投稿日 2006年2月22日(水)09時32分 投稿者 松浦晋也
午前8時35分からの記者会見第二部です。
出席者は森田泰弘教授(実験主任)、嶋田徹教授(保安主任)、津田雄一助手(サブペイロード担当)、松永三郎東京工業大学助教授(Cute1.7開発指揮)。
すぐに質疑応答に入る。
西日本新聞 まず感想を聞きたい。
森田 日本初の赤外線天文衛星、赤外チームにすると10年近くの時間をかけた衛星ということで大分プレッシャーがかかったが、無事に打ち上げられて良かった。また前2回の成功を帳消しにしないで良かったと、二重の意味でほっとしている。
不明 サブペイロードの状況を知りたい。
津田 サブペイロードはオーストラリアのパース局で受信を試みている。まだデータを受け取ってはいないが、向こうからは「受信した」という連絡を受けている。
松永 我々の衛星は独自の分離機構を持っている。分離確認はJAXAのテレメトリ経由と、アマチュア無線家の受信によってできる。一周目に米大陸を通過。ジョージア工科大学のアマチュア無線クラブ、及び米のアマチュア無線家が、Cute1.7からの電波を確認した。また、その後九州大学が電波を確認している。
時事通信 M-Vは6回打ち上げて5回成功だが、森田先生としてはM-Vをどうしたいか。
森田 プロマネとしての個人的意見を述べる。M-Vは固体ロケットとして性能が良いだけではなく、信頼性という点でも胸を張れる段階に達していると思う。今後、コストを下げる努力をして、信頼性の高い固体ロケットを残していきたいと思う。
朝日新聞 ソーラーセイルについては、どの段階で成功したかどうかが分かるだろうか。
津田 オーストラリアの地上局から電波データを入手して解析してからだ。ここ1〜2日かかると思う。
森田 主なイベントと高度について。第1段目分離は42.5km、ノーズフェアリング開頭204.8km、第3段燃焼終了が306.8km。ここまでが内之浦から確認できている。
NHK M-Vの今後について。どういった点に手を加えればコストダウンできるのか。
森田 M-Vについては次期固体ロケットという名称で検討している。H-IIAとのコンポーネントの共通化や、1段目のSRB-A使用などを考えている。
NHK SRB-Aを使うとM-Vとは言えないのではないか。
森田 その通りだ。M-Vロケットの良いところを殺さずに流用することができるのではないかと考える。
NHK 既存のM-Vに手を加えるとしてどうすればコストダウンできるか。
森田 第1段を金属チャンバーからCFRPチャンバーに変えるというところが真っ先に手を付けるべきところかと思う。第3段に進展式ノズルを使っているが、これを固定式にすることでコストを低減させることができるという案がある。また第1段と第2段の継ぎ手を簡素な構造にするという案もある。
毎日新聞 そういったコストダウン策を実際に行うのか。
森田 検討は進めている。その姿がもう少し具体的に見えたら、予算を付けて小型のモデルの飛行試験を行うことになろう。今年度はまだ紙の上の検討だけだ。
朝日新聞 Cute2機目の感想は。
松永 2年半前に最初のCuteを打ち上げた。これは衛星の基本をきっちり開発するという方針で開発した。Cute1.7は、より高機能化すると同時に基礎物理の川合研究室の理学ミッションを搭載している。大きさも2倍になっている。通常ならやれないようなミッションを小さな筐体に詰め込んでおり、世界的にも高機能高密度の衛星を実現できたのではないかと考えている。ようやく日本の大学主導の衛星でも、ちょっとは自慢できることができようになりつつあるのかな、と考えている。
的川 速報です。サンチャゴ局2回目の受信で、「あかり」太陽電池パドル展開が確認されました。
西日本新聞 大学衛星とM-Vロケットの関係について。期待したいことなど。
松永 よい打ち上げ機会を提供させてもらっている。次の7号機でもこの機会を利用する。One JAXAなのだから、M-Vのみならずほかのロケット、H-IIAでもこのような機会を提供してもらえるはずだ。是非とも検討して欲しい。
的川 ロシアからの打ち上げとどちらが楽ですか。
松永 ロシアの打ち上げは、とにかく経験が豊富なので何をさぼってなにをおさえるかが明快で楽。ただし衛星をロシアに持っていかねばならないので、輸出や治安など面倒なこともある。
日本のよくないところは、…色々言えない話があります(笑)。日本の良いところは、我々も不具合を出したわけですが、一緒に考えてもらって解決させてもらったというところ。大分絞られたところもあるが、それも良い思い出である。
そんなところで絞らなくても、もっと本質的なところでしっかりやったほうがいいな、と思う部分もある。
的川 まあ、色々つもる話は後ほどということで(笑)。
毎日新聞 延期の気持ちを。
森田 実は今回、リハーサルの電波テストが終わったのが2月12日。その後5日もホールドがあった。これは我々の打ち上げでは前代未聞の事態で、緊張の糸が切れてもおかしくなかったが、それでも打ち上げチームが団結し、オペレーションミスもなく不安定な打ち上げスケジュールを乗り切った。
NHK 今回ウインドウが午前6時から7時だが、なぜ6時半を軸に打ち上げ時刻を決めたのか。
森田 科学衛星の打ち上げ時刻は1時間程度の幅を持たせ、その中でどの時刻が一番良いかを決めていく。今回は明暗境界線上に打ち上げる太陽同期軌道だったので、だいたい6時半が最適だった。
NHK 雨の時の打ち上げだが、雨に強くなるよう改良する方向を考えてはいないのか。
森田 雨の決定的問題は、地上とロケットを結ぶコンセントが防水仕様になっていないということ。そこを今後改良することもあり得る。ただし雨の時は上空に氷が浮遊していることもある。だから雨に強いロケットについては、より根本的な改良が必要がある。
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