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No.2048 :H-IIAロケット33号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年3月20日(月)21時06分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット33号機が2017年3月17日10時20分00秒(JST)に種子島宇宙センターから打ち上げられました。このあと竹崎展望台の記者会見室にて打ち上げ経過記者会見が開催されています。

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 所長 木野村 謙一
文部科学省 科学技術・学術政策局 科学技術・学術総括官 神代 浩
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 副ドメイン長 阿部 直彦
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 技術部企画課長 一ノ瀬 宏昭
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 金子 忠利
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部総務課 主査 西本 裕志

・打ち上げ結果報告・阿部副ドメイン長
 三菱重工業株式会社および宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成29年3月17日10時20分00秒(日本標準時)に、内閣衛星情報センターの情報収集衛星レーダ5号機を搭載したH-IIAロケット33号機を予定通り打ち上げました。
 ロケットは計画通り飛行し、情報収集衛星レーダ5号機を正常に分離し、所定の軌道に投入した事を確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北西の風3.6 m/s、気温15.2度Cでした。
 情報収集衛星レーダ5号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算33機中32機の成功、成功率は97.0%になりました。H-IIBと合わせると通算39機中38機の成功、成功率97.4%です。またH-IIA/B、33機連続の打ち上げ成功です。
 天候により1日延期しましたが、前回の打ち上げ1月24日から最短52日での打ち上げとなりました。予定通り無事打ち上げることが出来、安心しています。
 当社はこれからも安定的な打ち上げを継続できるよう、心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
 今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力ご支援を頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

・奥村理事
 ただいま三菱重工様からH-IIA33号機による情報収集衛星レーダ5号機の打ち上げ成功に係るご報告がございました。今回の打ち上げにあたりまして私どもJAXAの役割でございます、打ち上げ安全管理業務を達成致しましたことをご報告させていただきます。
 この打ち上げは毎度のことでございますが、地元の皆様をはじめ、関係機関のご支援ご協力のもとに成し得たものと理解してございます。そういった意味で今回の打ち上げに関しましても、
ご支援ご協力をいただきました皆様に、あらためて厚く御礼申し上げたいと思います。
 今後ともJAXAとしても1機1機確実な打ち上げが出来ますように、誠心誠意取り組んで参りたいと考えてございます。

・木野村所長
 一日順延となりましたが、本日種子島宇宙センターからH-IIAロケットの33号機が打ち上げられまして、それに搭載されております私どもの情報収集衛星レーダ5号機、これが所定の軌道に投入されました。現在レーダ衛星については3号機、4号機、そして予備機の3機を運用しておりますけども、今回の5号機は、3号機の後継として位置づけられております。衛星による情報収集体制をより確実なものにするだけでなく、強化するために今回の衛星は非常に重要な衛星と位置づけております。特に3号機については平成23年12月に打ち上げておりますので、もう既に計画寿命を過ぎております。こういった観点からも今回の5号機に期待するところが非常に大きいと考えております。これまで開発から打ち上げに携わっていただいた方に感謝を申し上げたいと思います。
 今後CSICEとしましては、レーダ5号機は数ヶ月は初期運用の確認がございますけど、本格的運用になってから、これを引き続き安全保障と危機管理の観点から、必要な情報収集につとめて参りたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
(※CSICE:Cabinet Satellite Intelligence Center:内閣衛星情報センター)

・神代総括官
 松野文部科学大臣の談話にもあります通り、今回の打ち上げ成功により基幹ロケットとしては35機連続での成功となりました。このことは我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、大変喜ばしく思っております。打ち上げに際しましてご尽力ご支援いただきました関係者の方々に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また今後も情報収集衛星が順調に飛行を続けることを期待しております。
 平成28年度は宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機や、ジオスペース探査衛星「あらせ」などの打ち上げに成功いたしました。文部科学省においては今後も基幹ロケットの更なる安全性・信頼性の向上と共に、次期基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。


・質疑応答

NHK・着実に情報収集衛星の数が増えてきているが、これまでの積み上げの手応えを伺いたい。
木野村・数は増えている。現在我々は光学3機、今回の5号機を合わせてレーダ衛星が4機、あわせて7機を運用することになります。細部は申し上げられないが分解能が上がっている。情報収集という観点で、過去に比べて我々として非常に信頼できる衛星が入手できてきたという自負をしてきた。一方で我々として課題がまだまだある訳でして、これは将来という事になりますけど、能力の高くなった衛星を確実に運用する観点から、ひとつは確実な管制をやるということ、もうひとつは映像をいかに分析官が正ししい分析をするかということが、ますます我々にとって今後の課題になってくるだろうと考えております。

NHK・情報収集衛星の7機目だが今後いつまでにどれくらい増やしたいのか。
木野村・私どもの希望としてはいっぱいあった方がいいと思いますけど、政府としてはあくまで宇宙基本計画の行程表の中で謳っておりますように、最終的には10機体勢。基幹衛星を4機、時間軸多様化衛星を4機、そしてレーダ中継衛星2機ということで、我々が頑張りたいのは10機体制であります。

日経新聞・今回の打ち上げで成功率97%、インターバルが最短52日になったが、そのあたりは来たるべき国際競争というか、海外受注の拡大に向けてどういうインパクトがあるか。
阿部・成功率は高ければ高いほど当然のことながら競争力が高まってくる。衛星オペレータ、もしくはロケットの打ち上げサービスを調達される方には、やはり定時にきちんと上げてもらいたいということで、そのためにはお金を払ってもいいという方がおられますので、そういう方にとっては非常に付加価値を生んでくると理解しています。もう一点、インターバルの件ですが、インターバルが短くなるという事は要するに、その分だけお客様に提案できるロケットの打ち上げのスロットを広げられるという事ですので、自由度が増すということで、同じように競争力にとって大きな事だと理解しています。

産経新聞・情報収集衛星は安全保障上重要という観点から運用されているが、役に立っているかなかなか国民に見えにくいという課題がある。ここの点について、どのように努力されていかれるか。2年前に鬼怒川の画像の公開もあったが、災害だけでなく安全保障の面でどういう努力とか国民の理解を得られる工夫をされるかという辺りをお尋ねしたい。
木野村・危機管理については都度、頻度は多くないが提供させていただいている。しかし我々の最大の特性は、他の代替手段の無いところの写真を撮るというところですので、安全保障の部分がかなり大きなウェイトを占めています。これにはいろんな制約がございまして、一般の国民の方に目に見える形で、レーダも光学もそうですけど、お見せするという訳にもいきませんし、当然ながら資料から情報に加工して提供しているのですけど、これは官邸、それからいろんな各省庁のニーズに応えて提供しておりますけど、なかなか目に見える形で具体的に、客観的にその情報というのは難しいと思います。我々としては一般国民の人達の思いを受けて関係省庁または総理官邸に最大限努力してお渡しすることでしか恐らく還元はできないと思っております。

産経新聞・安全保障上で役に立っているということか。
木野村・はい。

産経新聞・先月からの北朝鮮のミサイル発射では役に立ったのか。
木野村・評価は、情報機関は自分で評価するものではございませんし、事柄が極めて機微なものでありますので具体的にお答えすることは今回できないと思います。我々としては重視しているところもありますし、課題としても我々としては反省する事項は多くありますので、ひとつでもふたつでも、国家や国民の方々に還元できる形で努力してまいりたいと思います。

朝日新聞・安全保障にどのように役に立っているか見えにくいという質問があったが、情報収集衛星の打ち上げが始まった頃は、いかに活用ということが公になるかということが今後の成功の鍵になるという話だったと思います。これが7号機が上がった今も変わっていないが、この点についてどう思われて、どう改善されていかれるのか
木野村・過去にもそういった問いがあったことは重々承知しておりますが、一方で国際情勢は日々動いておりますので、我々が知り得た情報について一般の方に直接公開するということが、安全保障上の問題から、逆に我々の脆弱な部分を露呈することにもなりかねませんので、間接的という言い方が適切な表現でないかもしれませんが、官邸や各省庁を通じて、各機関が我々が提供させていただいた情報に基づいて意思決定をして活動するということが、とりもなおさず我々の情報を使っていただいているということでしか回答のしようがないと思います。

朝日新聞・過去に情報収集衛星で撮影されたデータが外国の求めに応じて提示した、という形で役に立ったことはあるか。また他にも具体的に役に立った事例はあるか。
木野村・事柄の性質上、どのようなやりとりをどの国とやっているかなどは、現時点では申し上げられない。ただ、一般論という形であれば、我々はオールマイティではありませんので、他の国とある程度の情報共有をするひとつの手段として、提供することもあるだろうと申し上げることはできると思います。

鹿児島テレビ・今回、打ち上げの期間が52日と最短だったが、H3ロケットへのメリットなど、どう見られたか。
奥村・三菱重工さんからお話がありました通り、インターバルを短くすることは打ち上げの競争力にとって重要な要素であるとJAXAも認識しております。いろんな工夫を重工さんと私どもでさせていただいていて、そういう成果が少しずつ出ているのかなという自己評価をしております。来年度も行程表上、かなりの数を打ち上げる計画になっておりますので、そういった打ち上げ計画を確実に実施する第一歩として、今回の短いインターバルでの成功を私どもも大変喜んでいますし、ある種の自信になったと思っております。

朝日新聞・かつてJAXAは平和に資するというところから少し法律が変わってこういった活用にも従事するようになったと思うが、文科省として今後宇宙政策というものに対して、よりこういったものを強めていこうと考えているのか。
神代・一般的な言い方になりますが、いわゆる宇宙基本法、それから第五期の科学技術基本計画の中にも安全保障・科学技術に関することも書かれておりますので、その方針に沿ってやっていくことだろうと思います。


・打ち上げ経過記者会見後ブリーフィング(第2部)

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 調査官 金子 忠利
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全管理責任者 藤田 猛
三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙ドメイン 技師長 打上執行責任者 二村 幸基
・側面列席者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部総務課 主査 西本 裕志

・質疑応答
鹿児島テレビ・最短の52日間を実現したのは、どういったところを工夫したのか。
二村・厳密に申し上げますと、H-IIAロケットを打ち上げるための移動発射台ですけども、それを1機続けて使い回している場合の最短という意味です。H-IIB用にはもうひとつ移動発射台がありまして、これとH-IIAを別の発射台にのせて打ち上げる場合はその限りではございません。今回、最短と言っていただいているのは、そういった意味でございます。
 作業期間をそれだけ縮めていくためには、JAXAさんの設備で、非常に泥臭い話ではありますが、アンビリカルというものがございまして、打ち上がっていくときに切り離して地上側に残る訳ですが、これを次の打ち上げのために再整備をする時に、これまで、極端な言い方をしますと人力で持ち上げてロープで捕縛するようなことをやるということで、準備期間というかそういった作業時間が我々にかかるのに対して、今回吊り上げ用の小型のクレーンをそれぞれ設置していただきまして、それによってそういった作業が、非常に地味なところでありますが、そういった分の作業の期間が縮まる。またそれぞれの作業にいったいどれくらいの人がどれくらいの時間をかけているのかを分析しておりますので、そういったところで少しでも無駄があれば、その部分を削除する、あるいは直列的に仕事をしているものを少しでも重ねることができるのであれば、それを重ねるなどというような事を、何時間単位の事でございますけども、それらを組み合わせて打ち上げの間隔を縮めている。JAXAさんからそういった設備を追加していただくことで、かなり寄与しているところでございます。

産経新聞・衛星の状態と、今後のスケジュールで、分離後どのような今どのような状態か。あと、本格運用はいつ頃からか。
金子・衛星の状態は今まさに確認中でございます。今後の確認と運用スケジュールについては、通常は数ヶ月程度、初期運用のための準備にかかるのがこれまでの実績でございます。いつ頃から運用開始できるというのは今後の作業次第でございまして、確定的に申し上げることは、残念ながらできませんので、そのようにご理解いただけばと思います。所要の準備が整えば、そのあとに運用することになります。

南日本新聞・現在の射場設備では最短だったが、同時にH3の開発が進んでいる。H3を運用する上で間隔を短くすることがどのような意義があるか。
藤田・お客様の要望に非常にフレキシブルに応えることができる。幅が広がる。目指しているところは具体的な数字はあげられませんが、現状の半分以下で上げられるようになれば、とても強みになるのではないかと考えていて、それに向けて開発を進めていると理解していただければと思います。

日経新聞・海外受注を今後目指す上で、このあたりから受注したいというものはあるか。
二村・いろんなところにお客様がおられますので、世界中のお客様から我々としては認知をされて、打ち上げの受注をできれば良いと思っております。

鹿児島放送・情報収集衛星レーダ5号機と4号機との比較で、コストや技術的な面でどういった進化があるか。
金子・レーダ5号機につきましては、先ほどの第1部の会見でもありましたが、これまでと比べて性能向上を図っています。一般的な意味において不断に性能向上を図るのは、我々の使命に照らして重要ことだと思っています。レーダ5号機についてもそういったことで開発に取り組んできて、今般無事軌道に投入されたということです。残念ながら4号機との比較でどうであるとは事柄の性質上申し上げられませんけども、我々としては性能向上と計画的にやっていく、衛星開発と運用は長期スパンで考えることでございますので、我々と致しましては政府全体の宇宙基本計画と行程表に沿って効率的に、また我々の使命を十分に達成されるように日々努力することだと思います。

NHK・具体的な数値ではなく、解像度が上がったとか、悪天でも撮像が可能になったとか丸く表現できないか。
金子・重要な指摘ですが、どういった方向で目指しているか、どういった改善をしていること自体が私共の仕事の性格から詳らかに出来ないと考えております。

朝日新聞・10機体勢への途中経過だが、情報収集衛星はシステムとして一定水準だが更に強化するというレベルなのか、それとも国際標準からするとまだまだなのか。どの程度の到達度と認識しているか。
金子・重要なご指摘だと思います。数の面で言えば基幹衛星4機、時間軸多様化衛星4機、データ中継衛星2機といったところで、一昨年我々が取り組んだところです。一口に他国と国際的にどう見るのかという観点からのご質問と理解しましたが、この分野でどの程度やるのかは、その国の置かれた情勢に極めて密接に関連すると思いますので、一概にどう比較するかはなかなか難しい問題ではないかと思います。我々としては基幹衛星4機を情報センター設立以来10数年運用してみて、もっと多様な時間帯でこれを一層活用する必要があるというのが、我々のこれまでの実績というか、やってきた経験を踏まえての判断、更には我々の意思にプラスして政府部内で議論した結果として、政府全体としての閣議決定に基づく行程表にもそういった事が書かれたことが大きな意味ではないかと考えています。

産経新聞・おっしゃっていた課題の中で、衛星のハードだけでなく、衛星から得られた情報をいかに読み取って安全保障や危機管理に役立てていくかが極めて重要だと思います。この人材面で、いま運用上、満ち足りているのか。また、衛星の機数が増えると情報も増えてゆく。そういった読み取っていくところの課題や展望をお聞きしたい。
金子・我が国の安全保障に照らして、4+4+2ということでハードの面で充実する必要があり、それを分析するところの人材についても非常に重要な課題であると所長が申し上げた通り、我々も日々質的にも量的にも大きな課題であると認識しています。課題をひとつひとつ克服していくことかと思います。

鹿児島読売テレビ・来年度はもっと多くの打ち上げを予定しているとのことだが、確実に成功するための課題や改善しなければいけない点は。
二村・来年度もそれなりの機数の打ち上げをひかえております。我々の打ち上げロケットそのものが使い捨てタイプですので、製造にあたっては毎回新しいロケットを打ち上げていという意味では、作り込みの精度あるいはそれに対する試験といったものを、ひとつも省略することなく、あるいは変に合理化することも避けながら信頼度の作り込みを続けている訳で、この辺りは当然スキルを含めて継続をしていかなければならないと思っています。実際に作業にあたる人も含めますと、当然人材的なリソースを、それなりのスキルに維持し続けるということ。当然世代も変わっていきますので、そういったことも含めて、我々の作り込んでいる信頼度を維持出来るようなことを、まずはしっかりやっていかなければならないと思っています。
 打ち上げに際しましては、我々はJAXAさんの宇宙センターを使わせていただいておりますけども、我々としては作業を確実に実施していくために必要な、たとえば設備の改良ですとか、我々の作業の工夫といったものも併せ実施していく必要があると思います。非常に些細な工夫であったとしても、それをJAXAさんと相談をしながら、そういった多数機の打ち上げに向けて確実に実行できるようにしていかないといけないという風に思っております。

以上です


No.2047 :H-IIAロケット33号機打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2017年3月17日(金)11時20分 投稿者 柴田孔明

2017年3月17日10時20分00秒(JST)に打ち上げられたH-IIAロケット33号機。


No.2046 :夜明け ●添付画像ファイル
投稿日 2017年3月17日(金)07時14分 投稿者 柴田孔明

2017年3月17日7時過ぎの射点。


No.2045 :機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年3月16日(木)20時31分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット33号機の機体移動が2017年3月16日20時00分から20時25分にかけて行われました。


No.2044 :H-IIAロケット33号機、第1回判断の結果
投稿日 2017年3月16日(木)16時57分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット33号機の第1回GO/NOGO判断会議の結果はGoとなりました。
機体移動作業開始可です。
(※16:50頃発表)

なお、現地天候は16時過ぎの段階で雨です。

No.2043 :H-IIAロケット33号機打ち上げ前ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2017年3月14日(火)22時11分 投稿者 柴田孔明

 2017年3月14日15時15分(JST)より種子島宇宙センター竹崎展望台記者会見室にて、H-IIAロケット33号機の打ち上げ前ブリーフィングが行われました。

・登壇者
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット長 長田 弘幸
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊
(※MILSET : Mitsubishi Launch Site Service Team : 三菱打上げサービス射場チーム)

・打ち上げ延期について
 三菱重工業株式会社および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、情報収集衛星レーダー5号機を搭載したH-IIAロケット33号機の打ち上げを平成29年(2017年)3月16日に予定しておりましたが、当日の天候悪化が予想されるため、下記の通り打ち上げ日を変更すると共に、打ち上げ時刻を設定いたしました。
 なお、3月17日の打ち上げの可否については、明日以降の天候状況を踏まえ、再度判断いたします。
 (※天候悪化:制約条件の「氷結層を含み、鉛直の厚さが1.8 km以上の雲」に抵触する可能性があるため)

・打ち上げ日時
 打ち上げ日:2017年3月17日(金)
 打ち上げ時刻:10時20分00秒(JST)
 打ち上げ時間帯:10時20分00秒〜10時33分57秒(JST)
 打ち上げ予備期間:2017年3月18日〜2017年4月10日

・作業実績と今後の作業予定
 3月11日:Y-3作業(完了)
  1/2段推進系・電気系点検作業
 3月12日:Y-2作業(完了)
  火工品結線
  2段ガスジェット推進薬充填
 (※3月13日の悪天候が予想されたことから、Y-3作業/Y-2作業を前倒しで実施)
 3月13日:運用訓練(完了)
 3月14日:Y-1作業(実施中)
  電波系総点検
  推進系最終クローズアウト
  機体アーミング
  機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  射点/貯蔵所系最終準備
 3月16日〜17日:Y-0作業(予定)
  機体移動
  射点設備系最終準備
  ターミナル・カウントダウン

・ロケットについて
 ロケット:H-IIAロケット202型(コア機体にSRB-Aが2本)
 フェアリング:4S型(直径4メートルシングルロンチ用フェアリング)


・質疑応答

朝日新聞・17日から更に延期する可能性はあるのか。
平嶋・天気予報の傾向を見極めながらやるということで、明日も明後日も天候判断をやって参ります。(再延期は)否定できません。

朝日新聞・13分57秒間の打ち上げ時間帯はどういったものか。
平嶋・決められたロンチウインドウがあって、この中で打ち上げれば他の飛翔体と影響なく対応できるということで決めている。

読売新聞・「氷結層を含み鉛直の厚さが1.8 km以上の雲」とあるが、両方を含むことがあるのか。また氷結層はどんな定義なのか。
平嶋・大気が0度Cからマイナス20度Cの範囲の中に雲があると、それが氷結層。それを鉛直に切ったときにどれくらいの厚みがあるかを調べて定義している。

読売新聞・すると氷結層が1.8 km以上の厚さになる恐れがあるということか。
平嶋・はい、そういうことです。

産経新聞・天候以外で今回は何か不具合などはあったか。
平嶋・発射整備作業を含めまったく順調に進んでいます。

産経新聞・前回打ち上げから比較的短い。51日。実現するための工夫や苦労は。
長田・前回の打ち上げによる損傷状況を見て、あとは関係機関と調整をした結果。これ以上短く出来るかは、射場のインフラも限られるので今後状況を見ながら判断することになるだろう。今回は結果として最短になった。日々努力はしている。今回、射場作業の道具立てで短縮した。短縮できるものは短縮を図るべく努力している。

NBC・最短の準備期間について、三菱重工としてはどう捉えているか。
平嶋・前回、実績として53日だったが、さらに短くできることで、顧客に対してアピールできる。オンタイム打ち上げは定評があるが、打ち上げ期間を短くできれば顧客の満足に繋がるので、確実に成功させていきたいと考えています。

NBC・(期間が短いことで)逆にマイナスの面はあるか。たとえば労働時間が長くなるなど。
平嶋・クルーについては大きく3クルーあり、それを重ね合わせることで短くできる。負担で特別なことはなく対応できている。実績を踏まえて今回の最短ができている。

毎日新聞・今回、射場の交通規制や入場規制などをこれまでと変えて行うことはあるか。
長田・そこは我々が答えるべきところではないため差し控えさせていただく。

南日本新聞・氷結層はロケットの打ち上げにどのような影響があるのか。
平嶋・氷結層の中で打ち上げると、ロケットを起点として雷が落ちたような状態になる恐れがある。他国のロケットがそれで失敗したということを踏まえて、このような規定をさせていただいている。

NHK・情報収集衛星だが、機体移動などの時間と衛星分離の時間は。
平嶋・申し訳ないですが、それらは答えられません。

NHK・明日はブリーフィングはあるのか。
広報・開催しない予定です。延期等は広報からお伝えします。

NHK・氷結層による延期は何号機以来か。
広報・H-IIAロケット30号機。

NVS・1日延期だが、打ち上げ時間はどうなっていくか。
平嶋・聞いているところでは時刻は変わらない。

産経新聞・打ち上げ成功が2003年から続いていて、技術が成熟している印象があるが、緊張感の持続とか、どんな心構えか。
平嶋・今までの成功が次の打ち上げ成功に繋がることはないと肝に銘じて。平常心で確実丁寧に作業をするように。自分自身だけでなく隊員の皆にも言って成功に繋げようと努力しています。

日経新聞・今年1月の小型ロケット(SS-520-4)失敗の教訓はあるか。
長田・失敗の原因は公表されているが、このロケットは形態も射場も全く違う。しかし失敗のトリガは何かしらあるので、そこについては我々もSS-520の反省を踏まえて取り組んで参ります。具体的には手順や作業態勢、確認方法、一連の作業で確認すべきことを改めて再確認をして万全を期してゆくことだと思います。

以上です。


No.2042 :H-IIAロケット32号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月25日(水)23時44分 投稿者 柴田孔明

 H-IIAロケット32号機は2017年1月24日16時44分00秒(JST)に打ち上げられ、搭載されたXバンド防衛通信衛星2号機(きらめき2号)が正常に分離されたことが確認されています。この打ち上げ経過記者会見が同日18時30分過ぎから行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・打ち上げ経過記者会見登壇者
防衛省 防衛副大臣 若宮 健嗣
文部科学省 大臣官房 審議官(研究開発局担当) 白間 竜一郎
株式会社ディー・エス・エヌ 代表取締役 小山 公貴
スカパーJSAT株式会社 代表取締役 執行役員社長 高田 真治
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 副ドメイン長 阿部 直彦

・同、側面列席者
防衛装備庁 長官 渡辺 秀明
防衛装備庁 プロジェクト管理部 事業管理官 (情報・武器・車両担当) 小川 祥直
株式会社ディー・エス・エヌ 社長付 大沢 響
スカパーJSAT株式会社 宇宙・衛星事業本部 宇宙・防衛事業部長 青木 一彦

・打ち上げ結果について(阿部副ドメイン長)
 三菱重工業株式会社および宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成29年1月24日16時44分00秒に、Xバンド防衛通信衛星2号機を搭載したH-IIAロケット32号機を予定通り打ち上げました。ロケットは計画通り飛行し、Xバンド防衛通信衛星2号機を正常に分離した事を確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北西の風7.1m/s、気温9.0度Cでした。
 Xバンド防衛通信衛星2号機が軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に遂行されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算32機中31機の成功、成功率は96.9%になりました。H-IIBと合わせると通算38機中37機の成功、成功率97.4%です。またH-IIA/B、32機連続の打ち上げ成功になりました。
 無事打ち上げることが出来、大変安堵しています。このあとも短いインターバルで打ち上げが続きます。引き続き皆様に安定的に打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
 今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力ご支援を頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

・奥村理事
 ただいま三菱重工よりH-IIA 32号機の打ち上げに係るご報告がございました。今回の打ち上げに際しましてJAXAは打ち上げ安全管理業務を担当しておりますけども、この業務を滞りなく終了することができました。今回の打ち上げも含めてですが、毎回打ち上げに際しましては、地元地域の皆様方のご理解とご支援、ならびに関係機関のご支援を頂いてこそ出来る仕事でございます。ご協力をいただきました皆様方にあらためて感謝を申し上げたいと思います。
 なお今後も打ち上げが続く予定でございます。毎回の打ち上げをきちっと正確に任務を果たして参りたいと思います。

・若宮防衛副大臣
 防衛通信衛星「きらめき2号」の打ち上げが先ほど無事成功致しましたことを、あらためて皆様方にもご報告申し上げたいと思います。
 本日の打ち上げ成功は多くの関係者の皆様方のご尽力とご支援の賜物であり、私としましても本当に感謝の気持ちでいっぱいであります。スカパーJSAT、日本電気、三菱電機、NTTコミュニケーションズ、三菱重工業、そしてJAXA、皆様をはじめ、このXバンド防衛通信衛星の整備事業に携わられた皆様方、またこの事業にご支援を賜りました関係各位の皆様方に厚く御礼申し上げたく思います。
 この「きらめき2号」は防衛省と致しましては初めて保有をする衛星でございます。陸海空の自衛隊の統合運用に資する形で、自衛隊の部隊の指揮統制、情報支援など国内外での各種の部隊行動に係る重要な通信に使用する予定でございます。従いまして今回の打ち上げ成功は、我が国の国益を高め、各国との協力活動を推進するものとして大変重要な位置づけにございます。
 今回無事に打ち上がりました「きらめき2号」につきましては、現在無事に衛星信号の捕捉も確認をされてございます。更に静止軌道上での性能確認試験を約2ヶ月後に行った後に本格運用となります。そして約15年ほど運用することとなってまいります。また平成30年には「きらめき1号」の打ち上げを見込んでございます。引き続き関係者の皆様方にはご協力を賜りながらXバンド防衛通信衛星の整備を進めてまいりたく思います。どうぞ皆様方のお力添えをお願い申し上げます。

・白間大臣官房審議官
 お手元に松野文部科学大臣の談話をお配りしてございますけども、そこにございますように今回の打ち上げ成功によりまして基幹ロケットとしては34機連続での成功になり、我が国が有するロケット技術の着実な発展、また信頼性の向上を示すことが出来たと、このように考えてございます。まず打ち上げに際しましてご尽力ご支援いただきました関係者の皆様にこの場をお借りまして厚く御礼申し上げます。また今後も「きらめき2号」が順調に飛行を続けることを期待をしているところでございます。
 文部科学省におきましてはH-IIA/Bロケットの後継としまして、国際競争力の強化を目指して、次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも取り組んでおりまして、2020年に初号機の打ち上げを予定しているところでございます。
 今後とも基幹ロケットのさらなる安全性、また信頼性の向上に取り組むとともに、H3ロケットの開発に着実に取り組んで参りたいと考えてるところでございます。

・配付された文部科学大臣の談話。
『本日、H‐IIAロケット32号機が打ち上げられ、搭載していたXバンド防衛通信衛星「きらめき2号」が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 今回の打ち上げ成功により、我が国の基幹ロケットとしては34機連続での打ち上げ成功となり、着実に信頼性を向上させていることを私も喜ばしく思っております。
 「きらめき2号」は、防衛に係る重要な通信に使用されると承知しており、今後、衛星の運用が順調に行われ、所期の目的が達成されることを期待しております。
 今後とも、基幹ロケットの更なる安全性・信頼性の向上に取り組むとともに、国際競争力の強化を目指し、次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。
平成29年1月24日 文部科学大臣 松野 博一』

・小山代表取締役
 この度PFI事業の防衛省さんとの契約当事者として、今回の打ち上げ成功に真に安堵しているところでございます。これまで4年間にわたっての整備期間中に、防衛省さんをはじめてとして関係各社のご支援ご協力のもと、この日を迎えることができました。あらためて厚く御礼申し上げます。
 本日の打ち上げを皮切りに、今後運用期間の第一歩を踏み出した訳でございますけど、来年に予定されています「きらめき1号」の打ち上げ、更には今日を皮切りに今後15年にわたりまして防衛省様の大切な衛星をお預かりして安心安全に運用するという責務がございますので、一層気を引き締めて、コンソーシアムメンバーでございますスカパーJSAT、日本電気、NTTコミュニケーションズ、前田建設工業と力を合わせて尽力して参る所存でありますので、引き続き防衛省様におかれましてはご指導のほどをお願い申し上げたいと思います。

・高田代表取締役執行役員社長
 「きらめき2号」の打ち上げ成功、まことにおめでとうございます。そして関係各位のご尽力に対しまして心より御礼申し上げたいと思います。私どもスカパーJSATは株式会社ディー・エス・エヌの代表企業といたしまして、本事業の運営にこれからもご尽力をし、信頼性の高いサービスを提供していきたいと思います。
 さきほど副大臣からご報告がありましたように、衛星を分離した後に衛星からの信号も捕捉できまして、私どももほっとしているところでございます。
 最後になりますが、この「きらめき2号」が日本の安心安全を守るために役割を果たしていただくことを心より祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。


・質疑応答
朝日新聞・「きらめき3号」の概算要求で満額の予算がおりなかったが、平成32年度中の打ち上げに影響はあるか。
小川・影響はありません。宇宙基本計画にある通り、スケジュール通りに進めるというのが今の方針でございます。

鹿児島テレビ・「きらめき2号」の打ち上げ成功で画像や動画の通信が改善されるが、利点や意義についてお聞きしたい。
若宮・私ども防衛省自衛隊と致しましては、まず統合機動防衛力の構築、それからまた将来的に見た場合に今後の自衛隊の通信所用の増大をまず想定致してございます。こうしたことを踏まえまして、通信統制の一元化と、さらに高速化と大容量化を通信面で考えておりまして、その機能向上を図る必要があると認識を致しているところでございます。今回の衛星の打ち上げ成功によりまして、陸海空の自衛隊の各部隊間での円滑な通信というものがまず確保できるということと、それからまた先ほど申し上げました通り大容量の画像や映像データを伝送可能になるという点と、それからまた私どもが様々な海外の地域で展開致してございますけども、海外の広域にわたって活動する部隊への必要十分な通信所要の確保という、こういった3点が重要なポイントとなってまいりますので、こうしたことが利点と言えるかと思います。

産経新聞・初めて防衛省独自の衛星を保有して今おっしゃったような効果が期待されるが、今後3機が整備されていく中で、これらを活用するためのハードルというか課題はあるか。
若宮・特にハードルというのは無いが、できるだけ早期に3機につきましては稼働・運用させたいというのが第一番ということと、現在使っております2機につきましては、そろそろ耐用年数が来るという事でございますので、やはりいろんな意味で時代と共にいろんな技術、あるいは通信、それから様々な運用面でも通信容量のアップは必要不可欠だと思っておりますので、できるだけ早期を目指して頑張ってまいりたいと考えております。

産経新聞・初めて三菱重工業のロケットを使っての打ち上げだったが、感想と受け止めと今後の位置づけについてお聞きしたい。
高田・今回はパーフェクトな打ち上げをいただきまして、本当に感謝をしております。私どもが打上サービスを選択する場合には、ロケットの信頼性が第一でございます。衛星を打ち上げるタイミングというのは、現用の後継機であったりしますし、衛星の寿命があったりしますので、私どもが打ち上げるタイミングといか時期について、柔軟な対応がいただけることも我々にとって大変ありがたい。さらに言わずもがなであるかもしれませんが価格面でございます。そういったことを総合的に判断してまいりたいと思います。今回、見事な打ち上げをいただきまして、今後世界にも打ち上げ会社はございますけども、そういった中で国産のサービスがこれから世界のマーケットの中でも重要な地位を占めるようになっていただきたいと心から願っております。


・打ち上げ経過記者会見後ブリーフィング登壇者
防衛装備庁 プロジェクト管理部 事業管理官 (情報・武器・車両担当) 小川 祥直
株式会社ディー・エス・エヌ 社長付 大沢 響
スカパーJSAT株式会社 執行役員 技術運用部門 衛星技術本部長代行 早坂 裕一
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター長 打上安全管理責任者 藤田 猛
三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙ドメイン 技師長 打上執行責任者 二村 幸基

・質疑応答
鹿児島テレビ・「きらめき」関連はあと2機の打ち上げがあるが、今回「きらめき2号」のみがH-IIAを選んだ理由と、他の打ち上げで選択しなかった理由は何か。
早坂・選択しなかった理由というのは、もう1機のDSN1と呼んでおります「きらめき1号」の方が衛星全体の重量がかなり重いということで、仮にこれをH-IIAで打ち上げると軌道上の寿命の要求値を満足できないということがありました。従いましてそちらの方はアリアン5ということで来年打ち上げる予定です。一方のこちらの「きらめき2号」ですが、重量的にH-IIAで十分に打ち上がって、しかも軌道上寿命が要求を満足できるということですので、それからもちろん経済的な理由もございます。そして今回選ばせていただいたということになります。

読売新聞・このあとのスケジュールについて詳細を教えていただきたい。
小川・まずわかりやすいのが、太陽電池パドル展開がそろそろ、予定では19時15分くらいと聞いております。そのあと1回、2回、3回、4回とぐるぐると静止軌道上に向けて輪を広げる形で回っていきまして、衛星の姿勢を確立するのが1月30日の20時半頃、そしてそのあと静止軌道にちゃんと乗って静止化するのが2月3日の今のところ12時45分頃という形で聞いております。静止軌道に落ち着いてから、静止軌道をぐるぐる回り続けながら2ヶ月間動作確認というか性能確認の試験を行うという形になります。そして試験が終わった後にようやく運用が始まる。従いまして運用が始まるのが3月末くらいの予定を考えているのが、今後の当面のスケジュールという形になっております。

NHK・衛星打ち上げサービスを利用する立場として、日本の打ち上げサービスにもっと改善してほしい点や、利用しやすさとしにくさ、どういった課題があるか、海外のもとの比べてどのような点がまだ伸びて欲しいと思われる点、そういったところを教えて頂きたい。
早坂・もっと伸びてほしい点と、非常にすばらしい点の両方を言わせていただきたいと思います。もっと伸びてほしいのは、年間の打ち上げ頻度ですね。現時点でだいたい4回、それから5回という記録があったか覚えていないのですが、だいたいそれくらいの頻度ですので、我々が衛星をぽんと作ってそのタイミングで打ち上げてほしいという時に、どうしても他の打ち上げサービスであるアリアン、もしくはファルコン9、そういった所と比べると若干打ち上げ密度が低い。これを今後頻度を上げていただければ言う事は無いなと思っています。
 逆に良い点は2つほどありまして、今回強く感じましたのは他の打ち上げサービス会社と比べると、我々が日本人だからというところもあるのかもしれませんが、技術的な情報が非常に豊富に出て来ました。これは他の打ち上げサービス会社と仕事をしている時に殆ど感じたことが無い、非常に長所だと思っています。もう一個は、MHIさんの中でPI(ペイロードインターフェース)と呼ばれている機能の方々がいらっしゃいまして、我々とMHIさんJAXAさんの間を取り持っていろんな技術的なまとめ事をやってくださる。これが今回非常にうまく機能しておりまして、これも今まで我々が他の打ち上げサービス会社と仕事をした時に、こんなにやりやすかった事は無かったというのが正直な感想でございます。
 従いまして質問に答える形になりますと、頻度を今ひとつ上げていただければな、という風に思っております。

南日本新聞・今回防衛省の衛星で、PFI事業で民間の企業から選ばれたが、選ばれた意義と、今の話から今後の取り組みと意気込みをお聞きしたい。
二村・いま早坂様がおっしゃっていただいた点は、私どもとしてはそれを一つ一つご要望をかなえていけるように、また褒めて頂いた点はもっと伸ばしていけるようにという事でしっかりやっていきたいと思っております。今回特にスカパーJSATさんから私どものロケットを選んで頂いたという事は非常に意義があると思っておりまして、我々のロケットを今後も使って頂けるように引き続き努力してまいりたいと思っております。

日経新聞・打ち上げ費用について、これまでH-IIAは百億円くらいと言われてきたが、それより上か下か。
二村・打ち上げの費用に関しましては私どもからは公表しておりませんので、申し訳ないのですがこの場ではお答えできない。

産経新聞・打ち上げ頻度をもう少し上げる点について、もう少し自在な時期に打ち上げられるような、需要にこたえるようなロケットになってほしいとの声があったが、この点についてどう受け止めているか。
二村・打ち上げ頻度を構成する条件は二つございまして、ひとつは機体の製造能力で、もうひとつが宇宙センターの設備のキャパシティ、インターバルの問題であります。生産能力に関しましては残念ながら飛躍的に数を増やすほど生産設備を持っていないのが各社の実態でございますので、これから私どもで更に打ち上げの機数・受注を、つまり数を増やすということが、しかも平均的に山谷が無く数を増やすことができれば、当然設備投資等の話に結びついていきますので、そのあたりは鋭意努力してまいりたいと思っております。宇宙センターに関しましては、JAXA様の設備を使って打ち上げをさせていただいておりますけども、当然発射台の数等の問題がございますけども、これについては打ち上げのインターバルをできるだけ短くするような設備の増設など、そういった事の努力をしていただいておりまして、今後も引き続きこれを短く出来るよう努めてまいりたいと思っております。

読売科学部・防衛省として初めての独自の衛星。これまで民間を使っていたが、これまでの仕様と開発について何らかの形、資本面などで関わっていたのか。
小川・PFI事業を始めるにあたって、自分達で保有するということで、どういった仕様が求められるのかという事等は事前にフィージビリティスタディみたいなものをやってます。仕様の話は具体的にはお伝えできませんが、一番のポイントは今までは民間のサービスをお借りしてサービスを受け止めてやる形だったのが、仕様面でこういった感じというのを発注者側として要望が出せるということと、あと運用面においてサービスをお借りする立場なので、たとえば位置の問題であるとか、周波数の問題であるとか、そういった運用上必要とされる所について、こちらからお願いしますと、もちろん基本的におこたえいただける形ではあるのでしょうけれども、たとえば適時性とか随時性とか、そういった部分での融通がより効きやすくなるという事を考えて、今まではサービスをお借りしていたが、こちらの方で持つという立場にしたという形になっています。他方でその時に、当然国が直接やるというところで費用の面とか特にコストの面がございますので、なるべくコスト効率的にできないかとか、あるいは民間企業の皆様の知見・技術をどこまで活用できるのかという形を考えたときにPFIだということでありまして、総じて申し上げるのであればPFI事業は平成24年度にスタートした訳でありますけれど、その前にある程度仕様面、もしくはコスト面でのフィージビリティスタディをやった上でこういった形に入ったという経緯がございます。

NHK・打ち上げにあたって報道に対して情報の制限があったが、具体的にどんな懸念があってこのような対応をとられたのか。
小川・恐らく、私も写真撮影無しとお伺いして、自分にとってありがたいかもしれないが、どうしてなのかなと一瞬思ったのですけど、たぶん運用上の話にいろいろ立ち入ったときに、たとえばあまりこういった話はしたくないのですが、中継器がいくつあるのですかとかスペック上の話が出てくるのではないかと思うのですけど、かなりの部分は、能力は、防衛省の言い方なんですけど、運用面での能力が判る人には判ってしまうねという所がやはり懸念される所があって、恐らく私もこの場でカメラ撮影があっても申し上げることができないのかなと思っております。ですので、そういった部分に多少ご配慮いただくと申しますか、そういった事なのかなと私の方で思っております。

読売テレビ・今回の成功でH-IIA/B連続32機打ち上げ成功ですが、率直にどのように思っているか。
二村・今回の打ち上げ成功に対しましては、正直ほっとしているというのが今の感想であります。連続成功というのは我々の事業の継続性を考えれば、打ち上げの成功を続けることが、お客様に対してもご迷惑をおかけしない、あるいは的確なサービスを提供できる、そういった環境が維持できると思っているので、引き続き連続成功に向けて取り組んでいきたいという風に思っております。

産経新聞・今の質問と重複するが、御社に打ち上げ業務が移管されてからH-IIAの打ち上げは今回で20回連続成功の節目という言い方も出来る訳だが、そういった点から今のお答えに補足があれば。
二村・確かに20機目という数字で節目といえば節目だが、我々としては通過点と思っておりますので、これを何倍にも増やしていけるようにしっかりやっていきたい。

以上です。


No.2041 :H-IIAロケット32号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月24日(火)16時37分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット32号機は2017年1月24日16時44分00秒(JST)に打ち上げられました。


No.2040 :打ち上げ判断
投稿日 2017年1月24日(火)14時46分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット32号機、第1回から第3回までのGO/NOGO判断会議の結果はGOです。

No.2039 :射点の虹その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月24日(火)12時33分 投稿者 柴田孔明

先の物はわかりにくいのでもう一枚。


No.2038 :ロケットと虹 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月24日(火)12時32分 投稿者 柴田孔明

13時20分頃に射点に虹が重なって見えました。
なお、時々雨が降る状態です。


No.2037 :機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月24日(火)06時34分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット32号機の機体移動が2017年1月24日午前3時頃から行われました。
(※撮影は作業終了後の午前6時過ぎ)


No.2036 :H-IIAロケット32号機打ち上げ前プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月22日(日)21時30分 投稿者 柴田孔明

 2017年1月22日14時過ぎより、種子島宇宙センター竹崎展望台記者会見室にて、H-IIAロケット32号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター射場技術開発ユニット長 長田 弘幸
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙ドメイン 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊
(※MILSET:Mitsubishi Launch Site Service Team :三菱打上げサービス射場チーム)

・打ち上げ日時について
 打ち上げ日:2017年1月24日
 打ち上げ時刻:16時44分00秒(JST)
 打ち上げ時間帯:16時44分00秒〜17時58分00秒(JST)
 打ち上げ予備期間:2017年1月25日〜2017年2月28日
 (※予備期間の時間帯は打ち上げ日毎に設定)

・機体について
 H-IIAロケット204型(SRB-Aが4本) 4S型フェアリング(直径4mシングルロンチ用)

・搭載衛星について
 Xバンド防衛通信衛星2号機「きらめき2号」

・作業実績と今後の予定
 ・1月20日(Y-3作業・完了)
  1/2段推進系・電気系点検作業
 ・1月21日(Y-2作業・完了)
  火工品結線
  2段ガスジェット推進薬充填
 ・1月22日(Y-1作業・実施中)
  電波系総点検
  推進系最終クローズアウト
  機体アーミング
  機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  射点/貯蔵所系設備準備
 ・1月23日〜1月24日(Y-0作業・予定)
  機体移動
  射点設備系最終準備
  ターミナル・カウントダウン
  ※1月24日16時44分00秒に打ち上げ予定。

・打ち上げ近傍の天候等
 今日と明日については寒気の影響もあり時雨模様で風もあるが、1月24日は風も多少弱まり雲も薄くなり、打ち上げ可能の見込み。

・質疑応答
産経新聞・ロケット製造から分離までで、新機軸や効率化など従来と異なるものはあるか。
平嶋・特段変わったことはございません。

NHK・今回の打ち上げの意義など。H3ロケットに向けての意義など。
平嶋・今回の打ち上げで何か変わる所はなく、我々としては愚直にひとつひとつ丁寧にやって、打ち上げの連続成功を継続させる。

NVS・静止軌道への打ち上げだが、第2段の高度化はあるか。
平嶋・通常の2段の仕様です。

産経新聞・どの打ち上げもそれぞれ重要とのことだが、今回の衛星は国の安全保障に関わるもので、民間も衛星オペレータも大きく関わっている。そういった観点からの認識はどうか。
平嶋・顧客が新しいので失敗できないというところはある。特に変わってやらなければならないという所は無く、慢心せず愚直に丁寧にやっていきたいと思っている次第です。

産経新聞・以前にH-IIA同士の打ち上げ間隔が最短53日くらいというのがあった。今回はH-IIBの後であるが、VABの場所が違うので大変さの違いはあるか。
長田・基本何日と決められている訳ではない。打ち上がった後の射点の損傷具合、ミッションの特異性で準備状況が多少変わってくる。そのため具体的に何日という状況ではない。準備が整った時点で関係機関と調整して決めている。実績として最短50数日というのはあった。

南日本新聞・24日は雨の予報が出ているが、準備作業に支障は無いのか。
平嶋・雨は時々降るかもしれない程度で、規定に抵触する雨にはならないという予報なので、大丈夫と考えている。

NHK・これまで(2段の)再着火は何度あるか。
平嶋・即答できないので調べて回答します。

鹿児島テレビ・可能であれば機体移動の時間を教えて頂きたい。
平嶋・はっきり言えないが早朝の予定です。
(※夜明け前の可能性大だが、準備状況によって変更はあり得る)

読売新聞・先日、内之浦でSS-520が失敗したが、これによって準備作業などに影響や、改めた点はあったか。
長田・特にございません。基本的にロケットの形態が全く違う。設備も種子島で全く違う。ただ共通で使っているものもいくつかあるが、これまでの作業と何ら変わらない。

NHK・打ち上げシーケンスの時刻の公開がされていないのは防衛上の機密のためか。
平嶋・契約の兼ね合いで提示できない。

NHK・これまでの打ち上げと違う点はあるか。
平嶋・特に変わったところはございません。

不明・打ち上げから衛星切り離しまでどれくらいの時間か。
平島・これもお答えできません。

不明・打ち上げ後会見の時間が100分後の予定なのでそれまでとして、1時間なのか、1時間半くらいなのか、ざっくりで。
平嶋・1時間弱になります。

以上です。


No.2035 :SS-520-4の打ち上げを終えたランチャ ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月19日(木)22時02分 投稿者 柴田孔明

打ち上げを終えたランチャが、同日報道陣に公開されました。
数日後には一般公開も再開されています。
(※通常は保護カバーがかけられています)


No.2034 :SS-520 4号機実験の打ち上げ後経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年1月19日(木)21時56分 投稿者 柴田孔明

2017年1月15日8時33分(JST)に、内之浦宇宙空間観測所のKS台地から超小型衛星「TRICOM-1」を搭載したロケットSS-520 4号機が打ち上げられましたが、第1段燃焼中にテレメータが受信できなくなったため2段目の点火を中止し、衛星を含む機体は海上に落下しました。
 この打ち上げ後経過記者会見が、同日午前11時30分過ぎから行われています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA宇宙科学研究所 副所長 (実験実施責任者代理) 稲谷 芳文
JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授(実験主任) 羽生 宏人
東京大学 工学系研究科 教授(アドバイザ・衛星代表) 中須賀 真一

・発表
『国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成29年1月15日(日)8時33分00秒、民生技術を用いてロケット・衛星の開発を行い、3キログラム程度の超小型衛星の打ち上げの実証を行うことを目的としたSS-520 4号機実験を内之浦宇宙空間観測所において実施致しました。
 ロケットの第1段の飛行は正常に行われましたが、飛行中に機体からのテレメータが受信できなくなったため、第2段モータの点火を中止致しました。なお、ロケットの追跡は正常に行われ、ロケットは内之浦南東海上の予定落下区域に落下したことを確認しました。
 この実験につきましては、関係機関及び関係の多くの皆様に多大なるご協力をいただきまして実験が実施できました。この場で感謝の意を表したいと思います。どうもありがとうございました』

・質疑応答
時事通信・第1段の飛行の後を、もう少し詳しくお聞きしたい。
羽生・ロケットは予定通り8時33分に点火し飛翔しました。20秒程度経ったところで情報が途絶えてしまいました。その後、いろいろ復旧の対処はしたが、必要な情報が得られない状態が続き、第2段点火コマンドを送出する時刻において、それを送出する条件が整わなかった。その結果、安全上の計画でもありましたが、第2段の点火を中止致しました。その後の飛行経路については地上から追跡し、そのまま海上に落下したことを確認した。

時事通信・第1段と第2段の分離はできたのか。
羽生・確からしい情報まで整理できていないが、恐らく正常に機能していたと思われます。

時事通信・ロケットが落下したのは第1段の落下予定海域か。
羽生・そうです。第2段にレーダーで追尾している搭載機器があり、それを使って飛翔経路を追跡しております。そのため予定通りの経路を通ったことを確認している。

時事通信・二つの物体が海上に落下したのか。
羽生・大きく分ければ第1段の塊と第2段の塊の部分が想定していた落下区域の中に落下。

時事通信・実験の成功失敗の判断はどうなるか。
羽生・これは超小型衛星を軌道投入することが目的で実験をしましたので失敗しました。

NHK・今回の実験失敗を、どう受け止めているか。
羽生・いろいろ挑戦的な技術開発にはなりましたけども、正常に第1段を点火させることが出来ましたので、正しい設計は出来ていたと理解しています。飛行中の状況につきましては、今後調査をして、その結果を踏まえてまた判断したい。

NHK・超小型衛星に巡っては色々なところから期待の声があったが、影響はどうか。
羽生・軌道投入に至れば一定の成果を得られたはずですが、それ以前の発射に至るところについて、安全の観点や技術的な観点などが整った後に発射しておりますので、その実行に至るまでのプロセスについては的確に進めてきたと考えていますので、それに必要な知見は蓄えられたと思っています。

共同通信・20秒で途絶えたのは第1段モーターの燃焼中か。
羽生・そうです。

共同通信・分離後、ラムライン制御までは行ったのか。
羽生・現在調査中です。調査後に報告したいと思います。

共同通信・この分離はシーケンスではどこを指すのか。
羽生・第1段の燃焼終了後にノーズコーン開頭というイベントがあり、そのあとに第1段の分離がある。ノーズコーン分離はした模様。それ以降は情報を整理できていない。確認次第ご報告したい。恐らく第1段の分離はしたが確定できていない。

共同通信・今回のミッションで、ラムライン制御部、継手の改修で何か問題かあったのか。
羽生・そこまで調査は進んでいないのでお答えできない。

鹿児島テレビ・今回は民生技術の活用がひとつのポイントだが、テレメータに関連する民生部品の使用はあったのか。
羽生・いま確認中です。

鹿児島テレビ・海に落ちた機体の回収は行うのか。
羽生・いまのところ計画は無い。

鹿児島テレビ・東京大学の衛星も積んで期待も大きかったと思うが、民生技術の活用という部分での課題は何か。
羽生・今回の実験結果を詳細に調べなければ何が原因かの特定はできない。現段階で民生部品を使ったことによる影響のコメントはできない。これまでの開発プロセスにおいて、非常に機能的であると確認できていて、従って我々はこれを活用することを狙ってきた。これについてネガティブには考えていません。

NVS・テレメトリ途絶は、電波が受信できなくなったのか、データが下りてこなくなったのか。
羽生・手元に必要なデータが来なかったと、今はご説明するしかない。その原因が電波が出ていたかどうかは今後調査した上で報告したいと思います。

NVS・テレメトリの送信装置は1段目についているのか、2段目なのか。
羽生・搭載機器は基本的に2段目についている。

NVS・このテレメトリの部分は今まで実績のあるSS-520の装置なのか。
羽生・はい、そうです。

不明・今回の実験があらためて行われることはあるか。
羽生・今後のことにつきましては、今回行った実験の結果をきちんと整理した上で考えることだろうと思う。現段階ではきちんと原因究明を行うことをまず考えたい。

不明・今回のことについて悲観的には捉えられていないのか。
羽生・大変残念だとは思うが、これまで開発を行ってきたこと自体が難しい開発だったと思うので、原因究明の結果を踏まえて、次の事を考えさせていただく。

日本経済新聞・テレメータに民生部品が使われたかわからないというのはどういうことか。
羽生・原因を特定するにあたり、内部の回路、機器の結合などいろいろ詳細に調べないと原因が特定できない。従っていまどの部品がという特定は言及できない。

日本経済新聞・前から使われていたものと同じなのか。
羽生・テレメータ機器の問題なのかどうか今特定されている訳ではありません。総合的に起こった事象をとらえ、それから遡って原因がどれであったかということになる。事実としては必要な情報が手元に無い状態になっていたことが問題なので、テレメータが故障したという話とは分けていかなければならない。

日本経済新聞・開発が難しかったとのことだが、どのような点が大変だったのか。
羽生・スタンダードではないものを使う訳なので、ひとつひとつ丁寧に適用の可能性あるいは問題点の洗い出しをやった。発射できる状態までもっていく事自体も色々工夫しなければならなかった。結果として軌道投入には至らなかったが、その手前まで行われている様々な実証試験、いわゆる地上試験の段階では正常に機能することを確認した上で実験に臨んでいる。飛行中に起きた事象につきましては、飛行中の僅かではありますが取得できたデータや、あるいは地上で追跡していたデータ、光学で追尾していたデータといったものを総合的に見て原因究明をしていくということで、まずは考えていきたい。

産経新聞・テレメータの受信が出来なくなった以外の問題の心当たりは無いということか。
羽生・まず事実として申し上げられる範囲。今後詳細に調べて、何処と何処ということを突き止めたい。

産経新聞・民生技術を用いて超小型衛星を大型ロケットに頼ること無く打ち上げられる役割の期待もあったが、そういった中での失敗だがどのように受け止めるのか。またそれを踏まえた上での今後の展望はどうか。
羽生・まずは原因をしっかり特定することが大事だと思っています。設計上は問題無いと思っていましたし、地上試験で行われる様々な条件でも問題無いとこを確認した上で実験を実行している。地上試験と飛行実験の差分が何であったか、あるいは搭載しているものに対して飛行環境がどのような影響を及ぼしたのかをしっかり調べなければ実験を実行した意義がないので、そういったことをしっかりやっていくことがまずは大事と考えている。間違っていけないのは民生部品を使ったことから駄目だったという話ではない事。必要な技術検証は行った上で実行しているので、その点については今のところですが、使える物はたくさんあると思っています。
中須賀・我々も民生品を使って衛星を作り始めました。13、14年くらい前。そこから民生品という世界が宇宙に使えるということを、ある種実証してきた。ただそれは衛星の世界で、ロケットの世界ではまだこれから。こういった新しい試みをする時には、もちろん失敗はいけないけれども、失敗を恐れては何もできない。それを恐れて実験をしなければ、何もわからないまま民生品は使えないねで終わってしまう。そういった状況でないところにチャレンジをしたのが今回の実験の大きな意義。従って、この失敗の原因を究明して、次に繋げてゆく、継続が非常に大事。それをやることによって、やがてロケットでも民生品が使える世界が築いていける。そういった世界を作る第一歩であると思っている。我々の超小型衛星が待っていますので、こういうロケットができることを期待したいと考えています。

産経新聞・原因とは別に、テレメトリ関連に民生部品が使われているか確認したい。
羽生・テレメトリの装置のみだけでなく広く適用を試みた。テレメータ関連は既存部品で、従来から実績のあるものを使ってきている。ここが原因の対象になるとは思っていない。

産経新聞・ロケットの規模は違うが、イプシロンロケットやH-IIA/Bに共通する部品や技術など何らかの影響や懸念が及ぶことは現時点であるか。
羽生・他機種への影響はありません。

産経新聞・それは根本的に技術が違うからか。
羽生・その通りです。

sorae.jp・2段のモーター点火は行わずテレメトリもとれていなかったが、正常に機能していた場合、ラムライン制御部分離まではタイマーによって自動で行われていると考えて良いか。
羽生・その通りです。

sorae.jp・SS-520が比較的久しぶりの打ち上げだが、テレメトリは従来品を使っているのか。枯渇部品対策で更新した部分はあるか。
羽生。ロケットモータについては多少の材料枯渇があったが、大きく変更しているところは無い。その他の部品も共通部分については特にありませんでした。

朝日新聞社・民生部品が原因で今回のような事が起きる可能性はあるか。
羽生・単一点の故障で今回の失敗を語れる状態ではない。手元にあるデータを総合的に見てその原因を特定しなければならない。民生部品が、とは特定できない。

朝日新聞社・特定できないにしても民生部品が原因となった可能性がなくはないと考えて良いか。
羽生・総合的に見た上で判断しなければならない。データが見えなかったことが、民生部品の何らかの問題と直結はできない。その他の情報も踏まえて、なぜ手元にデータが取得できなかったかを明らかにした上で、それがどうであったかを追求できるものと考えています。調べてみないと民生部品が原因となったかはわかりません。

朝日新聞社・海上何キロの地点に落下したか。
羽生・予定の海域で設定した範囲内。

NVS・他機種への影響は無いとのことだが、観測ロケットS-520には影響はあるか。
羽生・基本的に無いと思う。

NVS・成功していたら、このサイズの衛星でこの軌道の場合、1パスで地上とはどの程度の通信時間が確保できるものだったのか。
中須賀・いろいろです。短ければ5〜6分、長ければ20数分。軌道が高いので、高いところにあたった場合には20数分の通信ができる予定でした。

不明・いちど延期になったが、今日は気象条件の影響はあったか。
羽生・気象条件は非常に良好。想定内の気象条件。

不明・風の影響も無かったのか。
羽生・はい。

読売新聞・さきほどの必要なデータとは機体の圧力や温度のことか。
羽生・圧力や温度といった類のものもありますが、それ以外のものも飛行中のデータとして取得しようとしているものなので、データがとれていたおよそ20秒の間までをしっかり見る。

読売新聞・機体を回収しない理由は何か。
羽生・落下物の回収は、もともと計画していない。

読売新聞・データとは、どういったものか。
羽生・たとえば飛行中の姿勢がどうなっていたか、といったところになります。

毎日新聞・二段目以降は当初計画の飛行はできていないが、3段式に改修されたことによる影響はあるか。
羽生・今のところデータが見えなかったのと、3段目の直接的な影響は無かったと思われる。

毎日新聞・ロケットの構造を、2段式から3段式に変えたところに無理はなかったか。
羽生・もともとある一定の重さは搭載できる。特段無理はしていない。設計上は妥当。

フリー大塚・とれていた20秒間のテレメトリに前兆のようなものはあったか。
羽生・そこまでは判然としていない。今後調査して説明する。

フリー大塚・現時点で考えられるものはあるか。
羽生・やっている者として想像はしているがミスリードになる。今後しっかり調べて説明させていただく。

フリー大塚・現時点で機体側なのか地上側なのかについては切り分けはできているか。
羽生・地上側に問題は無かったと考えている。

NVS・今回は観測ロケットベースで超小型衛星を打ち上げるものだが、普段の相乗りの大きいロケットやISSからの放出と比較して加速などの条件が厳しい部分があると思うが、超小型衛星を作る意味。
中須賀・基本的にISSやピギーバックは自分で軌道を選べない、かつ打ち上げ時期も選べない。我々が小さなロケットに期待するのはそこなんです。自分で行きたい軌道に行ける、打ちたい時期に打てる。この二つの自由度が非常に大事。その観点でこれから超小型衛星の開発者の中から小さなロケットを利用する人が増えてくると思います。たとえばコンステレーションといって何十機という編隊を宇宙空間に組んだ場合に、特定の衛星が壊れたらそこに打たなければならない、そこに打たないと補充ができない。そういう観点でこれから出てくると思います。我々もそういう世界を作りたいと思っています。多少条件が厳しくてもこういうロケットは非常に大事であると考えています。

時事通信・今回、もともとSS-520があるのでこの大きさだったが、超小型衛星をある程度自由な軌道に打ち上げることを考えると、衛星側から見て理想のロケットはどのくらいのものになるか。
中須賀・多少制約あっても逆にこちら側が制約に合わせて作ります。それを使いたいと考えたとき、そのサイズで何ができるかを考える。超小型衛星はそういう方向でこれまで考えてきた。我々が得意なのは50 kgぐらいであれば、非常に色んなことができることがこれまでの成果でわかっているので、それぐらいの衛星が打ち上げられるロケットならいいなと思っているが、逆に今回のような3 kgぐらいのペイロードが打ち上げられるロケットがあれば、それに合わせてミッションと衛星を考えていくので、それはそれでいい。とにかくそういうものがあることがとても大事だと思っています。

時事通信・今回は他の大型ロケットには影響が無いとのことだが、違いは何か。
稲谷・今回の目的は民生品を使って将来の低コスト化の実証。基幹ロケットは宇宙に打ち上げる機体として信頼されるもので構成されている。今回の新しい民生部品はロケットの打ち上げ環境に耐えるか。信頼性を確保するための検証方法は、民生品でやられている方法で良いのか、あるいは今まで我々がやってきた宇宙の使用に耐えるという検証方法なのか、いろいろ試して今回飛ばしている。基幹ロケットとは違うことをいっぱいやっている。仮にそれらの部分に原因があれば影響は無い。宇宙で使えるかどうかの試験や解析や検証方法を実行してきたので、民生部品が使えるかどうかの知見にはなった。民生部品で我々はいろんな勉強をした。どうやって生かしていくか考えていきたい

時事通信・こういった結果に終わったことも知見のひとつか。
稲谷・そこまで申し上げない方が適当だろうと思います。もちろんうまくいくつもりでやっていた。何か至らないところがあったことで改善すべきところが指摘されたという意味でおっしゃった通り。何度も申し上げたが、今予断をもってどこが悪かったとは申し上げられない。

中須賀・厳しい環境で衛星が耐えられるかの試験は今回の我々の大事なテーマ。ある程度実証できたと思っているのは、今回落下中と思われるロケットから衛星が分離をしてテレメトリはとれています。

・そうすると衛星の分離はうまくいったのか。
中須賀・3段から衛星がうまく分離した。フェアリングがとれて3段からタイマーで分離する時刻が動き始めていて、衛星はそのタイマーに合わせてある時刻になったら分離するということになっていまして、それはちゃんと機能して衛星は分離しました。衛星から来たテレメトリを地上局で、ワンパケットですけど、落下中の本当に短い時間にとれていまして、衛星の状態は正常であることは確認されています。1段の振動といったものに耐えて、分離機構が機能して、かつロケットの非常に速い回転をある程度抑えた状態で、回転を止める装置が入ってますけど、それもちゃんと動いたということで、観測ロケットベースのロケットに衛星を載せてこれから本当に宇宙に行くという基礎的な実験はある程度できたかなと考えています。

・落下中の高度は。
中須賀・わかりません。ワンパケットだけとれました。パケットは何パケットかとれたが、ちゃんとデコードができて情報がわかったのはワンパケット。

・分離機構はどちら側にあるのか。
中須賀・分離機構はロケット衛星の両方で開発した。

・パケットがとれたのは大気中なのか宇宙なのか。
中須賀・そこまではわからない。衛星の落下中で回転も抑えられていることがわかった。

共同通信・ワンパケットは何秒くらいのものか。
中須賀・30秒に1回。衛星の起動後30秒に1発出て、それ以後30秒間隔で出てきてるパケットのひとつがとれた。衛星がロケットから分離して35秒後に起動して、その30秒後ということから分離後65秒後です。

共同通信・解析はこれからだと思うがパケットは正常だったか。
中須賀・全てが正常ではなく、いくつか正常なデータが入っていた。非常にまずい通信状況からの受信ですから、そんなに完璧なパケットにはならないですけど、中に入っているデータのいくつかは正常だったことを示していると思っていただければ。

共同通信・テレメトリがとれていた20秒から後はどう調べるのか。
羽生・搭載系データをベースとして、地上で追跡していたものからわかりうる情報を集めて、飛行中は特に異常が無かったということならば推進系ではないといった切り分けはできていく。それでどういった状況になっていたか、ある程度類推しなければならない所もある。まずいちばん上流にある必要なデータが手元に来なかったことを出発点に、いろいろ原因を推定して並べて絞り込んでいくという作業を速やかに行いたいと思います。

共同通信・地上からの追尾だと、速さとか傾きなどになるのか。
羽生・一部そうです。

共同通信・どのような機器が動いていたかは難しいのか。
羽生・20秒間という短い時間ではあるがロケットとして飛行しているのは事実。その状況を踏まえて、どういった環境下であったかということや、厳しい環境を抜けていく途中のところでもありますので、どういった機体の状態であったか、発射時の気象状況やそういったところも併せて理解を深めなければなかなか特定には至らないと思う。手元にあるデータを最大限に生かして特定したい。

鹿児島テレビ・民生品を使った超小型衛星打ち上げの趣旨は何かしら継続されていくと思うが、今後どのような気持ちで取り組んでいくか。
羽生・これまでこの部品を選んで設計して作って、その機能を地上試験で検証する過程をずっと携わってきたところから考えますと、適用範囲が広い可能性を感じまして、非常に重要な検討であると。本当でしたら軌道投入まで至って衛星を含めて機能をしっかり把握できていれば良かったが、発射することができる状態まで確認をしてできたことについては、一定の知見として得られていると思っていますので、今後原因を特定した上での話にはなりますけど、こういった方向性は失いたくないと思っています。

稲谷・宇宙用でないような部品でロケットの搭載機器を構成することを、部分的にではあるが今回行った。そのために必要な試験であるとか、信頼性の確保や手法であるとか、新しい試みをいろいろしてきた。その点についていろいろ勉強した。民生品を使うのが何で良いかというのは、そもそも民生品は他の目的のために一万個も百万個も作られる世界のもので、それを宇宙でどうやって使うかということを我々は勉強したと思っています。その方向はどのロケットどう適用するか、十分に信頼に足るという状態を作らなければならないことがある一方、できたとすればそのポテンシャルは大きいと考えている。我々が普段やっているような国がやるべきミッションと、民間が主導的にやるということと、世界で宇宙を巡る状況を変えていく動きはある。そういう中で我々の活動も役に立っていくということをご理解いただけるとすれば、続けていくことも支持されるかと。今回残念な結果になってしまったのは忸怩たる思いがありますが、大きな方向としては頑張っていくべきと考えている。

中須賀・大事なことは継続だと思います。まだ民生品が原因かはわからないが、もしそうだとしても宇宙品を使うとなったら今回の実験が何の意味もなくなる。経験を積み重ねながら何が使えて何が使えないか、民生品で使える物は必ずある。我々は衛星では証明してきた。そういったものを見つけて、続けていくことが大事。後戻りしないということ、これをやっちゃうと全然意味が無い。継続することをぜひ我々もやりたいし、JAXAさんにも期待したいと考えています。

日経新聞・衛星は正常に分離したとのことだが、もし2段に点火すれば一周したのではないか。その判断は今回の目的のために慎重になったのか。
羽生・もちろん全て慎重にやっているが、ひとつ大事な理由があり、これが安全です。ロケットは安全に実行することが大事。仮にデータが見えていないけど恐らく行っていたという安易なことでは、2段の点火信号を送ることはできない。我々としてもしっかり正しい判断をしたと思っている。データが見えないということは、飛行経路は正常だったと思うが、どっちを向いているかわからないような状態で点火信号を送った場合に大きな問題を引き起こす可能性がある。初日に打ち上げを行わなかった事と同様に、条件が整わなかった際には点火をしないというのは、ロケット実験においては大切な判断だと思っている。その点では間違ったことをしたとは思っていません。

日経新聞・民生品を使う上で他の市場と違って、宇宙産業特有の難しさや課題はどう認識しているか。
羽生・手元にあるものを、そのまますぐ利用するのは難しい。今回使ったSS-520という機体については、小さいが立派なロケット。従ってその搭載環境というものはロケット固有の環境になる。たとえば振動、加速度、あるいはある時間が経てば真空になるという事も含めて、しっかり事前の評価が大切になってくる。簡単に搭載できるものではないというのはそういった事から考えられるが、そういったことをこれまで試験を通じて、開発のプロセスの中で事前の評価をして適切に行ってきたので、もしかしてそれ以上のことが起きていたのか、そういったことを含めて理解した上でこういったものをちゃんと使っていくことになると思います。

NVS・晴れていたことで、光学観測は20秒以降も地上から撮れていたのか。
羽生・皆さんもご覧になっていたかもしれませんが、第1段の燃焼中は白い煙が帯を引くので、そういったところを含めて追跡はしやすかった。たまたま雲もあまり無かったので30秒までは追跡が出来ていて、燃焼終了後も微かに機体の様子が見えているようなので、また追って確認したいと思う。少なくとも第1段燃焼終了の30秒までは確認できると思います。

NVS・今後の分析に必要となるのか。
羽生・この第1段部分はS-520と共通のもので、少なくとも何も問題が無かったと言えるのではないかと思っています。

不明・観測ロケットのS-310、S-520はかなりの回数を打っている。SS-520は1998年に初号機が内之浦から、2号機はヨーロッパで上がって、3号機はまだ。今回で3機目。回数が少ないSS-520で衛星を打ち上げるのは確実性、信頼性ではどうか。
羽生・もともとSS-520という機体部分は設計変更しないで使っている。S-520よりは回数は少ないが、設計の基本となる部分について特段特殊なものは使っていない。観測ロケットのベースとなる機体部分で特異な物があるかというと、基盤となっているので問題無いと思っている。新しく開発した3段部分などそういったところは、うまく飛んでいればどういった状況だったかというのは、色々評価できたのではないかと思う。基盤部分は問題無いと思います。
(※JAXA/ISASのHPによると、SS-520の初号機は1998年2月5日に内之浦宇宙空間観測所から、2号機は2000年12月4日ノルウェーのスバルバードロケット実験場から打ち上げている)

不明・テレメータがとれないというのはあまり無いことだと思うが、民生品を一部で使ったことの関連はどうか。
羽生・そこを直接紐付けて説明することが、今手元にある情報では難しい。あらゆる視点で今後手元の情報から解析していきたい。

産経新聞・1段と2段以上が分かれて海上に落下したということと、3段とTRICOM-1はタイマーで分離したということなので、3つのものが落下したことになるのか。
羽生・そこを明確に申し上げなかったのは今手元に明らかになった情報が無い。傍証として衛星から電波がとれているとからすると、分離を行う信号とかそういったものが正常に出力されていないとそういった事は起きないので、恐らくその部分は正常に機能したのではないかと思うのですけど、まだそこは我々としては正しい情報に基づいて、そうであった事実としてご説明できれば良いのだろうと思っています。

産経新聞・1段と2段は分離したが、3段とTRICOM-1は分離したと見られる、という言い方ぐらいなのか。
羽生・衛星の機能が発現するのは、分離されないとそういうことが起きない設計になっているので、そのデータが取得されているのであれば分離機構は機能したと類推は可能だと思っています。

産経新聞・今回は大型ロケットと規模や位置づけは異なるが、JAXAの打ち上げ失敗はH-IIAロケット6号機以来となるか。
羽生・恐らくそうだが調べて説明します。

朝日新聞社・高度は何キロまで行ったのか。
羽生・推定で190 kmに到達していた模様。

朝日新聞社・データがとれていた20秒間は正常だったのか。
羽生・はい、正常でした。

sorae.jp・衛星からテレメータがとれていたということと、分離から35秒後に衛星が起動して、その30秒後にデータが出る予定ということだが、フライトシーケンスでは450秒で衛星分離ということになっているので、450秒+35秒+30秒の時刻に受信されたのか。
中須賀・だいたいその辺りです。

sorae.jp・という事は450秒の段階ではまだ海面に落下途中だったということか。
中須賀・そうだと思います。

NHK・原因究明に向けての態勢はどうなるか。
稲谷・態勢としてはJAXAの中に宇宙科学研究所として態勢を組む。実験をする側、評価する側という形で原因究明の態勢を作っていくだろうと思っております。その辺についてはまだこれから決めることである。態勢が決まったらご案内できると思います。

NHK・実験チーム以外の人員も入って新たに態勢の組むのか。
稲谷・実行する側とそれを評価する側という形でチームを作っていくと思います。

日経・テレメータ途絶はどのような状況だったか。突然全部入らなくなったのか、それとも一部が残ったのか。また一瞬で無くなったのか、だんだん微弱になったのか。
羽生・私の感覚でよろしければ割と突発的に起こった印象だった。来るべきデータがほぼ全部が見えなくなった。祈るような思いではありましたが、復帰しなかったということで、それ以降はそういう状況になっている。

以上です。