宇宙作家クラブ
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No.2112 :打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月16日(月)10時33分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット36号機の打ち上げ。カウントゼロ直後付近。竹崎展望台より撮影。


No.2111 :みちびき4号機分離時のプレスルーム ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月16日(月)10時25分 投稿者 柴田孔明

無事に分離され、拍手する関係者。


No.2110 :H-IIAロケット36号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月16日(月)10時24分 投稿者 柴田孔明

 準天頂衛星「みちびき4号機」を搭載し、2017年10月10日7時1分37秒(JST)に打ち上げられたH-IIAロケット36号機の打ち上げ経過記者会見が、同日の午前中に行われました。

・登壇者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局長 田 修三
文部科学省 大臣官房審議官(研究開発局担当) 大山 真未
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 理事長 奥村 直樹
三菱重工業株式会社 執行役員 宇宙・防衛セグメント長 阿部 直彦

・側面列席者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官 滝澤 豪
文部科学省 研究開発局 宇宙開発利用課長 谷 広太

・打ち上げ結果報告(阿部)
 三菱重工業株式会社および宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから平成29年10月10日7時1分37秒に「みちびき4号機」を搭載したH-IIAロケット36号機を打ち上げました。
 ロケットは計画通り飛行し、打ち上げ後約28分20秒に「みちびき4号機」を正常に分離した事を確認しました。
 ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、北の風2.4 m/s、気温24.2度Cでした。
 「みちびき4号機」の軌道上での初期機能確認を無事終了し、所期の目的を成功裏に完遂されることを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIAは通算36機中35機の成功、成功率は97.2%になりました。H-IIBと合わせると通算42機中41機の成功、成功率97.6%です。またH-IIA/H-II/B、36機連続の打ち上げ成功となりました。6月1日以降3機続けて「みちびき」の打ち上げとなりましたが、全ての衛星を無事に所定の軌道に投入することが出来、大変安堵しています。このあとも短いインターバルで打ち上げが続きます。引き続き皆様に安定的な打ち上げを提供できるよう、さらに心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注して参ります。
 今回の打ち上げに際し、多くの方々にご協力ご支援頂きました。あらためて関係者の皆様に心よりお礼を申し上げるとともに、引き続きご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

・打ち上げ結果報告(奥山)
 ただいま三菱重工様から「みちびき4号機」の打ち上げ成功に係るご報告がございましたけれども、私どもJAXAといたしましても所定の業務でございます、打ち上げ安全管理業務、これを完遂できました。ご報告させていただきます。
 今回の「みちびき4号機」の打ち上げ成功により、内閣府殿の方で予定されております4機体制が完成したことになります。今年度そのうちの3機を打ち上げる事ができました。私どもの任務としての打ち上げ管理業務も滞りなく終了することが出来ました。これらはひとえに関係する皆様及び関係する機関及び地元の自治体等多くの方々のご支援の賜物と考えており、あらためてこの場を借りて厚く御礼申し上げたいと思っております。
 なお測位衛星技術に関しましてJAXAでも基盤技術の開発を行っており、こういった事を通してでも測位衛星技術に関する政策の進展に今後とも貢献できたらと思っております。引き続きご理解ご支援をいただければと思っております。

・登壇者挨拶(田)
 内閣府特命担当大臣 宇宙政策担当 松山政司大臣の談話について読み上げさせていただきます。
 『本日、我が国のH-IIAロケット36号機により、準天頂衛星システムの「みちびき4号機」の打ち上げが成功しました。現在、衛星は所定の軌道に向けて順調に飛行しております。
 今回の「4号機」を含め、今年度に予定されておりました3機全ての打ち上げが無事に成功いたしました。改めて関係者の御努力に心より感謝申し上げます。
 これを受けまして、来年度からの準天頂衛星システムの4機体制によるサービスを開始し、各種測位サービスを多くの方が円滑に利用できるよう、より一層、関係者と連携してまいります。
 さらに宇宙政策を担当する内閣府特命担当大臣として、準天頂衛星システムを含む宇宙利用の拡大に向けて、引き続き宇宙基本計画を推進してまいります。』

・登壇者挨拶(大山)
 林文部科学大臣の談話にございますように、今回の打ち上げ成功によりましてH-IIA/Bロケットおよびイプシロンロケットの基幹ロケットと致しましては38機連続の成功となったことは、我が国が有するロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、大変喜ばしく思っております。打ち上げに際しましてご尽力ご支援いただきました関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また今後も「みちびき4号機」が順調に飛行し、その運用が予定通り行われますことを期待しております。文部科学省といたしましては、今後も基幹ロケットのさらなる安全性信頼性の向上に取り組むとともに、次期基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。

※配付資料より・文部科学大臣談話 
 『本日、H−IIAロケット36号機の打ち上げに成功し、搭載していた「みちびき4号機」が、所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 今回の打ち上げ成功により、我が国の基幹ロケットとしては38機連続の成功となり、着実に信頼性を向上させていることを喜ばしく思っております。
 文部科学省としては、基幹ロケットの安全性・信頼性の向上に引き続き取り組み、今後の打ち上げ成功に向け万全を期していくとともに、次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発にも着実に取り組んでまいります。平成29年10月10日 文部科学大臣 林 芳正』

 
・質疑応答
朝日新聞・今回の打ち上げでみちびきの4機体制が出来たことで、今後測位の向上でどのような影響があって、どのように利便性が向上していくのか。
田・今回4機目が上がりました。上がった衛星はこのあと2ヶ月程かけてチューニングを要するなど、4機としてのサービス開始には来年度ということでまだ時間を要する訳ですが、その間、事務方としては安定的な信号が確実に出るという体制を築いていかなければならないです。一方、サービスが開始された時に、こんな使い方ならば皆様の利便性に役立つという事で、たとえば農業の無人トラクターの実証なども進んでいますし、準天頂衛星からの信号を用いて簡単に三次元の地図を作ることも民間の株式会社で始まっている。これが進むと自動車の自動走行もレベルアップにも繋がってゆく。この準天頂衛星はGPS補完、さらにはセンチメートル級の精密な測位信号など使い勝手を考えた設計をしておりますので、ここからのフェーズはいかに成功事例を増やし衛星の利便性を使っていただく方にシェアできるように進めていきたい。

産経新聞・H-IIA/Bあわせて36機連続成功ですが、H-IIAの30機連続成功で節目だが、どう受け止めているか。
阿部・H-IIまではここまで打ち上げを続けたことがなかった。やっと安定的に打ち上げられるようになりつつある。とは言いながらも前回のような事もありますし、気を緩めずに1機1機打ち上げていくのかなと思っています。海外を含めお客様にも連続成功とオンタイム打ち上げ、いろんな意味での信頼性のPRを有効に活用していきたい。

NHK・打ち上げ成功についての所感と、四機体制ということで、海外オセアニアにも経済効果が大きい印象だが、みちびきの意義と、どのように社会の可能性が広がってゆくのか。
田・今回4号機の打ち上げが成功しまして、今衛星が出来上がり無事に打ち上がって、メディアの方も好意的に取り上げてくれていると思いますけども、8月12日に延期したとき、林大臣が安全を確認して打ち上げる勇気に感心したとおっしゃっておりましたけども、これは本当に衛星を作る方をずっと横で見ていますと、いろんなバグで出て来て後戻りして、物凄く不眠不休でスケジュールに合わせるという努力がありました。ロケットもちゃんと打ち上げられて当たり前と思われているかもしれませんが、私のポストで裏方の方と一緒に作業をやっていますと、関係者の皆さんがいろんな努力をしてくださって、今年は6月8月10月と3回連続で測位衛星を打ち上げるということに、種子島の関係者も含めて協力していただきまして、この衛星は4つで1つのシステムですからそうなるのですが、本当に大変な努力をされていると思っていまして感謝しております。
準天頂衛星の普及の意義ですが、これは8月にもメデイアの方から聞かれましたが、測位衛星は決して日本だけが打ち上げているのではない訳で、GPS・グロナス・ガリレオとかで、それを受けるレシーバーの方はマルチデバイスで受けるという面があり、アプリケーションは特定の信号と親和性が高くなっていると、こういうことになっていまして、そういうマルチに使える中ではちゃんと準天頂衛星の信号も組み込まれて使っていただきたいと思っていますし、幸いこの準天頂衛星の軌道は仰角40度くらいの範囲で信号が安定して届くところをカバーすれば、オーストラリア・ASEAN・極東をちょうどカバーする訳で、こういうところで日本の正確な測位信号が提供されていく、それを使う方式もJAXAの開発した方式であれば、たとえば電子基準点が少なくとも現地で精密な自動走行もできる、こういうシステムを開発している。ぜひ準天頂衛星からの信号を、日本での利用も沢山使っていく努力をしていく訳ですけども、当然アジアの方にも使っていただけるような、そんな将来を目指していきたいと思っています。

NHK・日本の技術を売り込んでいくことでの経済効果とか影響も期待できると認識して良いか。
田・期待して結構だと思っています。現に建設機械や農業機械などでは、まだ会社の方々の検討段階ではありますけども、当然盛り込んでいらっしゃると伝え聞いております。

不明・アジアで展開されていくとなると、ライバルとして例えば中国も積極的にやっているが、その辺はどう考えているか。7機体制になることも踏まえてどの辺りが日本の強みになるのか。
田・まず中国が注目を受ける訳ですが、準天頂衛星の現時点でのアドバンテージはセンチメートルレベルで正確な信号を出せるということ。例えば草と草の幅40センチのところに30センチ幅のタイヤの農機は5センチずれると作物を潰してしまう、そんな所でも日本の農業機械は準天頂衛星を使って無人で正確に農作業ができる。そこが正確である故に達成できるゾーンというのが準天頂衛星の場合はありますから、メーカーの方もそういった特質をうまく使って、そして利用していただくようにやっていくのだと思います。一方、測位信号はライバルではなくマルチで、例えば多くの携帯もいろんな測位信号を使ってより精度を上げているという試みもされていますので、私どもとしても他がというよりも準天頂衛星のメリットをアジアの方々にも使っていただけるような、そんな姿を目指していきたい。

南日本放送・今回で年間最多の5機目の打ち上げとなったが、ロケット側と射場側の受け止めはどうか。
阿部・5機目で、実態を言うと私どもスタッフも種子島にずっと来っぱなしという状況にあるのですが、作業という意味で見ると、定期的に打ち上げをしているというのは、熟練というのかそういう意味ではポジティブの方に機能していると思っています。従って定期的に打ち上げがなされるということは安定的な打ち上げを実施する意味でも重要な要素のひとつになると理解しています。
奥村・これまでに無い経験の機数を打ち上げていく中で、さきほど申し上げました打ち上げ安全管理業務を行う上で、どこの時間短縮が可能なのか、ひとつひとつ積み上げて、安全確認をしながら打ち上げ短縮に備えてゆく、こういう努力をしてきている訳で、一見大変地味な作業ですけども、関係する皆さんとの合意の上で積み上げてゆく作業ですので、こういったことが結果的に将来の種子島からの打ち上げ競争力に貢献していけるのではないかと一方では思っているところであります。

産経新聞・農機具でセンチメートル級のサービスということだが、一方で受信機が弁当箱くらいと大型で値段が高い。価格と大きさの面で普及するにはハードルが高いなど問題があると思うが、そのあたりの認識と展望は。
田・おかげさまでそういった心配は、計画の当初とだいぶ違っていまして、やはり技術は素晴らしい。いま、センチメートルのレシーバーは掌に乗るようなサイズまで小さくなっています。値段も自動車に普及しようということで、自動車部品に組み込むときのターゲットプライスは一つで千円以下ということで、民間ビジネスが動いています。ただこれは正式な値段ですというものではなく、ターゲットとして伝え聞くところです。レシーバーはどんどんアンテナ技術で小さくなっていますし、コストも安くなってきている。先ほど例としてあげた建設機械とかトラクターなどでは、機械のサイズや値段からして全然問題にならないということで、最初に入ってきます。最後はきっとスマートフォンに載るかという事で課題になる訳ですが、今の時点ではセンチメートル級のレシーバーはスマートフォンには乗らない。これは将来の技術に期待したい。

不明・海外展開について、センチメートル級のサービスにはCLASとMADOCAがあり、CLASは電子基準点などの整備も必要だと思うが、海外展開で衛星以外のインフラの整備についてどうお考えでしょうか。
田・電子基準点のことをお尋ねされたのだと思いますが、私どもは国土地理院とも連携しておりまして、たとえば国土地理院からアジア各国に技術専門家が派遣されています。彼等は現地での測位システムの技術指導をしている訳ですけど、その中で電子基準点の普及とか、電子基準点が普及した場合に日本の信号も受信できるようなマルチタイプの推奨とかを進めております。
(※CLAS:Centimeter Level Augmentation Service:センチメータ級測位補強サービス)
(※MADOCA:Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)

不明・CLASで進めるのか、MADOCAで進めるのか。
田・電子基準点が普及していないところについては当然最初はMADOCAを使うことになると思います。一方、MADOCAは起動に時間がかかる。もちろんどんどん短くしているが、そういう癖もある。先々のエリアの特性を考えながら絞っていけばいいと考えています。


打ち上げ経過記者会見・第二部

・登壇者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官 準天頂衛星システム責任者 滝澤 豪
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門鹿児島宇宙センター長 打上安全管理責任者 藤田 猛
三菱重工株式会社 執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント 技師長 打上執行責任者 二村 幸基

・側面列席者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 企画官 松本 暁洋
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐 川津 泰彦


・質疑応答
NHK・海外展開の話で、数字として経済効果は。
滝澤・皆様にお約束できる数値は手元に持っていないが、自動運転や農業機械などいろんな分野で企業の皆様が海外展開も含めて事業展開のご検討をしていただいている。9月15日からCLASの試験信号も出させていただいておりますので、今まさしく民間で海外展開も含めた事業についての検討をしていただいておりますし、いろんな機会を通じてそういった活動をぜひサポートさせていただきたいと思っております。

共同通信・4機体制のサービス開始は来年度のいつか。4月1日なのか、来年度のどこかのタイミングなのか。
滝澤・来年度中のどこかのタイミングです。初めてのシステムを構築するので、いま1機ずつ上がっているが、4号機の軌道上のチェック等が終わった後に、総合システムの検証などもやってまいります。そういうのが一通り終わって、きちんとした信号を皆様にお渡しできる時点で、しっかりとサービスの開始をさせていただきたいと思っています。

朝日新聞・7機体制のための追加の3機は、準天頂型(の軌道)となるのか。
滝澤・7機をどういう構成にするかまだ決まっていない。(今の)4機も1機は静止軌道に上がっていまして、3機は準天頂軌道に上がっています。これをどういう風にするといちばんいいのか、これから検討しようと思っています。

産経新聞・みちびきを使った色々な実証実験の中で、沖縄でバスの実験が11月に行われると聞いているが、これはどういったものか。意義は。
滝澤・沖縄でバスの自動運転を行うもの。バスはお客を乗せるために側に寄って止まるという作業が発生する。そこにセンチメートル級の準天頂衛星の信号を使って実証するのがございます。日にちは申し上げられないが農業機械や建設機械の実証の機会がございますので、皆様に取材の案内ができたらいいなと思っております。
 (※当初は石垣島と説明があったが、後に沖縄本島と訂正があった)

NHK・機体移動作業で2時間の遅れがあった。アンビリカルケーブルのワイヤが原因と聞いているが、至った原因とこれは珍しいのか、今後どう生かすのか。
二村・機体移動が17時の予定が19時になった原因の話で、最終的にテンションをかけなければならないワイヤにテンションがかけきれない事態が発生しまして、必要な部品を予備品という良好な部品に取り替える作業を行っています。そのための作業の場所を確保する床のセットですとか、終わったあとの撤収とか、そういった諸々の作業を合計して約2時間で収めた。
 ロケットの横にぶら下がっているものをアンビリカルと呼んでおりますけども、今回セットできなかったのは2段の電気系のアンビリカルで、2段の機体に対して電力を供給したり、あるいは計測データを機体から取り出したりするための電気ケーブルがございますけども、これを機体にコネクタで結合するが、打ち上げの時にこれを引き抜いて機体から遠ざけておかなければならない。今回テンションを張れなかったものというのは、最終的に機体が飛んだあと、そのコネクタ部分を機体から離して出来るだけ早い時間で機体から遠ざけるために引っ張るためのコードがございまして、それに一定のテンションを機体移動の前に最終準備としてかける訳ですけども、このテンションをかけることができなかったというのが最初の不適合でございます。原因の追及よりも既に機体移動の時間が迫っておりましたので、良品を予備品という形で持っておりますので、それに交換すると言う事で、最終的にテンションがちゃんとかけられると確認した上で機体を移動したということでございます。もともとのテンションがかけられなかった部分につきましては、正直初めての経験でございまして、原因については良くなかったものを手元に残しておりますので、それを使って検査データも含めて引き続き確認をしなければならないという事でありまして、本日はまず打ち上げに向けての準備にあたって良品と交換することを優先したという事であります。

日刊工業新聞・海外展開するにあたって日本と異なる課題はあるか。
滝澤・CLASは電子基準点が基準になっているので、そういったインフラがあるか無いかが非常に大きな違い。他方で、JAXAで開発しているMADOCAは収束に時間がかかるが、これがクリアできれば海外のどこでも使っていけるので、準天頂が届くASEAN・オセアニア・アジアについては信号を使っていただける。こういったいろんな状況を踏まえて、各社の皆様方がサービスの展開についていろんな検討をいただいているのではないかと思っております。

ニッポン放送・成功率97.2%で高い数字になったが、前回延期になったときに部品の調達も含めて現場の状態がかつかつであったのではないかと伺えるが、そういった現場の人手不足などの懸念などはあるか。
二村・打ち上げの機数を考えてみますと、ここ1〜2年はコンスタントな機数を打ち上げてやりますけども、年によっては非常に少なくなるということで当然山と谷がございます。我々としては山の状態のリソースを抱える訳にはいかないというのが民間企業の常でありますので、そういった事をできるだけ平滑化したいという事で、例えば今年のように均等な形で打ち上げていくのは比較的現場を穏やかにまとめるには寄与できるけども、これが山と谷が激しくなってまいりますと、リソースの補充とかに非常に工夫が必要になってまいります。それは人の件もそうですし、もちろん部材といったものも全てそうなんですけども、あくまで我々としては長期的に打ち上げの機数を安定化させることで生産のレートそのものを安定化させる、ひいてはそれがリソースを固定し作業そのものも安定化させることですので、まずはそういった事を我々としては努力していきたいと思っています。ただ現場の方で混乱があったかといいますと、決してそういうことではございませんで、若干生産の物によってはどうしても必要な時期に間に合わないものも一部出たりはいたします。それは機数が多くなったからとか少ないからとか、来ないからという問題というよりは、手配の時期あるいは部材を加工したりするパートナーメーカーさんの生産現場の時期の話ですとか複雑な事情がありますので、当然我々は生産工程の中に少なからず余裕を見込みながら吸収できるように工夫はしておりますけども、一部それでは吸収しきれない部分が出てくる。そういった時に作業現場に製造順番を変更させるなどの負担をかけていることは事実でありますので、そういった製造の順番を変えるだとか負担をかけないように計画を進めるとともに、万が一そういった事がどうしても必要になった場合については、いわゆる仕組みとして作業者に負担をかけない工夫を引き続きやっていかなければならないと思っております。

日経新聞・整備の過程での反省点、H3では打ち上げ間隔が狭まるという話だが、それに繋がる反省点や課題など。
二村・今日この時点では反省がこみ上げるというよりほっとしているのが正直なところでございます。できれば明日以降に反省させていただきたいと思っておりますということでご容赦ください。

NVS・今の衛星の状況はどうなっているか。
松本・さきほど太陽電池パドルを無事に展開し、予想通りの電力を得ている。正常に飛行しております。

共同通信社・神戸製鋼のデータ改ざんの問題で、今回の機体にも神戸製鋼のアルミが使われたと思うが、具体的にどの部分か。
二村・具体的な部分については今手元に無いが、一部の部品に使っていることは事実でございます。詳細についてはこの場では差し控えさせていただきたい。

NHK・センチメートル級の誤差はみちびきを通じて補完情報を送るということだと思うが、海外の衛星でこういったサービスはあるのか。
滝澤・まだ無い。ガリレオ衛星で検討したことはお聞きしたことはあるが、無料でセンチメートル級の精度で我々と同じ事をする話は聞かない。

産経新聞・前回のヘリウム(タンク)の件で、タンクの調達が遅れて作業手順を変更したとのことだが、ロケットの打ち上げ間隔が輻輳する中でやりくりで作業手順を変更するようなことがあったという事だが、ヘリウムタンクの調達が遅れたのは打ち上げ頻度が上がった故なのか。
二村・複数の要素があるのですが、ひとつは電子ビーム溶接のような事をやっておりまして、そういった装置の故障といった事も要因になったりします。別のマシンを使って加工しなければならいなとすると、そちら側のマシンに加工条件を設定し直さなければならないとかオーパヘッドがかかる分遅れたりすることは要素のひとつとしてございます。ただそういった事も踏まえながら最終的に下流工程に対して遅れを生じないように今後していかなければならないと思っています。

南日本新聞・7機体制の具体的運用が決まっていないとのことだが、目的として4機体制のどの辺りを強化するのか。
滝澤・測位衛星は4機見えないと自分の位置が決められない。X軸、Y軸、Z軸に時間で4機が必要ですが、7機なら日本の上で常に4機が見える状況が作れる。技術的に持続測位が可能になると申し上げているが、これがいちばん大きなメリットと思っています。

南日本新聞・7機整えばGPSの補完をしなくても可能ということか。
滝澤・そうです。もちろんGPSの補強と補完が準天頂衛星の目的なので、それを引き続きしっかりやっていくが、持続測位の観点からは7機あれば可能になる。

以上です。


No.2109 :H-IIAロケット36号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月10日(火)10時13分 投稿者 柴田孔明

2017年10月10日7時01分37秒(JST)に準天頂衛星「みちびき4号機」を搭載したH-IIAロケット36号機が打ち上げられました。


No.2108 :X-60分
投稿日 2017年10月10日(火)06時02分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット36号機の第3回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。最終(X-60分)作業開始可となりました。

No.2107 :H-IIAロケットの機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月9日(月)20時05分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット36号機の機体移動。
当初予定より2時間遅れの19時から行われました。


No.2106 :機体移動の遅れの原因
投稿日 2017年10月9日(月)19時59分 投稿者 柴田孔明

 機体移動が遅れた原因ですが、打ち上げの際にアンビリカルケーブルを引き込むワイヤの張力調整に時間がかかったとのことです。

No.2105 :機体移動の時間変更
投稿日 2017年10月9日(月)17時37分 投稿者 柴田孔明

H-IIAロケット36号機の機体移動は2017年10月9日17時(JST)の予定でしたが、準備に時間を要したため同日19時(JST)に変更されました。

No.2104 :H-IIAロケット36号機打ち上げ前プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月8日(日)21時47分 投稿者 柴田孔明

 2017年10月8日午後より、種子島宇宙センター竹崎展望台記者会見室にて、H-IIAロケット36号機の打ち上げ前ブリーフィングが行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 企画官 衛星開発責任者 松本 暁洋
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニット 技術領域主幹 西平 慎太郎
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 平嶋 秀俊

・打ち上げ日時について
 打ち上げ日時:2017年10月10日07時01分37秒(JST)
 予備期間:2017年10月11日〜2017年11月30日
 (※予備期間の打ち上げ予定時刻は、打ち上げ日毎に設定します)

・打ち上げ準備状況
 ・36号機(コア機体)は飛島工場を9月6日に出荷後、射場作業を開始。
 ・カウントダウンリハーサル(9月28日)
 ※関係要員に対し、打ち上げ当日の対応手順を周知徹底するために、打ち上げ時の作業を模擬。
 ・機能点検(9月18日〜9月30日)
 ※機体の各機器が正常に動作することを確認。
 ・みちびき4号機(準天頂衛星)とロケット機体の結合作業(9月25日〜10月2日)
 ・ロケット機体の最終的な機能点検(10月3日)

・天候について
 氷結層も含め問題無い見込み。

・今後の予定
 ・10月9日13時30分頃、機体移動の可否判断。
 ・同日17時00分頃、機体移動。
 ・同日21時00分頃、ターミナルカウントダウン作業開始判断。
 ・同日21時30分頃〜、ターミナルカウントダウン。
 ・10月10日06時00分頃、X-60分作業開始判断。可ならX-60分からターミナルカウントダウン。
 ・同日06時50分頃、X10分作業開始判断。可ならX-10からターミナルカウントダウン。
 ・同日07時01分37秒(日本標準時)リフトオフ
 ・打ち上げ後28分21秒(高度273 km)、衛星分離予定。

・みちびき4号機の打ち上げ後の予定
 打ち上げ後約0.5ヶ月:準天頂軌道到達
 同約1.5ヶ月:衛星搭載機器機能確認完了
 同約2ヶ月:QZSS End to End確認
 同約3ヶ月:測位チューニング
 同約3ヶ月後:測位試験サービス開始
 ※みちびき4号機は同2号機と同じ仕様。

・質疑応答
鹿児島テレビ・準天頂衛星の連続打ち上げのとりあえず最後だが、打ち上げに向けた意気込みをお聞きしたい。
平嶋・特にいつもと変わらないが、「みちびき」は4つ上げてシステムが成り立つので、今まで以上に慎重に確実丁寧に対応したいと考えています。

産経新聞・今号機に新たな改良や変更点などはあるか。また不具合はあったか。
平嶋・今号機は前々号機と全く同じ202型に4Sフェアリングで、特段の行程変更と不適合は無く順調に進んでおります。

産経新聞・前号機は気蓄器の不具合で延期になったが、再発防止などの対策はできているか。
平嶋・今号機は前号機を踏まえまして、そのような不適合が再発をしないことを確実に確認済みであります。

朝日新聞・10日だが北朝鮮によるミサイル発射の懸念は考えているか。
西平・懸念というのは我々からはお答えしにくいが、万が一そういった事が起こった場合には、安全確保が最優先だと思っていますので、まず安全確保の行動をとった上で状況に応じて適切に判断していきたいと思います。

南日本放送・前回の不適合を受けて今回の準備作業を行う中で、気持ちの変化や打ち上げに臨む姿勢の変化はあったか。
平嶋・特段変化はございませんが、中止になったことを踏まえ、万全を期すということで、意識高く準備作業を進めて今日に至っているという認識であります。

NVS・Jアラートの対象が九州でなければ予定通りなのか、それとも発報された場合は場所にかかわらず何らかの対応するのか。
西平・どのタイミングで発報されるかによると思っております。どのタイミングでもまず安全確保が最優先と考えています。射場及び周辺地域の安全確保を確認した上で、その次の判断は適切に、と言うことになると思います。

NHK・前回の不適合を受けて今回の改善策は具体的にどのようなものが行われたか。
平嶋・前回の打ち上げが終わってから、(前号機の延期から)再打ち上げに臨むまでに実施した内容を今号機に適用して実施しまして、問題が無いことを確認しています。

産経新聞・4号機が上がると、いよいよ本格運用が始まる。どの号機も大事だと思うが、仕上げとなる今回の所感などをお聞きしたい。
松本・衛星の場合は打ち上げられて軌道上に行ってから準備作業が始まる。サービス開始が来年度ということで、まだこれからだと思っています。測位衛星のミッションはスマホ等の測位デバイスを持っている全ての人が衛星の信号を直接使うというのが最大の特徴だと思いますので、責任感をしっかり持って、これからの準備に向けて確実に進めてまいりたいと考えています。

産経新聞・H-IIAは7号機以降で30機連続となり、節目という意味で大きいと思うが、連続成功に向けての意気込みをお聞きしたい。
平嶋・30号機連続だが、あまり代わり映えはしない。今まで決められたことを確実にこなして、手抜きをしない事をモットーとしている。人間は手抜きをしたがるので、組織力でカバーして、抜けが無いように丁寧に仕上げてゆくことで、成功に繋げたいと考えています。

NHK・打ち上げの予備時間はあるか。
平嶋・機体移動から待避するまで1時間、充填完了から3時間の合計4時間の余裕時間がございます。
(※補足:10月10日のウインドウは7時1分37秒の1つのみで、打ち上げ時間の幅はありません)

以上です。


No.2103 :公開された「つばめ」(SLATS) ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月7日(土)02時18分 投稿者 柴田孔明

公開された「つばめ」(SLATS)※反対側
先端が原子状酸素バンパ
(※イオンエンジンは反対側のため見えませんでした)


No.2102 :公開された「つばめ」(SLATS) ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月7日(土)02時16分 投稿者 柴田孔明

公開された「つばめ」(SLATS)


No.2101 :超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の報道向け機体公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年10月7日(土)02時15分 投稿者 柴田孔明

 2017年10月6日午後より、種子島宇宙センターにて超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の報道向け機体公開と概要説明が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
JAXA SLATS プロジェクトマネージャ 佐々木 雅範
三菱電機(株) 鎌倉製作所 衛星システム部長 岡本 和久

・概要説明(JAXA 佐々木)
 SLATS=Super Low Altitude Test Satellite
 高度200 km〜300 kmの超低高度を飛ぶ衛星。
 [1]軌道高度と観測センサ性能の関係(軌道高度を下げた場合)
  1.光学・熱赤外観測における地上分解能は高度に比例して良くなる。
  2.SAR観測におけるレーダの送信電力は高度の3乗に比例して小さくできる。
  3.LIDAR観測におけるレーザの送信電力は高度の2乗に比例して小さくできる。
 [2]軌道高度を下げると、センサのサイズ・電力はそのままで性能向上が可能。
  1.光学センサの分解能向上。
  2.アクティブセンサ(SAR、LIDAR等)の信号品質(信号対雑音比)の向上。
 [3]同じセンサなら、小型・省電力化が可能→衛星の小型・低コスト化

 ただし大気密度が約1000倍に増加し、大気抵抗も約1000倍に増加する。
 →大気抵抗による高度低下をイオンエンジンで補償。

 SLATSは超低高度軌道からの地球観測を実証することで、地球観測における新たな利用の可能性を拓くことを目的とし、下記のミッションを実施する。
 1.超低高度衛星技術の実証
  超低高度域でのイオンエンジンによる軌道保持などの衛星運用を軌道上実証。
 2.大気密度・原子状酸素に関するデータの取得
  超低高度域での衛星軌道の変動に基づく大気密度データ、原子状酸素(AO)の環境や材料劣化に係るデータを取得し、大気密度モデルの精度向上や原子状酸素への対策など将来の超低高度衛星を実現するための設計基準への反映。
 3.小型高分解能光学センサによる撮像実験
  超低高度域にて衛星の軌道や姿勢と協調して撮像する技術。

 ・衛星の諸元
  軌道:軌道投入から268 kmにかけて大気抵抗等を利用し軌道変更する。
  268 km〜180 kmにてイオンエンジンを用いた軌道保持を行う。
  サイズ: X(進行方向) 2.5m × Y(太陽電池パネル展開方向) 5.2m × Z(厚さ) 0.9m
  (※本体は470リッターの家庭用冷蔵庫位のサイズ。太陽電池は1枚が畳半畳位で、全体で4畳位。全体で4畳半位の衛星サイズ)
  発生電力: 1174W以上
  打ち上げ質量: 400 kg以下(380 kg位)
  設計寿命: 2年以上
  ミッションセンサ:
   1.原子状酸素衝突フルエンスモニタ
   2.材料劣化モニタ
   3.小型光学センサ
   4.小型高分解能光学センサ
  打ち上げ:平成29年度にGCOM-Cと相乗りで打ち上げ予定。

 ・システム構成
 先頭に原子状酸素バンパを設置して衛星を保護。
 イオンエンジンとガスジェット(4箇所)
 (※イオンエンジンは今回の高度ならば問題無い。もっと下がると動作点などの条件が変わってくる)

 ・原子状酸素データの取得ミッションについて
 超低高度軌道( 200 km〜300 km )における大気は、紫外線により酸素分子から解離した反応性の高い「原子状酸素」が主成分である。
 また大気の密度は、主な地球観測衛星が利用する軌道高度600 km程度に比べ約1000倍となる。
 原子状酸素は、衛星に使用されているポリイミド等の熱制御材を損傷させることが知られている。
 超低高度において定常的な運用をした衛星が無いため、原子状酸素の量や衛星材料の劣化特性に関する実測データが不足しているのが現状。
 →SLATSにて実測データを取得。

 ・小型高分解能光学センサ観測ミッション
  望遠鏡:カセグレン望遠鏡+補正レンズ
  検出器:エリアCCDを用いてTDI撮像
  観測波長: 0.48 - 0.7 μm
  有効開口径: 0.2m
  分解能: 1m以下
  視野角 FOV: 9.1 mrad 高度220 kmにて観測幅2 km
  質量: 19.8 kg (光学部:16.9 kg、電気部:1.9 kg)
  サイズ:光学部・270×540×270 mm、電気部・125×225×95 mm
  消費電力: 33W ※保温用ヒータを含む。

 ・将来展望・将来の超低高度衛星の例
 高分解能光学:小型低コストで大幅な分解能向上を実現。
 高分解能SAR:高周波数帯を利用して高分解能SARを実現。
 風向・風速LIDAR:世界初の2次元風向・風速観測を実現。
 エアロゾル観測LIDAR:大気汚染物質の高度・濃度分布観測を実現。
 重力場観測、磁場観測:高感度で地殻変動や磁場の観測を実現。


・概要説明(三菱電機 岡本)

 「つばめ」(SLATS)は、約200 kmという超低高度軌道から地球を観測することで、新たな利用の可能性を拓くことを目的としています。
 超低高度軌道においては大気抵抗の影響により、衛星の高度が低下してしまうため、衛星を「小型・軽量化」し、「イオンエンジン」による推力を利用し、継続的に高度を維持するための様々な工夫が必要となります。
 当社はSLATSのプライムメーカーと指名され、平成21年から約8年をかけて、これらの技術開発を進め、この度工場(三菱電機株式会社 鎌倉製作所)における設計・製造・試験を完了し、10月に種子島に輸送して射場作業へ移行することができました。

 ・諸元(衛星バス)
 推進系:イオンエンジン推力(17 mN×1台)
    ガスジェットエンジン推力(1000 mN×4台)
 姿勢軌道制御系:
  姿勢モード
   ・太陽指向モード
    (太陽電池パドルを太陽に向けて発生電力を最大にする)
   ・地球指向モード(観測モード)
    (地球の自転等の補正をするため、光軸周りにゆっくり回転)
   ・エアロスルーモード
    (太陽電池パドルを進行方向と平行に保ち、空気抵抗を最小化)
   ・エアロブレーキモード
    (太陽電池パドルを進行方向に垂直に維持、空気抵抗による高度降下)
  超低高度軌道保持:180 km〜268 km

 1.小型・軽量化設計
 [従来の観測衛星との比較]
 ・低高度での観測を想定し、ミッション機器を小型化・
 ・衛星バス搭載機器の統合化により小型化。

  従来の観測衛星に比べて打ち上げ質量約1/5を実現。
  ※温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の打ち上げ質量:約1750 kg
   つばめ(SLATS)の打ち上げ質量:約380 kg

 [衛星内部(機器レイアウト)]
 ・スリムな構体内部に、排熱を考慮しながら、機器を凝集して配置。
 ・イオンエンジン/ガスジェットの配管/配線の実装性と保温を考慮して分離配置。
 →機器レイアウト最適化により、小型軽量化を実現。

 [統合化制御装置への機能統合による小型・軽量化]
 ・従来衛星において3つの装置に分散していた機能(姿勢制御機能、データ処理機能、データ記録機能)を1個の統合化制御装置に集約。
 →約1/3の軽量化を実現。

 2.安定・確実な超低高度維持制御
 [イオンエンジンを用いた自律的な超低高度軌道保持制御ロジック開発]
 1.イオンエンジンの推力は小さいが、比推力はガスジェットに比べ非常に高い。
 2.自律的に軌道を保持する制御ロジックを開発し、観測と軌道保持制御を両立。
 3.高度268 km〜220 kmではイオンエンジンで高度保持、高度180 kmではイオンエンジンとガスジェットのハイブリッド制御で軌道保持。

 3.低高度飛行に適した構造設計
 1.進行方向の断面積を最小化し、大気抵抗を1/10以下に低減。
 2.太陽電池パドルを進行方向に平行固定し大気抵抗による外乱トルク低減。
 3.原子状酸素衝突による劣化抑制のため進行方向にバンパを搭載。
 4.本体表面の熱制御材には、原子状酸素対策として、IOTコーティング付きの多層断熱材と無機系材料の白色塗装を採用。


・質疑応答
NHK・超低高度軌道の意義、将来展望でどんな変化が見込まれるか。
佐々木・超低高度衛星の意義ですが、これまで200 km〜300 kmの軌道高度を定常的に飛行する人工衛星はございませんでした。この軌道を使うということで、人工衛星の利用の範囲・幅が拡大できることが大きな意義と考えています。人工衛星より低い高度となりますと飛行機があり、飛行機でも地上の観測を行っておりますけども、従来の人工衛星と飛行機の間の所で活躍するのが超低高度衛星となると思っています。超低高度を利用することで、光学センサや合成開口レーダというものが大幅に小型化できる可能性を秘めている。小型化できるとコストも大幅に削減できる。そういう可能性を秘めているところが非常に大きなメリットだと思います。またミッションでLIDARを若干ご説明していますが、LIDARというミッションは技術的に非常に難しい部分がございます。というのはレーザー光を発生する装置の開発が難しい。この場合、発生するレーザーのエネルギーを小さくすることができれば、実現性はかなり高くなる。低い高度を用いると高度の2乗に比例してレーザー電力を小さく出来るので、実現する可能性を大幅に高めることが出来る。
 将来展望として、超低高度衛星のメリットとして高分解能化というところと、低コスト化というところが大きなメリットかと思います。それを最大限利用することで、今実利用分野で活躍している商用の光学衛星・合成開口レーダー衛星と比べて、高分解能化・小型化することで新たな市場を開拓できるのではないかと考えています。軌道が高い方が広い範囲を観測できるが、超低高度衛星はピンポイントで特定の所を撮ることで活躍できるのではないか。例えば崖崩れが起きそうなところ・起きたところなどをより早く安くできる可能性がありますので、衛星の数も増やすことができる。数を増やせてなおかつピンポイントで見たいところを見に行くということで、崖崩れとか災害が起こっているところをいち早く撮って関係者にその情報を伝えるということで活躍できるのではないかと考えています。またLIDARと呼ばれる風向・風速を測るミッションも超低高度を使うことで実現する可能性が高くなってくる。実現できますと、台風の大きさや成長をより早く掴んで、進路をより正確に捉えて災害対策をとるといった所に活用できるのではないかと考えています。

NVS・H-IIAへの搭載で、デュアルロンチ用ではなくシングル用の4Sフェアリングを使う理由は何か。センサの配置などの問題なのか。
岡本・SLATSが小型だということでPAFに収まる。特にセンサの問題ではない。

日刊工業新聞・このプロジェクトに関わっている企業と大学はどこか。また衛星の開発費はどれくらいか。
佐々木・SLATSは三菱電機、ミッション機器は他のメーカー。2つの光学センサは明星電気株式会社、材料劣化モニタは新日本電子株式会社、原子状酸素フルエンスモニタは米国のQCMリサーチという企業から購入したセンサを用いている。共同研究として、SLATSで取得したデータを利用して将来の人工衛星の研究、いろんな大気モデル、原子状酸素の数値モデルなどの研究を行うということで、材料劣化に関しては神戸大学、大気モデルの研究で成蹊大学と九州大学、京都大学。
総開発費34.15億円と従来より大幅に低い開発費で行っています。

共同通信・地球に対してどんな軌道をとるか。
佐々木・極軌道です。
※軌道投入時点で遠地点643 km、近地点450 kmの楕円軌道、地方太陽時10時半に相当する軌道。そのあとガスジェットを吹いて軌道を低下させ、392 kmの円軌道に投入。地方太陽時で11時くらいになる。そこから少しずつ軌道を低下させていきます。それと共に地方太陽時も少しずつ変化していきます。1年数ヶ月を経たところで270 km位の軌道になりまして、地方太陽時が16時くらいに近づいていくことになります。さらに超低高度ということで270 kmから180 kmまで少しずつ軌道を低下させていきますけども、その時の地方太陽時も少しずつ遅い時間になってゆく。
 軌道高度が少しずつ変化してゆき、太陽同期準回帰軌道で回帰日数が何日という定義にはあたらないので、説明が複雑になっています。

共同通信・光学センサは、どのようなところを撮影するのか。
佐々木・性能を評価するため、地球のいろいろなところを撮像しようと考えています。1m位の分解能となりますので、都市部を撮像して建物がこのように建っているという画像を用いて分解能1mを達成していることを確認したいと思っている。

共同通信・今回はSAR(合成開口レーダー)は積んでいないのか。
佐々木・合成開口レーダーは将来の衛星。

共同通信・SARを積んだ衛星の計画は今のところ無いのか。
佐々木・ありません。

共同通信・情報収集システムとしての利用もあるのか。
佐々木・利用の中の選択肢としては、いろいろなものがあると想定している。

フリー大塚・イオンエンジンはETS8(きく8号)用がベースと聞いているが、どう改良されたのか。また比推力と直径は。
佐々木・イオンエンジンはETS8で開発したものをベース。改良ポイントは、なるべく故障が起きにくいようにするために、絶縁距離を離すとか、電気回路も故障が起こりにくいように見直したところがある。以前はイオンエンジンの電源と制御回路を別々の物にしていたが、SLATSでは統合して小型化している。SLATSはなるべく消費電力を減らしたいということで、ETS8で用いていたときより低めの比推力とすることで、全体のシステム電力を削減している。比推力は動作点にもよるが1200秒から2000秒近くを想定している。推力は11 mNから17 mNの中で使うことを想定している。イオンビームが出る金属の格子(グリッド)の直径は約23センチです。

フリー大塚・これをベースとして将来、標準バスとして商用化の計画はあるか。
岡本・まだ我々としてはSLATSは試験機。標準的に使うといった検討まではいっていない。SLATSの試験結果からフィードバックしながら、将来の要求がどのようになるのかといった所を見極めながら検討していきたい。

フリー大塚・コスト感の目安のような数字はあるか。
岡本・期待外れの回答になってしまうが、運用の期間などスペックによっても価格の大小がある。傾向としては観測衛星の2トン級に対して低価格で構成できるだろうと考えているが、具体的ターゲットコストまでは設定できていない。

フリー・最後の7日間は燃料の非常に消費が多いと思うが、どういった状況を想定しているのか。また、後期利用段階になったら軌道は上げるのか。
佐々木・高度180 kmは大気抵抗が大きくなり、イオンエンジンの推力だけでは軌道を保持できないため、ガスジェットを併用して軌道を保持することになります。後期利用段階では180 kmの軌道を7日間保持したあとどれだけガスジェットの推進薬(ヒドラジン)が残っているかを勘案して、軌道を上げるか、高度を保持するか、更に下の軌道を狙っていくのかといったところはまだ検討中であります。大気の研究をやっている先生方のご意見としましては、180 km以下の軌道を狙ってほしいと言われている。そういった意見を踏まえて最終的にどうするか検討していきたい。

フリー喜多・私なりにキャッチフレーズを作ったがどうか。「新凍結軌道を利用する業務用冷蔵庫サイズの宇宙ドローン(みちびき対応)」 ※軌道を知る意味で「みちびき」が良いのではないかという意味で。
佐々木・途中までは良いが、みちびきからがちょっと判らなかった。ユニークなアイディア。

以上です。


No.2100 :「しきさい」のキャリブレーション(その2) ●添付画像ファイル
投稿日 2017年9月17日(日)19時58分 投稿者 渡部韻

赤外(熱赤外)を観測するSGLI-IRSのキャリブレーションでは更に深宇宙も用います。SGLI-IRSでは観測窓から入ってきた光を反射鏡で45度曲げてTIR/SWIセンサーへ導きますが、この反射鏡を回転させるてSGLI-IRS側面に開いた窓(写真の筒状の部分)から深宇宙が、また更に回転させると反射鏡を挟んで観測窓と反対に設置された黒体がセンサーの視界に入るので、これを使って熱赤外(TIR)のキャリブレーションを行います。同様に短波長赤外(SWI)もSGLI-IRS背面から導入された太陽光および内蔵LEDランプをスペクトラロンで反射させたものを反射鏡でセンサーに導いてキャリブレーションを行います。

他にもラインセンサーのキャリブレーション方法として、GCOM-C全体をZ軸で90度回転させて地上の同一地点をラインセンサーの全素子がなぞるように観測させることで、センサー毎のばらつきを確認する方法もあるそうです。これらキャリブレーションについての詳細はGCOM-Cオフィシャルページの「SGLI関連文書」等をご覧ください。

http://suzaku.eorc.jaxa.jp/GCOM_C/w_sgli/doc_sgli_j.html


No.2099 :「しきさい」のキャリブレーション(その1) ●添付画像ファイル
投稿日 2017年9月17日(日)19時53分 投稿者 渡部韻

空飛ぶ分光器・「しきさい」の高精度観測にはキャリブレーション(校正)が欠かせませんが、軌道上でも地上のように積分球や黒体炉が使える訳ではありません。そこで可視・近赤外の観測を行うSGLI-VNRでは太陽光や月面、LED光源などを使ってキャリブレーションを行います。

写真のSGLI-VNR下方の奥まった位置に見える白っぽい板はテフロン粉を焼き固めた「スペクトラロン」で出来た拡散板です。この拡散板は可動式で、これをSGLI-VNRセンサーの前に立てて、太陽光またはセンサー上部に設置された白色LED・近赤外LED(センサー観測窓上部の小さな赤と白の四角)の光を拡散反射させてセンサーのキャリブレーションを行います。


No.2098 :「しきさい」(GCOM-C)機体-Y面 ●添付画像ファイル
投稿日 2017年9月17日(日)19時49分 投稿者 渡部韻

機体公開時の「しきさい」は太陽電池パドルが外された状態でした。6つの黒い四角は折り畳まれた太陽電池パドルを固定する部分、上の四角の間にある二つの小箱は太陽電池パドルの展開を確認するためのカメラと投光器です。

「しきさい」はミッション構体(SGLI等が搭載された部分、写真の上側)とバス構体(発電や通信、姿勢制御など衛星のライフラインを司る部分、写真の下側)で構成されますが、バス構体は同じNEC製の「しずく」(GCOM-W)と共通のものです。(「しずく」ではミッション部のAMSR2の影が落ちないように太陽電池パドルの取付部を+Z方向にオフセットさせるなど微妙な差異はありますが)

姿勢制御用のスラスタは、スラスタのプルーム(噴射気体)が観測センサーに影響を与えないよう、ロケットインターフェース面(写真下方の銀色の円筒)の内側に収められています。