投稿日 2009年9月9日(水)18時18分 投稿者 松浦晋也
これより、H-IIB試験機1号機、HTV-1号機打ち上げの実況を開始します。
9日午後3時半からの記者会見(Y-1ブリーフィング)の様子です。
出席者は、虎野吉彦HTVプロジェクト・マネージャー、中村富久H-IIBプロジェクト・マネージャー、西田隆JAXA企画管理主任。司会は大木田JAXA広報。
写真はHTVの現状を解説する虎野プロマネ。
中村プロマネより説明。
今年2月19日から射場作業を開始。4/2、4/22にCFT、7/11に発射リハーサル(GTV)をそれぞれ実施、8/12にフェアリング分離放擲試験を実施して、すべての開発作業を終了。8/17に開発完了審査を実施。
打ち上げは午前2時01分46秒。
現時点まで準備作業は順調。
最新の国際宇宙ステーションの軌道要素を使った計算結果に基づき、HTVの分離は打ち上げ後15分6秒になった。配付資料と少々異なるので注意のこと。
虎野プロマネより、HTVの説明。
HTVの意義。
ISSへの貨物運搬義務の履行。
国家基幹技術の一つである宇宙輸送システムである、軌道間輸送技術の確立。
有人システムに要求される信頼性と安全性の技術を取得。
HTVの能力
物資6t、船内物資4.5tと船外1.5t。ただし今回の技術実証機は、軌道上で技術実証を行うので、余分のバッテリーと推進剤を搭載している。その結果船内物資3.6tと船外物資0.9tと搭載物資を減らしている。
運用形態。H-IIBで打ち上げ。分離後GPS信号と米TDRS経由の通信を使用してISSとランデブー、近づくとISSとの通信を確立して接近、ISSの地球側10mの位置に相対静止。ロボットアームで捕まえてISSとドッキング。
西田主任から気象情報。
台風が去り西高東低の気圧配置となっている。南北に前線ができやすい状況だ。10日夜から11日早朝まで雨が降りやすい。打ち上げ時間帯に急激な天気の変化がある可能性が出ており、注目している。本日夕方にもう一度天候判断を実施する。
以下質疑応答
鹿児島テレビ 両プロマネに今の心境と心意気を。
中村:緊張している。H-IIBはこれまで開発してきた技術を取り入れた機体。これまでの技術開発が正しかったということを、H-IIBの成功により実証したい。
虎野:HTVは、JAXAとしては新しい技術を使って開発している機体。難しい技術だが、いやというほど地上試験を実施してきた。だから自信があるといえばある。しかし本番は何が起きるか分からないものだ。2000本近い様々な状況を想定したシナリオを用意して、十分な訓練を実施した。
西日本新聞;HTVは、今後どのようにして有人宇宙飛行船につながっていくのか。
虎野:HTVはISSに接近ランデブーするために、NASAの基準を満たしている。ランデブー系は三重、それ以外は二重の冗長系を組んでいる。しかし人間を生かしておくシステムは積んでいない。それらを開発していかなければ本当の有人宇宙船にはならない。
共同通信:具体的にどのような気象データが出ると、延期ということになるのか。
西田:気圧の谷ができるのかできないのか、というところが、ウチの予報士が悩んでいるところ。気圧の谷ができると、局地的な雨が降る。雨の降り方に注目している。試験機ということもあってなるべく雨にさらしたくないと考えている。延期の判断を下した時点で、推進剤を充填しているかどうかで延期の長さは変わってくる。
日刊工業新聞:推進剤の充填でどの程度の延期期間は変わるのか。
中村:推進剤充填前ならロケットは1日か2日、推進剤充填が始まっていると中2日の延期となる。
虎野:HTVは延期の場合はバッテリーの補充電が必要となる。あまり日付がずれるとプログレスやソユーズのドッキングなどが入ってくるので、国際的な日程調整が必要になることもある。
時事通信:打ち上げ隊の人数は。また第1段の大型化で変わったことはないか、
西田:総数570名、H-IIA15号機は485人。JAXA打ち上げ隊は130人、うち種子島には90人が入っている。関連メーカーは190名。三菱重工は250名。三菱関連メーカーが70名。
中村:推進剤充填にかかる時間はH-IIAと同じぐらい。第1段の容量が1.7倍になっているが、推進剤充填にかかる時間は長くなってはいない。打ち上げ時の風速制限は若干H-IIBと異なるが、それ以外はの条件はH-IIAと同じ。
時事通信:海外パートナーからの見学者はあるか。
虎野:NASAの局長やプロマネ、ESAのプロマネなどが来島する予定。ISSの6人体制に伴い物資消費量が増えているので、HTVによる輸送への注目度は上がっている。
産経新聞:アメリカや韓国でフェアリングによる失敗が起きているが、H-IIBのフェアリングは何か開発が難しいことはなかったか。
中村:フェアリングは打ち上げ時にかかる荷重に耐え、なおかつきちんと開かなくてはならないかなり難しい部位である。H-IIAのフェアリングよりも長さが3m長くなった関係で、かかる荷重が1.5倍になった。そのため力の流れ方の解析技術が不足していて、実際に試験をしたら一部が壊れるということも起きた。最後に飛行時荷重の1.25倍の荷重をかけて試験を実施した。分離機構はH-II以来使ってきたものなので、十分信頼性は高いと思う。
東京新聞:NASAの専門家委員会がISSの運用延長を勧告したが、これによりHTVの重要性は増すのか。また打ち上げ機数は増えるのか。
虎野:それは私が判断すべきことではない。国際間の調整による、物資輸送の分担如何でで決まることだろう。
BS日テレ:成功することによる今後の宇宙開発にもっとも大きなインパクトはなにか。
虎野:逆に失敗すると、ISS維持の物資輸送の一角が崩れるので、今後の予定通りのISSの運用のためには成功は必須となる。
中村:国内外で大変期待されているので、我々はそれを十分認識して打ち上げ作業を進めている。H-IIBは日本のロケット技術の集大成なので是非成功させて日本のロケット技術の優秀性を示したい。
NHK;天候の件について。雨の予想が打ち上げ条件の15mm以下でも延期にする可能性はあるのか。
西田:雨の降り方による。短時間にだあっと降る場合もありうるので、総合的な判断を行う。
西日本新聞:1日ずれると打ち上げ時間はどれだけ変わるのか。
西田:1日ずれると24分ほど打ち上げ時刻が早まる。
読売新聞:HTVのドッキングと離脱の日時は?
虎野:現状では9月18日の午前4時50分にロボットアームに使い捕捉、午前7時50分にISSと結合。離脱は、ハッチクローズが11月1日、翌日に離脱。時刻はまだ決まっていない。
以上です。
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