宇宙作家クラブ
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No.667 :スペースシャトル・コロンビア、帰還途中で爆発
投稿日 2003年2月2日(日)00時06分 投稿者 野尻抱介

 速報です。スペースシャトルSTS-107コロンビアが帰還中、テキサス州上空で爆発し、多数の破片になって墜落した模様です。
 CNNで数個のファイヤーボールが飛行する様子を放映しています。

http://spaceflight.nasa.gov/shuttle/
http://www.cnn.com/2003/TECH/space/02/01/shuttle.landing.ap/index.htmll

No.666 :ラズベリー色の新空港(これでおしまい) ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月20日(金)01時45分 投稿者 松浦晋也

 新種子島空港が示しているのは、「文部科学省も国土交通省も、さらには現地種子島の行政機関も、種子島を選挙区とする政治家も、さらには日本政府も、どこも口では日本が商業打ち上げ市場に参入すべきといいつつも、本気で商業打ち上げについて自分の頭をつかったことがない」ということでしょう。トンネルひとつで衛星が運べないという設計がすべてを証明しています。

 特に国土交通省。この有様はつまり、光に向かって走るぞうり虫のように、反射神経のみで機械的に地方空港整備を進めてきたということなのでしょうか。

 商業打ち上げは客商売です。世界の商業打ち上げ市場は非常に厳しい状態が続いています。ロケットは供給過剰で、衛星は大型化が進み寿命が延びた結果打ち上げ数は減りつつあります。そこに参入しようというのだから、それこそ顧客に対して徹底したサービスを提供する覚悟を態度で示さなくてはなりません。銭のためには客の前に這いつくばる覚悟が必要なのです。ましては商業打ち上げ参入が国策なのですから、「本気」を世界に示すことは日本という国の世界に対する信用をも左右する問題です。

 この空港の設計はカスタマー・サティスファクションという概念を持たない者が設計したと言わざるを得ません。本気で世界に向かって「いらっしゃいませ」と笑顔を見せる気があるのでしょうか。あるいは商業打ち上げの推進とは口先だけで、まだまだ官需と公共事業のぬるま湯の中につかっていたいという意志の現れなのでしょうか。

 かつてのYS-11の失敗の一因は、通産省と運輸省が権限を巡って争ったために効果的な施策がタイムリーに打ち出せなかったということがあります。この空港の設計は、文部科学省と国土交通省の間の風通しがいかに悪いかを示しています。YS-11の二の舞を宇宙でも繰り返すつもりなのでしょうか。

 SAC取材班は「あ・き・れ・た」の4文字が頭をぐるぐると巡り続けるまま、現地を離れたのでありました。

##事実関係など誤認がありましたら指摘をお願いいたします。必要ならば訂正を出します。

(写真は工事現場を眺める笹本)


No.665 :ラズベリー色の新空港(その3) ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月20日(金)01時17分 投稿者 松浦晋也

 空港に衛星を持ち込むことができても、その衛星をさらに宇宙センターに運び込むには道路が必要です。

 前の書き込みの写真を見てください。この空港はハンガー設備が北側にあり、南北の交通を滑走路下のトンネルで結んでいます。宇宙センターのある南種子町に向かうためにはこのトンネルを通らなくてはなりません。

 写真は、そのトンネルの入り口です。比較する物がないので分かりにくいかと思いますが、トンネルの天井の高さは4mちょっとです。おそらくは全高3.8nのトラックが通過できるということを前提に設計されているのではないかと思います。

 それでは現在の商業衛星がどの程度の大きさかと言えば、MTSATの場合、本体部分だけで2.4×2.2×3.0mあります。日本初の2t級衛星「きく6号」では本体が2×3×3mです。打ち上げの時に直径4m(きく6号)、5m(MTSAT)のフェアリングを使うことからして、輸送用容器に入れた状態での全高は4mを超えるでしょう。

 つまり、トレーラーに乗せた状態では、トンネルを通過できず、宇宙センターに運び込めないのです。

「いったん西之表に出してから国道経由でセンターに運べばいいのではないか」

 はい、その通りです。しかし、まず「お客様」にそのようなことを要求するのでしょうか。また、種子島の国道58号は、NロケットからH-Iまでのロケット輸送用に整備されたもので、H-IIからは島の南西にある島間港からロケットをセンターに運び込むように道が整備されています。果たして現状で全高4mを超える衛星を運べるかどうか。それ以前に、西之表へ出る道をかなりの距離整備する必要もあります。それは相応の出費を伴います。

「そのように道を整備すればいい」
 つまり衛星を口実に国道を整備するということでしょうか。それならば、空港から直接南に衛星を運べるように道を整備するのが筋ではないでしょうか。誰のための道かといえば、H-IIAのカスタマーのための道なのです。

続きます。


No.664 :ラズベリー色の新空港(その2) ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月20日(金)00時54分 投稿者 松浦晋也

 新種子島空港は、国土交通省の地方空港整備計画の一環として1994年に建設が決定され、2006年からの利用開始を目指して建設が進められているものです。1200m級空港に就航しているYS-11が退役することを視野に入れて、MD-80系のジェット機の就航が可能な2000m級滑走路を1本持っています。総工費は250億円

 場所や道路などは、このページが詳しいです。

 写真は現地にあった地図です。山間の山頂を削り谷を埋め立てて造る空港なので、アクセス道路が滑走路下のトンネルを通るという設計になっています。

 一切商業打ち上げについて考慮していないという点を説明しましょう。

 派手に上昇するロケットばかりが目立ちますが、商業打ち上げはシステムとして行う事業です。射場へのロケットや衛星の持ち込みや、それらの整備、ロケットや衛星に充填する推進剤の生産、輸送、貯蔵、打ち上げ期間やターンアラウンドなど、すべてが容易かつ低コストに可能なシステムでなければ、商業打ち上げの成立は難しいのです。
 中でも輸送システムは重要です。特にカスタマーである衛星を容易に射場に運び込むインフラストラクチャーは、打ち上げ総経費に影響するという点でも非常に重要です。

 欧州の南米フランス領ギアナも、アメリカのフロリダ州のケープカナベラルも、衛星を大型輸送機で一気に射場に運び込むことができます。それはカスタマーサービスとしても必須な設備です。

 では新種子島空港はどうか。

 空港を建設するなどということはめったにあることではありません。そして打ち上げは国家が種子島で行っている事業であり、文部科学省は商業打ち上げの推進を推進する姿勢を示しています。最近ではH-IIAの三菱重工業への移管が決まっています。
 空港を管轄する国土交通省、旧運輸省は、1990年代にアメリカの商業打ち上げが米運輸省の管轄になったことから、商業打ち上げは運輸省の管轄であるとの姿勢を示していました。

 商業打ち上げの要になるべき新種子島空港にどのような工夫がこらされているのか。

 まったく何もなされていません。

 まず2000mという滑走路がどうかを考えてみましょう。

 静止軌道初期重量が2tを超えるようになった現代の商業衛星輸送には、大型4発輸送機が使われます。ちなみに1999年に打ち上げに失敗してしまった運輸多目的衛星「MTSAT」(米スペースシステムズ/ロラール社製)は、イギリスのエア・フォイル社が運行している、旧ソ連製のアントノフAn-124輸送機で鹿児島空港に運ばれ、陸路鹿児島港へ、そこでさらに輸送船に積んで種子島へと運ばれました。

 商業打ち上げがビジネスである以上こんな面倒なことはそうそうやっていられません。アントノフAn-124が直接種子島に着陸するのが一番です。では、An-124の滑走距離はといえば、離陸には3000mが必要ですが着陸には800mしか必要ではないのです。150tもの貨物を運ぶ巨大輸送機のAn-124ですが、かさが大きい割に軽い衛星のみを搭載し、しかも燃料を使い切った状態で着陸すると意外に短い距離で着陸できるのでのです。
 もちろん帰途の燃料は一度鹿児島にでも降りてから補充する必要があるでしょうが、どちらにしろ種子島から貨物満載にできるような需要はないでしょうから、それなら他の空港で帰路の荷物を積めるように手配するほうが得というものでしょう。

 おお、新種子島空港は商業打ち上げに使えるのか。ところがそうではないのです。

 まだ続きます。


No.663 :みどり2続報、のぞみスイングバイ、そしてラズベリー色の新空港 ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月20日(金)00時11分 投稿者 松浦晋也

 H-IIA4号機で打ち上げられた地球観測衛星「みどり2(ADEOS-II)」は初期クリティカルフェーズを終了しました(NASDAリリース)。打ち上げ直後のもっとも不安定でトラブルを起こしやすい時期をくぐり抜け、三軸姿勢制御を確立したわけです。スラスターの動作異常は調査継続、太陽電池パドルの張力異常はセンサーの異常らしいとのことで一安心です。
 これから主要なセンサーの電源を順次投入してチェックし、ファーストルック(最初の観測データの取得)へと進みます。

 次の日本宇宙開発の大型イベントは、宇宙科学研究所の火星探査機「のぞみ」の地球スイングバイです(ISASの「のぞみ」ページ)。「のぞみ」(1997年7月4日打ち上げ)は1998年12月の地球周回軌道脱出時に、ロケットエンジンのトラブルで十分な速度を出せず、その後地球スイングバイを繰り返すことで速度を得て、火星へ到達する軌道を選んで飛行を続けています。今回の地球スイングバイで「のぞみ」、地球標準時12月21日午前7時36分57秒に地球から3万5900kmの地点を通過して、天の北極方向へと大きく放り上げられつつ、地球と併走する軌道に入ります。来年6月19日の地球スイングバイで、再度軌道を地球や火星が巡る黄道面沿いに変更し、2004年1月に火星に到達する予定です。

 スイングバイに成功した後も、本来、黄道面内で運用されることを前提に設計された探査機を黄道面から離れた軌道を飛ばすことは、地球との通信の確保や、太陽光の当たり方による探査機内部の温度変化などで極度に難しい運用を強いるとになるでしょう。そして長い旅の先には、最大の難関である火星周回軌道投入が控えています。

「のぞみ」に幸運を。「のぞみ」関係者に強運を。

 さて、種子島をクルマで巡っていたSAC取材班が見つけたのは、種子島新空港の建設現場でした。そして、「おお、空港だ」と見ていくうちに、唖然呆然愕然の実態に気が付いてしまったのです。

 結論を先に書きます。種子島新空港は、商業打ち上げのことをなにひとつとして考慮していません。何一つとして、です。

(写真は、新空港の誘導灯を設置するための橋梁設備。笹本祐一曰く「この空港の着陸料がいくらになるか考えたくない」)


No.662 :種子島ゴールデンラズベリー賞(H-IIA4号機打ち上げ)
投稿日 2002年12月17日(火)00時51分 投稿者 SAC種子島取材班

 今年の日本の打ち上げはすべて終わりました。H-II4号機の打ち上げは予定した日の予定した時間に行われ、成功しました。

 しかし衛星の運用はこれから始まり、その衛星が致命的な故障を起こすか、寿命を全うするまで続きます。すでに、ADEOS-IIこと「みどり2」にはいくつかのトラブルが出ています(NASDAリリース)。中でも太陽電池パドルの張力が予定より大きいというのは少し気になります。というのは前衛星の「みどり(ADEOS)」は太陽電池パドルが太陽に熱せられて膨張収縮する時にかかる張力に耐えられずに破断し、機能喪失してしまったのですから。
 ともあれ、この程度のトラブルは一品製作で、事前の実地試験なしに宇宙環境へと投入する衛星ではままあることです。おそらくはこれまでの経験を生かして乗り切ることができるでしょう。

 衛星運用担当者の気の抜けない日々は始まっています。

 さて、打ち上げ記者会見でもっともアレでナニな質問をしたメディアを表彰する種子島ゴールデンラズベリー賞の発表です。

 今回も該当者なし。ただし準ラズベリー賞を出すことにしました。シルバーラズベリーとでも命名すべきでしょうか?

 種子島準ゴールデンラズベリー賞(H-IIA4号機打ち上げ)

 受賞者:共同通信の誠実君
 表彰理由:12月13日の記者会見における以下の発言
 「誠実に答えてくれませんか」

 誠実君は、記者会見席上で配布された打ち上げシーケンス表(打ち上げ後何秒で何が起きるかを記した表)が過去に配布されたものよりも簡略化されているとして、きちんとすべてを記した表を出すよう、NASDAに要求しました。ご丁寧に「これは要求です。質問じゃございません」と強調して、です。

 ところが、彼の欲しかった表は、事前に配布されたプレスキットに入っていたのでした。その旨スポークスマンから指摘されると、彼は「これは最終的な数値ではないはずだ」として「そういうお答えをされないで、誠実にこちらがこういうのだしてくださいということに答えてくれませんか」とさらに粘りました。対するスポークスマンの答えは「プレスキットのものとほとんど変わっていないので十分に参考になると思います」、ここで広報が「できるだけのことはします」と言って終了しました。

 相手をいい気分にさせて目的のデータを引き出すのが記者の手腕で、謝罪記者会見でもないのに高圧的態度に出てごり押ししてどうするよ、という時点でまずポイント+1。
 
 さらに「よこせ」と言ったデータが手元にすでにあったというのは、お前プレスキット読んでないだろ、でポイントをさらに+2。これは恥ずかしい。記者としてとっても恥ずかしい。

 打ち上げ時のシーケンスというのは色々想定して計算し、最後は最終的な衛星の重量などの実測値で計算しますから、事前に印刷するプレスキットの表は最終的なものと弱冠違うのは彼の言った通りなのです。が、結局最後は実際にやってみると10秒ぐらいは平気でずれるものなのです。

 そこ突っ込むべきところじゃないだろ、というのでポイント・プラス3。

 ちなみにNASDAは誠実に、その後最終シーケンス表を出しました。それはプレスキットの表と一部のイベントが2秒しか違わないものでした。また打ち上げ後に実測したイベントの起きた時間も公表されましたが、予測値と最大で9秒ずれていました(第1段燃焼終了が予測値 6分35秒が、実測値6分44秒)。この程度は、事後の検討項目とはなりますが異常ではありません。

 さて、NASDAが誠実に対応した以上、今度は共同通信が誠実に記事で返す番です(これはもちろんなれ合うということとは違います。慣れと予断で記事を書くなということです)。共同通信の配信記事が誠実だったかどうかは、このページを読んだ皆さんで判断いただければと思います。

 準ラズベリー賞に留まった理由は、まさにこれだけの説明を要したとという点にあります。やはり、「リレーって何ですか」の衝撃にはかなわないということで。

 特に賞品はありません。誠実君には、プレスキットのシーケンス表、その後NASDAが出した最終シーケンス表、実際の打ち上げの実測値の3つを比較して、何が読みとれるか400字でまとめよ、という課題を出しておきます。

 さて、今回のSAC報道はこれで終わりではありません。打ち上げ成功記者会見の後、種子島を自動車で走り回っていた我々は、種子島中央よりやや北、中種子町と西之表市の境付近で、誠実君どころではないゴールデンでラズベリーなものを見てしまいました。

 これについては後の書き込みにて。

No.661 :成功記者会見:第三部ビギーバック衛星編 とても安い ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)13時53分 投稿者 松浦晋也


続いてピギーバック衛星の記者会見です。

出席者は
春山スポークスマン

豪州衛星システム共同研究センター
エクゼクティブディレクター
Mr.Brian Embleton

千葉工業大学
林友直教授

NASDA
技術研究本部
岩田勉 副本部長

まず広報から
 衛星分離画像のダウンロードに成功した。

 FedSAT 打ち上げ後31分
 WEOS 同33分
 マイクロLabSAT 同35分
 
豪州
 打ち上げ成功に感謝する。我々のチームは非常に少人数でエンジニアは若い。日本の国際協力なくして今回の成功はなかったろう。

林教授
 WEOS打ち上げ成功を感謝する。小さなチームで、学生諸君にも10年に渡る研究に少しずつ関わってもらった。小さいけれども将来性のある機能を備えた衛星で、比較的少ない予算で仕上げている。これまで謎に包まれている鯨の生態系が明らかになることを期待している。さらには、小さな衛星でも役に立つことをお見せすることで宇宙開発が活性化することをねらっている。
 この後は3mのマストをのばすという仕事が残っており、これが延びると姿勢が安定する。
 鯨につけるプローブはピン留めで取り付けて鯨が呼吸で浮上した時にGPSの位置データと海中で測定したデータを送信する。
 鯨の生態がよくわからないのでプローブの設計に苦労している。これからは取れたデータに応じてプローブの設計を進化させなくてはならないと思っている。

岩田氏
 マイクロラブサットは、非常に小さな衛星で若手が中心になって開発した。50kgという小さな衛星で、実用衛星に近い働きができないものかという発想だが、電力を十分に取る必要があるというところに目を付けて、3軸姿勢制御を小型衛星に積むことが特徴となっている。また、進歩が著しい地上用コンピュータを冗長系を組んで衛星に積んでいる。小さくて頭のいい衛星だ。

質疑応答
質問:小型衛星は大型衛星に対する価格破壊だと考えている。それぞれの衛星の価格が知りたい(ちなみにADEOS-IIは480億円)。

FedSAT
2000万豪ドルである。これは最初のミッションであり、初期投資が含まれている。その教育効果は絶大だ。次は1000万豪ドルでできると思う。


 衛星を作る価格としては、7〜8000万円である。普通の衛星の2桁価格を下げたいというのが最初の目標で、それよりは増えてしまった。今後、この値段ならと後に続く者がいるとい

岩田
 4億円弱です。これには初期投資が含まれており、今後はもっとやすくなるだろう。
 
質問:分離をしたという理解でいいのだろうか。分離高度や正確な時間を知りたい。

春山
 今データがないので、少々待って欲しい。また衛星軌道の詳細はそれぞれの担当機関が出す。
 
豪州
 10時間6周回で軌道を決定する。


 1周目には内之浦の宇宙科学研究所に追跡してもらい、健全性を確認している。ただ、内之浦には復調装置がないので、6周回で千葉工業大学での受信を行う。

岩田
 マイクロラブサットは筑波に小さなオペレーションセンターを作って運用している。

質問:千葉工大の受信データの中味は。

林:まだ復調していないので、これまではスペクトル分析のデータだけである。

質問:鯨にプローブは付いたのか。

林:小笠原で取り付けを試みたがまだである。現在は室戸で元捕鯨関係者の長岡さんという方が取り付けを試みる予定だ。当面電池式のプローブが2基しかないので、そのデータを見て国際協力などへと展開したい。

以上です。


No.660 :成功記者会見:第二部ADEOS-II編、名前は「みどり2」 ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)13時51分 投稿者 松浦晋也

ncb00132@nifty.ne.jp


 ここでVIPは退席。ここからは担当者レベルの記者会見です。

出席者は

CNES
DCSプログラムマネージャー
Mr.Claude Gal

NASA
SeaWindsプログラムマネージャー
Mr. Moshe Pniel

NASDA
春山幸男スポークスマン

NASDA
黒崎忠明
ADEOS-IIプログラムマネージャー

国立環境研究所
小林博和
ILAS-2プロジェクトリーダー

CNES
POLDERプログラムマネージャー
Mr Francois Bermudo

黒崎氏から説明
 発生電力を増田と沖縄局で衛星テレメーターを確認5792Wという十分な電力発生を確認した。現時点でこの値なら十分である。そのほか異常は出ていない。詳細は今後の判断が必要となる。事前に想定した通りの動きをしている。

小林氏から説明
 ILAS-2は来年1月15日のイニシャルチェックアウトで機能確認を行い、2月3日に最初のデータ取得を行う。

NASA
 まずおめでとうを言いたい。センサーは正常で温度ほかの状況はノミナルである。SeaWindsは雲を通して地球の海の90%を2日でカバーする。風向風速の観測は1996年に始まり、現在はQuickSCAT衛星で継続している。地球観測衛星のデータはお互いに参照することで地球環境の観測に役立つ。それはジグゾーパズルに似ておりSeaWindsのデータはメジャーなピースだ。
 同時にSeaWindsからは海氷面の面積のデータも得られる。これもまた重要なデータだ。

CNES
 このすばらしい打ち上げに立ち会うことができたことを感謝する。POLDER2は、「みどり」搭載のPOLDERに続くもので、そのデータは相互に比較することになる。 POLDER2は、偏光を観測する広視野カメラであり、地表や海面の太陽光反射の偏光を波長別に測定する。データの受信と配信はCNESが行う。
 これまでの協力を通じて培った体制は今後のチェックアウトでも役立つであろう。将来ともこの関係が継続強化されることを期待する。

CNES
 ARGOS-NEXTはフランスとアメリカが1978年以降進めてきた衛星経由データ収集システムARGOSの発展型である。測位可能な移動体からのリアルタイムのデータ通信は、海上のブイからのデータ収集、野生動物に取り付けた装置からのデータ収集などでは唯一といってよい役割を担ってきた。1993年に決まったARGOS-NEXTのADEOS-IIへの搭載が決まった。今後、同様のミッション機器は欧州の気象衛星に搭載されることになっている。すでに日本とフランスの地上データ処理施設は完成しており2003年5月には運用を開始する予定だ。

質疑応答
種子島、東京、筑波ともなし。

以上です。


No.659 :成功記者会見:第一部VIP編 ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)13時49分 投稿者 松浦晋也


午後0時過ぎから行われた成功記者会見の様子です。

出席者は以下の通り。

フランス国立宇宙研究センター(CNES)の軌道上システム部長
Mr.Marc Pircher

宇宙開発委員会
井口雅一委員長

望月義夫
環境大臣政務官

大野松茂
文部科学大臣政務官

宇宙開発事業団理事長
山之内秀一郎

NASA地球科学局長
Mr.Ghassem Asrar

まず山之内理事長から
 H-IIA4号機はほぼ予定通りに飛行を続け、ADEOS-IIの分離に成功した。ADEOS-IIは太陽電池パドルの展開を確認している。これから1、2ヶ月かけて機能を確認する。とりあえず順調にスタートをを切ったといえる。ピギーバック衛星の分離は未確認である。

大野政務官
 今回の打ち上げは3号機に続いて、ロケットが世界最高水準の信頼性確立に向けての大きな成功である。宇宙開発事業団には今後さらなる信頼性向上を願いたい。
 
望月政務官
 本衛星は環境省のセンサーが搭載されている。関係者の努力に感謝したい。搭載センサーによるデータは地球環境保全に大いに役立つものと期待している。取得データを最大限に活用して環境保護を進めていきたい。

井口委員長
 4連続成功、しかも予定の時刻に遅れずに打ち上げることができた。物づくりの原点は現場にありとして、宇宙開発委員会は現場に足を運んでいる。このところ4機の継続打ち上げと継続的製造で、現場が習熟して手慣れた様子で作業をしているのを見て、確実に信頼性が上がっていると感じた。
 ロケットはあくまで衛星を打ち上げる手段であり、衛星は各種データを得るための手段である。ADEOS-IIは世界中がその取得データを待っている。日本も宇宙への確実なアクセスという点では、だいたいの達成できるようになった。これからは宇宙からのデータを速やかに共有することが必要になるだろう。

追跡管制担当の古浜NASDA理事
 午前11時33分に、ギアナ・クールー局で太陽電池パドルの展開を確認し、「みどり2」と銘々した。

NASA
 打ち上げ成功に祝辞と感謝の念を述べたい。ADEOS-IIは、我々の母星がどのように機能しているかということを知るために一時代を画するものだ。技術的な挑戦であることにとどまらなず、地球を知るために大きな意味がある。我々のSeaWindsは海上の風向風速を測定することができ、地球科学だけではなく天気予報や台風の進路予測などにも使用できる。この計画に携わった多くの科学者と技術者、その家族に感謝したい。
 
CNES
 今回の打ち上げ成功は、関係者のプロフェッショナリティの成果である。2つのフランスの機器搭載は、日仏の宇宙での協力のすばらしい結実である。POLDER2は、温室効果の研究に大きく貢献するだろう。ARGOS-NEXTは、データの収集に大きな意味がある。
 打ち上げは非常に難しいものだ。関係者に再度おめでとうと申し上げる。

山之内理事長より
 今報告が入り、3衛星分離を確認した。
 拍手がありました。

質疑応答
質問:理事長に、今の心境。そしてH-II失敗からここまで復帰した技術的要諦を教えて欲しい。
山之内:今回はまだ実用衛星としては2回目の打ち上げで、経験が浅いなかで順調な飛行をしたことに対して、メーカーをはじめとした関係者に感謝したい。
 H-IIの2回の失敗経験が、H-IIAの成功に、大きな礎になったと感じている。H-IIも5回の成功の後2回失敗したのだから、今回の成功に気を緩めることなく成功を続けていきたい。
質問:ADEOS-IIの太陽補足はうまくいっているのだろうか。
筑波から古浜理事:現在衛星は地球の陰に入っており、まだ太陽補足できていない。
筑波から:そろそろ日照があるはずなのでデータ確認を行っている。

筑波から
質問:カメラ3台を搭載している割に分離などのイベント映像を撮影しているはずだがどうなったのか。
種子島広報から答え:映像は一周回後の可視でダウンロードする予定だ。
質問:年間3回の打ち上げはきつかったか。
水戸理事:そんなことはない。むしろ年間4回ぐらい打ち上げがあったほうが品質が安定する。

種子島に戻して
質問:国際宇宙ビジネスへの参入に弾みがついたと思うがどうか。
山之内:NASDAの役割は技術の確立であり、ビジネスは民間の役割。今回の打ち上げで技術的バックボーンはできたと思うが、これがビジネスとして確立するかどうかは、これからの民間の努力にかかっている。


No.658 :ピギーバック衛星のお値段
投稿日 2002年12月14日(土)13時42分 投稿者 笹本祐一

 笹本です。
 今回のピギーバック衛星についての予算を質問したところ、いろいろととんでもない数字が出て来ました。
 オーストラリア最初の衛星であるFedSATは、開発費、地上設備の建設費、スタッフの養成まで全部含めた数字で二千万オーストラリアドル(1オーストラリアドルは約六八円)。
 千葉工大の鯨観測衛星は、本体のみ、開発費研究費などを計算せずに7000万から8000万円で出来ております。
 NASDAのμ-LabSatは開発費からで四億、本体の値段は「その半分くらいかなあ」(技研副本部長岩田、談)だそうです。
 ピギーバック衛星の意義は、手軽で安いことにあります。これらの衛星の値段は、NASDAが今までに打ち上げた衛星より二桁から物によっては三桁も安くなっています。

 マイホーム程度の値段で、衛星が上げられるようになってきたわけだ。 
 

No.657 :ピギーバック衛星分離成功
投稿日 2002年12月14日(土)12時26分 投稿者 笹本祐一

 笹本です。
 先ほど、種子島報道センターの記者会見場において三基のピギーバック衛星が正常に分離されたとの発表がありました。
 四号機はそのミッションを完全に達成しました。

No.656 :写真その5 ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)11時20分 投稿者 松浦晋也

 種子島の青空に、巨大な力が駆け抜けていった痕跡が残り、風に吹かれて消えていく。


No.655 :写真その4 ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)11時18分 投稿者 松浦晋也

 そして大空の底へ、宇宙の入り口へ


No.654 :写真がうまくアップできなかったので ●添付画像ファイル
投稿日 2002年12月14日(土)11時03分 投稿者 松浦晋也

再度アップ


No.653 :写真その3
投稿日 2002年12月14日(土)10時59分 投稿者 松浦晋也

 轟音は打ち上げから約10秒たって聞こえてきます。
 写真撮影:牧野知弘