投稿日 2015年11月23日(月)02時55分 投稿者 柴田孔明
2015年11月22日14時より、H-IIAロケット29号機/通信放送衛星Telstar 12 VANTAGE(Telstar 12V) の、打ち上げ前Y−1プレスブリーフィングが行われました。
・登壇者
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門基幹ロケット高度化 プロジェクトマネージャ
川上 道生
宇宙航空研究開発機構 鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット長 長田 弘幸
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊
・準備状況等 (配付資料等より抜粋)
三菱重工株式会社および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、カナダTelesat社の通信放送衛星Telstar 12 VANTAGEを搭載したH-IIAロケット29号機の打ち上げ日時について、2015年11月24日15時23分(JST)と決定した。
・打ち上げ可能な時間帯は15時23分〜17時07分(JST)。※約2時間
・機体移動は2015年11月23日21時頃を予定。
・打ち上げ予備期間は2015年11月25日〜2015年12月31日。
・ロケットはH-IIA204型(※SRB-Aが4本のタイプ)
・フェアリングは4S型
・H-IIAロケット29号機は飛島工場を9月8日に出荷後、射場作業を開始。
・11月7日までに機能点検。各機器が正常に作動することを確認。
・11月10日にカウントダウン・リハーサルを実施。関係各員に対し打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
・11月16日にTelstar 12 VANTAGEとロケット機体の結合作業。
・11月17日にロケット機体の最終的な機能点検。
・11月20日より発射整備作業を実施中。
・通信放送衛星Telstar 12 VANTAGEについて
テレサット社が運用する西経15°の通信放送衛星Telstar 12の後継機
Airbus Defence and Space社製
質量:約4.9ton
・基幹ロケット高度化開発項目
・ロケットの機能・性能の向上
※海外ロケットの台頭や、人工衛星からの打ち上げ需要の変化があり、商業衛星打ち上げ市場での競争力が低下。
1.静止軌道打上能力の向上。
→H−IIAロケット29号機に適用
2.衛星搭載環境の緩和。
→H−IIAロケット30号機にてデータ取得。
ロケットの運用基盤の強化
※地上施設の老朽化に伴う、維持・更新コストの上昇。
3.地上レーダ不要化に向けた航法センサ開発
→H−IIAロケット29号機にてデータ取得。
(その後、イプシロンロケット、H-IIBロケットでデータ取得した後、実運用の予定)
・質疑応答
産経新聞・配布資料の特記事項でコストダウンとあるが、今回の内容は何か。
平嶋・資料の通り、機器(照明)の電池をひとつ減らした。
鹿児島テレビ・高度化と初の商業衛星打ち上げだが、今のお気持ちをお聞きしたい。
平嶋・商業衛星の主打ち上げは初めて。得られるデータは多いが、我々は平常心で確実にやりたい。
川上・信頼性は高まっていたが、能力が足りないところがあった。高度化で世界から注目いただけると思う。
毎日新聞・オンタイムの積み重ねがあるが、鹿児島の協力あってのことだと思うが、感謝の言葉などをお聞きしたい。また高度化などで地元への還元はあるか。
川上・私も住んでいたことがあるので地元の方のご協力も肌身でわかっている。オンタイムや打ち上げ成功は地元の方の協力があってこその打ち上げ。成功した暁には、世界からの注目が上がり頻度が増えればいいなと思う。頻度が増えてH3へつながり、地元が活性化することに繋がると思う。
読売新聞・打ち上げは予定通り24日だが天候などで問題点は。発射整備の作業を具体的に教えてほしい。
平嶋・気象の状況で我々がいつも気にしているのは氷結層と風である。今回は曇りではあるが良い状態である。今やっている作業は、クローズアウトというもの。点検が終わって蓋を閉め、打ち上げの状態にする。クリティカルな火薬の結線などをしてクローズする。明日は機体移動のみ。
NHK・商業衛星で世界有数のテレサット社の打ち上げは三菱重工業株式会社にとってどんな節目になるか。初めての高度化で商業打ち上げに不安はあるか。
平嶋・以前にもKARI(KOMPSAT-3)の打ち上げ例があるが、今回は初の主衛星である。成功すればリピーターが増えるのではないか。顧客には誠意を持って対応している。
高度化は完全新規ではなく、ひとつひとつ実験を積み重ねてきている。高度化については確実に出来るだろう。
(※KOMPSAT-3:H-IIAロケット21号機で打ち上げ。このときの主衛星は第一期水循環変動観測衛星「しずく」)
毎日新聞・大型ロケット技術のステップアップでH3に応用されるというか、もし失敗したら開発に影響はあるか。
川上・考えたくはないが、影響は原因による。H3の全体への影響は無いと思われる。H3は設計が固まっている訳ではない。原因により、少しのリカバリで済むなら採用するだろう。想定では答えにくい。
毎日新聞・もし失敗した場合、商業衛星であるがどういった影響があるか。
平嶋・H-IIAの失敗で1.3年打ち上げができなかった時期があり、インパクトが大きい。そのようなことが無いように確実にやりたい。
時事通信・第2段の3回着火は4時間近く開くというが、ポイントはスロットリングで絞って着火から分離までか。
川上・おっしゃるとおり。
朝日新聞・コストダウンの具体的効果はいくらか。
平嶋・具体的な金額はお答えしかねるが、数億という規模ではない。
読売新聞・三回着火から分離がポイントだが、打ち上げ成功の判断はそこでいいのか。
川上・衛星分離がポイントとなる。
読売新聞・記者会見の頃には成功がわかるのか。
平嶋・所定の軌道に入ったことを確認し記者会見に入る。
産経新聞・スロットリングバルブを追加したが、2段目エンジンの3カ所に追加されたということか。作動は同時なのか。
川上・その通り。エンジン推力を60%にするために燃料を絞るもの。同じタイミングで一気に絞る。
時事通信・三回目の着火がうまくいかない場合、衛星は静止トランスファーに自力で行けるのか。
平嶋・万一の場合でも投入できる燃料が積んである。
・その他
蒸発した水素ガスを噴射することによる推進薬液面保持機能は今回が初となる。噴射したガスによる機体や衛星への影響は無いと考えている。
(※2段目底面に小型のノズルが追加されている)
以上です。
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