投稿日 2020年11月27日(金)22時59分 投稿者 柴田孔明
2020年11月27日午後より、H-IIAロケット43号機/データ中継衛星1号機・光データ中継衛星の打ち上げ前プレスブリーフィングがリモートで行われました。
回線の状態により聞き取れなかった部分がありますがご了承ください。
(※一部敬称を省略させていただきます)
・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 野田 浩絵
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 JDRSプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 高畑 博樹
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司
・打ち上げ日時について
三菱重工業株式会社は、データ中継衛星1号機・光データ中継衛星を搭載したH-IIAロケット43号機の打上げについて、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせいたします。
打ち上げ日:2020年11月29日
打ち上げ時刻:16時25分(日本標準時)
打ち上げ時間帯:16時25分〜17時49分(日本標準時)
打ち上げ予備期間:2020年11月30日〜2021年1月31日
・ロケットについて
H−IIAロケット202型(※SRB−Aが2本の標準的な機体)
4Sフェアリング
・打ち上げ準備状況
・11月25日(Y−3作業)
1段/2段推進系・電気系・機構系点検作業
・11月26日(Y−2作業)
火工品結線
2段ガスジェット推進薬充填
・11月27日(Y−1作業・予定)
電波系統点検
推進系最終クローズアウト
機体アーミング
機構系/アンビリカル離脱系最終準備
射点/貯蔵所系設備準備
・11月29日(Y−0作業・予定)
機体移動
射点設備系最終準備
ターミナルカウントダウン
・打ち上げ制約条件についてはこれまでの標準的なH−IIAと同じ。
・気象状況について
今日明日は風が強いが作業の支障になるものではない。
打ち上げ時間帯は曇り一時晴れ。雲が多い予報だがロケットの打ち上げに支障のある気象条件にはならないと評価しています。
・質疑応答
読売新聞・打ち上げシーケンスで衛星分離の時間帯は何分後か。静止軌道に到達する日数はどれぐらいか。
鈴木・分離は打ち上げ後30分くらいを予定しています。軌道については分離の時点で静止トランスファ軌道に分離されます。
読売新聞・30分後に分離されたときの高度は何キロか。
鈴木・分離時の軌道は約300キロです。
読売新聞・最終的には三万六千キロの高度に到達するという認識で良いか。
野田・はい、静止軌道三万六千キロでございます。
読売新聞・何日後に到達するか。
野田・ロケットの投入精度にもよると思いますが、一般的には10数日かかるということでございます。
時事通信・打ち上げ時間帯の16時25分〜17時49分がこの日のウインドウで、このいちばん頭で打つということか。何らかの理由で遅れた場合、この時間帯の中であればどこでも打てるのか。
鈴木・最初の時間に打つかという質問に関してはイエスでございます。その時間に打てるように準備を進めています。トラブルや諸般の事情で打ち上げ時間を見直す場合は、打ち上げ時間帯の中で打ち上げることになります。この中でどこでも打ち上げて良い訳ではなくて、打ち上げ可能な詳細な時間がありますので、それに合致するように打ち上げてゆくことになります。
時事通信・雲が多くなるとのことだが、氷結層の心配が無い雲か。
鈴木・打ち上げ時刻付近で予想されているのは、比較的低層の薄い雲と伺っております。氷結層を含む雲が出てくると打ち上げに影響を与える可能性がございますが、現在予報されている雲はそれよりも温度帯が高い雲、かつ薄い雲ということで、打ち上げに支障のある雲では無いと評価しています。
NHK鹿児島・機体移動の時間はいつか。13時間前とかその辺りか。
鈴木・機体移動は通常のH−IIAの標準的なシーケンスとだいたい同じ時間帯を考えています。詳細な説明はこの場ではご容赦願います。
NHK鹿児島・13〜14時間前とかその辺りか。
鈴木・概ねそうです。
NHK鹿児島・データ中継衛星が初めて運用されることで、情報収集の体制がどのように広がっていくと期待されているか。また10機体制になるのは何年度を目指しているか。
野田・これまでは情報収集衛星が地上を通過する時のみやりとりが出来たが、データ中継衛星の導入によって、データ中継衛星から見える位置にある時間帯には地上とのやりとりが出来るようになり、地上と通信可能な時間帯が大幅に増加して即時性の向上やデータ伝送能力の向上に資するものと考えております。10機体制については、現状の宇宙基本計画の行程表では令和9年度としておりますけれども、最新の状況といたしましては衛星に必要な機能・性能ですとか、開発スケジュールを精査しておりまして、現在のところ令和10年度以降となる見込みでございます。
NHK鹿児島・通信可能な時間が増えることと即時性の向上について、安全保障面や災害面で具体的なイメージがあれば。
野田・詳細について具体的には申し上げられないが、これまでですと地上局の上空に来るまで待たなければならなかったが、それよりも短い時間で地上に画像データ等を送ることが出来るということで、即時性が向上するということでございます。
NVS・もし打ち上げ日が変更される場合、1日につき何分くらい打ち上げ時刻がずれるか。
鈴木・詳細な説明はご容赦願います。これまで説明させていただいている打ち上げ時間帯である16時15分から18時15分の間で、延期の場合も打ち上げを行うとご理解いただけたらと思います。
日本経済新聞社・基本的なことで、成功と失敗の場合のH−IIAの成功率を確認したい。また三菱重工として今回の43号機で初めてのところはあるか。今回の光通信衛星は一般の人にどう関係してくるか。
鈴木・H−IIAに関しましては今回が43回目の打ち上げになりまして、今回成功するとそのうち42機が成功となりますので、成功率としては97.7%ということになります。失敗した場合の成功率は計算してこなかったのでご容赦ください。機体について特に大きく変更した所はございません。標準的なH−IIAであるとご理解ください。
野田・光通信に関してはJAXAさんのミッションの方で、今回は2つのミッションが相乗りをしております。当方は情報収集衛星のデータ中継で、情報収集衛星の中にデータ中継機能が導入される。これまでより、より早く必要な情報を日本政府としてとることが出来ることになりますので、それが国民の皆様にも裨益すると考えております。
日本経済新聞社・JAXAでの位置付けをお伺いしたい。
高畑・今回は光データ中継衛星ということで、これは私共が過去に「こだま」というデータ中継衛星、「きらり」という光データ通信衛星を打ち上げておりまして、両方の技術を融合させた形で新しい光データ中継衛星というものの技術実証と運用実証を行うものでございます。
日本経済新聞社・数字的にこういったところを改善したというものはあるか。
高畑・端的な数値で申しますと、「こだま」のときはデータ中継が240Mbpsだった。今回の光データ中継衛星は1.8Gbps、7倍以上も伝送速度を上げた。
南日本新聞社・データ中継衛星が軌道投入されたら、いつから使うか。
野田・一般論として打ち上げられた人工衛星は運用開始前に所要の確認作業に一定の時間を要することになりますので、データ中継衛星も一定の期間を要すると考えています。
南日本新聞社・具体的には。
野田・一概には言えないが、概ね数ヶ月はかかるという感覚でご理解いただきたい。
南日本新聞社・光通信だが、データを中継衛星は受け取るだけか、地球観測衛星とやりとりをするのか。
高畑・実際には光データ中継衛星を打ち上げて、低軌道の観測衛星で観測されたデータを、光データ中継衛星経由で地上にデータを伝送することでございまして、具体的には来年度以降打ち上げが予定されているALOS3(先進光学衛星)に光機器を搭載して、そのALOS3と光データ中継衛星の間でデータの受け渡し、そのALOS3のデータを地上に降ろす実証を行っていくものでございます。
南日本新聞社・データ中継衛星側からすると、データを地球観測衛星から受け取る形になるのか。
高畑・メインは受け取る側だが、送る方もできます。
南日本新聞社・地上局には渡すだけになるのか、受け渡しができるのか。
高畑・受け渡しは出来ます。実際には観測されたデータを光データ中継衛星で受けて地上に降ろす、それからALOS3に対してコマンドを地上から光データ中継衛星を介してALOS3に届けるということでございます。
以上です。
(※上の投稿時間はサーバー内時間のため、実際の投稿時間と異なる場合があります。このサーバーでは日本時間にも夏・冬時間を適用しているようです)
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