宇宙作家クラブ
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No.2409 :イプシロンロケット5号機/革新的衛星技術実証2号機 打ち上げ前ブリーフィング
投稿日 2021年9月30日(木)00時20分 投稿者 柴田孔明

 2021年9月29日午後、イプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機の打ち上げ前ブリーフィングがリモートで開催されています。なお打ち上げの現地取材は感染症対策のため鹿児島在住の記者に限られ、宇宙作家クラブはリモートでの取材のみとなります。また一般見学も肝付町の町民で申し込んだ方のみとなっています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXAイプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
JAXA革新的衛星技術実証グループ長 金子 豊

・打ち上げ日時について
 打ち上げ日時 :2021年10月1日(金) 午前9時51分21秒(日本標準時)
 打ち上げ時間帯 :9時51分21秒〜9時55分16秒(日本標準時)
 打ち上げ予備期間 :2021年10月2日(土)〜2021年11月30日(火)

・イプシロンロケット5号機の準備状況について

 6月5日:格段モータ射場搬入
 〜7月18日:格段作業
 全段作業
  〜8月31日:複数衛星結合
  9月8日:1段射座据付、1段/2段結合
  9月9日:頭胴部結合
  〜9月15日:全段点検
 9月23日:Y−0リハーサル
 10月1日:打ち上げ予定

  9基の衛星を太陽同期軌道に投入する。
  基本的に4号機と同じで、衛星の搭載数が違う。
  軌道高度は地表面から560km(4号機は同500km)
  本日(9月29日)の段階で準備は順調。

・搭載される衛星について

 9基の衛星、14の実証テーマを搭載。(前回4号機は衛星7基)
 (※9基で「革新的衛星技術実証プログラムの2号機」となる)
  1.小型実証衛星2号機(RAISE−2)
    マルチコア・省電力ボードコンピュータ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
    クローズドループ式干渉型光ファイバジャイロ 多摩川精機株式会社
    CubeSat用国産小型スタートラッカ 株式会社天の技
    3DプリンタX帯アンテナ 三菱電機株式会社
    軽量・無電力型高機能熱制御デバイス 東北大学
    冗長MEMS IMU 宇宙航空研究開発機構
  2.可変形状姿勢制御実証衛星ひばり(HIBARI) 東京工業大学
  3.複数波長赤外線観測超小型衛星 Z−Sat 三菱重工株式会社
  4.デブリ捕獲システム超小型実証衛星 DRUMS 川崎重工業株式会社
  5.多目的宇宙環境利用実験衛星 TeikyoSat−4 帝京大学
  6.宇宙塵探査実証衛星 ASTERISC 千葉工業大学
  7.速報実証衛星 ARICA 青山学院大学
  8.高機能OBC実証衛星 NanoDragon 明星電気株式会社
  9.木星電波観測技術実証衛星 KOSEN−1 高知工業高等専門学校
  (※分離は1→5→6→(近地点高度下げ)→3→4→2→9、7→8)

・質疑応答
共同通信・台風による影響はあるか。シーケンス上で打ち上げ成功と言えるのは1時間11分後のNanoDragon分離をもってで良いか。
井元・影響はありません。これまでも無く、これからも無い予定です。成功についてはその通りで、全ての衛星分離をもって成功と判断します。

NVS・何らかの理由で延期になった場合、打ち上げ時刻は1日あたりどれくらいずれるか。
井本・打ち上げ日がずれてもこの時間帯は変更ありません。

NHK・ロケットの打ち上げ費用はいくらか。衛星の分離時刻がリアルタイムで判るのか。9基の実証に関する所感と、宇宙実証の狙い、目指すところは何か。
井元・費用は安全管理や消費税など全部ひっくるめて58億になります。衛星分離は今回は北米局を準備しており、リアルタイムで確認する予定になっています。
金子・9基を打ち上げるということで、ようやくスタート地点に立ったということで、安堵とともにしっかりミッションを成功させなければいけないという気持ちでいっぱいです。このプログラムの狙いは、今回特にソニーさんなど今まで宇宙で開発したことがない企業が多く、そういったところが今回実証して、宇宙の裾野を広げることが2号機で実現して、日本の宇宙産業の競争力を高めていきたいと思っています。

MBC・高専で開発した衛星が搭載されるが、若い学生の作り上げた衛星が実際に宇宙で実証ができるということで、今回の機会をどういう風にとらえているか。
井元・これまで企業の方々や大学の衛星だったが、今回高専の方々の手による衛星、これは非常に期待しています。我々は宇宙への敷居を下げるということをある意味でキャッチフレーズとして進めてきたが、まさに高専の方々よって衛星が作られるのは画期的。そこにチャレンジしていただくこと自体が非常にありがたいですし、その成果を期待しています。どんな成果が出ようとも、そのチャレンジ精神はすばらしい。
金子・もともと革新プログラムは人材育成を大きな目的にしておりますので、今回は高専の生徒がひとつの衛星を作り上げたということで、非常にチャレンジングでありながら、こういった機会を我々が提供することができて良かったと思っています。もっともっと若い人にこういった機会を提供して、将来宇宙開発に携わる人をどんどん育てていきたい。そうすることによって日本の宇宙開発が活発化するのではないか、その第一歩ではないかと思っています。

毎日新聞・イプシロンSの初号機打ち上げは2023年で良いか。今回は58億円とのことだが、イプシロンSはそれより大幅に安くなるか。6号機とイプシロンSの関係はどうなっているか。
井元・6号機は2022年度に打ち上げます。イプシロンSの初号機は実質7号機で2023年度の打ち上げを計画しております。イプシロンSは国際競争力を向上させるという観点で、今の強化型を適用した5号機からいろんな観点で進化させることを考えています。価格についてもそのひとつとなります。価格についても国際競争力を持つべく、IHIエアロスペース社に打ち上げ輸送サービス化する前提で開発している。そちらの力も借りて価格も下げることを考えています。

共同通信・資料の5号機の構造で100キロ級が2基、50キロ級が3基とあるが、今回は50kg級が4基載る。余裕があれば標準より増やせるということか。
井元・100kg級が2つ、50kg級が3つ、3Uサイズのキューブサットが3つという形になっている。今回、100kg級2つのところに100kg級と50kg級が1つずつという形になります。キューブサットの3Uの所に2Uと1Uの2つが入っています。そういった事で全部で9個という形になっています。ミッションの選定の関係で今の衛星の構成になっている。

共同通信・超小型衛星が4つで50kgなのか。
井元・上に搭載するRAISE−2が100kg級でいちばん大きい衛星になります。TeikyoSat−4(50kg級)をその横に搭載します。残りの50kg級は横向きに3つ搭載する形になっています。

共同通信・50kg級を(設計では3基のところを)4基搭載というのは余裕があるからではないか。
井元・違います。100kg級の衛星を搭載できるところに50kg級をひとつ載せるということです。

共同通信・コンポーネントとは装置とか機器という理解で良いか。
金子・機器ということです。

NVS・ランチャ旋回の時間は3時間前ちょうどの6時51分21秒に行うのか。
井元・時間が決まっている訳ではありません。大体そのくらいの目安で旋回するということになります。

NVS・3時間前より早く旋回する可能性もあるのか。
井元・そうです、可能性はゼロではありません。

JSTサイエンスポータル・革新的衛星技術実証の状況で、テーマ自体は通年で公募していて、今回は14のテーマだが、どのくらいの相談や公募があって、そのうちのどれくらいが搭載されて宇宙で実証が実現したのか。どれくらいの割合なのか。
金子・今回の2号機は33件の中から14テーマを選定しています。1号機の時も同じような割合になっています。

JSTサイエンスポータル・技術実証なので成功の確度よりチャレンジか、その辺りの選定基準はどうなっているか。
金子・基本的には革新的プログラムの目的に合っているかどうか。例えば産業化に資するものであるか。人材育成もあるが、目的に合っているかの視点がひとつあります。もうひとつは地上の試験である程度判るものではないかということで、絶対に軌道に持っていかないと判らないものを重点に置いて今回も選んでおります。もうひとつは、短いスケジュールで開発するので、チャレンジングなものとはちょっと離れるかもしれないが、技術的に最初から駄目なものは遠慮してもらい、短い時間でも成立性のあるものを選んでおります。大きくはこの3つの視点を基準として選んでおります。

フリーランス秋山・(主衛星の)分離機構が4号機の低衝撃型衛星分離機構から今回はLightbandに変更されているがその理由は何か。こういった調整の経験を重ねていって複数衛星搭載の機能が将来の競争力にどう繋がっていくのか。
井元・4号機の小型実証衛星1号機は200kg級であり直径が大きめで、今回のRAISE−2よりも大きめになりまして、低衝撃型衛星分離機構は600kg級の衛星を分離する能力があります。直径も1m弱ある。その関係で小型実証衛星1号機には最適な大きさ。一方で小型実証衛星2号機は100kg級になりますので直径が少し小さくなり、その関係で米国製のLightbandを使用いたしました。6号機も同じような形になると考えています。将来、国産で新たな研究が進んでいるようですので、いろんな中のものから選定可能となると考えています。信頼性が確保された上でコストも安いものを選ぶなど、いろんな選択肢があると思います。Lightbandを使っておりますがこれだけではなく、ヨーロッパのものや日本で研究しているものなど幅広いものの中から今後選定していくことになるのではないかと考えています。
 (※今回の主衛星の分離機構にはPlanetary Systems Corporation社製Lightband(R) 18.25inchタイプが使われている)

フリーランス秋山・将来、選べることがロケットの自由度や魅力になっていくのか。
井元・魅力というより普通のやり方です。どの衛星やロケットでも電気的・機械的インターフェイスが適合するものであれば自由度があるのが一般的です。

東京とびもの学会・革新的衛星技術実証2号機の範囲は、衛星だけを射すのか、分離機構も含むのか。
金子・基本的には衛星のみが革新的衛星技術実証2号機と考えています。分離機構はロケットの一部です。

東京とびもの学会・分離機構が複雑な形をしているということか。
井元・分離機構そのものは複雑ではなくLightbandなどシンプルな形だが、それを搭載する構造を工夫したということです。

NVS・打ち上げ時刻が秒単位で、ウインドウも3分55秒とシビアになっている要因は何か。
井元・ロケット側が衛星側の要求を満足すべく飛行解析を実施致します。いろんなバラツキを考えた上で解析するが、その解析の結果、衛星側が要求する軌道に入れるためにこの時間を設定しているところです。
金子・衛星の要求としては、打ち上げ投入軌道についてLSTと言っているが太陽地方時の9時30〜9時40分の間に入れてくださいという要求をしています。高度などの誤差も含めますと、ある程度の誤差で最悪値と考えて、その軌道が変化していくが、それが他の地球観測衛星の通信と干渉しないようにということで、LSTを9時30分〜9時40分という要求をしています。

NVS・それは全ての衛星か、それとも主衛星に限るのか。
金子・基本的には主衛星を中心に考えています。

MBC・台風の影響について、今回近いようだが強風域にかからなければ大丈夫なのか。どういった判断なのか。
井元・打ち上げの主な制約条件から、風と雨と雲、雷、高層風、こういった射点近傍の予報をもとに抵触する可能性があるかを解析し、今回の風と雨について予報では殆ど無い。高層風が多少気になるが、予想していだたいた風をもとに解析して、基本的に大丈夫という確信をもちましたので、それが大きく変更されることが無ければ安泰だと考えています。

MBC・強風域にかかるような事があれば影響するか。
井元・ランチャを旋回するときに整備塔の扉を開けての高所作業になります。この関係で最大瞬間風速が15m/s以上になると作業ができませんので、それが一番大きな制約になります。

以上です。

No.2408 :S-520-31号機打上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月28日(水)23時44分 投稿者 柴田孔明

JAXA撮影のS-520-31号機打上げ。
射点後方からの撮影で、近いために迫力があります。
(※パラボラの下の道路沿いからと思われます)


No.2407 :S-520-31号機について(2) ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月28日(水)23時40分 投稿者 柴田孔明

段間部に巻かれたコルクは分離機構が加熱して膨張するのを防ぐため。分離機構を持つ機体の場合は装備している。(※SS-520にもある)


No.2406 :S-520-31について(1) ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月28日(水)23時39分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ後、ノーズコーンを開頭する前にヨーヨーでデスピンをかける(3Hz→1Hz)。
これはノーズコーン開頭の際に回転が速いと巻き込む可能性があるため。
(※PDEによるデスピンは実験のためで機体の制御とは別)


No.2404 :展開型エアロシェルについて ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月28日(水)23時35分 投稿者 柴田孔明

※ぶら下がりで聞いたものです。
 ・薄膜フレアの材質はザイロン、内部の一部にポリイミド。
 ・どちらが先になって降下してもいいように表裏で同じ。(※両面にイリジウムとGPS)
 ・前回(2012年S-310-41)のものは落ちる方向が決まっていたので表と裏がある。
 ・前回(同)は中心部の金属の突起が大きいので加熱しやすい。
 ・インフレータブルリングの黒い塗装はシリコンゴムでアブレータのような作用。
 ・耐熱はザイロン部分が約500〜600度、接着剤を使用する部分で約300度のところもある。


No.2403 :観測ロケットS-520-31号機の打ち上げ後説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月28日(水)23時29分 投稿者 柴田孔明

 観測ロケットS-520-31号機は2021年7月27日午前5時30分に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。同日9時より打ち上げ後の記者説明会が行われています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
深宇宙探査用デトネーションエンジンシステム実証実験(DES)担当 名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授 笠原次郎
実験主任 JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 竹内伸介
回収システム(RATS)担当 JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 山田和彦

・観測ロケットS-520-31号機打ち上げ結果について(※ブレスリリースより・竹内)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2021年7月27日(火)に、「深宇宙探査用デトネーションエンジンシステム」の実証実験を目的とした観測ロケットS-520-31号機を内之浦宇宙空間観測所から打ち上げました。ロケットは正常に飛翔し、内之浦南東海上に落下しました。
 ・打ち上げ時刻:05時30分00秒(日本標準時)
 ・発射上下角:80.0度
 ・最高到達高度:235km(打上げ244秒後)
 ・着水時刻:打ち上げ476秒後。
 (※落下予想円のほぼ真ん中に着水)
 ・打ち上げ時の天候は晴れ、北東の風1.9m/秒、気温23.5度C

 これをもちまして、観測ロケットS-520-31号機実験は終了となります。今回の観測ロケットS-520-31号機打ち上げ実施にご協力頂きました関係各方面に、深甚の謝意を表します。

・DES実験のサクセスクライテリア達成状況(※笠原)
 ・ミニマムサクセス
  ・ロケットに搭載可能なDESの設計の確立と飛行実験の実施。
  →実験成功により達成を確認。
  ・デトネーションエンジンの作動確認。
  →RDEはテレメータ画像によって、PDEは圧力履歴によって達成確認。

 ・フルサクセス
  ・デトネーションエンジンによる推力発生の確認。
  →おおよそ500N(RDE速報値)の推力発生を確認、PDEも確認、現在詳細を解析中。
  ・デトネーションエンジンにおけるデトネーション燃焼状態の確認
  →テレメータ画像により達成確認(RDE速報)、圧力センサや振動センサでデータを取得、詳細解析中。

 ・エクストラサクセス
  ・デトネーションエンジンの推進性能の計測
  →軌道データ姿勢データを取得、詳細解析中

 我々デトネーションエンジン班として本実験に参加させていただき深く感謝しております。関係する皆様のご尽力に心より感謝を申し上げますとともに、竹内実験主任をはじめとするプロジェクトメンバーの方々、肝付町の方々、報道関係の方々、全関係の皆様にご支援いただき御礼申し上げます。ありがとうございました。

・RATS実験のサクセスクライテリア達成状況(※山田)
 ・ミニマムサクセス
  ・RATSの分離(畳まれて格納された状態からガスで膨らんで分離する)
  →RATSからのイリジウム通信により確認。ロケットと違う軌道で降りてきていることをデータ確認。テレメータ画像でも確認。

 ・フルサクセス
  ・RATSの洋上浮遊(空力加熱や荷重に耐えて緩降下し海上で浮遊する)
  →RATSからのイリジウム通信によりGPSデータを確認。
   着水点座標 北緯29度06分33秒、東経132度28分02秒。予想のほぼ真ん中に着水。
   着水後、海流と風で北西方向に時速約1.8kmで流されていた。
   
 ・エクストラサクセス
  ・RATSからの大容量データの回収。
  →RATSの回収成功。種子島に持ち帰った。中のデータ解析はこれから。

・質疑応答
毎日新聞・数字の確認で、打ち上げ後244秒で最高高度235kmに達したで良いか。
竹内・はい。

毎日新聞・実験はその(最高)高度の前後であったという表現で良いか。
竹内・上りにRDE、上り下りでPDE。

毎日新聞・実験は何秒間
笠原・RDEが6秒です。PDEが2秒を3回で、かけ算をすれば6秒になります。

読売新聞・着水は打ち上げから476秒後か。
竹内・ロケットの着水はそうです。
山田・RATSはだいたい2345秒です。

NHK・ネットで配信されているプレスリリースを紙媒体で配布してほしい。
広報・はい。

NHK・ミニマムやフルサクセスとあるが、打ち上げは成功で良いか。
竹内・ロケットの打ち上げは完全に成功です。実験達成、ミニマムとフルなどは実験それぞれの達成状況。ミニマムは確実に達成されています。フルも達成されるのはほぼ間違いない。実験は概ね良好に終了したと考えています。最後にエクストラにどこまで踏み込めるかなという感じだと思っています。

NHK・打ち上げ日の設定で苦労があったと思うが、打ち上げを終えての所感。
竹内・打ち上げ日のスロットが無くて、無事打ち上げられて本当に良かったと思っています。もし明日になってしまうともしかすると打てないかもしれない。少なくとも昨日の段階では風が悪くて打てないというデータはいただいている。今日ピンポイントで打ち上げられて良かったと思っています。実験も無事成功しているようで、これから学術成果にも期待できると思っています。
山田・DESもRATSもチャレンジングな実験だったので、それをしっかり取りまとめていただいて非常に感謝しております。

NHK・デトネーションは画像で確認できたので成功したと解釈して良いか。
笠原・画像も重要な検証の手段でございまして、燃焼している部位、特に二重円筒の非常に狭い空間で燃焼が実施されているところから、デトネーション燃焼に間違いないという検証の仕方と、あとそれ以外にも3つの方法がございまして、ひとつが圧力データの周波数解析、それから振動データの周波数解析、それと軌道の変化の仕方、この合計4点から間違いなくデトネーション燃焼で、かつどんな推力が出たかを確認することになります。

NHK・それらはロケットからデータが降りてきているという認識で良いか。画像もロケット側で撮影しているのか。
笠原・はい、ロケットで撮影していますし、RATSシステムによっても回収する予定になっています。

NHK・推力の500Nはどう評価したら良いのか。大きさの割に推力があるのか。
笠原・500Nはこのサイズのエンジンとしては非常に適正な推力だと思います。予定していた推力も500Nで、我々の予測値と遜色ない結果が得られたという評価を行っています。このサイズでこういう推力が確認できたということは、より大きなエンジンのステップに確実に駒を進めることができると、そういう風に考えています。

NHK・今後の展開。固体や液体のロケットとはまた違うロケットになるのか。
笠原・今回はガスの燃料と酸化剤で実験を行いましたが、次のステップはより密度の高い液体の酸化剤や推進剤で実験をすることを既に計画しています。今回ガスで行っていますが、この結果をより高密度な推進剤に適用することで、着実な進展、深宇宙探査用のキックモーターの実用化に大きく近づいたと考えております。

NHK・イメージとしていつぐらいの実用化を目指すのか。
笠原・宇宙科学研究所の工学委員会でワーキンググループを形成しながら研究を進めているが、だいたい5年のロードマップをひとつの基準として進めています。そういう単位で実用化の歩みを着実に進めていこうと考えています。もちろん早ければ早いほど良いが、そのための技術の蓄積というのも、やはりエネルギーも関係各位の協力も必要でございまして、そういうことをひとつひとつ進めていきたいと思っていますし、今日宇宙科学研究所の観測ロケットでこのような成果を得たというのは、非常に大きな一歩になると感じております。

NHK・ヘリコプターでの回収時刻はいつか。
山田・7時52分に回収完了の連絡を受けています。

不明・デトネーションエンジンの地上実験と、今回の宇宙空間での実験での違い。
笠原・まだ速報の状況で、正確に発言することは難しい。500Nは地上の試験でも出ていました。地上で試験した、またそれから予測した性能、そこからズレていることは現段階では無いと考えています。違いは、宇宙での実証となりますと振動や真空下での作動、それから熱環境、様々な環境の違いがございまして、それに十分耐えたデトネーションエンジンが成立したことを本日確認させていただいたと考えています。

以上です。


No.2402 :S-520-31号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月27日(火)06時54分 投稿者 柴田孔明

観測ロケットS-520-31号機は2021年7月27日午前5時30分(JST)に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。


No.2401 :エアロシェル ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月25日(日)13時26分 投稿者 柴田孔明

エアロシェルの模型(展開した状態)


No.2400 :実験機器の部分 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月25日(日)13時23分 投稿者 柴田孔明

RATSが入るノーズコーン部分とデトネーションエンジンが入るDES部分。


No.2399 :S-520-31号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月25日(日)13時21分 投稿者 柴田孔明

報道公開されたS-520-31号機。


No.2398 :観測ロケットS-520-31号機の概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年7月25日(日)13時19分 投稿者 柴田孔明

 観測ロケットS-520-31号機の報道公開と実験の概要説明が2021年7月24日の朝に内之浦宇宙空間観測所で行われました。なお打ち上げ日については天候不良のため当初予定の2021年7月20日から延期されており、概要説明が行われた翌25日の昼に2021年7月27日午前5時30分打ち上げ予定と発表されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

登壇者
実験主任 JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 竹内伸介
深宇宙探査用デトネーションエンジンシステム実証実験(DES)担当 名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授 笠原次郎
回収システム(RATS)担当 JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 山田和彦

・概要説明
 実験目的
 1.デトネーションエンジンシステムの実証。Detonation(爆轟)を利用した将来のロケットエンジン2種(RDE/PDE)の実証。
 2.観測ロケットデータ回収システムによる洋上データ回収実験。柔軟エアロシェルを装備した突入カプセル(RATS)回収により大容量実験データを取得する。

 ※ノーズコーン部分にRATSを搭載。またDES(SS-520ならば2段目に相当する部分)にRDE/PDEを搭載する。
 RATS:Reentry and Recovery module with deployable Aeroshell Technology for Sounding rocket
 DES:Detonation Engine System
 RDE:Rotating Detonation Engine
 PDE:Pulse Detonation Engine

・実験シーケンス
 打ち上げから約60秒:ノーズコーン開頭(時間は打ち上げ軌道による)
 ノーズコーン開頭から3秒:1段目モーター分離
 打ち上げから約120秒:RDE燃焼(6秒)
 同240秒:PDE燃焼1回目(2秒、despin)
 同270秒:PDE燃焼2回目(2秒、despin)
 同300秒:PDE燃焼3回目(2秒、despin)
 同340秒:突入カプセル展開

・デトネーションエンジンとは
 旋回型デトネーションエンジンでは、秒速2000m程度で伝播する。
 デトネーション波(衝撃波で圧縮+燃焼)にて燃焼を維持する。

・DES 実験の背景・目的
 ・デトネーションエンジンは、極めて高い周波数(1〜100khz以上)でデトネーション波や圧縮波を発生させることにより反応速度を格段に高めることで、ロケットエンジンを革新的に軽量化し、また推力を容易に生成し、高性能化する。

 ・デトネーションエンジンは、深宇宙探査用キックモーター、ロケット初段・2段エンジンなどの宇宙推進分野への応用が可能であり、現在、宇宙用高性能エンジンとして、実用化を視野に入れた研究が日欧米、アジアで活発である。

 ・本実験では、世界初のデトネーションエンジンの宇宙空間での性能実証を行う。ロケットに搭載可能なシステムを確立し、宇宙空間での推力発生及び、デトネーション燃焼状態の確認を行う。また、推力性能の計測を実施する。これらの実証実験を経ることで、深宇宙探査用デトネーションエンジンシステムの基幹技術を確立する。

・DES 実験のサクセスクライテリア
 ・ミニマムサクセス
 ロケットに搭載可能なDESの設計の確立と飛行実験の実施
 デトネーションエンジンの作動確認

 ・フルサクセス
 デトネーションエンジンによる推力発生の確認
 デトネーションエンジンにおけるデトネーション燃焼状態の確認

 ・エクストラサクセス
 デトネーションエンジンの推進性能の計測

・DES 実験の概要
 ・デトネーションエンジンシステム(DES)は、旋回型デトネーションエンジン(RDE)とパルス型デトネーションエンジン(PDE)の2つのエンジンから成る。
 ・2つのエンジンでは、共に推進剤はメタンと酸素ガスである。
 ・RDEは1基のノズルを機軸方向(真後ろ)に向けて配置し、PDEは2基のノズルを機軸直交方向に向けて軸対称に配置している。
 ・RDEの燃焼時間は6秒、推力は500 Nである。
 ・PDEはロール角速度を制御するため、パルス的に推力を出力する。2秒間(2秒の中で5回のパルス状のスラスト)を3回実施し、機体のロール速度を変更(減速方向)する。
 ・エンジン性能データ、デトネーション燃焼検証データはテレメータでダウンリンクされる。
 ・RDEの燃焼画像はビデオカメラで収録され、Ku-TV送信機により、リアルタイムでダウンリンクされると共に、回収システムRATS内部のUSBメモリに記録・保存される。

・RATSの概要
 ・観測ロケット実験データ回収システム(RATS)は、2012年に実施された観測ロケットS-310-41号機で実証実験を行った「インフレータブルカプセル」の技術を発展させ、観測ロケット実験で取得された大量の実験データを回収するための再突入回収実験機として開発された。
 ・RATSの大気圏突入カプセル部の特徴は、展開型エアロシェルという新しいタイプの大気圏突入システムである。RATSの展開型エアロシェルは、収納時は直径16cm程度の円筒内部に収まり、上空でガスを注入して展開すると直径1.2mまで広がる。軽量で大面積の大気圏突入機は、空気力を効率よく利用することができ、大気圏突入、緩降下、軟着水、海上浮揚の一連のシークエンスをシンプルなシステムで実現できる。

 ※RATSの主要諸元より抜粋
 分離高度:高度110km
 突入時の最高速度(推定):1.8km/s
 同最大マッハ数(推定):6.5
 同最大加熱率(推定):20kW/m2
 同最大減速度(推定):9G
 同最大空力荷重(推定):43kgf


・S−520−31号機の特徴

 ・長くて重い(SS−520並)
 機体全長:9617mm、頭胴部全長:3752mm、頭胴部重量:443.0kg

 ※参考
 ・23〜30号機の平均…機体全長8536mm、頭胴部全長:2671mm、頭胴部質量:295.9kg
 ・23〜30号機の最大:機体全長8857mm、頭胴部全長:3234mm(24号機)
 頭胴部質量:401.5kg(29号機)
 ・SS−520−3号機:機体全長9629mm、頭胴部全長:2130mm、頭胴部質量217kg、B2モーター+分離接手約1.6m、350kg
 DES部が大きく一部設備で一体運用が不可で、SS−520を参考に分割して運用する

 ・可燃ガスを搭載(観測ロケットでは初)
  ・DESの燃料としてメタンガスを搭載、酸化剤は酸素ガス。
  ・DES(及び充填装置)は高圧ガス保安法に準拠した設計。
  ・充填後は遠隔から24h監視、漏洩検知時には30min以内に対応。

 ・データ回収(S-520-22号機機体回収以来23年ぶり)
  ・大容量の実験データ(数百MB〜数GB)回収。
  (※テレメータ1.6MBbps 5minだと60MB程度)
  将来的には試料・搭載機器の回収を目指す。

・質疑応答
NHK・打ち上げ日程が決まっていないが、台風の影響なのか。いつぐらいを目処にしているか。
竹内・打ち上げ日が決まっていない理由は、おっしゃる通り台風が居座って風の状態が非常に悪くて打ち上げられない状態になっております。数日前までは明日(25日)に打てるかと思っていたが台風が居座っていて延びております。本日の11時に天候判断会議をしまして、その時点で明後日26日に打てるかの検討をします。天候が回復して打てそうとなれば26日に打ちたいと思っていますし、それが無理ならばまた先送りとなります。

NHK・26日に打てなかったらどうなるか。大きく先延ばしになるのか。
竹内・26日が駄目な場合は27日が狙えます。風次第ですので28日も視野に入れています。あまり延びると他の条件もあってまた延ばさないといけなくなる。

NHK・エンジンの説明に深宇宙のためとあるが、この深宇宙とは月とか火星などをイメージしているのか。デトネーションエンジンの肝は燃焼の仕組みなのか推進剤なのか。
笠原・深宇宙という言い方をさせていただいているが、おっしゃる通り月火星と、もっと遠くの木星土星といった、地球の重力圏を離脱して遠くの惑星や衛星等に行くためのロケットの最終段への応用を第一に考えています。深宇宙と明確に言ってしまうと木星土星などより遠くを想定されてしまうかもしれないが、ちょっと広めの定義として月や火星、木星土星それ以遠を含め宇宙科学の役に立てることを目指して開発してきました。2点目の肝ですが、これまでの燃焼器、ロケットエンジンもジェットエンジンもそうなのですが、流体と化学反応は流れと燃えるという現象が分かれていたが、このデトネーションはそれを一緒にしているところが最大の肝で、これまで人間がなかなかコントロールできないとても速い現象、爆発的な現象となって、コントロールが難しかった。この10年で随分と研究が進みまして、そういう激しい現象の応用が可能になってきた。ですのでこのような宇宙科学への貢献を実際に可能になって、それが本当に出来ることを実証するのが今回の目的であります。機能的には速くてしかも圧力を上げる、推力を生むためには高圧にしなくてはならないが、その高圧を推進剤そのものが生み出してくれるというところが最大の魅力であり、大きなポテンシャルがあると考えています。

NHK・実用化はされておらず、宇宙空間での実証は初めてなのか。
笠原・宇宙空間での実証は初めて。これは他国との競争になっていまして、今回これが出来ますと、非常に大きな注目を受ける。様々な学会で取り上げてきていますし、今後も日本がリードしていることを強くアピールしていきたい。世界初です。

読売新聞・言葉が難しいが、燃焼するときに出る衝撃波を推進力に活用するエンジンという理解で良いか。
笠原・衝撃波によって高圧高温になる。そのためにあっという間に燃えます。その燃えて高圧になったガスを噴射することで推力になります。

読売新聞・簡単に言うと衝撃波を推進力に変えるエンジンということか。
笠原・衝撃波を利用したエンジンです。

読売新聞・どんなデータを観測するのか。わかりやすい言葉で言うとどうなるか。
笠原・衝撃波そのものの観測には圧力センサを使います。圧力センサが速いスピードの衝撃波の通過を観測します。あとは全体を振動させるので、振動センサもついています。動画では波自体は見えないが、それに伴う間接的な高圧ガスの噴射を見て確実にデトネーションが起こっていたかを確認します。それ以外にやはり軌道が変わる。推力を得ることで運動が変わりますので、その運動のデータから推力が発生したかを観測します。

読売新聞・圧力や揺れや推進力のデータを集めるということか。
笠原・その通りです。

読売新聞・着水はどの辺りか。
竹内・打ち上げ場所(内之浦)と奄美大島に対して正三角形の位置くらいのところが落下(予想)の中心になっています。そこから半径120kmくらいの円内のどこかに落ちることになっています。

読売新聞・奄美の北か。
竹内・北東側です。

以上です。


No.2397 :SPring-8での「はやぶさ2」カプセル内粒子のPh2Kによる分析開始 (3) ●添付画像ファイル
投稿日 2021年6月26日(土)23時01分 投稿者 渡部韻

BL20XUにて解析されたサンプルは、得られた三次元形状を元に光造形3Dプリンタで作成されたホルダー(雌型)に固定され、大気から遮断されたグローブボックスの中でダイヤモンドワイヤーソーで手動で切断します。ホルダーにはあらかじめ試料の分割面にワイヤーソーが来るようガイド溝が設けられています。こうして分割された試料はPh2Kの複数の研究機関へ送られ、さらなる分析が行われます。

(写真はサンプルを加工する為のステージとワイヤーソー)


No.2396 :SPring-8での「はやぶさ2」カプセル内粒子のPh2Kによる分析開始 (2) ●添付画像ファイル
投稿日 2021年6月26日(土)23時01分 投稿者 渡部韻

BL20XUでは吸収コントラストCT(物質を透過したX線の吸収量の大小をコントラストとして捉える手法)や位相コントラストCT(物質により変化したX線の波の位相を用いて、吸収コントラストCTでは見えにくいX線吸収量の小さい軽元素のコントラストを高める手法)を組み合わせた高精細なCTで全体構造を把握し、その中から面白い部分(特徴点)をX線回折CT(試料に照射されて散乱したX線の回折パターンが物質原子や分子の配列状態によって異なることを利用した手法)などで抽出、試料の3次元形状、内部構造、および鉱物分布などの非破壊解析を行います。

(写真はBL20XUハッチ内と立命館大学総合科学研究機構 𡈽山明教授。指で示した先にVACNTでサンプルを固定したロッドが設置される。なおお名前の𡈽の字は土の右上に'がつきます)

本年秋口にはもう一つのビームライン・BL47XUにてnanoCTを用いた分析が行われますが、こちらは数百ミクロン以下の小さなサンプルに対して数十ナノメートルの空間分解能で鉱物・有機物、水の同定を行い、ナノスケールでの三次元可視化が予定されています。


No.2395 :SPring-8での「はやぶさ2」カプセル内粒子のPh2Kによる分析開始 (1) ●添付画像ファイル
投稿日 2021年6月26日(土)23時00分 投稿者 渡部韻

2021年6月20日、大型放射光施設SPring-8にてPhase2キュレーション高知チーム(Ph2K)による小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルの分析が始まりました。

(写真は国立研究開発法人海洋海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所・伊藤元雄主任研究員)

Ph2KはJAXAキュレーションチームと協働しながら「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルの大気非曝露環境下での試料配分容器や輸送・搬送機器、分析技術の開発とデータ取得、また「OSIRIS-REx」や「MMX」など将来やってくる地球外物質に資するような技術開発を目的に活動する、JAMSTEC高知コア研究所を中心に多研究機関で構成されたチームです。

Ph2Kではサンプルの大きさに応じて2つのビームラインを使用しますが、20日から23日にかけて行われる最初の分析では、数百ミクロンより大きな粒子の分析に適したBL20XUを用います。SPring-8に運ばれてきたサンプルは窒素環境下で多目的試料コンテナ(FFTC: facility to facility transfer container)から取り出され、ロッドの先に取り付けられたVACNTと呼ばれるカーボンナノチューブの「毛」が生えたシート上にファンデルワース力で固定、ポリイミドチューブを被せてテフロンテープで封止します。


No.2394 :試験後記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2021年4月7日(水)00時28分 投稿者 柴田孔明

 H3ロケット試験機1号機の極低温点検が2021年3月17日から同18日にかけて行われ、予定より遅れたものの1回目が実施されました。その後未明に予定されていた2回目については実施が見送られています。
 同18日午前に試験後記者説明会がリモートで開催されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます。写真提供はJAXA)

・登壇者
岡田匡史(JAXA 宇宙輸送技術部門H3プロジェクトマネージャ)
奈良登喜雄(三菱重工業株式会社宇宙事業部プロジェクトマネージャ)

・H3ロケット試験機1号機 極低温点検結果について(岡田・配付資料より)

・極低温点検の目的
 ・整備組立棟から射点にロケット/発射台を移動し、電気ケーブルや液体推進薬を充填するための配管を接続する。
 ・ロケットに液体推進薬その他ヘリウム等を充填し、極低温状態で機体の機能が健全に動作することを確認。
 ・併せて、機体と追尾局のアンテナとの電波リンクにより、機体の状態をモニタ。
 ・最終的に打ち上げのリハーサルとして、カウントダウンを実施(エンジン着火直前まで)。

・計画と実績の比較
 ・機体移動後〜推進薬充填前(計画より+約3.5時間)
  ・降雨による作業の中断。
  ・推進薬充填手順の調整(慎重なタンク加圧手順の採用、自動充填設定の見直し等)
  ・空調流量設定調整(機体内の空調配管等の圧力損失の考慮)

 ・機能点検終了後〜X-60分(計画より+約2時間)
  ・タンク加圧用のヘリウムガス系統の調整。
  ※上記以外にも、初めてのロケットと設備の組み合わせにより、作業手順を一つ一つ確認しながら進めたことにより全般的に時間を要した。

 ・カウントダウン2回目の取り止め
  ・カウントダウン1回目で良好なデータ取得が完了。
  ・天候の悪化予報(7時〜10時の間に発雷の可能性)
  ・排液までの限られた時間に優先度の高い特別検証を優先。

・検証項目の状況(ほぼ満点)
 ・計画していた検証項目を良好に取得し、技術評価の上試験終了を判断。
  今後取得したデータの詳細評価を実施。

 ・準備の機能:結果良好
  ・VABから射点への移動、電気ケーブルや配管の接続
  ・推進薬などの充填(※)
  →※今回の検証作業を通じて手順の見直し等の反映事項を数多く抽出。
  ・風観測と飛行プログラムへの反映。

 ・カウントダウンの機能:結果良好
  ・1回目: LE-9エンジン着火直前(X-6.9秒)までの確認。
  ・2回目: 予定を変更して特別検証試験で模擬し、結果良好。
  ※2段推進薬を減らし1回目と同様の自動カウントダウンを実施する予定だったが天候悪化で変更。(ミッションにより2段推進薬減が必要となるため)

 ・飛行中の機能:結果良好
  ・射点(燃料充填状態)でのロケットと追尾局との通信
  ・位置・速度計測システムの動作

・天候
 ・機体移動時
  ・天候:雨、気温:19.0度C、降雨:7mm/h、風向・風速:北西、5.6m/s
  ※LP2への移動開始前と移動後に降雨が制約条件(15mm/h)を超えたため作業を一時中断。移動後、ロケットおよび設備の点検を行い、問題ないことを確認して作業を再開。

 ・カウントダウン1回目(2021年3月18日1時9分(JST))
  ・天候:曇り、気温:15.8度C、降雨:なし、風向・風速:北西、0.6m/s

・極低温点検の機体仕様
 ・フェアリング:試験用(ロング、塗装無しのため黒色)
 ・衛星:なし
 ・第2段エンジン(LE-5B-3):フライト用
 ・コア機体:フライト用
 ・固体ロケットブースタ(SRB-3):フライト用
 ・第1段エンジン(LE-9):試験用
 ・火工品:なし

 ・今回の極低温点検実施にあたりまして、ご協力いただきました関係各方面の皆様に深く感謝いたします。またメディアの方々も含め2日間にわたり昼夜見守っていただいた皆様、本当にありがとうございました。
 ・H3ロケット開発は、大きな山の一つを越えることができたと今思っています。もちろん山はまだ続きます。引き続き、種子島において打ち上げ管制隊と企業の方々で総力を挙げてこのシステムを統合しながら待ち受け状態とし、並行してLE-9エンジンを完成させて、H3ロケットを仕上げていきたいと思います。

・質疑応答
NVS・機体の返送は予定通り16時半になるのか。
奈良・全体的な作業の入れ替えを行い、今の予定ですと17時半頃になると考えている。

共同通信・資料2Pの圧力損失の考慮というのは、実際に不具合があったのか、あるいはその可能性があるので対処したのか。
岡田・配管は細いと損失損失が大きく太いと低い、短いと損失は少なくて長いと大きい、曲がりくねっていると大きい、まっすぐだと少ない、こういったものです。設備から空調したときに最初は1本で入っていくが、ロケットの中で枝分かれする。その枝分かれした先で思ったような配分で空調の量ができないとき、そこをどうコントロールするか。不具合というよりも初めて検証できた圧力損失量について、今回は運用上で全体の圧力を上げるなどのカバーをしながら進んだ。実際の打ち上げの時にそのまま行くのか、あるいはまだ時間があるので配管を一部交換するかは、これから評価したいと思っています。若干の見込みの違いだったところではあります。

時事通信・極低温点検がほぼ終わっての感想と、いちばん大きな収穫は何か。
岡田・感想は天気と戦いながら、あるいは初めてのこととシステムと戦いながらですけども、結果的にはかなりうまくいったな、良かったなという思いです。もちろん安心している訳ではないが、ほっとしています。非常に大きなシステムを組合せていく最終段階なので、ちゃんと初めに考え抜かれて、あるものとあるものに機能を正しく分けて、そこのインターフェイスのところをちゃんと定義できていれば、間違いがないと言えばそれまでだが、人間のやることですから思い違いや目違いがあり得る。この段階でそれが大きく出てしまうと手戻りが大きいが、それが今回ほぼ無かったことが判ったことは非常に大きくて、今回の総合システム検証の目的であるロケットといろいろな設備、発射のための設備、追尾するための設備、そういったものを組み合わせた試験として非常に意味のあるものだったと思います。

時事通信・機体の返送で全ての点検が終わるという判断で良いか。
岡田・緊張の糸はこんなところで緩めてはいけないと思っていますが、試験のメインとなる所は終わりましたので、極低温点検としては終了したと申し上げて良いと思います。あとは、その後の処置をしている所です。

NHK・時事通信さんの質問の収穫について私からもお聞きしたいのと、X−60分の判断が一旦ホールドになり、その後解除され、最終的に1時9分という時刻が設定されたが、この判断がホールドになったのはタンク加圧用のヘリウムガス調整だったのか、それとも他の要因があったとすればどういった現象が起きていたのか。
岡田・得られた成果は、総合システムとしての機能が検証できたのがいちばん大きな成果です。その一環として打ち上に向けて非常に大きなシステムを動かしていく手順のようなものに大きな見当違いが無く、打ち上げに臨めるだけの基本的なところが整ったのが非常に大きな成果だと思います。
 タンク加圧用のヘリウムガスの調整とありまして、これで一旦ホールドをかけました。要因は主にこれだと思って下さい。
 打ち上げの時は、ある時間まで打ち上げなければならないと決まっていて、この極低温点検もそれに倣っている訳ですので、差し迫ったところでいろいろな事に対応するということが、緊張の中で統制がとれていて、H3の試験機に対して非常に良い経験ができた。また新しい設備のLCCの中ででできたのも非常に大きな経験だと思っています。

フリーランス秋山・自動充填設定の見直しの作業で初めてという言葉があったが、推進剤の自動充填設定が今回初めてということは、設定が固まってスムーズにいくようになると、ロケットの実運用でどのような効果があるか。省力化や高速化が図れるのか。
岡田・H-IIAロケットでも自動充填はやっています。この部分に関しては同じようなロジック・考え方で自動充填のプログラムが作ってある。相手がH3ロケットであることと、自動充填の途中には新しいMLが介在していますので、設備の大本は共通だがMLとロケットが違うので当然特性が違う。冷やす順番とか冷え加減とか、冷やしやすさ冷やしにくさ、そういったものがロケットとセットで初めて姿を現してきた。設備単体でMLまでは積み上げて開発の中で確認しているが、その先にロケットがないと検証ができない部分がありますし、そういう意味で組み合わせて初めて判ったような手順が修正することによってその部分がH-IIA同様に自動化が図られて、その結果として一気に省力化ができると考えています。今のところはたまたまH3とH-IIAで同じような考え方でやっているところだが、今回説明していない部分として点検の自動化とかをH3で踏み込んでいて、その部分に関しての省力化や時間の短縮に繋がることになります。
奈良・今回の自動充填は新しい機体で新しい設備を使って、どういう手順で入れていくかというところのフローを組んで、それをプログラミングする訳ですが、どういう条件が揃えば次の手順に進めるかという所の考え方や手順を実際やってみて、直した方がいいというところも今日やって多々判ってきていますので、そういった反映をしてより良い手順に仕上げていくということをやっていく。そういう意味で今回は良い結果が得られたと思っています。そういった手順を踏まえて、この自動充填というタスクを洗練させて、実際の打ち上げに供するように仕上げていくのが、これからの作業と考えています。

東京とびもの学会・第2段エンジンと固体ロケットブースターがフライト用とのことだが、固体ロケットブースターには燃料やイグナイタが装着されているのか。
奈良・固体ロケットブースターはフライト用です。推進薬を詰めて着火装置も付いています。

東京とびもの学会・資料では火工品無しとなっているが、これはどういったものか。
奈良・コア機体に這わせる指令破壊に使う導爆線です。フェアリングにも火工品はありません。

東京とびもの学会・今回の試験用フェアリングは実際のフライトでは使わないのか。
奈良・これはフライトには使わないです。開発試験に使ったものを今回使っているだけで、フライト用は新しく用意します。

東京とびもの学会・コア機体への推進剤の供給能力はH-IIA/Bの時からH3に変わるにあたって上がったのか。
奈良・供給能力は変わっていないはずです。今回、機体のタンクが大きくなっているので充填しなければならない容量は増やしているが、供給能力は同等の設備を使っている。

東京とびもの学会・H-IIBと比べてH3は燃料の充填に時間がかかるということか。
岡田・短縮されると思います。それは手順をうまく見直すことによって短くなる部分がある。燃料の量よりも、入れ始めが大変。入り始めると後はだーっと入っていく。最初がうまくできることがポイントになると思います。

東京とびもの学会・タンクの予冷ということか。
岡田・設備からタンクの予冷に至るところを、いかにうまく手早くやるかがポイントだと思います。

※火工品の質問についての補足。
岡田・固体ロケットブースターは瞬間的だが何段階か増幅しながら点火していきます。今回、最後のイグナイタは付いているが、最初の点火用の小さな火工品はついていない。

東京とびもの学会・それを外しているのは事故防止の観点からか。
岡田・そうです。安全上の観点です。

南日本新聞社・カウントダウンの2回目の取りやめで特別検証を優先したとあるが、優先度が高かった特別検証を具体例でお願いします。また燃料を減らしたパターンについてもう少し噛み砕いて教えて下さい。また燃料充填を慎重にした部分は充填前ということか、それとも充填をしている所も含んで+3.5時間なのか。
岡田・推進薬充填前はどのタイミングかということだが、ロケットの燃料タンクに燃料が入り始めるところが推進薬充填前になると定義しています。というのは、ロケットに燃料が入るところは総員退避という大きな規制をしながら作業を進めることから、ここは非常に大きな判断です。この推進薬充填の前段階に設備を徐々に冷やしながらタンクに推進薬を送る段取りをする。タンクに行く直前くらいまでを称して推進薬充填前と言っています。そのための自動充填設定はその一連の段取りの辺りの充填設定のことを言います。慎重なタンク加圧手順と書きましたが、タンク予冷手順の方が正確です。タンクへの液の入れ始めをどうするかというところをしっかり検討すると、それはタンクに推進薬を入れる手前の段階で検討したので、結局推進薬の充填が後ろになったということです。
 特別検証は、ロケットには開け閉めする弁・バルブがあるが、そういったもので例えば積極的に開けたり閉めたりしたいものがあるとか、ロケットの中に推進薬以外に気蓄器といってヘリウムを高圧にためるタンクがあります。そういったものが漏れていないか圧力を張った状態で暫く静定させて圧力が落ちていないかどうかを確かめるとか。それから2段の推進薬を減らしてとの兼ね合いで特別検証試験での模擬といったものです。
 ここを説明すると、ロケットの燃料タンクは普通はほぼ満タン状態で、上に少しだけ隙間を残した状態で打ち上げるといちばん能力が高いのが一般的だが、飛ぶ物の大きさとか軌道によって、つまりミッションによって推進薬をちょっと減らした方が結局は能力が上がる場合がある。そういった時に、打ち上げの前にどういった手順でやったらいいかという所な訳です。いちばん大きいのが中途半端に燃料が入っている状態の所で、発射の直前3分前くらいにタンクを自動で加圧が完了したら打ち上げるのです。加圧は自動だが、隙間が大きい場合と小さい場合で加圧のパターンが違うので、1回目はほぼ満タンで加圧も自動でやりました。2回目のカウントダウンで隙間を広げた状態で加圧することをやらない代わりに、特別検証試験でカウントダウンではないが自動で加圧をしてみて、加圧の具合がどうかを確かめたというのが主なものです。

フリーランス鳥嶋・資料にLE−9を完成させるとあるが、LE−9の技術的課題について現時点ではどうなっているか。
岡田・進捗として2つの課題があって、一つ目が燃焼室の開口で、二つ目がターボポンプの疲労破面で、それぞれ昨年の年末まで試験を結構がんばって、12月26日位まで冷や冷やしながら試験をやって、いろいろなことが判ってきました。燃焼室に関しては開口のメカニズムとは言わないが限界線みたいなものが見え始めていて、設計に反映することが出来るようになってきました。今は限界線を越えないようにエンジンを運転するための設計的な配慮、具体的には設計変更は大きくしないつもりだが、どういう運転条件ならそういうことにならないかを見極めつつあるところです。それも含めて設計という事で言えば、大分固まってきている。タービンに関しては、試験で疲労破面を起こしうるような共振現象を直接捉えることが出来ていて、それもかなりの精度で判るようになってきていて非常に大きな進歩です。そういった色々な共振をわざと起こして、設計と予測の差異であるとか実際の現象の起こり方、あるいはどこが励振源になっているかといったことの割り出しが大分進んで来ている。それに基づいて手直しをするためのタービンの設計が固まる最終段階に来ている状況です。ですから間もなくそれぞれについて最終的な設計に基づく試験を徐々に行いながら、ステップバイステップで最後の認定試験に繋げていくというつもりでいます。設計を固める最終段階と思っていただければと思います。

フリーランス鳥嶋・現状では順調で、来年度の打ち上げに間に合いそうか。
岡田・エンジン開発に順調という言葉は最初からありません。常に必死になって最初から取り組んでおりますし、今もその状態です。ですから2021年度内の打ち上げをきちっと果たすためベストを尽くしているところです。正直、エンジン開発はずっとしんどいです。

フリーランス大塚・先週のスケジュールの説明では機体移動開始が8時半だったが、それから2時間前倒しになったが、どういった判断があったのか。
奈良・天候の状況を毎日見ていたが、18日の後半に天気が崩れる予報がありましたので、なるべく早く作業を始めて、終わりを早くした方がいいという判断があり2時間早めました。天候の状況を逐一見ながら作業計画を組んでいった。

フリーランス大塚・今回の試験が順調で良好な結果が得られたことと、LE−9の改良も進んでいるということで、次の大きなステップとしてCFTがあるが、これの実施時期はある程度見えてきているのか。
奈良・CFTをやるためには順番がある。まず大事なことはフライト用エンジンの完成することです。CFTの前の山場がLE−9の認定試験をいかに早く予定通り始められるかだと思います。それが終わりますと順番としては、認定試験があり、その次にフライト用エンジンの製造の一環として燃焼試験が2台分ある。それが終わったエンジンを今の極低温点検のためについているエンジンと交換して、それでCFTをやるというステップなので、まだかなりいろいろなことがある。私にはまだ少し遠いところに見えています。ただ時間的にはそう待っていられないので、それらを詰めてやっていくつもりです。

フリーランス大塚・まだいろいろあるので、いつとは言えないということか。
奈良・ステップバイステップでやりながらだんだんと確度が上がっていくと思っています。

JSTサイエンスポータル・日本の基幹ロケットはオンタイム打ち上げが強みとアピールされてきたと思います。今回は点検なので時間がかかるのは織り込み済みだと思うが、試験機の打ち上げ以降はオンタイム打ち上げが担保されるというコメントはいただけるか。
奈良・もちろんオンタイム打ち上げを目指していますし、そういうロケットとして開発しているので、そういった運用をすることになります。今回は開発試験で、初めての機体に設備を使って始めてのオペレーションということで、割と慎重にやったり、いろいろやっている中で課題が見えて修正しながら今回の作業を行ったということで時間はかかりましたが、今回の結果からの反映を盛り込みますし、この後CFTという機会もありますので、そういうものを経て開発を重ねて練度を上げていって打ち上げを迎えるというような形になります。打ち上げの時にはここらを確立したオペレーションに仕上げて臨んでいきたいと思っています。そういうことをすることによってスムーズなオペレーションができると考えています。そういったことを目指して開発作業を進めていきたいと考えています

JSTサイエンスポータル・オンタイム打ち上げは担保されるということか。
奈良・もちろんそれを売りにしないとならないと考えています。

読売新聞・試験結果がほぼ満点だったとあったが、100点満点ではなかった理由は何か。今回の試験で見えた課題があれば教えてください。
岡田・本当は100点満点と言おうと思ったが、ちょっと言い過ぎかなと思いました。ちょっとしたことをもう少し考えれば、こういった事はおきなかったというのはちょこちょこあります。減点対象かは微妙なところであります。100点に近いと申し上げたのは、こうしたことで結果として困ったなということが一個も無い。なので、こうすれば大丈夫というのが大体セットで見えたものが大半なので、そこを減点しないとほぼ100点という意味で申し上げました。もちろん手直しはいくつもあるが、それは後ろのCFTなどに影響の無い手の打ち方になると思いますので、そういう意味で良かったなと思っています。

読売新聞・特に課題はどうだったか。
岡田・大きな物は無い。いろいろ出て来たそのものが今回の点検での成果なので、それを活かしていけばいいと思います。もちろんデータ検討はこれから細かくやります。

日経BP・試験に使った液体水素は、どうやって種子島に持ち込んでいるのか。試験に使ったあとはどうするのか。回収するのか、バーンポンドで焼却処理をするのか。
奈良・液体水素は確か関東・関西圏から輸送されます。鹿児島の港まで陸路で来て、そこからフェリーで種子島の島間港まで運ばれるのがルートです。液体水素は非常に蒸発しやすい極低温の液体なので、基本こういった試験で使ったものはバーンポンドで処理するべきものはするし、仮に回収ができたとしても次に使うまでにほぼ蒸発します。できれば回収して次に使うというのが無くは無いが、ずっと保管しておくとそのうち無くなってしまう代物です。バーンポンドなり水素を処理する適切な設備で処理をして、そのうち無くなるか、使えるものは使うのが液体水素の現状です。

KKB・確認したいが、今回スケジュールが後ろ倒しになった理由が資料に書かれているが、今回初めての作業が主だったので慎重にという説明があったが、これら延期になった理由というのは今後の実際の打ち上げ作業でも発生しうるのか。それとも習熟を重ねていけば無いのか。
岡田・(資料に)こういった理由で作業が延びたと書いてありますが、延びた要因は今回判っていて、対策を今回立てられれば立てますし、次回以降に修正しなければならないものは次回以降に盛り込む。今回延びたようなものは今後のオペレーションでは延びる要因にならないように対策をとっていこうと考えています。似たような要因も無いか水平展開もやった上で今後の作業に備えます。今回判ったものは成果なので、それを取り込んで今後のオペレーションはもっとスムーズに流れるようにしていくことになると考えています。

KKB・先ほどの質問であった課題とは資料に書かれた内容のものか。
岡田・そうです。今回いろいろ時間がかかったようなところは直していく課題となりますので、こういったものは対策をとって次に備えたいと考えています。

以上です。