宇宙作家クラブ
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No.2145 :イプシロンロケットの名残 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時50分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ後もしばらく、この明るい雲が残っていました。


No.2144 :イプシロンロケット3号機の上空での光景 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時49分 投稿者 柴田孔明

そして大きく広がった光景が見られました。


No.2143 :イプシロンロケット ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時47分 投稿者 柴田孔明

先の軌跡のあと、いつもは見えなくなるのですが、今回はこのあとが圧巻でした。
これは上空で彗星のように広がる噴射煙。


No.2142 :イプシロンロケットの軌跡 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時46分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケットの軌跡


No.2141 :イプシロンロケット3号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時43分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット3号機の打ち上げ


No.2140 :イプシロンロケット3号機打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月28日(日)21時36分 投稿者 柴田孔明

 高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)を搭載したイプシロンロケット3号機は、2018年1月18日6時06分11秒(JST)に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、予定通り衛星を分離しました。このあと内之浦宇宙空間観測所の記者会見室で、打ち上げ経過記者会見が開催されています。
 (※一部敬称を省略させていただきます)

・打ち上げ経過記者会見第1部・登壇者
 文部科学省 大臣政務官 新妻 秀規
 経済産業省 大臣政務官 平木 大作
 日本電気株式会社 執行役員 近藤 邦夫
 宇宙航空研究開発機構 理事長 奥村 直樹

・打ち上げ結果報告(奥村)
 本日、6時6分11秒、計画通りに高性能小型レーダ衛星ASNARO-2を搭載いたしましたイプシロン3号機を打ち上げ、所定の軌道への投入に成功いたしましたことを初めにご報告させていただきます。今回搭載いたしましたASNARO-2はイプシロンロケットとしましては初めてのお客様からの受託衛星でありまして、日本電気株式会社殿が開発し、軌道投入後に同社が運用を実施される予定の衛星でございます。私どもといたしましては無事に顧客ニーズに応えることが出来、正直なところ大変安堵しております。これまでのイプシロンロケットの開発におきましては、この小型衛星の打ち上げ需要の拡大を視野に、打ち上げ能力の向上及び搭載可能な衛星サイズの拡大等を目指して運用体制、設備、機体に関する打ち上げ全体の改革に取り組んでまいったところでございます。今回の3号機では、低衝撃型衛星分離機構及びPostBoostStage、私どもがPBSと呼ぶ小型の液体推進系の技術実証も併せて今回の衛星で行い、このふたつ共、私どもの目標を達成いたしました。ご案内のように地球観測衛星にみられるように太陽同期軌道に投入する衛星需要は大変多ございまして、ここに投入するには軌道精度を上げる必要がございます。そういった意味で今回PBSを用いることによって所定の軌道に正確に打ち上げる事ができたということで、私どものひとつの大きな目的を達成することができました。また、衛星に対するロケット側からの負荷を減らすために低衝撃型の衛星分離機構を開発してまいりましたけども、今回初めてきちんと衛星分離ができたということが実証出来、この技術開発においても目的を達成することができた訳でございます。今後も我が国の基幹ロケットという位置づけをされていますイプシロンロケットと現在開発中のH3ロケットとのシナジー開発を進めて、小型衛星市場におけるイプシロンロケットの国際競争力の強化を目指してまいりたいと考えています。最後になりますが、鹿児島県肝付町のみなさまをはじめ、関係機関のみなさま方の大変温かいご支援をいただき、今回の打ち上げが出来たわけでございます。心より感謝を申し上げたいと考えてございます。

・登壇者挨拶(文部科学省大臣政務官・新妻)
 イプシロンロケットの3号機の打ち上げが成功いたしまして、搭載していました高性能小型レーダ衛星ASNARO-2について所定の軌道に投入されたことを心から喜ばしく思っております。ロケットの打ち上げにご尽力ご支援いただいた関係者の方々にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。配付させていただきました林文部科学大臣の談話にもありますように、平成25年の1号機、そして平成28年の2号機に続きまして、今回小型衛星の打ち上げ需要に対応し、さらに高度化を進めた3号機、具体的にはさきほどJAXAの奥村理事長からありました低衝撃の分離機構、またはPBSなどの高度化を進めた3号機の打ち上げを成功させたことは、我が国が有するロケット技術の着実な発展を示すものと考えています。文科省としては今後とも、イプシロンロケットをはじめとするロケット技術のさらなる信頼性の向上や高度化に取り組んでまいります。

・登壇者挨拶(経済産業省大臣政務官・平木)
 本日打ち上げられました地球観測レーダ衛星ASNARO-2の開発担当省庁の立場としてご挨拶申し上げたいと思います。まず最初に、最終的な作動状況に関しましては本日夕刻まで待つ必要がございますが、現時点で衛星からの信号を受信できたことを大変喜ばしく思っております。経済産業省では我が国の宇宙機器産業の競争力強化及び宇宙利用産業の拡大に向けまして、短納期・高性能そして小型かつ低価格な地球観測衛星を開発する事業としてASNAROプロジェクトを推進してまいりました。2014年に打ち上げられ現在も稼動中でございます地球観測用光学衛星ASNARO-1に、今回打ち上げられたASNARO-2が加わることで、光学衛星、レーダ衛星の2機体制が整うことができました。これによりまして民間事業者による衛星運用、画像販売ビジネスが一層進展をするとともに、新興国を中心にたとえばインフラ輸出につながることを期待をしております。宇宙産業は近年、技術革新や新規参入事業者の増加などを背景にいたしまして、宇宙由来の様々なデータの質と量が飛躍的に向上するなど、大きな変化のただ中にあります。今や宇宙由来のデータはビッグデータの一部としてコネクテッドインダストリーズのひとつの基盤インフラとして位置づけられ、様々な地上データと組み合わせることによりまして、例えば農業やインフラ管理、金融等様々な分野の課題に対してソリューション提供をしていくことが期待されています。特に地球観測衛星の分野におきましては、画像単体を販売するビジネスモデルから、画像から抽出されました情報を活用したソリューション提供を行うビジネスモデルにシフトしつつある訳でありまして、今回の打ち上げが、この流れを加速させていくことを期待をしております。最後になりますが宇宙産業のますますの発展を祈念いたしまして私からの挨拶とさせていただきます。

・登壇者挨拶(NEC執行役員・近藤)
 高性能小型レーダ衛星ASNARO-2は経済産業省様の助成事業としてNECが主体となり事業を進めてまいりましたので、今回の打ち上げ成功の知らせを受けて、まずは順調なスタートが切れたと安堵しているところでございます。これまでの事業期間中、経済産業省様、宇宙航空研究開発機構様をはじめ、多くの方々のご指導ご支援ご協力の下で、この日を迎えることが出来ました。あらためまして心より御礼を申し上げます。この打ち上げをもってNECは衛星の製造から利用サービスにわたりバリューチェーンを構築するという、新たな事業展開の第一歩を踏み出しました。これをもって将来に対する期待が大きく膨らんでおります。このASNARO-2でございますが、本年の9月を目処に画像販売を開始する計画でございます。社内関係者一同、さらに気を引き締めて準備にあたってまいります。今後この事業を通して日本、そして世界の安心安全そして効率化などにさらに更に貢献してまいりたいと思います。ぜひともよろしくお願い致します。引き続き皆様方のご指導ご支援を賜りたく、よろしくお願い致します。

・配付資料より、内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話
『イプシロンロケット3号機により、ASNARO-2の打ち上げが成功しました。
イプシロンロケットは、我が国独自の固体燃料ロケット技術を継承し、即応性などの優れた能力を有する基幹ロケットであり、今般の打ち上げが成功したことは、我が国輸送システムの自立性確保の観点から意義深いものです。
 またASNARO-2について、その取得する衛星データが広く国内外で活用され、我が国の宇宙産業の振興につながっていくことを期待しています。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後も引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。平成30年1月18日内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 松山 政司』

・配付資料より、文部科学大臣談話
『本日、イプシロンロケット3号機の打上げに成功し、搭載していた高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)が、所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 イプシロンロケットについては、平成25年9月の1号機、平成28年12月の2号機に引き続き、小型衛星の打上げ需要に対応し更に高度化を進めた3号機においても打上げが成功したことを、大変喜ばしく思っております。
 今後とも、イプシロンロケットの更なる信頼性の向上や高度化に取り組むとともに、我が国の基幹ロケットにより、宇宙輸送の自律性や高信頼性を確保し、国民生活の向上や国際貢献、人類の夢の実現等に資する取組を進めてまいります。平成30年1月18日 文部科学大臣 林 芳正』


・質疑応答
NHK・イプシロンは初号機、2号機、3号機と実証を重ねてきたが、打ち上げ成功の所感をお聞かせ願いたい。併せて4号機以降のイプシロンの将来像や展望をお聞きしたい。
奥村・私事で恐縮ですが、私がJAXA理事に就任して初号機から経験させていただいております。この3号に至るまで各号それぞれミッションが違い、新たな技術実証を加えたりして、かなり野心的に開発を進めているロケットでありまして、そのためもあるのですが、未経験の困難に直面して打ち上げ延期が起こったりということもあって、かなり気を遣ったロケットでございまして、まだ3号までの実績しかございませんが、ぜひ困難の経験を生かして、将来は安定的にさらに伸ばしていきたい。そういう意味では安堵感と同時に将来のこのロケットの安定的な打ち上げの、ある種の確信が私にも芽生えてきたなと、そんな感じを今のところ持っております。そういう意味で来年度(2018年度)は革新的衛星技術実証の1号機をイプシロンで打ち上げる計画で進めてございますし、その後も具体的に科学衛星の大型小型の研究ミッションにもイプシロンを適用してまいりたい。また社内の需要と同時に、このロケットをぜひH-IIAのように民間事業のスタイルに将来持っていくことがやはり重要ではないかということで、こういった事業にご関心のある企業の方々とも意見交換をさせていただいているところでございます。

NHK・H-IIAと比較してイプシロンをどう位置づけしていきたいのか。
奥村・ロケットは運ぶ道具ですので、運ぶ物によって運ぶ道具を最適なものを持っていくというのは常識だと思います。そういう意味で特に最近のマーケットで見ますと、小型衛星を打ち上げるニーズが非常に高まってきていますので、ぜひそこのマーケットをイプシロンで捕獲していくということが極めて重要ではないかと、またそれに適合する能力をもっているのではないかと考えていますので、そういう方面に主に注力してまいりたいと考えています。

日本経済新聞・H-IIAのように民間事業に持っていきたいとのことだが、具体的にどのような企業とどういう協議をされているのか。また新興国への輸出の話で、今後実際の受注をどうとっていくのか。
奥村・具体的に既に決まっていることとしては、現在イプシロンはJAXAが主体となった開発ロケットでございますけども、これにつきましては民間事業者のIAさんの方に製造・運用委託をするところまで決めております。そういう意味で主体的に特定の事業者に設計製造から運用までお願いするということで、ひとつの道筋を作っているかなと考えています。その先につきましては、まださまざまなところと検討しているという段階ですので、今日の段階ではお話は控えさせていただきたいと思っています。やはりこれは早く事業として確立すると同時に、外国も含めて特定の顧客を捕捉できる可能性が上がる訳です。いつまでも研究開発機関が打ち上げをするというのは、民間事業者から見ると必ずしも自然な姿ではないととられる事もありますので、そういった意味で外国の民間事業者の需要を捕捉する意味でも、日本の打ち上げについてもH-IIAのように民間事業者に担っていただくのが私はよろしいのではないかと、そういう両面で努力しているところでごさいます。

南日本新聞・今回はPBSと低衝撃型衛星分離機構のチャレンジがあったが、それが成功した意味と、今後の開発と受注に与える影響と展望の総括をいただきたい。
奥村・先ほども触れましたが、PBSにつきましては、固体ロケットで高精度な軌道投入が要求される、まあ地球観測衛星ですね、これは非常にニーズの多い衛星の使い方でございます。そこへの市場対応ができる技術を獲得した、そういう理解でございます。従って先ほども触れましたマーケット開発にとっては有力な実証成果であると考えてございます。もうひとつの低衝撃の方も、衛星を設計製造するメーカーさんにとってみると、今までの世界の水準で比較しますと衝撃度は半分以下になっておりますので、たとえばそれを前提に衛星を設計製造していただけるようになれば、衛星を設計製造するメーカーさん側にもメリットが出てくる訳でして、これもマーケット開拓のひとつの武器になるのではないかと考えています。そういう意味では二つともマーケット開拓をする上で有力な実証成果ではないかと私は考えてございます。

南日本新聞・それが実際の受注に直結するのか、それともさらに越えないといけない課題があるのか。
奥村・受注できるかは発注側に聞かないといけないほど難しい様々な要件がございます。私どもが基本的にお客様のニーズであります、正確に打ち上げるとかオンタイムで打ち上げるとか、衛星に対する負荷が小さいとか、そういった事をひとつひとつ積み上げる中で、お客様とお話をする機会が増えてきますので、個々のお客様との対話する中で、更なるお客様の個別ニーズがどういうものなのかということをしていく中でマーケット開拓ができていくものだと私は思っているので、二つができたからいきなりマーケットが広がるとか、そこまで申し上げる実績はございません。

産経新聞・昨年の宇宙政策委員会で取りまとめた宇宙産業ビジョンでの衛星データビジネスを育てていく必要があるとのことで、今回のASNAROプロジェクトは象徴的だが、ASNAROプロジェクト以外でどのようにこういったデータビジネスを育てていくアイディアをお持ちなのか、見解を含めてお聞きしたい。
平木・ASNAROプロジェクトにつきましてはご指摘の通りでございまして、昨年5月に策定されました宇宙産業ビジョン2030の中で、宇宙データの利用拡大というところを明確に位置づけて重要なテーマにさせていただきました。ご質問は他の分野でという事でしたが、基本的に経済産業省としても特に力を入れておりますのが、データを介して様々な人ですとか機械・産業を、国境をこえて繋いで、そのことによって新たな付加価値を生み出してゆく、いわゆるコネクテッドインダストリーズというものを打ち出させていただいていますけども、このコネクテッドインダストリーズの中にまさに今回のASNAROのプロジェクトを含めて位置づけられるだろうと思っています。データを使ったビジネスというと、ともするとコンシューマ側のデータを握っているところに主導権を握られているとよく論じられる訳ですが、たとえば日本の中には産業機械が多数稼働している訳でして、こういったところのリアルデータ、これを使いながらどうやって新しい付加価値を生み出していくのかですとか、日本にしかないデータがたくさんありますので、こういうものを活用する中で新しいビジネスを作っていきたい。個々の工場で何が稼働しているとか、そういった個々のデータを使うのは限界がありますので、今回のASNAROで打ち上げていただいた画像のデータやレーダのデータ、こういったものと地上で得られる日本にある固有のデータ、こういったものをうまく組み合わせながら、ちょっとすぐには結びつかない農業の分野ですとかインフラのメンテですとか、あるいは金融ですとか、こういったところに複合的にデータを組み合わせることによって、これから市場を開拓していきたいと思っています。これはNECさんとか民間の事業者の皆さんにも担っていただきながら、官民力を合わせて一丸で取り組んでいきたいと思っています。

産経新聞・今回のASNAROはNECを経済産業省が支援するプロジェクトだが、衛星データを活用するビジネスの裾野を広げるということはNEC以外の企業も政府がバックアップすることが考えられるが、そういったところは今どのような状況か。
平木・今NECさん以外とどうこうしている事は無い訳ですが、同時に技術面からアプローチをするだけでなく、データをうまく組み合わせることによってこんな形のビジネス展開ができるという、マーケットをどう開拓するかというところに関しましては、民間の事業者の皆さん、たとえば新興のICT企業ですとかそういった皆さんと意見交換しながら、日本に眠っているデータ、あるいは今宇宙空間のデータというのは日本がひとつアドバンテージとして持っているところだと思いますけども、こういったところをうまく活用して、市場をどうやって作れるかということに関しては、今大企業だけではなくてベンチャーの皆さん、ICT企業の皆さん、こういったところと連携をさせていただきながら一緒になって議論しているところです。


・打ち上げ経過記者会見・第2部・登壇者
宇宙航空研究開発機構 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
日本電気株式会社 社会基盤ビジネスユニット 主席主幹 安達 昌紀

・質疑応答
時事通信・無事に打ち上がって、現在の心境をお聞かせ願いたい。
井元・正直に言いますと、かなりほっとしています。イプシロンとしては初めての受託衛星で非常に重要なASNARO-2を打ち上げるということと、強化型イプシロンロケットの飛行実証、二つのことを同時に実施すると言う事で、かなりプレッシャーはありましたけども、打ち上げを無事成功することができてほっとしています。

NVS・ASNARO-2に別の愛称をつける予定はあるか。
安達・いまのところは無いです。ASNARO-1もそのまま飛んでいますので。

NVS・ASNAROの由来は何か。何かのアルファベットの組み合わせか。
安達・読んで字のごとく「あすなろの木」からのイメージで、英語の略号は経産省のHPに載っていますAdvancedから始まる一連のものでありますけども、基本的にはこれから大きく事業を育てるための最初の貴重な一歩という願いを込めて「ASNARO」という名前をつけさせていただきます。
(※ASNARO:Advanced Satellite with New system Architecture for Observation)

NHK・打ち上がった後に、空に見えたのは「ロケット雲」と呼んでいいのか。いつもの打ち上げと違って綺麗に見えていたが。
井元・すみません、私は実は見ていません。
安達・私は見ていたが、噴煙が綺麗に見えた。たぶんですが朝日が昇る時間なので、上空では日が当たる状況になって噴煙がいろいろ綺麗に見えたのかなと推察します。

産経新聞・今のお気持ちはいかがか。
安達・衛星が分離された後の電波が正常に受かりまして、また予定通りのシーケンスが進んでいることが確認されましたので、まずは第一関門を突破できたという非常にほっとした心境でございます。最終的な目的に達するためにはまだまだハードルはありますけども、まず一歩を確実に踏み出せた。それと1日延期にはなりましたが、予想通り荒れた天気に昨日はなりましたし、逆に本日は2段の着火まで見えるような、最後の最後まで綺麗な夜空に飛んでいくような、完璧な打ち上げをしていただきまして、衛星も無事だということで、大変ほっとしているというのが正直な感想でございます。

産経新聞・今後のNECの事業展開をお聞かせいただきたい。
安達・通常の衛星プラス、データ利用に展開していく一歩というところを目指していくという話を先日させていただきました。従いましていつもの衛星打ち上げよりもハードルや関門がたくさんあると認識しております。当然、こういう関門はクリアしていくものだと肝に銘じて、心上ずることなく一歩一歩確実にその関門をクリアしていきたいと考えています。

南日本新聞・ASNARO-2の今後のスケジュール表にある、クリティカルフェーズ運用や定常運用などの言葉を解説していただきたい。
安達・クリティカルフェーズ運用は、打ち上げ後13時間くらいまで、人が24時間張り付いていながら慎重に進める運用を意味しています。今、太陽電池パドルが開きまして、スラスタによる三軸制御が行われています。このあとホイールを回転させて、本来のホイールによる三軸制御というものに移っていって、太陽指向を離れて慣性空間を指向するまでが大まかなクリティカルフェーズの内容です。その間に既に成功していますが、SAR(※合成開口レーダー)のアンテナを展開してミッション運用の準備をするというところまでが、まずクリティカルフェーズ運用です。そのあと初期運用というものが入りまして、こちらは所定の機能性能が軌道上で発揮されている事をひとつひとつ試験をして、ノミナルに移って良いね、という確認をするフェーズになります。そしてこのあとこの衛星の場合は、SARの観測衛星ですので、撮られた画像が正しいものなのかどうか、正しいものにするにはどう校正すればいいのかという、キャリブレーションの運用を行います。そしてそのあと最終的に定常運用ということで、NSOCを使った様々なデータ販売に資するような運用を開始する、そういう順番になっています。

南日本新聞・自治体や研究機関からのオーダーを受けて撮影し画像販売するモデルと伺っているが、既にオーダーは入っているのか。
安達・具体的にはこの内容を見ていただきながら、あるいは撮れた画像ですとか、確認された性能を様々なところに認知していただきながら、ひとつひとつ具体的な案件をいただくことになろうかと思います。

南日本新聞・PBSは予定通り燃焼できたようだが、低衝撃型衛星分離機構も予定通りだったのか。
井元・PBSはロケットが自分で計算した軌道投入精度がありまして、それを見ると正に狙ったところにどんぴしゃりに行っている。PBSはきちんと作動したことが確認できました。低衝撃型衛星分離機構も衛星分離のところできちんと開いていますので、開く必要の無いところではきちんと衛星を留めて、開くべきところで開いたという観点で機能が実証されたと考えています。

南日本新聞・今回で強化型としては一区切りになると話があったが、これからのコスト削減に向けた意気込みをお聞きしたい。
井元・今、強化型の3号機が飛行実証したが、これが即いろんなところにビジネスが拡大するのは甘い考えと私は思っています。もっと厳しい現実をきちんと見なければならないと思っています。H-IIAの例でもそうなのですが、やはり打ち上げ実績を着実に積み上げることが非常に重要だと思っておりますので、まず次の4号機の打ち上げをきちんと成功させる、これを次のステップと考えています。さらにそれだけでは駄目で、コスト低減、コストだけで無くいろんな競争力を持った、より競争力を持ったロケットにするという気持ちで今研究開発をやっていますので、それが実現すれば、さらにいろんな世界が広げられるような構想にしたいと思っていますので、ご期待いただければと思います。

KKB・3号機の成功の意義と今後の展望を伺いたい。
井元・3号機でPBSの機能がきちんと作動、PBSだけでなくフライトソフトウェアもそうなのですが、PBSがきちんと作動して物凄く軌道投入精度が良いロケットになったと考えています。いろんな所で使ってもらえると非常に良いと考えております。あと低衝撃型衛星分離機構で衛星に対する優しい環境といいますか、これが試験機、2号機、3号機と連綿とやってきた我々の活動、試験機と2号機は音と振動を低減させる、3号機では衝撃を低減させるということで、衛星に対する負荷を軽減させるという当初の目的を達成したかなと思っています。これで技術的に見て、衛星搭載環境という観点では世界トップレベルになったのではないかと思っていますので、こういった面を4号機5号機でも当然続けて行くということと、さらに違うパラメータ、違う意味でもっと使いやすいロケット、もっと競争力のあるロケットといったものに繋げていきたいと考えています。

読売新聞・コスト削減で30億円という目標は、当初より技術開発の項目が増えているが、今も維持しているか。コスト削減で実績の積み上げ以外で、どういったもののハードルが高いか。
井元・まず30億の点ですが、目標として掲げているところでして、このH3とのシナジー効果を発揮する研究開発、ここのミッション要求というものを今作っているところです。このミッション要求というのは、いろんな技術的な機能性能要求があるのですけども、その中のひとつにコストの要求があります。それはニーズ調査・需要調査そういったものの中で、どこを狙っていくべきなのかというような研究をやっているところです。ひとつの大きな数字ではあると思うのですが、そこにとらわれなくて、本当に適切な目標はどこなのかといったところを考えている。

読売新聞・将来的には30億を目指しているのか。
井元・30億がひとつの目処ではあります。目標値をそれにするか、それ以外にするか、いま検討しているところです。

朝日新聞・固体燃料ロケットでコストを減らせる伸び代があるのは、製造ではどういった部分になるのか。
井元・正直言いますと、全ての面において減らす必要があると思っています。どこがという事ではなくて、満遍なく全般的に落とす必要があると考えています。

ニッポン放送・今後についてまだまだ厳しいとの話があったが、イプシロンロケットが4年あまりで3機ということで、当初は森田さんの初号機の頃は産みの苦しみもあったと認識しているが、3号機まで来たという面での感慨がありましたらお聞かせ願います。
井元・最初、MVロケットが停止するということで、次のロケットを考えようと、何も無かった状況から森田さんと私と、あと数人で始めたのがこのイプシロンロケットになります。最初の頃はなかなか開発に進めなかった。開発に移行したとたん、3年で開発するという非常に厳しいスケジュールの中で開発したのがイプシロンロケット試験機になります。その後強化型も2年ちょっとで開発しまして、2号機は基本形態の飛行実証、3号機はオプション形態の飛行実証ということで、強化型の開発も一区切りつけられるのではないかと考えています。本当に2006年にMVが運用停止してから12年も経っているのですが、長い間というか後ろの方はあっという間だったのですけど、ここまでよく来たなと。あと4号機から実用ロケットとして活躍してくれることを、また期待しております。

NVS・内之浦から上がるロケットは代々性能計算書があったと思うが、今回はあるか。
井元・今回は無いです。
 (※以前から性能計算書の表紙には、お酒の瓶のラベルを元にしたパロディが描かれていた)

NHK・4号機は、これまでの3機を糧に、どのように取り組むのか。
井元・4号機は、3号機と同じく太陽同期軌道になります。なおかつそれにプラスして、キューブサット3つを含めまして全部で7つの衛星を搭載して打ち上げ、それらを異なる軌道に投入するということになります。ということで、またより一層、3号機で飛行実証したPBSの活躍範囲が広がるということを考えております。低衝撃型衛星分離機構も200kg級衛星に搭載しますので、そこでもまた活躍してくれると考えています。

以上です。


No.2139 :イプシロンロケット3号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月18日(木)06時52分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット3号機の打ち上げ。

2018年1月18日6時06分11秒(JST)の定刻に打ち上げられました。


No.2138 :第1回Go/Nogo判断はGo
投稿日 2018年1月17日(水)21時52分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット3号機ですが、2018年1月17日22時20分から実施した第1回Go/NoGo判断において、各系の準備状況、気象状況の確認を行い、打ち上げに向けた次の作業への移行が「Go」と判断されたと連絡がありました。

No.2137 :イプシロンロケット3号機プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月16日(火)19時39分 投稿者 柴田孔明

 2018年1月15日15時より、内之浦宇宙空間観測所記者会見室にてイプシロンロケット3号機の打ち上げ前プレスブリーフィングが行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
日本電気株式会社 社会基盤ビジネスユニット 主席主幹 安達 昌紀

・打ち上げ延期について(※配付資料より)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)を搭載したイプシロンロケット3号機の打上げを平成30年1月17日(水)に予定しておりましたが、当日の天候悪化が予想されるため、打上げ日を平成30年1月18日(木)以降に延期いたします。
 なお、新たな打上げ日については、決定し次第お知らせいたします。

・打ち上げ延期について(井元)
 ロケット系の準備は順調に進んでおりましたけども、本日の天候判断に基づきまして、残念なお知らせですが 1月17日に予定しておりました打ち上げは、当日の天候悪化が予想されるということで、1月18日以降に延期させていただきます。

(※翌日に、新たな打ち上げ日:2018年1月18日(木)、打ち上げ時刻:6時06分11秒(JST)と発表されました)

・打ち上げに向けた準備状況
 ・射場に格段モータの搬入を行い、8月10日より射場作業を開始。その後、現在全段組立、点検作業も終了。
 ・1月9日から1月10日にかけて打ち上げ当日の作業を模擬するY−0リハーサルを実施しました。この結果は良好です。
 ・現時点で打ち上げの最終準備中。Y−1の作業を継続しています。

・打ち上げ当日のスケジュール(※配付資料より一部抜粋)
 ・打ち上げ7時間30分前:Y-0作業開始。
 ・同3時間前頃:ランチャ旋回、ブーム待避。
 ・同2時間40分前:電源ON。
 ・同2分前:発射準備完了を確認。自動カウントダウンシーケンスに入る。
 ※打ち上げ3時間前から国道の通行規制が開始され、打ち上げ30分後頃に解除されます。

・打ち上げ後の飛行計画(※配付資料より一部抜粋)
 ・打ち上げ後1分48秒:第1段燃焼終了(高度74km)
 ・同2分31秒:衛星フェアリング分離(高度123km)
 ・同2分41秒:第1段・第2段分離(高度132km)。
 ・同2分45秒:第2段燃焼開始(高度135km)。
 ・同4分54秒:第2段燃焼終了(高度215km)。
 ・同6分30秒:第2段・第3段分離(高度242km)。
 ・同6分34秒:第3段燃焼開始(高度242km)。
 ・同8分02秒:第3段燃焼終了(高度234km)。
 ・同9分54秒:第3段・PBS分離(高度240km)。
 ・同14分31秒:第1回PBS燃焼開始(高度269km)。
 ・同19分47秒:第1回PBS燃焼終了(高度317km)。
 ・同43分04秒:第2回PBS燃焼開始(高度511km)。
 ・同50分11秒:第2回PBS燃焼終了(高度516km)。
 ・同52分35秒:ASNARO-2分離(高度513km、慣性速度7.6km/s)

・打ち上げの主要制約条件(抜粋)
 ・ランチャ旋回開始後は制限風速以下(25.0m/s[最大瞬間風速])であること。
 ・発射時は制限風速以下(20.0m/s[最大瞬間風速])であること。
 ・発射時の降雨は8mm/h以下であること。
 ・ランチャ旋回開始後の降雨は15mm/h以下であること。
 ・ランチャ旋回開始後は降氷がないこと。
 ・発射前及び飛行中において機体が空中放電(雷)を受けないこと。
 (ただし、発射時の詳細な気象観測による)
  (1)射点を中心として半径10km以内に雷雲の無いこと。
  (2)飛行経路から20km以内に発雷が検知された場合には、30分間は発射を行わないこと。
  ただし発射時に飛行経路から20km以内に発雷、積雲及びかなとこ雲が無い場合はこの限りではない。
  (3)飛行経路が雷雲や積乱雲等の近辺を通過する場合は発射を行わないこと。
  ※氷結層を含み、鉛直の厚さが1.8km以上の雲を含む。
 
 ※1月17日朝について。
  制約条件の中で特に発雷の可能性があり、氷結層が発生する可能性があるため、制約条件を満たさない可能性が高いということで、1月17日の打ち上げは1月18日以降に延期すると決定しています。その他、風とか雨もかなり強いということで、気象的には非常に厳しい。
 打ち上げに万全を期すという観点で17日の打ち上げは断念しています。

・衛星の状態について(安達)
 ASNARO-2は既にイプシロンの上部に搭載されておりまして、全ての準備作業を完了した状態で待機しています。Y-0作業開始に衛星チームも参加し、共同で作業します。

・衛星の予定について
 ・打ち上げ52分35秒後:衛星分離
 ・約2時間後:太陽電池パドル展開、レーダーアンテナ展開
 ・約11時間後:クリティカルフェーズ終了
 ・打ち上げ後約5ヶ月間:初期運用期間
 ・初期運用後約3ヶ月間:画像チューニング運用期間

 ※関連事項
  ・2018年4月:NEC衛星オペレーションセンター本格稼働開始
  ・2018年9月:画像販売開始


・質疑応答
日経新聞・延期は総合的な判断だと思うが、特に大きな原因は何か。雷はどのパターンか。
井元・決定的なのは、集雷の恐れがあることと氷結層の2つです。集雷は全般的にかかる事ですが、一般的に(1)「射点を中心として半径10km以内に雷雲の無いこと」です。

産経新聞・3号機はPBSを搭載しているが、初号機と違って推薬のタンクをひとつにまとめていることと、火工品に換えて低衝撃型衛星分離機構にしているが、そこで生じるリスクは無いのか。
井元・変更したことに対するリスクは、PBSに関してはシンプル化で部品点数も減っていて信頼性も向上しており、基本的にリスクは無いと考えています。
 一方、低衝撃型衛星分離機構はH-IIAで1回飛行実証をしているが、飛行実績が少ない。火工品を使った衛星分離システムはこれまでずっと使っており非常に信頼性が高い。今回の低衝撃型衛星分離機構というメカニカルな部分は、今後飛行実績を積み重ねていくということになりますので、フライト時に衛星をしっかり締め付けて、衛星分離時にきちっと作動するかといったところは地上では十分確認したが、フライト時に作動するかを確認していきたい。

産経新聞・電子機器の改良はどうか。
井元・既に2号機で飛行実証を行っているので基本的にリスクは無い。

NHK・打ち上げが「18日以降」というのは、気象情報からすると早ければ18日と思ってよいか。
井元・結構です。

朝日新聞・新しい日程は最短でいつ決まるか。
井元・打ち上げ2日前のため明日の今頃になります。

NVS・打ち上げ日が変わった場合、打ち上げ時間帯はどうなるか。
井元・6時から6時35分頃の範囲内で実施します。

鹿児島テレビ・プロマネとしての意気込みをお聞きしたい。
井元・これまでと変わらず、大切な衛星でありますASNARO-2の打ち上げを成功させるため全力を尽くして頑張っていきたいと思います。

南日本放送・今回新しい仕組みがあったりするが、1号機からいろいろ進化する中でイプシロンが目指すところ、理想像的なところは何か。そこにたどり着くために3号機はどういった意味合いを持つか。
井元・近い所では4号機で複数衛星を搭載する。キューブサット3つをはじめ、全部で7機の衛星を搭載いたします。そういった数多くの衛星に対応する。将来になりますが4号機については大学の衛星とするが、これまでは専門家といいますか、ロケットの専門家が使えるようなものだったが、将来的にはやはり大学とか研究所など人工衛星とか探査機に特化したところではなくて、もっと一般的な方々が使っていただけるようなロケットといったところを目指したいと思います。具体的に言いますと試験機と2号機で振動と音響を低減して、今回は衛星の分離衝撃を低減するということで、3号機で衛星環境、これを緩和したロケットになると考えています。また、4号機では大学の方々と調整してそういったところにも使っていただく。将来的にはさらに国際競争力をもっとつけて、より使いやすいロケットを目指しています。そういったものをより具体的にすべく、今研究を続ける部分もありますので、近い将来そういった具体的な計画をお示しできるのではないかと考えています。3号機はその中で環境の最後の部分、衝撃を低減する非常に大きな位置づけがありますし、またPBSにつきましても推進薬量を増やしていろんな軌道に投入できるようにするということで、将来を見据えた開発をしてきました。それを飛行実証するということになりますと、また沢山の衛星を搭載したり、いろんな軌道に投入できたりと、使い勝手が広がるという意味で非常に大きな意義があると考えています。

南日本放送・今後の需要が見込める小型衛星がターゲットか。
井元・その通りです。

読売新聞・今回の打ち上げでASNAROシリーズはひとまず完結するが、今回NECさんも新しい管制センターを作って、小型衛星の海外への売り込みをやっていくと思うが、今回のASNARO-2を打ち上げて軌道にのせる意義と、海外販売の戦略を伺いたい。
安達・マーケティングに関わる話なのでお話できる範囲で。ターゲットにしました小型ではあるがサブメーターの観測性能を持つマーケティングポイントに対して、実際にASNARO-1と2という、実際に軌道上を飛んでいて、直接お客様に見せてアピールすることができるというものを持つことが非常に重要な事だと思っています。実際のデータを使って商談を進めることで、さまざまなお客様が持っている潜在的に持っている、こういう衛星を持ちたいというより、この衛星をこのように使えるのではないかというヒントをいただいて、イプシロン同様に私どものASNARO-1と2も今後ブラッシュアップしていくところが出てくるのだと思います。机上の絵だけで話をするのではなくて、実際に衛星を動かし、そのデータをとってみせて具体的に商談の場に持ち込むことができるのが最初のスタートだと思っています。

読売新聞・ASNARO-1は打ち上げから3年程経過して、1と2がセットで揃うのはそれほど長くないと思うが、2以降の後継衛星はどのように考えているか。
安達・まだ皆様に今話せる具体的なことは残念ながらございませんが、我々の事業を継続的に進めていくために、その次の手をどうするかというものを関係者とともに考えていくところでございます。

NHK・現状、このまま天候が悪化しなければ1月18日の打ち上げで調整を進めるという理解でいいのか。2日前に判断をした後の判断は何時間前にするのか。
井元・17日の次の機会は18日ですので、天候が良ければ明日この時間(15時頃)くらいまでに発表できるのではないかと考えています。2日前の天候判断以降は、打ち上げ1日前の昼頃に次のシーケンスを進めるか判断をいたします。その次はX−7時間半前、その日の作業に入る前に判断します。その後、細かい色々な判断はあるが、大きい判断としてはX−3時間前のランチャ旋回(ロケットを整備塔の外に出す)前に判断いたします。最後は打ち上げ30分〜15分位前に最終Go/Nogo判断をします。

産経新聞・記憶では過去のMV(ミューファイブロケット)は実験だったが、イプシロンはどうか。
井元・イプシロンは公式には実験ではない。

日経・今回の強化型オプション機能まで実証が済んだとなれば、今後小型衛星の需要取り込みを目指した必要な機能は3号機で実証が済むということか。
井元・その通りです。4号機でも部分的な改良はあるが、強化型の基本形態は2号機で飛行実証し、オプション形態は3号機で飛行実証を行う。これで強化型イプシロンロケットの飛行実証は終了します。

日経・PBSの実証は相乗りのある4号機で完了するのか。
井元・(PBSは)今回の太陽同期軌道で飛行実証が完了します。複数衛星も見据えた開発で、それだけのために開発するものではありません。

鹿児島テレビ・3号機が成功すれば、どういった節目になるか。
井元・今回は強化型イプシロンロケットの飛行実証が完了する。強化型の開発の総まとめという形になります。4号機からは実運用となっていきますので、さらに1ランク上がる非常に大きな節目だと考えています。

共同通信・複数衛星を見据えてとあったが、複数というのは超小型までいかないものを2個とか3個なのか、あるいはキューブサットのような超小型衛星を複数というイメージなのか。
井元・いろいろなケースが考えられます。1Uや2U・3Uのキューブサット、それと60kg級の超小型衛星、それと4号機につきましては200kg級の実証衛星といったものを搭載する。また60kg級の超小型衛星を3つ、キューブサットは3つという形を考えています。大学は主衛星ではなく超小型衛星とキューブサットです。

毎日・今回の打ち上げの費用と、イプシロンは将来的に30億円くらいを目指すという計画だったと思いますが、今後どういう風にコストを下げていくのか。
井元・実機コストは約40億です。打ち上げコストを入れますと約45億になります。
現時点でイプシロンロケットはH-IIA/Bと共通化しています。ご存じのように今H3の開発を進めていまして、ある時期にH-IIA/Bの運用を停止することを考えていますので、その際にイプシロンの部品が作れなくなったりします。従って今後はH3ロケットと一部共通化をするという方向を考えていまして、我々はH3シナジーと称していますが相乗効果を発揮するということで、今研究を進めているところです。そういった共通化のよるコスト低減ですとか、またイプシロン固有になりますけど、今の強化型でも自動点検をかなり進めているが、さらに自動点検の範囲を進めてコストを低減してゆく。それによって射場の作業期間をできるだけ短くするなどして、コストの低減を考えています。まだ頭の中にある事ですので、そういったものを形にしてご紹介できればと思います。

南日本放送・天候は18日から21日まで天気予報が良い中で、今日新しい打ち上げ日を決めない理由は、最新の天気予報を見るのか。
井元・天候は変わるので、そういったものをじっくり見て判断してゆくのが普通の手順になっていますので、その手順通りに決めていきます。

南日本放送・予報が変わらなければ18日になるのか。
井元・天候に限ればまさにその通りです。他の色々な要因が無ければ、ということになります。

フリー大塚・イプシロンの自律点検とモバイル管制で、3号機で進化した部分はあるか。
井元・モバイルは試験機から適用していて変わっておりません。自律点検は非常に高い技術的なハードルがある。試験機と2号機でデータを取得してきました。引き続き3号機でも実運用に向けてデータを取得するフェーズでありまして、データが徐々に蓄積されているという観点では進歩がありますけども、打ち上げに向けたという観点では2号機と特に変わりはありません。

日経新聞・コストの話で、コスト減をしようとすると打ち上げ回数が増えないとメーカー的にきついと思うが、現状で内之浦を使った環境下では将来的にどのくらい増やせるのか。
井元・それは地元の方々との協議によりますけども、技術的な観点で言いますと、射場での作業期間を短くするとか、設備を充実させるとか、そういう観点でH-IIA並にできるのではないかと思っています。あとはコストなどの制約の中でどこまで出来るかという形になると思います。H3とのシナジー効果を発揮する研究の中で、どの程度まで狙っていくかを今検討しているところです。

日経新聞・すると目処としては2020年頃になるのか。
井元・まだ開発計画が完全には固まっていませんが、H3ロケット初号機の打ち上げが2020年なので、その後という事を考えています。

産経新聞・イプシロンロケットとASNAROシリーズはベストマッチングなのか。
安達・ベストマッチングだと思っています。言葉が通じて政情が安定している国に、私どもの500kg級衛星を打ち上げる適切なロンチャがあることが非常に心強いと思っています。3号機の開発でも様々な競争力の強化をやっていただいているので、ぜひこのマッチングを続けていきたいなと考えています。
井元・イプシロンロケットは今正にちょうどいい打ち上げ能力で、ベストの状態で打ち上げることができて、非常にベストな状態だと思います。NECさんも内之浦の射場作業を知り尽くしていて、何度もオペレーションをやられていて、ここ3年は毎月のようにインターフェース調整を実施してきたが、話がよく通じるところですので非常にありがたいと思っています。

※新たな打ち上げ日時について(2018年1月16日14時発表)
 打ち上げ日:2018年1月18日(木)
 打ち上げ時刻:6時06分11秒(JST)
 打ち上げ時間帯:6時06分11秒〜6時30分13秒(JST)
 打ち上げ予備期間:2018年1月19日(金)〜2018年2月28日(水)

以上です。


No.2136 :新たな打ち上げ日について
投稿日 2018年1月16日(火)13時13分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケット3号機の新たな打ち上げ日は、2018年1月18日6時06分11秒(JST)です。
なお、打ち上げ時間帯は6時06分11秒〜6時30分13秒(JST)となっています。

No.2135 :打ち上げ延期
投稿日 2018年1月15日(月)14時00分 投稿者 柴田孔明

2018年1月17日に予定されていたイプシロンロケット3号機の打ち上げは、2018年1月18日以降に延期になりました。原因は天候の悪化が予想されるためです。

No.2134 :イプシロンロケット3号機のリハーサル ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月10日(水)04時40分 投稿者 柴田孔明

2018年1月10日未明から明け方にかけて、イプシロンロケット3号機のリハーサルが行われています。


No.2133 :千羽鶴贈呈式 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月9日(火)18時07分 投稿者 柴田孔明

機体概要説明と前後しますが、2017年12月27日に肝付町地域女性団体連絡協議会及び旧内之浦婦人会による千羽鶴贈呈式が行われ、イプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャとSS-520-5号機の羽生プロジェクトマネージャに千羽鶴が贈呈されました。写真は井元プロジェクトマネージャ。


No.2132 :イプシロンロケット3号機の機体概要説明 ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月9日(火)17時04分 投稿者 柴田孔明

 2018年1月9日、内之浦宇宙空間観測所にてイプシロンロケット3号機の機体概要説明が行われました。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

・イプシロンロケット3号機について
 ・イプシロンロケット3号機により高性能小型レーダ衛星(ASNARO−2)を打ち上げ、強化型イプシロンロケット(オプション形態)及び低衝撃型衛星分離機構の飛行実証を行う。

・強化型イプシロンロケットについて
 ・固体ロケットは即時性が高く、戦略的技術として重要であるとともに、小型衛星運用の輸送手段として適していることから、今後の小型衛星の打ち上げ需要に対応していくとともに、我が国の自立的な宇宙輸送システムを持続的に確保する。
 ・「あらせ」等の小型科学衛星やASNARO−2等の小型衛星(国内・海外)の打ち上げ需要に対応するため、性能向上開発(打ち上げ能力向上、衛星包絡域の拡大)を実施する。

・3号機での改良点
 ・低衝撃型衛星分離機構を使用(火工品を使用しない分離機構へ)
 ・PBSの改良。システムのシンプル化(大型推進薬タンクの開発、ラムライン推進系の削除等)
 (※PBS:Post Boost Stage)

※前回2号機において改良した点。
 ・2段機体の直径を2.6mに拡大してフェアリングの外に出すことによって、推進薬量を1.4倍(約10.7トン→約15トン)に増加。
 ・2段機体で、これまで複数の層で構成していた断熱材を単層で構成する等の軽量化。
 ・2段機体と3段機体に搭載される電子機器(PSDB:)電力・シーケンス分配器の小型・軽量化。
 ・構造の簡素化・軽量化(複数の部品から製造していたものを一体構造にする等)
 ・フェアリングの全長最適化(2段機体を外に出すことを踏まえ、少し短く)

・3号機の飛行について
 ・3号機はイプシロンロケットとして初めて、搭載衛星を太陽同期準回帰軌道に投入する。
 ・太陽同期軌道もしくは太陽同期準回帰軌道は今後需要の増大が見込まれる地球観測衛星の多くで使われる軌道であるため、3号機の飛行実証により多くの需要に対応可能になる。

・3号機の射場作業中に発生した不適合について。
 1.事象
 格段点検(9月19日)において電気系の点検として機体に搭載されている機器の電源を入れたところ、モニタ信号が異常な値を示した(要求値を逸脱した)。
 調査したところ、2段に搭載していたデータ収集装置(DAU−E)内部の部品がショートしていたことを確認した。

 2.原因
 点検用中継ケーブルを床上で引き回した際に静電気が帯電し、除電ブラシによる除電が十分ではなく、ケーブル接続時の電荷放電により当該部品を損傷した。

 3.現品処置(DAU−E)
 静電気の影響を受けた可能性のあるボードを交換。

 4.対策(静電気対策)
 不適合の原因となった静電気対策として、中継ケーブルの静電気を除去できる方策を確認し、作業手順として定めた。
 (その後の点検結果により機体の健全性を確認済)

・今後の予定
 ・1月9日夜〜1月10日朝に打ち上げに向けたリハーサルを実施。
 ・最終確認審査(1月13日予定)にて、全系の準備状況を確認する。
 ・打ち上げ時刻は打ち上げ2日前(1月15日)に決定し、発表予定。


・質疑応答
南日本新聞・イプシロン初の受託衛星だが、今後どんどん受託衛星を乗せるのか、それともノウハウを民間に提供するのか、今後の方向性をお聞きしたい。
井元・まず国の基本計画にのっております国の衛星をきちっと打ち上げるのが基本でございます。それのみならず、できるだけ沢山の打ち上げ需要に対応していきたいと考えております。具体的には4号機からは製造一元化ということで、IHIエアロスペースさんにある部分まで全て機体を組み立てた状態までやっていただく。それ以降の打ち上げはJAXAが実施する。3号機まではJAXAがいろんな機器メーカーさんと契約していたが、4号機からは一元化という方向に向かっています。できるだけJAXAが開発した技術を民間に移転していく方向を考えています。
 例えば電子機器はJAXAが調達して受け取り機体に組み付けていたが、機体の製造はIHIエアロスペースさんに一元契約して、そこの元で電子機器を調達して機体に組み込んでもらってJAXAに納入してもらうのが4号機から。

南日本新聞・打ち上げる衛星はまず国のぶんで、あとプラスアルファがあれば民間のものもということだが、基幹ロケットのH-IIAからH3へ移行というタイミングで、その中でイプシロンの存在感をどう示していくのか。数百キロクラスの衛星を打ち上げるという役割なのか。
井元・その通りです。小型衛星は今後たくさんの需要が見込まれていますので、しっかり対応していきたい。

南日本新聞・年1機くらいのペースか。
井元・当面は年1機を確実に打ち上げていきたい。

鹿児島テレビ・2号機と3号機の外観上の違いはどこか。
井元・外から見て、機体そのものは殆ど変わらない。3号機は2段目にNECさんと経済産業省さん、そしてASNARO−2のロゴを貼っています。(前回)2号機はダブルアローを貼り付けていました。これが大きな違いになります。

産経新聞・PBSで従来の小型タンク3個から大型の1個になったメリットは何か。従来はなぜ3つだったのか。
井元・推進薬量を多くしている。試験機では合計103キログラムだったが、強化型が130キログラム。
試験機はH-IIAの2段に搭載しているガスジェットのタンク、その技術を利用していた。短期間で開発リスクを低減するということでそのタンクを使っていた。そのタンクを使っているため推進薬量に制約がある。それに対しラムラインという非常に優れた機能をもった推進系を搭載していたが、少しシステムとしては複雑になっていた。
推進薬量を増やすことでラムライン推進系の機能までPBSに全部持たせることが可能になりました。システムの簡素化、それと自由度を増す、さらに先を見据えたということで、4号機以降は複数衛星を搭載することも考えていて、そういった時に多様な軌道にPBSを使って複数の衛星を投入できるということを考えています。と言うことで、先を見据えた開発という観点もあります。

産経新聞・延期原因の対策で、『不適合の原因となった静電気対策として、中継ケーブルの静電気を除去できる方策を確認し、作業手順として定めた』の部分を詳しく。
井元・コネクタ部分に除電ブラシをあてて除電するが、例えばブラシの角度などをより工夫することによって除電が十分にできることが確認できました。なおかつ除電コネクタというもので確実に接地することで、さらに除電が確実になることを確認しています。

産経新聞・2号機までは森田さんプロジェクトマネージャをやっていらっしゃったが、3号機から井元さんが交代していることの所感や心意気などをお聞きしたい。
井元・私はイプシロンロケットの最初の立ち上げからずっと研究開発をやっていまして、試験機2号機でもロケット主任という役割、打上執行責任者代理という役割を実施してきました。ロケット主任ということでロケット系の責任者という気持ちで試験機と2号機の打ち上げに臨んだのですけども、今回は打上執行責任者と若干責任が増えますけども、試験機と2号機と変わらぬ気持ちで、打ち上げを確実に成功させるために適切な判断を実施していきたい、最後まで気を引き締めてやっていきたいと考えています。

赤旗新聞・低衝撃型衛星分離機構だが、試験機・2号機での衝撃はどれくらいだったのか。
井元・大体ですが、2000G程度になります。これは火工品による分離ですが、瞬間的(マイクロSEC)で切断可能だが、それが故に一気にためられたパワーを開放するため衝撃がたくさん発生する。対して低衝撃型衛星分離機構ではミクロSECオーダーで分離することで、少しゆっくり分離するということで開放されるエネルギーの瞬間的な量を低減する、ということで衝撃を低減します。

赤旗新聞・(以前は)グラフでデルタ4などと同等だったものが1000G以下になり、500Gも達成すると世界のトップレベルの衝撃レベルを実現するということか。
井元・まず1000Gで世界トップレベルになると考えています。こちらは確実に守る。実働値500G程度でさらに、と我々は考えています。

赤旗新聞・コスト低減についてはどうか。
井元・イプシロン開発に着手したとき、宇宙開発委員会に報告したことになりますけども、まず最初にある一定レベルのコストを達成する、その先さらに開発を進めてさらにコストを低減するという2段階開発を報告して了承を得ています。試験機と強化型につきましては1段階目のものになっていまして、さらにその先については今研究ベースでもうすぐ開発に移ろうとしているものがあるのですけども、それとは別の1段階目のものになります。今回のコストに関しましては、製造にオプション形態の40億となります。基本形態は38億です。

時事通信・低衝撃型衛星分離機構のメリットは何か。
井元・人工衛星に対する負荷が軽くなります。衛星に対する環境が厳しいと、衛星に対する信頼性といいますか、故障する確率がある。環境を緩和することで衛星に対する負荷を軽減する、これによって間接的に信頼性向上に繋がるのではないかと我々は考えています。

時事通信・火工品は火薬と読み替えて良いか。
井元・はい、結構です。

南日本新聞・新たな低衝撃型衛星分離機構とPBSは衛星の要求なのか、それとも今後を見据えたものか。低衝撃の方が衛星側から喜ばれるのか。
井元・衛星の要求ではなく、今後を見据えたものです。(衛星側からは)そうです。

南日本新聞・強化型で臨むのは衛星が重いためか。
井元・はい。試験機の能力では少し足りませんでした。

南日本新聞・強化型は衛星の要求で、低衝撃型衛星分離機構とPBSは今後を見据えたものか。
井元・はい、その通りです。

以上です。


No.2131 :H-IIAロケット37号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2018年1月8日(月)21時05分 投稿者 柴田孔明

打ち上げられるH-IIAロケット37号機。
指定された場所に設置した無人カメラにて撮影
(※写真入れ替わりのため再掲)