宇宙作家クラブ
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No.1906 :H-IIA29号機リフトオフ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)15時15分 投稿者 松浦晋也

 2015年11月24日午後3時50分。


No.1905 :10時頃の射点 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)09時22分 投稿者 柴田孔明

燃料と酸化剤を充填中のH-IIAロケット29号機。10時頃に撮影。


No.1904 :H-IIA F29 機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)01時23分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット29号機の機体移動から、ロケットと移動発射台が見えている所。


No.1903 :機体移動の正確な時刻
投稿日 2015年11月24日(火)01時05分 投稿者 松浦晋也

機体移動開始が、午後10時33分。完了が午後10時56分でした。

No.1902 :H-IIA29号機機体移動その3 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月23日(月)22時47分 投稿者 松浦晋也

午後11時過ぎ、機体は射点に到着しました。


No.1900 :H-IIA29号機機体移動その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月23日(月)22時44分 投稿者 松浦晋也

移動中の機体。


No.1899 :H-IIA29号機機体移動その1 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月23日(月)22時42分 投稿者 松浦晋也

 当初午後8時から機体移動の予定が、雷雲接近のため午後10時半まで遅れました。午後10時半過ぎ、204コンフィギュレーションの機体が姿を現しました。


No.1898 :H-IIAロケット29号機Y−1プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月23日(月)02時55分 投稿者 柴田孔明

 2015年11月22日14時より、H-IIAロケット29号機/通信放送衛星Telstar 12 VANTAGE(Telstar 12V) の、打ち上げ前Y−1プレスブリーフィングが行われました。

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門基幹ロケット高度化 プロジェクトマネージャ
川上 道生
宇宙航空研究開発機構 鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット長 長田 弘幸
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊 

・準備状況等 (配付資料等より抜粋)
 三菱重工株式会社および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、カナダTelesat社の通信放送衛星Telstar 12 VANTAGEを搭載したH-IIAロケット29号機の打ち上げ日時について、2015年11月24日15時23分(JST)と決定した。
 ・打ち上げ可能な時間帯は15時23分〜17時07分(JST)。※約2時間
 ・機体移動は2015年11月23日21時頃を予定。
 ・打ち上げ予備期間は2015年11月25日〜2015年12月31日。
 ・ロケットはH-IIA204型(※SRB-Aが4本のタイプ)
 ・フェアリングは4S型

 ・H-IIAロケット29号機は飛島工場を9月8日に出荷後、射場作業を開始。
 ・11月7日までに機能点検。各機器が正常に作動することを確認。
 ・11月10日にカウントダウン・リハーサルを実施。関係各員に対し打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
 ・11月16日にTelstar 12 VANTAGEとロケット機体の結合作業。
 ・11月17日にロケット機体の最終的な機能点検。
 ・11月20日より発射整備作業を実施中。

 ・通信放送衛星Telstar 12 VANTAGEについて
  テレサット社が運用する西経15°の通信放送衛星Telstar 12の後継機
  Airbus Defence and Space社製
  質量:約4.9ton

・基幹ロケット高度化開発項目
 ・ロケットの機能・性能の向上
  ※海外ロケットの台頭や、人工衛星からの打ち上げ需要の変化があり、商業衛星打ち上げ市場での競争力が低下。
  1.静止軌道打上能力の向上。
   →H−IIAロケット29号機に適用
  2.衛星搭載環境の緩和。
   →H−IIAロケット30号機にてデータ取得。
 ロケットの運用基盤の強化
  ※地上施設の老朽化に伴う、維持・更新コストの上昇。
  3.地上レーダ不要化に向けた航法センサ開発
   →H−IIAロケット29号機にてデータ取得。
  (その後、イプシロンロケット、H-IIBロケットでデータ取得した後、実運用の予定)

・質疑応答
産経新聞・配布資料の特記事項でコストダウンとあるが、今回の内容は何か。
平嶋・資料の通り、機器(照明)の電池をひとつ減らした。

鹿児島テレビ・高度化と初の商業衛星打ち上げだが、今のお気持ちをお聞きしたい。
平嶋・商業衛星の主打ち上げは初めて。得られるデータは多いが、我々は平常心で確実にやりたい。
川上・信頼性は高まっていたが、能力が足りないところがあった。高度化で世界から注目いただけると思う。

毎日新聞・オンタイムの積み重ねがあるが、鹿児島の協力あってのことだと思うが、感謝の言葉などをお聞きしたい。また高度化などで地元への還元はあるか。
川上・私も住んでいたことがあるので地元の方のご協力も肌身でわかっている。オンタイムや打ち上げ成功は地元の方の協力があってこその打ち上げ。成功した暁には、世界からの注目が上がり頻度が増えればいいなと思う。頻度が増えてH3へつながり、地元が活性化することに繋がると思う。

読売新聞・打ち上げは予定通り24日だが天候などで問題点は。発射整備の作業を具体的に教えてほしい。
平嶋・気象の状況で我々がいつも気にしているのは氷結層と風である。今回は曇りではあるが良い状態である。今やっている作業は、クローズアウトというもの。点検が終わって蓋を閉め、打ち上げの状態にする。クリティカルな火薬の結線などをしてクローズする。明日は機体移動のみ。

NHK・商業衛星で世界有数のテレサット社の打ち上げは三菱重工業株式会社にとってどんな節目になるか。初めての高度化で商業打ち上げに不安はあるか。
平嶋・以前にもKARI(KOMPSAT-3)の打ち上げ例があるが、今回は初の主衛星である。成功すればリピーターが増えるのではないか。顧客には誠意を持って対応している。
高度化は完全新規ではなく、ひとつひとつ実験を積み重ねてきている。高度化については確実に出来るだろう。
(※KOMPSAT-3:H-IIAロケット21号機で打ち上げ。このときの主衛星は第一期水循環変動観測衛星「しずく」)

毎日新聞・大型ロケット技術のステップアップでH3に応用されるというか、もし失敗したら開発に影響はあるか。
川上・考えたくはないが、影響は原因による。H3の全体への影響は無いと思われる。H3は設計が固まっている訳ではない。原因により、少しのリカバリで済むなら採用するだろう。想定では答えにくい。

毎日新聞・もし失敗した場合、商業衛星であるがどういった影響があるか。
平嶋・H-IIAの失敗で1.3年打ち上げができなかった時期があり、インパクトが大きい。そのようなことが無いように確実にやりたい。

時事通信・第2段の3回着火は4時間近く開くというが、ポイントはスロットリングで絞って着火から分離までか。
川上・おっしゃるとおり。

朝日新聞・コストダウンの具体的効果はいくらか。
平嶋・具体的な金額はお答えしかねるが、数億という規模ではない。

読売新聞・三回着火から分離がポイントだが、打ち上げ成功の判断はそこでいいのか。
川上・衛星分離がポイントとなる。

読売新聞・記者会見の頃には成功がわかるのか。
平嶋・所定の軌道に入ったことを確認し記者会見に入る。

産経新聞・スロットリングバルブを追加したが、2段目エンジンの3カ所に追加されたということか。作動は同時なのか。
川上・その通り。エンジン推力を60%にするために燃料を絞るもの。同じタイミングで一気に絞る。

時事通信・三回目の着火がうまくいかない場合、衛星は静止トランスファーに自力で行けるのか。
平嶋・万一の場合でも投入できる燃料が積んである。

・その他
蒸発した水素ガスを噴射することによる推進薬液面保持機能は今回が初となる。噴射したガスによる機体や衛星への影響は無いと考えている。
(※2段目底面に小型のノズルが追加されている)

以上です。


No.1897 :小惑星探査機「はやぶさ2」地球スイングバイに関する記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年10月24日(土)20時49分 投稿者 柴田孔明

 2015年10月14日午後より、JAXA東京事務所にて小惑星探査機「はやぶさ2」地球スイングバイに関する記者説明会が行われました。「はやぶさ2」の地球スイングバイは2015年12月3日に予定されています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム
  プロジェクトマネージャ 津田 雄一
  (宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)
  ミッションマネージャ 吉川 真
  (宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
  竹内 央
  (宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 助教)

以下、説明内容とJAXA配付資料より抜粋。
・スイングバイ概要

 1.地球スイングバイの目的
  目標天体である小惑星Ryugu(リュウグウ)に向かう軌道にのせるため、地球の重力を利用して軌道変更を行う。

 2.スイングバイ軌道
  ・2014年12月3日の打ち上げから順調に飛行し、太陽をちょうど1周して、2015年12月3日に地球スイングバイを行い、小惑星へ向かう軌道へ移行する。
  ・最接近時の高度は約3100km(※おおよそハワイ上空)
  ・最接近時の地球に対する速度は約10.3km/sec
  ・軌道の曲げ角度は約80度
  ・最接近日時は2015年12月3日19時7分[JST] (※10時7分[UTC])

 3.地球スイングバイに関する運用
  ・地球スイングバイに向けた軌道制御
   ・2015年9月にイオンエンジンによる軌道制御を行い、正常に軌道修正がなされた。その後、スイングバイ実施に障害となるような異常や故障は発生していない。
   ・2015年11月から12月初めにかけて、化学エンジンによる軌道の微修正であるTCM(Trajectory Correction Maneuver)を3回実施する。TCM実施前後に軌道の精密決定を行い、特に1回目および2回目TCM実施後については次のTCMの要否判断を行い、TCMが必要な場合には軌道制御量を計算する。
  ・スイングバイのための軌道制御方法
   ・地球を含む平面を「的(まと)」に見立てて、的のどこを通過するかを電波計測をもとに定期的に推定する。推定の不確かさは、「楕円」の領域として表される。
   ・今後の3回の軌道修正(TCM)で、所定のポイントを通過するように精密誘導を行う。
   ・軌道制御の精度目標は、数Km、数cm/s。
  ・地球スイングバイに向けた精密軌道決定運用
   ・精密に軌道決定を行なうためには、日本局だけでは幾何学的に十分ではないため、NASA局も利用してデータを取得する。
   ・従来の軌道決定手法であるドップラ観測やレンジ観測に加えて、新手法であるDelta-DOR観測も実施する事により軌道決定精度が大幅に向上する見込みである。
   ・軌道決定精度が向上すれば、より細かい軌道制御が可能になるため、はやぶさ2をより精密にスイングバイポイントまで誘導できるようになる。
   ・スイングバイ中に探査機は地球の影を通過するため、運用期間中で初めてで唯一の日陰を経験する(約20分間)。探査機は低温状態になり、太陽電池パドルではなくバッテリによる運用となる。
   ・スイングバイ後は、約5ヶ月間にかけて探査機は南半球側からのみ通信可能となる。そのために、NASAやESAが南半球に所有する地上局から運用を行う。

・スイングバイに関連する予定について
 ・スイングバイ時の軌道を公開する。
  ・教育・アウトリーチ活動等に利用していただく。
 ・スイングバイ時に、地上にある望遠鏡による観測キャンペーンを行う。
  ・はやぶさ2は日没後、日本から観測できるところを通過する。
  ・ただし、探査機の光度は暗いことが予想され、観測するためには大きめの望遠鏡が必要となると考えられる。探査機の明るさは今のところ不明。
  (※過去、火星探査機「のぞみ」と小惑星探査機「はやぶさ(1)」でも同様の観測キャンペーンが行われたが、いずれの日も天気が悪く、観測を行えた天文台はごく僅か。その観測に成功した「のぞみ」の例でも、明るさは15〜16等級で肉眼では観測不可であった。また、太陽光が探査機のどの面に当たるかで明るさが変わるため、予測が難しい)
  ・観測に必要な情報を事前に公開し、各地の天文台などで観測してもらい、結果を報告してもらう。
  ・日本国内は、日没直後から観測可能であるが、緯度が高いほど観測条件はよい。
   (※例えば、北海道名寄ならば日没後3時間ほど観測可能であるが、石垣島では日没が遅いため、その後1時間程度しか観測できない)
  ・ハワイのマウナケアでは、まさに最接近時に頭上近くを探査機が通過するが、日陰(地球の影の中で太陽の光が当たらない)ため、探査機は観測できないと思われる。
  ・オーストラリアのキャンベラでは、スイングバイ直後から観測が可能となる。
  ・ヨーロッパや北米では、観測条件が悪く、観測は難しいと思われる。

・質疑応答
NHK・基本的なことだが地球への最接近とスイングバイは同じ時刻なのか。
津田・最接近とスイングバイは意味が違う。スイングバイは地球を使って軌道を曲げるもの。

NHK・日陰に入る時間が20分とあるが、最接近を中心として前後10分ずつなのか。
津田・多少の偏りはあるが、前後10分くらいである。

NHK・最接近時は探査機は真っ暗で望遠鏡でも見えないのか。
津田・はやぶさ2に光が当たらないので真っ暗である。

NHK・最大で何等級くらいの明るさになるか。
吉川・探査機の明るさの計算は非常に難しい。探査機が小惑星の大きさと仮定した計算式では10等級くらいだが、この値は正確ではない。

NHK・はやぶさ2が追いつくのか、地球がはやぶさ2に追いつくのか。
津田・どちらかというと太陽側から反太陽側へ。はやぶさが地球に追いつく。

産経新聞・唯一の日陰を経験するというが、バッテリでの運用は打ち上げ以来か。
竹内・太陽電池パドルに当たらないのは初めてという意味である。バッテリでの運用は他にもある。

産経新聞・新手法のDelta-DOR観測は、はやぶさ2が初めてなのか。
竹内・この技術自体はNASAのボイジャー以来あるが、ここ10年で精度が大きく向上した手法。デジタル化で計測精度が良くなった。またGPS衛星によって地上の精度が上がった。実験的なものはあったが、探査機の運用ベースではJAXAでは初めて。

毎日新聞・軌道計算する上で、日本の夜の空に来るように考慮したのか。
津田。そういう期待はあったが、あくまで小惑星「Ryugu」に着くための軌道計算の結果。

毎日新聞・月や惑星を使うが地球以外のスイングバイはあるのか。
津田・一般的には例があるが、はやぶさ2の行き先は近地球軌道なので、地球を使うスイングバイ以外にない。

NVS・はやぶさ初号機はカメラのテストで地球を撮ったが、今回も行うのか。
津田・計画としては入れたいが、軌道制御が主な運用である。空いている時間で月や地球を向けられればチャレンジしたい。

共同通信・はやぶさ2の明るさがわからないのは、探査機の面が太陽に向いているかわからないためとのことだが、面というのは太陽電池パドルなのか。
吉川・探査機の姿勢はわかっているが、平面の物体は姿勢が微妙に変わっただけで明るさが大きく変わる。また、見る場所でも変わってくるため正確な予測は難しい。厳密に探査機の姿勢が判っていて、太陽の位置と観測者の位置が判れば求められるが、我々はその技術を持ち合わせていないためやっていない。

共同通信・およそ10等級というのはどうやって求めたのか。
吉川・はやぶさ2と同じ断面積の小惑星(球状)と仮定すると10等級くらい。そのため本来の探査機とは大きく異なる。

共同通信・最接近時にコマンドは送るのか。
津田・最接近時刻の地上運用は無い。前後の数時間は国内海外の地上局で運用する。

共同通信・(地球スイングバイは)小惑星に到達するまでのマイルストーンだが、意気込みをお聞きしたい。
津田・マイルストーンとしては、打ち上げ後のイオンエンジンを稼働した後、その次に来た関門。軌道制御技術が主に問われる。小惑星「Ryugu」に着くまでにまだたくさんやることがある。着実に、確実にやっていきたい。

NHK・軌道制御は11月のいつ頃か。化学エンジンは何基で、これまで動かしたことはあるか。
津田・TCMは、確定ではないが11月3日、11月26日、12月1日の3回を予定している。化学エンジンは12基あって、XYZプラスマイナスの全方向に向いている。軌道修正に必要な方向のエンジンを使うことになる。エンジンが動くことは確認済み。軌道計測してどれくらい吹くか決まるが、それがわかるのは直前になる。今回の軌道修正の噴射にかかる時間は数秒から10秒程度で、微修正のようなもの。

赤旗新聞・これまでの日本の探査機による天体スイングバイの成功率はどれくらいか。
津田・日本はスイングバイの経験を多く積んでいる。月に対して「ひてん」、月と地球に対して「ジオテイル」などでたくさん実験(練習)した。不成功は今まで無い。「のぞみ」のパワードスイングバイでは吹き足りなかったことがあるが、これはエンジン関連の不具合。

赤旗新聞・今回のスイングバイによる秒速1.6kmの加速を、イオンエンジンだけでやったらどれだけかかるか。
津田・イオンエンジン3基の全力運転で1年かかる加速である。それには6割増しの燃料(搭載している60kgの燃料に対してさらに約40kg)が余計に必要になり、打ち上げそのものができなかった。

赤旗新聞・今回のスイングバイに特徴的なものは何か。
津田・精密誘導を使っていることである。位置関係が北から南に抜けていくため北半球から見えなくなる。そのため海外の支援を受けないといけない。国際協力が重要な運用である。

赤旗新聞・スイングバイ後はかなり傾いた軌道に入るのか。
津田・太陽から見る相対的な軌道面はあまり変わっていない。地球に対して80度だが、太陽中心では1度くらい。Ryuguは軌道傾斜角5度。打ち上げ時からもともと傾けているので、今回は1度くらいと記憶している。

赤旗新聞・地球を追いかけているが距離と相対速度はどれくらいか。
津田・距離は二千万キロで近づきつつある。対地球速度は5.2km/sで飛んでいる。

朝日新聞・全体としては2歩か3歩目という事だが、行くという意味では大きめのイベントではないか。
津田・はやぶさ2はRyuguの観測だけでなく、行って帰ってくる航行技術もある。深宇宙を航行するのに必要な最先端の技術を駆使しないと達成できない。スイングバイは必須であり、航行技術を着実に進歩させるためには我々技術者としては大変重要である。

朝日新聞・行くという意味では、いちばん大きいイベントになるのか。
津田・立場によっていろいろある。軌道屋としては、いちばん大きい。イオンエンジン屋としてはこれから。これまでの10倍も吹かなければいけない。

朝日新聞・イカロスで行った実験的なDelta-DOR観測とはどのようなものだったのか。
竹内・Delta-DOR観測のためには特殊な信号を出す必要がある。この信号の発生器を、イカロスは実験のため、他の通信系に影響の出ない独立した発信器とアンテナを取り付けた。はやぶさ2ではこの実績をもとに通信にも使う重要な機器に搭載した。

朝日新聞・6等級までは目で見えるが、今回の10等級はどのくらいになるのか。例としてどれくらいか。また、以前観測できた「大きな望遠鏡」とはどれくらいのものなのか。
吉川・難しい。10等級は、肉眼による限界の6等級よりも格段に暗い。皆さんが知っている星は目に見える天体のため、例にならないですね(笑)。
「のぞみ」の観測に成功した望遠鏡は60〜80センチ級。また、写真に撮って確認する事が必要。スイングバイ時の動きが速いのと、大きい望遠鏡は視野が狭いので、なお難しい。

読売新聞・Delta-DOR観測に使う2台のアンテナ(地上局)はどこになるのか。
竹内・Delta-DOR観測はNASAとやるが、Canberra、Goldstone、Madrid、そして臼田となる。南北と東西の両方を使うことが重要。南北と東西が直交するようにする。

読売新聞・地上から見て、どのくらいの速さになるのか。
吉川・最も速い時で、低軌道衛星より少し遅いくらい。

日本放送・日本から観測できる時間の幅はどれくらいか。
吉川・臼田なら日没後17時〜19時頃。そのあとは探査機が日陰に入るので見られない。日没が早い北海道の方が観測しやすい。南の石垣島では日没が遅く難しい。

日本放送・これまで順調だが、その感想をお聞きしたい。
津田・打ち上げ以来、エンジン稼働の次のマイルストーンであるスイングバイに来た。とにかくスイングバイを成功させたい。次はイオンエンジン稼働、そしてRyugu接近がある。

宇宙作家クラブ上坂・観測キャンペーンのために、どんなデータが提供されるか。
吉川・テキストファイルのデータで提供予定。時刻、アジマス、方位角、赤経、赤緯、直線距離、SPE角などが時系列として提供される。

日経サイエンス・南半球での運用はいつからか。
津田・スイングバイ直後から行う。

日経サイエンス・TCMの噴射が少ないのは、ほぼ予定通りの軌道だったのか。また、ずれはなぜ起こるのか。
津田・予定通り。軌道決定の度にRyuguに着けるかを計算する。頻度としては1週間から1ヶ月に一回くらい。どういうスイングバイをするといいかは毎回変わる。打ち上げ当初は探査機内の水分などがガスになり抜け、これが推力になってずれる。光の反射によるずれもあるが、これは最初は予想できない。飛ばしていくうちに、だんだん判って精密になってくる。最後に残るのは計測精度によるずれで、これはどうにもならない。

日経サイエンス・太陽フレアの影響などは大丈夫なのか。
竹内・太陽光圧は非常に多く影響するが、太陽風(フレア)は軌道には影響しない。
(※放射線による機器への影響は別)

フリーランス喜多・(金星への軌道投入時期が近い)探査機「あかつき」との運用の干渉はあるか。また、Delta-DOR観測の精度が高いが、これのデータ量は多いのか。また「はやぶさ」では直径1kmくらいの精度だったが、今回は陸上トラック(180m)くらいの輪くぐりになるのか。
津田・臼田局を取り合いながらやっている。幸いにも見える時間が違うので重なっていない。「あかつき」が軌道投入されると観測が始まるが、スイングバイ後に「はやぶさ2」が見えるのが南半球だけという状態が5ヶ月続くので、その間は臼田局が使えないことになり重ならない。
竹内・1時間の観測で数十ギガバイトくらい。今はハードディスクの容量が大きいので、昔より大きいがそれほどでもない。数十Mbpsで1日かけて送ってくる。
津田・陸上トラックぐらいの精度だが、今回のスイングバイはそこまでの精度は要求されない。より安心して運用できるようになった。

NHK・ドップラ観測とレンジ観測にDelta-DOR観測で位置の精度が増えたが、例えば10倍良くなったと言っていいのか。
竹内・奥行き方向は今までも精度が出ていたが、そういった理解でいい。

NHK・定期的に推定とは、どのくらいのタイミングか。
竹内・通常は一週間に一度。TCMなどのイベント時は回数を増やす。多いときは毎日。TCM2と3の間が多く、11月26日から12月1日の間。

毎日新聞・国際協力では、具体的にはデータをもらうだけか、それとも人が行くのか。
津田・海外局のアンテナでトラッキングしてもらうサービスがある。海外局を相模原の管制室から運用する形となる。

毎日新聞・竜宮到達まで、どのくらいの位置づけになるか。浦島太郎の物語ならどんな場面か。
津田・それぞれの立場で違う。私は打ち上げ前の行いが良かったので、まず亀に認められたのが打ち上げられたところ。スイングバイは海に入ったところ。エンジン噴射が潜って竜宮の門に着くところ。

NHK・スイングバイの教育利用は、具体的にどういったものか。
吉川・軌道公開は準備ができ次第行う。ただこれは数値が並んでいるだけなので、これを利用したCGやアプリなどはこれから作っていただくことになる。

松浦・質問ではないが、12月3日にできるなら地球の画像などを公開してほしい。また何か実験を行ったら公開してほしい。例えばレーザーレンジファインダーを試すと伝え聞いている。
司会・できるだけ対応します。

その他
Q・地球への帰還時もスイングバイを行って次の目標に向かうのか。
A・まだ次の目的地が決まっていないので、どういった運用になるかは未定。カプセルを地球に向けて発射するのがメインとなる。

以上です。


No.1896 :S−520−30号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年9月12日(土)11時40分 投稿者 柴田孔明

S−520−30号機の打ち上げ。
撮影・柴田孔明


No.1895 :打ち上げ画像 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年9月12日(土)11時39分 投稿者 柴田孔明

S−520−30号機の打ち上げ
(画像提供:JAXA)


No.1894 :S−520−30号機の実験画像 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年9月12日(土)11時38分 投稿者 柴田孔明

画像について(画像:JAXA提供の速報より)
・左が二波長干渉縞画像。二つの異なる波長(赤と緑)の光を使った干渉計の画像。
・平行な状態から屈曲している。気体から粒ができた状態。
・物質によって縞の模様が異なる。
・縞干渉の変形から、生成時の濃度が決定でき、宇宙ダストの生成メカニズムを解明する。
・右側は可視光画像で、核ができると白く濁る。酸化シリコンの方がはっきりしている。
・右画像の光っている部分が星に相当し、そこから発生する蒸気から微粒子(宇宙ダストの類似物)が生成している。

※「浮遊ダスト赤外スペクトルその場測定装置」もデータが取得できていますが、速報はありませんでした。


No.1893 :観測ロケットS−520−30号機打ち上げ後会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年9月12日(土)11時36分 投稿者 柴田孔明

 2015年9月11日20時00分に内之浦宇宙空間観測所から観測ロケットS−520−30号機が打ち上げられ、記者会見が同日22時半頃から行われました。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
北海道大学 低温科学研究所 准教授 木村勇気
宇宙科学研究所 学際科学研究系 教授 稲富裕光
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授 観測ロケット グループ長 石井信明

・観測ロケットS−520−30号機打ち上げ結果について(以下、JAXA発表文より)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成27年9月11日(金)、「酸化物系宇宙ダストの核生成過程の解明」を目的とした観測ロケットS−520−30号機を内之浦宇宙空間観測所から打上げました。
 ロケットは正常に飛翔し、内之浦南東海上に落下しました。

・ロケット飛翔結果
 打ち上げ時刻:20時00分00秒(JST)
 発射上下角:78度
 観測開始(ノーズコーン開頭)時刻:打ち上げ53秒後
 小型姿勢制御装置による制御開始:打ち上げ55秒後
 最高到達高度:312km(打ち上げ283秒後)
 着水時刻:打ち上げ550秒後
 打ち上げ時の天候は晴れ、北西の風2.0m/秒、気温23.9度C
 これをもちまして、平成27年度第一次観測ロケット実験は終了となります。今回の観測ロケットS−520−30号機打ち上げ実施にご協力頂きました関係各方面に、深甚の謝意を表します。

 今回のS−520−30号機の実験では、酸化物系宇宙ダストの核生成過程を解明することを目的として、ロケットの弾道飛行による微小重力環境下で酸化物を蒸発させ、その後凝縮する酸化物粒子が生成し成長する過程を直接測定しました。測定には、「二波長干渉計」(2台)及び「浮遊ダスト赤外スペクトルその場測定装置」(1台)を用いました。今後、各大学において詳しい解析が実施される予定です。

・質疑応答

・実験容器内は真空か。何か入っていたら対流は起きないのか。
稲富・直径7センチ、長さが14センチの円筒。両端に窓。酸素とアルゴンが入っている。酸素は酸化物を作るため僅かに入っている。宇宙空間(微小重量状態)なら対流は起きない。

・アルミナとシリカは金属か。
稲富・酸化物である。アルミニウムを酸化させると酸化アルミニウム。酸化シリコンはSiO。どこにでもある物質。初期状態は固体である。

南日本新聞・打ち上げはデータを取得して全て成功したのか。
稲富・その通りです。計画通りのデータ群を得た。

南日本新聞・2012年12月打ち上げに次ぐ実験だが、さらに将来的なものをお聞きしたい。
稲富・観察技術に加えて、いかに物質を蒸発させるかが今回のポイントだった。鉄(2012年)に続いて、今回はさらに温度の高い酸化物ができた。今後はもっと蒸発させにくい炭素系の材料を目指したい。

NHK・今回の実験は、今後どういった意義があるか。
稲富・惑星の始まりについて、これまで天文学的な情報から考察していたが、材料科学の方からも観測と再現ができるようになった。また「はやぶさ2」などからもサンプルが得られる。惑星の起源について重要な情報を与える。

NHK・今後の分析は
稲富・膨大なデータがあるので腰を据えてやりたいが、これはエポックメーキング的なものなので何ヶ月というオーダーで権威ある雑誌に投稿したい。

NHK・データ取得で嬉しい悲鳴とあるが今の気持ちは。
稲富・成功して良かったのが率直な気持ち。多くの方が役割を持っている。我々だけでなく皆さんの努力がある。宇宙ダストで日本が大きく貢献できることは大きな喜びである。

木村・前回28号機の鉄の生成に引き続き、今回は酸化物を生成する実験に取り組んだ。太陽系の材料となる微粒子は、超新星や晩期型巨星のかけらが供給源。鉄は天体観測では見えないため、どのような状態で存在するか判らなかった。それが前回の実験。今回は酸化物で行った。機会があれば、次回は炭素が豊富な状態で実験した。いちばんはじめの状態が判って、初めてその後の議論が正確にできる。まだ二つが終わったところだが、次へのモチベーションが高まっている。

・次の実験はいつ頃になるか。
木村・前回から今回まで2年半かかった。2年〜3年後を目処にしたい。

・地上実験は対流・重力の影響で難しい実験だが、ロケットの中での再現実験は初めてなのか。
稲富・航空機では短いため無理・極端な実験になる。ロケットは安定した無重量状態が得られる。
木村・星の回りでは百年から千年もかかるが、ロケットのものは濃度が高く数分で再現できる。地上では対流があって達成できない。

・その他
 ・ランチャ発射角(仰角)は78度だったが、風の影響で当初の予定通り80度で飛翔した。
 ・前回S−520−29号機は、Es層の観測のため少し寝た角度で打ち上げたため、今回と比較するとかなり角度が違うように見えた。
 ・旧型ランチャだと、発射角を80度に設定して打ち上げてもレールの滑走距離が足りず、ランチャから離れた時に下に落ち込んでいた。新型ランチャでは滑走レールが長くなり、きちんと角度を保てるようになった。

以上です。


No.1892 :ランチャのセット ●添付画像ファイル
投稿日 2015年9月11日(金)06時09分 投稿者 柴田孔明

今回はS-520-30を搭載したランチャを起こす所も公開されました。
意外に速く動いてセットされます。
当日は80度前後にセットされる予定とのこと。
(※写真掲載ミスのため再掲)


No.1891 :ランチャのセット
投稿日 2015年9月11日(金)06時07分 投稿者 柴田孔明

今回はS-520-30を搭載したランチャを起こす所も公開されました。
意外に速く動いてセットされます。
当日は80度前後にセットされる予定とのこと。