投稿日 2006年12月15日(金)14時54分 投稿者 松浦晋也
午後1時30分からの、Y-0ブリーフィング
出席者は、佐藤寿晃種子島宇宙センター技術課長、H-IIAプロジェクト・マネージャー遠藤守(ロケット主任) ETS-VIIIプロマネ、辻畑昭夫(衛星主任)。
写真は辻畑昭夫衛星主任。撮影:牧野知弘
佐藤:10月1日から射場作業を開始した。多少の開発試験を行っている。11/9の極低温試験で発生した不具合を修正して今日に至った。本日は午後11時に天候判断をして、午前0時から打ち上げ作業を開始する。
天候状況は明日16日は北よりの風のち北西の風、5〜7のち8〜10m/sm曇り、午前中一時晴れのち夕方から時々雨、打ち上げ時刻にはぱらつくのではないかと思っている。
機体搭載カメラは4ヵ所。SRB-A第一ペア分離、第2ペア分離、フェアリング分離、衛星分離。第一ペア分離と衛星分離はリアルタイム伝送、第2ペア分離とフェアリング分離は機上で記録し打ち上げ後300秒以降にダウンロード。
打ち上げ時制約条件は、加速が大きいので風に強くなっている。打ち上げ時レッドラインは風速20.0mm/s。現状、明日の予報は雨、風とも打ち上げに問題ないが、雷で一部条件が抵触する可能性が出てきている。
今回、雷を引き起こすほどの電荷が雲の中に溜まる状況ではない。しかしロケットは高温ガスを噴射しつつ雲を突き抜ける。この結果、ロケット自身が電荷を増やす効果があり、その結果機体に落雷する可能性がある。高度が上がると気温が下がる。0度からマイナス20度の温度の付近に厚さ1.8kmの雲が存在すると、落雷を受ける可能性が高まる。この領域の雲の推移に注目していきたい。
辻畑:9月4日搬入後、11月29日に衛星分離部と結合、12月1日にフェアリングと結合、12月7日に機体組立棟に移動してロケットと結合。
カウントダウン作業は、フェアリングに入った時点で、ロケット側支援とバッテリー補充電ぐらいになる。Y-0作業はバッテリー補充電、内部電源切り替え。
打ち上げ後のイベントは、打ち上げ後16時間から136時間にかけての4回のアポジ噴射で静止ドリフト軌道に投入、172時間後からアンテナ展開を実施する。
2007年初めから定常運用段階に入る。基本実験その1(JAXA)が実施するもの。移動体通信関連実験と、測位用
以下質疑応答。
NHK:今回の11号機を打ち上げるに当たっての意気込みを。SRB-A4本ということで、11号機の担う役割を聞きたい。
遠藤:204型は、H-IIA標準の最大バージョンで静止トランスファーに6t打ち上げることができる。H-IIA標準型がいよいよ運用段階に入るという意味を持つ。H-IIAは、過去10機を打ち、H-IIまでのロケットの打ち上げ総数を超えている。
SRB-A4本はH-IIB(平成21年打ち上げ予定)にもつながる。4基装備はH-IIBへの大きなステップになるだろう。来年度からは民間に移管して打ち上げサービスという形で、民間主体によって打ち上げを行うという、日本の宇宙開発にとって大きな転換期となる。
NHK:天候について。今日の判断としては、明日の打ち上げ時刻を変更しないということでいいのか。最終判断は明日の何時で判断を行うのか。
佐藤:本日午前11時の天候判断では明日の打ち上げを延期する状況ではない。本日午後4時30分から臨時の判断を行う。また機体移動前の午前0時にも判断を行う。なるべく、機体移動前、推進剤充填前に判断を行いたい。
鹿児島テレビ:打ち上げ準備段階の感触は。
佐藤:今回は新しい機体ということで、設備にも変更があった。試験を通じて不具合、ミスマッチングを解決してきている。現状では、天候が少し気になってきたかなあというところ。我々も10号機を超えて、新たな段階に入ったと考えているが、基本的には平常心で打ち上げに臨む。
西日本新聞 資料中の定常段階意向は、具体的には何月か。鹿児島の桜島噴火を想定した訓練を考えているそうだが、具体的にどうするのか。これまでの訓練と打ち上げ後の防災訓練はどのように変わってくるのか。
辻畑:定常段階に入るのはおそらく2007年4月末から5月頭にかけてになるだろう。利用に関しては、利用推進が計画を立てているので後日返答する。
産経新聞 昨日大規模大規模フレアが発生しているが、打ち上げへの影響はあるのか。
遠藤:打ち上げには影響ない。
辻畑:衛星側は、フレアについて各種対策を講じており、問題ないと考えている。例えば陽子は現状の100倍を受けても大丈夫な設計になっている。
南日本新聞:204と202の違いについて。ブースター4本で打ち上げ初期に大加速となるが、具体的にどの程度違うのか。また振動条件がきつくなるはずだが、そのことによる設計変更はあるのか。
遠藤:大まかに言うと、打ち上げ初期については射点の鉄塔をクリアするのに202は6秒かかっていたが、それを3秒でクリアする。感覚的には倍の速さと思って欲しい。全体で言うと、ロケットの推力が大きくなった分、ロケットも重くなっているので飛行プロファイルはほとんど変わらない。従来と変わらないようにSRB-Aの推力パターンを設計した。
ただし、発射時の音だけは2本→4本で大きくなる。従来に比べると3デシベル高くなる。そのままでは、エネルギーでは1.5倍。衛星側にはこの条件で地上試験を行って貰っている。
発射時の噴煙を受け止める放水の量を増やしてある程度緩和する。が、初めてなので、緩和効果が本当にどの程度の効果があるかは分からない。だから、放水による緩和がないと考えて
宇宙作家クラブ(笹本):今回のブースターでLE-7Aの運転パターンは変わるか。
遠藤:変化なし。打ち上げ直後からフル推力。
NHK 打ち上げ体制の人員は。打ち上げ時、風についてはいつどこで最終判断をするのか。
大島(広報):人数は後ほど確認します。
遠藤:ぎりぎりまで判断する。射点の避雷針に風速計が付いており、そのデータを判断する。
NHK:たとえば打ち上げ10秒前でも止められるのか。
遠藤:必要なら止めます。
東京事務所へマイクが渡る。
時事通信:今回の204でラインナップが完成するということだが、今後補助ブースター(SSB)を使う打ち上げは行うのか。
遠藤:来年度のセレーネとWINDSはSSBを付けた形態で打ち上げる。JAXAの計画では、今のところそれ以降SSB装備の打ち上げはない。
産経新聞:太陽フレアで陽子が飛んできた場合、展開アンテナが押されるというような影響はあるのか。
辻畑:微小な影響はあるかも知れないが、よりきつい、たとえば衛星が姿勢を確立するというような場合でも大丈夫なように作ってあるので、フレアの影響はないと考えてある。
マイク、種子島に戻る。
宇宙作家クラブ(笹本):SRB-Aの分離タイミングをずらしている理由は何か。
遠藤:4本は地上で同時点火するのでほぼ同時に燃焼が終わる。2本ずつ分離するというのは、2本の分離は過去に行っているため。4本まとめて分離しないことで打ち上げ能力にロスが発生するが、経験のないことを避けた。今後とも4本同時分離を行う計画はない。
宇宙作家クラブ(松浦):今後204で打ち上げる計画が存在するか。
遠藤:今のところない。今後204でなければ上がらない計画が出てくれば、当然使用することになる。
|