投稿日 2010年6月15日(火)02時04分 投稿者 柴田孔明
2010年6月14日20時10分 カプセル回収結果報告
(※敬称を略させていただきます)
画像はJAXA提供
主会場 ウーメラプレスセンター(中継)
長谷川 義幸 執行役
國中 均 月・惑星探査プログラムグループはやぶさプロジェクトチーム教授
西田 信一郎 月・惑星探査プログラムグループ研究開発室 室長
相模原キャンパス
川口 純一郎 プロジェクトマネージャー
ウーメラから
長谷川
今日の主要な作業(現地時間)
8時24分にヘリ離陸。現地の人に確認と許可をもらう。
(※アボリジニの聖地のため)
12時48分にRCC(現地本部)から回収のためにヘリを離陸させた。
13時23分に着陸地点から500メートル付近に着陸。
カプセルとパラシュートの回収に入る。
16時38分にカプセル回収完了。併せて周辺土壌を識別のために採取。
17時30分にRCCに到着。
コンテナをクリーンルームに17時40分に搬入。
明日以降、クリーンルーム内の作業を開始する。
2枚のヒートシールドは13時45分頃にもう一機のヘリが探索のため離陸。
14時30分に確認開始。16時24分に確認完了。
回収は明日以降である。
国中
ヘリ2機は、シコルスキー76とベル412。
シコルスキーに地元地権者(アボリジニ)を乗せ、着陸の承諾を得た。
砂埃でカプセルが汚染されるのを防ぐため500m離れた場所を選定した。
12時30分から回収班がベル412でピストン輸送。
内訳は豪州空軍リーダー、国中、豪州検疫官、カプセル技術2名、科学2名、国際的科学者1名、カメラクルー2名。
リチウム電池・火工品に対する防具とカプセルの防爆コンテナを持ち込んでいる。
平行してシコルスキー76でヒートシールド探索。
風向きから事前に計算し、カプセルから5キロ程度離れた場所で捜索した。
ジグザグ飛行後すぐホバリングをする事を2回繰り返した。
その後高度をとって通信で呼びかけてきて、発見したの報告を受けた。
その後シコルスキーは位置を記録し、写真を撮って帰投。
モジュールの回収作業開始。
爆発性のものが残る可能性があり、また宇宙物質による汚染を検査するため、耐爆性の安全着を着て行っている。また豪州の検疫官が立ち会っている。
状況としては、カプセルは反転して地面に落ちていた。
パラシュートは結合された状態だった。ピンは抜けていたが、外部から力が加わると外れるものはそのままであった。よって位置は変わっていない。風は殆ど吹いていなかったことが判った。このため引きずられてはいない事が判る。
この後、写真とムービーで記録を開始。
現状の記録後、カプセルをプラケースに収め、ヒートシーラーで密封した後、耐爆性のコンテナに入れて閉めた。その後ショック対策のケースに入れヘリに積んだ。
また着陸点の土壌も回収した。カプセルから漏れていても選り分けられる。
これは地球物質の指標となるが、カプセルに損傷は確認されていない。
この後、検疫官は薬剤による化学滅菌の有無は必要ないと判断。
カプセルをヘリに収容。RCCに輸送し、クリーンルームに保管。
明日まで誰もさわれないように封印作業を行っている。
明日は午前からヒートシールドを回収。ベル412で行う。
午後にはモジュールから火工品の取り外しを行う。
今後、気密性ケースに入れ窒素でパージし、チャーター機で輸送します。
質疑応答・ウーメラより
読売新聞
空輸は明日なのか?
空輸は明日ではない。明日はヒートシールドの回収等まで行う。
輸送作業は17日以降。
NHK
カプセル回収が予定通りだった感想を。
また燃えるはやぶさを見た感想は。
西田
事前に準備を行ってきたが、完璧な突入・着陸・回収ができた。大変感謝している。
はやぶさの発光は室内でに居て見ていない。ビデオで確認した。
火球が出るのは当然の事であった。
ただビーコンが出るかは際どいため心配した。ビーコン発信開始の26分頃までが永遠に感じられた。ビーコンの方向のロックオンは予想のど真ん中であった。
不明
カプセルの状態を確認した感想。
非常に綺麗であった。安全の許可が出て接近すると本体が見えたが、カプセルコンテナの蓋には断熱材が残っていたため背面への熱入力が殆ど無かったと判断できた。本体とのアンビリカルも、切断した電線が溶けずそのまま残っていた。凄いものを見たと思った。
朝日新聞
カプセルが新品同様だが、どう思うか。
帰ってきたのは40センチ程度だが至極当然にできた。
だが膨大な準備と協力、声援、支援と理解を得ている。
宇宙経由の輸出入は誰もやったことがない。
法律的に新世界であった。今の法律に合わないと駄目になってしまう。
(※音声が途切れて聞き取れない部分がありました)
毎日新聞
イオンエンジンへの感想
凸凹はあったが、よく帰ってきたなと思った。
エンジニアの立場としては、もう一周しても良かったなと思っている。
行けるところまでやってみたい。
問・
こんなに見事な美しい最後だったが、これを想像していたのか。
西田
見ていないので後で確認するが、何の由来の光かを確認している。
分光観測をしているので判ると思う。
はやぶさは強運だった。晴れはあの日だけ。
いつもは必ずどこかが曇りや雨だった。
不明
カプセルがひっくり返ったのは何故か。
落ちてきてぶつかって跳ねたと思われる。
不明
カプセルの落ちた場所はどんなところか。
大変平たい場所。雨が降ると水浸しになると思われる。
質疑応答・相模原へ
日本経済新聞
カプセルに損傷は無く良好であるのか。
損傷は無い。コンテナのシールは均一のクリアランスを保っている。
加熱を受けた兆候は無い。
テレビ朝日
カプセルの中身の結果はいつ頃か。
また、事業仕分けについてはどう思うか。
川口・蓋開けに2週間程度。中身ははっきりした物があれば一月だが、微粒子が想定されるので半年以上かかる。
川口・管総理から電話をいただいた。大変な成果で称えたい。良かったと評価を受けており、次世代につなげることが大事だとおっしゃっていた。
いいものを抽出するのも仕分けである。後継機をぜひ立ち上げていただきたい。
川口・余談たが運用エリアの扉が閉まって部屋の電気が消えていた。通信途絶よりもっと大きな暗転。後継者を養わないとぷっつり消えてしまう例である。
きちんとした世代交代が行われなければ大変な損失となる。
東京新聞
イオンエンジンは木星行きが目標だが、手応えはあったか。
宇宙技術はエンジンだけでは完成しない。
海外のように原子力電池ではなく、日本は太陽電池となるため、大容量のパネルやセール技術のシェイプアップが必要。糸口はつかんだ。
川口・イカロスがやっている。
共同通信
公開写真の撮影時間と、何をやっているか教えて欲しい。
カプセルのみの写真は着地状況。誰も触れていない。ひっくり返っている。15時20分に撮影。
パラシュートのライザが繋がったままに見える。アンカーは抜けていない。
プロテクタをつけて観察する写真。ここでひっくり返した。15時31分。
未発火が無く、火工品が作動済みであることを確認。
これはJAXA職員と製造関係者である。
接近して窺っている写真である。15時36分。
不明
どうやって壊れた際の対策を事前に想定したのか
虚仮の一念である。
往復航行を実証するため工夫した。
逆に3年間伸びて猶予ができたと考えている。
往路の2年は忙しく大変苦しかった。その調子で戻ってきたら苦しかったと計画で判っていた。
尚、更に3年は部品劣化で無理だっただろう。
NHK
薬材滅菌の想定は何に対してか、誰の心配か、薬剤の種類は何か。
輸入はオーストラリアから日本という形になるのか。
科学的には信憑性は無いが、宇宙細菌や宇宙生物に対応するための滅菌。
コスパー(COSPAR)によるとイトカワはS型で認定されているため、持ち帰りは問題ない。
化学滅菌は更に万が一を手順化したもの。
オーストラリア指定の薬剤。ベルコン(?)
科学サンプルとして認識され科学免税となる。
川口・コスパー(COSPAR)はS型とC型小惑星は科学観測以上のシールは必要ない。後はオーストラリア政府がどう思うかである。
日経
火薬は何のためか。リチウムイオン電池は何のためか。
火薬はヒートシールド分離とパラシュートのためと、着地した時のパラシュート分離の4個。
リチウムイオン電池はコンピュータ駆動、火薬発火、ビーコンの電源。
不明
はやぶさとの最後の通信はどういったものか。はやぶさ、ご苦労様とは打っていないのか(笑)。
キセノン残量はどれくらいか。
川口・レーザー高度計の機能確認の指令、カメラ画像の再生指令、ただし途中で切れた。10時28分30秒。
(※補足・最後のコマンドはテレメトリ切り替え。22時25分30秒に送ったが見えなくなった)
ぜひ打ちたかった。その上、復唱してほしかったが余裕は無かった
国中・キセノンは約20キロ残っていた。
不明
カプセル振って音かしなかったか?。
時間も無く、高い品質維持のためもあり、何もしていない。
不明
理想的に進み、結果として不要だった準備へのねぎらいは何かあるか。
ビーコンが出たので、流星の航跡観測による軌道計測は行わなかった。
持ち帰ってデータの整合性を進めたい。
川口・順調で私も豪州行きが無くなった(笑)。
不明
発光が明るかった原因は何か。
川口・マイナス4〜5等の予測はカプセルのもの。大きい本体は面積も大きい。
西田・明るく見えたのは探査機本体である。等級は測光データはまだ出ていない。
自分の影ができるほど、半月くらいの明るさであった。ウーメラからも少し見えた。
以上です。
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