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No.1622 :公開された「はやぶさ2」 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月27日(木)01時18分 投稿者 柴田孔明

公開された「はやぶさ2」

・太陽電池パネル、主構造体はフライト品
・内外の搭載機器はダミーウェイト
・金色の熱防御材も未実装
・振動測定用の赤色の試験用ケーブルを実装


No.1621 :はやぶさ2の概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月27日(木)01時15分 投稿者 柴田孔明

 2012年12月26日午後より、「はやぶさ2」一次噛み合わせ試験前の探査機公開が行われ、それに併せて探査機の概要説明と質疑応答が行われました。
(※敬称を一部略させていただきます)

登壇者
國中 均 はやぶさ2プロジェクトマネジャ/JSPECプログラムディレクタ
渡邊 誠一郎 はやぶさ2プロジェクトサイエンティスト

・概要説明:國中
「はやぶさ2」についてようやく形が整ってきたので、公開させていただくことになった。
(※注:「はやぶさ2」は、まだ正式名称ではないとのこと。ただし他の呼び方も無い様子)

・「はやぶさ2」が目指すこと
 1.探査の意義
 「未踏峰への挑戦」−太陽系内の自在な移動。
 未踏峰の小惑星への探査を行うことで、地球から太陽系天体を往復してくる技術を確立する。小惑星の自転方向・形に応じ、自在なアプローチを実現し、科学成果を最大にする。またラグランジュ点利用などの新しい試みに繋がる検討を行う。

 2.科学的意義
 「我々はどこから来たか」−太陽系の起源と進化、生命圏の原材料
 地球、海、生命の原材料物質である、鉱物、水、有機物は、太陽系初期には、互いに密接な関係を持って進化した。この相互作用を記録した始原天体(C型小惑星)を間近で観察するとともに、表面サンプルを地上に持ち帰って分析することで、太陽系の起源・進化や海・生命の原材料物質を調べる。

 3.技術的意義
 「技術で世界をリードする」−日本独自の深宇宙探査技術の確立
 「はやぶさ」は世界初の小惑星サンプルリターンとして、数々の新しい技術に挑戦したミッションであった。その経験を継承し、より確実に深宇宙探査を行える技術を確立する。さらに、新たな技術にも挑戦し、今後の新たな可能性を開く。
 (※衝突装置による人工クレーター形成:宇宙衝突実験)

・「はやぶさ」と「はやぶさ2」の比較
 1.通信系:Kaバンド通信系を追加し、より多くのミッションデータの送信に寄与できる。
 (※現状でKa帯の地上局アンテナは日本国内になく、海外に依頼することになる)
 2.イオンエンジン:電気の力でそのイオンを加速して後方に押し出すことで速度を得るが、その高出力化を行った。
 3.小型ランダ(MASCOT:Mobile Asteroid Surface Scout):ドイツからの申し出により搭載予定。小さな天体へのローバ・ランダの着陸技術を実証し、獲得する。
 (※MASCOTはミネルバと同様の移動方法になる予定。他にミネルバ級の分離ロボットを3機搭載予定)
 4.姿勢制御装置(リアクションホイール):「はやぶさ」で3台中2台が故障したため、「はやぶさ2」では4台搭載し、冗長性を高める。
 (※Z軸が増えることになる。国産ではなく米国製)
 5.衝突装置:宇宙空間にさらされていない新鮮な内部物質を取得、研究に寄与する。
 6.近赤外分光計・中間赤外カメラ:C型小惑星の含水量や熱特性を調べるため、赤外線観測を充実。
 7.金星探査機「あかつき」の不具合を反映:推薬(燃料)の配管系統を見直した。
 (※あかつきでは逆止弁の閉塞があった)
 8.ミッション機器:水や有機物の探査に合わせた機器を選定した。

*その他 (はやぶさ)→(はやぶさ2)
 サイズ:1m×1.6m×1.1m → 1m×1.6m×1.25m
 推進薬込み重量:510kg → 約600kg
 打ち上げ年/ロケット:2003年5月9日/MV5 → 2014年度/H-IIA(2014年12月が目標)
 小惑星探査期間:約3ヶ月 → 約18ヶ月(予定)
 試料採取:2回(表面のみ) → 3回(目標値、表面と表層下の採取を試みる)
 地球帰還:2010年6月13日 → 2020年末(予定。着陸予定地はオーストラリアで同じ)
 探査目標天体:イトカワ(S型小惑星) → 1999JU3(C型小惑星)
 小惑星構造:ラブルパイル → 不明(はやぶさ2探査により解明)
 平均密度:1.90±0.13g/立方センチメートル → 不明(はやぶさ2探査により解明)

 ※以下は聞き取り分から。
 ・サンプルを入れるコンテナ室は「はやぶさ」では2つだったが、「はやぶさ2」は3つになる。密閉方法などが改良される模様。
 ・H-IIAロケットの場合、「はやぶさ2」単体では軽いためサブペイロードが必要になるはずだが現段階では未定とのこと。「あかつき」では「イカロス」を搭載した。
 ・ターゲットマーカーを3個から5個に増加予定。
 ・「イカロス」に搭載した分離カメラを「はやぶさ2」にも搭載したいとのこと。
 ・サンプラーホーンは、より採取しやすい形状に改良される。

・小惑星の選定(C型小惑星)
 1.科学的意義の観点
 初期太陽系の進化を記憶した始原天体であり、水・有機物の存在が期待できる小惑星を探査することがミッションの科学要求である。地上からのスペクトル観測でC型小惑星と確認された天体は、その有力候補となる。
 2.技術的可能性の観点
 小惑星の軌道、自転周期、自転軸の方向により、探査機が往復でき、かつ、タッチダウンができる天体が候補となる。
 (※地球の近傍でこの条件に合うC型小惑星は少ない。大きすぎると重力が強くて着陸が難しい。自転が高速だと着陸が難しい。なお、NASAやESAの小惑星探査機も往復する場合は同様の観点となる。小惑星が多いメインベルト帯はまだ難しい)

・探査対象天体1999JU3に向かうためには2014年に打ち上げなければならない。次の機会は10年後になってしまう。

・各機関との協力概要
 1.米国
 JAXAは「はやぶさ」初号機と同様、深宇宙追跡支援等の支援をNASAから受け、JAXAは試料の一部をNASAへ提供する。(協議中)
 2.欧州
 JAXAは、ドイツ航空宇宙センター及び仏国立宇宙研究センターが共同開発した小型ランダ(MASCOT:Mobile Asteroid Surface Scout)を「はやぶさ2」に搭載する。代わりに欧州の追跡局、開発中の地上試験(落下棟、微少重力実験)の機会を得る。
 3.豪州
 はやぶさ2帰還時の着陸場所の提供協力を受ける。(協議中)

・質疑応答
毎日新聞:何をどうぶつけて小惑星にクレーターを作り、何を得るのか。
渡邊:小惑星に銅で作った弾をぶつけて、内部の新鮮なサンプルを取得したい。また、小惑星は衝突を繰り返して壊れ、今のこの大きさになったと思われる。人工的なものをぶつけ、どんな衝突・放出が起こるかを研究する。これは地上ではなかなか再現できない。
國中:円柱状のものから火薬の力によって、重さ数キロの銅板を秒速数キロで飛ばす。銅板はヘルメットのような形に変形して飛ぶ。これは探査機から分離された後、タイマーで起動する。

毎日新聞:着陸を複数回行うのか。
國中:まず初代「はやぶさ」同様の表面着陸を数回行い、次に今回新たに試みる衝突体をぶつけた後の着陸を行う。
渡邊:衝突装置を切り離した後、探査機が小惑星の裏側に隠れる必要がある。タイマーは40分くらい。衝突後、大量の破片が舞い上がったものが収まったあとに着陸してサンプルを採取する。
國中:「はやぶさ」は3ヶ月の滞在だったが、「はやぶさ2」は一年半(約18ヶ月)滞在するため、十分な送信時間がある。

NHK:このプロジェクトを引き受けた経緯など。
渡邊:直前の今年10月から引き受けた。プロジェクトはもっと前から始まっていたが、もっと広い研究者の参加が確実な成功のためには必要であった。初号機からの方の参加が当たり前と思われていたので、新しい参加者を求めていた。私の専門は惑星の太陽系・惑星形成論。小惑星の探査から惑星の成り立ちを知ることができるため、私でも役に立つことができる。

朝日新聞:打ち上げまでの予算は314億円だったが、変更はあったのか。
國中:これは地球帰還までの予算だが、変わっていない。

読売新聞:イオンエンジンの推力増強はどういったものか。2014年の打ち上げチャンスはいつか。
國中:イオンエンジンは私の研究分野であり、工夫をして推力を増強している。ただ抜本的に変更すると初代からの資産を使えなくなる。今回は8ミリニュートンから10ミリニュートンに増強した。
打ち上げ時期は2014年12月を予定。これを逃した場合2015年6月と同年12月もあるが到着時期(2018年)は同じ。このため打ち上げが遅れるとイオンエンジンの運転ノルマが上がっていく。2014年12月だと80%の稼働率だが、これを逃すと96%といった殆ど休めない稼働率になる。

産経新聞:今日の段階では構造体と太陽電池パネルだけがフライト品だが、この先打ち上げまでどのような工程があるか。
國中:現在は相模原で機械環境試験中である。今はだいたいの形ができあがった状態。今のところ順調である。年明けに筑波で音響試験を行う。1月中頃に相模原に戻る。
 現状は重さを合わせるダミー機材を搭載している。機器を積み込んだ電気噛み合わせは5月頃で、ほぼ完成した形になる。
 その後いったん分解し、コンポーネントの整合試験、単体の環境試験を行う。
 来年10月に再度組み立てて、各種試験を行う。2014年の夏に完成予定となっている。
 今後は完成品となりクリーンルームに入るため、公開は難しくなる。今日のタイミングは近寄って見てもらうには好機である。

以上です。


No.1620 :打ち上げ時の写真 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月18日(火)03時17分 投稿者 柴田孔明

撮影:柴田孔明
宮原付近の旧小学校跡地で撮影。これまでの報道席付近はイプシロンロケット関連の工事が行われており、今回の位置に変更されています。また、一般の見学地も宮原の報道席前からミューロケットなどでお馴染みの国道沿いの場所に変更となっていました。


No.1619 :打ち上げ時の写真2 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月18日(火)03時12分 投稿者 柴田孔明

撮影:JAXA


No.1618 :打ち上げ時の写真 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月18日(火)03時08分 投稿者 柴田孔明

撮影:JAXA


No.1617 :S−520−28号機打ち上げ後会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月18日(火)03時06分 投稿者 柴田孔明

 2012年12月17日16時00分(JST)に、内之浦宇宙空間観測所よりS−520−28号機が打ち上げられ、その実験結果報告記者会見が同日18時45分頃から行われました。
(※敬称を一部略させていただきます)

・登壇者
石井 信明 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系 教授 観測ロケット実験室長
稲富 裕光 宇宙科学研究所 学際科学研究系 准教授/実験主任
吉田 裕二 宇宙科学研究所 観測ロケット実験室 保安主任

・発表文読み上げ
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、微小重力環境を利用した均質核形成実験を目的とした観測ロケットS-520-28号機を平成24年12月17日16時00分00秒(日本標準時)に、内之浦宇宙空間観測所から上下角76度で打ち上げ、実験は計画通り終了しました。
 ロケットの飛翔および搭載機器の動作は正常で、計画どおり発射後10秒に炭酸カルシウムの核形成実験を開始し、60秒にノーズコーンを開頭、62秒にスピン制御モードに移行しました。宇宙ダストの核形成再現実験は打ち上げ後100秒に開始しました。その後、ロケットは283秒に最高高度312kmに達した後、内之浦南東海上に落下しました。

 今回実施した2種類の実験のうち、炭酸カルシウム核形成実験では、炭酸イオンとカルシウムイオンを含む11種類の異なる濃度の水溶液から核形成を行い、生成した結晶核による光散乱強度と溶液インピーダンスの連続測定を行いました。宇宙ダスト核形成実験では、宇宙空間を模した3つの真空容器中で鉄および酸化タングステンの蒸気を噴出し、そこから固体微粒子(ダスト)が形成される過程を干渉計により測定しました。
 今回取得されたデータを用いて、詳細な解析が今後実施されます。

 光学班は発射後35秒までロケットを追跡しました。
 本日の天候は晴れ、地上風は南西の風3m/秒、気温16℃でした。

 これをもちまして、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の平成24年度第二次観測ロケット実験は終了しました。関係各方面のご協力に感謝いたします。

(※参考:http://www.jaxa.jp/press/2012/12/20121217_s-520-28_j.html)


・質疑応答
読売新聞:微小重力状態となったのは予定通り8分間くらいだったのか。炭酸カルシウムのデータで、前日の説明では炭酸カルシウムの実験で12個の実験装置があるとのことだったが、結果が11種になっているのは何故か。データは全て収集できたか。
石井:予定通り約8分間。
稲富:使用した溶液の種類が11種となっている。
稲富:予定通りデータを収集できた。

不明:今回の実験について「天体のタネ」と「赤ちゃん」など複数の表現方法あるが、これはどういった違いか。
稲富:判りやすい説明方法として、きっかけとして「種」、これから成長するという意味で「赤ちゃん」を使った。

西日本新聞:今回の実験の意義はどういったものか。
稲富:原始太陽系で何が起こっていたかという天文学の分野である。宇宙空間でダストが出来る様子を明らかにできる。

NVS:今回の鉄の蒸気で形成された粒子と、他の隕石や探査機で取得したサンプルで判りそうの事はあるか。
稲富:微小重力実験で得た物質と、はやぶさ等が持ってきた物質との比較が可能になった。

不明:出来たダストは何個で、大きさはどのくらいか。
稲富:これからデータや画像から解析する。特殊な干渉計で濃度と分布を同時にとることが可能だが膨大なデータ量である。

南日本新聞:2つの実験(宇宙ダスト核形成実験と、炭酸カルシウム核形成実験)のうち、炭酸カルシウムのデータ収集方法はどんなものか。
稲富:光散乱強度は、例えは石けん水を横から見て光を当てた場合、散乱して光が見える。小さい粒で光を反射させるものが無ければ光は散乱せず、センサーにもとらえられない。
インピーダンス測定は、1キロヘルツの交流で生じる抵抗値の変化で結晶核の生成をとらえる。

NVS:微小重力下では種結晶の発生が地上より1万倍遅いという話だったが、今回の実験でもそうだったのか。また、一般論としてそういった傾向はあるのか。
稲富:まだデータが解析できていない。
 擾乱が無いところから結晶を生み出す場合は待ち時間が長いが、対流など擾乱があれば速い。しかし半導体の成長は遅くなるが、タンパク質などはまたいろいろ異なるところが面白い。

不明:今回は28号機だったが、S−520−27号機はどうなっているのか。
石井:S−520−27号機はS−310−42号機と来年夏(2013年夏)に連続打ち上げを予定。

NHK:ロケットの落下位置は南東のどこか。
吉田:549秒後、水平距離で387キロ地点に落下した。

・その他
 ・上下角を76度に設定しているが、前日の電波テスト時には80度だった。これは当日の風を考慮したため。昼頃から弱い風が出ていた。
 ・来年夏に予定されているS−520−27号機とS−310−42号機の連続打ち上げは、リチウム等の発光実験で、それぞれの機体で放出される物質や高度が違うとのこと。使用する電波等の関係で同時打ち上げではなく、一方が着水してから次の打ち上げとなる。30分程度の間隔となる見込み。昔の機器ならば連射が可能だったが、今はアビオニクスを共通化したため使用する電波も同じになり同時に追尾できない。

以上です。


No.1616 :ロケットの先端部分 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月17日(月)00時39分 投稿者 柴田孔明

ロケットの先端。上から実験機器(ノーズ部分)、テレメトリなどの装置(銀色の部分)、ロケットの回転を止めるガスジェット装置(灰色の部分)、ロケット本体の順になります。


No.1615 :公開されたS−520−28号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月17日(月)00時33分 投稿者 柴田孔明

記者に公開された観測ロケットS−520−28号機。今回はドーム内から発射予定です。


No.1614 :S−520−28号機の機体公開前説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年12月17日(月)00時31分 投稿者 柴田孔明

 2012年12月16日14時半より内之浦宇宙空間観測所にて、S−520−28号機の機体公開と記者説明が行われました。
(※敬称を一部略させていただきます)

 なお、今回の打ち上げは見学場所がこれまでとは異なっており、一般見学はミューファイブロケットで使われていた場所となりますのでご注意下さい。また、鹿屋・内之浦方面から向かう場合、崖崩れによる通行止めや片側交互通行となっている場所が多いので、いつもより移動に時間がかかります。

登壇者
石井 信明 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系 教授 観測ロケット実験室長
稲富 裕光 宇宙科学研究所 学際科学研究系 准教授

・実験概要
使用ロケット S−520−28号機
全長 8.7m
全重量 2.3t
搭載機器重量 141kg
実験機器高 284cm(*)
到達高度 290km
水平距離 400km
*ロケットの回転を止めるガスジェット装置を含む。

打ち上げ予定日 2012年12月17日(延期する場合は翌日から2013年1月31日まで)
(※搭載機器の準備の関係で11月下旬から変更されている)
打ち上げ時刻 16時(16時〜16時30分)
ロケット・カプセルの飛翔時間 約8〜10分
打ち上げ条件 ロケットの保安や飛行に影響を与えない天候であること。

・実験観測の内容
『微小重力環境を利用した均質核形成実験(宇宙ダストと炭酸塩結晶の生成)』
観測ロケットの弾道飛行で得られる数分間の微少重力環境を利用して、結晶化の最初の段階である核形成のようすを観測・計測し、その物理を理解するとともに、将来的に国際宇宙ステーション(ISS)で行うさらに長時間の繰り返し実験のための基礎データを得る。

1.微小重力環境を利用した宇宙ダストの核形成再現実験
 宇宙空間を模した真空容器中で鉄など(*)の蒸気を噴出し、そこから固体微粒子(ダスト)がどのようにして形成されるのかを観察する。(*鉄とタングステン)
 →地球のような天体のタネがどのようにしてできたのかの解明につながる研究。

2.微小重力環境を利用した炭酸カルシウム結晶の均質核形成メカニズムの研究
 炭酸イオンとカルシウムイオンを含む溶液を混ぜ、炭酸カルシウムの結晶核が形成される速度の濃度依存性を測定する。
 →大気中の二酸化炭素を削減するために地中に炭酸カルシウム結晶として効率よく固定・貯留する技術に関する日米の国際共同研究の一環。(NanoCO2プロジェクト)

 これらの実験は打ち上げ中に並行して行われ、それぞれ微小重力状態で起こる現象を光学的・電気的手法によりリアルタイムで計測する。(※)
 1.微小重力状態になってから、計3種類のダストが発生する様子を順次計測する。
 (※光干渉、圧力、温度を使用)
 2.微小重力状態になる直前に2つの水溶液を混合して、以降に核形成が起こる過程を計測する。
 (※時間、電気的の特性変化、光の散乱・反射を使用)

・参加研究機関
東北大学、JAXA、東海大学

・質疑応答
読売新聞:微小重力状態になるのは、発射からどのくらいの時間帯か
石井:高度100kmくらいが空気による減速Gを受ける。10分間の飛行のうち最初と最後の1分にそれがかかる。残り8分のうち、真ん中の6分が実験可能な綺麗な環境になる。

NVS:結晶の実験データは、画像の他に何を受信するのか。
稲富:結晶はとても小さく電子顕微鏡でもなければ見えないので、光の干渉や圧力・温度の変化などで観測する。
 炭酸カルシウムの方は、イメージとしてはコンデンサのようなもので、インピーダンスが変わると高周波で抵抗が変わる。また、光を当てて散乱のデータなどを取得する。

NVS:微少重力下の実験結果は、地上の実験と違うものか。
稲富:ダスト実験の場合、微少重力では地上とガスの分布が明らかに違う。炭酸カルシウムについては解析に時間がかかる。

読売新聞:ダスト実験で「鉄など」とあるが、鉄以外のものは何か。
稲富:鉄とタングステンです。

読売新聞:濃度依存性とは何か。
稲富:12個の異なる濃度でサンプルをとる。結晶核の生成時間などが大きく変わる。
 (※炭酸カルシウムの実験では濃度の異なる12個の実験装置がある。固体微粒子実験の方は3つ)

南日本新聞:前回の打ち上げはいつか。
石井:今年の8月7日16時30分にS−310−41号機を打ち上げています。

読売新聞:参加研究機関でアメリカ側の名称は何か。
稲富:協定を結んだものではなく、研究者が集まっているもの。

NVS:炭酸カルシウムの方は、微小重力の実験で効率よく固定できる方法が判るのか。
稲富:イオンとイオンが出会って結晶化する初期段階を明らかにし、地上での結晶化についての効率化な指針を得る。理論通りに結晶核ができる訳ではなくずれがある。 炭酸カルシウムの場合、宇宙では1万倍も違う。

南日本新聞:最高高度290kmに到達する時間を教えていただきたい。
石井:280〜290秒くらい。
(※ランチャ角度によって異なる。公開時は80度にセットされている)

以上です。


No.1613 :糸川英夫博士の銅像建立記念式典・除幕式 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年11月11日(日)19時36分 投稿者 柴田孔明

2012年11月11日、内之浦宇宙空間観測所にて日本における「ロケット開発の父」と言われる糸川英夫博士の銅像建立記念式典と除幕式が行われました。今年は糸川博士の生誕100周年(1912−1999)であり、内之浦宇宙空間観測所の開設50周年という年でもあります。
当日は特別公開が行われており、あいにくの悪天候でしたが大勢の見学者が訪れていました。


No.1612 :内之浦宇宙空間観測所開設50周年記念式典 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年11月11日(日)01時16分 投稿者 柴田孔明

 2012年11月10日に、肝付町の内之浦銀河アリーナ大ホールにて、内之浦宇宙空間観測所開設50周年記念式典が行われました。開設当時を知る方々による糸川博士などに関する懐古談や、これまで打ち上げに協力された方々への感謝状贈呈などが行われました。
 また、来年の8月から9月頃の打ち上げを目指している新型固体ロケットイプシロンについて、プロジェクトマネージャである森田泰弘JAXA宇宙科学研究所教授による講演も行われています。

 このイプシロンロケットについては、先日2012年10月29日に東京丸の内のJAXA東京事務所にて、報道関係者向けの説明会が森田教授によって行われています。


・10月29日の質疑応答より(一部省略しています)

・登壇者
鹿児島県肝属郡肝付町 町長 永野 和行
JAXAイプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 森田 泰弘
JAXA 内之浦宇宙空間観測所 所長 峯杉 賢治
(※敬称を一部略させていただきます)

産経新聞・来年度の打ち上げはいつ頃になるのか。打ち上げコストはどの程度で、ミューファイブとの差はどれくらいか。イプシロンのビジネス展開におけるコスト面での実用性。イプシロンという名の由来。
森田・初号機打ち上げ時期は来年の夏期。具体的には8〜9月頃を目標としている。コストは配付資料に記載があります。ミューファイブの約75億円に対してイプシロン定常型のコスト約38億円で、打ち上げ能力は2/3なので、コスト的には30%程度良くなっている。(※初号機は開発費があるので高い)更に低コスト化を行う構想もある。早期実証をするものと、その後のコストを下げた(約30億円)機体がある。名称に関しては、ミューファイブの後継である最新鋭固体ロケットでありギリシャ文字を選んだ。ミューを超えた新しいロケットという意味。イプシロンの目指す先を示す言葉の頭文字でもある。またローマ字で書けることで、新聞などでも表記が楽である。あと、もうひとつ意味があるが、それはイプシロンの打ち上げが無事に成功した後の会見でお伝えしたい。

読売新聞・イプシロン初号機が搭載する衛星はスプリントA(宇宙望遠鏡)だが、それ以降の予定は。開発費。年間何基の打ち上げを見込んでいるか。
森田・2号機は2015年度頃にERG(磁気圏観測)衛星で、3号機以降は選定されていない。最大20個くらいの候補衛星がある。総開発費は205億円。年間打ち上げ回数は2機くらいを考えている。試験機の段階では宇宙科学を行う小型衛星を5年に3機、JAXAの宇宙関連のものを取り込めば定常状態で年1機以上。JAXA以外の省庁・団体による利用を構築し、年間1機以上を目指す。

日経新聞・ロケットの人工知能による点検とはどういったものか。
森田・自動的な点検は2つのカテゴリがある。1つ目は、点検そのものは簡単だが準備や安全の確保に時間がかかるもの。点火系など危険なものはこれまでは1日がかりの準備をした上で、しかも決死隊のようなものだったが、イプシロンはロケットが電流・電圧計をもっているため、点火系の点検であっても瞬時にできる。もうひとつのカテゴリが、ロケットの中のバルブなど壊れやすい機器の点検がある。これまでは熟練者が動かした際の電流の波形を見て判断していたが、これを機械がやってくれる。例えるなら心電図の自動判定のようなもの。

NHK・コストについて、定常運用は38億円だが初号機はどの程度か。自律点検やモバイル管制は初号機から適用されるのか。
森田・地上施設も含め約53億円。初号機には計測器などは搭載される。電流・電圧計のようなものは搭載されるが、波形などによる点検は熟練者のもっている技術であり、試験や打ち上げを経験してノウハウを機械に教える必要がある。

不明・定常運用までにイプシロンを何基打ち上げるか。イプシロンで今後どういった衛星を乗せたいか。永野町長にお聞きしたいが、見学所を新たに作る話だが規模は。交通の便が悪いと聞くが、対策は考えられているか。
森田・なるべくたくさん試験機を打ちたいが、予算の関係で恐らく3機までで、4機目辺りから定常になると考えている。ステップパイステップで開発を進めることによって、定常版と低コスト版を近づける事が可能。搭載するのは宇宙を身近に感じられる衛星が良い。いろいろな分野に幅を持ったもの。また、固体ロケットは宇宙科学の発展と共にあった。イプシロンは惑星探査機を早く実証できると思っている。
永野・新しい見学場所はまだ規模などを具体的に想定していない。現在の見学所は手狭である。内之浦は従来は陸の孤島であったが、28年には高速道路ができるので鹿児島空港から1時間半程度で来ることができるようになると思われる。現在、空港からのリムジンバスは鹿屋までしか来ていないので、見学者の方には申し訳ないがレンタカーなどを利用していただきたい。

フリー大塚・開発で苦労している点は何か。イプシロンの大型化はあるか。
森田・M5の上段はもともと世界で最も軽いモーターケースなので、これを更に軽くするのは大変である。しかしこれは開発の過程ではよくあることである。衛星のニーズでは小型のものもあるが、H2A/Bなどを使う大型もある。これの中間のものをどうやって上げていくかは大きなテーマになる。「あかつき」クラスの探査機をまたH2Aでまた上げるか、それともイプシロンの大型化したもので打てるかは検討課題となる。個人的には、大型化も検討していきたいと思っている。


No.1611 :HTVケーキ ●添付画像ファイル
投稿日 2012年9月17日(月)04時18分 投稿者 柴田孔明

絵本・『ぼくがHTVです 宇宙船「こうのとり」のお話』の作者による手作りケーキが管制室に贈られた。


No.1610 :管制室での拍手 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年9月17日(月)04時14分 投稿者 柴田孔明

撮影・柴田孔明


No.1609 :会見時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2012年9月17日(月)04時10分 投稿者 柴田孔明

撮影・柴田孔明


No.1608 :「こうのとり」3号機(HTV3)ミッション完了後記者会見
投稿日 2012年9月17日(月)04時08分 投稿者 柴田孔明

2012年9月14日16時30分から行われた、『宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)ミッション完了後記者会見』です。
なお、HTV3の大気圏再突入の推定時刻は9月14日午後2時27分頃(日本時間)で、着水推定時刻は9月14日午後2時38分〜2時59分頃(同)となっています。
また、i−Ballが取得した画像は http://iss.jaxa.jp/htv/120914_iball.html にて公開されました。
(※敬称を一部略させていただきます)

・登壇者
小鑓 幸雄 有人宇宙環境利用ミッション本部 HTVプロジェクトマネージャ
内山 崇 有人宇宙環境利用ミッション本部 HTVフライトディレクタ

・小鑓
振り返ってみると、今回の3号機は4月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられたが、ちょうど雷が近づいて打ち上げ間際までハラハラした。27日にキャプチャされたが、姿勢制御の推進系(冗長系)の故障がありハラハラした。新たな多目的暴露パレットで無事に荷物を運ぶことが出来た。離脱は星出飛行士の船外活動で時期が延びた。離脱のときアボートして違う軌道に入り、本来の軌道に戻す作業が入ったため3分遅れで再突入した。

・内山
HTV3ミッション資料説明(※JAXAよりPDF形式で配付されています)
http://iss.jaxa.jp/kibo/library/press/data/120914_press_conference.pdf

・小鑓
i−Ballの通信が確立し、データを送ってきています。

・質疑応答

朝日新聞・資料により再突入の時間がまちまちだが正確にはいつか。
小鑓・午後2時27分です。

朝日新聞・信号を受信したということはi−Ballの放出は成功なのか。
小鑓・パラシュートが開いて着水して浮いて、南太平洋上からデータを送ってきている。

朝日新聞・i−Ballを放出した高度は推定で何キロか。
小鑓・それを計測するためにi−Ballを搭載している。HTVの一次破壊が高度78キロくらい。i−Ballは同65キロで外に出たと思われる。

朝日新聞・i−BallだがHTVから「放出」されたという表現でいいのか。観測開始はそこからか。
内山・HTVの予圧モジュール内部に縛り付けられているので、放出というよりもそこから出たときになる。
小鑓・i−Ballは再突入時にかなりの高度からGPS等のデータを取り始めている。バネなどのアクティブな装置が無いため「放出」ではない。いい言葉を考えてほしい。

朝日新聞・HTV3に搭載したゴミの重さはいくらか。
小鑓・約2.1トンです。

朝日新聞・何割が燃え残って落下するか。
小鑓・300キログラム余りが海に落ちると思われる。
(※会見中は100キロでしたが、その後300キロに訂正されています)

NHK・3回連続で成功裏に任務完了した感想をお聞きしたい。また、ピンクのシャツ(内山)を着ている意味は何かあるのか。
小鑓・率直にほっとしている。3号機で国産機器も搭載しており、成功させなければならない重圧もあった。不具合やアボートもあったりとやきもきした。ただこれは今後に生かせるいいデータになり、運用についてもいい勉強になった。訓練では何度もやったが、実際にやって緊張感の中で再軌道計画を立てることができた。3号機でプロジェクト(開発)を終えろと言われていたが、成果を上げて開発を終え、次から定常に入れると言えることを嬉しく思う。
内山・ほっとしています。地上管制員は運用して荷物を運び、再突入まであるので気が抜けない。再突入後もi−Ballのデータ受信がある。データの確認まで使命の中でやっていきたい。
シャツだが、今回は3号機のミッションカラーはグリーンなので、その色のシャツを考えたが持っていなかった。そのため華やかなピンクを着たが、派手なので反響が多く勝負服のような感じになった。キャプチャに続き、再突入でも着ない訳にはいかなくなった。

毎日新聞・最後のコマンドはいつで何だったか。管制室の拍手はいつの段階か。
内山・正確に覚えていないが、14時28分〜29分頃まで送っていた。軌道離脱後は、いくつかの技術データを取得するための指令を送っていた。
拍手は何回かあったが、最後はこうのとりのデータが途絶えたところ。ミッション完了ということで拍手をした。14時27分頃の拍手は高度120キロを通過したところ。

毎日新聞・i−Ballの着水時刻はいつか。
小鑓・30分頃だが、正確な時間をまだ得ていないので後ほどお伝えします。
(※着水推定時刻は9月14日午後2時38分〜2時59分頃)

毎日新聞・i−Ballが撮った写真やデータの内容はまだ判らないのか。
小鑓・まだわかりません。ただし写真のデータは届いています。
(※当日夜 http://iss.jaxa.jp/htv/120914_iball.html にて公開)

毎日新聞・i−Ballのデータの取得はいつから始まるのか。
小鑓・大気圏突入後、加速度を検知して起動するようになっている。

日本放送・再突入が3分ほどずれたが、そのときの心情は。今回他のトラブルなどで日程がずれていったが、やきもきしたりしたか。星出宇宙飛行士とやりとりはあったか。
内山・3分遅れたが、離脱後にアボートがありバックアップ軌道に入ったためである。全く違う軌道に入ったが、3分ずれただけでできたのは凄いと思う。これは日頃の訓練の成果である。アボート直後には既に運用担当は新たなプランを作り上げていた。今回は3分遅れたが、逆に3分早まる可能性もあった。
日程の変更はもう慣れている。もともと決めた日付はあったがNASA側の運用もあり、もっとゴミを乗せたいとか、ISS側の装置のトラブルがあった。これはこうのとりも協力していかなければならない。こういった調整は難航するがよくあること。
星出飛行士は2回目の船外活動後に休憩してから、こうのとりの離脱操作を行った。やりとりは頻繁に行っていた。計画が変わって申し訳ないなとメールを送っていた。お互いに激励していた。

NVS・HTVのアボートでは、分離後に機体がロボットアームに向かったようだが、そのときの状況を教えていただきたい。
内山・我々も原因がよく判っていないが、軌道上で撮られたビデオで調査しているが、ロボットアームに近づいていたのは確かである。その動きを検知して離脱したのは安全上の機能が正常に働いたという事だが、原因については調査中です。

NVS・今回のアボートの情報は、同様の方式のドラゴンやシグナスと共有されるか。
内山・その通りで、共有される事になる。

赤旗新聞・成功して拍手した後の言葉など。i−Ballの温度データは弾道ミサイルなど軍事利用をされかねないものだが、データにアクセスできるのは誰か。
内山・終わったときの会話だが、主には訓練や56日間の運用や製造にかかわった方達へのねぎらいの言葉でした。ミッションをやり遂げたので、とにかく良かったねと言っていた。
小鑓・温度データは製造ノウハウに使われるのでIHIエアロスペース(IA)とJAXAが持つ。公開できるものは公開することになるが、内容はJAXAとIAが判断することになる。
(※i−Ballと同様の装置であるREBRは、NASA/Aerospace Corporation製の装置であり、日本側へのデータ開示が一部不可。なお、REBRはカメラを搭載していない)

ライター林・50分に分離して55分に離脱したが、異常検知の離脱をアボートと言うのか。
内山・その通り。本来ならロボットアームで運ばれたあとゆっくり下がっていくが、予定のエリアから5分後に逸脱すると判断したこうのとりが自動的に離れた。

ライター林・星出飛行士のEVAやり直しのとき、トラブルが続くとHTVの離脱ができない可能性もあったらしいと聞くが。
内山・離脱できないではなく、遅れるという意味だと思われます。ただし、太陽電池パドルをある角度に向けて固定してからHTVを離脱させなければならないため、電力事情が悪いままだとできない。そのため電力復旧を優先させたと思われます。
小鑓・ISSの電力8系統のうち3系統が故障していたが、分離ができない訳ではないとNASAは判断していた。だが、まずEVAでの復旧を優先させた。

産経新聞・アボートの原因はこうのとりではないということか。
小鑓・ロボットアーム側の問題です。NASA側で解析中。内部のワイヤーや先端の付着などが考えられています。
(※ロボットアームの先端には3本のワイヤーによる固定器具が内蔵されている。交換は可能とのこと)

産経新聞・i−Ballは完璧だったか。
小鑓・まだなんとも言えないが、パラシュートが開いて着水し通信をしているのでいい成果が得られている。

産経新聞・今後の帰還機などに役立つのか。
小鑓・その通り。なるべく近くに落下させることが可能になる。

大塚・HTVの分離はゆっくりに見えるが、ISSとの相対速度はどのくらいか。
小鑓・高度で10メートルの差。1秒で数ミリから数センチの差。

大塚・通常の離脱はHTVが高度を下げるが、その前のアボートしたのか。これは自動で行われたのか。
内山・高度を下げる前にメインエンジンでアボートした。これは自動で検知した。

大塚・ノミナルの離脱ではどの程度下がる予定だったか。今回、ISSから見えていたか。
内山・ISSから200mが安全領域なので、4回のうち3回目のマヌーバで200メートルを超えて、ステーション下5kmに入れる予定だった。今回ISSの下を通った時は軌道離脱マヌーバ後で80キロ離れており、見えなかったと思われる。

大塚・推進系の冗長分が使えなかったが原因は何か。
小鑓・解析中だが、駆動回路の電源が原因と思われる。

大塚・初号機は再突入前にテストをいろいろやっていたが、今回は無かったのか。
小鑓・今回はやっていない。バルブ駆動回路の冗長系が壊れているので負荷をかけないようにした。

大塚・次の4号機の改良はあるか。
小鑓・HTVの設計はフィックスだが、せっかくだからやりたい。太陽電池パネルのひとつを外して表面電位計を設置し、宇宙空間の電位を計測する実験をしたい。
(※4号機のエンジンは初号機と2号機で使ったアメリカ製に戻る。これは国産の開発が遅延した場合に備え予備として持っていたものを使い切るためで、5号機ではまた国産エンジンに戻る予定)

共同通信・拍手は通信が途絶えた時だが、このときHTVが再突入したことを確認したのか。
内山・もう少し前に確認している。120kmを通過すれば再突入となる。コマンドをぎりぎりまで打っていたので、その後になった。
小鑓・再突入は力学的に決まっている。120kmを通ったところでリエントリとしている。

朝日新聞・i−Ballはイリジウムを使っているそうだが、そのデータはどこが受信しているのか。
小鑓・北海道の大樹町でやっている。受信環境がいいのと、開発から使っていて慣れている。

朝日新聞・i−Ballはいつまで浮いているのか。回収はしないのか。
小鑓・最大で一週間ほど浮いている。予算があれば回収したいが、そうなればもっと立派な回収機を用意したい。

NVS・こうのとり1号では離脱前に蛍光灯を外し、LED蛍光灯を積んだ3号機も外したが、i−Ballは撮影ができるのか。
小鑓・蛍光灯を外して内部は真っ暗だが、i−Ballは撮れると聞いている。外から熱せられ明るくなっていくと思われる。

以上です。