投稿日 2019年10月15日(火)00時36分 投稿者 柴田孔明
H-IIBロケット8号機は2019年9月25日01時05分05秒(JST)に打ち上げられ、「こうのとり」8号機を軌道上に投入しました。このあと竹崎展望台で記者会見が開催されています。
(※一部敬称を省略させていただきます)
・打ち上げ経過記者会見(第1部)
・登壇者
文部科学省 文部科学副大臣 上野 通子
宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏
三菱重工業株式会社 執行役員 防衛・宇宙セグメント長 阿部 直彦
・側面列席者
文部科学省 大臣官房 審議官(研究開発局担当) 岡村 直子
・打ち上げ結果報告(阿部)
三菱重工業株式会社及び宇宙航空研究開発機構は、種子島宇宙センターから令和元年9月25日1時5分5秒に宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機を搭載したH-IIBロケット8号機を予定通り打ち上げました。ロケットは計画通り飛行し、「こうのとり」8号機を正常に分離、所定の軌道に投入したことを確認しました。ロケット打ち上げ時の天候は晴れ、西北西の風5.4m/s、気温23.2度Cでした。「こうのとり」8号機の軌道上での初期機能確認を無事終了し、国際宇宙ステーションへのカーゴの輸送を成功裏に完遂することを心より願っております。
本日の打ち上げ成功でH-IIBは通算8機中8機の成功、成功率は100%です。H-IIAを合わせると通算48機中47機の成功、成功率97.9%です。またH-IIA/H-IIB、42機連続の打ち上げ成功となりました。
昨年の10月29日にH-IIAロケット40号機を打ち上げてから約11か月ぶりの打ち上げ、さらに2009年9月11日のH-IIB初号機の打ち上げから10年目の打ち上げとなりました。また今回は活動法適用の下での民間による最初の打ち上げでした。
2週間前9月11日の打ち上げ延期時には、皆様に大変ご心配をおかけいたしましたが、その後原因を究明し万全の対策をとって本日の打ち上げに臨みました。無事打ち上げる事ができ、大変安堵しています。本日の打ち上げに対し、ご支援ご協力いただきました関係者の皆様方に心よりお礼を申し上げます。
当社は今回の経験を糧とし、さらに安定的に打ち上げを提供できるよう今一度心を引き締め、細心の注意と最大限の努力を傾注してまいります。これからも引き続き、ご支援ならびにご指導ご鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
・登壇者からの挨拶(上野)
お手元に配付しております大臣談話(※)にありますように、今回の打ち上げ成功によりH-IIBロケットして8機全て成功、基幹ロケットとして46機連続での成功となったことは、我が国のロケット技術の着実な発展と信頼性の向上を示すものであり、大変喜ばしいものと思っております。特に今回はご存じのように火災による打ち上げ延期という事態を乗り越え、昨年11月の宇宙活動法施行後初の三菱重工業株式会社を主体とする基幹ロケットH-IIBロケットの打ち上げが成功したということであり、民間企業による宇宙活動拡大の観点からとても意義深いものと認識しております。
今回のロケット打ち上げにご尽力ご支援いただいた関係者の皆様方に、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
「こうのとり」8号機では、国際宇宙ステーション(ISS)の運用に不可欠な水や食料などに加え、JAXAとソニーコンピュータサイエンス研究所が共同開発した光通信システムなど、宇宙空間を利用した実証実験のための装置も輸送しております。「こうのとり」8号機が無事に物資補給を完了し、ISSから様々な成果が生まれることを期待しています。文部科学省といたしましては、「こうのとり」の着実な運用を通してISSの運用に貢献していくとともに、基幹ロケットのさらなる安全性、信頼性の向上や打ち上げ価格、運用コストの半減を目指す次期基幹ロケット「H3ロケット」の来年度打ち上げに向けた開発などに着実に取り組んでいきたいと考えております。
※配布資料より文部科学大臣談話
本日、H-IIBロケット8号機の打上げに成功し、搭載していた宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機が所定の軌道に投入されたことを確認いたしました。
今回の打上げ成功により、H-IIBロケットは8機連続、我が国の基幹ロケットとしては46機連続での打上げ成功となり、着実に信頼性を向上させていることを、私も喜ばしく思っております。
今後、「こうのとり」8号機が、国際宇宙ステーションへの確実な物資補給を達成できるよう、文部科学省としても関係機関とともに引き続き尽力してまいります。
令和元年9月25日 文部科学大臣 萩生田 光一
※配布資料より内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話
本日、H−IIBロケット8号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機の打上げが無事に成功したとの連絡を受けました。
この打上げの成功により、国際宇宙ステーションへの物品等の打上げを担うH−IIBロケットは8機連続の打上げ成功となります。
今後、「こうのとり」が国際宇宙ステーションへの物資補給を無事に成し遂げ、国際宇宙ステーション計画の中での我が国の信頼及びプレゼンスが更に高まり、今後とも、我が国が国際宇宙ステーションの運用に大きく貢献することを期待します。
内閣府特命担当大臣(宇宙政策)として、今後も引き続き宇宙基本計画を着実に推進してまいります。
令和元年9月25日 内閣府特命担当大臣(宇宙政策) 竹本 直一
・登壇者からの挨拶(山川)
H-IIBロケット8号機により打ち上げられました宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機は、通信リンクおよび3軸姿勢を確立し、国際宇宙ステーションISS到着に向け順調に飛行していることをご報告いたします。今回は三菱重工業株式会社殿にとっても、宇宙活動法施行後初めての打ち上げということで、重要なマイルストーンであったとは思いますけども、あらためて感謝とお祝いを申し上げます。
本日の打ち上げ実施にあたり、ご支援ご協力をいただきました地元の皆様はじめ関係機関に対して厚く御礼を申し上げます。今回、これまでお話がありました通り、「こうのとり」8号機では6号機7号機に引き続きまして新型ISSバッテリ、米国宇宙航空局の水タンクや酸素と窒素のタンクなど、ISSの運用に欠かせない物資の他、「きぼう」から船外に放出する3基の超小型衛星、細胞培養装置および宇宙探査イノベーションハブの研究テーマとして初めて軌道上で実証する予定の小型衛星光通信システムSOLISSなどを輸送します。
このあと「こうのとり」8号機は9月28日にISSに到着し、ロボットアームによる把持が28日20時15分頃、そしてISSへの結合完了が29日未明の予定でございます。確実に輸送ミッションを成功させるよう、引き続き万全を期してまいりたいと思います。
・質疑応答
読売新聞・折しもNASA長官が来日されて、月探査に関してJAXAとNASAの共同声明を出されたばかりだが、長官が輸送能力の高さを非常に評価していると伺っている。今回H-IIBと「こうのとり」で実績をひとつあげたが、この位置付け、日米の交渉が大詰めを迎えていると思うが、打ち上げに成功したことをまずどう思われるか。
山川・まず打ち上げの成功自体は大変ほっとしている状況でございます。10年前の初号機から8号機まで連続での成功ということで、いま「こうのとり」8号機もISSに向かって順調に飛行しているところでございます。そういった意味では100%という信頼性ですね、それからアメリカから見ても安心して一緒に進んでいくことができるパートナーだと見ていただけるのではないかという風に感じております。「こうのとり」というのは、我が国がISSに参加するにあたって物資輸送を担う非常に、根本的に重要な輸送船でありまして、それが物資を輸送することによって我々日本がISSにおける様々な活動を実施することができるというものでございます。更に今後「こうのとり」の後継機としてHTV−Xの開発を進めているところですけども、これは輸送能力をさらに高めるものでございますけども、ISSに物資を輸送することだけではなく、さらにその後を見据えて、たとえば米国が中心となって進めている月近傍の有人拠点ゲートウェイというものがございますけども、そこに例えば物資を輸送するとか、さらに発展していく、そういった輸送船という風に考えております。そういった意味で今回の成功というのがさらなる日米の宇宙協力の大きな一歩を踏み出したのではないかという風に考えております。
共同通信・今回は火災による延期があった。三菱重工さんのホームページに「ご要望の日に確実に」とあります。日本に対して求められるのはコスト面では厳しいということで品質が第一だと思うが、今回「ご要望の日に確実に」が達成ならなかった点についてどう考えられているか。それを達成していくために今後どういう事が必用か。
阿部・まず9月11日の打ち上げにおいて、多くの方々の期待や応援にかかわらず打ち上げ時間前に延期と、皆様方にご心配ならびに種々のお手間をおかけしましたことに対しては大変重く受け止めております。その中で「ご要望の日に」ということなんですが、現実的に商業打ち上げの世界で申し上げますと、当日に打ち上げるということが大きな意味を持つということは、あるスロットの中でその時期に打ち上げるということが競争に非常に大きく効きます。どういうことかというと、我々の競合の場合ですと半年から1年くらいずれたりするケースがありますが、今までのところ我々はこのスロットで打ち上げますと言ったものは確実に打ち上げてきていますので、そういう意味では商業的な面では大きな影響は無いだろうという風に思っています。ただし、これから先オンタイムで要望の日に打ち上げていくためには、これまで機体については射点に不適合を持ち込まないということでいろいろやってきたが、今回少し新しいケースでございまして、機体とインターフェイスする設備側との間で起こっています。そういう意味で従来よりも広げて、機体とインターフェイスする部分でも射点に不適合を持ち込まない、確実にチェックをしていくといったことを考えていかなければならないという風に思っています。さらに今後の打ち上げだけではなくて、開発中のH3についても今回の件を反映していきたいと思っています。
共同通信・今後信頼を高めるために情報を積極的に提供することも大事だと思うが、今回の事象に関してはホームページ上ではごく簡単な説明しかなかったが、そういった取り組み、対策、原因の究明についてきめ細かに説明していく姿勢についてはどのように考えているか。
阿部・我々としてはきめ細かく透明性を持ってやらしていただきたいと思っていますし、そういう風に努めてきているつもりでございますが、不十分なところがございましたら引き続きご指導頂ければと思います。
朝日新聞・9月11日でHTV初号機から10年で、その間に宇宙活動法が施工され今回は民間が主体となったが、次の10年の宇宙への輸送はどういう形でやっていく必用があると考えるか。
山川・宇宙活動法というのがそもそも民間が事業に参入できるようにするのがきっかけだと認識しております。今回、民間打ち上げとしては最初の取り組みになった訳です。一方で国内でも様々な企業、ベンチャー企業なりが新しく宇宙輸送ビジネスに踏み込もうとしているところでありまして、JAXAとしてはそういった民間が活発化するのは非常に喜ばしいことだという風に思っています。従ってJAXAとしてはそういった新たな民間事業者がどんどん参入することは、政府全体あるいは日本全体としての輸送の選択肢が増えていくことだと認識しております。ですので、今後10年でそれがどれだけ進むかは、いろんな技術開発はこれから乗り越えていく必用があるかと思いますけども、そういった方向に必然的になっていくと考えています。
NHK・11日の延期は例に無い発射台での火災があった。そこをJAXAではどのように見ているか、また必要な対策はどう考えているか。また民間のMHIに実施者が引き継がれて、そのトラブルを受けた対応を含めて、一連の打ち上げ輸送をどう評価されているか。
山川・今回、三菱重工さんが初めて打ち上げ実施者として取り組んでおられて、そのときに過去に発生していない火災という事態ではありましたけれども、今回三菱重工業殿を中心として適切に原因究明と処置を実施して、再打ち上げができたということは非常に良かったという風に考えております。我々JAXAとしては今後も着実な打ち上げを期待しているというところでございます。
NHK・挨拶の中で今回の打ち上げというのは、民間企業による宇宙活動の拡大の観点からとても意義深いものだとおっしゃられてたが、今回で言うと火災を乗り越えての打ち上げということにも触れられていたが、どのあたりが意義深いものであるか、その上で何か反省点が無かったかの見解も含めて教えていただきたい。
上野・やはり火災等の事故とかを乗り越えたということがひとつありますが、それもやはり民間との協力は科学技術だけではなく全ての分野でこれから必用だと思う、という点も含めての発言でした。また特に宇宙開発につきましては、民間と手を携えるとともに、世界とも手を携えていかなければならないという観点からも、文部科学省そしてJAXAの枠をこえてもっと幅広く、様々な形の協力体制が必用だということをお話したわけでございます。
・宇宙活動法施行後、民間事業者が主体となった初の例、国産大型ロケットでも初だが、その意義についてどう思われるか。活動法の適用として打ち上げの最終的な責任を負う立場になって、今回準備をしたり作業をしたりする中で違うことや戸惑ったことがあったか。
阿部・まず活動法に従って打ち上げた意義は、ある意味でいうと世界標準に近づいたと考えています。活動法の施工で戸惑ったかについて、従来なかった機体としての型式の証明のようなものをいただいたり、打ち上げの許可をいただいたり、そういったいろんな手続きを初めてやらしていただきましたので、そういった面では我々の方にもいろいろ慣れない部分が多々あったのかなと思います。それに加えて今回打ち上げ延期がありましたので、それに伴って種々手続きがございました。そういった部分でも今回初めてということで、慣れない部分が多々ございましたが、いろんな経験をさせていただいたかなと思っております。次回に活かしていきたいと思っております。
・世界標準に近づいたというのは、どういう意味か。
阿部・活動法が制定されるときに政府の方からいろいろと発表説明があったと思うのですが、アメリカとかヨーロッパでは活動法に近い形態、ほぼ同じようなものが既にあります。そういった意味で日本がそれに近づいて、全く同じではないですが、ほぼ等しいものになったのかなと思っております。
・責任者になって手続きが変わって、やりやすかったというより今回は慣れなかったということか。
阿部・実際の機体を作ったり打ち上げたりする現場の作業は何も変わっていない。ただ、手続きとかそういった部分では従来と違うので、そういう部分は今回初めて経験させていただきました。
・打ち上げ経過記者会見(第2部:技術説明)
・登壇者
宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹 辻本 健士
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部長 副事業部長 打上執行責任者 田村 篤俊
・質疑応答
読売新聞・発表されている内容としては、正常に分離したということか。
田村・はい。
読売新聞・それは予定していた軌道に投入したということか。
田村・その通りです。
読売新聞・認識としては当たり前だが、打ち上げは成功したということで良いか。
田村・はい、打ち上げは成功いたしました。
NHK・延期もあったが、今日軌道に投入されての感想。今後、ISSでの到着・把持に向けての気持ち。
辻本・今回の打ち上げにご協力いただきました関係各所の皆様にあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。無事にロケットの方から分離していただきまして、「こうのとり」方は理事長の山川からもご説明させていただきましたけれども、順調に飛行を開始しております。私自身といたしましては、打ち上げまでの作業のとりまとめという立場でやってきましたので、まずはほっとしておりますし、筑波で始めました運用チームにうまくバトンを渡せたかなと思っております。これから把持までの約4日の飛行の方、筑波の方でうまく運用していただきたいと思っております。
NHK・8号機ではスタートラッカが搭載されたが、これは既に実証が始まったのか。
辻本・8号機はスタートラッカですとか、これまでの機体から手を入れているところがございます。スタートラッカも最初の姿勢制御のところで使用しておりますし、良好に作動しているところは確認できております。
NHK・9号機まで計画されている中での、8号機の位置付け。
辻本・8号機と9号機というのは、当初「こうのとり」は7号機までの予定のところで2機追加といった位置付けになります。そういった中で我々としては追加とともに後ろで控えております新型宇宙ステーション補給機、HTV−Xと呼んでおりますけども、そちらにも繋がるような技術の実証といったものも進めております。今回のミッションを通じて先の宇宙開発に繋がるような技術も併せて取得しつつ、物資は確実に輸送するといったことをこなしていきたいと思っております。
鹿児島テレビ・前例の無い火災から2週間、いろんな思いがあったと思うが、打ち上げに成功したことを受けてどんなお気持ちか。
田村・9月11日の初回の打ち上げ日に火災という形で延期となりまして、顧客でございますHTV様に多大なご迷惑とご心配をおかけしたことが一番で、それを重く受け止めておりました。その中で我々社内外いろいろな方のご支援を仰ぎながら原因追及と対策を講じまして、それでなんとか今日の日に再度打ち上げのチャンスをいただくことができて、成功に繋げることができて本当にほっとしている。本当に成功に結びつけられて本当に良かったなと素直に思っております。
鹿児島テレビ・拍手している関係者の中に涙ぐんでいる方もいたが、打ち上げのトップとして打ち上げを終えた気持ちはどうか。
田村・やはり非常に重い責任というのを感じた2週間でございました。その中で今日、HTV分離を聞いた時には、本当にほっとしたというのが正直なところでございます。
共同通信・再発防止施した部分について、あらためて検証する予定はあるか。
田村・今回施した部分について、まだ現物を見ている訳ではない。噴煙を浴びた状態になっているので、いまどういう状態かわからないです。それを確認して、その上で検証していきたいと思っています。
共同通信・打ち上げがまた1日延期になったが、HTVの把持の時間はほぼ変わらなかったが、これは何か行程をショートカットしている部分があるのか、それとも元々時間的に余裕があって、打ち上げ時間が25分程ずれても把持の時間は殆ど変えずに済んだのか。
辻本・時間については特にショートカットという訳ではございません。打ち上げ日に合わせて軌道を作りまして、宇宙ステーションの近くに行ったところから、クルーが実際に作業できるような時間、たとえば宇宙ステーションは日本時間ではなくてUT(標準時間)で動いておりますので、標準時間の朝から作業を始めてキャプチャができる準備ができるくらいまでというタイムテーブルを作りますと、各号機もそうなんですが、大体キャプチャの時間は同じような感じになっております。
共同通信・打ち上げからキャプチャまで時間がきつくなくてバッファがあるのか。
辻本・バッファがあるかきついかは難しいが、クルーのタイムテーブルを標準的に作って行く中でキャプチャの時間が決まっていくことになります。
南日本放送・9月11日の午前3時5分、炎を監視カメラで見た瞬間の気持ち。
田村・瞬間は、これは何が起きたのかわからないなというのが最初の感想でした。
南日本放送・そこから原因の検証と対策が行われて今日の打ち上げ成功があると思うが、今回の火災が今後のH-IIA、また次が最後のH-IIB9号機、更に来年度打ち上げが計画されているH3に、どのように活かされるのか、活かすべきとお考えか。
田村・私も長い間ロケットの開発と打ち上げをやっていますが、こういった射点での火災は初めての経験です。非常に厳しい体験ではございました。それを我々の若い技術者とかベテランの技術者も含めて一丸となって、それをこの2週間で乗り越えて打ち上げ成功に繋げられたということは、これからのH-IIAもそうですけども、H3の開発に向けて、技術力と言うとおこがましくなるかもしれませんけども、そういった底力といいますか、技術的に頑張れる力、粘り強く成し遂げる力というのは、若いエンジニアという人達も身につけてくれたのかなと。それが人間的な力として繋がっていくのではないかなという風に思います。
南日本放送・今回の火災があったことで今まで見えてなかった部分が表面化したと思うが、そういった点でまだまだ見えていない部分があるかもしれないというのが可能性としてあるが、これまでの打ち上げ作業をゼロから見直すとか検証し直す予定や考えはあるか。
田村・今回、設備で火災が起きたというところがございますので、機体とのインターフェイスという面ですとか、そういった所はさらに、今までも検討といいますか評価していなかった訳ではないが、更に今回の事象を踏まえて、そういった設備のインターフェイスですとかそういったところは強化して次に繋げていきたいなという風に思います。
南日本新聞・宇宙活動法によってメリットもデメリットもあったと思うが、さきほどの会見で手続きに少し時間がかかったとあったが、どのような手続きで時間がかかったのか。また今回2週間かかったが、それが煩雑さで遅れたということは無いか。
田村・我々は2つの許可申請書を提出しております。それには半年くらいは色々時間としてはかかりまして、その間JAXA殿とか内閣府殿に色々ご指導を賜りながら進めてまいりました。なかなか慣れないという面もございまして、いろいろ調整をさせていただきながら申請書を許可いただいたということで非常に安堵したというのが実際のところでございます。この2週間の延期の中で活動法の手続きが元で遅れたことはございません。
南日本新聞・宇宙活動法が施工されたことによる三菱重工のメリットは何か。
田村・活動法が施工されることによって、宇宙開発の裾野が広がっていくということは、我々は基幹ロケットを打ち上げていますけども、そこの裾野が広がっていくことによって、宇宙全体が活気づくというところが一番の、我々としてもメリットかなと思っています。
NHK・火災について原因は究明して対策は万全ということで、三菱重工としてこの問題は終わったということか。
田村・今回の対策は万全と思って打ち上げに臨みました。ただ次の打ち上げに向けては、これ以上改善すべきところがないかとは考えて次に繋げたいと思っていますので、これで終わりという訳では無いと思っています。
NHK・2日前の会見で予測はできなかったという話があったが、それをどう受け止めているか。
田村・全てを予測しきるのはなかなか難しいと思っているが、他にもこういった事がないかというのは予測できないけれども、いろいろな有識者とか知見を集めれば、今回も研究所の方にいろいろ支援をいただいたりもしたので、そういった知見を合わせれば、今判らない・見えていないことでも見えてくるようなところを突き詰めていく必要があるかなという風には思います。
NHK・今回の打ち上げで見えた課題ということか。
田村・そうです。
NHK・情報の透明性という所で、2日前の会見で画像等の資料が提供できないという所が透明性の確保と言えるのか。
田村・我々としては23日の会見で出した資料については、かなり具体的なものを出したつもりです。ただ透明性の件につきましては、まだ我々が不十分な所についてはご指導いただければと考えます。
NHK・今後、同様の事態が起きた場合は、今回の対応と変わってくると考えて良いか。
田村・次に起こる事のものによりますが、極力いろいろ改善していきたいと考えています。
NHK・火災の後、原因究明をするにあたって社内外のいろんな方のご指導をいただいたとあったが、社外の指導というのはどういったものがあったのか。
田村・我々はJAXAさん一緒にやっていますので、JAXAさんの方のご指導を仰いだり、社外といいますか我々のOBの方とか、第三者的な評価をしている部門がございますので、そこに評価を依頼したりとか、そういうことでございます。
NHK・今回の原因究明作業の中で、第三者的というところが気になっているが、宇宙活動法施行の影響もあると思うが、オールMHI体制で原因究明作業をやっていかれたと思ったが、そういった第三者的なといった言葉というのは、今後こういうトラブルが起きた場合に、まさに第三者の有識者を呼んで原因究明作業をすることも選択肢としてはあるのか。
田村・もちろん選択肢としてはあると思います。
NHK・宇宙開発は国民の広い理解と支援が必要と考えるが、そういった意味でも第三者的な有識者の指導や知見が必用だと考えるか。
田村・必用と考えればご指導を仰いでいくことになるのではないかという風に思います。
共同通信・2日前の説明で、今回の事象に関するJAXAとしての体制で不備や瑕疵がなかったかについての質問に、その段階では言えることは無いとのことだったが、無事に打ち上げが終わって、今後JAXAの内部的に検証する予定はあるか。
辻本・私は同じJAXAではありますが、ロケットのペイロード(荷物)の立場になりますので、ロケットの設備については恐らく藤田の方が話したと思いますが、そちらの方のセクションになりますので、今の質問については申し訳ありませんが、ちょっとお答え致しかねます。
以上です。
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