宇宙作家クラブ
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No.1922 :「あかつき」運用状況の説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月8日(火)08時11分 投稿者 柴田孔明

 2015年12月7日に金星探査機「あかつき」の金星軌道投入が行われ、事前に運用状況の説明と、実施後に姿勢制御エンジン噴射結果の記者説明が行われました。

・「あかつき」運用状況の説明(2015年12月7日午前8時10分(日本時間))
・登壇者
久保田 孝 宇宙科学プログラムディレクタ/宇宙機応用工学研究系 教授

・運用状況について
 「あかつき」は昨日に噴射姿勢に姿勢制御を行いました。そのあと今日のシーケンスを探査機に送り、正常に書き込まれたことを確認しています。今日は予定通りシーケンスに沿って軌道再投入を行う予定です。
 本日は朝5時前から探査機の運用を開始し、正常に動作していることを確認しています。あとは粛々と運用を行う予定です。
 運用室では中村プロマネが全体の指揮をとって運用を進めています。今「あかつき」チームは40人位で運用しています。
 探査機の噴射予定時刻は午前8時51分(日本時間)です。「あかつき」と地球との通信は距離が約1億8千万キロありますから、データが地球に届くのに約9分かかります。こちらで状況が確認できるのは探査機が動作を開始してから約9分後になりますので、9時過ぎ頃からデータが出てくることになります。
 非常にクリティカルな運用になり、これに専念させていただくため、状況は(記者室に設置された)運用室のモニタを見ていただければと思います。
 運用は臼田局を使っています。状況の説明はデータが揃った12時頃に行う予定ですので、それまで見守っていただければと思います。
 まもなく噴射を開始しますが、チームの皆さんは粛々と運用しております。既にシーケンスは送ってありますので、それがちゃんと動いていることをモニタで確認して運用しています。

・質疑応答
JAXA広報・管制室の雰囲気を教えてください。
久保田・時々刻々緊張が増してくるが、既に事前にやれることはやって、議論もいろいろ重ねていますので、緊張しつつ粛々と行っています。いろいろなケースを想定してリハーサルも十分に行っていますので、本番は平常心で運用する態勢が整っていると感じました。

産経新聞・いろいろなケースを想定したリハーサルとはどんなものか。
久保田・今回はメインエンジンが故障し補助エンジンで運用するので厳しい運用となります。時間も長く、20分も噴射します。8つのうち4つのスラスタを使いますが、これが不調の場合は姿勢を変えてもう一方のエンジンで噴射するなど、そういったやれることは全部考えてやりましょうというリハーサルです。

NHK・今後何かトラブルが出た場合、私達報道はどう知ることができるか。昼前に判るか。
久保田・軌道は何度か通信して確認するため今日はわかりません。噴射はいろいろなデータで判断すると正午頃になります。20分間の噴射だけでなく、バックアッププランもあるので9時では終わらず、オペレーションは11時頃までかかります。最終的なオペレーション後にデータを揃えて、説明を12時に行う予定です。お伝えする努力は致しますが、それまでは運用室を映すモニタで雰囲気を感じていただきたいと思います。

共同通信・8時51分にスタートだが、始まったことは画面で判るか。
久保田・リアクションで推定できると思います。詳しくはデータを見た後でないと判らない。運用室に大きな動きがなければ予定通りで順調だと思います。

読売新聞・今日のシーケンスを送ったのはいつか。
久保田・昨日の運用中に行っています。

読売新聞・撮像はいつ頃から行うのか。
久保田・噴射が終わったあと、場合によっては別のスラスタを使い、そのあと観測姿勢に戻すことになりますので、観測は今日の午後。13時以降は日本で見えず海外局を使うことになります。計画では今日の午後です。

読売新聞・5年前と違って遠近点が遠いのはエンジンの推力が小さいからか。
久保田・いろいろな理由があります。5年前予定したものより大きな楕円軌道。軌道を変えるには大きな推力が必要です。メインエンジンが壊れた段階で金星周回軌道に入れる方法を探した結果、みつけた軌道が少し大きな楕円軌道だった。打ち上げ後の軌道と、残っている燃料、補助エンジンを使うこと、熱や通信などの条件からいちばん確実なのが今回の軌道だった。遠くになると別の科学観測ができるので、必ずしも不利ではない。

朝日新聞・遠近点が大きい理由は、スラスタの推力が小さい事なのか。
久保田・噴射による減速という観点でそうです。

朝日新聞・我々に画面で判断してほしいというが、正確ではなくそれでいいのか。「はやぶさ2」のスイングバイのときと同様の対応をお願いしたい。
久保田・我々も正確な情報を伝えたいので時間が欲しい。
広報・今回も基本的に「はやぶさ2」の時と同じです。正確な記事のために少し時間をいただきたい。

・シミュレータ画面に表示では何キロが再接近なのか。
三浦(シミュレータ作成者)・あくまでシミュレータで実際の値を表していません。数値は金星表面との距離です。


No.1921 :H-IIAロケット30号機コア機体公開(その4) ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月6日(日)03時30分 投稿者 渡部韻

段間部に描かれたASTRO-Hのロゴ


No.1920 :H-IIAロケット30号機コア機体公開(その3) ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月6日(日)03時29分 投稿者 渡部韻

8枚のパネルで構成された第1段エンジン部の円筒部分は、鍛造材の平板を削ってから曲げていた従来工法から、曲げてから削る新工法に変更された。(H-IIBおよびH-IIA 29号機では導入済)


No.1919 :H-IIAロケット30号機コア機体公開(その2) ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月6日(日)03時25分 投稿者 渡部韻

第1段および黒い段間部


No.1918 :H-IIAロケット30号機コア機体公開(その1) ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月6日(日)03時20分 投稿者 渡部韻

H-IIAロケット30号機コア機体公開(その1)

2015年12月1日、三菱重工業株式会社飛島工場にて、H-IIAロケット30号機のコア機体公開が行われました。コア機体とは第1段と第2段およびそれらをつなぐ段間部の総称です。(※一部敬称を省略させていただきます)

登壇者
 三菱重工業株式会社 H-IIA/H-IIBロケット打上執行責任者 二村幸基
 三菱重工業株式会社 H-IIA/H-IIBロケットプロジェクトマネージャ 秋山勝彦

◆H-IIAロケット30号機の計画概要

・JAXAの国際X線天文衛星ASTRO-Hを高度約580kmの円軌道に投入、打上げ時期は今年度内で調整中

・SRB-Aが2本の202型、衛星フェアリングは直径4mシングル(4S型)

・衛星搭載アダプタ(PSS)と主衛星用PAFの間に組み込んだ低衝撃PAFからダミー衛星フレームを分離させて、低衝撃型衛星分離部の飛行実証データを取得

・第1段エンジン部の円筒は8枚の彎曲した鍛造材パネルで構成されているが、このパネルを「削り込んでから曲げる」従来工法から「曲げてから削り込む」工法に変更することで割れの発生等を防ぎ歩留まりを改善。これにより自動車一台分(数百万円)のコストダウンを実現した。これは前回の29号機やH-IIBでは既に適用済みだが202型では初。

・主衛星・ASTRO-Hは2.7トン。打上げ機に余剰能力が生じるので小型副ペイロードに名古屋大学「ChubuSat-2」、三菱重工業「ChubuSat-3」、九州工業大学「鳳龍四号」の50cm級超小型衛星3機、および有人宇宙システムによる超小型衛星放出機構を用いた3Uサイズ米国商業超小型衛星8式の計11機を搭載する。

・主衛星分離は14分14秒後と非常に短い。その後副ペイロードの超小型衛星を順次放出(22分34秒後〜39分14秒後)、最後に地球を一周したところで低衝撃PAF分離機構を作動させる(1時間49分30秒後)。

・コア機体は12月4日に飛島工場を出荷、12月7日に射場へ搬入予定。
・固体ロケットブースタは工場での作業を完了の上、射場へ搬入済。
・衛星フェアリングは12月1日未明に射場へ搬入済。

◆質疑応答

中日新聞:29号機を踏まえた30号機の意義と意気込みは
二村:29号機は予定通りに打上げが行われ衛星側の評価も得られた。第2段高度化も含めて成果があった。我々は搭載した衛星や探査機を顧客の希望するポジションおよびスピードで分離することで対価を得る「打上げ輸送サービス」事業を行っているので(30号機だからというわけではなく)毎号機同じ意気込みで打上げに臨んでいるが、打上げ輸送サービスが民間に移管されて30号機は(H-IIB含め)20機目にあたる。気持ちを新たに確実な打上げを進めていきたい。

Le Echoes:競合他社に対するセールスポイント
二村:打上げに対する信頼度(成功率97.1%)とオンタイム打上げ(ロケットや設備に起因するトラブルなど天候以外での打上げ延期が無い)。プライス的には有利ではないのでコストを下げることが重大な取り組みテーマ。

日刊工業新聞:製造コストと製造に携わるサプライヤの数
二村:製造コストは非公開だが競合他社に対して有意な価格ではない。
直接取引している企業は約350社、そこから発注している先も入れると1000社近く。

マイナビ:30号機という大台に乗って見えて来た事は
二村:ロケットを作るだけでなく打上げサービス事業も行うようになったことで、世界的な視点でロケットがどのような状況にあるのか、ビジネスという点でどの国がどのような事を行っているのか、衛星側がロケットに対する希望等を我々が直接聞けるようになった。顧客のニーズを機体へフィードバックをかけることが比較的見えやすくなった。

Le Echoes:新規参入業者とはどの辺りを考えている?
二村:SpaceX社はもちろんのこと、インド等も視野に入れなければいけないと思っている。

読売新聞:コストダウンの度合いは。
二村:第1段エンジン部だけで車一台分。

読売新聞:(H-IIA 202型本来の能力に対して)余剰能力は
二村:3割程度

Le Echoes:MHIがロケットを扱う利は
二村:日本という国が宇宙空間に物を運ぶ自立的および自在的な手段を保有し続けることに意義があり、我々は日本国が保有する宇宙輸送手段を維持発展させることに寄与していると思っている。その上で民間企業である我々はそれなりの売り上げと利益が出ないとやっていけない。これに関しては必ずしも大きなビジネスでは無いが、我々の会社として取り扱っている製品、我々は総合重機メーカーと呼ばれているが、その会社が持つ技術の象徴的なものの一つであると位置付け、継続することは重要だと思っている。

Le Echoes:現在は利がないのかもしれないが将来的には御社にとっても日本にとっても良い、ということか?
二村:現在もビジネスとしては成立しているし、ビジネスとして拡大させることに力を注いでいく。


No.1917 :打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月1日(火)04時33分 投稿者 柴田孔明

H-IIA F29打ち上げの様子。リモートカメラより。


No.1916 :記者会見第2部の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月1日(火)04時32分 投稿者 柴田孔明

記者会見第2部の登壇者


No.1915 :H-IIAロケットF29 打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年12月1日(火)04時30分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット29号機が2015年11月24日15時50分00秒(JST)に打ち上げられ、同日24日21時45分より打ち上げ後の記者会見が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
文部科学副大臣 冨岡 勉
内閣府大臣政務官 酒井 庸行
総務副大臣 松下 新平
経済産業大臣政務官 星野 剛志
外務大臣政務官 黄川田 仁志
宇宙航空研究開発機構 理事長 奥村 直樹
三菱重工株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部長 阿部 直彦
・側面列席者
内閣府 小宮 宇宙戦略室長
文部科学省 森 大臣官房審議官

・三菱重工株式会社・阿部宇宙事業部長
 三菱重工業株式会社および宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、種子島宇宙センターから平成27年11月24日15時50分00秒(日本標準時)に、Telesat社の通信放送衛星Telstar 12Vを搭載したH-IIAロケット29号機を打ち上げました。
 ロケットは計画通り飛行し、Telstar 12Vを正常に分離した事を確認しました。
 (※分離は打上げ後約4時間27分に行われた)
 また、JAXAが開発した高度化仕様の第2段機体を適用し、長時間慣性飛行や第2段エンジン再々着火を実施することで、従来よりも、衛星をより静止軌道に近い軌道に投入しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北東の風(8.6m/s)、気温22.0度Cでした。
 Telstar 12Vが軌道上での初期機能確認を無事終了し、早期に安定した運用に移行することを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算29機中28機の成功、成功率は96.6%です。H-IIBと合わせると通算34機中33機の成功、成功率は97%です。またH-IIAとH-IIBで28機連続成功となりました。
 初めての海外商業衛星打ち上げでしたが、無事打ち上げることができて大変安堵しています。当社はこれからも皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。
 今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力、ご支援をいただきました。あらためて関係者の皆様に心から御礼申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

・JAXA・奥村理事長
 ただ今三菱重工株式会社阿部様から、H-IIA29号機打ち上げ成功に係わるご報告がございましたが、打ち上げ輸送サービス業者としてロケット打ち上げに成功裏に終わりました三菱様に御礼申し上げると共に、私共JAXAといたしましては、打ち上げに関して安全管理業務という職務を背負っておりますが、その役割を果たせましたことをご報告申し上げます。
 今回の打ち上げに際しても地元の皆様、あるいは関係の皆様方から大変温かいご支援をいただきました。あらためて御礼申し上げたいと思います。
 今回のH-IIA29号機は私どもの基幹ロケット高度化プロジェクトの一環として開発致しました、静止衛星をできるだけ衛星に負担をかけずにロケット側で静止軌道に持っていくという新しい技術の実証を行う機会でもあった訳ですが、ただいま三菱重工株式会社様からご紹介ありましたように、この当初の目的を果たしたと私共も考えております。
 静止衛星打ち上げ性能の向上の技術は、静止衛星そのものの持っている燃料を、衛星機能本来の役割により使えるということで、そういう意味では衛星に優しいロケットの打ち上げ技術となる訳でございます。従いましてこの技術は商業衛星の打ち上げ市場にとって必須の技術と考えて、今回実証することが出来た訳でございます。
 今後ともJAXAと致しましては、基幹ロケットの高度化プロジェクトの一環として、ただ今申し上げた技術の他に、たとえば衛星を分離する時に衝撃を緩和するといったように衛星により優しい技術を開発してゆく所存であります。こういった活動を通しまして将来の衛星市場での参入加速を私達JAXAとしても応援して参りたいと考えてございます。
 なお、こういった新しく開発しております高度化技術は、ただ今開発を始めました次期基幹ロケットでありますH3にも引き継がれるものでございます。
 簡単でございますが、以上私からのご報告とさせていただきます。

・冨岡副大臣
 いまお二人からだいたいの報告があった通りでございますが、あらためてJAXAの奥村理事長をはじめ三菱重工の関係のみなさまに深く感謝を申し上げ、一緒に成功を喜びたいと思っております。
 確実な打ち上げによる高い信頼性と、高度化技術を開発したということで、H-IIAロケットの優れた能力をあらためて認識し、商業衛星の受注に新たな1ページを開いたかなと私自身も感じるところであります。
 またJAXAにおいては更なる国際競争力の強化を目指しておりまして、H3ロケットの開発を2020年までに初号機の打ち上げをチーム・ジャパンとしてやりたいと思っております。それによりまして衛星の打ち上げ能力が現行の4.5トン程度から6.5トン程度まで上がっていくと考えております。従いまして文部科学省と致しましても今後とも宇宙開発利用を支える基幹ロケットの開発に向けて全力を注入して参りたいと思っております。

・酒井大臣政務官
 感想を申し上げますと、初めてロケットの打ち上げを見ました。もちろん感動もいたしましたし、カウントダウンの時に、双眼鏡を持っていたのですが、震えました。最近こんなに感動を覚えたことは無いと思いますし、また三菱重工さんJAXAさん関係の皆様、今回のTelesat社の通信衛星は新しいオペレーションの中で打ち上げられた訳でありまして、これは本当に大変なご苦労があったと思いますけど、心からみなさまの尽力に敬意を表したいと思います。そして新たに日本のロケットの技術が一歩を踏み出したのだと思っております。
 内閣府としては宇宙政策というものがあります。これは商用衛星の国外受注の獲得には大変重要なことでありまして、日本の宇宙産業の政策の中でも基盤の強化だとか技術というところに大変大きく取り組む必要があります。そこで今回の衛星の運用というのは順調にいってほしいなと期待しているところであります。もう一つは宇宙システム海外展開タスクフォースというものを立ち上げております。これが官民一体となって産業界あるいは各関係省、関係機関が一緒になって、これからの宇宙開発の市場に大きく入っていきたいということでありますので、これからもみなさま方にご指導いただかなければならないと思っております。その上で宇宙基本計画をどんと前に進めていきたいと思っております。

・松下副大臣
 まず受注された三菱工業のみなさま、そしてサポートいただきましたJAXAのみなさま、前回のMRJに引き続き大きなプロジェクトの成功、誠におめでとうございます。そして関係されるみなさまも含めて、日本のプロジェクトでもあり国として大きな誇りであります。
 総務省と致しましては、情報通信そして放送行政を所管しております。世界の宇宙産業の実に8割が通信と放送でございます。今回のロケット打ち上げの成功、通信・放送衛星の成功ということで、これは今後日本が海外の国にこれを大きく売り出す、大きなチャンスをいただいたものと思います。改めて、これまでのご苦労に感謝を申し上げると共に、この海外からのロケット受注促進に向けてさらに頑張って参りたいと思います。我が国でも新たな通信放送衛星の開発を目指した検討が現在進められていますが、総務省と致しまして国際競争力の強化に繋がる衛星開発に向けて関係府省機関と連携して取り組みを進めていきたいと思います。

・星野大臣政務官
 三菱重工さん、JAXAの皆さん、大変お疲れ様でした、おめでとうございます。初めての海外商業衛星の打ち上げ成功でありまして、我が国の宇宙産業の振興、また宇宙産業ビジネスの進展という観点から大変喜ばしいと感じております。心から喜びを申し上げたいと思います。
 永らく科学技術に特化して宇宙開発が続いてきました。しかし本来は科学技術の振興と産業の振興は表裏一体で進めていくべきものと考えておりました。今後政府としては科学技術の観点のみならず、新たな宇宙ベンチャーを育てていくという観点からの支援も必要だと考えております。海外からの受注をとっていく上で、規制緩和も大変重要であると今回痛感しました。海外の商業衛星を初めて取り扱うという事で、経済産業省として、海外の技術者が日本の国内でクレーンを使えるようにする、これは労働安全衛生法という法律でありますけど、こういうことを可能にしました。また海外のガス充填装置を使用できるようにする、これも関連する法がありますけど、関係省庁機関と連携しながら現実に規制の緩和を実施させていただきました。今回の打ち上げ成功は利用者ニーズ主導型の宇宙産業の発展に繋がると考えております。産業振興を預かる経済産業省としても関係省庁と連携し、引き続きしっかりと宇宙ビジネスという意味での環境整備を進めて参りたいと、あらためて考えて参りたいと思います。

・黄川田大臣政務官
 今回のH-IIAロケット29号機の打ち上げ成功、三菱重工株式会社のみなさま、宇宙航空研究開発機構のみなさま、及び関係者のみなさま、外務省を代表致しまして心よりお慶び申し上げます。今回の打ち上げは、みなさまも何度も言及されていますが、初めて海外の衛星を受注して打ち上げ輸送サービスを実施したということで、新たな国際宇宙市場を切り拓く、先駆けとなる記念すべきものでございました。これに立ち会えたことに、私たいへん嬉しく思っております。今回の衛星は大型ということで、固形ロケットブースターを4基つけて、大変迫力ある打ち上げでございました。大きな地響きのもと青空に切り裂いていく姿は、これから日本が国際宇宙商業市場に打って出てゆく、その象徴的な場面であったと思っております。今後とも今日の日を忘れずに突き進んでいってもらいたいと思っております。外務省でもこれまでも日本の宇宙産業の海外展開を支援していましたが、これを機にさらに関係省庁と連携しつつ、外交日程を活用したトップセールスや在外公館を通じた情報収集と発信、また相手国政府への働きかけを積極的に行って商業宇宙市場の開拓に貢献して参りたいと思っております。

・質疑応答
鹿児島テレビ・今後の商業衛星打ち上げへの意気込みと目標をお聞きしたい。また、高度化でどれくらいの競争力となったのか。
阿部・今回の打ち上げ成功は非常に大きな一歩。ひとつは顧客であるTelesat社が世界のビッグ4と大きい。もうひとつは衛星の製造メーカーがAirbus Defence and Space社で、世界の市場でメジャーである。私共のH-IIAがグローバルスタンダードに対応できることを世界に示すことができた。高度化が実証できたので、自信を持って市場の中に入っていける。
奥村・世界の衛星打ち上げは、より衛星の機能を上げるために負担を減らす流れ。従来のH-IIAでは厳しかったが、今回の高度化で衛星に負担をかけず静止軌道に持っていける。世界のマーケット対象となる5割の衛星でこの技術が使える。残り5割は、もうひとつの重さの問題があるが、これは開発中のH3ロケットをあわせて使うことで対応できるようになる。

NHK・今回は新しい技術の試験的要素があったと思うが、これを商業打ち上げに使ったのはチャレンジングであったと思うが、そのあたりの決断の理由は何か。
阿部・今から二年ほど前に受注したが、私共とJAXA、Telesat社それぞれでリスクを取り、また得るものがあって契約が成立した。Telesat社は比較的価格競争力のある値段で打ち上げを調達できた。JAXAは実証機会を得た。三菱重工は世界のビッグ4のオペレーターという実績が得られた。それぞれがWinWinの関係で成立した。

NVS・今回の成功で受注が見込める一方、種子島の空港が小さくて関西から衛星が船で搬入された。受注拡大に向け、そういったインフラ整備を政府としてどう考えているか。
酒井・大変難しい質問だが、これは日本の状況があり、国土の状況がある。市場拡大は必要と感じている。各省でしっかりと問題定義・解決・提示をしていくことが必要だと思っている。まだまだ課題はたくさんあるがそういった方向でいきたい。

ニッポン放送・顧客のテレサット社からメッセージはあったか。
阿部・メッセージとしてCongratulationsといただいた。また、私共とTelesat社と共同でプレスに出したい。

・世界のライバルも手強いが、重さのほかにも課題はあるのか。
阿部・信頼性の面では世界のトップクラスだが、価格がある。為替の影響が大きい。今の為替なら今ならなんとか戦えるところに来つつあるので、あと一歩頑張りたい。
今回、地元の方のおもてなしが厚く、歓迎会など、Telesat社とエアバス社のスタッフにも喜んでいただいたので、今後もそれを生かしていきたい。

毎日新聞・今回はJAXAの高度化が貢献したが、今後の商業受注で政府としてどう支えていくのか。今は衛星中心だが、ロケットでもやっていくのか。
酒井・基幹ロケットの取り組みもしっかりやっていく。各省庁での問題解決も必要だが、これからは人材の育成が必要である。

産経新聞・今回の成功は商談での追い風だが、宇宙基本計画の工程表では政府の衛星打ち上げが立て込んでいる。商用衛星打ち上げのための工夫などの見解をお聞きしたい。
阿部・工程表の計画には感謝している。機数が多いことは、コストの競争ができる。しかし打ち上げスケジュールや製造には制約がある。今は一年に一基か二基の受注なので、なんとかこなしていけるように頑張っていく。


打ち上げ後記者会見・第二部

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 基幹ロケット高度化 プロジェクトマネージャ
川上 道生
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門鹿児島宇宙センター長 打上安全監理責任者
藤田 猛
三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙ドメイン 技師長 
二村 幸基

・質疑応答

鹿児島テレビ・昨日は雷、今日は船の侵入があり、大きくは無いが打ち上げ時刻に影響が出た。どのように対応されたかと、今の気持ちをお聞きしたい。
二村・素直に申し上げるとハラハラというのが正直なところ。ただ我々は打ち上げに際して普段から作業のリハーサルでトレーニングしている。船の侵入はスローダウンと呼ぶが、そういったケースでの各員の動きや処置すべきことなどをトレーニングしているので焦ることはない。

鹿児島テレビ・商業衛星打ち上げ成功で日本の打ち上げのアピールなど。
二村・お客様に約束した日に打ち上げることをモットーにしている。ハプニングがあったが、打ち上げることができたことでご了解頂けたと思う。

産経新聞・今回の打ち上げシーケンスは3回目燃焼など注目点があったが、振り返ってみてどうだったか。
二村・予定より5秒早い衛星分離だったが、ほとんどノミナル値のフライトだった。技術的に裏付けがしっかりしていて安堵した。

時事通信・高度化のプロジェクトマネージャとして成功させた心境と今後の事など。高度化の後、所長となった感想もお聞きしたい。
川上・6月からで、戸惑いもあったが、光栄な立場をいただいた。打ち上げで審査会など多かったが、若いメンバーとやってきた。正直、ほっとした。一方、長く多くの人と関わってきたプロジェクト。今後は高度化のもうひとつ、衛星搭載環境の緩和を次で計画している。
藤田・この6月から所長を努めている。高度化は川上の前任だった。それまでJAXAほかメーカーなどの関係者の努力が実を結んだ。嬉しく思っている。プロマネを変わるとは思っていなかったが、打ち上げを現場責任者として見られて、ありがたく思っている。

NHK・高度化で2段エンジンは新たな性能が得たが、コスト面の影響はどうか。
二村・さほど大きなコストアップではない。

ニッポン放送・高度化で機体の回転や、白い塗料、アンテナなどで工夫したが、設計の見込み通りだったか。
川上・結果的にミッション達成ができたので想定通り働いた。今回、貴重なデータが得られたので解析し、より信頼性のあるロケットにしていくのが仕事である。

NVS・海外の商業衛星打ち上げに対する特別の対応はあったか。
二村・海外の顧客のため、日本での生活では言葉・習慣の違いがある。これは生活の中でサポートするなど通常とは違ったものをやらせていただいた。

読売新聞・トランスファー軌道への投入は確認したのか。
二村・衛星をどの軌道にどの速度で投入するかのインターフェイス条件は、要求値に対して非常にいい値で入ったと認識している。

共同通信・高度化したがコストは相変わらず高い。取引の決め手は何だったか。
二村・三菱重工が発表した中で、Telesat社側のコメントでは総合的な評価で有利という評価だった。
川上・信頼性を含めたロケットの基本性能が評価いただけたと認識している。

南日本新聞・価格の課題があったが、現在の価格競争力でH3に期待するところをお聞きしたい。
二村・提示する価格は決して有利ではない。信頼性など総合力で我々は売り込んでゆく。大幅な変更が自由にできないH-IIAは地道なコストダウンを続けてゆく。抜本的なコスト低減にはH3での実現を期待している。

日経新聞・営業面で、三菱重工での強化の取り組みをお聞きしたい。
二村・この場ではなかなか発表しにくい。今回の打ち上げが、知名度を上げる意味で非常に大きく貢献した。現在の営業体制で各国にさらなる売り込みを図る。この世界はどれだけ足を運んでお客さんと密接に交渉したかが営業力の一つであり、必要に応じてリソースを増やすことも考える。

毎日新聞・先の会見で三菱とJAXAとTelesat社がリスクをとる形というの意味は何か。
二村・今回の打ち上げは高度化機体の開発をJAXAが行っている。三菱重工は打ち上げサービス事業の中で2段目の飛行実証の機会を提供する。Telesat社との契約条件は申し上げられないが、そういった事の組み合わせで提示できたという意味で言ったと思われます。

毎日新聞・今回は特別価格で提示できたが、これからは難しくなるのか。
二村・難しくなる面もあると思う。しかしこの打ち上げサービスは価格のみならず、お客様が打ち上げたい時期に機会を提供できるかが要素のひとつ。日本もようやく年間を通じての打ち上げができるようになったので、打ち上げ時期がどれだけフレキシブルなのかといった事、また信頼度といった事での総合力をアピールしたい。

日本経済新聞・今後の高度化機体の運用予定をお聞きしたい。必ず使うのか、希望によるのか。
二村・今回の高度化機体は提案できるバリエーションが増えたというとらえ方。衛星によっては自力で入るので(高度化機体を)使わないものもあり、希望するお客様には提供する形になる。
川上・今回得られた技術を組み合わせて、複数の衛星を異なる軌道に乗せることなどをやっていきたい。

sorae・2段目の白色塗装は26号機でも行われたが、そのときは表面を滑らかにしていた。今回は塗っただけなのか。違いはあるのか。
川上・今回も26号機と同様です。

NVS・2段目の高度化は静止軌道への投入が目的だが、2段目が長時間活用できるという事で、別の使い方はあるか。
川上・複数衛星を投入する場合にも使えると考えている。

NVS・ほかに商業衛星打ち上げのオファーはあるか。
二村・いろいろ引き合いはあり、契約に向けて交渉をさせていただいている状態である。

・その他
 移動発射台からロケットを支える支持装置の棒が、202型では打ち上げ時に下がるタイプであったが、今回は跳ね上がるタイプを使用している。これは前の204型の11号機でも同様で、射点側のSRB−Aを避ける意味がある。ただ今後は202型でも跳ね上がるタイプを使う事を考えている。

以上です。


No.1914 :衛星分離確認 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)19時24分 投稿者 柴田孔明

衛星分離が確認されました。
竹崎展望台のプレスルームでは三菱重工の関係者から拍手が起こりました。


No.1913 :H-IIA F29リフトオフ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)16時52分 投稿者 柴田孔明

H-IIA F29 リフトオフ(リモートカメラ)


No.1912 :リモートカメラ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)16時40分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット29号機 リモートカメラからの撮影


No.1911 :H-IIA F29広角撮影 ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)15時48分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット29号機の軌跡


No.1910 :H-IIA F29 打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)15時29分 投稿者 柴田孔明

H-IIA F29 打ち上げ


No.1909 :宇宙を目指して ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)15時19分 投稿者 松浦晋也

予想通りかなりの加速でした。


No.1908 :雲を抜けて ●添付画像ファイル
投稿日 2015年11月24日(火)15時18分 投稿者 松浦晋也

ぐんぐん上る