投稿日 2001年3月22日(木)12時00分 投稿者 江藤 巌
ロシアの中央管制センター(TsUP)は、日本時間の22日正午過ぎに、ミール宇宙ステーションの廃棄作戦を開始した。
最初に行われたことは、ミールのスピン安定飛行を取り止めて、太陽電池パネルを太陽に向ける姿勢制御モードに入れることである。
これによりバッテリーを充電した上で、ミールのコンピューターを起動する。万一ミール自体のコンピューターが不調の際には、ドッキングしているプログレスのコンピューターが以後の姿勢制御に用いられる。
この姿勢制御が順調にいった場合には、日本時間の23日午前9時30分ごろにプログレスのロケット・エンジンで最初の軌道降下のための逆噴射(デルタV約10m/s)を行う。
午前11時前後に2回目の逆噴射(デルタV約10m/s)が行われ、同日午後2時過ぎに約22分間の最終の逆噴射(デルタV約25m/s)が行われる。
この作戦が成功すれば、ミールは23日の午後2時30分前後に本州西部の上空を通過しつつ降下して、大気圏に再突入して南太平洋に落下することになる。
日本の上空を通過する際の高度は150kmから170kmで、事実上大気圏の外なので、制御が成功した場合にはミールの破片が日本に落下する可能性は全くない。
万一ミールの制御が失敗した場合には、3月の28日までに地球上のどこかに落下することになるが、落下地点は直前にならないと予測は出来ない。この場合日本に落下する可能性は、ミールが落下する可能性のある地球上の面積の中で日本の面積が占める割合そのもので、いずれにしてもきわめて小さいといえよう。
的川泰宣の「ミール落下日誌」より
5 なお一部の新聞には、上記の噴射不足の場合の「落下の可能性」が大々的に報道されているが、この辺が難しいところだ。センセーショナルに報道すればするほど危機管理をしたことになると考えるのは間違いだが、絶対安全と断言するのもどうかということで、要はやはりどこかに「冷静に騒ぐ基準」を設定しなければならないのだろう。個人的には飛行機事故の確率くらいが一応の基準と思われるのだが・・・・。注目すべきは、「日本に落ちることは全くと言っていいほどありえない」と言明すると、「なあんだ」とがっかりする記者さんがいることである。センセーショナル志向の記者さんほど、その傾向が強いことは言うまでもない。
6 言うまでもなく、プログレスのエンジンが第1回、第2回ときちんと噴いて、しかも第3回に途中で噴射が止まってしまう確率、さらにその場合中途半端な自然落下になるのだが、それが狭い日本の国土に、多周回の中でちょうど落下する確率なんて、わずかなものである。今回に関しては、それくらいの「情報注目」で事足りる程度と考えてほしいのだが・・・・。
文部科学省宇宙ステーション「ミール」関連情報
ロシアの宇宙ステーション「ミール」の軌道離脱計画について(最新情報)
「ミール」の軌道離脱計画について
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