投稿日 2007年2月24日(土)16時57分 投稿者 松浦晋也
24日午後3時10分からの打ち上げ成功記者会見の様子です。
出席者は壇上に、
河内山治朗 JAXA理事(打ち上げ実施責任者)
立川敬二 理事長
遠藤利明 文部科学副大臣
小田邦博 内閣衛星情報センター所長
松尾弘毅 宇宙開発委員会委員長
板谷憲次 文部科学省大臣官房審議官
側面に、
奈良人司 文部科学省宇宙利用開発課長
加藤充 文部科学省副大臣秘書官
板倉康洋 内閣衛星情報センター参事官
園田昭眞 鹿児島宇宙センター所長
遠藤守 H-IIAプロジェクトマネージャ
前村孝志 三菱重工業技師長
立川:ほんの瞬間を狙った打ち上げが無事終わり、喜んでいる。風と雲との判断で担当者も苦労した。H-II、H-IIAともに6機目で失敗している。今回は打ち上げ再開6号機。魔の6号機であり、色々言われたがうまくいってうれしい。
河内山:リリース読み上げ。
打ち上げ時の状況は、北東の風5.4m、気温15.4℃。天候にみんなの思いが伝わって成功させることができたと思う。
遠藤:文部科学大臣談話の読み上げ。
ばりばりという音で、たいへん臨場感ある打ち上げを体験させてもらった。次号機以降の民間による打ち上げに弾みを付けるもので喜ばしい。連続6機成功は信頼性が確実に向上している証と思う。おめでとうございます。
小田:青空に白い煙が飛んでいくのが感動でした。内閣情報衛星センターの悲願であった4機体制がやっと実現できた。ここまで来るまでには、JAXA、三菱電機、種子島の住人の皆様などのさまざまな力があった。応援に感謝したい。
4機体制によって、光学、レーダーともども地球の任意の地点を1日1回監視できるようになる。光学3号機、分解能を向上させるための次世代光学センサーが衛星軌道上できちんと動作するかどうかを確認することが目的で、うまくいけば将来の分解能向上に道が開ける。
私は衛星の太陽電池パドルが開いたという報告を受けている。
今後3ヶ月に及ぶ衛星の機能確認をはじめとして気を引き締めてすすめていたい。
松尾:私のキャリアで待たせたことが数限りなくあるが、待たされる身になると関係者の苦労に頭が下がる。現在宇宙開発委員会では長期計画を策定しているが、これで憂いなく将来計画を策定することができる。
以下質疑応答。
NHK:小田所長に。衛星には安全保障と防災という2つの目的があるが、あらためてどのように衛星を使っていくかを聞きたい。
小田:これまでも安全保障、大規模災害で、画像を取得、分析して関係部署に配布し役立ってきたと自負している。今回4機そろったことで能力はフルになる。衛星の性能は1号機と2号機はほぼ一緒だが、撮像回数が増えることで情報の適時性や情報の深さが増す。これにより我々の任務を進めることができる。
NHK:衛星の使われ方や有効性が国民には見えにくい。
小田:災害についても映像をマスコミの方に見せられない理由は、情報収集衛星というところにある。情報収集衛星の画像は界各国でも公開されることない。さりながら、衛星の性能を外にださないような形で、災害現場に役立てようという計画を持っている。
NHK:映像を出すということか。
小田:映像で得た情報で、素早い災害対策ができるかということだ。画像情報の出し方は研究しているところだ。
NHK:国民からの認識を得ることは重要と考えているのか。
小田:すべて公開とすれば簡単なのだろうけれども、これは情報機関でありまして、我々の分析結果を官公庁で生かしてもらうことが重要と考えている。
鹿児島テレビ:今後の打ち上げ民間移管でJAXAの役割はどう変わるのか。
立川:世界的にロケット打ち上げは打ち上げ国が責任を負うことになっている。その実行機関はJAXAになる。従って打ち上げ安全はJAXA、ロケット能力など打ち上げ責任MHIということになる。
朝日新聞:今、衛星はどういう状態にあるのか、3ヶ月の初期機能を確認ということだが、3ヶ月後に4機体制が動き出すということか。
小田:私も太陽電池パドルが開いたということまでしか知らない。レーダー2号についてはこの後レーダーアンテナを展開する作業がある。さらに衛星システムをひとつずつ設計した通りに動作するか確認していく。その後は、情報センターで、画像をチューニングというか、調整を行って、順調にいけば夏ぐらいに4機体制の実運用になる予定だ。
共同通信:今後情報の出し方を検討していくと言うことだが生データではなく、加工した画像を出すということなのだろうか。
小田:具体的には検討中だ。映像を見ても写ったものが何を意味するかは、専門的な分析官が見なければ分からない。専門の防災救助の組織が有効に情報を使えるようにするためには、得た情報を地図に書き下ろして情報を出す、というような別の画像で出すということが考えられる。
これは利用省庁とも協議しなくてはならないところだ。
共同通信:例えば中越地震やスマトラ沖津波ではどのようなつかわれ方をしたのか。
小田:なかなかどこをどう撮ったということは申し上げることはできない。しかし、例えば内閣の危機管理セクションには情報を使ってもらっている。
共同通信:レーダーの展開はいつ行うのか。
センター・板倉:申し上げられない。
毎日新聞:来年春には最初の2機が設計寿命を迎える。実質4機体制は半年ということになるがどうか。災害画像の提供で、時期を逸するという可能性はないのか。
小田:衛星が減るということは確かに起こりうるが現在のところは設計寿命よりは長生きしてくれるのではないかと期待している。
平成23年にレーダー3号機を打ち上げる予定だが、分解能を飛躍的に向上させることにしており開発に時間がかかる。場合によって、3機体制になるのもやむを得ないところだ。しかし、我々としては4機体制を堅持したい。
画像提供については時期を逸さないようにしたいと考えている。
西日本新聞:先日中国が衛星破壊を行った。また、北朝鮮に対する六カ国協議もこの前まとまったばかりだ。この時期に情報収集衛星を打ち上げることの影響をどう考えているか。
小田:個人的には考えたこともない。
読売新聞:河内山理事に、H-IIAのJAXA最後の打ち上げの気持ちは。
河内山:ロケットをきちんと作ってちゃんととばすということで、やってきた。今回は今後につながる良い打ち上げをすることができたと思う。
今後は成功を続けるための努力を、MHIと共にやっていきたいと思う。
NHK:立川さんはかつて年3機打ち上げたいと行っていたが、平成19年には2機しか予定がない。どうお考えか。
立川:ここのところの在庫一掃で衛星がないことは事実だ。今後の展望として例えば「だいち」が災害観測に活躍しているように、衛星が役立つことが分かってきたので、年間3機ぐらいは官需はあると考えている。これには情報収集衛星も含まれる。加えて宇宙科学の打ち上げ需要もあるので、今後とも年平均3機の官需があると考えている。
これに加えてMHIが衛星を獲得してもらえれば、上乗せになる。
NHK:官需をとるためにはコストダウンが大事だがどうするのか。
立川:製造についてはMHIの責任で、作る機体の数を増やせば製造でコストダウンできる。これはMHIの責任で行ってもらうことである。
NHK:このところの打ち上げは天候がらみの延期が多いが、打ち上げ時期の緩和を考えないのか。
立川:延期要因として天候が表に出てくるようになったことを、ほめてほしい。天候に左右されるのは日本だけではない。我々の打ち上げ中止の基準は国際的なのものである。私個人としては、天候予測をより早い時期に行えるようにするなど、様々な観点で改善できるところがあると考えている。
南日本新聞:システム完成を持ってH-IIAは民間移管することになっているが、今後ともJAXAで改良を行うということは、ロケットが完成していないということか。
立川:技術は立ち止まらないということ。
河内山:20機連続成功を目指しているわけで、今後三菱さんと一緒に信頼性を上げるべく改良していく。具体的には、第2段エンジン、第1段エンジンのポンプ、固体ロケットブースターを信頼性を高めていく。
南日本新聞:実証衛星についても性能確認は3ヶ月ぐらいかかるのでしょうか。
また4機体制ということだが、すぐ3機に減ることも考え得るわけで、バックアップ機の打ち上げは考えていないのか。
小田:技術検証用の衛星なので半年ほどかけて技術の検証のみを行う。
バックアップ機は予算が関係してくる。
南日本新聞:5機、6機ということもありうるのか。
小田:そうだ。
南日本新聞:4機体制を維持するには次々打ち上げなくてはいけない。多額の開発費が見込まれるが、宇宙関連予算が総枠で減って行っている中、宇宙科学などにしわ寄せが行っているのではないか。実用衛星のみに偏るのはよくないのではないか。
松尾:今の立場では「そうならないように努力したい」としか申し上げられない。しかしフロンティア的なものは大切であると私自身は考えている。
時事通信:実証衛星は運用をしないと言うことだが、半年間の実証試験を行った後はどうなるのか。
センター・板倉:試験終了後は安全な軌道に移して落下するに任せる。
毎日新聞:衛星分離の時間が知りたい。予定軌道への投入はいつになるのか、
河内山:いつ答えられるんでしょう。それとも答えられないのでしょうか。
センター・板倉:答えられない、です。
共同通信:光学3号機は2009年打ち上げと聞いているが。
小田:そうだ。
共同通信:画像解析の人員は現状十分なのか。
小田:まあいろいろと設立時に決められた人数である。能力からすれば実運用から3年、その前の段階から分析能力を高める努力をしてきているので、十分な能力を持っていると考える。しかしながら、能力には「どこまで」ということはなくて、練度を上げれば情報の質があがるので、向上に努めていく。
共同通信:人数も足りているのか。
小田:この夏に4機体制になってから、また組織を考える必要があるかも知れない。
以上です。
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