宇宙作家クラブ
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No.1669 :観測ロケット打ち上げ結果説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月21日(日)13時29分 投稿者 柴田孔明

観測ロケットS−310−42号機/S−520−27号機の打ち上げ結果についての記者説明会
※一部敬称を略させていただきました

・登壇者
石井信明 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系教授 観測ロケット実験室長
阿部琢美 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 准教授
吉田裕二 宇宙科学研究所 保安主任

・宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、高度70km〜300kmにわたる希薄な超高層大気の観測研究を目的とした観測ロケット2機を、平成25年7月20日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げ、実験は成功しました。

・S−310−42号機:午後11時00分00秒打ち上げ。上下角74度。最高到達高度139km(打ち上げ185秒後)、打ち上げ360秒後に着水。
・打ち上げ後72秒から240秒間に高度60〜140km付近でTMA(トリメチルアルミニウム)を放出。
 (※これは地上各地で観測ができています。また、実験用航空機「飛翔」でも観測しています。写真に点線のように写っている場合は、TMAの「1秒放出・1秒停止」を繰り返す様子が撮影できたことになります)

・S−520−27号機:午後11時57分00秒打ち上げ。上下角78度。最高到達高度316km(打ち上げ286秒後)、打ち上げ556秒後に着水
・打ち上げ後497秒から20秒間に高度120〜100km付近でリチウムを放出。
 (※こちらは実験用航空機「飛翔」が観測に成功しています。また地上でも撮影に成功しているところがあります)

・ロケットに搭載した観測機器により、電場、磁場、電子密度、電子密度擾乱の観測及び地磁気と月光を利用した姿勢決定を予定通り実施しました。更に、ロケットから送信されるビーコン電波を地上局で受信しました。これらの結果を用いて、今後、超高層大気領域の擾乱に関する詳細な解析が実施されます。


・質疑応答
南日本新聞・発光以外の実験は成功だったのか。
阿部・観測ロケットは各種測定機器を搭載していたが、正常に動作した。

南日本新聞・発表文の小型GPS受信機で測位と再補足とは何か。
石井・計測装置の機能確認のため搭載した。

NVS・リチウム発光は期待した明るさであったか。
阿部・実験前、飛行機から見える程度と予想していたが、実際に飛行機で撮影したところ予想以上に明るかった。種子島で撮った写真にも写っている。考えた以上にリチウムが明るかった。
(※ただし発光の継続時間は短かった様子である)

NVS・TMAの輪っかは予想できていたか。
阿部・あの高度では過去の例からも、ある程度は予測していた。
(※TMAを撮影した写真には、輪を描いている様子が写っている。これは内之浦でも肉眼で観測できたほど明るかった)

NVS・地上観測地点では観測ができたか。
阿部・内之浦と種子島では観測できたが、四国の室戸は雲に覆われて観測できなかった。
(※実験用航空機「飛翔」による雲の上からの観測が可能であったため、全地上観測地点の天候は打ち上げの条件としていない様子)

南日本新聞・リチウム雲の月光反射による観測が成功したが、これが今後の観測の主流となるか。
阿部・夜間の高層風を計る手段がなかなか無かったが、このリチウムは特徴的な場所で観測ができる。アメリカで日中の観測(※ワロップスでの実験)が成功しているため、これまでの朝夕の実験も併せると、24時間どこでも使えることが判った。このため、今後いろいろな実験に使われていくだろう。ただし、月光反射については現在のところ日本だけのノウハウである。

同・今回のような2機打ち上げの実験は今後も行われるか。
石井・毎年はできないが、世界に誇れる実験なので進めていきたい。

NVS・2機連続の打ち上げだったが、新型になったアビオニクス切り替えなどについて。
石井・新型アビオニクスが搭載されたのと、宮原のテレメトリ装置が新しくなった。電波の関係で同時には打ち上げられないが、リハーサル等で切り替えをやっていた。今回は実験の要望で57分の間隔だったが、もっと短縮できる。

NVS・打ち上げの条件である電子擾乱は発生していたか。
阿部・夜間の擾乱は午後8時頃は活発でなかったが、打ち上げ1時間前には実験可能なレベルに達していた。

・その他
 現地では夏休み期間に入ったことや、8月に打ち上げ予定のイプシロンロケットが話題になっていることもあり、いつもより多くの見物客が訪れたようです。またJAXAの阪本成一教授による打ち上げ前の説明も行われ、見るだけでなく学ぶこともできました。撮影者向けには観測ロケットの打ち上げ20分前に施設の照明が落とされ、ピント合わせが難しくなることや、フラッシュの使用は控えるようにとのアドバイスもありました。

以上です。


No.1668 :オプション機器搭載部分 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月21日(日)12時05分 投稿者 柴田孔明

SPRINT-Aのオプション機器搭載部分。
(※下側のパイプは真空ポンプに繋がっています)


No.1667 :SPRINT-A ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月21日(日)12時03分 投稿者 柴田孔明

公開されたSPRINT-A。


No.1666 :惑星分光観測衛星(SPRINT−A)ミッション概要説明と機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月21日(日)12時00分 投稿者 柴田孔明

2013年7月20日午後、惑星分光観測衛星(SPRINT−A)ミッション概要説明と機体公開が内之浦宇宙空間観測所で行われました。
(※敬称を一部省略させていただきます。また機種依存文字について、前回「No.1658 :SPRINT-A報道公開記者ブリーフィング」と同じ対応とさせていただきます)

・登壇者
惑星分光観測衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 澤井 秀次郎
宇宙科学研究所太陽系科学研究所 助教 山崎 敦

・概要説明
 セミオーダーメイド型の柔軟な標準バスであるSPRINTバスを使用した初号機。
 極端紫外線望遠鏡(EXCEED)による観測が主ミッション。
 オプション実験として・高効率薄膜太陽電池セル、リチウムイオン・キャパシタを搭載。
 (※SPRINT−Aの概要説明については2013年6月8日に相模原キャンパスでも行われています。宇宙作家クラブニュース掲示板No.1658 :SPRINT-A報道公開記者ブリーフィングも参照してください)

・質疑応答
読売新聞・望遠鏡はどういった種類のものか。
山崎・反射望遠鏡と分光器。極端紫外線はあまり屈折できない。

南日本新聞・高効率太陽電池やリチウムイオン・キャパシタなどのオプション機器はどこに搭載されるか。
澤井・衛星のカマボコ型のモジュールにオプション機器をつけている。

毎日新聞・開発費はどのくらいか。
澤井・約49億円。これは衛星の開発に運用も含まれている。ただしロケットの打ち上げ費用は含めていない。

鹿児島テレビ・今回の宇宙望遠鏡で解明されることは。
山崎・最近の観測でかなり木星の内側にまで太陽風の影響が出ていることが判っている。磁場の強さによってこれが変わるのかなどを着目し、より深く理解していく。
澤井・惑星を比較し、地球の環境をよりよく知ることができる。

NVS・極端紫外線の焦点距離が1600mmと長い理由は。
山崎・この焦点距離は空間分解能の10秒角を確保するため。

NVS・ミッション部分の跳び箱構造はどういった意味か。
山崎・跳び箱部分は主に鏡である。反射した光は上部の箱で受ける。あと可視光のカメラを積んでいる。

NVS・検出部を高真空にしておく必要があるが、打ち上げ後いつ開くか。
山崎・1ヶ月後くらい。

NVS・衛星の愛称はどうなっているか。
澤井・内部調整が7月末締め切りのため集計していない。

不明・軌道はどのようなものか。
澤井・高度約950キロ〜1150キロを100分強で周回する軌道。

不明・衛星の電源は過去は1から設計していたが、このシリーズは共通化するのか。
澤井・SPRINTバスは選択できる部品を決めておく。最適化はできないが、効率的になると見込んでいる。

以上です。


No.1665 :観測ロケット打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月21日(日)03時47分 投稿者 柴田孔明

提供:JAXA

2013年7月20日23時と23時57分に観測ロケットS-310-42号機とS-520-27号機が打ち上げられました。
写真はS-520-27号機。


No.1664 :公開されたロケット2機 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月19日(金)23時28分 投稿者 柴田孔明

同じく、公開されたロケットをS-520-27側から撮影。


No.1663 :ロケットの公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月19日(金)23時26分 投稿者 柴田孔明

公開さた観測ロケットS−520−27号機とS−310−42号機。


No.1662 :観測ロケットS−520−27号機/S−310−42号機記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年7月19日(金)23時25分 投稿者 柴田孔明

2013年7月19日午後より、観測ロケットS−520−27号機/S−310−42号機 機体公開前と記者説明会が内之浦宇宙空間観測所で行われました。

・登壇者
石井信明 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系教授 観測ロケット実験室長
阿部琢美 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 准教授

・実験目的
 電離圏における電気的・磁気的な力、中性大気とプラズマ間のエネルギーのやりとりを解明する事。

・実験概要
 S-310型とS-520型の2機の観測ロケットを連続で打ち上げ、電離圏E領域(高度70−130km)およびF領域(130−300km)を観測する。ロケットに搭載した観測機器により、電子密度、電子温度、電界強度、磁界強度を直接観測し、併せてロケットから放出されたTMA(トリメチルアルミニウム)及びリチウムによる発光雲を地上及び航空機から撮影することにより中性風速を推定し、上記目的を達成するために電離圏の総合観測を行う。

・参加研究機関
 JAXA、京都大学、北海道大学、高知工科大学、東北大学、富山県立大学、東海大学、東京大学、名古屋大学、米国クレムソン大学

・打ち上げ予定日時
 平成25年7月20日(※23:00〜翌日1:00の間)
 S−310−42号機 23:00(予定) 飛翔時間380sec、上下角75度
 S−520−27号機 23:57(予定) 飛翔時間580sec、上下角79度
 (予備期間7月21日〜27日、8月18日〜25日)

・打ち上げ条件
 ・月明かりのある夜間であること。
 ・電離圏に電子密度擾乱が発生していること。
 ・ロケットの保安や飛行に影響を与えない天候であること。


・質疑応答
読売新聞・TMAとリチウムは月光の反射を観測するのか。
阿部・リチウムは月光反射だが、TMAは燃焼を伴う化学反応なので月明かりがなくても観測できる。

同・放出高度はどのあたりか。
阿部・S−310−42のTMAは打ち上げ後72秒〜170秒の間、高度80km〜150kmで1回目の放出、2回目は215秒〜313秒の間、高度150km〜80km(降下中)に行う。
(※TMAは1秒放出・1秒停止の繰り返し)
S−520−27のリチウム放出は、497秒、502秒、507秒(130km〜110km・降下中)の3回行う。
 (※前回の実験であるS−520−26号機と同じ。リチウムの容器にテルミット剤が入っていて、これに点火することで高温になり、リチウムが蒸気化して外に放出される。26号機では放出が遅れて高度が下がってから放出され、肉眼による観測が難しくなった。ただし26号機の実験は太陽光による反射で、今回の月光反射よりもずっと明るい)

同・世界初の取り組みとのことだが、どの点がそうなのか。
阿部・特殊な擾乱を2つのロケットで観測するのは初である。

南日本新聞・諸元と飛行時間を教えていただきたい。
石井・S−310−42は全長7.7m、重量748kg、飛翔時間380秒。直径31cm、尾翼スパン1m。
S−520−27は全長8.5mで重量2240kg、飛翔時間580秒。直径52cm、尾翼スパン1.8m。
(※尾翼スパン:尾翼も含めたロケットの幅)

同・TMAの放出は連続するのか。
阿部・1秒放出した後、1秒休止を繰り返す。

不明・リチウムはどんな状態で放出されるのか。
阿部・地上では固体だがテルミット反応で高温になり蒸気化して放出される。

不明・風は密度の濃いところから薄いところに流れるのか。
阿部・それだけでなく、温度の分布などでも方角が決まる。いろいろな力で方角が決まるので、今回の実験で解明していきたい。

NVS・TMAとリチウムの使い分けはどうなっているか。
阿部・TMAは自身で発光するが酸素が必要。E領域では使えるが、高度の高いF領域では使えない。リチウムは太陽や月による散乱光なので酸素が無くても観測できる。ただしあまり高度が高いとすぐに拡散し薄まって見えなくなる。

NVS・今回は地上観測を行うのか。
阿部・内之浦、室戸(高知工科大学)、種子島の3地点で観測する。

NVS・肉眼では難しいリチウムの光を、航空機からどうやって観測するのか。
阿部・ロケットの予測軌道から見通しを立てている。
(※JAXAの実験用航空機「飛翔」が、打ち上げ30分前に種子島空港から飛び立ち観測を行う)

NVS・先日、アメリカのワロップス飛行施設で同様の実験が行われたが、今回の実験と関係するか。
阿部・リチウムを使う実験は2007年開始のときは日本だけだったが、その成功を見てアメリカが協力を打診し、それが先日のワロップスの実験になった。このときは日米で機器の製作をしている。これは日中のリチウム雲観測というチャレンジであった。

南日本新聞・擾乱という現象の意味を教えていただきたい。
阿部・気象学の用語だが、平均的な分布からずれるのが擾乱。程度の差はあれど毎日発生している。

同・今後も内之浦から同様の実験(打ち上げ)が行われるのか。
阿部・まだ謎が多いものなので、他の現象を見るための実験を継続していきたい。
石井・垂直の異なる高度を同時に計るのは人工衛星では苦手で、これは観測ロケットの得意なところ。複数や単独の打ち上げは今後もある。

不明・連続打ち上げだが、2機目の予定時刻のときに条件が揃わない可能性はあるか。
阿部・これまでのデータから1機目がOKなら2機目も大丈夫である。

NVS・今回も天文ファンが撮影すると思うが、どう撮ると良いか。
阿部・TMAは明るいため、普通のデジカメで数秒のシャッター開放ができるなら撮れる。リチウムの方は夜間の月光反射を使うため暗くて撮影は難しい。
(※リチウムは月光反射のためもともと暗いこともあるが、放出場所が打ち上げ場所から約400km以上と離れているのと、放出高度が降下中の130km〜110km付近と低いため、内之浦からの観測は困難と思われる。種子島など海に面した場所なら撮影できる可能性はあるが、それでも一般の観測はかなり難しいと言われている。また、火山灰などにも影響されやすい)

不明・高知大学でフィルタを配っているが、それを使うと撮影ができる可能性が高いのか。
阿部・バンドパスフィルタを使うなら条件が良くなる。ぜひアマチュアの方もトライしてもらいたい。
(※リチウムの波長は670.8nmなので、その領域だけ通す特殊なフィルタを使うと撮影できる可能性が高くなる。また撮影場所の情報も重要で、星と一緒に写っていると特定しやすい)

不明・打ち上げの最終判断はいつごろになるか。
阿部・最終判断は打ち上げ4分前。

肝付町・発光の継続時間はどのくらいか。
阿部・TMAは過去には20分程度観測できた。天候が良ければ今回も同様。

・その他
石井:23時の1機目のあと57分後に2機目を打ち上げ、それを飛行機で観測して帰還すると午前2時以降になる。このため全体的な速報(記者発表)は明け方4〜5時頃になる。

以上です。


No.1661 :「こうのとり」4号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月19日(水)23時43分 投稿者 柴田孔明

3号機と4号機では表面電位センサ(下部の金色のもの)などの違いがありますが、外観としてはほぼ同じです。


No.1660 :公開された「こうのとり」4号機(HTV4) ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月19日(水)23時39分 投稿者 柴田孔明

種子島宇宙センター、第2衛星フェアリング組立棟クリーンルーム内にて公開された「こうのとり」4号機。


No.1659 :宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機の機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月19日(水)23時34分 投稿者 柴田孔明

2013年6月19日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)の機体公開と概要説明が種子島宇宙センターで行われました。
(※敬称を一部省略させていただきます)

・登壇者
有人宇宙ミッション本部 宇宙船技術センター長 田中 哲夫

・目的
 国際宇宙ステーション(ISS)における補給システムの一環として、国際宇宙基地協力協定に基づき、ISS共通システム運用経費の我が国の分担義務に相応する物資及び「きぼう」(JEM)の運用・利用に必要な物資を着実に輸送・補給する。

・4号機の特徴
 ・3号機に引き続き、利用のための利便性を改善。
  (レイトアクセス量増加や保冷ボックスの搭載など)
 ・船外物資はすべてNASA物資(実験装置とシステム補用品)。
  離脱時の不要となった船外物資の廃棄は初。
 ・「こうのとり」の運用改善のための技術データの取得
  (再突入観測や表面電位計測など)

・搭載物資
 ・ISS共通品/NASA物品
  ・ISS補用品
  ・搭乗員食料、日用品、飲料水(480リットル)
  ・超小型衛星(「きぼう」より放出)等

 ・「きぼう」システム品/利用品
  ・「きぼう」衛星間通信装置補用品
  ・「きぼう」搭載用ポータブル冷凍・冷蔵庫(FROST)、保冷ボックス(ICE Box)
  ・4Kビデオカメラ
  ・実験用装置・試料
  ・有償利用物品 等

 ・船外物資
  ・実験装置STP−H4(Space Test Program - Houston 4)
   複数の実験装置(計8個)が搭載されたNASA実験ペイロード。
  ・電力系統切替装置(MBSU:Main Bus Switchnig Unit)
   メインバス電力系統の切り替えに使われる装置。
   (※星出宇宙飛行士が船外活動で交換した後、補用品が軌道上に1つかない)
  ・電力・通信インターフェース機器(UTA:Utility Transfer Assembly)
   太陽電池パドル回転機構の中心部で電力・通信等のインターフェースを行う機器。
   (※現在、軌道上に1つしかない)

・ミッションスケジュール
 ・今日現在で全機組立/全機機能試験済み。次は推薬充填作業。
 ・打ち上げ予定日:平成25年8月4日午前4時48分頃。
  (※時刻は最新の国際宇宙ステーションの軌道により決定)
  予備期間平成25年8月5日〜9月30日。
  (※予備期間中の打ち上げ日時は、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する)
 ・平成25年8月9日頃、ISSによる保持。
 ・平成25年9月9日頃、ISSからの離脱。
 ・平成25年9月11日頃、大気圏再突入。

・質疑応答・種子島会場
毎日新聞:1号機から4号機の費用はいくらか。また、7号機までの運用で目指すものは何か。搭載する超小型衛星の数はいくつか。
田中:小型衛星はNASAのものが3機、日本側は1機である。NASAのものは標準の10センチ角のものが2機、10センチが3つ並んだ大きさのものが1が機、日本は検討中だが10センチ級である。費用については2号機から7号機までの平均で1機あたり140億円。開発費は677億円であった(開発は終了し、運用段階である)。7号機までに設計変更をする予定は無い。輸送サービスをきちんとやっていく。繰り返しの運用の中で、計測装置の追加や技術実証などを行っていきたい。7号機まで1年に1機の打ち上げは変わらない予定である。

鹿児島テレビ:船外物資の輸送が「こうのとり」だけなのはどういった意味か。初の船外物資の廃棄とはどういった事か。
田中:船外物資について、デザイン決定段階で必要な荷物は何かということで決まっていた。もともとはスペースシャトルが輸送していたが引退している。民間のドラゴンの船外物資は小さいもののみ。宇宙ステーションのバッテリーなど大型のものは「こうのとり」のみとなる。
実験機器やシステム機器の不要品を「こうのとり」に乗せて廃棄する。宇宙ステーションの空いた場所をまた利用できる。

NHK:3号機ではスラスタなどの国産化があったが、今回は何か変更はあるか。
田中:今回のスラスタは1号機と2号機で使用した輸入品の予備を使う。5号機からは国産に戻る。
(※アメリカのスペースシャトルで使われていたものと同型。シャトル引退で入手しにくくなった)

NHK:冷凍・保冷庫を用意したのはどういった事か。
田中:宇宙ステーションにライフサイエンスなどで冷やして輸送したいものや、軌道上から持ち帰るまでの冷凍保管の需要に対応するため。NASAの装置もあるが需要が高く割当枠がなかなかとれないことから日本側でも用意した。

NHK:表面電位の計測とは何か。
田中:宇宙ステーションと「こうのとり」の間で電位が異なると、ドッキング時に電気が流れる。これがどのくらいの量なのかよく判っていないので計測する。また、こういった帯電現象は軌道上でのプラズマの影響があるが、それがどの程度の電位変化であるかなどの基礎データも取得する。

質疑応答・東京会場
NHK:アメリカのシグナス(補給機)に技術が採用されたとあるが、こういった技術の供与は初めてということなのか。先にドラゴン(補給機)でもあったようだが。
田中:ドッキングのための送受信機がJEM(きぼう)にあり、シグナスもそれを利用して接近する。三菱電気がシグナス用として輸出した。また「きぼう」の装置を使ってドッキングするため、NASAがJAXAに運用の支援を要請した。輸出したのは初めて。ドラゴンはハードウェアは自前で、ドッキング方法に日本方式を使った。

NVS:前回3号機の離脱時にアームの関係でアボートが出たが、今回はどのような対策をしたのか。
田中:アームがHTVに接触したことについてNASAと協議した。軌道の関係で押しつけることになったり、ロボットアームのソフトウエア上で動く部分があったりした。このため、ロボットアームを離すとき、正確に押し出して離す方式にした。ピンをゆるめた時に、外れたことを目視確認する運用手順に変更した。

NVS:冷凍庫があるので、アイスクリーム等の嗜好品などの搭載予定はあるか。
田中:いまのところ実証のため予定はないが、保冷庫の機能確認をするためのサンプルを乗せる予定はある。ただしアイスクリームではない。

大塚:再突入を観測する再突入データ収集装置(i−Ball)に変更はあるか。
田中:前回とほぼ同じ。追加仕様として予圧部の温度、圧力計測がある。またより詳細な破壊メカニズムの把握や、加速度のサンプリングレートを上げで詳細に観測する事などがある。

大塚:i−Ballの取得データからの成果は何か。
田中:再突入で予圧部の破壊の始まった高度(70kmくらい)が判った。何機か継続する中で精度を高めていく。

機体公開時の質問から。
 再突入データ収集装置(i−Ball)だが、前回の再突入時の画像は、真っ暗な中に明るい光が見えるもので一般の人には判別がしにくいものだった。実験としては光が見えたかどうかで判断できるのでいいのだが、今回は絞りなどを調整してもっと写りを良くしたい。
 また、アメリカ製のスラスタは今回で予備まで使うため残りは無い。

以上です。


No.1658 :SPRINT-A報道公開記者ブリーフィング
投稿日 2013年6月8日(土)23時52分 投稿者 松浦晋也

2013年6月8日宇宙科学研究所(相模原)

SPRINT-A報道公開記者会見の概要です。

出席者
惑星分光観測衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 澤井秀次郎
宇宙科学研究所太陽系科学研究系 山崎敦

澤井プロマネ説明よりポイント
 SPRINT-Aは、科学衛星において多種多様なミッションに使用可能なセミオーダーの標準衛星バスを採用した初号機である。目的は低コスト化による高頻度打ち上げ。NECが開発しているASNARO地球観測衛星のバス部(NEXTAR)は、SPRINT衛星バスの地球観測ミッション形態とほぼ同等。

 主ミッションである極端紫外線望遠鏡の他に、オプションの工学実験として「次世代小型衛星電源系要素技術実証システム(NESSIE)」を搭載。 
NESSIE(ネッシー):2つの実験目的を持つ。
高効率薄膜太陽電池セルの実証:単位質量あたりの発生電力が高い。現行の太陽電池セルに比べ質量あたりの発生電力は一桁上。
リチウムイオンキャパシターの実証:リチウムイオンバッテリーに比べて安全性が高い。

 ピンポイントで観測対象に衛星を向けるために、主望遠鏡EXCEEDで撮影した画像をを使って衛星姿勢を制御する手法を新たに採用。EXCEED主鏡(口径20cm、焦点距離1600mm)は入射する可視光も反射するので、一部の光を可視光センサーに導いて星像を取得。星像が視野中心に来るように姿勢を精密制御する。大まかな姿勢制御はスタートラッカーで実施。精密制御にEXCEEDの星像を使う。この手法を使うと、精密に観測対象に向けねばならない望遠鏡そのものから、「どれだけ姿勢がずれているか」という情報を取得できる。このため機体や望遠鏡構体の熱ひずみなどが、姿勢制御精度に影響するのを防ぐことができる。

山崎助教によるミッション説明のポイント
極端紫外線望遠鏡EXCEED
波長の短い極端紫外線(波長105nm以下)で惑星を観測する。この波長帯の光は、ほとんどの物質に吸収されてしまうので、これまで観測例があまりない。一方で、木星の衛星イオが作り出すイオトーラスや木星オーロラはこの波長帯の光を発していることが分かっている。
 観測対象は、大気圏及び磁気圏と、太陽から流れ出ている荷電粒子(太陽風)の相互作用。
第一の観測対象:太陽系で最も強い磁場を持つ木星。
 木星の磁気圏がどのように太陽風と相互作用を起こし、どのようにエネルギーが分布し流れているかを調べる。衛星イオからは噴火によって硫黄を主体とするイオンが噴出し、イオの軌道に沿ってドーナッツ形状(トーラス)に木星を取り巻いている。これをイオトーラスという。イオトーラス、また、木星本体の極地方に現れるオーロラを極端紫外線を使って観測する

第二の観測対象:太陽系でもっとも磁場が弱い金星
ほとんど磁場のない金星では、大気に太陽風が直接衝突している。太陽風で大気がはぎ取られている。大気と太陽風のぶつかり合いを、極端紫外線の光で観測し地球型惑星の大気が星ができてからどのように変化してきたかを探る。

 打ち上げ後2ヶ月の初期チェックアウトを経て観測を開始。
まず木星を観測。来年1月にはアメリカのハッブル宇宙望遠鏡との同時観測実施を予定

質疑応答
テレビ朝日 子供に分かりやすく端的にこの衛星の目的を教えてほしい。
澤井:「惑星の環境を知りたい」と、「新しい衛星の作り方を試す」だ。モジュールを組み合わせて衛星を作るという作り方を試している。自作パソコンのような世界を衛星でできないかと考え、モジュールを交換することで衛星を作れないかと試している。

不明:初期の太陽系のことがわかるということでいいのか。
山崎:初期の太陽系を知るというわけではなく、大気の進化を調べるということだ。それが現在考えられている大気進化理論に合致するならば、大気の初期状態の推定も可能になる。

フリーランス青木:これまでの観測はどんな事例があるか。愛称は公募か?
澤井:愛称は内部で決めて打ち上げ後に発表する。
山崎:惑星全体を見渡しての長期間の観測はいままでできていなかった。たとえばイオトーラス全体を概観するとか。
澤井:内部では、極端紫外線を観測するので、この衛星のことを「きょくタン」と呼んでいる。

週刊アスキー:
今後、新衛星バスは「SPRINT衛星バス」と呼んでいくのか。
科学衛星はミッションによって異なる軌道に打ち上げるが、商業衛星の標準バスと設計が違う点はどこか。
観測期間1年という衛星寿命は、SPRINTバスによって決まっているものか。
SPRINTバスは、惑星探査にも使用できるのか。

澤井:
バスは「SPRINTバス」と呼んでいる。同バスの2機目となる「ジオスペース探査衛星ERG」(2015年打ち上げ予定)は長楕円軌道で地球の磁気圏を調べる衛星。そういった違いを吸収できる設計を目指している。将来的には探査機にも応用したいと個人的に考えているが、地球周りの衛星に比べると重量要求がきびしいのでそのままのモジュール設計では重量デメリットが大きく、チューンナップが必要になるだろう。衛星寿命は、搭載機器などで変わってくる。

時事通信:
望遠鏡系は大きさの制約が大きいと思うが、工夫した点はどこか。
SPRINTバスを使う衛星候補は、現状でどれだけ出ているか。
NESSIEの使い道はどんなものか。

山崎:望遠鏡焦点距離が1600mmもあるので、縦型に望遠鏡をおいている。重心位置は高くなるが、望遠鏡の性能は出る。
沢井:3号機を目指して10弱の衛星案が活動している。NESSIEは、3号機候補のいくつかが薄膜太陽電池を採用しようとしている。ともあれ、すべてはSPRINT-Aによる実証がうまくいってから。

ぶらさがりにて
松浦:SPRINTシリーズは今年1月の段階で、予算が超過しシリーズとすることが難しいということになっていたがその後どうなっているのか。SPRINTの名称も消えると聞いていたが、現状で生き残ったのか。昨年中に行うことになっていた3号機のセレクションも延びているが現状はどうなっているのか。

澤井: SPRINTバスを使う2つ目の衛星ERGのミッション部のコストが超過したので、3機まとめてシリーズ一括の予算管理ではなく、1機ずつの管理となった。現在3号機のセレクションが動いており、そこではミッション部のコストをどうやって管理するかが議論されている。現状では今年中には3号機を決定する方向。

阪本成一教授(宇宙科学広報・普及主幹)
予算は大変に厳しい。小惑星探査機はやぶさ2、X観測衛星ASTRO-H、水星探査機ベピ・コロンボのMROなど、打ち上げが迫ってきており、打ち上げタイミングが遅れることは許されない探査機もある。SPRINTは小型科学衛星シリーズとすることはとりやめとなったが、SPRINTの名前は、衛星の開発コードとして残した。

以下、阪本教授からメールによる補足。
当初、小型衛星のシリーズ化を予定していた時期の衛星名や、プロジェクト名は以下の通り。
・プロジェクト名称:惑星分光観測衛星プロジェクト
・日本語名称:惑星分光観測衛星
・英語名称 :Extreme ultraviolet spectroscope for Exospheric Dynamics
・英語略称 :なし ※商標権侵害の恐れ(シチズンの時計)があるためEXCEEDは使用しない

シリーズ化中止後の名称
・プロジェクト名称:惑星分光観測衛星プロジェクト
・日本語名称:惑星分光観測衛星
・英語名称 :Spectroscopic Planet observatory for
       Recognition of INTeraction of Atmosphere
・英語略称 :SPRINT-A

変更の理由は以下の通り:
 組織内での名称として「惑星分光観測衛星」を定めたが、固有名詞として一般には認識してもらえない可能性がある。
 今後打ち上げに向けた対外対応が増えるが、「惑星分光観測衛星」では印象が薄く、分かりやすい略称がないと広報上も効果的な説明がしにくい。
 早急に新愛称を付与することも考えたが、宇宙研の伝統として打ち上げ後とすることを所の方針としている。
 「SPRINT-A」は、宇宙研として今後SPRINTシリーズとして使用する意図はなく、本衛星の愛称が決定されるまでの、本衛星の略称としてのみ用いる。


No.1657 :SPRINT−Aミッション概要説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月8日(土)21時22分 投稿者 柴田孔明

惑星分光観測衛星(SPRINT−A)の報道公開と併せて行われた、ミッション概要説明会の様子。


No.1656 :SPRINT-Aその2 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月8日(土)20時40分 投稿者 柴田孔明

衛星質量350kg、発生電力約900W、高度約950〜1150kmの楕円軌道で観測、三軸姿勢制御で指向精度5秒角、設計寿命(ミッション期間)は1年。
(※ホイールと磁気トルカで姿勢制御)
(※セミオーダーメイド型の衛星バスを使用した初号機で、低コスト化を目指す)


No.1655 :SPRINT−Aの公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年6月8日(土)20時31分 投稿者 柴田孔明

2013年6月8日にJAXA相模原キャンパスで公開された惑星分光観測衛星(SPRINT−A)。イプシロン初号機でこの夏に打ち上げられる予定。搭載された極端紫外線望遠鏡(EXCEED)で、惑星の大気圏・磁気圏と太陽風の相互作用について調べることになっています。
(※写真では太陽電池パドルが格納状態になっています)