投稿日 2002年9月10日(火)20時03分 投稿者 松浦晋也
美しい打ち上げでした。「ロケットの爆発を見たことがある」というとうらやましがられることがありますが、あれはそんなにいいものじゃないです。華々しいだけなら花火の方がよほどいいです。多くの人たちの労苦の結晶が一瞬にして吹き飛ぶのですから、むしろ非常に重苦しい。
そんなものを見ないですんでなによりでした。一つ一つのシーケンスが成功するたびにプレスセンターでは「よし」「よっしゃ」という声があちこちで上がりました。そして2衛星の分離の時には、それぞれ拍手すら起きたのです。
こうでなくてはね。
それでは以下に午後7時からの記者会見の要旨をお送りします。
出席者は 三戸宰NASDAロケット担当理事 山之内秀一郎理事長 青山丘文部副大臣 井口雅一宇宙開発委員会委員長 青柳珪一新エネルギー・産業技術総合開発機構理事 金井宏無人宇宙実験システム研究開発機構理事
山之内:大変期待されていたし心配もかけたけれども、2衛星を無事分離し、ロケットとしてはほぼ完璧な成功を収めることができた。両衛星とも太陽電池パドルが開き、所定の電圧を発生していることを確認した。
3回成功するということの重みを実感している。H-IIAにとっては本格的な衛星搭載は初めてだったわけだ。
今後とも重要な打ち上げを行うことになる。
青山:深く感動した。過去の2回と異なり本格的な運用を開始したということだ。世界最高水準の技術確立に一歩を踏み出したと認識している。今後とも成功を積み重ねれば、日本のロケット技術を世界が認めるだろうし、今後の民間転用のためにもNASDAは今後とも努力を積み重ねて欲しい。今後とも国民及び地元のみなさまのご理解を得たいと思う。
井口:これほどまでの完璧な成功を予想していなかった。神経をすり減らして準備を進めてきた関係者にお祝いを申し上げたい。多くの国会議員やサポーターも来島したし、報道関係者もその役割を超えて成功を祈ってくれたことに感謝する。打ち上げに立ち会うのは今回が3回目だが一番緊張した。この本番に成功したということは世界の打ち上げ市場にデビューしたといっていいと思う。
三戸理事から打ち上げ経過説明
打ち上げ時間は17時20分、発射方位角は90度(東)
発車後14分21秒後にUSERSを分離
発車後29分36秒後にDRTSを分離
DRTSはチリ大学サンチャゴ局で、太陽電池パドル展開を確認
青柳USEF理事からUSERSの報告
サンチャゴ局で太陽電池パドルの展開を確認した。姿勢制御の確立をはじめとした次の段階に進むことになる。
筑波から古浜理事によるDRTSの現状報告
電力は2.7kwが発生している。
愛称「こだま」と命名した。
質疑応答
NHK:理事長に。H-IIAのビジネス参入に弾みがつくと考えているか。
山之内:日本が最先端のロケット技術を持つと言うことがこのロケットの第一の意義である。今後早期に民間に移管することになっており、ビジネスは民間の役割である。我々の役割はロケットをよい物に仕上げることである。
時事通信:理事長に。来年の秋にかけて4機、落とせない衛星が続くが自信はあるか。
山之内:いや自信といわれても。。。一機ずつ成功のために全力をあげていきたいと思う。
毎日中学生新聞:「こだま」と名付けた理由は。
古浜:開発関係者で公募した。衛星の機能を反映したやさしい名前をつけるという条件で30件以上の応募があり、その中から選んだ。
毎日中学生新聞:送ったデータがまた戻ってくるから「こだま」でなのですか。
古浜:そうです。
ほかの名前はどんなものだったのですか
古浜:覚えていないので、、後でお伝えします。
朝日新聞:今回の成功の決め手は。
山之内:毎回ベストを尽くせ、兆候を見逃すなということを繰り返しいってきた。現実には100%はあり得ない。今後ともこれでやっていく。
毎日:デュアルローンチはビジネスにアピールしたと考えるがどうか。
井口:まずビジネスですぐに成功するとは思っていない。まず日本の基幹ロケットとして高い信頼性を実現していけば、ビジネスは後から付いてくると考えている。
読売:これほどうまくいくと思っていなかったという理由は
井口:色々な準備が打ち上げを重ねるたびにスムーズにいくとは思っていたが、時間通りに上がることのすばらしさをこのような言葉で申し上げた。
ここでVIPは退場。技術説明にうつりました。まずロケット本体とDRTSについて
参加者は 園田企画主任、飯田千里打ち上げ実施責任者代理、春山スポークスマン、河内山治朗ロケット主任 金森康郎衛星主任
日経新聞:第1段燃焼時間がノミナルより7秒長いがこれはどういうことか。
河内山:ノミナルな誤差範囲内だろう。
時事通信:今後のスケジュールを守るためにはどうするのか。
河内山:低温試験(F0)で設備にかなりの不具合がでたのが今回の課題で、次回以降ここに注意することになるだろう。
共同通信:DRTSに発射前のトラブルの影響は出ていないのか。
金森:出ていない。姿勢、各部の温度、発生電力などすべて正常で影響は出ていない。
日経新聞:DRTSの今晩中に入るデータの確認したい。
金森:事前の準備通りだ。次のメインイベントは明日の第1回アポジエンジン噴射である。
東京から共同通信:第2段の飛行経路はどんなものだろうか。いろいろと教えてください。
河内山:細かい値を今手元に持っていないので後で答えたい。
共同通信:SRB-Aの燃焼が11秒ぐらい短いのだが、確か前回もこういう傾向がでていなかったか。
河内山:前回のデータで確かにブースターの力積が足りないことが確認されている。今後データを検討することになるだろう。
続いてUSERS宇宙機について
出席者は青柳USEF理事、村上雅人超伝導工学研究所部長、金井理事、地区多喜真専務理事 西本淳哉経済産業省宇宙産業室室長
金井:軌道傾斜角30.4度、高度450.3kmの予定していた通りの軌道に投入された。18時34分にサンチャゴ局でテレメトリーを確認、パドルの展開を確認、その後地球を一周してきたところで沖縄局でテレメトリー受信して、太陽補足モードに入っていることを確認した。
明日以降3軸制御確立、軌道変換などのメインイベントが待っている。
朝日新聞:今回NASDAの打ち上げを、ロケットと管制移行の2点で評価してほしい。
金井:ロケットは100点満点以上ではないかと思う。また、これまでのNASDAとの打ち合わせは気配りのきいた対応をしてくれたと思っている。技術のみならずユーザーへの対応としてもすばらしかったと思う。
管制については、回線的にむずかしいかと思っていたサンチャゴでも受信できた。今後とも作業は続くが、これまでのところはうまくいっていると思う。
時事通信:これまでの日本の宇宙開発は、旧科技庁と文部省が中心だったが、経済産業省としては宇宙の産業利用に今後どう取り組んでいくのか。
西本:これまでも地球観測衛星JERS-1や実験衛星SFUといった色々なプロジェクトをやってきた。通信放送の分野では十分な商業利用が行われているが、リモートセンシングや宇宙環境利用が少しずつ広がっていくのだろうと考えている。一歩でも宇宙環境を実用に近づけるべく頑張っていく。サンプルの回収をぜひ成功させたい。
共同通信:SERVISは打ち上げにロシアのロケットを使うが、SERVIS2で日本のロケットを使うつもりか。
金井:1年以内に決めたい。打ち上げ軌道や金額を勘案して決めることになる。私も日本人なのでできれば日本のロケットを使いたいと考えているが。
朝日新聞:今回の超伝導材料を選んだ理由を聞きたい。
村上:搭載したのはガドリウム・酸素・銅系の材料だ。この材料は液体窒素温度で大きな磁力を発生する。大きな結晶ほど強い磁場が発生するという性質があるが、大きいものほど地上で作ると質が落ちる。宇宙空間なら質の高い大型決勝が得られる可能性があるのでこの材料を選定した。
時事通信:愛称は?
金井:USERSという名前そのものが、顧客を意識した愛称である。当初から別の名前を付けることは考えていなかった。
以上です。
今回は種子島ゴールデンラズベリー賞は出しません。相変わらずおバカな質問をしている記者はいましたが、いまいち「リレー」ほどのインパクトはかけましたし、ストリーミングがあるので実名であちらこちらで親しまれているようなので、あえてさらに石を投げることもないだろうと判断しました。彼の更正を心から祈るものですが、今回の質問を見ていると無理かなあという気もします。
頼むよ、日本を代表する大メディアで働いて給料もらっているのだから。
これにてSAC種子島中継は終了します。
そして最後にすべての関係者に
「おめでとう!」
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