宇宙作家クラブ
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No.2309 :会見2部登壇者 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年10月15日(火)00時37分 投稿者 柴田孔明

会見2部登壇者


No.2308 :打ち上げ経過記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年10月15日(火)00時36分 投稿者 柴田孔明

 H-IIBロケット8号機は2019年9月25日01時05分05秒(JST)に打ち上げられ、「こうのとり」8号機を軌道上に投入しました。このあと竹崎展望台で記者会見が開催されています。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・打ち上げ経過記者会見(第1部)

・登壇者
文部科学省 文部科学副大臣 上野 通子
宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦
・側面列席者
文部科学省 大臣官房 審議官(研究開発局担当) 岡村 直子

・打ち上げ結果報告(阿部)
 三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから令和元年9月25日1時5分5秒に宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機を搭載したH-IIBロケット8号機を予定通り打ち上げました。ロケットは計画通り飛行し、「こうのとり」8号機を正常に分離、所定の軌道に投入したことを確認しました。ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、西北西の風5.4m/s、気温23.2度Cでした。「こうのとり」8号機の軌道上での初期機能確認を無事終了し、国際宇宙ステーションへのカーゴの輸送を成功裏に完遂することを心より願っております。
 本日の打ち上げ成功でH-IIBは通算8機中8機の成功、成功率は100%です。H-IIAを合わせると通算48機中47機の成功、成功率97.9%です。またH-IIA/H-IIB、42機連続の打ち上げ成功となりました。
 昨年の10月29日にH-IIAロケット40号機を打ち上げてから約11か月ぶりの打ち上げ、さらに2009年9月11日のH-IIB初号機の打ち上げから10年目の打ち上げとなりました。また今回は活動法適用の下での民間による最初の打ち上げでした。
 2週間前9月11日の打ち上げ延期時には、皆様に大変ご心配をおかけいたしましたが、その後原因を究明し万全の対策をとって本日の打ち上げに臨みました。無事打ち上げる事ができ、大変安堵しています。本日の打ち上げに対し、ご支援ご協力いただきました関係者の皆様方に心よりお礼を申し上げます。
 当社は今回の経験を糧とし、さらに安定的に打ち上げを提供できるよう今一度心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。これからも引き続き、ご支援ならびにご指導ご鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

・登壇者からの挨拶(上野)
 お手元に配付しております大臣談話(※)にありますように、今回の打ち上げ成功によりH-IIBロケットして8機全て成功、基幹ロケットとして46機連続での成功となったことは、我が国のロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、大変喜ばしいものと思っております。特に今回はご存じのように火災による打ち上げ延期という事態を乗り越え、昨年11月の宇宙活動法施行後初の三菱重工業株式会社を主体とする基幹ロケットH-IIBロケットの打ち上げが成功したということであり、民間企業による宇宙活動拡大の観点からとても意義深いものと認識しております。
 今回のロケット打ち上げにご尽力ご支援いただいた関係者の皆様方に、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
 「こうのとり」8号機では、国際宇宙ステーション(ISS)の運用に不可欠な水や食料などに加え、JAXAとソニーコンピュータサイエンス研究所が共同開発した光通信システムなど、宇宙空間を利用した実証実験のための装置も輸送しております。「こうのとり」8号機が無事に物資補給を完了し、ISSから様々な成果が生まれることを期待しています。文部科学省といたしましては、「こうのとり」の着実な運用を通してISSの運用に貢献していくとともに、基幹ロケットのさらなる安全性、信頼性の向上や打ち上げ価格、運用コストの半減を目指す次期基幹ロケット「H3ロケット」の来年度打ち上げに向けた開発などに着実に取り組んでいきたいと考えております。

※配布資料より文部科学大臣談話
 本日、H-IIBロケット8号機の打上げに成功し、搭載していた宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
 今回の打上げ成功により、H-IIBロケットは8機連続、我が国の基幹ロケットとしては46機連続での打上げ成功となり、着実に信頼性を向上させていることを、私も喜ばしく思っております。
 今後、「こうのとり」8号機が、国際宇宙ステーションへの確実な物資補給を達成できるよう、文部科学省としても関係機関とともに引き続き尽力してまいります。
 令和元年9月25日 文部科学大臣 萩生田 光一

※配布資料より内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話
 本日、H−IIBロケット8号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機の打上げが無事に成功したとの連絡を受けました。
 この打上げの成功により、国際宇宙ステーションへの物品等の打上げを担うH−IIBロケットは8機連続の打上げ成功となります。
 今後、「こうのとり」が国際宇宙ステーションへの物資補給を無事に成し遂げ、国際宇宙ステーション計画の中での我が国の信頼及びプレゼンスが更に高まり、今後とも、我が国が国際宇宙ステーションの運用に大きく貢献することを期待します。
 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後も引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。
 令和元年9月25日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 竹本 直一

・登壇者からの挨拶(山川)
 H-IIBロケット8号機により打ち上げられました宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機は、通信リンクおよび3軸姿勢を確立し、国際宇宙ステーションISS到着に向け順調に飛行していることをご報告いたします。今回は三菱重工業株式会社殿にとっても、宇宙活動法施行後初めての打ち上げということで、重要なマイルストーンであったとは思いますけども、あらためて感謝とお祝いを申し上げます。
 本日の打ち上げ実施にあたり、ご支援ご協力をいただきました地元の皆様はじめ関係機関に対して厚く御礼を申し上げます。今回、これまでお話がありました通り、「こうのとり」8号機では6号機7号機に引き続きまして新型ISSバッテリ、米国宇宙航空局の水タンクや酸素と窒素のタンクなど、ISSの運用に欠かせない物資の他、「きぼう」から船外に放出する3基の超小型衛星、細胞培養装置および宇宙探査イノベーションハブの研究テーマとして初めて軌道上で実証する予定の小型衛星光通信システムSOLISSなどを輸送します。
 このあと「こうのとり」8号機は9月28日にISSに到着し、ロボットアームによる把持が28日20時15分頃、そしてISSへの結合完了が29日未明の予定でございます。確実に輸送ミッションを成功させるよう、引き続き万全を期してまいりたいと思います。

・質疑応答
読売新聞・折しもNASA長官が来日されて、月探査に関してJAXAとNASAの共同声明を出されたばかりだが、長官が輸送能力の高さを非常に評価していると伺っている。今回H-IIBと「こうのとり」で実績をひとつあげたが、この位置付け、日米の交渉が大詰めを迎えていると思うが、打ち上げに成功したことをまずどう思われるか。
山川・まず打ち上げの成功自体は大変ほっとしている状況でございます。10年前の初号機から8号機まで連続での成功ということで、いま「こうのとり」8号機もISSに向かって順調に飛行しているところでございます。そういった意味では100%という信頼性ですね、それからアメリカから見ても安心して一緒に進んでいくことができるパートナーだと見ていただけるのではないかという風に感じております。「こうのとり」というのは、我が国がISSに参加するにあたって物資輸送を担う非常に、根本的に重要な輸送船でありまして、それが物資を輸送することによって我々日本がISSにおける様々な活動を実施することができるというものでございます。更に今後「こうのとり」の後継機としてHTV−Xの開発を進めているところですけども、これは輸送能力をさらに高めるものでございますけども、ISSに物資を輸送することだけではなく、さらにその後を見据えて、たとえば米国が中心となって進めている月近傍の有人拠点ゲートウェイというものがございますけども、そこに例えば物資を輸送するとか、さらに発展していく、そういった輸送船という風に考えております。そういった意味で今回の成功というのがさらなる日米の宇宙協力の大きな一歩を踏み出したのではないかという風に考えております。

共同通信・今回は火災による延期があった。三菱重工さんのホームページに「ご要望の日に確実に」とあります。日本に対して求められるのはコスト面では厳しいということで品質が第一だと思うが、今回「ご要望の日に確実に」が達成ならなかった点についてどう考えられているか。それを達成していくために今後どういう事が必用か。
阿部・まず9月11日の打ち上げにおいて、多くの方々の期待や応援にかかわらず打ち上げ時間前に延期と、皆様方にご心配ならびに種々のお手間をおかけしましたことに対しては大変重く受け止めております。その中で「ご要望の日に」ということなんですが、現実的に商業打ち上げの世界で申し上げますと、当日に打ち上げるということが大きな意味を持つということは、あるスロットの中でその時期に打ち上げるということが競争に非常に大きく効きます。どういうことかというと、我々の競合の場合ですと半年から1年くらいずれたりするケースがありますが、今までのところ我々はこのスロットで打ち上げますと言ったものは確実に打ち上げてきていますので、そういう意味では商業的な面では大きな影響は無いだろうという風に思っています。ただし、これから先オンタイムで要望の日に打ち上げていくためには、これまで機体については射点に不適合を持ち込まないということでいろいろやってきたが、今回少し新しいケースでございまして、機体とインターフェイスする設備側との間で起こっています。そういう意味で従来よりも広げて、機体とインターフェイスする部分でも射点に不適合を持ち込まない、確実にチェックをしていくといったことを考えていかなければならないという風に思っています。さらに今後の打ち上げだけではなくて、開発中のH3についても今回の件を反映していきたいと思っています。

共同通信・今後信頼を高めるために情報を積極的に提供することも大事だと思うが、今回の事象に関してはホームページ上ではごく簡単な説明しかなかったが、そういった取り組み、対策、原因の究明についてきめ細かに説明していく姿勢についてはどのように考えているか。
阿部・我々としてはきめ細かく透明性を持ってやらしていただきたいと思っていますし、そういう風に努めてきているつもりでございますが、不十分なところがございましたら引き続きご指導頂ければと思います。

朝日新聞・9月11日でHTV初号機から10年で、その間に宇宙活動法が施工され今回は民間が主体となったが、次の10年の宇宙への輸送はどういう形でやっていく必用があると考えるか。
山川・宇宙活動法というのがそもそも民間が事業に参入できるようにするのがきっかけだと認識しております。今回、民間打ち上げとしては最初の取り組みになった訳です。一方で国内でも様々な企業、ベンチャー企業なりが新しく宇宙輸送ビジネスに踏み込もうとしているところでありまして、JAXAとしてはそういった民間が活発化するのは非常に喜ばしいことだという風に思っています。従ってJAXAとしてはそういった新たな民間事業者がどんどん参入することは、政府全体あるいは日本全体としての輸送の選択肢が増えていくことだと認識しております。ですので、今後10年でそれがどれだけ進むかは、いろんな技術開発はこれから乗り越えていく必用があるかと思いますけども、そういった方向に必然的になっていくと考えています。

NHK・11日の延期は例に無い発射台での火災があった。そこをJAXAではどのように見ているか、また必要な対策はどう考えているか。また民間のMHIに実施者が引き継がれて、そのトラブルを受けた対応を含めて、一連の打ち上げ輸送をどう評価されているか。
山川・今回、三菱重工さんが初めて打ち上げ実施者として取り組んでおられて、そのときに過去に発生していない火災という事態ではありましたけれども、今回三菱重工業殿を中心として適切に原因究明と処置を実施して、再打ち上げができたということは非常に良かったという風に考えております。我々JAXAとしては今後も着実な打ち上げを期待しているというところでございます。

NHK・挨拶の中で今回の打ち上げというのは、民間企業による宇宙活動の拡大の観点からとても意義深いものだとおっしゃられてたが、今回で言うと火災を乗り越えての打ち上げということにも触れられていたが、どのあたりが意義深いものであるか、その上で何か反省点が無かったかの見解も含めて教えていただきたい。
上野・やはり火災等の事故とかを乗り越えたということがひとつありますが、それもやはり民間との協力は科学技術だけではなく全ての分野でこれから必用だと思う、という点も含めての発言でした。また特に宇宙開発につきましては、民間と手を携えるとともに、世界とも手を携えていかなければならないという観点からも、文部科学省そしてJAXAの枠をこえてもっと幅広く、様々な形の協力体制が必用だということをお話したわけでございます。

・宇宙活動法施行後、民間事業者が主体となった初の例、国産大型ロケットでも初だが、その意義についてどう思われるか。活動法の適用として打ち上げの最終的な責任を負う立場になって、今回準備をしたり作業をしたりする中で違うことや戸惑ったことがあったか。
阿部・まず活動法に従って打ち上げた意義は、ある意味でいうと世界標準に近づいたと考えています。活動法の施工で戸惑ったかについて、従来なかった機体としての型式の証明のようなものをいただいたり、打ち上げの許可をいただいたり、そういったいろんな手続きを初めてやらしていただきましたので、そういった面では我々の方にもいろいろ慣れない部分が多々あったのかなと思います。それに加えて今回打ち上げ延期がありましたので、それに伴って種々手続きがございました。そういった部分でも今回初めてということで、慣れない部分が多々ございましたが、いろんな経験をさせていただいたかなと思っております。次回に活かしていきたいと思っております。

・世界標準に近づいたというのは、どういう意味か。
阿部・活動法が制定されるときに政府の方からいろいろと発表説明があったと思うのですが、アメリカとかヨーロッパでは活動法に近い形態、ほぼ同じようなものが既にあります。そういった意味で日本がそれに近づいて、全く同じではないですが、ほぼ等しいものになったのかなと思っております。

・責任者になって手続きが変わって、やりやすかったというより今回は慣れなかったということか。
阿部・実際の機体を作ったり打ち上げたりする現場の作業は何も変わっていない。ただ、手続きとかそういった部分では従来と違うので、そういう部分は今回初めて経験させていただきました。


・打ち上げ経過記者会見(第2部:技術説明)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊

・質疑応答
読売新聞・発表されている内容としては、正常に分離したということか。
田村・はい。

読売新聞・それは予定していた軌道に投入したということか。
田村・その通りです。

読売新聞・認識としては当たり前だが、打ち上げは成功したということで良いか。
田村・はい、打ち上げは成功いたしました。

NHK・延期もあったが、今日軌道に投入されての感想。今後、ISSでの到着・把持に向けての気持ち。
辻本・今回の打ち上げにご協力いただきました関係各所の皆様にあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。無事にロケットの方から分離していただきまして、「こうのとり」方は理事長の山川からもご説明させていただきましたけれども、順調に飛行を開始しております。私自身といたしましては、打ち上げまでの作業のとりまとめという立場でやってきましたので、まずはほっとしておりますし、筑波で始めました運用チームにうまくバトンを渡せたかなと思っております。これから把持までの約4日の飛行の方、筑波の方でうまく運用していただきたいと思っております。

NHK・8号機ではスタートラッカが搭載されたが、これは既に実証が始まったのか。
辻本・8号機はスタートラッカですとか、これまでの機体から手を入れているところがございます。スタートラッカも最初の姿勢制御のところで使用しておりますし、良好に作動しているところは確認できております。

NHK・9号機まで計画されている中での、8号機の位置付け。
辻本・8号機と9号機というのは、当初「こうのとり」は7号機までの予定のところで2機追加といった位置付けになります。そういった中で我々としては追加とともに後ろで控えております新型宇宙ステーション補給機、HTV−Xと呼んでおりますけども、そちらにも繋がるような技術の実証といったものも進めております。今回のミッションを通じて先の宇宙開発に繋がるような技術も併せて取得しつつ、物資は確実に輸送するといったことをこなしていきたいと思っております。

鹿児島テレビ・前例の無い火災から2週間、いろんな思いがあったと思うが、打ち上げに成功したことを受けてどんなお気持ちか。
田村・9月11日の初回の打ち上げ日に火災という形で延期となりまして、顧客でございますHTV様に多大なご迷惑とご心配をおかけしたことが一番で、それを重く受け止めておりました。その中で我々社内外いろいろな方のご支援を仰ぎながら原因追及と対策を講じまして、それでなんとか今日の日に再度打ち上げのチャンスをいただくことができて、成功に繋げることができて本当にほっとしている。本当に成功に結びつけられて本当に良かったなと素直に思っております。

鹿児島テレビ・拍手している関係者の中に涙ぐんでいる方もいたが、打ち上げのトップとして打ち上げを終えた気持ちはどうか。
田村・やはり非常に重い責任というのを感じた2週間でございました。その中で今日、HTV分離を聞いた時には、本当にほっとしたというのが正直なところでございます。

共同通信・再発防止施した部分について、あらためて検証する予定はあるか。
田村・今回施した部分について、まだ現物を見ている訳ではない。噴煙を浴びた状態になっているので、いまどういう状態かわからないです。それを確認して、その上で検証していきたいと思っています。

共同通信・打ち上げがまた1日延期になったが、HTVの把持の時間はほぼ変わらなかったが、これは何か行程をショートカットしている部分があるのか、それとも元々時間的に余裕があって、打ち上げ時間が25分程ずれても把持の時間は殆ど変えずに済んだのか。
辻本・時間については特にショートカットという訳ではございません。打ち上げ日に合わせて軌道を作りまして、宇宙ステーションの近くに行ったところから、クルーが実際に作業できるような時間、たとえば宇宙ステーションは日本時間ではなくてUT(標準時間)で動いておりますので、標準時間の朝から作業を始めてキャプチャができる準備ができるくらいまでというタイムテーブルを作りますと、各号機もそうなんですが、大体キャプチャの時間は同じような感じになっております。

共同通信・打ち上げからキャプチャまで時間がきつくなくてバッファがあるのか。
辻本・バッファがあるかきついかは難しいが、クルーのタイムテーブルを標準的に作って行く中でキャプチャの時間が決まっていくことになります。

南日本放送・9月11日の午前3時5分、炎を監視カメラで見た瞬間の気持ち。
田村・瞬間は、これは何が起きたのかわからないなというのが最初の感想でした。

南日本放送・そこから原因の検証と対策が行われて今日の打ち上げ成功があると思うが、今回の火災が今後のH-IIA、また次が最後のH-IIB9号機、更に来年度打ち上げが計画されているH3に、どのように活かされるのか、活かすべきとお考えか。
田村・私も長い間ロケットの開発と打ち上げをやっていますが、こういった射点での火災は初めての経験です。非常に厳しい体験ではございました。それを我々の若い技術者とかベテランの技術者も含めて一丸となって、それをこの2週間で乗り越えて打ち上げ成功に繋げられたということは、これからのH-IIAもそうですけども、H3の開発に向けて、技術力と言うとおこがましくなるかもしれませんけども、そういった底力といいますか、技術的に頑張れる力、粘り強く成し遂げる力というのは、若いエンジニアという人達も身につけてくれたのかなと。それが人間的な力として繋がっていくのではないかなという風に思います。

南日本放送・今回の火災があったことで今まで見えてなかった部分が表面化したと思うが、そういった点でまだまだ見えていない部分があるかもしれないというのが可能性としてあるが、これまでの打ち上げ作業をゼロから見直すとか検証し直す予定や考えはあるか。
田村・今回、設備で火災が起きたというところがございますので、機体とのインターフェイスという面ですとか、そういった所はさらに、今までも検討といいますか評価していなかった訳ではないが、更に今回の事象を踏まえて、そういった設備のインターフェイスですとかそういったところは強化して次に繋げていきたいなという風に思います。

南日本新聞・宇宙活動法によってメリットもデメリットもあったと思うが、さきほどの会見で手続きに少し時間がかかったとあったが、どのような手続きで時間がかかったのか。また今回2週間かかったが、それが煩雑さで遅れたということは無いか。
田村・我々は2つの許可申請書を提出しております。それには半年くらいは色々時間としてはかかりまして、その間JAXA殿とか内閣府殿に色々ご指導を賜りながら進めてまいりました。なかなか慣れないという面もございまして、いろいろ調整をさせていただきながら申請書を許可いただいたということで非常に安堵したというのが実際のところでございます。この2週間の延期の中で活動法の手続きが元で遅れたことはございません。

南日本新聞・宇宙活動法が施工されたことによる三菱重工のメリットは何か。
田村・活動法が施工されることによって、宇宙開発の裾野が広がっていくということは、我々は基幹ロケットを打ち上げていますけども、そこの裾野が広がっていくことによって、宇宙全体が活気づくというところが一番の、我々としてもメリットかなと思っています。

NHK・火災について原因は究明して対策は万全ということで、三菱重工としてこの問題は終わったということか。
田村・今回の対策は万全と思って打ち上げに臨みました。ただ次の打ち上げに向けては、これ以上改善すべきところがないかとは考えて次に繋げたいと思っていますので、これで終わりという訳では無いと思っています。

NHK・2日前の会見で予測はできなかったという話があったが、それをどう受け止めているか。
田村・全てを予測しきるのはなかなか難しいと思っているが、他にもこういった事がないかというのは予測できないけれども、いろいろな有識者とか知見を集めれば、今回も研究所の方にいろいろ支援をいただいたりもしたので、そういった知見を合わせれば、今判らない・見えていないことでも見えてくるようなところを突き詰めていく必要があるかなという風には思います。

NHK・今回の打ち上げで見えた課題ということか。
田村・そうです。

NHK・情報の透明性という所で、2日前の会見で画像等の資料が提供できないという所が透明性の確保と言えるのか。
田村・我々としては23日の会見で出した資料については、かなり具体的なものを出したつもりです。ただ透明性の件につきましては、まだ我々が不十分な所についてはご指導いただければと考えます。

NHK・今後、同様の事態が起きた場合は、今回の対応と変わってくると考えて良いか。
田村・次に起こる事のものによりますが、極力いろいろ改善していきたいと考えています。

NHK・火災の後、原因究明をするにあたって社内外のいろんな方のご指導をいただいたとあったが、社外の指導というのはどういったものがあったのか。
田村・我々はJAXAさん一緒にやっていますので、JAXAさんの方のご指導を仰いだり、社外といいますか我々のOBの方とか、第三者的な評価をしている部門がございますので、そこに評価を依頼したりとか、そういうことでございます。

NHK・今回の原因究明作業の中で、第三者的というところが気になっているが、宇宙活動法施行の影響もあると思うが、オールMHI体制で原因究明作業をやっていかれたと思ったが、そういった第三者的なといった言葉というのは、今後こういうトラブルが起きた場合に、まさに第三者の有識者を呼んで原因究明作業をすることも選択肢としてはあるのか。
田村・もちろん選択肢としてはあると思います。

NHK・宇宙開発は国民の広い理解と支援が必要と考えるが、そういった意味でも第三者的な有識者の指導や知見が必用だと考えるか。
田村・必用と考えればご指導を仰いでいくことになるのではないかという風に思います。

共同通信・2日前の説明で、今回の事象に関するJAXAとしての体制で不備や瑕疵がなかったかについての質問に、その段階では言えることは無いとのことだったが、無事に打ち上げが終わって、今後JAXAの内部的に検証する予定はあるか。
辻本・私は同じJAXAではありますが、ロケットのペイロード(荷物)の立場になりますので、ロケットの設備については恐らく藤田の方が話したと思いますが、そちらの方のセクションになりますので、今の質問については申し訳ありませんが、ちょっとお答え致しかねます。

以上です。


No.2307 :H-IIBロケット8号機の打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月25日(水)02時18分 投稿者 柴田孔明

2019年9月25日01時05分05秒(JST)に打ち上げられました。


No.2306 :H-IIBロケット8号機再プレスブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月24日(火)17時52分 投稿者 柴田孔明

 移動発射台で起きた火災のため打ち上げが延期されていたH-IIBロケット8号機ですが、いったん2019年9月24日に打ち上げ予定が決まったあと、軌道上の問題から翌25日に変更となりました。この打ち上げ前プレスブリーフィングも当初の9月22日の予定が翌23日に変更になり、前回と同じく種子島宇宙センター竹崎展望台の記者会見室で開催されました。
 (※プレスブリーフィングは機体移動の前に行われていますが事情により後に掲載しています。また、一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全監理責任者 藤田 猛
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・H-IIBロケット8号機 射点での火災原因と対策及び打上げに向けた準備状況(田村)
 ・概要
  ・当日(2019/09/11)の経緯
  03:05 移動発射台開口部で火災発生
  03:07 消火活動開始
  04:17 打上げ中止を決定
  05:10 モニタ上で火炎が見えないことを確認
  06:19 放水を終了
  11時頃 液体酸素/液体水素 排液等の安全化処置完了
  18時頃 安全点検実施後、機体を整備組立棟へ返送
 ・現在までの状況
  原因調査・対策処置を実施
  機体点検(火災の影響及び健全性確認)を完了

  移動発射台はH-IIB用のML3。使用実績はH-IIB TF1〜F8。
  断熱材施工部とエンジンは高さ約550mm、横方向では約200mm離れている。
  (※H-IIA用ML1ではエンジンが中心に1基のため、横方向は約600mmと広く離れている)

 ・火災の状況
  火災発生個所は、『移動発射台 断熱施工部』と特定
  ・鋼材の冷却割れを防止するための断熱施工
  (H-IIB F3号機以降に施工)

 ・原因調査結果
  ・発火源
   ・静電気(耐熱材)…酸素を耐熱材に吹き付けた結果、静電気が発生
   (液体酸素と気体の酸素の混合で無風の場合に高い電圧となる。+6.5kV〜)
   ・発熱物(温度ロガー)…全て回収し発火形跡なし。対策として除去。
  ・燃焼対象物
   ・断熱材(ポリ塩化ビニル)…高濃度酸素雰囲気では燃焼する。空気雰囲気では燃焼せず。
   ・耐熱材(シリコーン)…空気雰囲気、酸素雰囲気のいずれでも燃焼せず。
  ・酸素…液体酸素が1段エンジンより排出。

 ・設備火災の原因
  ・発火源:エンジンの排出口から滴下している酸素が耐熱材に吹きかかり続けることで発生した静電気による。
  ・燃焼対象物:断熱材。

 ・設備対策
  ・耐熱材:帯電防止のためアルミシート施工。(試験で帯電しないことを確認した)
  ・断熱材:延焼防止のためアルミシート施工。(試験で燃焼しないことを確認した)

 ・機体の状況
  以下の点検及び処置を行い、フライトに対して支障のない状態であることを確認した。
  1.熱による影響(火炎):温度計測結果等により、機体に過大な熱影響がないことを確認。
  2.浸水による影響(放水):機体内部への浸水状況を確認し、浸水個所は水分を除去。
  3.煙の侵入による影響:機体表面のすすを除去。内部への侵入が無いことを確認。

・H-IIBロケット8号機の打ち上げ準備状況(鈴木)
 ・H-IIBロケット8号機は飛島工場を6月29日に出荷後、射場作業を開始。
 ・発射整備作業を実施(9月6日〜8月9日)
 ・9月11日午前3時5分、移動発射台開口部からの出火を確認。午前4時17分、打上げ中止を決定。
 ・出火の原因調査/対策処置、機体点検を実施。
 ・9月20日、発射整備作業開始判断会議にて打上げ日を9月24日とすることを決定。
 ・9月21日、こうのとり分離後の2段機体がソユーズ宇宙船に接近する可能性が判明したため、打上げを9月25日に延期。
 ・9月21日、再Y−1作業を良好に完了。

 ・打ち上げ日: 2019年9月25日(水)
 ・打ち上げ時刻: 01時05分05秒(日本標準時)
 ・機体移動予定日時: 2019年9月24日09時00分頃(日本標準時)
 ・打ち上げ予備期間: 2019年9月26日(木)〜2019年10月31日(木)(※)
 (※)予備期間中の打ち上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。
 ・25日の天気予報は晴れ時々くもりで打ち上げに支障は無い。

・質疑応答
読売新聞・断熱材が200mmあるので耐熱材が200mmの位置なのか。
田村・200mmというのは横方向の側面への距離です。

読売新聞・燃えたのは断熱材なのか。
田村・断熱材です。

読売新聞・耐熱材が上なら燃えないような気がするが。
田村・もう少し詳しく申し上げますと、耐熱材の表面に液体と気体が合わさった酸素が流れて耐熱材の表面に静電気が帯電します。そしてこの耐熱材は液体酸素が降りかかるので低温になって割れることがあります。この軸軸間の断熱材施工部の対面軸軸間にも断熱材施工部があるが、そこに割れが見られています。割れることで、それを起因として断熱材のところで発火に至ったというメカニズムではないかと考えています。

読売新聞・施工したのが3号機以降であれば、いつ火災が起きてもおかしくなかったと思うが、どうして今回起きたのか。
田村・いろいろ考えているところではあるが、3号機からこの断熱材を施工して6機目でございました。今回の事象は気象条件も併せて非常に希な複合要因と考えていまして、設備のコンフィギュレーションとしては3号機から8号機まで一緒ではございますが、気象などの複合要因の中で発生したのではないかと考えています。

南日本放送・気象についての複合要因は具体的に何か。
田村・今回の気象の特記事項は、風が非常に弱かったという特徴がございます。他の号機に比べて非常に風が弱かったために、液体酸素が散らばらず耐熱材に当たったというのが複合要因のひとつと考えています。

南日本放送・当時の風速はどれくらいか。
田村・約1m/sくらいです。

南日本放送・他の号機ではそれ以上か。
田村・はい、高かったです。

共同通信・無風で当たり続けることで、酸素濃度が高まったことで燃焼に繋がったのか。
田村・大気中にも20%の酸素がございますけども、液体酸素というものは100%のガスですので、それが吹きかかっている訳で、その辺りは高濃度の酸素の雰囲気だった。大気状態よりも高い雰囲気だった。

共同通信・3号機の施工時からこの事象は予想されていたのか、されていなかったのか。
田村・エンジン予冷の酸素を出すというのはエンジンを正常に着火させるために必用なオペレーションでございます。もともと大気の中には酸素がございますので、そこに酸素を出すというということは、それほど大きなリスクは無いと考えていたのは事実です。予測等はしていなかったというのが回答です。

時事通信・配付資料の図は耐熱材の盛り上がり部分は、亀裂を意味するのか。
田村・ここで間が開いているのは、火災の時系列で明るくなった(最初の2〜3秒)で穴があいたというか、そういう状況になったのだろうと思います。従って断熱材が表に出て来たことで、そこに酸素が供給されます、断熱材と酸素が直接合うことで燃焼が継続したと考えておりまして、この部分は最初の燃焼のところで穴が空いたことを示していると考えていただきたい。

時事通信・どれくらいのサイズの穴か。
田村・それはわからない。火災で燃えてしまった。

NHK・中止のときに重い事象と捉えていると話されていたが、あらためて原因がわかって、この事象をどのように捉えているか。
田村・事象の捉え方の全体として火災はあってはならない事象でございまして、厳しく重く考えていることには変わりはございません。

NHK・アルミシート施工で防げるということか。
田村・はい。実際に試験を長崎研究所で行いましたし、対策の効果を確認しておりますので、十分なものと考えています。

NHK・風が吹いていたら液体酸素が拡散されて静電気は起きにくいのか。
田村・その理解でいいと思います。

NHK・燃えた面積はどれくらか。
田村・この耐熱材は縦4m、横1.6mくらいの施工部でございます。だいたいこの7〜8割燃えたので、そのような面積と考えていただきたい。

NHK・断熱材は交換した上でアルミシートを施工したのか。
田村・そうです。

NHK・この措置はH−IIAには行う必用は無いのか。
田村・H−IIAでは酸素が非常に極めて当たりにくいところにあるが、実際に断熱材を施工している場所がございます。今回の事象を受けまして慎重に考えて、どのようにしていくか検討していきたいと考えています。

南日本新聞・24日から25日に延期した件で、ソユーズ打ち上げが24日であっても25日であってもソユーズの方が後になると思うが、(H−IIB8号機が)24日でなく25日になった理由が事前にわからなかったのか。
鈴木・事前にはわからなかった点はYesになります。通常のプロセスとしまして、決定した打ち上げ時刻に対する接近の有無を解析するのは、打ち上げ2日前までにできるだけ最新のデータを用いて解析して評価するのが通常のプロセスになっています。今回で言いますと24日打ち上げる場合ですと22日にその判断が行えるように準備を進めておりましたので、24日に打ち上げると決定したのが20日だったが、その時点ではまだ判っていなかった。

南日本新聞・接近のメカニズム、24日に打ち上げた場合で1時間40分後は第2段が大気圏突入でソユーズが打ち上がっていない。
鈴木・今回接近すると解析されましたのは、2段の再突入が万一不適合などで出来なかった場合に、そのまま2段が地球を回り続ける。そうなったときに、打ち上げられてくるソユーズ宇宙船と接近する可能性がある。

南日本新聞・25日に打ち上げではその可能性は無いのか。
鈴木・その通りです。

NHK・液体酸素が滴下していたとのことだが、液体酸素はマイナス183度で沸騰する。それが気体と液体が混在している点がよくわからない。また、真下に滴下した場合は耐熱材にかからないと思うが、実際には降りかかるのはどういったことか。
田村・排出口から排出した液体酸素は、流量としてはかなりあり、排出されるときは液体のまま出ます。すぐ気化する訳ではなくて、液体のまま落ちている間に空気との熱の交換で一部が気化することになる。その液体と気体の混ざった状態で耐熱材に当たった。また、ノズルスカートが斜めになっているので、斜めに液体酸素が落ちていく。横成分が入るので、それで落ちて耐熱材に当たった。

NHK・これまでの号機でも液体酸素が滴下して耐熱材に触れていたが、高濃度でなかったので静電気が発生しなかったのか。
田村・各号機で濃度が変わっているという事は無いと思います。今回は無風に近かったため、風で拡散されなかったので帯電しやすかったと考えています。

NHK・帯電する過程で無風が影響したのか。
田村・静電気が帯電する過程で風が一因となっていたと考えます。

NHK・断熱材が燃えるということは、SRB−Aの噴射口でも同様に燃えることはないか。
田村・SRB−Aのノズル開口部には断熱材は使われていない。

日経・三菱重工はオンタイム打ち上げが強みだが、この延期をどうとらえているか。
田村・今回9月11日の予定通りに打ち上げられなかったことについては、我々としても非常に厳しく受け止めております。オンタイム打ち上げを顧客の方々に高く評価をいだいておりますので、それについて厳粛に受け止めております。ただしこういった火災を発生してしまいましたけれども、きちんと原因を究明した上で対策を講じて次にきちんと成功するということで、信頼性を繋げていきたいと考えております。

日経・発射台はJAXAの責任か。
藤田・MLはJAXA維持管理している。これまでの過去の経緯と様々な事実関係を再度確認して、打ち上げ後に整理するものと考えております。現時点では整理できていませんので、回答を差し控えさせていただきます。

東京とびもの学会・火災発生は監視カメラで知ったということか。
田村・そうです。

東京とびもの学会・火災時にセンターに警報などは無かったが、これはマニュアル通りか。
藤田・打ち上げのときは陸上と海上ともにある距離の警戒区域をとっておりますので、何かあった場合でもその距離外には影響を及ぼさない。安全を確保しておりますので、特別な警報などの発報は行っていません。

東京とびもの学会・温度センサで温度上昇などの異常を検知できるのか。
田村・温度ロガーを断熱材に装着していたのは、断熱材の効果を確認する目的でございます。警報等に使う訳ではございません。

東京とびもの学会・火災発生は監視カメラ等の目視が確認手段なのか。
田村・そのように考えてくださって結構です。

日経BP・火災発生から中止決定まで1時間くらいと長かった理由は何か。
田村・消火をきちんと行うのが第一と考えてやっておのましたので、その関係で中止が4時17分になったと考えています。

日経BP・中止しなかった可能性がある訳ではないのか。
田村・そういうことではございません。

日経BP・原因を短期間で追及できたということは、そういった知見があったのか。
田村・液体酸素、酸素ガスというものは配管を流れるときに非常に気をつけなければならない。非常に発火しやすいというのは我々もよく知っていた。今回はもともと酸素がある状態の大気に酸素を排出するところで、そこの配慮が十分でなかったのかと考えています。

日経BP・アルミシート施工は抜本対策か、本来ならより安全なやり方があるのか。
田村・断熱材施工部は鋼板(強度部材)の割れ対策として講じたものです。現時点で今回の対策は十分なものと考えていますが、次の号機に更なる改善ができるかは打ち上げ後に考えていきたい。

フリー大塚・火災は複合要因とのとこだが、今回の無風であったという特殊な原因の他に何か要因はあるか。
田村・特にこれと決まった他の要因が明確になっている訳ではございません。あらゆる可能性を探った上で対策を講じていきました。その中で静電気の可能性が最も高いと評価している次第であります。

フリー大塚・熱の影響をセンサ確認できているとのことだが、最高で何度まで上がったか。
田村・サーモラベルが機体に装着されている。火炎に晒された部分に装着されています。耐熱材の表面についていますが、120度Cのサーモラベルが反応していたのが最高だと思います。

鹿児島テレビ・この断熱材は3号機の時につけてそのまま使われていたのか
田村・この部分はエンジンの噴炎が通るため、その都度ほぼ無くなる。毎号機で新しいものをつけています。ものは一緒です。

鹿児島テレビ・断熱材と耐熱材の割れはいつチェックしたか。
田村・納品のときにチェックはしていくが、打ち上げ前に確認。

鹿児島テレビ・耐熱材の割れはいつ起きたかなど、
田村・耐熱材に電荷がたまって静電エネルギーがたまります。それとは別に、この耐熱材は液体酸素がかかり続けるので冷えて割れることがある。その事象は別物と思って下さい。その割れの入ったところで放電し、内部の断熱材にエネルギーが伝わって火がついたというような事象かなと思います。

読売新聞・複合要因で、割れたり静電気がたまったりしているが、他の号機との違いは風か。
田村・そうです。

読売新聞・複合要因ということはいくつかの原因があるが、この場合の特殊な要因は風だけか。
田村・現時点で我々が掴んでいるのは風だけ。

読売新聞・複合要因というのは起きた事象が絡み合って起きたためか。
田村・そうです。

NHK・ソユーズの件で衝突回避の解析はいつやっているか。事前にわからなかった点でJAXAとの連携で振り返る点があれば。
JAXA飛行安全ユニット石原・解析は、まず9月18日にソユーズの軌道計画の情報をいただきまして、19日と20日に解析させていただいております。その中で詳細解析もした上で、24日(打ち上げの場合)に干渉すると結果が出たのが21日になっております。
鈴木・JAXAとの連携に関しましては、打ち上げ日時を設定する上でスケジュールは事前に確認し合っています。今回のプロセスも、いつもより特段遅かった訳ではありません。

共同通信・耐熱材の穴の図で、最初の燃焼で開いたと説明があったが、冷たい酸素に当たって割れた穴なのか、火花が散って燃えたものか。
田村・この図は穴は最初の火災が起きたときに耐熱材に開いた穴を示していて、私が述べた割れはこの図には示されていない。前段階で開いたのではないかという推定です。耐熱材に酸素降りかかって帯電し、並行して耐熱材が冷やされて割れが入る、外側に帯電したものが内部に放電し、内部の断熱材が反応して着火し、表面の耐熱材が割れて穴が開いて断熱材の表面が出て液体酸素がかかって燃焼が継続した。

NVS・対策としてアルミで包んだが、アースはとっているのか。
田村・言い忘れました、アースをとっています。

・穴の件で、冷却によって穴が開いていなければ火災に至らなかったと考えられるのか。
田村・冷却による最初の割れがなければ起こっていなかった可能性はあるかと思います。

・それに対する対策は今回どう考えるのか。
田村・最初の起因は静電気が帯電することになりますので、それを逃がすのが一番重要な対策となります。割れというのは正直対応しきれない。静電エネルギーをアルミシートで逃がすのが根本的な対策と考えています。

・長きにわたって打ち上げを経験されているが、今回のような複合的な要因に対する感想をお聞きしたい。
藤田・難しい質問で、確かに70数機の打ち上げに関与してきたが初めてのとこで、田村さんのおっしゃる通り重いことだと思っています。打上に向けて十分な対策をとって、まずは打ち上げ作業を再開して確実にミッションを成功させるのが私達の使命だと考えています。

鳥嶋・断熱材と耐熱材のそれぞれの役割。断熱材は鋼材の割れを防ぐもので、耐熱材は噴射から断熱材を守るものか。
田村・その通りです。

鳥嶋・アルミシートの施工とはどんなものか。
田村・断熱材についてのアルミシートは、全面にぐるりと一周巻くという形で考えております。耐熱材について、実際には断熱材は2層になっていて、上面の断熱材と耐熱材をぐるりとアルミテープで巻くことを考えています。

NHK・無風だったことが、耐熱材の帯電の原因となったのか。
田村・帯電しやすかったと考えています。

NHK・断熱材が燃えた理由で高濃度の酸素雰囲気とは、液体酸素がかかり続けていることか。
田村。その通り。

毎日新聞・固体ブースターより下に水がかかっていたので水分除去したとあるが、どうやって行ったのか。
田村・固体ロケットブースターの部材にカバーついていて、そのカバーを開けて水を除去した。

毎日新聞・煙の侵入が無いことを確認したとあるが、どういった方法で確認したか。
田村・射点に機体がある状況では窒素ガスの空調が入っていて、内圧が立っていて、そういった条件から内部にススが入ることはありません。その上で実際に中に入ってススが付着していないと確認した。

・2段とソユーズがぶつかる可能性について、ソユーズが後になって軌道上に残る場合は延期もあり得るのか。
鈴木・ソユーズのあとにH-IIBを打ち上げることになった場合は、最新の情報に基づいて改めて解析して、接近する可能性があるかどうかを確認した上で打ち上げ日を定めることになります。

宇宙作家クラブ渡部・断熱施工部の鋼材の冷却割れは低温に対する対策か。
田村・熱衝撃のようなものによって割れたと記憶している。それに対する対策。

宇宙作家クラブ渡部・熱衝撃とはどのようなものか。
田村・断熱材と耐熱材が無い状態で液体酸素がふりかかり、内部の鋼材が冷却され熱収縮で割れた事象だったと思います。

・火災による発射台への影響は。
田村・発射台も水と煙、火炎の評価を行っています。当該断熱材施工部以外は健全であると確認できました。断熱材施工部の対策を講じることが終われば健全な状態に戻る。

・今回断熱材が燃えたが、高温になる所に燃えるものがあるのはイメージできない。
田村・我々も開口部は難燃剤を使うが、断熱材を使わざるを得なかった。極力、断熱材の中で、難燃性のものを選択した。

・どの程度の断熱性か。発火温度はどれくらいか。
JAXA射場開発ユニット西平・発火温度での難燃性ではなく、酸素の指数というものがございまして、この断熱材は酸素指数29以上で着火源があれば燃える。ただし自己消化性もございまして継続的に燃えるということはございません。今回は液体酸素が降りかかり続けて、継続して燃焼してしまった事象でございます。

南日本放送・発射台火災という事案があったが、対策を施して打ち上げまで2日だが、後意気込みをお聞きしたい。
田村・9月11日に打ち上げを延期して今日で12日経ちました。この間、我々の会社の中の研究所の人達に全面的に支援をいただいて、東京サイドと名古屋サイドのいろいろな方に全面的に動いていただき、JAXA様にいろいろな協力をいただき、パートナー社の方にも迅速に動いていただき、やっと再打ち上げに臨むことができるようになりました。尽力していただいた方々及び、打ち上げに期待を寄せてくださった方々に、25日に良い知らせが届けられるように、ひとつひとつ確実慎重に作業して打ち上げを迎えたいと考えております。

以上です。


No.2305 :第2回の判断はGo
投稿日 2019年9月24日(火)14時46分 投稿者 柴田孔明

連絡があり、H-IIBロケット8号機の第2回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。ターミナルカウントダウン作業開始可と判断されました。

No.2304 :2回目の機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月24日(火)10時19分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機の機体移動が2019年9月24日午前9時頃から行われました。
前回は夏の暑い日で大変でしたが、本日は涼しくて撮影が楽でした。


No.2303 :打ち上げ延期
投稿日 2019年9月21日(土)17時14分 投稿者 柴田孔明

 H-IIBロケット8号機ですが、打ち上げが延期されました。天候ではなく、軌道の問題ですね。
 以下、三菱重工業株式会社からの発表です。

 三菱重工業株式会社は、種子島宇宙センターから宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)を搭載したH-IIBロケット8号機 (H-IIB・F8)の打上げを2019年9月24日に予定しておりましたが、最新の国際宇宙ステーションおよびソユーズ宇宙船の軌道に基づく解析(※1)結果により、「こうのとり」分離後のロケット2段機体がソユーズ宇宙船に接近する可能性があることがわかりました。そのため、打上げ日時を下記の通り変更いたします。

※1:ロケットの打上げ後に、ロケット及びロケットからの分離物と、軌道上の有人宇宙システム(宇宙ステーション等)が衝突しないことを確認する為の解析。
COLlision Avoidance解析(COLA解析)。

打上げ日:2019年9月25日(水)
打上げ時刻::午前 1時05分頃 (日本標準時)
打上げ予備期間:2019年9月26日(木)〜2019年10月31日(木)

No.2302 :新しい打ち上げ日時
投稿日 2019年9月20日(金)20時22分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機ですが、新たな打ち上げ予定日時は2019年9月24日午前1時30分頃(JST)となりました。
また、9月22日午後に打ち上げ前のプレスブリーフィングが予定されています。

No.2301 :打ち上げ中止記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月15日(日)23時39分 投稿者 柴田孔明

 2019年9月11日朝に打ち上げ予定だったH-IIBロケット8号機ですが、移動発射台の開口部付近で火災が発生したことにより、打ち上げは中止されました。同日6時15分から記者会見が行われています。

・登壇者
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター所長 打上安全監理責任者 藤田 猛
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊

・会場内(※肩書は以前登壇した時のものです)
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場開発技術ユニット ユニット長 長田 弘幸

・H-IIBロケット8号機の打ち上げ中止について(田村)
 今日の打ち上げに期待して来られていた皆様、打ち上げが中止になりました。申し訳ございませんでした。
 三菱重工業株式会社は、種子島宇宙センターから宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機を搭載したH-IIBロケット8号機の打ち上げを2019年9月11日6時33分29秒に予定し、作業を進めておりましたが、3時10分頃にML開口部付近で火災発生を確認したため、消火活動を実施中です。
 原因調査及び機体・設備への影響確認には相応の時間を要することから、本日の打ち上げを中止することといたしました。

・H-IIBロケット8号機打ち上げ前特記事象(田村)
 ・移動発射台開口部付近での火災。
  事象としては3時05分頃、移動発射台開口部付近で火災発生を確認しています。
  原因としてはまだ不明でございまして調査中でございます。
  処置としましては、移動発射台周りの水/ガス設備による消火活動を実施しました。
  現時点で炎は見えておりませんが、消火活動は継続中でございます。
  並行して、1段液体酸素/液体水素の排液を開始しておりまして、1段の液体酸素はタンクはほぼ空の状態に排液しております。
  打ち上げ中止(の決定)は4時17分でございます。
  図での説明ですが、機体下の開口部で、エンジン及びSRB−Aの噴炎を外に逃がす開口部でございますが、この開口部の側面に火災が発生しております。それを上から見た図で、この軸(4)の方向がVABの方向でございます。火災は軸(4)と軸(3)の間のところから発生いたしました。というのが火災の状況でございます。
  そして5時10分頃に炎が見えないところまで確認いたしまして、その後も水を供給するなどして消火活動を継続しているというところでございます。

・質疑応答
読売新聞・消火活動は御社の消防隊なのか、公設の消防隊か。
田村・ブロックハウスの遠隔操作のところからビデオを見ながら水をかけガスを流した。それは打ち上げ隊がやっております。

読売新聞・火は5時10分に見えなくなったとのことだが、鎮火の確認まではいっていないのか。
田村・今は火が見えていない状況ですが、まだ現場に近づけませんので、最終的にはやはり現場で確認することになります。

読売新聞・消火を終える目処は本日中か。
田村・消火活動は本日中でございます。液体酸素と液体水素の排液も行われていますので、本日中と考えております。

日経新聞・これまでの不具合より事象として高いのかと思うが、今までの7回のものと比べて深刻さの度合いはどうか。また民間移管で三菱重工主体の1回目だが、責任はどう感じているか。
田村・今までの不適合との比較でございますが、たとえば7号機は部品の不適合ということで、火災という事ではございませんでしたので、その点で少し重いといいますか責任があると感じております。宇宙活動法施行後の最初の打ち上げという事ですが、我々としてもぜひ本日成功していきたいと思っておりましたが、残念ながらこういった結果になっております。この原因をきちんと究明して対策を講じた上で次の打ち上げに臨みまして期待に添えるようにしていきたいと考えております。

Aviation Week・HTV内のカーゴはもう一度確認して積み直す必用があるか。
辻本・HTV「こうのとり」のカーゴにつきましては、当面は現在のままで打ち上げ延期に対応できる状況でございます。まずはロケット側の状況を見ながらということになりますが、概ね1ヶ月程度の延期であるならば、カーゴの積み替えや機体に手を入れることは無しで打ち上げられるというのが今のところの状態であります。

Aviation Week・火災が原因で穴ができたのか。
田村・もともとロケットの噴炎を通す穴で、火災で出来たものではない。

NHK・開口部の機能はどういうものなのか。エンジンの炎と噴煙を逃がすという理解で良いか。そうするともともと熱されやすい性質なのか、その場合はどういう対策が講じられているのか、今回はその対策がどうなったのか。
田村・開口部は、エンジンの噴炎を外に導くものという理解で合っている。温度が高くなりますので、耐熱材を塗っている。火災の原因がどこにあるかは、これから調査して確認していきたいと思っております。

NHK・断熱材とは何か。
田村・耐熱材という高温に強い材料を塗っている。

NHK・塗る作業は終わっているのか。
田村・もちろん終わっています。

NHK・耐熱材というのが燃えたのか。
田村・まだそこはきちんと物を見て原因を追及していきたいと思います。

NHK・耐熱材は穴の側面に塗るのか。
田村・側面にも塗りますし、上の面にも塗ります。

NHK・移動発射台はH-IIB専用のものか、打ち上げ毎に換えているのか、H-IIA用にも使っているのか。
田村・今回はML3という移動発射台を使っていて、これはH-IIB専用でございます。

NHK・今回の8号機打ち上げのために作られた移動発射台ということか。
田村・違います。H-IIBの1号機から7号機まで打っている同じ発射台でございます。

NHK・これまで打ち上げた中で耐熱材が燃えたことはあるか。
田村・ございません。

MBCテレビ・発射台はH-IIBの1号機からずっと使っていたものか、管理運用は三菱重工さんなのかJAXAさんなのか。
田村・1号機からずっと使っているものです。運用は三菱重工で、維持点検はJAXA。

MBCテレビ・開口部の側面に配線など燃えるものはあるのか。
田村・これから調査して確認して明確にしていきたい。

MBCテレビ・再打ち上げ日は1日2日でできるものなのか、もしくは1ヶ月2ヶ月年単位なのか、今の時点での目処、見込みはどうか。
田村・今の時点の見込みとしては、1日2日というのは難しいかなと思います。それ以上は原因を確認して対策はどういうものがあるかというのを講じた上で設定していきたいと考えております。

MBCテレビ・今回の責任というところでは、三菱重工さんにあるのかJAXAさんにあるのか。
田村・それも原因を確認した上で明確にしていきたいと考えております。

共同通信・今回の件における、打上執行責任者と安全管理責任者はそれぞれどんな役割か。
田村・宇宙活動法が施工されまして、打ち上げの実施者は三菱重工になります。そして三菱重工から安全管理の業務をJAXA様に発注しております。そして打ち上げ日には、打上執行責任者は打上事業者に一任された責任を持つ役割です。従いまして安全管理責任者から安全管理として打ち上げに供せられるかというのを打上執行責任者に報告して、打上執行責任者が判断するという役割分担になります。

共同通信・火災による中止は過去に例はあるか。
田村・ありません。

共同通信・宇宙ステーション補給への影響はあるか。
辻村・宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が生活するのに必要な物資については十分な備蓄をもった上で運用しております。今回の打ち上げ延期によって急に事態が変わるといったことはございません。

時事通信・火災の規模。炎の高さ、時間など。
田村・開口部の側面から火が見えました。炎が移動発射台の上面に来ることはなかった。火災が発生したのが午前3時5分頃でございます。そこから消火活動をいたしまして、火が見えなくなったのが午前5時10分頃でございます。その間、炎は見えていた。それが時間的な状況でございます。

時事通信・炎の影響。機体に何らかのダメージはあるのか。
田村・それはやはり物に近づいて確認して判断したいと思います。

南日本新聞・今回の事故の重大度はどれくらいか。国土交通省など他機関の調査は入るのか。
田村・打ち上げを延期してしまったことに対しては、重大な責任を感じております。国土交通省等特別な機関の調査は現時点では無いものと思うが、原因究明の結果によっては考えていくことになるかもしれない。

南日本新聞・原因としては機体ではなく発射台か。
田村・そうです

NHK・原因についてはどう考えているか。想定されるところなど。
田村・正直言ってこういったケースは初めて。我々としてもどこに原因があるかはまだ見えていない。液は100%充填した後に起きている。原因究明はこれから。

NHK・燃えた部分の大きさ。
田村・なにぶんブロックハウス・RCCからビデオで見ているのでわからない。具体的にどれくらいの大きさかというのは正直よくわからない。現物を見て確認していきたい。

NHK・今回の火災によって他の発射台の点検も考えられるか。
田村・原因を確認した上で、反映があればきちんとやっていきたい。

毎日新聞・火災発生当時に、ロケット上部に白煙が見えるが何を放出していたのか。
田村・液体酸素のガスが蒸発し噴出しております。常時出ている。

鹿児島テレビ・5時10分に炎が見えなくなったということで、およそ2時間、炎が確認できたということか。
田村・ビデオで見ているので明確には難しい。事実として5時10分頃に炎が見えなくなった。

鹿児島テレビ・2時間は炎があったという認識で良いか。
田村・それは事実です。

鹿児島テレビ・燃料は抜いているということで、今日中に確認はできそうなのか。
田村・できると思います。液体水素と液体酸素を排出した上でガスの置換を行って、今日中に近づけると思います。

鹿児島テレビ・早ければ今日中に目視で確認して原因究明をするということか。
田村・そうです。

鹿児島テレビ・お昼は過ぎそうか。
田村・細かい時間はまだはっきりしていません。

朝日新聞・ISSにはいつまでに打ち上げないと次の手段をとられるという期限はあるか。
辻本・NASAとの取り決め等で、具体的にいつまでに上げなければいけないというものは明確にはありません。あくまでロケット側の原因究明と対策を見つつ次の打ち上げ時期を調整していく形になります。

朝日新聞・ISSの食料、バッテリ、廃棄物の事情から、次の補給機日程はいつまでか、無くても大丈夫なのか。
辻本・現状、軌道上に残っている備蓄は十分な量がございます。当面、補充が無くても大丈夫なようになってます。「こうのとり」がどの程度延期によるが、他の輸送機の打ち上げ計画もございますので必要に応じて補充していくことが可能な運用になっています。

朝日新聞・バッテリは「こうのとり」のみが運べると思うが、それの事情はどうか。
辻本・今回交換する予定のバッテリの消費状況を解析しましても来年の末までは少なくとも大丈夫であると出ております。

鹿児島読売テレビ・100%燃料を補充した上で火災が発生したのか。その時は作業としてはどういったことをしていたのか。
田村・作業としては100%充填後に機体の機能確認を行っていた。

鹿児島テレビ・燃料を抜いて今日中に機体を戻すのか。
田村・今日中になるかは判らないが、機体をVABに戻して確認してまいります。

海外記者・赤外線カメラ、通常のカメラのどちらで見ていたのか。
田村・普通のビデオカメラで炎が見えていた。

読売新聞・移動発射台の諸元を教えて下さい。
長田・ML3は、幅が約22メートル、奥行きが25mくらい、高さはグランドからマストの近さまで66メートルくらいございます。

読売新聞・開口部の穴はいくつあるのか。
長田・メインエンジンが2つあるので、ここに大きな穴が1つございます。さらにSRBが4つついているので、それぞれの所に4つの穴がございます。従って真ん中1つと周りに4つで5個ございます。その間は隔壁ということで、鋼鉄で仕切っています。

読売新聞・直径はどれくらいか。
長田・開口部は機体が直径5メートルくらいなので5メートルちょっと。6メートルはない、SRBは2.5メートルくらい。

読売新聞・図の真ん中の2つの丸は何か。
長田・エンジンです。

読売新聞・赤い矢印の箇所の赤い丸は火災発生箇所という意味で穴ではないということか。
長田・そうです。

読売新聞・発生箇所はSRBの開口部ではなくメインエンジン付近の開口部ということか。
長田・そうです。

NHK・発射台に異常が無いことを確認したのはいつだったか。今時点で考えられる原因は何か。
田村・打ち上げの準備のところで、こういった開口部のところに異常が無いことを打ち上げ前日にも確認しています。原因についてはまだビデオでしか見ていないので、今の時点ではわからない。

NHK・自然のものか設計上のものかも判らないのか。
田村・はい。ただ人為的に何かをして起きたものではないと確認している。

共同通信・移動発射台で過去に同様の事案はあったか。
藤田・ございません。

共同通信・これから危険が生じることはあり得るか。
田村・燃料を抜いて火は見えない状態になっておりますので、そういった危険は非常に少ない。

NHK・火災発生箇所は鋼鉄製なのか。
田村・鋼鉄に耐熱材を塗っている。

NHK・燃えるとしたら、何が燃えるのか。
田村・それはまだ確認できていない。

NHK・液体酸素や液体水素が漏れ伝わってきた可能性は。
田村・そこはまだ調査をしてから明確にしていきたい。

海外記者・燃料が漏れた可能性はあるのか。
田村・機体の周囲にあるガス検知機は反応していないので、基本的には漏れていないと考えています。

海外記者・カウントダウンで排出などを行ったため火災が起きたのか。
田村・何か特別な作業をした訳ではない。

MBC・移動発射台はH-IIA/Bから導入されたのか、その前からか。
田村・H-IIA/Bから導入しております。

MBC・これまで移動発射台での火災は無いとのことだが、移動発射台に限ってなのか、それよりも前からなのか。
田村・私が知っている限りではH-IIロケットから無いと考える。
藤田・N-IIの頃から知っているが、経験が無い。

NVS・今回の件でロケットの信号が見えないといったことはあるか。
田村・今の時点でモニターが途絶えたという事はないと聞いています。

NVS・何も無いところが燃えることは考えにくいが、配線トンネルや機器がついているのか。
田村・特に特別なものは装着されていない。鋼鉄に耐熱材が貼ってある。現物を見ながら確認したいと思います。

以上です。


No.2300 :H-IIBロケット8号機の続報
投稿日 2019年9月11日(水)16時28分 投稿者 柴田孔明

三菱重工業株式会社より連絡がありました。

 『宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)を搭載したH-IIBロケット8号機(H-IIB・F8)の打上げ作業において、2019年9月11日3時05分頃に発生した移動発射台開口部付近の火炎について、機体および設備は安全で整備組立棟へ返送可能な状態であることを確認しました。
 なお、整備組立棟への機体返送準備が整い次第、作業を開始する予定です。

 原因調査は継続致しますが、打上げに向けた整備作業には1週間程度は必要とする見通しです』

No.2299 :消火確認
投稿日 2019年9月11日(水)12時07分 投稿者 柴田孔明

2019年9月11日昼頃に以下の発表がありました。

 宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)を搭載したH-IIBロケット8号機(H-IIB・F8)の打上げ作業において、2019年9月11日3時05分頃に発生した移動発射台開口部付近の火炎について、モニター上での消火を確認しました。
 また、安全化処置としてロケット機体からの推進薬の排液及び不活性ガスへの置換を11時頃に完了しました。
 安全確認準備が整い次第、12時30分頃より機体および設備の安全確認を実施致します。状況がわかり次第お知らせします。

No.2298 :打ち上げ中止
投稿日 2019年9月11日(水)04時31分 投稿者 柴田孔明

原因調査及び機体や設備への影響確認に時間を要することから、本日(2019/09/11)の打ち上げは中止となりました。

No.2297 :火災発生 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月11日(水)04時05分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ準備中のH-IIBロケット8号機ですが、2019年9月11日3時10分頃にML開口部付近で火災が発生したことが確認され、消火活動が行われているとのことです。


No.2296 :第2回判断もGo
投稿日 2019年9月10日(火)20時49分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機の第2回Go/NoGo判断会議の結果はGoです。ターミナルカウントダウン作業開始可と判断されました。

No.2295 :H-IIBロケット8号機の機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2019年9月10日(火)17時49分 投稿者 柴田孔明

H-IIBロケット8号機の機体移動が2019年9月10日14時30分頃から種子島宇宙センターで行われました。