宇宙作家クラブ
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No.539 :同時多発テロでNASAも警戒体制
投稿日 2001年9月12日(水)18時02分 投稿者 江藤 巌

 アメリカの政治・経済の中枢部を襲った同時多発テロの余波で、NASA(航空宇宙局)の施設もすべて平常の活動を休止している。
ほとんどの施設は11日中に臨時閉鎖され、維持や保安のための必要最小限の職員以外は自宅に帰された。
多くの施設が12日には活動を再開するが、ミッション管制などの欠かせない業務以外の職員は自宅待機を続けることになろう。
ドライデン飛行研究センター(DFRC)のあるカリフォーニア州のエドワーズ空軍基地、ケネディ宇宙センターに隣接したフロリダ州のケイプ・カナヴェラル空軍ステーションは、いずれもスレットコン・デルタ(脅威状況D)の警戒態勢にある。
スレットコン・デルタは湾岸戦争の最中にも発動されたことのない、きわめて高いレベルの警戒体制である。
NASA Watch

No.538 :相次ぐ米スペースプレーン計画の中止
投稿日 2001年9月8日(土)12時46分 投稿者 江藤 巌

 今年初めにNASAが開発中止を決めた単段軌道直行式(SSTO)打上げ機の技術デモンストレイターX-33について、アメリカ空軍も計画を引き継がないことを決めた。
X-33については、複合材料製の液体水素タンクの開発に失敗、計画が頓挫した後も、空軍が計画を拾い上げて開発を続行するのではないかとの希望的観測が流れていた。
X-33計画に対しては、NASAが1996年以来9億1200万ドルの予算を支出し、それとは別に開発メーカーのロッキード・マーティン社も自社費用3億5600万ドル(予定では2億1100万ドル)を投じていた。
 ロッキード・マーティン社のX-33/ヴェンチャースター計画のサイトは、すでに売却されている。
 またNASAと空軍、ボーイング社の共同計画として進められていたX-37無人スペースプレーン計画も、今年になって事実上の中止が決定している。
X-37計画は1999年に始まり、NASAは7200万ドル、空軍は1600万ドル、ボーイング社も1800万ドルを投じていた。
Aviation Now

No.537 :H-2A打上げを宇宙開発委員会に報告
投稿日 2001年9月8日(土)12時28分 投稿者 江藤 巌

・H-2A試験機1号機打上げを宇宙開発委員会に報告
 宇宙開発事業団(NASDA)は9月5日に文部科学省の宇宙開発委員会に対して、8月29日に行われたH-2Aロケット試験機1号機の打上げについて報告した。
 報告によると、第2段の軌道投入精度は以下のとおりで、打上げ前の計画値にきわめて近いことが分かる。

軌道傾斜角(度)   計画値   フライト結果   差(σ値)
遠地点高度(km)  36186.200    36190.627   4.427(0.100)
近地点高度(km)   251.300     251.319   0.019(0.021)
軌道傾斜角(度)    28.492     28.496   0.004(0.710)
近地点引数(度)    179.065    179.189   0.124(1.279)
昇交点経度(度)    36.384     36.345  -0.039(-0.349)

 また飛行中のイベントは、事前の計画値(ノミナル)、予測値(機体の質量・推進性能に領収試験結果等を使用した飛行経路)と実測値を比較すると、いずれも数秒ずつ遅れ気味であることが分かる。これは実際の飛行経路が、計画よりも常にやや下にあることからも見て取れる。
また想定された範囲内ではあるが、第1段のLE-7Aエンジンの実測された推力は、同じエンジンの領収試験の場合より多少低めだった。

 また報告では、H-2Aの飛行コースをモニターする飛行安全計算機の二つの系統のうち一つが、ロケットの離昇から449秒後に停止したことが明らかにされた。
 総合指令棟(RCC)の飛行安全計算機は、H-2Aの飛行経路をリアルタイムでモニターするのが役目で、飛行が計画を著しく逸脱して周囲に危険を及ぼすおそれがある際には、地上から破壊指令を送ってH-2Aを自爆させることも有り得る。
 ただし飛行安全計算機は同じコンピューター2系統を並立させた冗長系となっており、一つが停止してももう一つが飛行経路のモニターを続けるので機能に支障はなかった。
 H-2Aロケット自体は内蔵する慣性誘導システムとコンピューターによって自律飛行しているので、例え地上の飛行安全計算機が機能しなくてもH-2Aの飛行そのものが影響を受けるわけではない。

 報告ではまた、H-2Aの第2段のフェアリングが三重県大王埼南約650kmの海上に浮遊しているところを、海上保安庁が発見したことも明らかにされた。
フェアリングの回収を目指したが発見出来ず、捜索は打ち切られている。

 打上げを3時間遅れさせることになった3件のトラブルの内、配管接続部漏洩点検作業中に第1段液体酸素注排液弁に設備側から逆圧を印可した件に関しては、設備取扱い用の系統図に一部誤記があり、これをもとに手順書を作成したためと判明した。

・インターネット・ライブは史上最高のアクセス
 宇宙開発事業団(NASDA)はH-2A試験機1号機打上げに関連した広報活動について公表し、打上げ当日のインターネット・ライブ中継が86万アクセスを記録したことを明らかにした。これは日本史上最高の数字で、これまでの最高アクセスはコンサートのライブの40万アクセスだった。
H-IIAロケット試験機1号機の広報活動について

No.536 :仮の轟き
投稿日 2001年9月2日(日)22時34分 投稿者 小川一水

 打ち上げ後すぐにでも前回の続きをUPしようと思っていましたが、諸事情により遅れて書きます。諸事情のうち最大のものは打ち上げの印象が予測をオーバーフローしたこと。
 四日たった現在、やっと落ちついてまとめられそうになったので。


 2001年8月29日16時、H−IIAロケット試験一号機は離昇し、私は彼の「音」を聞いた。
 それを聞いた者は皆、他の人間に伝えるためにひどい苦労をするという。私も例外ではないが、試行する。
 音は満ちる。伝わってくるのではない。射点から放たれた球形の音波が、到達と同時に周囲の大気を占領する。以後約一分の間に厚さ二十キロの音の殻が作られ、種子島のすべてのものを呑み込んでいく。
 周波数帯を詳しく知っているわけではないが、全域を受けとめられたとはとても思えない。低域が可聴域の外にまで広がっていて、耳と体の許容範囲を越えているような感触。その低音と高音、主に二つの帯域に印象がわかれている。
 低域はジェット機に似た轟音で始まるが、その音量は際限なく上昇し、すぐに既知の何物とも違う深い轟きになる。質量が感じられるほど重い。
 高域は割れていて断続的である。短いサイクルで乾いた破裂音が連なる。落雷が至近にあったときの言葉にしがたい始めの部分。あれが続けざまに打たれる。
 ロケットの音を表現しにくい理由が実感できる。一つの音ではなく、まともな音量ではないのだ。それは雷や暴風のような自然現象の音に近い。
 人知の限界で産み出されたロケットは、その音もやはり人知の外にまで及んでいる。

 そのような分析は、打ち上げの後すぐにでもできた。できなかったのはそれに何を感じたかを、見つめなおすことだ。
 正直に言ってみる。期待ほどではなかった。
 前回書いたように、理性や判断力を吹き飛ばすほどの威力を、私はロケットに期待していた。予想外のものを考えていたのだ。
 ところが実際の音は、度外れでこそあったが、私の心がまえを根こそぎ覆すほどの力はなかった。肩透かしを食ったような気持ちさえしたものだ。
 それがあったので、打ち上げ後に他の人から聞かれた際に、私は言葉に詰まった。どうだったと言われて――良かったです、でも、と留保がついたのだ。
 かなり悔しかった。初体験だった他の人は猛烈に感動している。ケチをつけている自分が、理屈に凝り固まったわからず屋に思えた。
 それからずっと、なぜ躊躇したのか考えていた。

 単に自分の感受性が低かったせいか? ――違う。打ち上げ直前には、本当に手が震えてカメラが持てなかった。理性の枠を越えるだけの感情の揺れはあった。
 あれが人間の営為だと思えないからか。雷ならば今さら驚かないから。――そうだろうか? どれだけの数の人の手が「彼」に関わっていたか、さんざん見て回ったのに。
 初めてだったからむしろ理解しにくかったのか? それまでに何度も失敗を見ていれば感動があったのか。――いや。最初に見た打ち上げが成功であれ失敗であれ、強い感動を覚えてその後何度も見に来ている人もいる。
 そう迷っていたが、今になって、打ち上げ後の記者会見の後、答えの手がかりのようなものを見つけていたことに気付いた。

 文部大臣とNASDA理事長へ質問をした。「あなたは宇宙へ行きたいか」
 大臣は否定的な返事を、理事長はほぼ肯定的な返事をした。大臣に対しては宇宙開発に関する人物というより、外部の一般人の代表と見込んで聞いたので、意外性はなかった。だが理事長の蛇足めかしたあの返事は、期待以上だった。
 その質問をなぜ自分がしたのか。そこに鍵があった。
 今回のH−IIAの積荷は、DREとLREという試験用のささやかな機械だけだ。重量的にも性能的にも、H−IIAの全能力を要するものだったとは言いがたい。
 ロケットの音を聞きにいく。それが今回の目的だったはずだ。だがどうも、それは建前だったらしい。私は心の底で、もっとすごいものを欲していたのだ。
 私はロケットに人を運ぶことを期待していたのではないか。
 人類の最後の目標である宇宙進出、そのために力を振り絞って昇っていく「彼」が見たかったのだ。
 だから、軽い荷物を積み、エンジンの出力も絞り、力を使いきらずに上昇していくH−IIAの音に、空しさを感じたのではないだろうか。
 現時点ではずいぶん欲張りな注文だ。
 でも見当違いだとは思わない。「それ」は実現されなければならない。するだろう。地球観測や惑星探査がなにほどのものか。それこそ建前だ。行きたいからやる、これでいいじゃないか。

 ここまで書いて気付いたが、これは問題だ。つまり私は、有人ロケットができるまで打ち上げを見に行かないと言っているようだ。
 でも私はそれほどストイックでもないし、無人ロケットに失望したわけでもない。こちらの期待が間違っていただけで、打ち上げは十分面白かった。
 冬の二号機に行くかはわからない。むしろM−Vの再開が見たくなった。これだけ理屈をこねた以上、幅広くサンプルに当たって自説を検証したくなるじゃないか。
 だからひょっとしたら、内之浦に行くかもしれない。

 打ち上げを見ていない人は、以上の話が正しいかどうかわからないはずだ。
 だから調べてほしい。本、雑誌、新聞、それにウェブ。いくらでも資料はある。そして議論してほしい。それこそが、私の、そしてSACの望むところだ。
 どうしても自ら確かめたくなったら――
 音を聞きに行けばいい。彼はまた上がる。

http://homepage1.nifty.com/issui/

No.535 :H-IIAリフトオフ画像とVAB ●添付画像ファイル
投稿日 2001年9月2日(日)00時37分 投稿者 上條 晃

ようやっと一段落しました。
リフトオフの画像はつきなみなので、VAB(Vehicle Assembly Building)から望む
H-IIAを附加しました。遠くに見える白っぽいものがH-IIAです。


No.534 :H-2Aの投入軌道
投稿日 2001年9月1日(土)02時58分 投稿者 江藤 巌

・H-2Aの投入軌道はきわめて正確
 宇宙開発事業団(NASDA)は、28日のH-2Aロケット試験機1号機(H-2A・F1)の打上げ後初めての軌道データを公表した。
これは性能確認用ペイロード(VEP-2)に取り付けられているドップラ測距装置(DRE)の軌道2周回目のデータを、NASDAの増田、勝浦、沖縄の各宇宙通信所で受信して計算した結果である。

DRE(暫定)
遠地点高度 36213.9km
近地点高度   270.0km
軌道傾斜角    28.19度

 いずれも打上げ前の計画軌道(ノミナル・オービット)にきわめて近い値という。
 ちなみにロケットに搭載された誘導システムのデータを、打上げから150分語にチリのサンチャゴ局で受信した情報からの軌道データは以下のとおりである。

ロケット誘導系軌道データ
遠地点高度 36217.6km
近地点高度   274.6km
軌道傾斜角    28.19度

 なおVEP-2から放出されたレーザー測距装置(LRE)は、まだ地上から発見されてはいないようだ。
H-IIAロケット試験機1号機ドップラ測距装置(DRE)による軌道データについて
H-2A最新情報

・衛星フェアリング海面で発見
 H-2Aロケットの上昇中に高度約140kmで本体から分離された衛星フェアリングの一部が、北緯28度23分東経138度19分に海面に浮遊しているのが発見され回収されることになった。
フェアリングの破片が発見された海域は、事前の落下予測範囲よりやや南に位置する。
H-IIAロケット試験機1号機衛星フェアリングの一部発見について
 なおH-2Aロケットの第1段のLE-7Aエンジンと2基の固体ロケット・ブースター
(SRB-A)には落下地点探査用の音響ビーコンが取り付けられており、海中から発信される音波を基に落下地点を探り出す試みも行われている。

No.533 :記者会見続き,および種子島からの中継終了宣言 ●添付画像ファイル
投稿日 2001年8月29日(水)19時38分 投稿者 松浦

続いて技術関係者の記者会見です。

質問
実際のタイムイベントはどうだったのだろうか。
回答
 園田企画主任:SRBは予定通りの時刻に分離したが,それ以降はノミナル値よりも約10秒ずつ遅れている。その原因は調査中。
 中野富雄打ち上げ実施責任者代理:これはロケットの個体誤差だと考える。

質問
軌道要素はどうか
解答
園田企画主任:解析はまだだが,ほぼノミナルと推定している。

質問
感想を聴きたい
 渡辺篤太郎プロジェクトマネージャー:ほっとしている。先ほどまでの緊張との落差が大きくてうまい言葉がでない。
 丹尾新治スポークスマン:最初スポークスマンの話があったとき,カミさんから「酒を飲んだら忘れっぽくなるんだからやめろ」と言われたが,辞退できない理由があった。
 H-IIAはとてもバランスの取れたロケットだ。だからそれを自分も協力して成功させたいと考えたこと。かつて企画部門にいたときに社員の講演を薦めたこともあって,自分がスポークスマンをやることを断り切れなかったことだ。

質問
 様々な実験を打ち上げと同時に行っているがその成否はどうか。
解答
 園田企画主任:サンチャゴでテレメータを取得しているので,まだ結果が種子島に入っていない。
 丹尾スポークスマン:記者会見直前までNASDA放送を見ていたが,一部はうまくいっているようだ。

質問
 今回画像を大量に取得しているがテレメーター容量が不足していたのではないか。他に計測したかったところはあるか。
 渡辺プロジェクトマネージャー:内部にバッファメモリを積むなど様々な工夫をして,テレメーター容量をタイムシェアリングで使い切るようにした。
 今回4台のカメラで可動部分はすべてフォローしたので,今回でかなり充実した計測だったと思う。

質問
 液面の画像はどういう意味があったのか。
解答
 渡辺プロジェクトマネージャー:2段は慣性飛行をするが,微小推力で液を取り入れ口に押しつけている。しかし表面張力で液はタンク壁面をつたうので,気泡が取り入れ口に入ってしまう可能性がある。それを目で確認するのが目的だった。世界初の映像である。

質問
 2号機に向けての言葉が欲しい
解答
 渡辺プロジェクトマネージャー:もう2号機は8割できており,今から始めるというものではない。今後も1号機と同じ態度で打ち上げに臨みたい。

以上です。

 プレスセンターは午後8時にしまります。種子島からの中継もこれで終わりとなります。

 最後までおつきあいいただき,ありがとうございました。宇宙作家クラブ種子島取材グループ一同,感謝いたします。


No.532 :午後5時半からの成功記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2001年8月29日(水)19時36分 投稿者 松浦

 午後5時半からプレスセンター4Fで記者会見が行われました。以下の発言は,その場で聴いて入力したものです。記者からの質問は指が追いつかずに一部抜けています。

 最初に山之内理事長が挨拶しました(写真)。

 かくもたくさんの人を前にH-IIAの成功を報告できることは,これまでの人生でこれほどうれしいことはないし,またこれほど緊張したこともありませんでいた。この1ヶ月メディアの報道を通じて,国民の期待とご叱責を肩に感じ続けていたからです。それが,関係者にとってもはげみになったと思います。
 H-IIAの開発に全力を尽くしたNASDAや多くのメーカーの人に感謝すると同時に,これは始まりだということを強調したいと思います。
 今の日本は必ずしも順調ではありませんが,H-IIAがそれを支える一助になればと思います。ありがとうございました。

次いで遠山文部科学大臣,井口雅一宇宙開発委員会院長と挨拶が続きました。共に明るい将来を切り開くものとH-IIAを評価しました。

 質問は山之内理事長に集中しました。

質問
 今回の打ち上げをなんと評価するか。また採点すると何点か。
解答
 理事長:自分で自分の評価をするものではないか,自分としては100点を超えていると考えています。

質問
 この一年を振り返ってどうでしょうか。
解答
 理事長:正直言って3回ほど怒りを覚えたこともある。心身ともに苦闘の一年だった。

質問
 鉄道の経験との違いは。
解答
 理事長:ロケット技術の厳しさは鉄道の比ではない。鉄道は130年の歴史と数限りない失敗の上に成り立っている。私は就任した時に五代前副理事長に,「新しいロケットが壊れるなら試運転すればよい」といったら「そんなことをしたらこわれえてしまう」と言われて衝撃を受けた。列車は徹底した試運転が可能だが,ロケットはそれが不可能だ。でも共通しているところもあって,出てくるトラブルを徹底的につぶしていくしかないということは共通だ。

質問
 打ち上げ市場への意気込みは。
解答
理事長:成功体験をかさねていくことで信頼性を上げること,そして民間が積極的に行っていく必要があるだろう。

質問
 NASDAに厳しい指摘もずいぶんしていたが,今後のNASDAについてのコメントを。

解答
井口委員長:山之内理事長が「スケジュールより信頼性だ」と開発の基本方針と変えた。私の専門は鉄道と自動車だが,そこから見るとロケットは一品生産という厳しい状況があるが,その足下がふらついているのではないかと危惧していた。本来ならばH-II開発の時にやるべきこと,対症療法だけではなく再発を防ぐところまで山之内理事長が踏み込んだと思う。
 将来についてはこれから考えるが,8月に長柄委員がレポートを出したがその中で「ミニNASA」の脱却と言っている。それに私は賛成している。

質問
 今日の成功が日本の宇宙開発に対する異議は?今日のトラブルは許容範囲なのか。
回答
 理事長:失われた国民の信頼感をある程度取り戻せたことだろうと考える。トラブルは許容範囲である。

質問
 年2機程度では民間の力を引き出せないのではないか。
解答
 理事長:今回は成功の第一歩に過ぎない。信頼感を高めてコストを下げるという他の産業も辿ってきた道を進みたいと思う。
 井口委員長:自動車が安いのは大量生産だからだ。これはロケット開発をどう進めるかという理念の問題である。衛星業界はかなり自立していると考えている。

質問
 2号機では日程の遅れが許されなくなるのではないだろうか。
解答
 理事長:私は今回の打ち上げは原点だとしており,いかなる疑念も残っている限り打ち上げないという理念を変えるつもりはない。
 井口委員長:私も山之内理事長と同様,今回のトラブルは許容範囲と考える。

質問
 日本の技術はアリアンを超える可能性はあるだろうか。
解答
 理事長:ロケットは日本に限らずチャレンジングな技術で家電の域にはまだ達していないと実感している。今のロケットは100年前の鉄道と同じかなと感じている。アリアン4はほぼ成熟した技術と思うが,アリアン5はまだまだ未成熟だろう。自動車はモデルチェンジのたびに100台もの試作車をつぶすし,新幹線は250万kmのカラ走りをしたが開業後2年間はトラブルの連続だった。技術とはそういうものだ。
 井口委員長:自動車産業と宇宙産業は100倍の規模の相違がある。日本の宇宙技術は効率よく少ない予算で開発をしてきたという人もいるが,それは基礎が弱かったことの裏返しだと考える。

質問
 2号機は,インデューサーというエンジンの心臓部を新規に交換する。1号機よりもきびしいのではないか。
解答
 理事長:私は今回が一番厳しかったと考える。ロケットはどこにトラブルが出るか分からないからだ。2号機も今回と同様に厳しくやる。


質問
 1年半の中断にどのような危機を感じていたか。
解答
 理事長:一番の原点は2回の失敗による国民の失望がかくも大きかったことを知らなかったということ。それにロケットのモデルチェンジも重なる厳しい状況だった。私はこの1年半を貴重な時間だったと考えている。

質問
 山之内理事長が陣頭指揮を執ったが,過去NASDA理事長は科技庁からの天下りで陣頭指揮の取りようのない人材が理事長になっていた。今後どうするのか。
解答
 遠山大臣:確かに山之内理事長は先頭に立って立派な仕事した。今後のことは,まあ今は山之内理事長の苦労をねぎらいたい。

質問
 宇宙に自分が飛んでみたいか。
解答
 理事長:自分は飛びたくない。お金もないし年齢もある。
 遠山大臣:そういう時代が来るといいと思うが自分の飛びたいとは思わない。
 理事長:でも個人的希望では,日本の技術で日本人が宇宙を飛ぶ時代が来ればいいと思う。

質問
 RCCの理事長席の後ろに「平常心」とあったが,あれの由緒は。
解答
 理事長:あれはたまたまあるものを適当に張ったんです。ただ打ち上げから30分,私は自分の思う能力,つまり脳力でこいつを上げてやると考えていた。少々気味の悪い話だけれど。

質問
 今後,緊縮予算下でどのように日本の宇宙開発を進めていくのか。
解答
 理事長:それは答えにくいことだが,私が大学を出たころ,日本にはなにもなかった。私の世代はあらゆる産業を努力でおこしてきたのだ。その国民にできないことはない。
 また新幹線を作った天下の国鉄が赤字を出して民営化して,優良会社になったことを考えれば,宇宙開発だってできないことはないと考える。

質問s
 日本の宇宙開発の世界に置ける位置づけをどうみるか。
 理事長:圧倒的なのが米ロ,遠くを走っているのが欧州で比較的近いところにいるのが中国だろう。まあ世界の数番目にいるとは思っている。


No.531 :インターネット中継も良かったです
投稿日 2001年8月29日(水)17時04分 投稿者 鹿野 司

打ち上げ成功、おめでとう。
現地取材のみなさんも、お疲れさまです。
自宅から、インターネット中継で見てました。
ネット中継は90秒ほど時間遅れがありましたが、感動しました。
今回は、SRB分離やフェアリングがパカッと割れるところ、第二段水素タンクの内部や
LREが離れていく様子など、今までにないカラーの美しい映像が多数ありました。
はやくテレビなどの鮮明な映像で見たいものですね。

No.530 :後に残った噴射煙 ●添付画像ファイル
投稿日 2001年8月29日(水)16時56分 投稿者 松浦

 そしてもう一枚,夏の地上に残った噴射煙です。


No.528 :雲に消えていくH-IIA ●添付画像ファイル
投稿日 2001年8月29日(水)16時54分 投稿者 松浦

 重いかもしれませんが画像をもう一枚。こういうものを見ると理屈はいらないという気分になります。


No.527 :H-IIAは目の前で種子島の夏空に吸い込まれていきました ●添付画像ファイル
投稿日 2001年8月29日(水)16時52分 投稿者 松浦

 午後4時きっかり,H-IIAロケット1号機は晴天の種子島の空へと消えていきまし

 1号機だったのでした。やはりなにかが違うのです。

 私はプレスセンターの屋上で打ち上げを待っていました。

 女性の声の合成音声が打ち上げ前60秒を告げたところで左を振り返ってみると,ロケットに慣れたはずのあさりよしとおさんが歯を食いしばっていました。小川一水さんは3.6km先の射点を見つめています。右を振り向くと小林伸光さんが,泣きそうな顔で彼方を見つめていました。

 午後4時かっきり,H-IIAは上昇を開始しました。思っていたよりも加速は大きく,どんどんロケットは上っていきます。こんなに恵まれた打ち上げはめったにないと思いながら,ロケットを双眼鏡で追っていきます。

 しかしマーフィーは確かにいたのでした。固体ロケットブースター分離の瞬間,ロケットは厚い雲に一瞬だけ入り,分離は地上から見えませんでした。

 第1段燃焼終了のアナウンスを聴いてからは,プレスセンターに入ってアナウンスを聴いていました。丹尾スポークスマンを中心にマスコミ関係者がモニタを注視しています。画面に,第2段の分離映像が写りました。「きれいだなあ」という声が上がります。「まだまだだよ。2段の第2回燃焼が終わらないとね」と丹尾氏がいいます。

 なんども書いていますが,今回の成功の条件はただ一つです。第2段燃焼終了の時に高度260km,速度10.2km/秒をクリアしているかです。

 そしてH-IIA1号機はクリアしたのです。その瞬間拍手が起き,モニタに写っていた山之内理事長は,大きく手を上げて振り向いたのでした


No.526 :LRE分離成功
投稿日 2001年8月29日(水)16時48分 投稿者 江藤@種子島

4時40分少し前、LREが分離された。
現在チリのサンチャゴ局が第2段を追跡中。
総合管制棟(RCC)にいた山之内理事長は、LREの分離成功を見届けたのち
席を立って管制室を立ち去った。

No.525 :クリスマス局追跡終了
投稿日 2001年8月29日(水)16時34分 投稿者 江藤@種子島

4時30分頃にクリスマス局は第2段の追跡を完了した。
現在第2段とVEP-2は長楕円軌道(GTO)を飛行中。
VEP-2は第2段とは切り離されないが、VEP-2に載ったもうひとつのペイロード、
レーザー測距装置(LRE)は、4時39分35秒に、高度1863kmで切り離される。
LREの観測で0.2kmの誤差で軌道を決定できる。

No.524 :第2段エンジン燃焼停止。
投稿日 2001年8月29日(水)16時29分 投稿者 江藤@種子島

第2段エンジンが2回目の燃焼停止(SECO2)。
記者室に拍手が響き渡る。
ペイロードのVEP-2は計画に近い軌道に乗った模様。
今回のミッションは成功した、と言ってもよいだろう。