宇宙作家クラブ
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No.1607 :打ち上げの写真 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年8月8日(水)01時01分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ時の様子。撮影・柴田孔明


No.1606 :S-310-41号機の実験結果報告 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年8月8日(水)00時57分 投稿者 柴田孔明

 2012年8月7日16時30分に観測ロケットS-310-41号機が内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。打ち上げ時間帯は低い雲に覆われていて、打ち上げ後数秒でロケットは見えなくなり、轟音だけが響き渡りました。一般と報道が同じ場所で見学しましたが、夏休み期間という事もあり、子供連れが多くて賑やかな打ち上げ見学となりました。

・登壇者
石井信明 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系教授 観測ロケット実験室長
鈴木宏二郎 東京大学 基盤科学研究系 教授
吉田裕二 宇宙科学研究所 観測ロケット実験室 副室長 保安主任

(※敬称を一部略させていただきます)

・発表文読み上げ・石井
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小型インフレータブルカプセルの飛行実験を目的とした観測ロケットS-310-41号機を平成24年8月7日16時30分00秒(日本標準時)に、内之浦宇宙空間観測所から上下角81度で打ち上げました。 ロケットの飛翔および搭載機器の動作は正常で、計画どおり発射後60秒に開頭が行われ、191秒に最高高度150kmに達した後、内之浦南東海上に落下しました。
 搭載実験機の小型インフレータブルカプセルは、計画どおり発射後90秒にエアロシェルカバーを開放し、95秒にガスの注入を開始し、100秒にロケットから分離・射出されました。射出後は、約20分間にわたり、温度、圧力、加速度、姿勢等のデータおよび画像データを正常に地上局へ送信しながら降下を続けました。今回取得されたデータを用いて、詳細な解析が今後実施されます。
 光学班は発射後3秒までロケットを追跡しました。本日の天候は曇り、地上風は東の風1.1m/秒、気温26℃でした。
 これをもちまして、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の平成24年度第一次観測ロケット実験は終了しました。関係各方面のご協力に感謝いたします。
(※発表文はここまで)

石井・本日は沖縄の西にある台風の影響が残って天候が良くなく、朝からいいコンディションではなかったが、夕方には回復し雨は降らないという見込みで打ち上げ準備を進めた。13時30分にロケットを格納庫からランチャードームに移動し、順調に準備を進めて打ち上げができた。読み上げた通り、インフレータブルカプセルのガスによる展張(膨張)、分離、挙動等などのデータは正常に取得された。
 配付資料の写真は、ロケットから分離されて3秒後のものと、カプセル自身から展張したものを撮影したものです。

・質疑応答
(※今回の質疑応答では、殆どの報道機関が所属と氏名を名乗りませんでした)

不明・実験機を分離した高度などは。
石井・100秒後、高度111キロ、毎秒1キロメートル。

不明・傘の展開は95秒からだが、完了したのはいつか。分離時には膨張は終わっていたのか。
鈴木・まだ取得した動画を解析中です。分離時の写真では膨張は完了している。
石井・地上実験では3秒から5秒くらいで完了している。

不明・表面温度はどうだったか。
鈴木・温度計の解析が必要だが、想定した最高温度(300度C)より低かった。熱によるダメージは検出されていない。

不明・海上に落下した時刻はいつか。
石井・落下位置が射点から200キロくらい離れ、水平線の向こう側になるため正確ではないが22分後に着水したと考えられる。カプセルの着水位置は180キロの南東の海上。200キロはロケットの落下位置。最高高度はどちらも約150キロである。

不明・配付された資料の画像はどういった状態か。
鈴木・上の写真は分離時3秒のもので、ロケットからカプセルの先端が見えている。下の写真はカプセルの裏側に搭載されたカメラから見たもの。

不明・カプセルの分離後、最高点は。姿勢はどうだったか。
石井・高度150キロ。ロケットとカプセルの間隔は離れつつ飛行した。
鈴木・姿勢はまだデータを解析中。軌道に関しては正常であったようだ。

不明・動画を受信できたか。
鈴木・搭載した4台分を正常に取得できている。
石井・回転しながら降りてきている。

不明・今後、地球帰還機への応用はするのか。
鈴木・そのための基礎技術となる。この先はまず今回のデータを検証し、確認した後に具体化していく。

NVS・音の伝搬の実験はどうなったか。この実験の目的は何か。
石井・高度約100キロまで音波を計測できた。これから解析したい。目的は薄い大気を伝搬する音を計測し、大気の状態を知る。ロケット自身の音も観測している。なお、この実験に参加したのは高知工科大学です。

不明・カプセルの実験に参加した大学は。
鈴木・東京大学、青山学院大学、東京工業大学、日本大学、東海大学、九州工業大学です。

不明・最高温度300度Cは今回のカプセルだが、この機構が無い機体はもっと熱くなるのか。
石井・重量と面積によるが、はるかに熱くなる。

鹿児島放送・はやぶさのカプセルやシャトルと違う手段だが、これの意義と今後の開発は。
鈴木・これは傘のようなもので面積の割に軽い。空気の薄い高々度、あるいは大気の薄い惑星で効率よく空気ブレーキが利く。そういったところで使える。今後の開発は今回の結果を見て考えていくことになる。具体的な目的のためではなく、技術検証を行っているところ。探査機などが考えられる。

同・アメリカの探査機が着陸したばかりだが、日本の宇宙開発の意気込みは。
石井・是非とも我々も火星や金星探査に応用していきたい。

不明・こうのとり3号に搭載されたi−Ballが再突入時にデータを収集するが、連携はするのか。
石井・直接は無いが、これまでの再突入機・カプセルのグループで共通している。熱の解析と熱に耐える材料については共通項がある。

不明・現時点で倍ぐらいのものを作っているそうだが、どれくらいの大きさまでいくか。
鈴木・今回のサイズができたなら次の大きさといった感じ。作る事自体が技術的チャレンジとなる。最大はまだ言えないが、試作の2.5mよりもう少し大きくできる状態と思う。

不明・インフレータブルの意味は。
鈴木・空気やガスを注入して構造物を膨張させるという意味。
石井・膨張とちょっと違ってパラシュート、傘などの展張という意味。

不明・ニーズがあるところに応用があるが、これを実用化するのか。
鈴木・技術的な階段を上がることができたが、まだ完璧といえる状態ではない。大きさを変えるなどの研究開発をしていきたい。

不明・カプセルの大きさについて。
鈴木・直径や長さのデータは真ん中の金属部分です。

不明・温度を上げないようにしているのは形状と素材による効果か。
鈴木・大きさに比べて軽い事が重要。材料はいろいろあるが、打ち上げ時に折りたためて、展開できるものが選択肢として残った。

NVS・今回の柔構造を研究している人は少ないと思うが、どんな面白さがあるか。
鈴木・手本が無いので自分たちで試行錯誤できる。デザインする魅力がある。風圧で空気の流れが変わる構造で、難しい故に面白い。

NVS・小型化と大型化の展望。
鈴木・どちらという事は無いが、いろいろあると思う。改良によって材料やデザインが変わる可能性もあり、楽しみである。

以上です。


No.1605 :公開された機体 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年8月6日(月)00時52分 投稿者 柴田孔明

公開されたS-310-41号機。側面に白いカバーがあるのが今号機の特徴です。


No.1604 :S-310-41号機の機体公開前記者説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年8月6日(月)00時50分 投稿者 柴田孔明

 本日、2012年8月5日14時30分より観測ロケットS-310-41号機の報道公開と記者説明が行われました。現地は台風の影響により天候が変わりやすく、時々強い雨が降っています。なお、今号機の打ち上げは当初8月6日の予定でしたが、天候判断のため8月7日に変更されています。打ち上げ時間帯は現在のところ変わらず、16時30分〜17時00分の予定です。
 (※本来は7月10日の打ち上げ予定でしたが、豪雨被害により道路や通信ケーブルに損傷が発生し、今月まで延期されていました)

・登壇者
石井信明 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系教授 観測ロケット実験室長
鈴木宏二郎 東京大学 基盤科学研究系 教授
(※敬称を一部略させていただきます)

・概要説明 S-310-41号機観測ロケット実験(小型インフレータブルカプセルの飛行実験)

 石井・当初7月10日の打ち上げ予定だったが、九州地方を襲った豪雨により土砂崩れや通信回線に被害があり、復旧のため1ヶ月ほど遅れた。
 現在、ロケットの最終確認を行っている。今回は搭載機器に温度を嫌うものがあり、窒素ガスで冷却している。温度変化が大きい場合、公開時にランチャを下げるかもしれない。
 (※このあと、ランチャは打ち上げ時の角度を保ったまま公開された。気温が低かった事が幸いした模様。ただ電波テストの直後でケーブル類が接続されたままのため、いつもより離れた位置での撮影となった)
 再突入カプセルは大きくて軽いほど空気抵抗を効率的に利用出来て、空力加熱も低減できる。大きくて軽いほど設計が楽であるが、ロケットに搭載する際などに制約がある。はやぶさでも40センチであった。将来、火星など大気を持つ惑星に突入する際には大きい機体にしたいが、今回の膨張型ならば大気抵抗を有効に利用できる。

・実験シーケンス
 1.打ち上げ(S−310)
 2.ロケット燃焼終了後、ノーズコーン開頭(1Hzのスピン)、アンテナ展開。
 3.エアロシェルカバーを解放後、炭酸ガスを注入し、エアロシェルカバーを展開
 (打ち上げ後90秒、高度約100km。※搭載カメラで展開の様子を撮影)
 4.エアロシェル展開後、実験機を放出。
 (打ち上げ後100秒、高度約110km、※射出速度50cm/sec)
 5.動圧が大きくなるにつれて、空力安定により迎角0度に指向するとともに、空気力を受け、エアロシェルが安定する。
 6.高度55km付近で最大動圧0.65kPa、最大マッハ数4.45、最大空力加熱18.6kW/m2を経験する。飛行中のデータは全て地上局へ送信。
 7.打ち上げ後約25分で着水、その後数時間で水没。

・実験機概略(エアロシェル)
 エアロシェル外直径120cm
 カプセル直径20cm
 トーラスチューブ直径10cm
 実験機全備重量20kg以下
・S−310
 1段式固体燃料ロケット
 全長7.6m
 直径31cm
 打ち上げ時重量760kg

・柔軟エアロシェルによる大気圏突入機開発の意義とそのメリット
 展開柔構造膜面エアロシェルによる低弾道係数の実現
 →低弾道係数の大気圏突入→高々度での減速
 →従来システムと比較して、大幅な空力加熱の緩和と軟着陸に向けての終端速度が低減。

 展開型柔構造による大気圏突入技術の開発
 →我が国オリジナルで世界初の安全な大気圏突入技術の確立へ。
 →大気のある惑星への探査技術への応用、特に火星のような大気の薄い惑星では有用の技術となる。

石井・別の実験として、今回のロケットにはマイクロホンが搭載されている。地上から音を出して、ロケットで受けながら飛行する実験をする。びっくりするような音ではないが、そのような音が出ると言うことでご承知願いたい。連続音ではなく、50ヘルツと100ヘルツの音を一定間隔でどんどんと出す。音速を超えて飛ぶロケットが、音に追いつきながら記録することになる。
(※50ヘルツ1秒、100ヘルツ1秒、3秒休んで繰り返し。太鼓の音のような感じになるとのこと)

・質疑応答
読売新聞・我が国オリジナルとあるが、他の物と比較するとどのようなものか。
鈴木・現在、世界で使われているものは大きく2種類あり、弾道型のカプセルと、スペースシャトルのような翼を持った機体がある。今回、第三の手段としてインフレータブルカプセルを開発した。名前の由来は、空気を入れて膨らませる事を「インフレート」などと呼ぶ事から。
面積の割に軽い機体となるため、空気ブレーキが良く利く。高度の高い、空気の薄い層で効率よく減速できる。熱的なものが緩和されるのと、大気の薄い惑星などで有効である。
各国で研究しているが、まだ確立した形とはなっていない。

読売新聞・これはパラシュートのようなものか。
鈴木・今回はそのまま着水するのでパラシュートは装備していない。減速が大きいためパラシュートを兼ねていらなくなる機体を開発できる可能性もある。
石井・パラシュートは低高度でしか使えない。高々度ではパラシュートが展開できず、カプセルに対する加熱が大きくなる。しかしこれは高々度から減速が効く。また、アブレータを薄くして軽量化できる。

毎日新聞・材質は何か。
鈴木・加熱は緩和されるが加熱自体はあるので、耐熱性のある布を使っている。これは新規ではなく既に市販されている民生品である。
(※相模原キャンパスの展示では、トーラスチューブはZylon紡績糸織物、Zylonフィラメント織物、シリコンゴムの3層、薄膜フレア部はZylonフィラメント織物との表記がありました。なお「Zylon」は東洋紡の商品名です)

NVS・分離時の速度と姿勢について。
鈴木・カプセル自体はスプリングの射出装置でロケット(秒速1kmで飛行中)に対して秒速50cmで投げ出される。
切り離し後、弾道飛行の頂点で秒速550m程度。最高高度は150kmくらい。形状から常にカプセル先端が下を向く(迎角0度)ことになる。

NVS・今回、取得するデータは何か。
鈴木・展開構造物の状況を知るため動画とスチルのカメラをカプセル後方に複数搭載している。他に角速度、姿勢、風圧、気圧高度計、内部温度分布、など。今回のカプセルは回収しないため、データはリアルタイム送信である。

毎日新聞・この高度55km付近というのは大気圏突入の高度となるのか。
鈴木・ブレーキが最もよく効く高度で、今回のシミュレーションによる予測値である。
石井・大気は100kmでも存在する。この55kmは突入する機体の大きさや重さで変わる。小さくて重いと、もっと低い高度となる。

毎日新聞・今回は宇宙には出て行かないのか?
石井・今回の到達高度は十分に大気圏外からの突入となる高度である。

不明・展開するための気体は何か。
鈴木・炭酸ガスで、市販のカートリッジと同じもの。

鹿児島テレビ・豪雨被害から施設は復旧したのか。
石井・宮原のレーダーが3〜4km離れているが、こちらのコントロールセンターと通信するための光ケーブルやメタルケーブルを支えていた鉄塔が流されて、まだ完全ではない。国道は片側通行で仮復旧である。実験には支障がないが、本格的な復旧には最長で1年くらいかかると思われる。
 (※現在、内之浦宇宙空間観測所内では通路を掘ってケーブルの埋設を行っているが、これは今回の災害復旧とは別のもの)

鹿児島テレビ・このカプセルの技術は、はやぶさ2などに応用はされるか。
石井・はやぶさ2へのエアロシェルの搭載は予定されていない。だが、再突入に対するシミュレーションでの解析などでは共通のものがあり役立つ。

NVS・今回のエアロシェルは周回軌道からの突入への利用は可能か。
鈴木・今回のカプセルは観測ロケットに合わせてあるため、このままでは周回軌道向けには使えない。大きさや素材を変える事により対応は可能だが検討中。

毎日・重さは。
鈴木・15.6キロ程度の重さ。

NVS・マイクの実験で何が判るか。
石井・音の伝搬と、音より速く飛行している機体で過去の音を拾う事ができる。

以上です。


No.1603 :打ち上げ動画 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月22日(日)12時00分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット3号機打ち上げ時の動画(リモートカメラ)を以下の場所に掲載しています。
ニコニコ動画(要登録)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18409712
Youtube(登録不要)
http://www.youtube.com/watch?v=sPMzy-qDiOs&feature=plcp

※アドレスが逆だったので再掲載します。


No.1601 :雨の向こうでの打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月21日(土)15時25分 投稿者 柴田孔明

雨により視界が悪い中、第2射点を飛び立つH-IIBロケット3号機/こうのとり3号。雨雲や発雷などで、いつ中止や延期になってもおかしくなかったのですが、定刻の打ち上げとなりました。


No.1600 :打ち上げ時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月21日(土)15時21分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ時刻の種子島宇宙センターは、突然の降雨に見舞われました。ここ最近では珍しく条件の悪い打ち上げです。


No.1599 :打ち上げ後記者会見の様子
投稿日 2012年7月21日(土)15時14分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ後記者会見の様子は今村勇輔さんにまとめていただきました。
http://ima.hatenablog.jp/entry/2012/07/21/141552

No.1598 :現在の状況 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月21日(土)07時29分 投稿者 柴田孔明

H2Bロケット3号機は燃料・酸化剤が注入されていますが、沖に雷雲があるとの発表もあり、打ち上げは天候次第となりそうです。


No.1597 :「こうのとり」命名者への記念品贈呈 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月20日(金)21時45分 投稿者 柴田孔明

毎号行われている「こうのとり」命名者への記念品贈呈ですが、今回は野口宇宙飛行士からH-IIBとHTVの模型が手渡されました。


No.1596 :射点に着いた3号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月20日(金)21時40分 投稿者 柴田孔明

ほぼ第2射点に着いたH-IIBロケット3号機。これから打ち上げに向けた準備が行われます。


No.1595 :射点移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月20日(金)21時38分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット3号機の射点移動(ロールアウト)が7月20日19時30分から行われました。


No.1594 :打ち上げ前ブリーフィング(Y−1) ●添付画像ファイル
投稿日 2012年7月19日(木)17時35分 投稿者 柴田孔明

 2012年7月19日15時30分より、種子島宇宙センターでH-IIBロケット3号機打ち上げ前プレスブリーフィング(Y−1)が行われました。
なお、打上げは平成24年7月21日(土)11時06分18秒(日本標準時)に行うことが決定しています。
(※一部敬称を略させていただきました)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 打上執行主任 宇治野 巧
宇宙航空研究開発機構 HTVプロジェクトマネージャ、射場主任 小鑓 幸雄
宇宙航空研究開発機構 企画管理主任 川上 道生

・質疑応答
鹿児島テレビ:打ち上げに向けての意気込みをお聞きしたい。
宇治野・今まで培ってきたものの最終仕上げ。改良などが確認できるので着実に。
小鑓・3号機から国産通信機が搭載され、これで定常運用となる。ぜひ成功させたい。
川上・地上の設備、追尾、安全系、保安系共に最高の状態にある。21日に打ち上げて成功させたい。

西日本新聞・4号機から三菱重工に移管だが、今回の位置づけ。こうのとりの開発費。
宇治野・事業計画では民間移管だが今現在では未定である。3号機の成果を踏まえて調整してゆくことになる。
小鑓・運用費は約140億円。
宇治野・H2Bの開発費用は271億円。3号機の開発は枯渇部品の再開発があり50億ほどかかった。ロケットの制作費は民間受注の都合があるので差し控える。

NHK・打ち上げが当初の11時18分から11時6分に変わった理由は何か。
小鑓・当初発表した半年前と変わった。ISSがリブートしている。

NHK・REBRの開示不可のものについて。IHIのi−Ballのメリットは何か。
小鑓・REBRはアメリカのものであり、温度データはキーとなる情報でJAXA側に開示されない。i−BallのものはJAXAに開示される事になる。いちばん欲しい低高度の加速度・温度データが取れる。位置もGPSで取得でき、画像データもとれる。

NHK・再突入のデータは今回で揃うか。
小鑓・もっと多くのデータが必要。今後も行う。
宇治野・ロケット側も考えていて、i−Ballを2段目に搭載する構想もある。

産経新聞・極低温点検の省略や、アビオニクスの再開発などがあるが低コスト化のためか。
宇治野・極低温点検はH2Aでは既に行っておらず、H2Bも同じようなレベルに達している。アビオニクスの部品枯渇については、安定した部品の確保をした後、試験のためのコストがかかる。H2Aロケットでまとめ買いしていたが、そのストックが底をついたため、製造が出来なくなった。共通する部品を使うことで今後は枯渇しにくいような対策をとった。

産経新聞・リアルタイムOSを搭載とあるが、これは何か。
宇治野・大それた事ではなく、CPUを変更したため適用した。JAXAの他のプロジェクトでも使ってゆく。

産経新聞・再開発はロケットの信頼性に影響しないか。
宇治野・どの機器も確立したやりかたに従っている。新しい機器で信頼性が下がることはない。

日経ビジネス・i−Ballと二段目の落下試験は将来の有人計画のためか。
小鑓・将来的に回収するとなると、日本近海でやりたいが、破片落下の範囲を知ることが必要。
宇治野・どの高度で破壊が起こるかを捉え、どういった範囲に散らばるかのデータを求め、危険な範囲を狭く設定できる事に繋がる。有人はHTV−Rだが、そういった事に先駆けデータをとってゆく。

毎日新聞・ロケットとこうのとりはHTV−Rに繋がっていくと思うが、今回の3号機の意義は何か。
宇治野・H2Bロケットは2号機で確立していたが、検討課題の対策をとり、H2Aロケットで反映させてきた。今回のH2Bロケット3号機が成功することで民間に移管できるタイミングになり、重要となる。
小鑓・荷物を運ぶことだが、NASAから信頼を得ている。3号機で国産機器の実証となる。

・東京会場
時事通信・3号機の制作費は2号機と同様か。
宇治野・同様です。

読売新聞・アメリカなどでは50億など低価格化があるが、JAXA主導でハイスペックになりすぎた点などはないか。海外と価格面での差は考慮していなかったのか。
宇治野・まず為替レートの問題で倍半分の差が出ている。材料費の高騰もある。H2Bシリーズではそういった点ではできていない。これは開発段階ではコスト的に対抗できていたが、外国のものは為替に助けられているのと、更に低コスト化の先をいって開発されたという点もある。不要となったICBMを流用した価格破壊もあり、一歩先を進んでいることもある。

日本放送・小型衛星と放出機構はどう梱包されているのか。星出宇宙飛行士のリクエストはあるか。
小鑓・小型衛星は放出機構は別に梱包されている。宇宙飛行士が組み込んで放出する。
広報・宇宙飛行士のリクエストなど個人的なものは公表できない。

筑波会場
NVS金子・もし延期になった場合、時間帯は同じか。
宇治野・延期時点の状況によるが、燃料を充填すると点検が必要となり3日後になる。1日ずれた場合、他の制約に依存する。
小鑓・ISSの通過は1日で約24分早くなる。

NVS金子・この段階でHTVにアクセス(荷物の搬入)した感想は。
小鑓・今回60個入れたがスケジュールがタイトだった。しかし要望があるため、今後もやっていきたい。

種子島会場
南日本新聞・海外ロケットが一歩先にコストダウンしているか、H2Bではどうか。
宇治野・我々も常に考えている。いくつか実施しているものもあるが、急に半分になるような大きいレベルではない。目標(1%レベル)はあるが、その半分ぐらい。

NVS斎藤・夏休み直前で多くの観客が種子島に来ているが、子供連れなどに一言。
宇治野・当日は恐らく雲があると思うので、打ち上げの最初が肝心だと思う。

筑波会場
NVS金子・延期の場合、ドッキングの日程はそのままシフトするのか。
小鑓・その通り。

NVS金子・2号機の時は種子島の水を搭載して話題になったが。今回、種子島の水はあるか。
小鑓・今回は要請が無い。今回の実験に使う水棲生物の水はあるが種子島の水ではない。

以上です。


No.1593 :再突入データ収集装置i−Ballの報道公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年6月29日(金)00時30分 投稿者 柴田孔明

 2012年6月26日、こうのとり3号(HTV3)に搭載予定の「i−Ball」の報道公開が、株式会社IHIエアロスペース(IA)富岡事業所で行われました。富岡事業所はSRB-Aなどの固体ロケットの製造を手がけ、しかも敷地がロケットの形になっており、とても興味のある場所です。
 報道公開の冒頭に、牧野隆 取締役(IHI航空宇宙事業本部 宇宙開発事業推進部長)から挨拶があり、i−Ballが日産自動車から始まるIAの帰還システム開発の歴史に連なるものであることや、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還シーンから、カプセルから本体を撮れたら、そしてそれがHTVから撮れたらというアイディアとなり、それがまるで目玉だという事で「i−Ball」となったといった説明がありました。
(※一部敬称を略させていただきました)

・登壇者
JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部 HTVプロジェクトチーム サブマネージャ 佐々木 宏
JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部 HTVプロジェクトチーム 和田 恵一
IA宇宙技術部 宇宙機システム室 主幹 森崎 浩武
IA宇宙技術部 宇宙機システム室 主幹 杉村 文隆
IA宇宙技術部 宇宙機システム室 守屋 朝子

・概要説明(一部抜粋)

・概要説明・IA森崎

・IAが開発したi−Ballとは
 宇宙機やロケットと供に大気圏に再突入する球形カプセルの装置で次のことができる。
  1.宇宙機やロケットの空力破壊の様子を観測する。
  2.着水点の情報を取得する。

・HTV搭載型i−Ballの役割
 ・HTVは国際宇宙ステーションへ補給品を輸送後、復路は廃棄品を搭載して大気圏再突入、破壊される。
 ・再突入時の状況を記録できれば、どのように破壊されるのか理解できるようになるため、落下時の警戒区域の縮小に役立てることができる。

・HTV搭載型i−Ballの仕様
 ・クルー操作によりタイマー起動。タイマー時間到達後、HTVの再突入時空力加速度を検知し、搭載コンピュータを起動する。
 ・慣性計測装置で加速度と角速度を計測する。
 ・GPS受信機により着水位置を計測する。
 ・後方カメラ、予圧部カメラにより静止画を取得する。
 ※VGA後方カメラ40枚、予圧部カメラ10枚。
 ・熱電対、温度ロガーによりi−Ball内部(アブレータ、構造)の温度を8点測定する。
 ・高々度GPSRにてGPS電波強度データを取得する。
 ・熱防護はアブレータを使用。
 ・減速は分割機構によりパラシュートを放出、展開する。
 ※カプセルの上半分はパイロットシュートとして、メインシュートを引き出すのに使われる。
 ※丸い形状から上半分は北半球、下半分は南半球と呼ばれる。
 ・着水後、フローテーションバッグにて3時間以上、海面を浮遊する。
 ・衛星通信にて取得データを送信する。

・HTV搭載型i−Ballのシーケンス
 1.HTV予圧部に専用コンテナに梱包され打ち上げ。
 2.ISSでコンテナから取り出され、HTV予圧部補給物資用ラック(HRR)に取り付けられる。設置後、クルーによりタイマーが起動される。
 3.タイマー時間に到達後、HTVの再突入時空力加速度により搭載コンピュータを起動し、データ計測を開始する。
 4.HTV予圧部の1次破壊により外部に放出、再突入する。
 5.高度5〜10kmでパラシュートを展開し緩降下、着水する。着水後、フローテーションバッグを展開し浮遊する。この状態で衛星経由のデータ送信を行う。

・HTV搭載型i−Ballのサクセスクライテリア
 ・ミニマムサクセス
  →大気圏再突入中の姿勢(角速度、加速度)データの取得
  →着水点位置の取得
  (※熱に耐え、パラシュートを展開して着水し、データを送信できることも含む)
 ・フルサクセス
  →後方カメラ画像データの取得
  (※姿勢制御をしていないため、欲しい画像が撮れるか不明)
 ・エクストラサクセス
  →予圧部内画像の取得
  →高々度GPSデータの取得
  →アブレータ温度の取得

・概要説明・JAXA和田

・目的
 「こうのとり」の大気圏再突入時のデータ取得。
・意義
 警戒区域の縮小につながる破壊現象の特定。
 大気密度・加熱率等の再突入機設計データの蓄積。
・JAXAとIAの共同研究
 安全性・運用性評価、データ取得計画、実運用、飛行後評価が共同で行われる。
 (※その他では、JAXAは安全審査の受審、カーゴ搭載、軌道上運用計画など搭載機会の提供を担当。IAは供試体開発、梱包・輸送、射場作業などの供試体の提供を担当)
・データ取得要求
 JAXAは「加速度・角速度」「低高度GPSデータ(位置)」「温度」「予圧部内画像」を取得し、警戒区域の縮小や再突入データの蓄積となる。
 IAはJAXA要求に加え「後方カメラ画像」「高々度GPSデータ」を取得し、ユーザー獲得(販売)、帰還技術の発展となる。

・再突入データ収集装置について
 ・前回「こうのとり2号」にてREBRを1台搭載し、再突入データ取得に成功。
  (※REBRはNASA/Aerospace Corporation製の装置であり、日本側へのデータ開示が一部不可であった。REBR:Reentry Breakup Recorder)
 ・i−Ballはパラシュートやフローテーションバッグを装備しているためREBRより大きい。
 また、カメラを搭載して画像の取得も可能。温度データも取得できる。

・再突入プロファイル
 ・高度120kmでHTV再突入I/F点到達
 ・高度約90kmでREBRがデータ取得開始(0.0125G検知)
 ・HTV2実績では高度約88kmでテレメトリが断。
 ・高度約80kmでi−Ballデータ取得開始(0.02G検知+約50秒)
 ・高度78kmでHTV主要破壊
 ・高度約70kmでi−Ball、REBR放出。i−Ball表面温度は最大約2千度に達する。
 ・i−Ballは高度約6kmでパラシュート開傘。緩降下/軟着水。
 ・REBRは弾道飛行中にイリジウムでデータ送信を行い、そのまま着水。
 ・i−Ballの着水後、フローテーションバッグ展開、イリジウムでデータ送信開始。

・発展シナリオ
  「こうのとり」後続号機の定期的な再突入機会を有効活用し、再突入機設計データを蓄積。
  HTV−Rに代表される将来の再突入機の研究開発へ貢献。

・スケジュール(ISS側の都合等で変更の可能性あり)
  平成24年6月26日 射場への発送(IA)
  6月29日〜7月2日 射場作業(IA)
  7月2日      引き渡し
  7月10日     カーゴ搭載(JAXA・HTV3)
  7月21日     打ち上げ(JAXA・HTV3)
  8月25日     i−Ball起動
  8月26日     ISSから離脱
  8月28日     大気圏再突入、データ取得運用
  8月28日以降   飛行後評価

質疑応答

不明・i−Ballは放出後にカメラがHTVに向くようにしてあるのか。i−BallがHTVの前に出るのか
杉村・i-Ballは球形だが重心を偏らせているので、カメラは必ず進行方向とは反対方を向く。i-Ballの弾道係数は200ぐらいで、HTVの分解した破片の弾道計数は5〜500で分散するので、弾道計数が小さいものはi−Ballの後ろに来る。

大塚・警戒区域の縮小とあるが、現状と将来目標など。この縮小は航空・船舶など他からも要望があったのか。
和田・これはデータをとってからだが、現状は(縦方向に)2千〜3千キロの幅になっている。この幅だと回収や観測をするのは難しい。これをできるだけ小さくしたい。他からの要望ではない。

大塚・HTV搭載型とあるが、他の機体への搭載は可能か。
森崎・具体的には出ていないが、再突入時のフライトレコーダーとして設計しているのでH-IIBロケットの2段などが考えられる。

NHK・機体撮影への不安・自信・意気込みなど。
森崎・自信があるかと言われれば、撮れると思っている。たまたま近くに(HTVの破片が)居てくれればと思っている。

フリー鈴木・取得したデータの公開はどうなるか。
和田・JAXAとIAで最終調整しているが、できるだけ早い段階で公開したい。データ送信の関係で3段階くらいになる。公開範囲はこれから調整する。

読売新聞・これまでもJAXAと民間の共同研究があったが、それと今回はどこが違うか。また費用の分担はどうなっているか。
和田・これまでは発注者と物作り側など上下関係だったが、今回は共同開発として公平な立場で、お互いの良いところを使って進んでいける。予算はJAXAとしては「こうのとり」3号機の運用準備の中に含まれる。
森崎・物の開発はうちで行っている。予算は具体的には差し控えたい。

読売新聞・今回の成果から、何をどう売り込むのか。どのデータが一番売れるか。
森崎・まだ飛んでいないので、具体的には決めていないが、何回か飛ばしたい。売れ筋は恐らく「絵」である。

時事通信・取り始めから撮り終わりまで。動画をやらないのは何故か。4号機以降の予定は。
守屋・最初は外部カメラで10枚、8秒間隔、72秒間。このあと約10秒の間がある。続くカプセル内蔵カメラは40枚で3秒間隔、117秒間。イリジウムを利用したデータ転送量の関係で、割当量から動画までは載せられない。
和田・まだ4号機以降は判らない。
佐々木・結果を踏まえてやっていきたい。

時事通信・過去にも再突入をするものがあったが、今回は熱的にどうか。
杉村・惑星間の「はやぶさ」に比べると楽。地球低軌道で、しかも降下の途中までHTVの中にあるため。

毎日新聞・i−Ballが球形である理由は何か。
杉村・「はやぶさ」のカプセル等と違い、放出時に向きを決められない。球形なら重心をずらした方が前を向く。

毎日・海外のREBRがある中、更に国産を搭載する理由。
和田・データをとれる時間が長く、お互い補完できる。海外のものからは出てこないデータや撮れないデータがあるため。国産で海外よりいいものがあれば使ってゆく。日本の宇宙開発という意味もある。維持継続にJAXAとして貢献できる。

読売新聞・カメラの撮影開始のトリガは。外の箱は勝手に分解するのか。着水域の範囲を確認したい。
守屋・i−Ballで計測している加速度で決めている。
杉村・シーケンスで動く。これまでの例から時間を組んである。箱は分解する。
和田・縦方向に2千〜3千キロ、幅は100キロ程度。

以上です。


No.1592 :WE WISHの展開機構 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年6月26日(火)05時37分 投稿者 柴田孔明

小型衛星WE WISHの展開機構の部分。PEラインという細い糸が張られていて、これが電熱線で切れることにより、アンテナ等が飛び出す仕組みです。
(※先にPラインと書きましたがPEラインが正しいようです)

画像がサーバーで弾かれたので再掲載します。