宇宙作家クラブ
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No.874 :7日午後2時からの延期記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月7日(木)15時08分 投稿者 松浦晋也

 午後2時からの天候判断の記者会見です。出席者は的川教授と、ASTRO-EIIの責任者である井上一教授。

的川:大変残念なことですが、昨日の天候判断が外れて、本日は打ち上げ日和となってしまいました。明日以降また天気が悪化するという判断で、打ち上げを10日以降に延期することにしました。10日に打ち上げるかどうかの判断は9日の午後2時に行います。

――マイクロカロリーメーターの再冷却は観測機器に負荷をかけないのか。
井上:大丈夫です。

――打ち上げは10日ですか。
的川:そう思って良いです。正式には前日午後2時ぐらいにアナウンスします。
――延期でかかる費用は。
的川:以前は1日1300万円と言っていました。今はもう少し高くなっていると思います。
 ああ、今雨が降ってきましたね。まあ、打ち上げは終わっている時刻ですが(笑)。本当にちょっとしたタイミングなんですよねえ…

――衛星フェアリングが雨を嫌うということだが、材質を変える予定はないのか。
的川:今のところないです。コルクを使っているのが雨に弱い原因ですが、コルクの良さというのもあるのですよ。

――ASTRO-EIIの設計とASTRO-Eの変更点は。
井上:基本は同じですが、大きな変更点はマイクロカロリーメーターの冷却に機械式冷凍機を装備しました。冷凍機が100%動作すれば、Eの寿命2年がEIIでは3年に伸びます。この5年間で観測機器の改良が進み、マイクロカロリーメーターは性能が倍になりました。X線望遠鏡も像の精度を向上させています。これらによって衛星は若干重くなって1670kgから1707kgになっています。
 マイクロカロリーメーターの寿命が終わった後も残りの観測機器は観測を続けます。衛星全体の寿命は衛星が落下するまでで決まり、過去の例では5年から10年は使えることを期待しています。
 この衛星は姿勢制御をモーメンタム・ホイールで行っていますので、スラスター推進剤がなくなっても観測は続けられます。姿勢制御はモーメンタムホイールと磁気トルカで行います。

――ASTRO-EIIは太陽電池パドルが固定ですが、観測に差し支えることはないのか。
井上:太陽電池への太陽の入射角は30度以内ということで設計しています。太陽の季節による移動と視野の広い望遠鏡とで空のかなりの部分を観測できます。もちろん太陽方向になにか特別の天文現象が発生した場合は観測できません。リスクと開発コストを考えてこのような保守的な設計にしています。
――そのような天文現象が出た場合、太陽電池に光が当たらない姿勢に一時的にして観測することはありますか。
井上:原理としてはあり得ます。しかしその場合も半年も待てば観測可能になります。宇宙で起きる現象は半年ぐらいは待ってくれるだろうと期待しているわけです。

――高度550kmという軌道に意味はあるのか。
井上:あまり高い軌道だとバンアレン帯に入ってしまい、観測機器にノイズが載ってしまいます。あまり低いと空気抵抗で衛星が墜落してしまう。そこでX線観測衛星はだいたい550kmあたりに打ち上げられてきました。しかし欧米の最新衛星である「ニュートン」「チャンドラ」は、もっと高い長楕円軌道に入っています。バンアレン帯の外に出すという考え方です。この軌道だと同一の観測対象を長時間連続で観測できます。しかしバンアレン帯のノイズを避けても太陽からのX線ノイズは避けられません。このため「ニュートン」「チャンドラ」共に観測不可能時間がかなりあり、その意味ではあまり良い軌道ではなかったのではないかと私は思っています。

――同一観測対象を観測するる時間はどれほどなのか。
 1回2〜3日です。1年間で140ほどの対象を観測します。

――冷凍機の振動はどうやってクリアするのでしょうか。
 マイクロカロリーメーター以下センサーはそれほど振動にセンシティブではありません。冷凍機も静かなものに仕上がりましたので、観測中も冷凍機を動作させることができると考えています。はちなみに現在は、ノミナルで観測しない時だけ冷凍機を動作させることで寿命2.5年と考えています。これを出発点にしようと思っています。

――アポジ噴射についてもう少し細かく知りたい。
井上:全部で4回の噴射を予定しています。打ち上げ直後に1回、次の日の同じ時間帯ないしは少し早い時間帯に2回目を、さらに次の日に2回の噴射を行います。4日目に太陽電池パドルを展開し、5日目にはX線望遠鏡の光学ベンチの伸展を行いたいと思っています。

――ではいつの時点で観測開始になるのでしょうか。
井上:ファーストライトとしては打ち上げ後20日ぐらいにやりたいです。科学的観測という意味では打ち上げ後1ヶ月後くらいから順次、と考えています。

――衛星の名前はどのタイミングで発表されるのでしょうか。
的川:最初の記者会見で発表します。いい名前が付いていますよ(笑)。宇宙研の衛星が上がると超新星爆発が起きるというジンクスがあるんですよ。今回も超新星が出現するといいですね。

――今回打ち上げに失敗してしまったら、M-Vはどうなるのでしょうか。
的川:それはその時になってみないとわかりませんね。事故の原因によると思います。M-Vの存在意義が問われているといえばいつも問われているわけです。

――衛星の運用は何人で行うのでしょうか。
井上:まず内之浦に2人が常駐します。衛星は1日に地球を15周しますがうち5周が内之浦から通信できる範囲を通過します。1日8時間ほどですね。そこでデータを降ろしたり、「こんなことをしなさい」というコマンドを送信したりします。それとは別に相模原に2人が常住して、運用計画を立てます。我々「上位ビット」「下位ビット」などと言っています。

写真は井上教授


No.873 :打ち上げは7月10日以降となりました
投稿日 2005年7月7日(木)14時02分 投稿者 松浦晋也

 午後2時に発表がありました。打ち上げは7月10日以降に延期となります。明日より衛星の再冷却に入り、10日以降に打ち上げとなります。

No.872 :今回の打ち上げのハイライト
投稿日 2005年7月6日(水)20時16分 投稿者 松浦晋也

 打ち上げが延期になったので、今回の打ち上げのハイライトなど。

 今回のペイロードであるX線観測衛星「ASTRO-EII」は、3段式のM-Vロケットで、楕円軌道に投入されます。その後、衛星搭載スラスターで近地点高度を上げて、高度550km程度の円軌道に入ります。
 今回はロケットから衛星を分離した直後、地球の裏側で、自動制御により最初のスラスター噴射を行います。噴射は塵のサンチャゴ局から監視しますが、地上からコマンドは送信しません。あらかじめ衛星に仕込んだコマンド列に従って、噴射を行います。
 噴射時間は約400秒、これによりASTRO-EIIは15m/sほど加速して、結果として近地点高度を約50km持ち上げます。

 このようなシーケンスは2000年に打ち上げ失敗したASTRO-Eの時は用意されていませんでした、ASTRO-Eはロケット第1段のノズルスロート破損で十分な加速ができずに失敗しましたが、事故後に、衛星スラスターを使って加速して、衛星を救うことはできなかったのかという議論が起こりました。結果から言えば、スラスターの加速だけで衛星を救うのは難しいということになったのですが、より安全な打ち上げシーケンスを検討する過程で、この自動制御によって最初の周回で近地点を持ち上げるという手法が浮上しました。

 内之浦から直接監視が出来ない状態で、打ち上げ直後に自動制御によりスラスターを噴射する危険性と、何かロケット側のトラブルで衛星が落下してしまう危険性を秤にかけて、この手法が採用されたわけです。

 打ち上げ成功後、ASTRO-EIIは何度かに分けて、近地点高度を持ち上げる噴射を行います。打ち上げ後3日で、最終的な軌道に到達する予定です。

No.871 :午前9時半からの延期記者会見
投稿日 2005年7月6日(水)09時51分 投稿者 松浦晋也

開口一番

的川:申し訳ないですねえ。延びてしまいました。

発表文読み上げ。

的川:…ということなんですが、午後はおそらく天気が良くなるだろうという判断なんです。天気の回復が早くなれば打ち上げが可能なのではないかとして、ランチャーを整備棟から9時半までに出せれば、ぎりぎり午後1時に打ち上げ可能ということだったんですが、今9時半ですね、まだ出せないので打ち上げは不可能と判断しました。

 これまでに梅雨の時期に人工衛星を打ち上げたのは1回しかないんです。98年の「のぞみ」です。あの時は誰も梅雨前線の記憶がないので、梅雨は終わっていたんでしょうね。惑星探査機の場合は惑星の位置が問題なので、7月必須でした。

 今回の打ち上げは今年2月を予定していたので、H-IIAの打ち上げがあって、SRB-A担当メーカーとM-Vの担当メーカーが同じなので、H-IIAに全力を注ぐということでM-Vは遅らせました。しかしこの後に、野口飛行士のシャトル搭乗やロシアからの打ち上げがあるので、なるべくASTRO-EII早く打ち上げたいということでこの梅雨の時期に打ち上げることになりました。

 明日の天気は今日より悪化することは間違いないです。あさっては少し良くなります。

 打ち上げの可否ですが、マイクロカロリーメーターという衛星搭載機器を固体ネオンで絶対零度に近いところまで冷却しているので、打ち上げ日の設定は難しいです。冷却は2日かかって、一度冷却したら4日間もちます。4日間を逃すとまた2日かけて冷却しなくてはなりません。

 ですから、明日7日午後2時に判断をします。GOなら8日打ち上げです。8日に打ち上げということで途中まで作業を進めて結局ダメということになると、9日から再冷却をしなくてはなりません。この場合11日以降の打ち上げとなります。
 7日の判断で、8日に打てないとなると、そこからまた2日書けて再冷却を行います。この場合は10日以降の打ち上げとなります。
 野口さんの打ち上げもあるので、なるべく我々としてはその前に打ち上げたいと思っています。

質疑応答
――この梅雨の時期に打ち上げ日を設定した理由は。
的川:可能な限り早く打ち上げたかったということです。アメリカの「チャンドラ」、欧州の「ニュートン」という観測衛星がASTRO-EIIと共同観測を計画しています。研究者としても、なるべく早く打ち上げたかったということです。

 あまり打ち上げがずるずる延びると、関係者の体力の問題も出てきます。実験主任はそこまで考慮して決断を下さなければなりません。何をどう決断しても苦渋の決断となります。

――以前は気象予報をISASの先生がやっていたけれども、JAXAになってからは専任の予報官を入れたのか。
的川:以前と同じです。(今回は)地球科学の大家がやっていますよ。

 鹿屋に宿を取った方はともかく、鹿児島から来ている方は申し訳ないですね。

No.870 :MV6号機打ち上げ延期後の日程予定
投稿日 2005年7月6日(水)09時25分 投稿者 松浦晋也

 打ち上げの判断は7日午後2時、Yesなら8日打ち上げ。7日の時点でNOならセンサーを冷却する関係上、10日以降に延期になると思います。

No.869 :MV6号機の打ち上げ延期
投稿日 2005年7月6日(水)09時15分 投稿者 笹本祐一

MVロケット6号機は、本日12時30分に打上げ実験を行なう予定でしたが、天候不良で7日までの天候回復が見込めないため、8日以降に延期します。

No.868 :今日のおまけ ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時39分 投稿者 松浦晋也

 内之浦の町からセンターに上がっていく国道448号線は、現在改良工事が行われており、山沿いに橋を架けて山沿いの曲がりくねった道をまっすぐにしています。
 その橋の一つの擬宝珠。

 ちなみに、麓から「ビーナスブリッジ」「マーズブリッジ」と「ジュピターブリッジ」を確認しました。建設中の橋を数えたところ、「ウラヌスブリッジ」までは出来るようです。


No.866 :電波テスト終了、次は本番。 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時36分 投稿者 松浦晋也

 この整備棟の中に今回打ち上げるM-Vロケット6号機が入っています。打ち上げは7月6日午後0時30分の予定です。


No.865 :警備強化 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時34分 投稿者 松浦晋也

 ISASからJAXAとなって、全体的に警備は厳しくなりました。建物入館はカードで管理するようになりましたし、警備会社を使った警報システムも導入されました。なによりセンター内に、このような無粋な柵が出現したのは残念です。ただ、一端中に入ると、地元のご婦人達がカラフルな割烹着で歩き回っているというのは変わりません。もちろんおばちゃんたちも胸に入館用カードを下げているのですが、基本的な雰囲気はあまり変わりないようです。


No.864 :折り鶴贈呈 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時33分 投稿者 松浦晋也

 恒例の、婦人会からの折り鶴贈呈。ヘルメットが新調のJAXAマークのものになっています。写真中央で折り鶴を受け取っているのは、今回の打ち上げの現場総責任者である森田実験主任。


No.863 :コントロールセンター最後の老兵 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時32分 投稿者 松浦晋也

 ロケット上昇直後からの追跡管制を行うコントロールセンタ=の内部。ここも次々に新しい装備が導入されています。しかし、横に長いスケジュール表は健在で使われていました。この写真ではわかりにくいのですが、奥の灰色の管制卓は、昭和38年(1963年)製造。内之浦開設の時に導入され、最初の衛星「おおすみ」打ち上げにも使われました。この管制卓も、来年初頭のS-310観測ロケット打ち上げをもって引退の予定とのこと。由緒ある機械なので、科学館や産業博物館などの引取先を探しているそうです。

 使用時はリレーがかちかちと動作する音がするそうで、近くにいた人曰く「今回の内之浦で一生分のリレー音を聞きました」とのこと。


No.862 :管理棟の寄せ書き ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時30分 投稿者 松浦晋也

 管理棟の会議室には最初の衛星「おおすみ」以来の、関係者寄せ書きが額装されて飾ってあります。これは小惑星「イトカワ」に向かった「はやぶさ」を打ち上げた時のもの。火星探査機「のぞみ」を打ち上げた時の寄せ書きには、打ち上げ直前に病のためにこの世を去った科学主任・山本達人教授の筆跡が後から貼り付けてありました。涙ものでした。


No.861 :ランチャーのマーク ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時29分 投稿者 松浦晋也

 ランチャー基部のマークはかつて「ISAS」と書いてあった部分に、JAXAのマークがかき込んでありました。


No.860 :レタッチ ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時28分 投稿者 松浦晋也

 昨2日はM-Vロケットの整備棟内を取材しました。写真撮影禁止なので内部の写真はありません。写真は整備棟外側のタラップ。設備投資が行われたといっても十分ではないようで、整備棟外部の防錆塗料は、全面的に塗り替えるのだけではなく、錆がひどい部分をレタッチするのみにとどめています。


No.859 :衛星の名称募集 ●添付画像ファイル
投稿日 2005年7月3日(日)20時27分 投稿者 松浦晋也

 センター内のあちこちに置かれていた名称募集の箱。なお、毎回作成されている的川教授謹製の酒のラベルを使ったパロディは、「蔵元に話をしてラベルを送ってもらうことになっているんだけど、まだ届かないんですよ。間に合うかどうか」という状態だとのこと。