンが震えるように動いているのが見て取れると思う。(岡田)

エンジンの立ち上げとカットオフの際には最初に水素の雰囲気から立ち上げて酸素を混ぜていく。カットオフの際には酸素を減らしてから水素を減らしていくことで温度が急激に変化しないようにしている。最後エンジンが止まったのにモヤモヤ赤い炎が見えるのは水素の未燃ガスをトーチで燃やしている状態で、最初見た時にはこのエンジンはこの赤い炎が大きかったのでもしかして火が出たのかと思ったが、最近は大分見慣れてきた。(岡田)

ノズルの出口が大分赤かったと思うが、これは恐らくスロットリングの際にノズルの中の流れの勢いが弱まり剥離した影響だと思われる。(岡田)

ほぼ計画通りデータを取ることが出来た。エンジンの作動点、燃焼圧やポンプの回転数はほぼ事前の予測通りの結果だったことが昨日のクイックレビューで確認出来た。3台のエンジンのうち1台のタイミングをずらしてスロットリング、カットオフを行ったが3系統のエンジンの連成等についてはクイックで確認出来ている。詳細については現在並行的にデータレビューを行っているので、フェーズを踏んでデータ分析を進めている。(新津)

●以下、質疑応答

◆(点火やカットオフのタイミングについて)試験では目で見てわかるほどズラしていたが、実際にこれほどズレることはなくて、ここまでズレても大丈夫というテストなのか(大塚)

→基本的にエンジンの立ち上がりやカットオフの信号自体は全て同時に入れるので、今回のような1秒のズレは極端な例。

◆ズラした意味は打上げ時のモーメント見る為なのか(松浦)

→モーメントに関しては、機体に対してどういった影響が出るか計算出来るが、供給系はタンクの底で共通しているので、ズラしたことによっておかしな連成や、過渡的な応答が出ないかといった観点で問題がないか確認する為のもの。


No.2346 :H3ロケット厚肉タンクステージ燃焼試験(第8回)その1 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年2月19日(水)18時51分 投稿者 渡部韻

2020年2月13日に三菱重工業・田代試験場にて通算8回目のH3ロケット厚肉タンクステージ燃焼試験(Battleship Firing Test; BFT)が行われました。(※一部敬称を省略させていただきます)

BFTはH3ロケットの実機を模擬したタンクとLE-9エンジンを組み合わせて燃焼試験を行うもので、タンクは液体水素が70立方メートル(実機は460立方メートル)・液体酸素が30立方メートル(実機は170立方メートル)と実機よりも小さいものの、各タンクからエンジンに伸びる配管(フィードライン)の本数や長さ等は実機に合わせています。

これまでにLE-9エンジン2基形態の前半シリーズが2019年1〜4月に計4回、半年ほどかけて形態変更を行った後、前半シリーズで用いたエンジン2基に新たなエンジンをもう1基加えたエンジン3基形態の後半シリーズが2019年9月から(2月13日の試験を含めて)計4回行われました。

田代試験場ではこの後同じテストスタンドを用いてH3ロケット第2段の実機型タンク燃焼試験(Captive. Firing Test; CFT)が行われ、また第1段は第2段と組み合わせた状態で種子島宇宙センターにてCFTが2020年度中に行われる予定です。


●H3開発ロケット状況(2月13日試験開始前)

登壇者:
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門
H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
岡田匡史


BFTは非常に大規模な試験で、準備も相当な時間がかかっている。三菱を中心に今日の夜中からずっと作業を進めていて、ロケットの発射の準備をしているような感覚。準備は概ね順調に進んでいてトラブルも殆ど無いが、燃料の充填のスピードが遅いようなので、トラブルというわけでは無いが試験開始時間が後にずれる恐れがある。

H3の姿、形は現在運用中のH-IIA/Bと同じだが一回り大きいロケット。能力的にもH-IIA/Bを十分カバー出来るラインナップで特徴的なのは固体ロケットブースター無しでも飛ぶことが出来る。固体ロケットブースターを2本・4本と組み合わせたり、1段エンジンの数を切り替えることで非常に幅広い打上げ能力をカバー出来るように開発している。今日の試験では新型エンジンを3基用いる。

開発計画は2014年頭からプロジェクトの前段階(プリプロジェクト)が始まり大分経った。時間的には山登りに例えると8合目。前半は主に設計を進め、中盤は設計を基づいて色々なコンポーネント、機能を確認し、現在は最終段階に入りシステムを統合している。非常に急な坂道を登っているような感覚。

現在はエンジン試験を始めとして(システムの)検証や統合をしつつ、フィードバックすることで設計も最新の状態に維持している。いくつかのシステムについては認定、これでフライト出来るというところの設計まで終わっている。これだけ大きなシステムになるとスピード感のあるものとゆっくり進んでいるものと色々まちまちで、それらを統合していくのは結構難しいが、その中でも構造系、第2段エンジンなどはトップランナーとして認定を終えている。そういったところを見計らいながら試験機の製造も行っている。

H3ロケットは何年か前にコンセプトを作ったが、それ以降世の中は大きく変わっているので、まずはH3ロケットをきちんと作った上で、だとは思っているが、多様化する国際宇宙機市場に柔軟に対応していくロケットにしたいと思っている。

固体ロケットブースターについては合計3回燃焼試験を計画していて、そのうち2回が試験を終えている。間もなく3回目の試験を行う予定。

固体ロケットの分離試験では、実際の大きさのダミーをコア機体から分離する模擬を行う試験を2回行う予定で、そのうち1回は終わっていて、間もなく2回目を行う。

人工衛星を搭載する高さ16mのフェアリングの分離試験は計1回の予定で12月17日に無事終了し、現在データを評価しているところ。

三菱重工の工場の中で各社が作った電気のパッケージをつないで行う総合的な試験も完了している。構造系の試験やタンクの製造も順調に進んでいる。

その他、種子島ではロケットを追尾する為の局は完成、現在のブロックハウスに相当する発射管制を行う「LCC」も場所を変えて完成、現在機能点検を行っている。大分コンパクトになった。また去年の5月には発射台とそれを動かす台車の走行試験を行っている。

今日行うBFTが終わると、そのスタンドを用いて第2段の実際のタンクとロケットエンジンを結合した燃焼試験を行うが、それについての供試体は既に管制している。

今後の予定に関して、資料の表の時間軸は、わかりやすく書いているので気にしないで欲しい。大体こういう試験がこんな関係で行われるということを説明しようと思うのだが、LE-9に関しては認定試験をまもなく行う。固体ロケットブースターのQM2(燃焼試験)と分離試験は同じぐらいの時期に行われる。設備については来年度かなり組み合わせた状態での試験を行うが、三菱がH-IIA/Bロケットの打上げの合間を見計らいながら試験を行う難しさがある。そして第2段CFTや、1号機に搭載するLE-9の燃焼試験。

片や三菱重工を中心に1号機の機体各部の製造と機能の試験を行っているが、2020年度のある時期にはこれらを全て持ち寄って発射台にロケットを組み上げて燃焼試験(1段CFT)を行う。また発射のリハーサル的なことも行い、最後には試験機の打上げに臨むというのが全体の流れ。

●H3ロケット厚肉タンクステージ燃焼試験の概要説明(2月13日試験開始前)

登壇者:
三菱重工業株式会社 宇宙事業部
新津真行


今日行うのはエンジンとそれに関係する機体の部分を組み合わせて行うシステムレベルの試験で、エンジンはフライトと同じ物を使い、エンジンの推力を受ける構造体、制御するバルブや推進系コントローラ、エンジンの操舵を行うコントローラなどの制御機器、タンクの出口からエンジンまで推薬を供給するフィードラインに実機相当のものを使っている。エンジン単体では確認出来ない、機体と組み合わせた性能を確認するのが試験の目的。
試験は1年前の1月下旬に最初の試験を行い全8回を予定、今日行うのが8回目の試験。

試験スタンドの説明。スタンド上部に設置され、エンジンに伸びる3本のフィードラインを持つものが液体酸素(LOX)のタンク、LOXタンクとエンジンの間にあるのが液体水素のタンクがある。フィードラインの長さを実際の機体と合わせる必要があるので、この大分昔に作られたスタンドの天井目一杯まで使ってタンクを設置している。

H3ロケットではエンジン2基形態と3基形態を切り替えて能力に応じた打上げを出来ることが大きな特徴。8回の試験のうち、2019年1月から4月に行われた前半シリーズ計4回ではエンジン2基形態の試験を行い、半年弱のコンフィギュレーション変更期間を経て2019年10月からの後半シリーズ計4回ではエンジン3基形態の試験を行っている。

後半シリーズ1回目の試験は新たに適用するコンポーネントの機能・性能を早めに確認する為に3台目のエンジンを待たずに2基形態で燃焼試験を行い、その後3台目のエンジンを取り付けて3基形態の試験を計3回行い最終回が今回の燃焼試験。

LE-9エンジンは出力を100%と2/3程度に抑えた66%の2段階に変えられるスロットリングが可能。スロットリング機能は飛行中に加速度が出過ぎないようにしたり、速度が出すぎて動圧が大きくなるので適正なレベルにコントロールする為に用いる。

本日の試験はエンジン3基形態で、フライトで想定される条件で定常性能確認を行う。飛行中は様々なばらつきがあるので、3基形態の3回の試験の中で、色々なフライト中のばらつきや加速度の違いなど様々な条件をカバーする為に、試験ごとに条件を少しずつ変えながら試験を行い、あるいは同じ試験で再現性の確認を行うなどいろんな目的を織り交ぜて本日の試験を計画した。試験は燃焼秒時が40秒程度、推進薬が少なくなったことを検知して(depletion)エンジンを停止する。

●以下、質疑応答

◆40秒のうちスロットルダウンするのは何十秒後か、3基バラバラなのか、または同時にスロットルダウンするのか(山根)

→着火後13秒からスロットルダウンを行う。100%のデータはこれまでの試験で大分蓄積できているので、今回の試験はスロットリングの性能を取るところに重点を置いている。実際のフライトでスロットルダウン後に上げることはしないので、スロットルダウンしたら(試験終了まで)そのまま。タイミングは3台同時ではなく意図的に1台だけ少し遅らせてスロットルダウンさせる。バランスを崩すことによって他の方に影響しないかといった評価を行う。見た目ではわからないので後ほどデータを分析する。(新津)

◆今回試験する3台の中に3D造形製造法を用いたものは含まれるのか(宇宙作家クラブ)

→3基目(#1-3)が該当する(岡田)

◆実際のフライト時に1段エンジンは何秒程度の燃焼を予定しているのか。そのうちどのあたりのタイミングでスロットルダウンを行うのか(テレビ朝日)

→燃焼時間は大体300秒程度。スロットルダウンを行うのは割と後半の短い秒時、100秒に満たない程度。(新津)

◆前半(2基形態)の試験の際には6〜8月に後半の試験を行う予定だったと思うが、どのような理由で後ろ倒しになったのか(大塚)

→3機目のエンジンに時間がかかったので、この完成を待っていた。完成前に確認出来ることもあったので、実際には3基つくところの1基が無い状態で燃焼試験を一度行った。2基形態と3基形態ではエンジンの付くところが違い、3基形態では正三角形の頂点にエンジンが付くが、その中の1個が無い非対称な燃焼試験を行った。(岡田)

◆本当は3基で行う予定だったが、エンジンを待つと時間がかかるので2基で行ったということか(大塚)

→その通り。(新津)

◆後半1回目に追加したコンポーネントとは何か(大塚)

→追加というか、開発の途中で最初のBFT試験シリーズから仕様を変えたタンクの加圧バルブ、フィードライン、フィードラインの脈動を吸収するためのポゴサプレッサの仕様など最初の形態と変えた部分があったので、そこの適用を確認した。(新津)

◆エンジン点火は3基同時なのか、時差があるのか、同時だがシステム的に順番が決まっているのか(NVS)

→今回は同時に着火する。個性があるのでその中でのばらつきはあるが意図したばらつきではない。今回は停止の時のばらつきはワザと模擬するが、前回の試験では起動のところをワザとズラして試験を行った。(岡田)

◆エンジンに個性があるということだが、定常運転の際にも領収試験等の結果を見ながら点火時期を調整するのか(NVS)

→むしろ個性があることを承知した上で、同時に火を点けて結果的に多少(着火が)ズレてもちゃんと飛んでいくような設計にしている。(岡田)

◆150トンの推力とあるが具体的にはH-IIAに比べてどの程度優れているのか(読売新聞)

→公称では1基当たり1.4倍。3基形態の場合はH-IIBロケットのエンジン2基に対して1.5倍のエンジン数なので1.5倍の1.4倍で2倍近い力が出る。(岡田)

◆今回の試験で使うエンジンの「実機型」とは(読売)

→実機型とはエンジニアリングモデル、つまり技術試験用のモデル。前段階で行った要素的な試験に対して実機に近いものなので「実機型」と呼んでいる。「飛んでいくのと同じものなのでは」と連想するかもしれないが、それは今後試験を行う「認定型」が該当する。認定型は設計の型式(かたしき)を認定する為のもの。(岡田)

◆では「実機相当エンジン部構造体」や「実機相当推進薬供給配管」等の「実機相当」とは(読売)

→こちらの実機は本当に飛んでいくものとしての「実機」を指している。(岡田)
→エンジン部構造体などは並行してフライトに供するものの強度試験を行っていて(試験に用いるものも)それと同じ設計図で同じ作り方をしている。フライトまでに時間があるのでもしかすると仕様が多少変わるところはあるかもしれないが、基本的には飛ぶものと同じものと考えてもらって構わない。(新津)

◆2タイプのエンジンを認定とあるが(松浦)

→タイプ1のエンジンは実績を積んだ機械加工の噴射器を使う。また開発の中でターボポンプの共振領域が見つかったので、それを避けるような運転を行う。非常に手堅くいく。こちらを試験機1号機で使う。(岡田)

→タイプ2のエンジンは3Dプリンタを適用、また共振領域は無くす方向で開発している。こちらは試験機2号機での使用を目指している。(岡田)

◆現状でエンジン性能・定格はどのように設定しているのか。特にシーレベル・真空中推力および比推力について。(松浦)

→シーレベルの数字は記憶が定かではないので後ほど回答させていただくが、真空中推力は150トン出ている。色々な作動状態があるので、認定の中で色々な領域においてそれが出せるのか確認していかなくてはならないが、エンジンの基本的な能力としては150トンが確認されている。比推力は422秒を確認している。まだ最後のチューニングをしなくてはならないが、実機型においては我々が目指した実力を出せることが確認出来た。(岡田)

→エキスパンダーブリードなので推力・比推力が出せるのか聞かれたと思うが、思ったより……というと語弊があるが、出ましたね、というところ。基本性能としては出せている。(岡田)

◆エンジンは将来的にはタイプ2に統合するのか(松浦)

→する。(岡田)

◆40秒に使う液酸・液水の量を知りたい(山根)

→タンク容量は液体酸素が170立方メートルで重量22トン、液体水素が460立方メートルで重量4トン。

◆今日の試験の解析結果が出るのはいつ頃か(NHK)

→この試験の実施がちゃんと出来たか本当にクイックな確認を行うのが試験終了2時間後。翌日か翌々日ぐらいに初期の評価が終わる。最終的にはもっと丁寧な評価を行う必要があるのでこれに1週間〜10日。特に今回はこのBFTを終えるかどうかという判断も別途あるので、何段階にも確認を行う必要がある。(岡田)

◆場合によってはもう1回(BFTを)行う可能性もあるのか(NHK)

→可能性はゼロではない。試験目的が達成出来なかった場合はその可能性もある。(岡田)

◆田代で行うH3の試験は今回が最後か(NHK)

→この試験終了後同じスタンドを使って第2段のCFT (Captive Firing Test) を行う。BFTでは厚肉タンクを使っているが、CFTでは実際に飛ばす機体と同じタンクを用いる。この試験で使ったものは試験後持ち帰り、必要なものを交換して2号機の2段機体として使う予定。(新津)

◆3D造形の部品を使ったエンジンは3基目で正しいか。(読売)

→一番最後に取り付けた3台目のエンジンに3Dプリンタで作った噴射器が付いている。(岡田)

◆付いているものと付いていないものが混じっている理由は(読売)
→エンジンの開発は段階的に進めていて、実機型のエンジンでは毎号機少しずつ進化させながら試験を行ってきた。3Dプリンタは新しい技術なので最後のエンジンでようやく適用出来たので、種子島で試験したものをこちらに運びこんだ。(岡田)

◆最終的には3基いずれにも3Dプリンタで作った部品が入ることになるのか(読売)

→先ほどの質問にもあったようにタイプ1・タイプ2という2つのエンジンを認定する予定だが、タイプ2には3Dプリンタで作った部品を適用する。


●燃焼試験終了後(2月13日)

14時40分頃無事着火し、目標に近い約38秒の燃焼を終えた。水素の枯渇を検知して停止したのでこちらも予定通り。まだこれからデータをくまなく見ないと何とも言えないが、試験は予定通りいったのではないか、なによりも安全に試験が出来たことを我々は喜んでいて、燃焼停止と共に管制室の中では拍手が起きた。(岡田)

試験で1年、準備期間を含めると2年に近い一つの大きな山を越えたことで、試験隊の隊長、設計部隊の隊長と握手を交わしてきた。打上げまで1年あるが、まずは一つ大きな山を越えたのではないか、今日は頂上がきれいに見えた気がした。(新津)

●以下、質疑応答

◆酸素はどの程度残っているのか(山根)
→今回は同時にゼロになるという事前評価を行っているので、恐らく殆ど残っていない。(新津)

◆燃焼時間が予定より2秒短かったが(山根)
→見たところエンジンがおかしな燃焼をしていたわけではなさそうなので、これからデータをしっかり見たい。

◆今後のレビューにおいてポイントとしてはどういったところを見ていくのか(大塚)
→今回どういう条件で燃えたか、あらかじめ設定したポイントがあるので、再現性の確認、ばらつきの確認など計画したデータが取れているか確認していく。(新津)

◆管制室に何名程度いたのか。外の音は聞こえたか(山根)
→50人。エンジン2基形態よりも3基形態の方が迫力のある音だった。(岡田)

◆見学場からではスロットルダウンの様子がわからなかったが、管制室の中ではどうだったか(NVS)
→わからなかった。データを見ているのでスロットリング正常のコールが鳴ったところで初めて分かった。(岡田)

◆3基形態の2回目、3回目の様子が知りたい(大塚)
→2回目の燃焼試験の時に思ったよりも早く燃焼試験が止まったが、原因は設備の問題だったのですぐに改修を加え、前回の試験では非常に良いデータが取れた。試験なので何もなかったらかえって面白くない訳だが、色々なデータが取れたので、それを設計にフィードバックしながら進めていきたい。3基形態の同時着火は日本初だと思う。我々にとっても未知の領域だったので非常に大きな進歩だったと思う。(岡田)

◆未知の領域だが案外スムーズにいった(大塚)
→案外スムーズにいった。(岡田)







●燃焼試験の結果について(2月14日)

非常に良い試験が出来たと思う。データレビューは三菱を中心に行っていくが、今日私の方からは映像を紹介したい。3Dプリンタを使っているエンジンは外見から3Dプリンタを使っているかどうかは見えないが、ノズルのリブが少ないのが特徴。映像ではまずガス処理用のトーチが点く。その後20秒ぐらいするとエンジンがスタートしフルパワーに上がる。フルパワーに上がって6〜7秒でスロットルダウンするが1つだけ違う。タイミングの違いはエンジンの下の方に出る冠状のマッハディスクの動きで見て取れる。これは意図的にスロットルダウンを行っている。またカットオフの時も1つだけズレてカットオフしている。停止の時はキャントといって全てのエンジンが外側に向いて止まる。エンジン燃焼中にジンバル(首振り動作)を細かく行う。エンジンが震えるように動いているのが見て取れると思う。(岡田)

エンジンの立ち上げとカットオフの際には最初に水素の雰囲気から立ち上げて酸素を混ぜていく。カットオフの際には酸素を減らしてから水素を減らしていくことで温度が急激に変化しないようにしている。最後エンジンが止まったのにモヤモヤ赤い炎が見えるのは水素の未燃ガスをトーチで燃やしている状態で、最初見た時にはこのエンジンはこの赤い炎が大きかったのでもしかして火が出たのかと思ったが、最近は大分見慣れてきた。(岡田)

ノズルの出口が大分赤かったと思うが、これは恐らくスロットリングの際にノズルの中の流れの勢いが弱まり剥離した影響だと思われる。(岡田)

ほぼ計画通りデータを取ることが出来た。エンジンの作動点、燃焼圧やポンプの回転数はほぼ事前の予測通りの結果だったことが昨日のクイックレビューで確認出来た。3台のエンジンのうち1台のタイミングをずらしてスロットリング、カットオフを行ったが3系統のエンジンの連成等についてはクイックで確認出来ている。詳細については現在並行的にデータレビューを行っているので、フェーズを踏んでデータ分析を進めている。(新津)

●以下、質疑応答

◆(点火やカットオフのタイミングについて)試験では目で見てわかるほどズラしていたが、実際にこれほどズレることはなくて、ここまでズレても大丈夫というテストなのか(大塚)

→基本的にエンジンの立ち上がりやカットオフの信号自体は全て同時に入れるので、今回のような1秒のズレは極端な例。

◆ズラした意味は打上げ時のモーメント見る為なのか(松浦)

→モーメントに関しては、機体に対してどういった影響が出るか計算出来るが、供給系はタンクの底で共通しているので、ズラしたことによっておかしな連成や、過渡的な応答が出ないかといった観点で問題がないか確認する為のもの。


No.2345 :飛行するH-IIAロケット41号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2020年2月11日(火)12時09分 投稿者 柴田孔明

飛行するH-IIAロケット41号機