宇宙作家クラブ
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No.1096 :次の予定
投稿日 2006年12月15日(金)20時23分 投稿者 松浦晋也

 午後11時に機体移動を行うかの判断。機体移動は午前2時30分〜午前3時を予定。

No.1095 :きくはちぞう ●添付画像ファイル
投稿日 2006年12月15日(金)19時36分 投稿者 松浦晋也

 記者会見ルームのロケット模型の根本には、今回の衛星きく8号のキャラクターマスコット、きくはちぞうの人形が置いてありました。アンテナを模した耳にトラス状の州スティッチが入っていたり、芸が細かいです。

 撮影:みのうら


No.1094 :H-IIA11号機Y-0ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2006年12月15日(金)14時54分 投稿者 松浦晋也

午後1時30分からの、Y-0ブリーフィング

 出席者は、佐藤寿晃種子島宇宙センター技術課長、H-IIAプロジェクト・マネージャー遠藤守(ロケット主任) ETS-VIIIプロマネ、辻畑昭夫(衛星主任)。

 写真は辻畑昭夫衛星主任。撮影:牧野知弘

佐藤:10月1日から射場作業を開始した。多少の開発試験を行っている。11/9の極低温試験で発生した不具合を修正して今日に至った。本日は午後11時に天候判断をして、午前0時から打ち上げ作業を開始する。
 天候状況は明日16日は北よりの風のち北西の風、5〜7のち8〜10m/sm曇り、午前中一時晴れのち夕方から時々雨、打ち上げ時刻にはぱらつくのではないかと思っている。
 
 機体搭載カメラは4ヵ所。SRB-A第一ペア分離、第2ペア分離、フェアリング分離、衛星分離。第一ペア分離と衛星分離はリアルタイム伝送、第2ペア分離とフェアリング分離は機上で記録し打ち上げ後300秒以降にダウンロード。

 打ち上げ時制約条件は、加速が大きいので風に強くなっている。打ち上げ時レッドラインは風速20.0mm/s。現状、明日の予報は雨、風とも打ち上げに問題ないが、雷で一部条件が抵触する可能性が出てきている。
 今回、雷を引き起こすほどの電荷が雲の中に溜まる状況ではない。しかしロケットは高温ガスを噴射しつつ雲を突き抜ける。この結果、ロケット自身が電荷を増やす効果があり、その結果機体に落雷する可能性がある。高度が上がると気温が下がる。0度からマイナス20度の温度の付近に厚さ1.8kmの雲が存在すると、落雷を受ける可能性が高まる。この領域の雲の推移に注目していきたい。

辻畑:9月4日搬入後、11月29日に衛星分離部と結合、12月1日にフェアリングと結合、12月7日に機体組立棟に移動してロケットと結合。
 カウントダウン作業は、フェアリングに入った時点で、ロケット側支援とバッテリー補充電ぐらいになる。Y-0作業はバッテリー補充電、内部電源切り替え。

 打ち上げ後のイベントは、打ち上げ後16時間から136時間にかけての4回のアポジ噴射で静止ドリフト軌道に投入、172時間後からアンテナ展開を実施する。

 2007年初めから定常運用段階に入る。基本実験その1(JAXA)が実施するもの。移動体通信関連実験と、測位用

 以下質疑応答。

NHK:今回の11号機を打ち上げるに当たっての意気込みを。SRB-A4本ということで、11号機の担う役割を聞きたい。

遠藤:204型は、H-IIA標準の最大バージョンで静止トランスファーに6t打ち上げることができる。H-IIA標準型がいよいよ運用段階に入るという意味を持つ。H-IIAは、過去10機を打ち、H-IIまでのロケットの打ち上げ総数を超えている。
 SRB-A4本はH-IIB(平成21年打ち上げ予定)にもつながる。4基装備はH-IIBへの大きなステップになるだろう。来年度からは民間に移管して打ち上げサービスという形で、民間主体によって打ち上げを行うという、日本の宇宙開発にとって大きな転換期となる。

NHK:天候について。今日の判断としては、明日の打ち上げ時刻を変更しないということでいいのか。最終判断は明日の何時で判断を行うのか。

佐藤:本日午前11時の天候判断では明日の打ち上げを延期する状況ではない。本日午後4時30分から臨時の判断を行う。また機体移動前の午前0時にも判断を行う。なるべく、機体移動前、推進剤充填前に判断を行いたい。

鹿児島テレビ:打ち上げ準備段階の感触は。

佐藤:今回は新しい機体ということで、設備にも変更があった。試験を通じて不具合、ミスマッチングを解決してきている。現状では、天候が少し気になってきたかなあというところ。我々も10号機を超えて、新たな段階に入ったと考えているが、基本的には平常心で打ち上げに臨む。

西日本新聞 資料中の定常段階意向は、具体的には何月か。鹿児島の桜島噴火を想定した訓練を考えているそうだが、具体的にどうするのか。これまでの訓練と打ち上げ後の防災訓練はどのように変わってくるのか。

辻畑:定常段階に入るのはおそらく2007年4月末から5月頭にかけてになるだろう。利用に関しては、利用推進が計画を立てているので後日返答する。

産経新聞 昨日大規模大規模フレアが発生しているが、打ち上げへの影響はあるのか。

遠藤:打ち上げには影響ない。

辻畑:衛星側は、フレアについて各種対策を講じており、問題ないと考えている。例えば陽子は現状の100倍を受けても大丈夫な設計になっている。

南日本新聞:204と202の違いについて。ブースター4本で打ち上げ初期に大加速となるが、具体的にどの程度違うのか。また振動条件がきつくなるはずだが、そのことによる設計変更はあるのか。

遠藤:大まかに言うと、打ち上げ初期については射点の鉄塔をクリアするのに202は6秒かかっていたが、それを3秒でクリアする。感覚的には倍の速さと思って欲しい。全体で言うと、ロケットの推力が大きくなった分、ロケットも重くなっているので飛行プロファイルはほとんど変わらない。従来と変わらないようにSRB-Aの推力パターンを設計した。
 ただし、発射時の音だけは2本→4本で大きくなる。従来に比べると3デシベル高くなる。そのままでは、エネルギーでは1.5倍。衛星側にはこの条件で地上試験を行って貰っている。
 発射時の噴煙を受け止める放水の量を増やしてある程度緩和する。が、初めてなので、緩和効果が本当にどの程度の効果があるかは分からない。だから、放水による緩和がないと考えて

宇宙作家クラブ(笹本):今回のブースターでLE-7Aの運転パターンは変わるか。

遠藤:変化なし。打ち上げ直後からフル推力。

NHK 打ち上げ体制の人員は。打ち上げ時、風についてはいつどこで最終判断をするのか。

大島(広報):人数は後ほど確認します。

遠藤:ぎりぎりまで判断する。射点の避雷針に風速計が付いており、そのデータを判断する。

NHK:たとえば打ち上げ10秒前でも止められるのか。

遠藤:必要なら止めます。

東京事務所へマイクが渡る。

時事通信:今回の204でラインナップが完成するということだが、今後補助ブースター(SSB)を使う打ち上げは行うのか。

遠藤:来年度のセレーネとWINDSはSSBを付けた形態で打ち上げる。JAXAの計画では、今のところそれ以降SSB装備の打ち上げはない。

産経新聞:太陽フレアで陽子が飛んできた場合、展開アンテナが押されるというような影響はあるのか。

辻畑:微小な影響はあるかも知れないが、よりきつい、たとえば衛星が姿勢を確立するというような場合でも大丈夫なように作ってあるので、フレアの影響はないと考えてある。

マイク、種子島に戻る。

宇宙作家クラブ(笹本):SRB-Aの分離タイミングをずらしている理由は何か。

遠藤:4本は地上で同時点火するのでほぼ同時に燃焼が終わる。2本ずつ分離するというのは、2本の分離は過去に行っているため。4本まとめて分離しないことで打ち上げ能力にロスが発生するが、経験のないことを避けた。今後とも4本同時分離を行う計画はない。

宇宙作家クラブ(松浦):今後204で打ち上げる計画が存在するか。

遠藤:今のところない。今後204でなければ上がらない計画が出てくれば、当然使用することになる。


No.1093 :広告:10/20(金)と11/2(木)、ロフトプラスワン・トークライブのお知らせ
投稿日 2006年10月12日(木)17時57分 投稿者 松浦晋也

 ロフトプラスワンのライブトークイベントの告知です。

 10/20は「はやぶさライブ」第二弾。今回は、いかにして「はやぶさ」を小惑星イトカワに届かせたか、というテーマです。

 11/2は、アーティスト系の人たちと野田司令を迎えて、「個人の意志で宇宙に行くには」ということを話し合います。でるか、あのプロジェクトの進捗状況?
 ロフト斎藤さんが、色々な人に出演交渉をしているそうなので、もう少し出演者は増えるかも知れません。

●10/20(金)
宇宙作家クラブpresents
「はやぶさは飛翔した」

 昨年11月に小惑星イトカワへの着陸で、ぼくらを熱狂させた小惑星探査機「はやぶさ」。だが、「はやぶさ」がイトカワに向かうまでの道のりもまた途方もない挑戦だった。
 日本が初めて行ったイオンエンジンによる惑星間航行。
 そして、探査機が宇宙のどのあたりを飛んでいるかを調べて、イトカワにランデブーさせる軌道計画を立案するナビゲーション。
 JAXA宇宙科学研究本部の、イオンエンジンとナビゲーションのエキスパートを迎えて送る「はやぶさライブ」第二弾。

【Guest】國中均(JAXA/ISAS イオンエンジンを担当)、吉川真(JAXA/ISAS ナビゲーションを担当)

【出演】松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、笹本祐一(作家/予定)、浅利義遠(漫画家/予定)

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

Open18:30/Start19:30
¥1200(飲食別)
当日券のみ

●11/2(木)
宇宙作家クラブpresents
「ロケットまつりS」
 宇宙開発は、国家機関だけのものか。国の事業でなければ宇宙には行けないのか。
 否、断じて否。
 宇宙に行きたいと思う者すべてに、宇宙開発を行う権利がある。
 自分こそが宇宙に行きたい連中が集まって、あるいは熱く、あるいは気楽に、宇宙開発を巡る本音を語る。

【出演】野田司令、松浦晋也、(ノンフィクション・ライター)八谷和彦(メディアアーティスト)、藤谷文子(作家/女優/予定)、笹本祐一(作家/予定)、佐藤大、他!

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

Open18:30/Start19:30
¥1000(飲食別)

No.1092 :地元交流会 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月28日(木)11時06分 投稿者 笹本祐一

MVロケット7号機打上げ終了後に内之浦港の魚市場で開催された地元交流会の写真です。小林伸光撮影。


No.1091 :内之浦の港祭で聞いた話
投稿日 2006年9月27日(水)23時50分 投稿者 笹本祐一

 港祭とは、9月23日のMVロケット打ち上げが成功裏に終わったあと、17時から内之浦港の魚市場、漁業協同組合漁村センターの大屋根の下で行なわれた宇宙研と現肝付町、旧内之浦町町民との地元交流会である。
 大きなブルーシートを4枚も拡げ、その廻りにはバーベキューテーブルやビール缶、ジュース缶を浮かべた冷水槽、その場で上げられるほかほかの薩摩揚げなどの配給所が並び、仕事を終えた宇宙研やJAXA職員、最後の打ち上げだってんで全国から集った退職した先生や技官が地元住民と入り乱れて車座になっての宴会が行われる。
 的川先生が「最後ですから報道の方もぜひどうぞ」と誘って下さったので、居残っていた宇宙作家クラブの全員がこれに参加させて頂いた。

 市場の一方には垂れ幕が掲げられており、内之浦宇宙空間観測所との交流会と大書されている。その下に、「ありがとうM-V」の文字。
 魚市場のスピーカーを使ってのスピーチは、地元町長、ロケット主任、衛星主任とまことものの解った人選であり、その和やかでおめでたい雰囲気はおそらく世界中の射場でここでしか見れないものではないだろうか。
 宇宙研を内之浦に建設するに辺り、職員用の宿舎も作る計画があったそうである。しかし、途中から「宿舎は作らない、地元に泊らせてもらう」という方針が決定し、おかげで打ち上げの度に宇宙研職員が内之浦町の宿に大挙して押しかけ、場合によってははみ出て仕方ないから一般民家に泊めてもらう、などという事態になったらしい。
 なんという卓見だろう。この判断によって、内之浦宇宙センターはよそ者が来てなんかやっている施設ではなく、地元の人といっしょに研究開発を進める場になったのである。
 毎回同じスタッフが来て同じ宿に泊れば顔馴染みにもなるし、仕出しも食事も村任せなので放っておいても交流は生れる。何度も来ていれば、よそ者が訳のわからないことをしているのではなく、宇宙研の何々さんがこれこれこういう仕事をしていると地元の人も理解してくれるのである。

 そして、スピーチの中には役場職員による交通整理の結果報告もあった。
 面白そうだったので、よく聴き取れなかったスピーチの内容を確認しに行って教えてもらった。
 徹夜明けのはずの役場職員は、焼酎片手ににこにこと話をしてくれる。
 最後の打ち上げだから、見学客もいつもより多いだろうと覚悟して、宮原の見学所に500台分の駐車場を作って、それが満杯になったのが前日の夜10時。仕方ないから、午前2時くらいに出動予定だった町役場の交通整理部隊を急遽出動させ、仕方ないから溢れた車を路上駐車させ、その総延長が3・8キロ約400台を超えたところでもう上げてくれるなと悲鳴が上がる。
 仕方ないので、宇宙基地の手前の山であるところの叶岳に残りの車を上げて、これもあっという間に満杯になり、仕方ないから港側に自動車を誘導。
「あくまで推計ですが、5000台くらい来たという計算で、たぶん一万人くらいはいらっしゃったのではないかと」
 おそらく、5000台の中には真夜中にも跡絶えることがなかった近隣の観光バスも、列を為していたタクシーも入っていない。役場の推計1万人というのはかなり控えめな数字ではないだろうか。

 勉強不足なために、こんな文化が内之浦に創られていたと知ったのはMVロケット最後の打ち上げが終わってからになってしまった。こんな雰囲気が、これからも継承される事を祈って、MVロケット7号機の取材を終わりたい。

No.1090 :最後の性能ファイル表紙 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月23日(土)22時28分 投稿者 笹本祐一

 さあて皆さんお待ちかね、毎度宇宙研衛星のお楽しみ、的川先生入魂の性能ファイルの表紙をお届けします。
 衛星主任の小杉先生が足の小指を骨折して松葉杖で打ち上げに参加しておられるとか、数々の裏事情を想像しながらお楽しみ下さい。


No.1089 :記者会見第二部
投稿日 2006年9月23日(土)10時32分 投稿者 松浦晋也

 午前8時54分、予定より大分遅れて始まった記者会見第二部です。

 左から、しまだとおる(漢字不明です。申し訳ありません)保安主任、森田泰弘教授(M-Vプロジェクト・マネージャー)、小杉健郎(SOLAR-Bプロジェクト・マネージャー)、常田佐久国立天文台教授(SOLAR-Bプロジェクト室)、Laureince D.Hill(NASAマーシャル・アメリカ側SOLAR-Bプロマネ)、J. Len Culhane(Mulard space science Lab. Professer:SOLAR-B EIS Principal Investgator)、坂尾太郎ISAS助教授。

森田
 すべての作業は順調に進み、今日も雨雲は割と早く過ぎ去って非常によい条件で打ち上げることができた。計画通りの軌道をたどってロケットは飛行した。今日の段階では大成功である。

小杉
 ようやくこの日が来たというのが実感だ。SOLAR-Bは15年前から構想していた。衛星は打ち上げ直後はへそのおが取れたばかりの赤ん坊であって、これから長期戦だとスタッフに声を掛けていたが、森田先生率いるロケット側が完璧に近い軌道に入れてくれたおおかげで、最初のパース局で信号を受信できた。受信できるとは期待していなかったのだけれども。
 オーストラリア・パース、チリ・サンチャゴ、アメリカ・ワロップスの3局でデータを取れており、姿勢、電源の入っている機器などすべて正常である。

常田
 搭載されている望遠鏡は掛け値なしに最先端である。国際的な機体は非常に高い。11月〜12月には最初の画像が得られるだろう。望遠鏡は国際協力で作っており、オンリーワンの最高のものを作ろうとやってきた。

Hill
 美しい打ち上げだった。この国際協力に参加できたことを誇りに思っている。アメリカのサイエンスコミュニティは、衛星がもたらす巨大な成果を心待ちにしている。

Culhane
 素晴らしい打ち上げに英国を代表して参加できたことをうれしく思っている。私は「ようこう」でもイギリスの観測装置を搭載し、実り多い成果を挙げることができた。「ひので」の国際協力は重要なものであり、素晴らしい成果がでることを心待ちにしている。

以下質疑応答

読売新聞 しまださんに、最後の感慨を。

島田 2000年の4号機の失敗から、4連続で成功させることができ、自分達の技術を確認することができた。1段の高速燃焼、2段の高圧燃焼、3段のノズル進展などはM-V固有の技術であって、その精華をだすことができた。6号機以降、半年間隔の打ち上げで、不具合も減少し、今回はほとんどトラブルが出なかった。

月刊天文
 小杉先生に。「ひので」開発にあたっての印象深かった点を。

小杉
 非常に難しい問題を割り振られまして…我々科学者は自分のために望遠鏡を作るわけですが、日米協力の可視光望遠鏡、米日X線望遠鏡、英米日の紫外線望遠鏡、どれも開発が難しい機器で、全部が苦労だった。でも自分のやりたいことをやってきたことで、それは苦労じゃなかったのかも知れない。
 一番うれしかったことは、午前6時50分30秒、パース局で入感したところで、もう2歳3歳になったかの信号が入ってきた時。スタッフには「一喜一憂するな」といっていたのに、自分が率先して万歳をしてしまった(笑)。
 内之浦に来て、転んで骨折してしまったのだけれど、コレまでの骨折りが実を結んだということで(笑、記者から拍手が起きる)。

NHK 森田プロマネ、最後の気持ちはどうか。

森田
 今回は雑音の多い状況で、私もがんばれがんばれとスタッフにハッパをかけまくったけれど、打ち上げの時は世界最高の太陽観測衛星を上げるという気持ちでいた。
 今回は台風から、小杉先生の骨折まで、色々なトラブルがあったけれども、予定日時にきれいに打ち上げることができた。これは有終の美を飾るというよりも新しいスタートだ。

 私は大学院卒業後のカナダ留学中、M-Vロケット開発を開始した秋葉先生が「帰ってこい」と言ってきて、それで宇宙研に来た。その年、1990年にM-Vの開発が始まった。私はM-Vに育てられたのだ。
 今日は、我々の出来ることは何かを考え抜いて、多少の雨にも動じず(笑)、打ち上げた。打ち上げ時ちょっと風があったのだけれども、見事に打ち上げることができた。その瞬間、ちょっと涙ぐんでしまった。


宇宙作家クラブ(小川一水) 
Culhaneさんに、海外ユーザーからみてM-Vロケットはどんなロケットだったか。そして、それがなくなることをどう思うか。

Culhane
 M-Vは科学衛星に非常にマッチした、ロジカルで適切なロケットだったと考える。海外からの参加者である自分からみると、M-Vがなくなることは非常に残念である。

西日本新聞 森田教授に。どのような方針で新ロケットを開発するのか。

森田
 M-Vは必ずしも固体の特性である速射性がきちんと発揮できていない。コストを下げて運用性を良くする必要がある。それをどうやって限られた予算と時間で実現するか。そこで小型で実証するという方法をとることになった。その一方で、科学衛星が大きなものだけでいいのかという問題もある。大きな衛星は開発期間が長くなる上に、もしもの時に取り返しがつかない。より高頻度、低価格の衛星でより早く観測を行うという要請は強い。しかし、JAXAにはそのサイズの打ち上げ手段がない。
 そこで、今回はM-Vの改良と、小型打ち上げ手段の要請を見たすために、まず小型のロケットを開発するという手段を選択した。しかし小型なだけでは駄目なので、次の段階ではM-Vサイズの後継機を開発することを考えている。
 M-Vの後継機を二段階で開発すると考えて欲しい。一端小型になるからといって、M-Vとの連続性が切れるわけではない。

宇宙作家クラブ(大喜戸千文)
 衛星軽量化に成功したということだが、どうやったのか。リアクションホイールはどこのメーカー製か。「はやぶさ」のトラブルが頭に残っているので気になる。

小杉
 ホイールは米ハネウェル社製を4基搭載している。望遠鏡の解像度が非常に高いので姿勢のぶれを起こすとよい画像が撮れない。ジャイロやホイールが発生する振動が一番小さいという基準で選定した。国産品を選びたかったが、性能が大きく違っていた。実用衛星で使っているホイールを改良することなしに搭載した。
 軽量化は、プロマネの腹一つで、絶対に目標重量を超過させないという心構えでやった。これを私は先代「ようこう」プロマネの小河原先生から学んだ。「ようこう」は重量削減分だけ高い高度に投入して寿命が延びた。
 「ひので」は、放出直後に三軸姿勢を確立するというやりかたを取ったので、ロケット側には、なるべくそっと放り出してくれるように

週刊ポスト
 命名理由で、もしもオフィシャルじゃないものがあれば。また、海外の方はこの命名をどう感じたか。

小杉
「ようこう」のプロマネの奥さんが「ようこ」なのは事実です。また常田先生が、「ようこう」打ち上げ後に生まれた女の子に「ようこ」となつけたのは事実です。スタッフからは「こっせつ」という提案もありました(笑)。

 「ひので」が私が主導して名付けました。
 平凡でもはっきりした名前を選んだ。
 衛星が活躍すればそれが良い名前となる。この衛星は宇宙科学が上り坂を過ぎたところから開発が始まっている。予算が上り坂ではではない時期からだ。でも我が国は日出る国ですよね。「日よまたのぼれ」という気持ちから名付けた。

Hill
 「ひので」というのは衛星にマッチした素晴らしい名前だと思う。びっくりした。この衛星で太陽科学が新しい知見をもたらしてくれるであろう事を考えると、衛星に相応しい名前だと思う。

Culhane
 私もHillのコメントを繰り返したい。この衛星で太陽科学が画期的に進むであろう事をよく表している。この衛星に搭載されている3つの望遠鏡は、非常に注意深く設計されており、3つの観測結果が共同することで太陽表面の下から上層までを一挙に把握することができる。その機能はライバル衛星からみても独特のものだ。

宇宙作家クラブ(野尻抱介)
 ひのとり、ようこう、ひので、と太陽観測衛星は3機目だ。ようこうは大成功の衛星だったが、その成果を受けてのサイエンスの連鎖をアピールして欲しい。

常田
 ようこうの成果は、「宇宙における磁場の役割の解明」とまとめることができる。ようこうの前は磁場のリコネクションのような磁場のエネルギーをプラズマエネルギーに変えるメカニズムは、理論的に予想はされていたものの、ようこうによってはじめて確認された。
 今回は、磁場の源をより直接的に探ろうとしている。太陽の磁場は太陽内部で生じる。太陽は回転するガスの塊だが、内部で非常に強い磁場を作っている。望遠鏡で内部を観測することで、磁場の発生原因を探ることができる。

南日本新聞 小杉、森田先生に。今回の「ひので」は大規模な国際協力体制を組んでいるが、国際協力の善し悪しは。データ公開をどう考えるか。

小杉
 国際協力は、日本の分担金を減らしてその分を外国にしょってもらうというような論説記事がでることがあるが、それにはむかっとします。
 日本が日本だけで素晴らしい望遠鏡を作れれば、それが一番いいと思っている。その意味では私は愛国者だと思っています。
 しかし、持てる技術を持ち寄れば、1国ではできないことができるようになる。
 自分がアメリカに留学していた1980年代、アメリカは独力でOSLという太陽観測衛星を作ろうとしたが、難しくて挫折した。今回の可視光望遠鏡では、焦点面検出器はアメリカ、鏡胴は日本が分担している。知的所有権など面倒な問題はあるが、なるべく国際的に役割を分担するという意識で開発をマネジメントしてきた。

 アメリカは現在「ステレオ」という2機の衛星で太陽風を立体視するミッションを打ち上げようとしている。こういうデータは「ひので」では取れない。また、いつもフレアが出ているわけでないので、複数の衛星でのデータを利用が必要である。データ公開を先導したのは「ようこう」であり、少なくとも太陽観測の分野ではデータは隠しておくよりも公開したほうが遙かに得るものが大きいと考えている。

南日本新聞 次期固体ロケットにはMという名前を付けるのか

森田
 Mという名前を付けるに値する優れたロケットを是非とも作りたいと思う。一宇宙ファンとしては、M-Vを打ち上げ続けたかったけれども、でもいつまでも打ち上げ続けることはできない。予想よりも少し早く卒業の時期が来てしまったということだ。

西日本新聞 的川先生、コントロールセンターでの成功を見た時の感想を。それと若い人への言葉を。

的川 M-Vはいいロケットだなあということです(笑)。次のロケットを開発する若い人たちををきちんとサポートしなければいけないと思っています。

宇宙作家クラブ(松浦)
 第一部記者会見で、間宮副理事長が「ロケットは20機ぐらい打ち上げないと安定しない。日本は短期間に少ない機数で改造に改造を重ねてきた。」と言い、河内山理事は「スタートポイントがSRB-Aということで、ブースターから第1段にする場合必要な改修を行う必要がある。また、その後も10年20年と考えると改良していくこともあるだろう。」と言った。これは微妙に矛盾しているようだが、開発現場としてはどう考えるか。論理的に考えれば、これまで7機の実績があるM-Vを打ち上げ続けるのが、安定した打ち上げへの近道となるのだが。

森田 まず、新しいロケットの形態がどうなるかは、まだ決まっていません。選択肢としては色々な形態を考えている。そのなかの有力な形態がSRB-A利用というわけで、まっさらなところから検討している。
 同じロケットを打ち上げ続けて信頼性を獲得することも重要だけれども、その実績を踏まえて先に進む必要もある。一環したポリシーがあれば、信頼性を確保しつつ新ロケットを開発することは可能である。次のロケットは、1号機打ち上げが心配で心配でというのではいけない。Mロケットの実績を踏まえて、最初の打ち上げから安心して見送れるロケットを開発したい。

No.1088 :午前8時15分からの、記者会見第一部
投稿日 2006年9月23日(土)08時55分 投稿者 松浦晋也

午前8時15分からの、記者会見第一部です。

 出席者は左から、井上一宇宙科学研究本部長、河内山治朗理事(打ち上げ実施責任者)、間宮馨副理事長、板谷憲次文部科学省大臣官房審議官、松尾弘毅宇宙開発委員会委員長代理、奈良人司文部科学省宇宙開発利用課長、園田昭眞鹿児島宇宙センター長。

間宮
 今日は大勢お集まりいただき、ありがとうございます。
 初期の打ち上げ時刻に打ち上げることができた。M-Vは今回が最後の打ち上げだ。今回の成功で有終の美を飾ることができた。固体ロケットに関しては終わりではなく、新時代の始まりであると認識して欲しい。Mの技術は次期ロケットに継承し、維持発展させていきたいと思う。
 「ひので」は、我が国3番目の太陽観測衛星。太陽科学で、大きな成果を挙げることを期待して欲しい。JAXAは今年度、あと2機のロケットを打ち上る。
 国内外、そして時元に感謝すると共に今後ともご支援頂きたい。

河内山
 ロケットの飛行は正常で、近地点280km、遠地点686km、軌道傾斜角98.度の軌道に衛星を投入した。

井上
 サンチャゴ局は7時21分に、衛星からの信号を受信。三軸姿勢制御に入り太陽電池パドルを展開したことを確認。それをうけて衛星を「ひので」と命名した。我々としては、日米英の国際協力で作られた搭載観測機器が、太陽表面のフレアなどの現象を解明することを期待している。太陽科学の21世紀の「日の出」を目指すことが命名理由。また、ペンシルロケットで始まった宇宙開発が51年目を迎えるので、さらなる発展、新たな出発を願っての命名でもある。

板谷
 先日のH-IIA10号機の成功に引き続いての成功で、H-IIA6号機失敗以降、H-IIAは4連続成功、M-Vは3連続成功した。我が国の宇宙利用が着実に進展していることを喜びたい。「ひので」には優れた科学的成果を挙げることを機体したい。

松尾
 M-Vは、「はるか」「のぞみ」「はやぶさ」など野心的な科学ミッションを打ち上げてきた。私は、そうですね、考えますと、Mロケットというものを打ち上げはじめてから、すべてのロケット打ち上げに立ち会ってきた。
 宇宙開発委員会では、現在、固体ロケットについてもワーキンググループを作って技術の維持発展について検討している。来年末には結論を出す予定だ。

以下質疑応答
NHK 間宮副理事長、今年のロケット打ち上げ総括を。

間宮
 M-Vの最後ということで、是非とも成功して欲しいと思っていた。私としては所定の日、所定の時刻に上がって欲しいと思っていた。
 今回は、地元の人が多数見に来てくれた。VIPが視察場所に入れないほどだった。今後とも地元の人の期待に応えるべく最大の努力

NHK 成功連続で日本の宇宙開発の信用度が上がったと思うがどうか。

間宮
 現在、ロケットの信頼度はロシアが一番いい。1500発ものロケットをあまり変えずに打ち上げているから。日本では打ち上げの機会が少ない。我々は1機1機匠の気持ちでやっている。ロケットは20機ぐらい打ち上げないと安定しない。日本は短期間に少ない機数で改造に改造を重ねてきた。H-IIAがはじめて10機打ち上げたロケットである。M-Vも8機(松浦注、実際は7機)打ち上げて、安定してきたなというところだ。今回成功しても、毎回気を引き締めていかねばならないと思っている。

月刊天文
 井上本部長へ、今回のSOLAR-Bで、思い出深い部分を。
 間宮副理事長へ

井上
 詳細は後に小杉プロマネから話すことになるだろうけれど、「ひので」は過去にない解像度の太陽望遠鏡を搭載している。衛星開発チームはそれに相応しい姿勢制御精度を保つ衛星を開発してくれた。
 私の立場から固体ロケットの新たな開発については、これまでの成果を未来に繋げて欲しいと思っている。

間宮
 これまでのロケットは研究開発の時代だった。世界を見渡すとロケットは衛星を運ぶ道具という時代に入ってきている。ロケットの開発で格闘するというよりも、これからの蓄積で国際競争力のあるコストの安いロケットをつくってたくさん打つという方向だと思う。

西日本新聞 内之浦は開設以来、地元と二人三脚でやってきたが、今後新ロケットの開発のために4年の空白ができることについて、どう対処するつもりか。

河内山
 今後は観測ロケットを打つ。また、地元協力がなければロケットの打ち上げができないことは分かっているので、

南日本新聞
 松尾委員に。JAXAではSRB-Aを使う案が出ているが、これで日本の固体ロケット技術が継承されると考えているのか。また、打ち上げの形態として移動式発射設備を使う案もあるそうだが、1号機から移動式で打ち上げるのか。

松尾
 SRB-Aは、NASDA/ISAS共同で技術交流をして開発した。Mロケットとは無関係と言えばそうだが、技術は繋がっている。

河内山
 移動式の利点は海風のあるところではなく、もっと環境の良いところで保管できるということ。
 SRB-Aは、スタートポイントだが、ずっとSRB-Aを使うということではない。必要に応じてMの技術でSRB-Aを改良していく。

東京へマイクが移る

共同通信 SRB-Aを必ずしもすべて使うわけではないというのは、H-IIAとの共用化で安くするということと反するのではないか。

河内山
 スタートポイントがSRB-Aということで、ブースターから第1段にする場合必要な改修を行う必要がある。また、その後も10年20年と考えると改良していくこともあるだろう。

 以上です。

No.1087 :その名はひので
投稿日 2006年9月23日(土)08時12分 投稿者 松浦晋也

 SOLAR-Bは「ひので」と命名されました。

No.1086 :打ち上げ成功。記者会見は午前8時15分から ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月23日(土)07時50分 投稿者 松浦晋也

 午前7時46分です。チリ・サンチャゴ局で、太陽電池パネル展開を確認しました。 

 打ち上げは成功しました。記者会見は午前8時15分からです。

 画像:今村勇輔

 


No.1085 :打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月23日(土)06時50分 投稿者 牧野知弘

MV−7号機 打ち上げ。


No.1084 :ランチャセット中 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月23日(土)04時42分 投稿者 牧野知弘

ランチャセット中の写真です。


No.1083 :雨は止みました
投稿日 2006年9月23日(土)04時40分 投稿者 松浦晋也

午前4時38分

 雨は大降りになることなく、ほぼやみました。打ち上げ準備作業は続行しています。

 センターは打ち上げに備えて省電力モードに入りました。報道センター横の自家発電装置が動き出しました。

 一般見学者の数はますます増えています。麓の町では、一般見学者席ではなく、隣の叶岳に見学者を誘導し始めました。

No.1082 :ランチャセット
投稿日 2006年9月23日(土)04時31分 投稿者 牧野知弘

ただいまランチャセット中ですが、
4:10分頃から雨が……。