宇宙作家クラブ
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No.63 :GPSの精度向上
投稿日 2000年5月2日(火)18時03分 投稿者 江藤 巌

 すでにマスメディアでも報道されているが、ホワイトハウスはGPSの意図的な精度低下を抑える政策を発表した。すでにこの政策は実施に移されており、アメリカ東部時間の2日午前0時より、日本時間では2日の午前9時からGPSの精度が向上しているはずである。この件に関するホワイトハウスの発表クリントン大統領の声明
 GPS(Global Positioning System)は、カーナビやレジャー用品などに用いられて、日本人の日常にもすっかりなじんでいるが、本来はアメリカ国防省の軍用航法/位置測定システムであり、現在もアメリカ空軍が運営しているシステムである。スペースコマンドのGPSのページナヴスターGPS統合計画室のサイト
 GPSは、粗測定用と精密測定用の二つの信号を発しているが、前者は民間用、後者は軍用というわけではなく、どちらも軍事利用を目的としている。ただし粗測定用の信号の規格は公表されており、それを利用したGPS受信機がカーナビなどに組み込まれている。アメリカ国防省はGPSの民間使用に関して利用料などは取っていない。
 GPSの本来の構想では、粗測定用と精密測定用の信号では精度が一桁違うはずだったが、受信機側の技術の進歩により、粗測定の精度が精密測定用として考えていたのと同じ水準にまで向上してしまった(もちろん精密測定の精度はさら向上している)。すなわち市販されている民間用GPS受信機でも、軍事的な利用が充分に可能になったのである。
 そこで国防省が導入したのがSA(Selective Availability)、「選択的利用性」と言う手段で、簡単に言えば粗測定用の信号の精度をわざと落としてやることである。誤差は意図的に操作でき、その時々の国際情勢によってGPSの精度は高くなったり、低くなったりしている。
 今回のアメリカ政府の政策は、そのSAを基本的に発動しないということで、GPSの粗測定用信号の精度がこれまでより一桁上がる事になる。具体的には、カーナビなどの誤差がこれまでの100m台ではなく、10m台にまで向上することになろう。
 ただホワイトハウスの発表を良く読むと、SAを廃止するとは言っていない。SA猶予政策は、新技術によって特定の地域にだけSAを掛けることが可能になったためとしており、言い替えれば紛争地域などでは従来と同じくSAが発動される可能性が高い。この地域選択SAの影響が及ぶ範囲などは不明であり、例えば日本の近隣で軍事的緊張が高まった場合に、日本のGPSも影響を受けるかどうか分からない。

No.62 :シャトル打ち上げは5月18日に
投稿日 2000年4月29日(土)11時23分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトルの次の打ち上げは、やはり他の打ち上げの後に回されて、5月18日の予定になった。着陸は5月28日になる。これを伝えるFLORIDA TODAY Space Onlineの記事
 シャトルの打ち上げが2週間以上延期された理由の一つは、ハリケーンのシーズンを控えて、静止気象衛星GOES-Lの打ち上げを優先させたためである。
 昨日のニュースではNOAAのリンクを落としてしまったが、NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)は、NASAと協力しつつ、気象衛星を打ち上げ管制している。NOAAのGeostationary Satellite Serverでは、NOAAの衛星の捉えた地球のさまざまな画像を見ることが出来る。GOES(geostationary operational environmental satellites )のシリーズは、日本の「ひまわり」(GMS)と同じ静止気象衛星だが、南北アメリカ大陸と東太平洋、西大西洋をカバーしている。

No.61 :シャトル次回打ち上げは未定
投稿日 2000年4月28日(金)13時28分 投稿者 江藤 巌

 シャトル計画でも初めて三日連続で打ち上げが延期されたアトランティスのSTS-101だが、次の打ち上げの日程はまだ正式に発表されていない。
 これはケネディ宇宙センターに隣接し、設備の多くを共用するケイプ・カナヴェラル空軍ステーションにおいて、これから2週間ほどいくつもの打ち上げが予定されているためで、日程の調整が難しくなっている。
・5月3日  アトラス2A    GOES-L静止気象衛星(NASA/NOAA
・5月8日  タイタン4B    DSP-20早期警戒衛星(国防省)
・5月10日 デルタ2(7925)  NAVSTAR2R航法衛星(GPS)(国防省)
・5月15日 アトラス3A    ユーテルサットW4通信衛星(ヨーロッパ通信衛星機構
 これらの打ち上げの合間をぬってアトランティスが5月初めに打ち上げられる可能性もあるが、打ち上げラッシュを避けてSTS-101が5月中旬まで延期されるかもしれない。

 ロシアは26日にプログレスM1-2無人補給船を打ち上げ、27日ミールとドッキングさせた。プログレスはミールに酸素や推進剤などの消耗品や、新しい実験機材を持ち込んだ。ミールには現在S・ザリョーチンとA・カレリの二人の宇宙飛行士が滞在している。

No.60 :シャトル打ち上げ三度目の延期
投稿日 2000年4月27日(木)09時46分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトル・アトランティスの打ち上げ(STS-101)は、3回続けて延期されることになった。26日の打ち上げの試みでは、、ケネディ宇宙センター(KSC)の天候は良好だったが、大西洋の向こう側の天候不良が打ち上げ延期の理由となった。
 スペースシャトルの打ち上げの際、前回述べたReturn To Launch Site)アボート条件以降にメイン・エンジンが停止した場合などには、オービターは周回軌道に乗らずに地球を半周し、ユーラシア大陸あるいはアフリカ大陸の西岸に緊急着陸する。これをTransatlantic Landing Abort(TAL)と呼び、緊急着陸用の飛行場は打ち上げ軌道に応じていくつか指定されている。
 STS-101においては、スペインのサラゴサとモロン、モロッコのベン・ゲリルの三つの飛行場が緊急着陸場に指定されていたが、その三個所ともに天候は着陸に適していなかった。モロッコの天候回復に期待してカウントダウンは進められたが、Tマイナス9分の最後のホールドになってもベン・ゲリルの天候は不良のままで、結局打ち上げは延期されることになった。これを伝えるSPACE TODAYの記事
 次の打ち上げがいつ行われることになるのかは、他の打ち上げとの関連もあり、まだ正式に発表されてはいない。

No.59 :シャトル打ち上げ延期
投稿日 2000年4月25日(火)12時05分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトル・アトランティスの打ち上げ(STS-101)は、25日以降まで延期となった。SPACE TODAYの記事
 打ち上げ延期の理由は、ケネディ宇宙センター(KSC)の天候が不良で、滑走路の横風が制限の15ノット(27.8km/h、7.7m/s)を超えたため。KSCの気象サーバー
 スペースシャトルのオービターは、万一打ち上げ時に飛行を中断して帰還する(abortと言う)際には、KSCに逆戻りして滑走路に着陸することになる(Return To Launch Site)。このRTLSの際に横風が強いと着陸が困難になるために、横風成分15ノット以下と言う打ち上げ制限が設けられているのである。
 25日の天候は24日以上に悪化すると予想され、打ち上げが26日以降に先送りされる可能性も少なくない。

No.58 :アトランティス打ち上げ迫る
投稿日 2000年4月24日(月)22時20分 投稿者 江藤 巌

 日本人が乗っていないので、日本のマスコミではほとんど取り上げられないと思うが、スペースシャトルの今年2回目の打ち上げ(STS-101)がアメリカ時間24日午後(2015GMT)、日本時間で25日の早朝に行われる。ただし今回の打ち上げのウィンドウは5分間しかなく、このウィンドウを逃せば打ち上げは延期される。予定通りに上がれば、着陸は5月4日になる。打ち上げの状況をほぼリアルタイムに知るには、FLORIDA TODAYSPACEFLIGHT NOWなどの打ち上げ速報を見るのが良いだろう。NASAのカウントダウン・サイトは混み合うことが多い。フライト・プラン
 今回のシャトルのミッションは国際宇宙ステーション(ISS)計画の一環で、と言うよりもこれからのシャトルの飛行はほとんどすべてがISS関連になる。シャトルにロシア人の宇宙飛行士が登場するのももはや珍しくはなくなったが、今回の乗員にもユーリ・ウサチェフ宇宙飛行士が加わっている。
 STS-101のパイロット(オービターの副操縦士に相当)のスコット・J・ホロウィッツは、異例の博士号(航空工学)を持ち、お約束のように「ドク」と呼ばれている。ミッション・スペシャリストなら博士号(Ph.DあるいはMD)くらいは当たり前(しかし博士号が必須ではない)、またパイロットでも航空工学や宇宙工学の修士号くらいはたいてい持ってはいるとは言え、パイロット宇宙飛行士で博士号保有者はさすがにほとんどいない。彼はジョージア工科大学の博士課程を収めた、空軍に志願して教官パイロット、テスト・パイロットとなり(現在は大佐)そのかたわら大学で航空工学を教えていた経歴がある。
 

No.57 :アリアンでNASDA衛星を打ち上げ予定
投稿日 2000年4月21日(金)18時07分 投稿者 江藤 巌

 アリアンスペース社が、宇宙開発事業団(NASDA)から実験用小型模型アンテナ(LDREX)の打ち上げを受注したと発表した。アンテナは2001年末頃にアリアン5で、JSAT社(旧日本サテライトシステムズ)JCSAT8号機と一緒に打ち上げられる。NASDAではこれに対応した発表はないが、すでにこれからのロケット・人工衛星等の打上げには記入されている。LDREXはETS-8衛星に搭載されるアンテナの1/6モデルである。
 NASDAのような自前の打ち上げ手段を持つ組織が他の企業に打ち上げを依頼するのは異例のことで、これはもちろん昨年11月のH-2ロケット8号機の失敗による緊急避難的措置である。本来実験用小型模型アンテナは、H-2Aで今年の2月頃に打ち上げられる予定であったが、H-2Aの打ち上げが当分延期される見通しのために、アリアンスペースに打ち上げを委託することになった。もっともH-2Aの1号機あるいは2号機には、アリアン5の初期の打ち上げ失敗で行き所を失ったヨーロッパ宇宙機関(ESA)のARTEMIS(先端型データ中継技術衛星)が搭載されることになっており、お互い様とも言えよう。
 アリアンスペース社はフランスのエヴリに本社を置くフランス法人で、ESAが開発したアリアン・シリーズの商業運用を一手に引き受けている。アリアン4シリーズはこれまでに129回打ち上げられ、最近は54回連続無失敗の記録を伸ばし続けている。
 ESAとアリアンスペースの関係と同じく、NASDAの開発するH-2Aの国際衛星打ち上げ市場におけるマーケッティングを引き受けているのがロケットシステム社であるが、こちらは肝心のH-2Aが飛んでいないので、実績では差が付くのは致し方ないか。

No.56 :シャトルとUSA
投稿日 2000年4月19日(水)01時50分 投稿者 江藤 巌

 スペースシャトルの次回打ち上げは4月の24日(現地時間)と決定したが、打ち上げ準備作業のニュースがあったら、背中に大きくUSAと描かれたツナギを着た作業員達に注目してもらいたい。NASAのツナギの作業員と一緒に活動しているはずだ。
 実はUSAはアメリカ合衆国の略称ではなく、United Space Allianceと言う民間企業の名称の頭文字である。この会社は、NASAからシャトルの整備の大半を長期契約で請け負っているのだ。
 USAは1996年に、当時のロッキード社とロックウェル社の共同事業体(コンソーシアム)として設立された。その後ロッキード社はマーティン・マリエッタ社と合併、ロックウェル社の航空宇宙部門はボーイング社の傘下に入ったので、現在USAはロッキード・マーティンとボーイングのコンソーシアムということになる。アメリカ航空宇宙業界の最大手2社が共同でNASAの下請けになっているのだ。独占禁止法上問題はないのかとも思うが、この世界でシャトルほどのシステムを扱える企業はもともとほんの2、3社しかない。

No.55 :ロシアと二つの宇宙ステーション
投稿日 2000年4月18日(火)02時15分 投稿者 江藤 巌

 ロシアのプーチン大統領代行(次期大統領)は、ロシア政府がミール宇宙ステーションへの支援を継続して行くと明言した。これはミールを今年中に廃棄するとの、これまで表明されていた政策の根本的修正である。すでにミールには二人の宇宙飛行士が送られて運用を再開しているが、これまではロシア政府は関知せず、民間の資金で運用を続けるとされていた。
 ご存じのようにロシアはアメリカやヨーロッパ宇宙機関(ESA)、日本、カナダとともに国際宇宙ステーション(ISS)計画に参加しているが(NASAのISSサイト)、ロシアの限られた資源と予算では、ISSとミールの二つの宇宙ステーション計画に関わって行く余裕はないと見られている。かねてからアメリカは、ISS計画の支障になるとしてロシアのミール計画継続に反対しており、ロシアもアメリカの強い要求に応じて昨年ミールの廃棄を決めた。今回のプーチン次期大統領の声明はこの方針の転換を明確に示したもので、アメリカとの緊張関係は避けられないだろう。
 ロシアが製作を担当したISSのサービス・モジュール、”ズヴェズダー”(星)は、遅れに遅れてようやく今年の7月に打ち上げられることになったが、ミールに予算と人材を食われることで、この打ち上げが一層遅れる恐れすらある。
 もっともアメリカは、ロシアの担当部分が大幅に遅れる事態に備えて、1997年以来自前のサービス・モジュールを開発してきている。ICM(Interim Control Module)と呼ばれるこのサービス・モジュールは、軍用衛星を流用したもので、海軍研究所(NRL)で製作されている。もしズヴェズダーが今年の12月まで打ち上げられないようであったら、アメリカはICMを代わりにスペースシャトルで打ち上げることになろう。ICMの製作コストは2億1000万ドルだが、ズヴェスダーが予定通りに打ち上げられても無駄になるわけではなく、2001年以降にはISS支援用に打ち上げられるとされている。
 

No.54 :STS-101
投稿日 2000年4月14日(金)13時12分 投稿者 江藤 巌

 花粉症のせいか、書き落としや間違いが多い。

 オービター・アトランティスはOV-105ではなくて、OV-104である。ミッション名はSTS-101。
 そのアトランティスは、今回初めて新しいコクピットで飛行する。シャトルのコクピットは基本的に1970年代初期の設計で、丸形計器の代わりにCRTディスプレイを配した当時としては先端的なものであったが、いまとなっては古くさいし機能的にも遅れている。
 アトランティスのSTS-101ミッションで初めて宇宙を飛ぶ新しいコクピットは、Multifunction Electronic Display Subsystemと呼ばれ、従来の3面のモノクロームCRTに代えて、11面のフルカラー・ディスプレイをインストルメント・パネルに並べている。
 打ち上げ延期の原因となったラダーの制御装置(Power Drive Unit)の交換は完了した。
 STS-101は、シャトルにとっては98回目のミッション、アトランティスの21回目のミッションである。現在の予定だと、今年9月に予定されているSTS−92が、シャトルの記念すべき100回目の打ち上げになる。STS-92には、NASDAの若田光一宇宙飛行士も搭乗する。

No.53 :補足
投稿日 2000年4月14日(金)02時37分 投稿者 江藤 巌

 すみません。下の記事でMPLの着陸シークェンスを書き込むのを忘れました。

20:03 12:03 -12 min Turn spacecraft to entry attitude, loss of signal. We won't hear from the spacecraft again until after landing.(1426 km, 6.4 km/s)
20:05 12:05 -10 min Cruise ring/Deep Space 2 probes separate from lander (959 km, 6.6 km/s)
20:10 12:10 -5 min Atmospheric entry (142 km, 6.9 km/s)
20:11 12:11 -4 min Descent radar powered on
20:12 12:12 -3 min MARDI instrument powered on
20:13 12:13 -2 min 10 sec Parachute deployed(9.0 km, 496 m/s)
20:13 12:13 -2 min 03 sec Descent imaging begins, heatshield jettisoned(8.0 km, 286 m/s)
20:13 12:13 -1 min 30 sec Lander legs deployed, descent radar activated
(着陸脚展開)
20:14 12:14 -53 sec Radar ground acquisition, altitude(2.438 km, 80 m/s)
20:14 12:14 -43 sec Lander separates from backshell, powered descent begins(1.628 km, 78 m/s)
(レトロロケット点火)
20:14 12:14 -40.4 sec Radar ground acquisition, speed & direction(1.425 km, 82 m/s)
20:14 12:14 -40 sec Gravity turn begins(1.394 km, 83 m/s)
20:14 12:14 -39 sec Roll to landed orientation(1.307 km, 79 m/s)
20:14 12:14 -11 sec Radar cutoff(40 meters, 13 m/s)
20:15 12:15 -7 sec Constant Velocity Phase(12 meters, 2.4 m/s)
(最終減速)
20:15 12:15 +0 Touchdown. Mars Polar Lander has landed on Mars.
(接地)
20:20 12:20 +5 min Lander unfolds solar panels
20:20 12:20 +8 min Medium gain antenna pointed at Earth
20:39 12:39 +24 min Lander begins 1st transmission to Earth (45 minutes). Sends health & status, meteorology & 1 b/w image

No.52 :更新をサボっている間にもいろいろなことがあった
投稿日 2000年4月14日(金)02時28分 投稿者 江藤 巌


☆4月4日に打ち上げられたロシアのソユースTMは、ミール宇宙ステーションとのドッキングに成功して、二人の宇宙飛行士がミールに乗り移った。彼等の仕事は、休眠状態にあったミールを再度立ち上げ、点検整備することである。とりあえずの重要課題は、休眠に入る前から問題となっていた、空気漏れの個所を特定することである。

☆スペースシャトルの次回の打ち上げは、予定より遅れて4月24日以降となった。
延期の理由は、オービターOV-105アトランティスのスピードブレーキを兼ねたラダーの制御機構に異常が発見されたため。シャトルはすでに発射台に据えられており、垂直に立てられたオービターの部品を交換するという困難な作業が遂行される。
 今回のシャトルのミッション(STS-)は、無人で軌道を回っている国際宇宙ステーション(ISS)のモジュールの整備点検である。現在軌道上には、ロシア製のモジュール”ザリャー”と、アメリカ製のノード(結節)”ユニティ”が結合した形で周回している。本来ならば、これらに続いてロシア製のモジュール”ズヴェズダー”が打ち上げられるはずだが、”ズヴェズダー”の打ち上げは製作の遅れからなんども延期されている。その間に軌道上のモジュールの劣化が進んでいる恐れがあるために、予定外の点検ミッションが組まれた事情がある。
 そのロシア製モジュール”ズヴェズダー”は、今年の7月の打ち上げが予定されている。ロシア側はこんどこそ本当に打ち上げると明言しているが、アメリカの議会やマスコミの間ではこれに懐疑的な者も少なくない。議会などではロシア切り捨てを称える向きまでもあり、そうでなくてもこれ以上ロシア側の打ち上げが遅れてISS計画全体が危機に曝されないよう考えておくべきだとの声が強い。実際NASAでは、”ズヴェズダー”と同じ機能を持った代替を用意している。

☆昨年にはNASAの火星探査機が相次いで失敗したが、その背景を指摘したレポートが出ている。NASAの現長官ダニエル・ゴールディンは、就任以来”Faster,Better,Cheaper”(早い、良い、安い)なるキャッチフレーズを称えて、NASAの思いきったリストラを進めて来たが、レポートは現在のリストラを行き過ぎだと指摘している。すなわち「早い、安い」が強調されすぎるあまりに、ミッションの事前の十分なテストや点検が疎かになっているのではないかというのである。
 昨年11月火星着陸寸前に消息を絶ったMPL(Mars Polar Lander)の失敗原因に関しては、接地前に軟着陸用のレトロロケットが早期停止したのではないか、との推測が有力になってきているようだ。
 MPLの着陸シークェンスは以下のようになっている。

 すなわち、レトロロケットの点火以前に着陸脚が展開される。このときショックによって、約60%の確率で接地センサーが作動して接地信号を出す。これにより接地フラグが立ち、その後にレトロロケットが点火された際に、コンピューターがすでに接地していると誤解してレトロロケットを停止してしまうと言うのである。
 このプログラムのバグ(と呼んでも良いだろう)が事前に発見されなかったのは、開発段階で着陸シークェンスの通しテストを行っていなかったからだという。すなわち「早い、安い」路線によるテストの省略と不十分なソフトウェアの点検が、MPLの失敗を招いたのだという。
 これらの指摘に対しては、NASAも謙虚に受け止めることを表明しており、”Faster,Better,Cheaper”なるキャッチフレーズが、この先強調されなくなることは間違いない。

No.51 :総務庁報告の抄録がホームページに掲載されました
投稿日 2000年4月7日(金)09時02分 投稿者 鹿野 司

 例の総務庁報告の概要がホームページに掲載されました。
 http://www.somucho.go.jp/soumu/new_f.htm

 これを読むと、「総務の指摘」としては、まあ妥当という感じです。
 累積欠損1兆8千億という金額は、研究開発の成果などは、企業会計原則に照らし
て資産として計上しないためと、ちゃんと書いてあります。

 それに、どこにも撤退なんて話、出てません。
 今後の課題のポイントとして、
 「両事業は多額の公的資金の投入が必要とされる事業であり、費用対効果等の観点
  から評価を行うとともに、その結果を明らかにしつつ、開発の妥当性について不
  断に論議していくことが必要」
 とあります。費用対効果等の観点というのは、ちょっと難しいと思いますが、ロケ
ット事業、衛星事業全体に対して開発の妥当性を問うというより、個々のテーマの妥
当性について、不断の論議が必要といっているようですね。

 各紙を比較すると、朝日、読売は、撤退と書いてますが、毎日、産経、東京と、共
同通信にはその記述はありません。共同通信は唯一農用地公団のことにも触れていま
す。(ただし、日経本誌は未確認)
 加藤政務次官の反論については、共同通信、日刊工業、日経産業などには乗りまし
たが、他の一般紙ではゼンゼン触れられていませんでした。

No.50 :ソユースTM-30打ち上げ
投稿日 2000年4月5日(水)02時48分 投稿者 江藤 巌

 ミールの有人運用を再開させるためのソユースTM-30が、バイコヌールから現地時間4日早朝に無事打ち上げられた。SPACE TODAY
 ところで乗員の一人のカレリは、ロシア人には珍しい名前だと思ったら、ラトビア出身(国籍はロシア)らしい。彼はすでに2回の飛行歴があるが、コマンダーのザリョーチンは今回が初めての飛行になる。ロシア(ソ連)は、ソユースの二人の乗員のうち必ず一人は飛行経験者になるよう乗員を選抜するので、コマンダーが新人の乗員の組と、エンジニアが新人の乗員の組とが出来る。今回のようにエンジニアの方がコマンダーよりも年齢も飛行経験もずっと上だと、お互いなにかとやりにくいのではないかと想像してしまう。
 アメリカのスペースシャトルの場合は、機長が2回以上の飛行経験を有するベテランで、それに初めて飛行するルーキーのパイロット(副操縦士に相当)が組み合わされることが多い。シャトルの右席で1回ないし2回の飛行を経験した後、左席に昇格するわけである。

No.49 :総務庁指摘に反論の記事
投稿日 2000年4月5日(水)02時15分 投稿者 鹿野 司

 日経産業新聞、3月31日づけ、先端技術ページに「宇宙開発で反論」という記事
が掲載されました。それによると、

 日本ロケットの打ち上げ費用が高すぎるという指摘に、科学技術庁の加藤康宏事務
次官は30日の定例会見で、「日本の宇宙開発はお金をかけていない割には成果を出
している」などと述べて反論。「宇宙開発事業の見直しが必要と指摘する報道もある
が、報告書にはそのような記述はない。広報担当官の私見が入ったのではないか」と
不快感をあらわに。「日本の宇宙開発予算は、米国の10分の1以下、フランスの半
分で、開発のフェーズが違う」「軍事目的の偵察衛星の打ち上げ回数が多い外国とは
事情が違う」とした。

 とのこと。少し安心しました。
 しかし、メジャー紙ではこの手のフォローはないんでしょうかね。