宇宙作家クラブ
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No.354 :ディスカヴァリーSTS-102打ち上げ
投稿日 2001年3月8日(木)20時25分 投稿者 江藤 巌

・ディスカヴァリー打ち上げ
 スペースシャトル・ディスカヴァリーは、アメリカ東部標準時8日午前6時42分、日本時間の8日午後8時42分に、ケネディ宇宙センター(KSC)から打ち上げられて、所定の軌道に乗った。
STS-102/フライト5A.1

No.353 :LDREXアンテナ展開失敗の原因判明他
投稿日 2001年3月8日(木)11時31分 投稿者 江藤 巌

・LDREXアンテナ展開失敗の原因判明
 2000年12月にアリアン5で打ち上げられた宇宙開発事業団(NASDA)の技術試験衛星8型(ETS-8)アンテナ小型部分モデル(LDREX)の展開実験で、アンテナが途中で開かなくなった原因の調査結果が発表された。ETS-VIII大型展開アンテナ小型部分モデル(LDREX)展開実験の結果について
 LDREXは、ETS-8の大型アンテナの展開を事前に小型モデルで実験するものだったが、実験開始約3分後アンテナが約5度(半頂角)開いたところで展開が停止してしまった。20分後に計画通りLDREXはアリアン5から切り離されたが、ロケット上のカメラで切り離しの直後に再びアンテナが開き始めたのが確認されている。しかしカメラの視野から外れたため、アンテナが約40度まで開いたところまでしか確認はされていない。実験をモニタ−するための各種テレメトリデ−タと画像は全て得られている。
 展開失敗の原因については、アンテナのケーブルの干渉を防ぐためのメッシュが予期せぬ振動で動き、アンテナのトラス先端部に被さったのが展開停止の原因と推定された。分離にともなう振動でメッシュは外れ、またアンテナの展開が始まったものと思われる。

・角田ロケット開発センターがISO14001取得
 NASDAの角田ロケット開発センター(宮城県角田市)が、国際的な環境管理の基準であるISO14001の第三者認証を取得した。
角田ロケット開発センター環境方針

・STS-102秒読み順調に進行
 スペースシャトルSTS-102/ISSフライト5A.1の秒読みは、アメリカ東部標準時8日午前6時42分(日本時間同日午後8時42分)の打ち上げに向けて順調に進行している。
 いまのところ唯一心配なのは当日の朝の気温で、予報の通りだと発射台回りの氷結が心配される。NASAでは寒波の中で打ち上げを強行して大事故になったチャレンジャー(ミッション51L)以来、気温の低い日の打ち上げには特に神経質になっている。発射台回りが氷結していると、打ち上げの際の振動で落ちた氷片がオービターの断熱タイルを損傷させる恐れがある。
 打ち上げが8日の早朝に予定通りに行われた場合の主要スケジュールは以下のとおりである。時間は東部標準時(日本時間)。
打ち上げ        8日0642(2042)
ISSとのドッキング 10日1236(11日0236)
EVA1          2347(1347)
レオナルド取り付け  12日1217(13日0217)
EVA2          2347(1347)
レオナルド取り外し  17日0157(1557)
アンドッキング       2257(18日1257)
KSCに着陸     20日0202(1612)

No.352 :ミール落下は今月17日から20日頃他
投稿日 2001年3月7日(水)22時13分 投稿者 江藤 巌

・ミール落下は今月の17日から20日頃
 ロシアの航空宇宙庁(RKA)によれば、ミール宇宙ステーションの落下は3月の17日から20日の間になりそうであるが、最終的にミールを落下させる日取りはまだ決まっていない。
 文部科学省のミール関連情報のサイトから、有用な情報を引用する。
 軌道離脱計画はミールが高度250kmに到達した時点から開始される。
(1)今後のスケジュール
3月 9日頃(高度250kmに到達) →落下に向けた姿勢制御
3月11日頃(落下予定2日前) →第1回、第2回エンジン噴射
3月12日頃(落下予定1日前) →第3回エンジン噴射 3月13日頃(落下予定当日) →第4回(最終)エンジン噴射
※実際の日付は太陽活動の影響等により変更

地上に到達すると予想される落下物
部品 燃え残る破片の最大質量 燃え残る破片の個数 燃え残る破片の総質量
ソユーズ/プログレス接続部 500 kg 5 個 最大 800 kg
スペースシャトル接続部 700 kg 5個 最大1200 kg
姿勢維持装置 120 kg 25個 最大1750 kg
推進システム及び補強部材 50 kg 最大 320個 最大3450 kg
基地構造部材 110 kg 最大450個 最大8000 kg
機材部品 50 kg 最大100個 最大1800 kg
光学部品 50 kg 最大100個 最大 500 kg
科学装置部品 20kg 最大450個 最大3500 kg
合計   約 1500個 20〜25 ton

軌道離脱計画の日本への影響について
計画どおり軌道離脱計画が実施された場合:日本に破片が落下する可能性は無い。
 日本が落下軌道(地球約7周の軌道)に入らなかった場合:日本に破片が落下する可能性は無い。
日本が落下軌道(地球約7周の軌道)に入った場合:落下軌道が日本を通過する場合については、「ミールが我が国に落下するとすれば、△時×分から△時×分頃(時間幅としては40分程度)になる」と予測することが可能である。
 最終減速が計画以上の場合:異常発生の約30分後に、日本の南東の海域が落下地域に含まれる可能性が否定できない。
 最終減速が計画以下の場合:異常発生の約120分後(異常発生後、地球を1周して日本周辺に戻ってくる時間)に、日本の南西の海域を落下軌道が通過する可能性が否定できない。
これ以後も、異常発生後2日以内に、落下軌道が日本を通過する可能性が否定できない。(日本を通過する可能性のある凡その時刻は、異常発生の15〜17時間後、22〜24時間後、39〜41時間後及び46〜48時間後である。)
 落下軌道が日本を通過する場合については、「ミールが我が国に落下するとすれば、△時×分から△時×分頃(時間幅としては40分程度)になる」と予測することが可能である。
 現時点における所見
軌道離脱計画は現在のところ、順調に進められている。ロシア政府のこれまでの発表やロシアの宇宙開発におけるこれまでの成果等を総合的に判断すると、計画が完遂される公算は大きい。
ロシア政府の計画が失敗し、落下物が日本に影響する場合の可能性は、地球上の広い範囲が落下軌道に入っていることから、完全には否定できないものの、極めて小さいと考えられる。
 一方ロシアでは、ミール内で突然変異したバクテリアや黴が地上の生命に及ぼす影響まで取り沙汰されている。

・ロシアがミール落下の損害に保険
 ロシア政府は、ミールが落下して第三者に与えた損害を補償する保険を掛けることにした。
宇宙条約(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)によって、宇宙からの落下物が損害を与えた場合には、打ち上げた国が補償することになっている。
ロシアが掛ける保険の額は約2億ドル(230億円)相当で、すでに保険会社と最終交渉に入っている。
Space.com
CNN
SpaceDaily
参考
月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(1967年発効)
第7条(損害に対する当事国の責任)
 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射し若しくは発射させる場合叉はその領域若しくは施設から物体が発射される場合には、その物体叉はその構成部分が地球上、大気空間叉は月その他の天体を含む宇宙空間において条約の他の当事国叉はその自然人若しくは法人に与える損害について国際的に責任を有する。

・X-33のエンジン・テスト中止に
 NASAのステニス宇宙センターで行われる予定だったX-33のエンジンのテストが、NASA本部の命令で中止された。
X-33はリニア・エアロスパイクと言う特別のノズルを持ったエンジンを使う予定で、認証型のエンジンは2月6日に最初のテストに成功し、あと8回のテストが予定されていた。

X-33計画中止についての声明

・ジョン・グレンの家が記念館に
 アメリカ最初の宇宙飛行者で最年長宇宙飛行記録保持者のジョン・H・グレンが育ったオハイオ州ニュー・コンコード郊外の家が、市の中心街に移設されて記念館に改装されることになった。
グレンが2歳から成人するまで住んだ二階建ての家は、1999年に彼の母校マスキンガム・カレッジに寄付されている。
FLORIDA TODAY
ジョン・グレンと家

No.350 :ディスカヴァリー8日打ち上げに向けて秒読み開始
投稿日 2001年3月7日(水)09時03分 投稿者 江藤 巌

・スペースシャトルがカウントダウン開始
 スペースシャトルOV-103ディスカヴァリーは、3月5日のアメリカ東部標準時1000時(日本時間6日0000時)にSTS-102ISSフライト5A.1の打ち上げに向けた秒読みを開始した。ディスカヴァリーは7人の乗員を乗せて、ケネディ宇宙センターKSCの39A発射台から3月の8日0633時(8日2033時)に打ち上げられる。ディスカヴァリーは3月20日0113時(同日1513時)にKSCに帰還する予定。
KSCのカウントダウン・サイト
 STS-102/フライト5A.1では、初めて国際宇宙ステーション(ISS)の乗員の交代が行われる。ミッション内容
すなわちディスカヴァリーには、機長のジェイムズ・ウェザビーら4人の乗員の他に、ISSの第二次遠征隊(Expedition Two Crew)の3人が搭乗する。第二次遠征隊がISSに乗り組むのと交代に、昨年の12月からISSに滞在している第一次遠征隊の3人がディスカヴァリーに乗り移り、ウェザビー機長等と帰還することになる。
第二次遠征隊は、ロシアのユーリ・V・ウサチョフを指揮官として、アメリカのジェイムズ・S・ヴォススーザン・J・ヘルムズ空軍大佐の3人で構成される。ヘルムズはISSに長期滞在する初めての女性宇宙飛行士となる。
 またSTS-102/フライト5A.1では、イタリア製の多目的補給モジュール(Multi-Purpose Logistic Module)”レオナルド”(Leonardo)が初めて打ち上げられる。
レオナルドはディスカヴァリーのペイロード・ベイに搭載される円筒形のモジュールで、内部にはISSに運び込む補給物資や実験機材が収容されている。
レオナルドはディスカヴァリーのペイロード・ベイからリモート・マニピュレイター(ロボットアーム)で持ち上げてISSのユニティ・ノードに取り付け、内部の積荷を宇宙飛行士の手でISSに運び込んだ後、再びマニピュレイターでISSから取り外して、ペイロード・ベイに収納して地上に持ち帰られる。
レオナルドはこのような補給ミッションに何度も用いられる。
レオナルドの取付・取り外し
 ディスカヴァリーにはまた、日本としては最初のISS搭載実験装置となる中性子モニタ装置(Bonner Ball Neutron Detector)が搭載されていて、ISSに組み込まれる。
BBNDは、今年11月に予定されているSTS-108/UF-1で地上に持ち帰られるまで、約7ヶ月にわたってISSの中性子環境の測定を行う。
国際宇宙ステーション米国実験棟での中性子計測実験の実施について(報告)
国際宇宙ステーションでの中性子計測実験(pdf)
NASDAのSTS-102/フライト5A.1情報
FLORIDA TODAY打ち上げ速報
FLORIDA TODAYミッション概要
CNN
SpaceDaily
Space.com

No.349 :オービター2機が相次いでフロリダ到着
投稿日 2001年3月6日(火)12時14分 投稿者 江藤 巌

・コロンビアとアトランティス相次いでフロリダ到着
 スペースシャトル・オービターOV-102と、OV-104アトランティスが、同じ日に相次いで空からケネディ宇宙センター(KSC)のあるフロリダ州に到着するという珍しい出来事があった。
コロンビアはカリフォーニア州パームデイルでのオーバーホールを終えて、アトランティスはSTS-98で同州エドワーズ空軍基地に着陸して、次の飛行の準備のためKSCにやって来たもので、どちらも3月1日にカリフォーニア州を出発した。NASA(米航空宇宙局)では先週中には2機をKSC入りさせたかったが、飛行経路の天候が不良で足止めされていたものである。
オービターはボーイング747改造のシャトル輸送機(SCA)の背中に載せて運ばれた。
KSCに先に到着したのはアトランティス/SCAで、フロリダ州のエグリン空軍基地から5日の現地時間午前11時(日本時間6日0時)過ぎにKSCに着陸した。
続いて同日午後2時(午前3時)過ぎに、コロンビア/SCAがテキサス州ダイエス空軍基地からに飛来した。コロンビア/SCAはケイプ・カナヴェラル空軍ステイション(CCAFS)のスキッド・ストリップ(着陸場)に降りたので、6日にKSCのシャトル着陸施設(SLF)まで短い飛行をする。
Space.com
CNN
FLORIDA TODAYスライド・ショー

No.348 :オービターのKSC入りは月曜以降に
投稿日 2001年3月5日(月)17時42分 投稿者 江藤 巌

・アトランティス一歩KSCに近づく、コロンビアは足止め続く
 NASAのスペースシャトル・オービターは、相変わらずケネディ宇宙センター(KSC)に入れないでいる。
4日の昼過ぎには、アトランティスはボーイング747改造のシャトル輸送機(SCA)に載せられて、オクラホマ州のオルタス空軍基地からルイジアナ州のバークスデイル空軍基地まで移動した。同日3時半にはアトランティスはバークスデイル基地を飛び立って、フロリダ州北部のエグリン空軍基地にまでやって来た。
SCAとアトランティスはエグリン基地で一夜を明かした後、5日の朝にはエグリン基地を飛び立って、KSCに到着する予定である。
 一方テキサス州のダイエス空軍基地に足止めされているコロンビアは、同基地周辺の天候不良のため4日も出発を見合わせた。
Space.com

・高度40kmからのジャンプ計画
 オーストラリアの冒険家が、高度40kmからスカイダイブして生身で音速を超えて降下しようとし計画している。この試みは”スカイ・ジャンプ”と名付けられ、2002年の3月オーストラリア中央部アリス・スプリングス上空で敢行される予定。
元コマンドー隊員のロッド・ミルナーは、気球に乗って高度40kmまで上昇したところで飛び降り、低空まで落下してからパラシュートを開いて着地することを計画している。空気がほとんどない成層圏上層では、落下速度は音速を超えた994〜1118km/hにもなると見られる。しかし低空に降りて来るに従って濃密な大気の抵抗で速度は低下して、パラシュートを開く時には300km/h程度になっている。
特別製のヘリウム気球で高度40kmまで上昇するのには約2時間半掛かるが、飛び降りて着地するまでは約10分である。
ミルナーの冒険の始終は、途中の高度3000m、6000m、9000mに飛ばした無人飛行船のカメラや、高度12000mを飛行するリアジェット機のカメラ、低空のヘリコプターのカメラ、それに高度12000mから飛び降りる仲間のスカイダイバーのカメラなどで記録される。
aapメディアネット

SpaceDaily
 ちなみにこれまでのフリーフォールの最高高度記録は、アメリカのジョウジフ・W・キッティンジャー大尉の31333mで、1960年8月16日に記録された。空軍のテスト・パイロットだったキッティンジャー大尉は、気球のゴンドラから飛び降りて降下中に988km/hの速度に達したと推定され、これはこの高度でのマッハ0.93に相当する。彼が地上に降りるまでには13分45秒掛かった。
キッティンジャー大尉はその後ヴェトナム戦争にF-4ファントムのパイロットとして参加し、1972年3月にはMiG-21を1機撃墜したものの、同年5月北ヴェトナム上空で撃墜されて捕虜生活を送っている(最終階級は大佐)。

No.346 :ミール落下予測で米露が協力体制他
投稿日 2001年3月4日(日)21時22分 投稿者 江藤 巌

・ミール落下予測で米露が協力
 今月の半ば過ぎに落下させられる予定のロシアのミール宇宙ステーションに関して、アメリカ政府がロシア政府に協力することになった。
これはミールの軌道の追跡や大気の状態などのデータをアメリカもロシアに提供して、落下地点の予測の精度を向上させようと言うもので、情報交換にはNASA(米航空宇宙局)とロスアヴィアコスモス(ロシア航空宇宙庁)との通常の連絡ルートが用いられる。
国務省プレス・リリース
ロスアヴィアコスモスのミールHP
文部科学省ミール関連情報
「ミール」の軌道離脱計画に関する検討について(報告)

・オービター2機のKSC入り遅れる
 NASAは先週からスペースシャトル・オービターOV-102コロンビアとOV-104アトランティスをケネディ宇宙センター(KSC)に空から運び込もうとしているが、途中の天候不良で2機とも足止めを食らっている。
コロンビアはカリフォーニア州のボーイング社パームデイル工場で1年半にわたったオーバーホールを終えて久しぶりにKSCに戻るところ、アトランティスは先月末のSTS-98でカリフォーニア州エドワーズ空軍基地に着陸し、次の打ち上げの準備のためにKSCに戻るところである。オービターはボーイング747改造のSCA(Shuttle Carrier Aircraft)の背中に載せて運ばれるが、空気抵抗が大きいためアメリカ大陸を横断する途中数回着陸して給油しなければならない。
NASAでは2月の第4週末には2機に相次いでKSC入りさせる予定だったが、天候が悪化して1週間以上足止めされている。
コロンビアは現在テキサス州のダイエス空軍基地に、またアトランティスはオクラホマ州のオルタス空軍基地で、それぞれ天候の回復を待っている。思わぬ訪問者に基地には近隣の住民が見物に押しかけているそうである。
アトランティスの次の飛行は今年の6月に予定されている。
FLORIDA TODAY

No.345 :X-33/34計画打ち切りは寝耳に水他
投稿日 2001年3月3日(土)15時20分 投稿者 江藤 巌

・X-33、X-34打ち切りはメーカーも寝耳に水
 NASAのX-33計画とX-34計画打ち切りの発表は、開発メーカーにも事前の通告無しにまったく一方的に行われたようだ。
いまのところX-33計画のロッキード・マーティンのサイト、X-34計画のオービタル・サイエンシズ社(OSC)のサイトのどちらにも、計画の中止に関する発表はない。またマーシャル宇宙飛行センター(MSFC)のX-33RLVサイトにも発表はない。
 マスコミの報道などでは混同されやすいが、X-33はスペースシャトルの後継となる繰り返し可能打ち上げ機(Reusable Launch Vehicle)の開発計画そのものではなく、その技術的可能性を実証するためのデモンストレイターの計画である。
X-33はもともと軌道速度を達成できない設計で、亜軌道の弾道飛行テストだけを行うことになっていた。
もしX-33のテストでこのタイプの単段軌道直行式(Single Stage To Orbit)のRLVの可能性が証明できたのなら、ロッキード・マーティン社の手でX-33の拡大版の”ヴェンチャースター(Venturestar)”が開発されることになっていた。
ヴェンチャースター/X-33ギャラリー

・NASDAが航空宇宙医師募集中
 宇宙開発事業団(NASDA)では、宇宙飛行士の健康管理や航空宇宙医学の研究開発を行う常勤の医師(Flight Surgeon)の候補者を募集中でである。募集の締切りは3月23日。
航空宇宙医師候補者応募要綱
宇宙医学とは
宇宙医学

No.344 :X線天文学の小田稔氏死去・あすか消滅
投稿日 2001年3月2日(金)16時50分 投稿者 江藤 巌

・X線天文学の小田稔氏死去
 文部科学省宇宙科学研究所の元所長で、東京情報大学の学長を務める小田稔氏が、3月1日午後に東京都内の病院で亡くなった。78歳だった。
 小田氏はX線天文学の草分けで、1963年にはすだれ状の金属板を通して天体からのX線を観測、その方向を定めるすだれコリメーターを発明、創成期のX線天文学に多大な貢献をした。
宇宙科学研究所(旧東京大学宇宙航空研究所)では「はくちょう」(CORSA-b)に始まるX線天文学衛星の開発と観測を指導した。
 小田氏は札幌市に生まれ大阪帝国大を卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、東京大宇宙航空研究所教授、理化学研究所理事長を歴任、1993年にはには文化勲章を授賞し、東京情報大学の学長を務めていた。
 通夜にあたる前夜式は3日午後7時半、告別式は5日午後1時半から東京都千代田区麹町6の5の聖イグナチオ教会で。喪主は妻知枝(ともえ)さん。自宅は武蔵野市境南町2の25の13。
 東京情報大学葬は4月21日午後1時から港区南青山2の33の20の青山葬儀所で。葬儀委員長は東京農業大理事長松田藤四郎氏。
小田稔「X線天文学の誕生とその発展」
話の肖像画 星のお爺さま 小田稔さん(産経新聞夕刊)
「ロケットの夏」 的川泰宣・野尻抱介宇宙研の成果を語る

・「あすか」寿命を終える
 あたかも小田稔氏の後を追うように、宇宙科学研究所(ISAS)のX線天文学衛星「あすか」(ASTRO-D)が2日の1421時頃に大気圏に突入して消滅した。
X線天文観測衛星「あすか」について(ISAS発表文)

No.342 :シャトル後継技術開発計画中止に
投稿日 2001年3月2日(金)10時24分 投稿者 江藤 巌

・X-33、X-34計画中止に
 次世代の繰り返し使用打ち上げ機の技術デモンストレイターとして、スペースシャトルの後継機開発にもつながると期待されていたNASAのX-33X-34の計画の開発費用が、2002年度予算案には含まれていないことが判明した。
X-33とX-34の開発はどちらも計画より大幅に遅れており、開発費も超過している。今回の決定は事実上計画のキャンセルを意味する。
 ただしアメリカにおいては、政府の予算案に対して議会が独自に予算を増額することもままあり、これまでにも例えばボーイング/ベルV-22オスプリー計画のように、政府がキャンセルを決めた計画が議会の支持で生き延びることが起こり得る。
従ってX-33とX-34の計画も、復活の可能性がないではない。
 実際先に中止を伝えた冥王星カイパー探査計画も、議会の一部からは復活の声も聞かれる。
NASAニュース・リリース
マーシャル宇宙飛行センター(MSFC)X計画のサイト
繰り返し使用打ち上げ機(RLV)

No.341 :文部科学省にミール情報収集分析センター設置
投稿日 2001年3月1日(木)23時48分 投稿者 江藤 巌

 文部科学省は3月の半ば過ぎに落下が予想されるロシアのミール宇宙ステーションに関して、これまで局内に検討チームを設置して情報収集と分析を行ってきたが、このたび研究開発局にミール情報収集分析センターを設置した。
文部科学省の宇宙ステーション「ミール」関連情報
「ミール」の軌道離脱計画に対する局内体制の強化について
LAT本部HP

ミール・ステーションの早期予報
ミール・ステーション落下推定軌道(1)
ミール・ステーション落下推定軌道(2)

ミールの軌道低下

No.340 :NASA2002年度予算は143億ドル
投稿日 2001年3月1日(木)22時54分 投稿者 江藤 巌

・NASAの2002年度予算案は総額143億ドル
 米G・W・ブッシュ政権の最初の予算案(2002会計年度)が2月27日に発表されたが、NASA(航空宇宙局)の予算は総額で145億ドルと、2001年度予算に対して2%しか伸びていない。2002会計年度は2001年の10月1日から2002年の9月30日までである。
 全体に緊縮型の予算案のなかで目立った伸びを示したのは宇宙打ち上げ構想(Space Launch Initiative)の分野で、2001年度より64%の増額となっている。スペースシャトルの飛行は、2002年度には6回が予定されている。
国際宇宙ステーション(ISS)計画に関しては別項。
 一方太陽系探査の分野では、すでに開発費が見積もりを超過している冥王星・カイパー・ベルト探査機(Pluto-Kuiper Express)太陽探査機(Solar Probe)の二つの計画の予算が2002年度には計上されず、打ち切りが決まった。
SpaceRef
Space.com
Space.com
CNN
SpaceDaily

・宇宙ステーション計画で大幅削減
 NASAの2002年度予算案は、国際宇宙ステーション(ISS)計画の将来に大きな影響を及ぼしそうである。
予算案によれば、ISS計画のコストは2001年度と2002年度で合わせて約10億ドル、その後の5年間には合計40億ドルも見積もりを超過しそうな見通しとなっている。
ホワイトハウスはいま以上のNASAの予算増額を認めそうにないので、この超過分は他のISS計画内や他の分野の予算をやりくりしてひねり出さねばならない。
 NASAではISSをコア部分までは完成させ、日本を含む他の計画参加国の製作するエレメントの接続を可能にすると述べているが、その先の建設についてはしばらく開発をストップすることになりそうだ。ISS全体像(pdf)
今回特に開発中断の対象として挙げられたのは、ISSの乗員の非常脱出用救命艇となるCRV(Crew Return Vehicle)、居住モジュール(Habitation Module)、推進モジュール(Propulsion Module)の三つである。
 CRV(開発名はX-38)は、ISSの乗員最大7人を乗せて地上に緊急帰還することが出来るが、ISSの常駐乗員がこの先も3人に留まるのならば、現在と同じくロシアの3人乗りのソユース宇宙機が緊急脱出にも使えることになる。
 居住(ハブ)モジュールは2005年のフライト16Aで打ち上げられる予定であったが、これが組み込まれないとISSの常駐乗員はこの先もロシアのズヴェズダー・モジュール内で寝ることになる。しかしズヴェズダーには睡眠用の個室が二つしかなく、3人の乗員の一人はどこか別の寝場所を探さねばならなくなる。
 推進(プロップ)モジュールは、もともとはロシア製の推進モジュールの打ち上げが大幅に遅れるような事態に備えた保険として開発が始められたもので、当面は必要がなくなっている。
 開発費の見積もりは、CRVが約10億ドル、ハブ・モジュールも約10億ドル、プロップ・モジュールは5億4000万ドルとなっている。
 ハブ・モジュールをISSに組み込まない代わりとして、2005年打ち上げ予定のノード3延長して居住機能を組み込む構想が最近提案されている。
AW&ST
Space.com

・NEARシューメイカー小惑星探査計画終了
 NASAが小惑星433エロスに着陸させたNEAR(Near Earth Asteroid Rendezvous)シューメイカー探査機が、2月28日地上からの指令で機能を停止した。
NEAR探査機はエロスの観測を目指して1996年2月17日に打ち上げられ、長い接近飛行の後今年の2月12日にはエロスへの接触を試み、大方の予想に反して着陸後も通信を送って来ていた。このためNASAではNEARのスイッチを切るのを予定よりも2週間ほど遅らせて、エロス表面のデータを集めていた。
NEARシューメイカーHP
プレス・リリース

No.339 :太陽帆船を2001年に打ち上げ計画他
投稿日 2001年2月28日(水)22時59分 投稿者 江藤 巌

・米惑星協会が太陽帆船計画
 アメリカの惑星協会(The Planetary Society)が、世界でも最初の太陽帆船(solar sail)を宇宙に飛ばすことを計画している。ソーラー・セイルのページ
 ソーラー・セイルは、太陽の光を反射して推進する宇宙船のことで、しばしば誤解されているが太陽からの粒子の流れ(太陽風)に押されて進むのではない。ソーラー・セイルの全て
ソーラー・セイルは、アーサー・C・クラークのSF短編「太陽からの風」(ハヤカワ文庫SF「太陽からの風」収録)にも登場したように数十年前からあるアイディアで、1986年のハリー彗星接近の際にはNASAの彗星探査機に用いる構想もあった。しかしその時は技術的にリスクが大きいとして採用されず、その後も実際の宇宙船に応用されることはなかった。
 惑星協会のソーラー・セイル計画は、IT企業のワン・コスモス・ネットワーク社との共同事業で、質量約40kgの宇宙機はロシアのババーキン宇宙センターが製作する。宇宙機はロシアの潜水艦発射ロケット”ヴォルナ”(SS-N-18改造型)で高度800kmX1000kmの軌道に打ち上げられ、アルミニウム蒸着マイラー製の8枚の三角形の帆を風車のように広げると面積は600km2になる。ミッション・アニメーション
ソーラー・セイルの打ち上げは2001年の10〜12月の予定だが、それに先だって亜軌道飛行によるセイル展開試験が2001年4月頃に行われる。ミッション・デザイン

・次回のシャトル打ち上げは3月8日に決定
 NASAの次回のスペースシャトルのミッションSTS-102/ISSフライト5A.1(OV-103ディスカヴァリー)の打ち上げの日取りが、アメリカ東部標準時間3月8日午前6時42分(日本時間3月8日午後8時42分)に決まった。
STS-102では、日本として最初の国際宇宙ステーション(ISS)の搭載実験装置である中性子モニタ装置が搭載され、ISSに組み込まれることになる。
NASAニューズ・リリース
日本初の国際宇宙ステーション搭載実験装置「中性子モニタ装置」を搭載したスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-102/国際宇宙ステーション組立ミッション(5A.1)) の打上げ日の決定について
中性子モニタ装置リーフレット(pdf)

・プログレスM-44がISSとドッキング
 ロシアが2月26日に打ち上げたプログレスM-44無人補給船が、28日に国際宇宙ステーション(ISS)と自動ドッキングした。
プログレスM-44は、ISSに滞在中の第一次遠征隊3人に水や食料、衣類などの補給物資を届けた。
第一次遠征隊の宇宙滞在は120日を超えた。
ISSステイタス・リポート
SpaceDaily
CNN

・イオの火山
 木星を周回中のNASAのガリレオ探査機が撮影した、木星の衛星イオの新しい画像が公表された。
ジェット推進研究所(JPL)HP
ガリレオ計画HP
JPLニューズ・リリース
JPLの木星の衛星画像アーカイブ
噴火するイオのトヴァシタル・カテナ
これまでに公表された木星の衛星画像
アリゾナ大学イオ画像アーカイブ
太陽系最大の溶岩流出跡

No.338 :タイタン4Bでミルスター2打ち上げ他
投稿日 2001年2月28日(水)11時53分 投稿者 江藤 巌

・タイタン4Bで軍事通信衛星打ち上げ
 アメリカ空軍は東部標準時27日午後4時20分にケイプ・カナヴェラル空軍ステイション(CCAFS)から、タイタン4Bで軍事通信衛星ミルスター2を打ち上げた。
FLORIDA TODAY
FLORIDA TODAY
CNN

・「あすか」の落下今日明日か
 文部科学省宇宙科学研究所(ISAS)のX線天文学衛星「あすか」(ASTRO-D)が、二三日中にも落下する。「あすか」は大気圏上層で燃え尽きるので、地上への影響はない。
 1993年2月20日にM(ミュー)-3S2-7ロケットによって打ち上げられた「あすか」は、「はくちょう」(1979年2月打上げ)「てんま」(1983年2月)「ぎんが」(1987年2月)に次ぐISAS4番目のX線天文衛星で、近地点高度520kmX遠地点高度620kmの円軌道に乗せられた。「あすか」は国際的な協力体制の下に計画寿命をはるかに超える期間にわたって観測を続けてきたが、大気の抵抗で高度が二百数十kmまで低下して制御不能になり、大気圏に突入して失われることになった。「あすか」の落下で、1979年以来続いてきたISASの衛星によるX線天体の観測が途切れることになる。
 LAT(Low-altitude AArtificial satellite Tracking network)では、「あすか」の落下を3月2日の12時26分ごろと予想している。
 「あすか」の後継のX線天文学衛星として、2000年2月10日にはM-5-4でASTRO-Eが打ち上げられたが、M-5-4の第1段の故障で軌道には乗れなかった

No.336 :ISSコスト超過で計画見直し必至他
投稿日 2001年2月27日(火)23時02分 投稿者 江藤 巌

・ISSのコスト大幅超過で計画見直しへ
 国際宇宙ステーション(ISS)計画のコストがこれまで言われて来た数字を大幅に上回ることが明らかになり、計画の根本的な見直しも避けられない情勢となりつつある。
 ISSの総コストは当初56億ドル程度と言われ、NASAのD・ゴールディン長官もこれまで174億ドルと言った数字を口にして来た。しかし現在の見積もりでは、開発段階の総計だけで300億ドル近くにもなると見られ、アメリカ議会が制定した開発費総額の上限250億ドルを上回るのは確実である。
 1980年代初めにNASAが宇宙ステーション計画を提案したときには、計画総コストとして80億ドルと言った数字が挙げられていた。ちなみにスペースシャトルの開発コストは約100億ドル、アポロ計画の総コストは約260億ドルであった。
 アメリカ議会の会計検査院(GAO)では、昨年末にISSの建設コストと運用コストの合計を960億ドルと弾き出しており、このままではNASAの予算の大半がISS計画に食われてしまうことになる。別の試算では、ISSが完成後10年間の運用コストは年平均で13億ドル程度になる。
 ゴールディン長官は、この野放図なコスト上昇の責任の一端は計画を取り仕切るジョンスン宇宙センター(JSC)にあるとも見ており、先に報じたジョージ・アビーのJSC所長更迭もこの問題の責任を取らせる意味合いがあったものと見られる。
 責任の所在がどこにあるにしろ、NASAでは今後大幅なリストラやISS以外の計画の中止や先送りと言った思いきった措置を取らざるを得ないであろう。またISSの建設を途中でストップするとの噂も流れているが、日本をはじめとする他の計画参加国の了承を得るのは難しいであろう。
ここ数年間NASAの年間予算140億ドル前後で、約50〜60億ドルがISSとシャトルを中心とする有人宇宙計画に充てられて来た。
CNN
FLORIDA TODAY
UPI

・ティトー乗り組みでNASAが裏取引を否定
 イギリスのサンデイ・タイムズ紙が掲載した、ロシアとNASAとがアメリカ人実業家デニス・ティトーのISS乗り組みに関して秘密裏に取引を行ったとの報道に対して、NASAのメディア担当者はティトーに関しては「いまさ何の決定も行われていない」と否定した。
同紙は、NASAの医学検査の基準をパスすることを条件に、ティトーのISS乗組みを承諾したと伝えていた。
これまでのところロシア側はNASAに対して、ティトー乗組みの件を正式の議題として持ち出してはいない。
ロシア側はティトーを4月30日打ち上げのソユースTM-31に乗り組ませてISSに送り込み、1週間程度滞在させて地上に戻す計画である。
Space.com

・火星由来の隕石から新たな生命の証拠発見
 JSCの科学者が、火星から来た隕石の内部で発見した磁鉄鉱の結晶を、火星に生命が存在した新たな証拠として発表した。
この隕石は南極で発見されたALH84001で、NASAが1996年に火星の微生物の痕跡らしきものを発見したと発表したのと同じ隕石である。
JSCの宇宙生物学者K・トマス=ケパタによれば、隕石の中の磁鉄鉱は地球上のそれと同じく微生物の活動によって生じたと考えられる。
NASA火星のサイト
JSCニューズ・リリース

JSC宇宙生物学研究所
NASAエイムズ研究センター(ARC)ニューズ・リリース
ARC宇宙生物学HP
CNN
Space.com
SpaceRef
SpaceDaily