宇宙作家クラブ
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No.249 :クイックバード打ち上げ失敗か?他
投稿日 2000年11月21日(火)21時02分 投稿者 江藤 巌

・ロシアによる米のクイックバード1打ち上げ失敗か
 ロシアは11月20日2300GMT(21日0800JST)にプレセツク宇宙基地から、コスモス3Mでアメリカのクイックバード地球観測衛星を打ち上げた。
FLORIDA TODAY Space Online
SpaceflightNow
 クイックバード1は一時は打ち上げ成功が伝えられたが、ロシア宇宙軍によれば軌道に投入された後消息を絶ったとのことで、打ち上げは失敗に終わった可能性が高い。
SpaceDaily
クイックバードは、ボール・エアロスペース&テクノロジーズ社が製作し、アースウォッチ社が運用する地球観測衛星で、0.82mの地上解像力(黒白)を有している。
今回の打ち上げに関して、現在のところボール社、アースウォッチ社からの発表はない。

・ロシア大衆はミール継続を支持
 ロシアの独立世論調査機関ROMIRが11月中旬に行った世論調査によれば、ロシア市民の4割がミール計画の継続を支持している。
これによると、ミール計画に今後も国家予算を投入することを支持した回答は40.9%に達し、20.8%が予算が確保されるべきだとしており、ミールの廃棄を支持した20.4%を大きく上回っている。
FLORIDA TODAY Space Online

・「ミールに行きたいかあ!」
 ミール宇宙ステーション訪問をクライマックスとした視聴者参加番組「目的地はミール」(Destination Mir)の企画を進めているNBC放送では、まだ番組製作の希望を捨てていないようだ。
Yahoo!News

・ポルトガルがESAの15番目の加盟国に
 ポルトガルは11月14日にヨーロッパ宇宙機関(European Space Agency)の正式の加盟国となった。
ESAの発表
1975年にESAが創設されたときの加盟国はフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スウェーデン、スイスの10カ国で、後からアイルランド、オーストリア、ノルウェイ、フィンランドが加わり、今回のポルトガルの加盟で15カ国となった。他にカナダが協力国(Cooperating State)の地位にある。

・ISSの環境制御・生命維持システム(ECCLS)
 国際宇宙ステーション(ISS)のシェパード、ギジェンコ、クリカリョフの3人の第一次遠征隊は、11月9日までELEKTRONと呼ばれる酸素発生装置の取り付けと試験を完了した。
エレクトロンは、水を電気分解して酸素と水素を取り出す反応(2H2O→2H2+O2)を利用して乗員に呼吸用の酸素を提供する装置で、ソ連がミールで使用して来たシステムと基本的に同一である。。
ただしエレクトロンは電力を食うので、全面的に稼働するのは12月初めのスペースシャトルSTS-97で大型の太陽電池パネルがISSに取り付けられてからで、現在は間歇的にしか運転されていない。
これまでISSでは化学反応による酸素発生装置が用いられていたが、これと同じ装置は1997年2月にミール内で火災事故を発生したことがある。
ミールの火災事故については、「ドラゴンフライ ミール宇宙ステーション悪夢の真実」(ブライアン・バロウ著、筑摩書房)上巻3210ページ以下に詳しい。
 最終的にはISSの環境制御・生命維持システム(Environment Control/Life Support System)は、このような形をとることになる。
右隅の紫の過程がエレクトロンによる電気分解で、ISS内部の空気から回収した水と乗員の尿から精製した水とを電気分解して、酸素を得ている。
乗員の発生する二酸化炭素(CO2)は、現在は分子ふるい(molecular sieve)で除去して、エレクトロンから発生する水素と同じく、ISSの外に放出している。

No.248 :プログレス手動でドッキング
投稿日 2000年11月18日(土)15時01分 投稿者 江藤 巌

・プログレスM1-4手動でドッキングに成功
11月16日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたプログレスM1-4無人補給船は、18日0348GMT(1248JST)に国際宇宙ステーション(ISS)と手動でドッキングに成功した。
プログレスM1-4は自動でISSとドッキングする計画であったが、プログレスの自動ドッキング・システムが故障したため、ユーリー・ギジェンコ宇宙飛行士がISSの内部から遠隔操作でドッキングさせた。予定外の手動ドッキングとなったため、ドッキングの時間は計画よりも30分ほど遅くなった。
プログレスM1-4は、ISSのザリャー・モジュールの地球側(nadir)のドッキング装置と結合している。
プログレスM1-4はISSに衣類や機器、食料や水など2トンの資材を持ち込んだ。
NASAのISSステイタス・リポート
NASA Human Spaceflight
 次のISS関連ミッションは、スペースシャトルの100回目の宇宙飛行となるSTS-97ISSフライト4Aで(エンデヴァー)、11月30日の2206EST(12月1日1206JST)に打ち上げを予定している。フライト4AではISSに大型の太陽電池パネルを取り付けることになっている。

・バイコヌールのリース延長
 カザフスタン共和国のトカイェフ首相は16日にバイコヌールで記者会見を行い、ロシアへのバイコヌール宇宙基地貸与の期限を10年間延長すると発表した。
バイコヌール基地はソ連のミサイルの試射場として1950年代半ばに建設され、1957年以降は宇宙ロケットの発射場としても使われて来た。
1991年のソ連崩壊後は同基地はカザフスタン共和国の領土となったが、ロシアは有償で基地施設をカザフスタンから借り受けてロケット打ち上げとミサイル実験を続けて来ている。
ロシアとカザフスタンは、1994年に20年期限のリース契約を結んでいるが、実際にはロシアは年に1億1500万ドル相当のリース料を滞納しており、打ち上げ事故が続発した後の1999年になって、カザフスタンをなだめるためにようやく1億1500万ドル相当を支払っている。そのうち現金は5000万ドル相当で、残りは物品や役務とのバーターとなっている。
FLORIDA TODAY Space Online

・一般市民がISSに搭乗?
 ミール廃棄問題に関してミール社からはいまだに発表はないが、同社からの民間人宇宙旅行者としてミールに滞在する予定のアメリカ人の実業家デニス・ティトー氏はインタビューに対して、自分がミールに乗れる可能性は1%もなくなったが、4月30日にはISSに乗り組める可能性が高い、との興味深い見解を表明している

No.246 :プログレス無人補給船打ち上げ他
投稿日 2000年11月17日(金)02時39分 投稿者 江藤 巌

・プログレス無人補給船打ち上げ
 ロシアは11月16日の0133GMT(1033JST)にカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から、プログレスM1-4無人補給船(フライト2P)を打ち上げた。プログレスM1-4は国際宇宙ステーション(ISS)と結合して、宇宙飛行士の衣類や食料、機器などの物資を補給することになっている。プログレスM1-4は18日の0307GMT(1207JST)にISSと自動ドッキングする予定である。
SpaceRef/com
露エネルギヤ社の発表
FLORIDA TODAY Space Online
ISSステイタス・リポート

・イリジウム通信衛星に買い手見つかる
 ニューヨーク南部地域の破産法廷は11月16日イリジウムLLCの資産をイリジウム・サテライトLLCが買収することを承認した。イリジウム・サテライトはイリジウム低軌道衛星通信システムをそっくり引き継いで、営業を続けることになる。同社では一般ユーザー向けの営業は諦めて、アメリカ政府の災害救援や航空、軍用通信など特化した用途での生き残りを狙っているようだ。システムの維持管理は同社からボーイング社に委託され、モトローラ社が引き続きユーザー・ターミナルを製造する。
 イリジウム・サテライトLLCの会長のダン・コラッシーは、カナディアン・パシフィック・エアラインの社長兼CEO(最高経営責任者)、またパンアメリカン・ワールド・エアウェイズの社長兼COO(最高執行責任者)である。
 イリジウムLLCは1999年8月に倒産、これまで軌道上の衛星や地上局を含む資産の引き取り手を探していた。システムの売却先が見つかったことで、約70機のイリジウム衛星を故意に落下させることはなくなりそうだ。
イリジウム・サテライトLLCの発表
FLORIDA TODAY Space Online Space Online
SpaceDaily

・アリアン5で4機の衛星打ち上げ
 11月16日0107GMT(1017JST)にフランス領ギアナのクールーからアリアン5が打ち上げられて、パンナムサット通信衛星など4機の衛星を軌道に乗せた。4機の衛星の合計質量は約5700kgになる。アリアンスペース社による今回の打ち上げ(フライト135)はアリアン5の4回目の商業飛行になる。
アリアンスペース社プレスリリース
SpaceDaily
FLORIDA TODAY Space Online Space Online
 今回打ち上げられたパンナムサット社のPAS-1Rは、1988年に打ち上げられたPAS-1の代替である。
パンナムサット社プレスリリース
 アリアン5にはイギリス国防評価研究局(Defence Evaluation and Research Agency)の小型衛星STRV(Space Technology Research Vehicle)-1cとSTRV-1dも搭載されていた。二つの衛星は遠地点高度39000kmの長楕円軌道に乗せられ、地球を取り巻く放射線帯によるエレクトロニクスの損傷などを調べる。DERAプレスリリース
 もう一つのペイロードAMSAT-P-3Dはアマチュア通信衛星である。
日本アマチュア衛星通信協会(JAMSAT)
AMSAT
AMSAT P3-D 打上げキャンペーン(1)
AMSAT P3-D 打上げキャンペーン(2)
SF作家野尻抱介氏の掲示板で武安氏の書込み以降の過去ログも参照のこと。

・ミール来年2月廃棄を閣議決定
 ロシア政府は11月16日、ミール宇宙ステーションを来年の2月末を以て廃棄することを閣議で決定した。ロシア宇宙庁(RKA)ユーリー・コプチョフ長官によれば、ミールは2月の27〜28日にオーストラリア東方1500〜2000kmの南太平洋に落下させられる。ただしミールは分解しながら落下するので、どの部分がどこに落下するか厳密な予測は不可能と述べている。
 ロシア政府の方針決定に対してミール社では、ロシア政府からのより詳しい説明を待つとだけ表明している。
Space.com
FLORIDA TODAY Space Online
FLORIDA TODAY Space Online
FLORIDA TODAY Space Online
YAHOO! News
SpaceDaily
SpaceRef.com
ミールの現在位置

No.245 :GPS衛星打ち上げ他
投稿日 2000年11月12日(日)09時38分 投稿者 江藤 巌

・デルタ2でGPS打ち上げ
 アメリカ空軍は11月10日にケイプ・カナヴェラル空軍ステーションから、デルタ2でナヴスターGPS(Global Positioning System)全地球測位システム衛星を打ち上げた。ロッキード・マーティン社製の衛星(PRN18)は、今月の末には運用を開始する予定である。同衛星が加わることで、稼働中のナヴスターは28機になる。
FloridaToday

・ISSは三連休
 国際宇宙ステーション(ISS)のシェパード、ギジェンコ、クリカリョフの3人の宇宙飛行士達は、4日の土曜から6日月曜まで連続三日の休暇を与えられた。これは10月31日の打ち上げ以来忙しい日々が続いていたからで、プログレスM無人補給船のドッキングに備えて体調を整える意味もある。
 ISSが常駐宇宙飛行士を迎えてから最初の訪問者となるプログレスは、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地で打ち上げの準備が進んでいる。計画では打ち上げは11月16日の0132GMT(1032JST)で、ザリャー・モジュールのドッキング装置へのドッキングは17日の0307GMT(1207JST)に予定されている。宇宙飛行士達はドッキングに備えて、今週末からは就寝時間を約2時間後にずらすことになっている。新しいスケジュールでは就寝は2130GMT(0630JST)になる。
 太陽活動が盛んになっているため、宇宙飛行士達はズヴェズダーの居住区画に被曝線量計をセットアップした。ただし今回の太陽フレア程度では、宇宙飛行士の健康に影響はないと医師は見ている。

・米上院科学委員会に新委員長
 大統領選挙の帰趨はまだ決まらないが、すでに勢力分布が決定している上下院では、委員会のメンバーの移動が取りざたされている。
 NASA(米航空宇宙局)の方針や予算の決定に大きな影響力を持つ上院科学委員会では、1994年以来委員長を務めてきたF・J・センセンブレナー議員(ウィスコンシン州選出、共和党)が司法委員会委員長に転出するため、後任の委員長には同じ共和党でニューヨーク州選出のシャーウッド・L・ボーラート議員が有力視されている。ボーラート議員はこれまで基本的にNASAを支持して来ており、ISS計画にも賛成の意見を表明して来た。
Space.com

No.244 :LE-7A領収試験予定他
投稿日 2000年11月11日(土)00時11分 投稿者 江藤 巌

・LE-7Aエンジンのトラブル対策
 宇宙開発事業団(NASDA)は、10月18日に種子島宇宙センターで行われたH-2Aロケット試験機1号機用のLE-7Aエンジン領収試験後の点検で発見された二つの問題について、それぞれ原因と対策を発表した。それによれば液体酸素ターボポンプのメッキ剥離は、ケーシングのメッキ部分を除去してインデューサライナーを再製作、回転精度低下の見られたベアリングを全数交換する。液体酸素タンク加圧配管の漏洩に関しては、配管内を流れるガスでベローズが振動、ベローズ谷部の曲率の大きい個所に荷重が集中して疲労破壊を招いたと結論、振動を軽減するためベローズを従来の一層構造から三層構造に変更、またベローズの形状の精度を高めることとした。
 対策を施したLE-7Aの領収燃焼試験は、11月15日に種子島で行われる。
H-IIAロケット試験機1号機LE-7Aエンジン領収燃焼試験の状況について(その2)
種子島宇宙センター液体ロケット試験場
 これとは別に田代試験場では、11月9日よりLE-7Aの技術データ取得のため認定型エンジンの燃焼試験を実施する。
LE-7Aエンジン技術データ取得試験の実施について
LE-7Aエンジン技術データ取得試験スケジュール (田代試験場)

・太陽フレア警報発令
 アメリカ海洋大気局(NOAA)宇宙環境センター(SEC)は11月9日、太陽の激しい放射線嵐が8日の2350UTに始まり、NOAA宇宙気象スケールでS4のレベルに達した、と発表した。NOAAによれば、これは1976年からの観測史上4番目に激しい太陽フレアで、数時間以内にピークを迎え、3日から4日掛って緩やかに終息すると見られる。
 この太陽放射線は衛星にも影響を及ぼす可能性があるが、現在国際宇宙ステーション(ISS)で飛行中の3人の宇宙飛行士には影響はない。ただしこのような太陽フレアの間はISSからの機外活動(EVA)は行われないことになる。
NOAAのニュース
SpaceRef.com
SOHO太陽観測衛星HP

・宇宙行き議員上院に鞍替え
 8日の大統領選挙と同時に行われた上下両院の議院選挙で、フロリダ州から宇宙飛行経験者の上院議員が誕生した。ビル・ネルスン議員(民主党)がその人で、1986年下院議員だった当時に「視察」の名目でスペースシャトル・ミッション61Cにペイロード・スペシャリストの資格で乗り込んでいる。今回上院への鞍替えを図り当選したものである。
 なお議員として初めて1985年に宇宙を飛んだジェイク・ガーン上院議員(ユタ州、共和党)は、1992年に政界を引退している。
Space.com

・訂正
 No.241で報じた「NASAが宇宙研と共同の火星ミニローヴァー開発中止」について、(株)アストロアーツのウェブニュース担当田子周作氏より誤りのご指摘があった。
 241では文部省宇宙科学研究所のMUSES-Cのサイトを元に
>「MUSES-Cは2002年7月にM-5ロケットによって小惑星1989ML
>(2000年3月現在の名称)に向かう軌道に投入され、2003年10月に小
>惑星に到達、約5ヶ月間滞在した後サンプルとともに小惑星を離れて、2006
>年6月に回収される。」
と書いたが、この計画はすでに変更になっていて、

 MUSES-Cは2002年の11〜12月にM-5ロケットによって小惑星1998SF36に向かう軌道に投入され、2005年の9月に小惑星に到達、約5ヶ月間滞在した後サンプルとともに小惑星を離れて、2006年6月に回収される。

が正しい。
NASAの計画変更発表
アストロアーツ・ウェブニュース

 田子さん、ご指摘を感謝いたします。

No.243 :宇宙ステーション活動第2週目へ
投稿日 2000年11月7日(火)11時26分 投稿者 江藤 巌

ISSステイタス・リポート#00-51
 国際宇宙ステーション(ISS)の第一次遠征隊は、5日の日曜は一日休息を取った。ISSでは週の5日を作業に充てて、週末は基本的に休養と言うサイクルを取っている。もっとも引っ越したばかりのこととて完全な休みとはならなかったようで、機器の取り付けや調整を行わねばならなかったようだ。
 6日にはコンピューターの設置やセットアップ、
ロシア製のTORUドッキング・システムのテレビモニターの設置などが行われた。TORUはプログレス無人補給船をISS側からコントロールしてドッキングさせるシステムである。11月18日には遠征隊は最初のプログレス補給船を受け入れる。
 こんごISSはルーティンの活動に移行して行くので、ステイタス・リポートも特に重要な出来事があった場合にだけ紹介して行く。毎日発行されるNASAのISSステイタス・リポートはNASAのHUMAN SPACEFLIGHTのページで読むことが出来る。また宇宙開発事業団(NASDA)がISSステイタス・リポートの日本語訳を国際宇宙ステーションNASAステータスレポートのページに載せている。
http://neo.jpl.nasa.gov/

 広東省珠海で開催されている中国航空宇宙ショーにおいて国防科学技術工業委員会の欒恩傑副主任は、中国が21世紀初めにも有人宇宙船を打ち上げる計画であると発表した。中国が近く神舟2号を打ち上げるとの噂はしばらく前から流れているが、欒副主任が言及したのは2001年中にも予定されている次の飛行のことだと思われる。
 また欒副主任は、中国が国際宇宙ステーション計画にも参加したい意向を示した。
YAHOO! NEWS
SPACE.COM

 2030年にも地球に衝突する可能性があると話題になった小惑星2000SG344だが、その後の詳しい軌道計算の結果、衝突の可能性はほとんどないことが明らかになった。最新のデータでは、2000SG344は2030年の9月23日に、地球と月の距離の11倍のところを通過するはずである。
NASAジェット推進研究所(JPL)のNEOサイト
SpaceDaily
日本スペースガード協会
The Spaceguard Foundation
The Spaceguard Foundation(日本のミラーサイト)
NeoDys(Near Earth Object Dynamic site)
Asteroids and comets impact hazards
その他の地球に接近する天体(NEO)に関するリンク集

 いよいよアメリカの大統領選挙の投票だが、現在の民主党政権が継続するにしろ、共和党が政権をダッシュするにしろ、NASA(米航空宇宙局)のダニエル・S・ゴールディン長官が辞任するのは確実と見られている。ゴールディン長官は1992年4月にブッシュ前大統領によって任命され、異例のことに共和党・民主党の二代の政権をまたいですでに8年近く長官の地位にある。ゴールディンの長官在任期間は、ケネディ・ジョンスン両民主党大統領に仕えた第2代のジェイムズ・E・ウェッブ長官の7年8ヶ月を凌ぎ、1期としては歴代最長である。なおジェイムズ・C・フレッチャー博士は4代目と7代目の2回長官に就任して、合計約9年間務めている。

No.242 :X-38滑空実験成功
投稿日 2000年11月5日(日)14時36分 投稿者 江藤 巌

ISSステイタス・リポート#00-50
 国際宇宙ステーション(ISS)滞在3日目の11月4日、第一次遠征隊の3人はISSの機器の設置と点検を続けている。3日に取り付けられた二酸化炭素吸収装置ヴォズドゥフと酸素発生装置クリスタルが始動されて、どちらも正常に機能していることが確かめられた。それまで二酸化炭素を吸収していた水酸化リチウムのキャニスターは使用を停止され、ヴォズドゥフが役割を取って代わった。一方クリスタルは電力を食うので、ISSに新しいソーラー・アレイが取り付けられるまでは使用されない。
宇宙飛行士はまたズヴェズダー・モジュールの空調系統に、新しい圧縮機を取り付けた。現在のISS内の環境は気温華氏75度(摂氏24度)、湿度40〜50%である。

 ところで、ISSには第一次遠征隊が乗って来たソユースTM-31が現在もドッキングしており、万一ISSを放棄しなければならない事態が生じた場合には、ソユースに乗り移って地上に帰還できる。しかし将来ISSに多人数が長期滞在するようになった場合には、3人乗りで軌道上での機能維持期間にも限りのあるソユースだけでは心許無い。
 ISS専用の救命ボートとして現在開発が進んでいるのがX-38実験機で、ISSにドッキングした状態で長期間置かれ、緊急事態では6人までの宇宙飛行士が乗り組んで自動操縦で帰還できる。X-38はリフティングボディ形態を持っているが、着陸は大きなパラシュート(パラフォイル)で行う。
 そのX-38の無人縮小実験機が11月2日にNASAのドライデン飛行研究センター(エドワーズ空軍基地に隣接)で行われ、成功を収めた。NASAのB-52実験機から高度11000mで空中投下されたX-38は、投下直後に360度の不時ロールに陥ったものの、ドローグ・シュート展開でコントロールを回復し、面積70m2のパラフォイルを展開して目標地点から約1km以内に着陸した。
ドライデン飛行研究センター(DFRC)プレス・リリース
DFRCのX-38HP
FLORIDA TODAY
SPACE.COM

No.241 :NASAが宇宙研と共同の火星ミニローヴァー開発中止
投稿日 2000年11月4日(土)16時17分 投稿者 江藤 巌

 NASA(米航空宇宙局)は、日本の宇宙科学研究所(ISAS)のMUSES-C探査機に搭載する予定だったミニローヴァーの開発を、コストと重量の超過を理由に取りやめると発表した。
SpaceRef
FLORIDA TODAY
 MUSES-Cは小惑星の表面物質を地球に持ち帰るサンプル・リターン・ミッションで、NASAのローヴァーを小惑星の表面に降ろすことになっていた。
MUSES-Cは2002年7月にM-5ロケットによって小惑星1989ML(2000年3月現在の名称)に向かう軌道に投入され、2003年10月に小惑星に到達、約5ヶ月間滞在した後サンプルとともに小惑星を離れて、2006年6月に回収される。
MUSES-Cのローヴァーの資料(pdf)

ISSステイタス・リポート#00-49
 国際宇宙ステーション(ISS)に乗り込んだ第一次遠征隊(Expedition One crew)のシェパード、ギジェンコ、クリカリョフの3人は、ちょうど引っ越し直後の家庭と同じ悩みを抱えているようだ。すなわち、いろんなものがいろんなロッカーやボックスに詰め込まれているため、捜し物に時間が掛かっていらいらしてくるのだという。宇宙飛行士の睡眠スペースまでも収納に充てられているため、彼等は寝袋で寝ているという。
現在ISSはズヴェズダー、ザリャー、ユニティの三つの気密モジュールから構成されているが、ユニティには3人は立ち入らないことになっている。これは現在のISSの二対のソーラー・アレイでは、ユニティの空調まで行うほどの電力を得られないからである。
このため3人の宇宙飛行士達は、もっぱらロシア製のズヴェズダー・モジュール内で活動している。
 宇宙ステーション内での最初の丸一日になる11月3日、ロシア製のヴォズドゥフ(Vozdukh)空気再生装置をズヴェズダー内に取り付けた。ヴォズドゥフはISS内部の空気から水酸化リチウムを使わずに二酸化炭素を除去して、船外に排出する仕組みになっている。
水を電気分解して酸素を供給するエレクトロン(Elektron)システムは、6日に取り付けられることになっており、現在は化学的な酸素発生キャニスターが使われている。
 遠征隊長のシェパードは3日はもっぱらズヴェズダーの通信システムとラップトップ・コンピューターの接続を行った。これによりISSからメールやビデオを地上に送信することが可能となった。
 クリカリョフはズヴェズダーのメイン・コンピューターのインストールを行い、またギジェンコと二人でズヴェズダーのバッテリーの一つの不調を分析した。バッテリーの不調の原因は、クリカリョフによれば配線のピンの一つが曲がってしまっていることにある。
FLORIDA TODAY

 悪天候を理由にケネディ宇宙センタ−ではなくカリフォーニア州のエドワーズ空軍基地に帰還したスペースシャトル・ディスカヴァリーが、11月3日の午後にようやくボーイング747改造機(Shuttle Carrier Aircraft)の背中に乗ってKSCに戻って来た。
FLORIDA TODAY

No.240 :スペースステーション”アルファ”
投稿日 2000年11月3日(金)23時46分 投稿者 江藤 巌

ISSステイタス・リポート#00-48

 国際宇宙ステーション(ISS)のコールサインが”アルファ”(Alpha)と決まった。
 ISSに入った第一次常駐クルーの隊長のシェパード(米)とギジェンコ、クリカリョフ(露)の3人は、2日の朝にNASA(米航空宇宙局)のダン・ゴールディン長官と電波で会見した。
その席上シェパードは、「実は我々のリクエストがある」として、「宇宙ステーションの第一次遠征のラジオ・コール・サインを”アルファ”とする許可を頂きたい」と求めた。
ゴールディン長官は面食らったようだが、「暫定的に”アルファ”としよう。そうしたまえ」と、嗤いながら答えた。
その後ゴールディン長官は、正式にISSの第一次遠征ミッションのコールサインを”アルファ”とすることを認可した。
 国際宇宙ステーション(ISS)計画に関しては、これまでもアピールする愛称を付けようという動きがあったが、計画参加国の言語の違いなどから、ぴったりの愛称が見つかっていない。
もともと宇宙ステーション計画は、米レイガン政権の提唱で始まり、一時は自由主義陣営の団結を謳った”フリーダム”(自由)の計画名が与えられていた。
しかし冷戦が終結し、宇宙ステーション計画にロシアが参加するようになると、対抗意識の強く出た”フリーダム”の名称は取り下げられた。
一時は代案として”アルファ”の名も浮上したが、結局正式にはISS計画はいまだに名無しである。
 ”アルファ”の名は、第一次遠征隊が実際に飛ぶ前から名称の候補として噂されており、ゴールディン長官も耳にしていなかったはずはない。
しかしNASA当局では”アルファ”を正式のISSの愛称として認める意志はないようだ。また”アルファ”はギリシア語のアルファベットの最初の文字であるが、最初に宇宙ステーションを飛ばしたのはソ連であるとして、ロシア当局もこの愛称には反対している。
 今回のシェパード遠征隊長のゲリラ的な要請には、ロシア側乗員二人も賛成しているようだ。
しかしゴールディン長官の承認はあくまでも第一次遠征隊のコールサインに関してのもので、ISSの名称が”アルファ”と決まったわけではない。
FLORIDA ODAYの記事
 

No.239 :常駐クルーISSに入室
投稿日 2000年11月2日(木)23時59分 投稿者 江藤 巌

 ソユースTM-31と国際宇宙ステーション(ISS)は、2日0921GMT(1821JST)にドッキングした。
ISS・シャトルの位置情報のページで、
year month day hour minute
2000 11 2 18 21
に書き替えてPLOTをクリックすると、ISSとソユースTM-31がドッキングした瞬間の位置が見て取れる。
国際宇宙ステーションに長期滞在する第1次搭乗員の乗り組んだソユーズ宇宙船と国際宇宙ステーションとのドッキング成功について(国際宇宙ステーション組立ミッション(2R))
ISSステイタス・リポート#00-47
 ISSとソユースとの間のハッチは1023GMT(1923JST)に開かれて、シェパード(米)、ギジェンコ、クリカリョフ(露)の3人の宇宙飛行士がISSに足を踏み入れた。3人は来年の2月半ばまで115日前後ISSに滞在し、シャトルSTS-102で到着する第二次常駐クルーと交替して地上に戻ることになっている。

 現在ISSはこのような形態になっている。カラー
一番向こう側の小さな宇宙船(線画では青く着色されている)が、今回ドッキングしたソユースTM-31。その手前がロシアのモジュール”ズヴェズダー”、次がロシアが製作した”ザリャー”(FGB)、一番手前がアメリカの”ユニティ”ノードである。ユニティの上に見える箱形の物が、前回のスペースシャトルSTS-92で取り付けたZ1トラス。ユニティの手前と下側に突き出ているのがドッキング装置(PMA)で、下側に見えるPMA-3もSTS-92で取り付けられた。
11月半ばにはISSに無人のプログレスM補給船が送られて、ザリャーの下側にドッキングする。プログレスが補給を終えて切り離されたあと、12月にはシャトルSTS-105がPMA-3とドッキングすることになっている。

No.238 :ドッキング成功!
投稿日 2000年11月2日(木)17時28分 投稿者 江藤 巌

 ソユースTM-31は、国際宇宙ステーション(ISS)と日本時間の午後6時20分過ぎ(0920GMT)にドッキングに成功した。第一次常駐クルーは1100GMT頃にISSに乗り込むことになろう。

No.237 :NASDA過払い還請求とLE-7A領収試験トラブル続報
投稿日 2000年11月2日(木)14時43分 投稿者 江藤 巌

 宇宙開発事業団(NASDA)は、日本航空電子工業との契約で過大な請求があったとして、同社に対して過払い額3900万円に金利1900万円を加えた損害額計5800万円を請求することにした。
日航電による過大請求に係る追加調査結果及びこれを踏まえた返還請求について

 232で伝えたH-2Aの1号機用のLE-7Aエンジンの領収試験で発見されたトラブルについての続報。H-IIAロケット試験機1号機LE-7Aエンジン領収燃焼試験の状況について
 問題のLE-7Aエンジンはこれまでに3回の試験を行っているが、10月18日の3回目の試験において液体酸素ターボポンプ(OTP)内に異物が発見され、また液体酸素タンク加圧配管からの漏洩が発見された。
 異物は軸トルク点検のためトルクチェックポートを開放したところ発見され、OTPのケーシング内面から剥がれたニッケル箔と判明した。原因はケーシングのインデューサライナ差込部のニッケル・メッキの密着性が十分でなく、メッキが剥がれて流路に流れ出たものと推定された。
対策としては、異物の発生源であるケーシングのニッケル・メッキを全て取り除き、差込部を約30マイクロメートル厚くした新製作のインデューサライナを組み付けることとする。
 酸素タンク加圧配管からの漏洩は、エンジンから酸素ガスを取り出して液体水素タンクを加圧するための熱交換器から機体へ戻る配管の3個のベローズ(蛇腹)部分のうち、機体側に近いベローズも30〜35mmの亀裂が確認された。亀裂の破面の電子顕微鏡観察結果からは疲労破壊に特有のストライエーションが観察され、原因は5200サイクルの疲労破壊と推測された。現在原因を特定するための振動データの詳細分析、振動・変形モードの解析、確認試験を実施中である。
 

No.236 :中国が航法測位衛星打ち上げ・近く神舟2号打ち上げか
投稿日 2000年11月2日(木)12時41分 投稿者 江藤 巌

 中国は10月31日の深夜(30日1602GMT)に、四川省シーチャン(西昌)の射場からCZ-3A(長城3号A)で、初めての航法測位衛星「北斗」航法試験衛星(Beidou Navigation Test Satellite-1)を打ち上げた。BNTS-1は打ち上げ27分後に計画通りの軌道に乗った。
SpaceDailyの記事
FloridaTodayの記事
 中国が近く有人宇宙機「神舟」(Shenzhou)の2号機を打ち上げるという噂が、しばらく前から流れている。
ただし約1年前に打ち上げられた1号機と同様に、今回の神舟2号も無人で打ち上げられる模様。
中国最初の有人飛行は21世紀になろう。
SpaceRef.comの記事
 神舟。外観はロシアのソユースに似るが、軌道モジュール(最上部)が球形ではなく円筒形であるなど、中国独自の技術も盛り込まれている。神舟を収めるフェアリングと緊急脱出ロケット(最上部)
中国は長期的には有人月着陸も計画していると言われる。
これまでの中国の宇宙開発についてEncyclopedia Astronautica
 

No.235 :ソユースTM今夕ISSとドッキング
投稿日 2000年11月2日(木)09時39分 投稿者 江藤 巌

 10月31日に打ち上げられたソユースTM-31は、日本時間今夕6時過ぎに予定されている国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに向けて、順調に飛行中である。
ISSステイタス・リポート#00-46
 ソユースTM-31がドッキングするドッキング装置を空けるため、ISSに結合していたプログレス無人補給船は31日の2202CST(日本時間1302JST)に切り離されて、2周後の1日0105CST(1605JST)に軌道離脱、大気圏に突入して南太平洋のフィジー島とソロモン諸島の間の上空で燃え尽きた。
 飛行三日目になる2日にはISSとの自動ランデヴー、ドッキングが行われる計画である。ドッキングに備えて、飛行31周目に3人の宇宙飛行士はソコルと呼ばれる船内宇宙服を着用する。
自動ランデヴー・シークェンスは32周目、2日0100CST(1600JST)頃に開始され、一連の細かい軌道修正のあと、0257CST(1757JST)にはソユースTMはISSの周囲を回るフライアラウンドを行う。0306CST(1806JST)にはソユースTMとISSとは約150mの間隔を保って位置保持(ステーションキーピング)を行う。
最終的アプローチは0315CST(1815JST)に開始され、0324CST(1824JST)、軌道34周目に両者はドッキングする予定である。
ドッキング装置が相手を捕捉(キャプチャー)してから、お互いしっかり固定されるまでには約20分を要する。ドッキング完了から約90分後に、宇宙飛行士がISSに入室する。
 ドッキングの様子は、NASA-TVとインターネットビデオで生中継される。NASA-TV放映予定NASA TV on the Web
 

No.233 :ソユースTM飛行二日目
投稿日 2000年11月1日(水)18時49分 投稿者 江藤 巌

 10月31日にカザフスタンのバイコヌール・コスモドロームから打ち上げられたロシアのソユースTM-31は、飛行二日目のプログラムを順調に遂行している。
 ギジェンコ(露)、シェパード(米)、クリカリョフ(露)の3人の乗員は、31日の1500GMT頃(日本時間11月1日00時)に就寝し、11月1日の0030GMT(1日0930JST)に起床した。
乗員は2日の0924GMT(1824JST)に予定されている国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに備えて、ソユースTMのドッキング装置を展開し、姿勢制御装置の機能を確かめた。
すでに31日に軌道に乗った直後にソユースTMは2回の軌道修正を行っており、ISSとのランデヴーに向け飛行二日目には3回目の軌道修正も行われる。
一方ヒューストンのISS管制センターでは、乗員の到着に備えてISSの環境制御/生命維持システム(ECLSS)を始動している。
ISSの現在位置(MSFC)
ISSの現在位置(NASA Human Spaceflight)
ISSの現在位置(NASDA)
ISSステイタス・リポート
ISSステイタス・リポート10月31日2100CST