宇宙作家クラブ
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No.48 :ミール活動再開へ
投稿日 2000年4月4日(火)16時29分 投稿者 江藤 巌

 ロシアはかねて噂の通り、ミール宇宙ステーションの有人運用を再開する。これを伝えるSPACE TODAYのニュース
 4月4日にはバイコヌールから、セルゲイ・ザリョーチン(機長)とアレクサンドル・カレリ(エンジニア)の二人の乗員が、ソユースTMに乗ってミールに向かう。ミールは昨年の8月以来無人で軌道を回っているが、すでに3月には無人で活動を再開し、太陽電池パネルを太陽の方向に向けてバッテリーの充電を図っている。
 彼等がミールとドッキングして復活させたあと最初にするのは、空気漏れの個所を特定して修理することだ。二人は45日から60日程度ミールに滞在する。
 ミールの活動の費用は、アムステルダムに置かれたミール社(MirCorp)の出資でまかなわれる。同社ではミールを借り受けて、宇宙旅行者用ホテル!などに活用するつもりのようだ。

No.47 :総務庁報告続報――実物を入手し読みました
投稿日 2000年4月1日(土)11時04分 投稿者 松浦晋也

 総務庁報告書を入手、読みました。

 結論から言えば、「総務庁報告書は正確なことを書いているし、一言も『ロケット開発からの撤退』などと書いていない。ただし報告書の非難するべき点は別にあり、新聞各社は見当違いの報道をしている」ということでした。

「特殊法人に関する調査結果報告書」
―事業団の財務内容などを中心として―
宇宙開発事業団
平成12年3月
総務庁行政監察局

 報告書は、平成8年度の決算報告に基づいて、一般の法人の「資本金」に相当する「出資金」が2兆3000億円、資産(打ち上げ設備など)が4700億円で、累積欠損が約1兆8000億円と指摘していますが、報告書1ページ目で「ロケットや人工衛視得などの研究開発による成果等が企業会計原則に照らし資産として計上されないため、約1兆8000億円は累積の欠損金として計上されるという財務上の表れ方となっている」と明記しています。

 そして今後の課題については「ロケット事業及び人工衛星事業は、共に多額の公的資金の投入が必要とされる事業であり、その推進に当たっては、国民の理解と協力を得ていくことが必要で、研究開発の意義・目的、費用対効果などの観点から評価を行うと共に、その結果を明らかにしつつ、開発の妥当性について不断に論議していくことが必要である」とまとめています。

 どこにも「撤退」という文字がないことに注意して下さい。

 このニュースは私の知る限りでは3/29付けで読売、朝日、毎日が一斉に報道しました。うち、読売と朝日の記事が「撤退を含む論議」という一節を含んでいます。一斉報道ですから、総務庁記者クラブブリーフィングが情報ソースであることは明らかです。

 以下は私の推理です。
 おそらく記者クラブ質疑応答で「不断の論議とは開発からの撤退を含むのか」という質問がでたのでしょう。それに対して総務庁側が「それもあり得る」という回答をしたのではないでしょうか。総務庁が「あり得る」と回答した理由は不明ですが、「幅広い議論を喚起する」立場上、そのように答えた可能性が濃厚です。
 政治家などの肝いりで意図的に宇宙開発中止世論を喚起するために発言した可能性もありますが、現在、日本の宇宙開発を中止して国内利権的に得をする政治家はいない(外国からの賄賂でも受け取っていれば別ですが)ので、まずそのようなことはないでしょう。

 余談ながら、宇宙開発を中止しても損をする政治家もまたいない、ということは覚えておく必要があります。つまり他の政治家が利権的に得をする産業の保護するために、宇宙開発が割を食う可能性はあるわけです。

 従って、ここで問題にしている記事は、記者クラブでの一言と、累積欠損約1兆8000億円という数字のスキャンダラスな感覚が合体し、さらに総務庁担当記者の「特殊法人が技術開発を行うことが経理上なにを意味するか」ということに対する無理解が相乗して、新聞紙面を飾った――と推理できます。

 読売の記事は、その情報量の少なさから、報告書を読まずに記者ブリーフィングメモのみで記事を書いた可能性が高いです。朝日と毎日はきちんと報告書を読んだ上で書いています(報告書にしか記載されていない数字が記事中に載っている)が、朝日は無署名、毎日のみが「高安厚至記者」の署名記事です。そして、毎日のみが撤退というスキャンダラスな単語を使っていません。「撤退」という単語の位置づけが、この事実から見て取れるでしょう。

 これで大体、どのようにして報道機関がスキャンダラスな記事を「事実のみ」から構成したかが解明できたと思います。

 以下は私見です。
 総務庁報告書へのつっこみどころは、約1兆8000億円という数字ではありません。平成12年にもなって平成8年度の数字をもって議論をしているところだと思います。

 通常民間企業ならば、6月までに、前年度の決算を公表します。特殊法人のNASDAは予算執行時期という問題もありますから、決算の集計には民間企業よりも時間がかかると思いますが、それでも半年後の9月末にはまとまっていなければウソでしょう。
(この部分推測が入っています。訂正申し入れがあれば訂正します)

 ですから、平成12年度末に公表された総務庁報告書は、当然平成10年度の最新データに基づいている必要があります。民間のアナリストが3年前のデータを使って報告書をまとめれば、顧客の信用を失います。

 毎日の記事中に「運用中止衛星の一部は科学技術庁からの資料提供がなく、総額は不明」とあるので、あるいは科学技術庁からのデータが平成8年度のものだったのかも知れませんが、総務庁と科学技術庁は坂道を挟んだはす向かいに位置します。8年度の資料で分析を行ったにしても、公表データは最新のものを使うというのが監査の鉄則ではないでしょうか。ましてや、「クラッカーの侵入も許さなかった」と豪語する「霞ヶ関WAN」が稼働している現在、双方の情報の授受は従来より格段に楽になっているはずです。

 最新の平成10年度のデータを総務庁に対し公表を拒んだとしたら科学技術庁の傲慢ですし、データを要求しなかったとしたら総務庁行政監察局の怠慢です。

 その意味での新聞各紙の記事はピントがはずれている上につっこみが足りないと言わざるを得ません。

付記:全く報道されませんでしたが、同じ3月29日に総務庁行政監察局
から緑資源公団(旧農用地整備公団)の監査結果報告書も公表されています。こちらのほうが慄然とするほどの特殊法人の腐敗を、如実に示しているですが、「宇宙・欠損・約1兆8000億円」のスキャンダラスな記事の誘惑の前には、ニュースバリューが低かったようです。


No.46 :読売3/29記事はミスリードです
投稿日 2000年3月29日(水)22時42分 投稿者 松浦晋也

 おそらく多くの人が「やはり宇宙開発って無駄遣いだったんだ」と思いかねない記事なので、まだ総務庁報告書を入手していないのですが、とりあえず私の知っている限りのことを書き込みます。

ロケット開発で累積欠損1兆8000億円

記事要旨は以下の通りです。
>◆ロケット開発で欠損1兆8千億円
>
> ロケット開発を行っている宇宙開発事業団が設立当初(一九六九年)か
>らの累積欠損が一兆八千億円にのぼっていることが、総務庁が二十九日発
>表した「特殊法人に関する財務調査」で分かった。また、同事業団による
>ロケットの打ち上げに必要な経費は外国と比べて二、三倍と割高であるこ
>とも明らかになった。同事業団は、九八、九九年と相次いで打ち上げに失
>敗している。こうした点を踏まえ、総務庁は、ロケット開発からの撤退を
>含め、事業のありかたを常時見直していくことが必要と指摘した。

 これは読売の記者も総務庁担当者も、「特殊法人が技術開発を行うことは、経理上何を意味するか」を全く理解していなかった結果、流れた記事です。

 NASDA社員で家を建てた人なら借金のさいに銀行向けに書いた書類で、NASDAの法人としての資本金が異常に大きいのを記憶しているのではないでしょうか。正確な数字は私も把握していませんが、おそらく記事の「一兆八千億円」にほぼ近い額になるはずです。

 なぜか。

 ロケットは政府予算で運営されるNASDAの資産です。しかし打ち上げ後数分で使い捨てられます。従って法人関連法律の「減価償却」の観念になじみません。そこで、NASDA会計においてはロケット開発及び運用資金は資本金に各年度毎に組み入れられ、打ち上げ後は累積欠損として計上する、という経理で処理されています。つまり、記事にある累積欠損とは、これまで30年以上のロケット開発と運用にかかった資金そのものなのです。
 打ち上げ毎に成果をだしてきたのですから、油田を見つけられぬままに膨れてきた石油公団あたりの累積欠損とはわけがちがうのです。

 問題の総務庁報告を読んだわけではないで(今インターネット検索をしてみましたが、見つかりませんでした)はっきりしたことはわかりませんが、「同事業団によるロケットの打ち上げに必要な経費は外国と比べて二、三倍と割高」というのは開発経費も含めた投資を打ち上げ機数で割った数値をアリアンを初めとした商業打ち上げ事業と比較した値ではないかと思います。
 だとしたらこれも不公正な比較です。アリアンにせよデルタにせよタイタンにせよ、開発は政府機関が行い、開発投資はすべて政府が負担しています。しかる後にアリアンスペースやボーイング、ロッキード・マーチンなどの民間企業が国家によってすでに開発経費を回収したロケットを運用コストのみで商業打ち上げを行っています。世界の商業打ち上げ価格には、開発経費が入っていないのです。

 正確なところは総務庁報告を読まなければ判断はできません。しかし、上記読売の記事を読んだ限りでは、総務庁担当者と読売の記者が無知が引き起こしたミスリーディングであるという印象を拭えません。

 ただし、その根本には情報公開法に特殊法人に関する規定がないために、NASDA経理の情報公開が進んでいなかったという事情があることも指摘しておくべきでしょう。「攻めの広報戦略」として、一般企業並みの決算説明会を開催するぐらいのことはNASDAとして行っても良かったでしょう。

 上記記事の文責は松浦にあります。また事実認識に誤りがありしだい、訂正を出します。

No.45 :コズミック・カレッジ開催
投稿日 2000年3月27日(月)12時43分 投稿者 野田篤司

今日から、コズミック・カレッジが開催されています。
対象は、小学校5年生から中学校1年生で、筑波・種子島・札幌を衛星で中継して、3月26日から31日の予定です。

スペース広場を見ると、小中学生対象のコズミック・カレッジも今年の夏期がありますし、18歳以上のサマー・スクールやスペース・スクール等、これからも色々予定されています。
今回のコズミック・カレッジは、2月初めに募集があって、作文などの書類審査で生徒が決まりました。

上記のスペース広場をウォッチしていれば、新しく募集があったとき判るはずですから、興味がある人は目が離せません。

http://village.infoweb.ne.jp

No.44 :東京エアロスペース2000(3)ほかいろいろ
投稿日 2000年3月26日(日)23時40分 投稿者 笹本祐一


 会場の一画に、飛行船のモデルがある。これは、科学技術庁、郵政省の共同プロジェクト、成層圏プラットフォームである。
 成層圏プラットフォームとは、高度二万メートルから三万メートルの成層圏に全長二四五メートルのツェッペリン以来の大型無人飛行船を浮かべ、地球観測、通信ステーション(テレビ塔や東京タワーの代用)、災害監視などを行うという構想である。
 総重量三〇トン、往年の大型公式飛行船の二〇分の一くらいの重量が想定されており、そのために必要なのは電力供給に必要な超薄型太陽電池、夜間の電力保持のための燃料電池など色々と新規開発が必要になる。
 予定通りであれば、一五〇メートル程度の実証実験のための飛行船が二年後には浮んでいるはずである。

 飛行船はもう一機種、あのフェラーリを扱っているコーンズが日本代理店となってツェッペリンを出店していた。
 ツェッペリンてまだあったの?軽合金製品の専門会社として生き残っていた?しかも別社屋で飛行船の研究だけは続けていた?
 全長七五メートル、フレームを持つ半硬式とでもいうべき小型飛行船が半世紀以上の時間をへてドイツでツェッペリンの名をもって浮んだらしい。エンジンは船体前部にふたつ、尾部にひとつ、ゴンドラから離れているためにキャビンは静かだそうである。
 コーンズは総合商社であり、他に航空機搭載用の頑丈なマグライトほどのCCDカメラも出店していた。
「これ見せる時はいつもこうしてるんです」
 モニターに繋ぐと、固定焦点、可変絞りのカラー画像が出る。映像そのものは家庭用ビデオカメラ程度なのだが、このカメラをがんがんと壁に叩き付けてもノイズひとつ出ない。
 ロケットに搭載して離床する映像を見せたり、あるいはミサイルの先端に搭載して命中までの映像を中継したりするものらしいが、さすが軍用というだけのことはある。もっともお値段の方も軍用らしいが。

 ボーイングのブースに飾ってあったのは次世代二段目用ロケットエンジン模型、ボーイングと三菱が共同開発予定のMBーXX。液体酸素液体水素系、推力二五トン前後、三回以上の再着火機能。
松浦「つまりこれは、実質的なLE5Cなんだよ」
 現在H-IIロケットの二段目に使われているのがLE5A。
 ただし、八号機からはLE5Bという新型に換装され、テストされるはずであったが、八号機は一段目の燃焼が途中で中止になったために指令破壊されたため、二段目は点火されず、したがってその真価もまだ不明である。
 MBーXXは、さらにその後継機種ということになる。

 NASDAのブースには、H二Aロケットのファミリーが、液体ロケットブースター二本がけ、LE7A五連装の最大型まで含めてずらりと並んでいる。
 ただし、開発が決定しているのは液体ロケットブースター一本、LE七A三基使用のものまでで、それ以上の大型化は今のところ必要なしという事で将来構想モデルでしかない。
 松浦さんによると、NASDAの構想としてはこれが最後の使い捨てロケットになるらしい。以後は、再使用型スペースプレーンの開発に入る、ということである。

 一階の会場に移動する。こちらはヘリコプターを中心とした実機が多い。
 ひときわ大きいティルトローターの機体が!?ベルのV22オスプレイの民間モデル、もう実機が出来とったんか!?
 乗り込めるというので操縦席を覗いてみると、スティックとスロットル、軍用ヘリコプターのをそのまま持って来たくさい。また、操縦席のパネルも一部印刷、シールだけだったりして、どうやらモックアップらしい。
 ところが、出て来たら「頭の上に気を付けてください」
 上を向いていた両翼端の直径八メートル近いティルトローターが、エンジンポッドごと前に動く、動く。モックアップとはいえ展示会場に飾るもの、その程度のギミックは仕込んであるんかい。
 いや、コクピットに行ったのは、このティルト機構のコントローラーを探すためだった。ところが、それらしいものは見当たらず、聞いてみると民間仕様はどうやら完全自動化されるらしい。
「ほら、連邦航空局、こういうのにはうるさいですから」
 スティック、スロットルと連動させて、うっかりティルトローターが前進姿勢のまま着陸したり出来ないようにするらしい。ローターの直径は駐機姿勢の機体より遥かに下まで行くから、うっかりローターを前に向けて着陸すると滑走路の両側に深さ二メートルくらいの溝を掘ることになる。現実にそんなことしたらあっという間に両翼のローターがぶっ飛んで悲惨なことになるのは間違いあるまい。でも、どうするんだろう、操縦システム。


 それから、GEN H-4を見に行く。
 これは、去年発表されて話題になった背負い式の一人用ヘリコプターの商品型である。
 最初のモデルではユニットもろとも背負う式になっており、降着装置は人間の脚、従って日本にはこの飛行機械に相当する法律がなく、しかたないのでアメリカだけでの発売、という情けないことになっている。
 これが、簡単なパイプフレームの三脚と自転車のサドル程度のシートを備えた超小型ヘリコプターとなって展示されていた。
 二重反転ローターがエンジンもろとも頭の上にあり、これがベアリングでささえられ、目の前に下がっているハンドルでどの方向にも傾けられるようになっている。
 エンジンは自社開発の二ストローク空冷水平対抗二気筒125CC一〇馬力エンジンを四連装。これは、ローターが固定ピッチでエンジン停止の時に通常のヘリコプターのような滑空が出来ないため、安全策をとってのことであろう。ローター直径は四メートル、乾燥重量は七〇キロ、アメリカで販売予定、予価三万ドル。キット販売のみ、簡単な機構のため、三〇時間から四〇時間で組み立てられるそうである。
 操縦は非常に簡単だそうである。実際にサドルに座り、目の前の潜望鏡みたいなハンドルを動かしてみるとそのとおりに頭上のローターが傾く。
 タケコプターってこんな感じじゃないのかなあ。
 燃料容量は一八・九リットル、これで一時間の飛行が可能。ただし、操縦者の体重その他の要素によって飛行性能が大きく変わって来るであろうことは言うまでもない。
 このためだけにアメリカに移住して田舎に住む価値はあるかも。だいたい最高一〇〇キロでの巡航が出来るらしいので、ガソリンスタンド併設のスーパーにこいつで買い物に行き、次いでにガソリン満タンにして荷物ぶら下げて返って来るという生活はいいかもなあ。
 種子島と本土の往復にも使える。
 だから日本の航空法ではこいつは使えないんだってば。

No.43 :東京エアロスペース2000(2)防衛庁
投稿日 2000年3月26日(日)23時39分 投稿者 笹本祐一

 防衛庁は、航空自衛隊と海上自衛隊による展示が行なわれていた。

 自衛隊のブースには、黄色の、遷移飛行実験機というデルタ翼ダクテッドファンのラジコンが飾ってあった。これがなんと、技研本部によるテイルシッターの実験機。
「テ、テイルシッターって、あのライアンX-13とか、ポゴとか、あれですか?」
 垂直離着陸機のなかで、機体を垂直に立てたまま離陸し、空中で水平に飛んで行き、着陸する時は再び垂直になってメインエンジンをリフトエンジンにして着陸する形式のものをテイルシッターという。メインエンジンをそのまま離着陸に使えるので、別にリフトエンジンをもって離着陸するよりも効率はいい、理屈では。しかし、実用化された機体は今のところない。
 前線支援などを考えると、どうしても垂直離着陸機が欲しくなる。しかし、ハリアーのような凝ったエンジンを使うと大変である。で、色々と研究してみるとやはり離着陸時は機体を垂直に立てるテイルシッターが有利だということになったらしい。
 しかし、自衛隊が現在テイルシッターの垂直離着陸機の開発計画を持っている訳ではない。技研本部としては、将来的にそういう要求が出て来た時のためにこういう基礎技術研究をしているという。
 観測ヘリといいつつ戦闘ヘリにしか見えないOH1は写真と、小さなメインエンジンのみの展示。このヘリは、ローターの振れを弾性で吸収する新素材をハブに使用、ヒンジレスで、アメリカ以外の機体としてはじめてハワード・ヒューズ賞を受賞したという。どうやら、今までのヘリコプターではできなかったような機動も出来るらしい。ヒント、バク転。

 おおすみの模型も飾ってあって、これも実用に使ってみたら色々と不具合が出ているという。
 ヘリコプター空母のような艦容を持つおおすみであるが、ヘリコプターの発着甲板は後部にふたつ、そしてそれを艦内に収容するためのエレベーターはアイランド(と自衛隊内では言っていないだろう。右にオフセットされた艦橋)をはさんだ前部甲板にある。
 後部甲板に着陸したヘリコプターを収容するためには前部甲板に移動させなければならず、その際艦橋横の狭くなった甲板を通らなければならない。ところが、ここが狭過ぎてトレーラーで牽引することが出来ず、しかたないので移動は人手に頼っているという。
 それから、港から車両を積み込むためのドアがあり、ここからボーディングブリッジが延びるようになっているのだが、接地した際の斜面の角度が急過ぎて、最低地上高がとってある自衛隊の車両ならばともかく、民間のバス、自家用車だと車体の下を擦ってしまうらしい。これは、建造中の二番艦では改善されるはずである。

No.42 :東京エアロスペース2000レポート(1)アリアンファミリー
投稿日 2000年3月26日(日)23時38分 投稿者 笹本祐一

 東京エアロスペース2000、という航空宇宙産業の見本市が有明ビッグサイトで三月二二日から二六日まで開催された。東京で行われる国際航空宇宙展はほぼ七年おきにこれで三回目だという。ちなみに東京圏で行われた最後の国際航空宇宙ショーは入間で疾風が飛んだ一九七〇年代前半のものが最後。

 まずは、三月二四日九時半から行われた特別講演、「アリアン1〜5まで、欧州発ロケットシリーズ」

 アリアンロケットは、ミュンヘンオリンピックに合わせてヨーロッパが通信衛星シンフォニーを打上げようとしたらアメリカとの交渉にえらい手間取り、しかたないので自前のロケットを開発しようと決定したところからはじまる。いや、実際にはその前にELDO、研究機構であるELSOによるロケット一一回打上げ連続失敗とか、色々と厄介な事情はあるんだけれどもそこらへんまで詳しく説明しているほどの時間の余裕はない。
 アリアン1型の開発は一九七四年にはじまった。第1段ロケットの開発を指揮したのはペーネミュンデ出身の技術者、詳しい説明はなかったがおそらくこの1段目、原型としてはV二号ロケットのエンジンを四本束にしたものかもしれない。
 高度技術、新素材をあえて使わず、確実な技術のみを使用し、発射台はELDOがギアナに建造したものを改装して使用。最初の打ち上げ予定は一九七九年一二月一五日だったのだが、記録フィルムによるとメインエンジンに点火してから打上げ中止、九日後のクリスマスイブに一号機の打ち上げに成功している。ただし、この当時には、宇宙開発の商業化という考え方そのものがまだなかった。ただし、将来計画としての大型化、型、型の開発継続は1号機の打上げ直前に決定していたらしい。
 以後、型までのアリアンロケットはその拡大発展型である。エンジン、推薬の変更、固体ロケット、液体ロケットブースターの追加、エンジンの高性能化などで着々とペイロードを上げて来たアリアンロケットは、一九八四年にエルメス計画を開始した。
 そして、一九八六年にチャレンジャー事故が発生し、これによりNASAはシャトルによる商業衛星の打上げ取り扱いを中止する。
 これにより12トンクラスの打上げ能力を持つアリアン型の開発が決定した。
 離床重量700トンの大型ロケット、アリアンはこれまでに五基打上げられ、二〇〇六年までの開発予定が決定している。その中にはペイロードのより大型化なども含まれる。
 最後の質疑応答の時間に、笹本は質問してみた。
 エルメス計画は現在中止されているが、アリアン型は本来そのために計画された。そして、有人ロケットは無人ロケットより二桁厳しい確実性を要求されるはずである。
 質問は、エルメス計画の中止により、設計信頼値の要求変更はあったのか、そして、将来的に有人飛行の予定はあるのか。
 答えは、信頼性を第一に考えているが、有人化のためにはなお変更しなければならない点が多数ある、とのことであった。
 解釈すると、エルメス計画が中止になってもアリアン型としての信頼要求数値に変更はなく、しかしながら運用してみると色々と改善すべき点が出てきている、しかも、今のところ有人化の計画はない、ということであろう。

No.41 :相次ぐ失敗の裏側に――私的分析
投稿日 2000年3月20日(月)12時41分 投稿者 松浦晋也

 一昨年から日本も含む世界中で続く宇宙関係の失敗ですが、以下聞いた話などを元に分析を。文責は松浦にあります。

 世界的に失敗が続くということは宇宙開発業界の構造事態に問題があるということです。主なものとして挙げられるのは以下の項目でしょう。

・過剰なまでのコストダウン圧力
 そもそも宇宙機はロケットも衛星もぎりぎりまで重量を切りつめて設計します。破壊に対する安全係数は地上の機会などでは考えられないぐらい切りつめます。
 H-IIロケットを例にとると、その破壊荷重に関する安全係数は1.2です。実際にかかる力の1.2倍以上の力が掛かるとH-IIは破壊してしまうのです。それぐらいぎりぎりの設計をしないと現在の化学推進のロケットは宇宙に出ていけないのです。
 ですから、よほど運用を重ねて設計を実証しないと検査その他の省略で思わぬ問題が表面化する可能性があったわけです(したり顔の記者の後知恵かもしれませんが)。江藤さんが書いたNASAの火星探査機失敗の報告書でも過剰なコストダウンの弊害が指摘されています。
 コストダウン圧力はロシア・中国の打ち上げ市場参入あたりから強まり、H-IIでもコストダウン型H-IIAを現在開発しているところです。

 ちなみにH-IIは、設計目標は1機160億円、様々な計測機器を搭載したテスト1号機が約190億円、特殊なフェアリングと補助ブースターをつけた最後のテスト打ち上げである3号機は約203億円、対して昨年11月に失敗した8号機はロケットがロケット140億円、昨年9月以降続いた不具合対策に14億円というコストです。これをH-IIAでは85億円以下を目標にしています。

 またH-II第1段のLE-7に関するならば、最初の試作エンジンEG1101から、結局打ち上げ中止になった7号機のエンジンまで、合計24基しか作っていません。これは量産品のレベルではなく工芸品です。工芸品には工芸品としての扱いが必要だったのではないかと思うのです。

・ベテラン技術者のリタイヤ
 プロトン・ロケットの失敗についてロシア宇宙庁は、「ソ連崩壊後の志気の下がった93年頃製造のロケットだった」とコメントしていましたが、実際宇宙開発初期から、爆発、また爆発の修羅をくぐり抜けてきたベテラン技術者が世界的に退職の時期を迎えました。ボーイングの新ロケットデルタ3が2回連続で失敗しましたが、これにはデルタを開発していたマクダネル・ダグラスをボーイングが買収した際に、ベテラン技術者の多くが年齢を理由に退職を選んだことが遠因としてあるのではないか、という話を聞きました。
 自動車は毎年新車が出ますし、その都度若い技術者が開発の修羅をくぐって成長します。しかしロケットは良くても10年に1回、下手をすれば30年に1回しか開発の機会がありません。従って開発現場でのノウハウの継承がなされず、新たな開発で、前回と同じミスが発生する確率が高くなってしまうのです。

・組織の硬直化
 発足から数十年以上経つとどんな組織でも硬直化します。世界の宇宙開発期間の多くが発足から30年以上経過した今、世界的に制度疲労が起きていることは間違いありません。内側からの改革で進むのか、それとも新規まき直しをするのか――いずれにせよ重大な問題です。

 今後、宇宙開発はコストダウンの圧力に耐えながら、技術者を現場で鍛える場を用意するという困難な道を通ることになるのでしょう。

 失敗連続の裏にあるのは、新人の教育と有能な若いエンジニアの力をのびのびと発揮できる体制作り、という大問題なのです。

No.40 :イリジウム営業停止
投稿日 2000年3月19日(日)22時37分 投稿者 江藤 巌

 すでに新聞などでお知りだろうが、衛星を利用した携帯電話のイリジウムが、17日(アメリカ時間)限りでサービスを停止した。日本イリジウムのサイトは閉鎖されたのか応答がない。本家本元の2000イリジウムLLCのサイトは一応開いているが、この件に関するリリースはないようだ。イリジウムの負債は約44億ドル、現在の利用者は世界中で約55,000人と言われる。
 イリジウムのシステムは、モトローラ社の技術者が1985年に提案し、同社の後押しで1990年に発表された。1991年6月には、モトローラが20%ほどを出資してワシントンDCにイリジウム社(Iridium LLC,本社ワシントンD.C.)が設立され、日本でも1993年にDDI(50.5%出資)、京セラ(10%)、ウシオ電機、セコム、ソニー、三井物産、三菱商事、各地のセルラー電話会社などが出資して日本イリジウム(資本金260億円)が設立された。日本イリジウムはイリジウムLLCの子会社ではなく、各国各地域で別々のイリジウム会社が設立される形を取っている。日本イリジウムは、イリジウムLLCにも11%出資する第二位の株主である。
 イリジウムの名は、元の計画の77機の衛星で地球を取り囲む様をイリジウムの原子に例えたものだが、その後の技術の進歩で衛星の数は66機に減っている。イリジウムの衛星打ち上げは1997年5月に開始され、アメリカ、ロシア、中国の打ち上げ機を使い分けて、1998年5月までの合計15回の打ち上げで、66機プラス予備機のネットワークが完成した。
 イリジウムの挫折の原因はいろいろに指摘できるだろうが、システムの立ち上がりまでに時間が掛かりすぎ、その間に携帯電話が爆発的に普及してしまい、ユーザーを奪われてしまったのが決定的であろう。イリジウムのようなシステムの潜在的需要はいまも存在する。それは砂漠や大洋の真ん中だったり、南極だったり、ようするに将来も携帯電話が普及しそうにないところである。しかしそのような少数のユーザー相手に商売をして行くには、イリジウムのシステムは初期投資も維持費も掛かり過ぎた。もしイリジウムの立ち上がりが数年早く、携帯電話の普及に先んじていたら、早くから利益を上げられたかもしれないとは言えるが、その後の競争の結果はどうなっていたか分からない。PHSと携帯の競争のように、この業界ではほんの二、三年で勢力分野ががらりと入れ替わってしまうからだ。

No.39 :図書とニュース
投稿日 2000年3月18日(土)18時16分 投稿者 野尻抱介

・『スペースガイド2000』((財)日本宇宙少年団編、的川泰宣、毛利衛監修、宇宙開発事業団編集協力、丸善)
 宇宙開発ファン必携のハンドブック、今年も出ました。
 『1999』と比較すると、いろいろ面白いです。ISSのスケジュールとか……。
 NASDAのロケットには「先端技術実証ロケット」というのが追加されてました。いわゆるJ−2ですよね。どこが先端技術かといえば2段目の天然ガス・エンジンと複合材のタンクでしょうか。1段目はアトラスのタンクとロシアのNK−33を改修して流用しています。

 続いて悲しいニュースなど。

・イリジウム衛星、廃棄か
 CNETテクニカルニュース毎日インタラクティブ
 人工衛星観測者には興味深い話題を提供してきたイリジウム衛星でしたが、こんなことになるとは。静止通信衛星を考案したアーサー・C・クラークはどう思っているでしょうか。

・シーローンチ打ち上げ失敗
 過去二度にわたって成功してきたシーローンチが、3度目の打ち上げで失敗しました。
 yahoo Japanのニュースシーローンチ社のウェブサイト

http://www.asahi-net.or.jp/‾xb2n-aok/

No.38 :NEAR改名とミール
投稿日 2000年3月16日(木)18時13分 投稿者 江藤 巌

 いま小惑星433エロスの回りを飛びながら観測を行っているNASAの探査機NEAR(Near Earth Asteroid Rendexvous)が、ユージン・M・シューメイカー博士に因んで、NEARシューメイカーと改名されることになった。
 ジーン・シューメイカー博士(1928-1997)は、ながらくアメリカ地質調査所(United States Geological Survey)に籍を置いていた地質学者で、地球の火山と隕石衝突によるクレーターの研究をきっかけに月や惑星のクレーターの研究へと向かい、1960年代初め惑星地質学の基礎を築いた。また1994年に木星に衝突したシューメイカー・レヴィ9彗星の発見者の一人でもある。残念なことにシューメイカー博士は、オーストラリアの隕石クレーター調査旅行中の1997年に自動車事故で死亡した。
 1999年に月の極に落下したルナー・プロスペクター探査機には、シューメイカー博士の遺灰が積まれていた。シューメイカー博士は科学者宇宙飛行士になる希望を持っていたものの、健康上の問題で果たせず、代わりにアポロ計画で宇宙飛行士達に地質学の知識を授けた。

 先月の末あたりから、中国が近く有人宇宙飛行を試みるとの情報が流れているが、まだ実現していない。
 その中国が、ロシアのミール宇宙ステーションを借りて宇宙滞在実験を行うとの話がある。ロシアは、中国が昨年10月に無人で打ち上げた神舟でも技術を提供しており、大いに有り得る話と言えよう。神舟(Shenzhou)は実質的にロシアのソユースの改良型だから、ミールとの適合性には全く問題はない。
 そのミール宇宙ステーションは現在無人で周回中だが、ロシアは近く宇宙飛行士を送って、ミールの有人運用を再開する予定である。ロシアの俳優がミールに飛んで宇宙で映画を撮影するとの話はどうやらお流れのようだ。

No.37 :失敗の話ばかりというのも気が引けるが……。
投稿日 2000年3月16日(木)02時00分 投稿者 江藤 巌

 昨年NASAの二つの火星探査機(MCOとMPL)が相次いで失敗したが、その原因に関する報告が提出された。
 NASAでは、ゴールディン現長官が就任以来、「速い、安い、良い」(Faster, Cheaper, Better)と言うどこかで聞いたようなキャッチフレーズを掲げて、いままで重厚長大に傾いていた計画、組織の思いきった簡素化、省力化を進めて来たが、こんど出された報告はどちらもこのゴールディン長官のNASAリストラ策に疑問を投げかけるものとなっている。すなわち人員を削減し過ぎ、計画を急ぎ過ぎたのが、失敗の根本的要因ではないかと指摘し、これからの探査計画はコストや時間よりも、ミッションの成功を第一に置くべきである、と提言している。

 もう一つ失敗した火星ミッション。ブライアン・デパルマの新作SF映画、”Mission to Mars”は、アメリカで大不評を被っているようだ。

No.36 :どこまで続くぬかるみぞ
投稿日 2000年3月14日(火)14時03分 投稿者 江藤 巌

 実は一連の衛星打ち上げ失敗は、昨年の半ばから続いている。

1999年
☆4月27日 米のアシーナ2によるアイコノス1地球観測衛星の打ち上げ失敗。
☆4月30日 タイタン4Bの打ち上げ失敗。
☆5月4日 デルタ3の打ち上げ失敗。
☆7月5日 ロシアがカザフスタンのバイコヌールから打ち上げたプロトンが空中爆発して落下。カザフスタン政府は原因解明まで打ち上げ差し止めを表明。
☆10月27日 ロシアがバイコヌールから打ち上げたプロトンが失敗、カザフスタン政府は再び打ち上げを差し止め。
☆11月15日 宇宙開発事業団(NASDA)が種子島からH-2ロケット8(H-2-8)号機を打ち上げるが、離昇249秒後に第1段エンジンが突然停止、コースを逸れたため459秒後に地上から爆破指令を送る。ロケットとMTSATの破片は小笠原の北西380kmに落下。
2000年
☆2月10日 宇宙科学研究所(ISAS)がX線天文学衛星ASTRO-Eを載せて内之浦から打ち上げたのM(ミュー)-5ロケット4号機(M-5-4)が、離昇55秒後の第1段燃焼中にロケットの姿勢が大きく乱れて推力が低下、第2段第3段は正常に燃焼したものの、衛星軌道に到達できず。

 打ち上げ失敗ではないが、昨年は火星探査機の火星到達失敗も2件あった。
 もちろんこの間に成功した打ち上げもいくつもあり、失敗だけが連続しているわけではないが、それにしてもよくも不運が続くものである。しかもアメリカ、ロシア、日本と三カ国にわたっており、ここ1、2年目立った失敗をしていないのはフランスと中国だけかもしれない。

No.35 :失敗の連鎖
投稿日 2000年3月14日(火)02時41分 投稿者 江藤 巌

 よく飛行機事故は続けて起きるというが、ロケットの事故も連続して起きる傾向があるようだ。日本の宇宙開発事業団宇宙科学研究所のロケットが相次いで打ち上げに失敗したが、今度は国際合弁企業のシー・ローンチ社の衛星打ち上げが失敗した。
 3月12日、クリスマス島近くの南西太平洋上のリグから打ち上げられたゼニト3SL打ち上げ機は、打ち上げから数分後に通信が途絶えた。ゼニト3SLは、ヒューズ・スペース&コミュニケイションズ社が製作したICOグローバル・コミュニケイションズ社の移動体通信衛星を搭載していたが、衛星もろともに南太平洋に墜落したものと思われる。失敗の原因はいまのところ不明である。
 シー・ローンチ社は、アメリカのボーイング社(出資率40%)、ロシアのエネルギア公団(25%)、ウクライナのユジノイェ公団とユジマシュ公団(15%)、ノルウェイのクヴェルナー社(20%)の合弁企業で、洋上からの衛星の商業打ち上げを目的に、1995年に設立された。シー・ローンチ社は1999年3月に最初の打ち上げに成功、同年10月には最初の有料の商業打ち上げ(ディレクTV1R放送衛星)にも成功している。今回は同社の3回目の打ち上げになる。
 なおロシアのプロトンの打ち上げが失敗したかのような一部の報道があったが、同日にロシアから行われたプロトンの打ち上げは成功している。シー・ローンチ社の打ち上げに用いられたゼニト3SLは、ウクライナのユジノイェ、ユジマシュ公団が開発生産する液体推進剤の2段式ロケットである。この打ち上げ機は、洋上に浮かぶリグから打ち上げられる。

No.34 :M-V-4号機取材終了
投稿日 2000年2月12日(土)16時44分 投稿者 笹本祐一

 2月12日、金曜日、晴れ

 本日、南部方面補給基地のある北九州八幡に帰って来ました。
 今回の取材に協力頂いた各方面に深く感謝いたします。
 とくに、打ち上げ直後には昼前から日暮れまでずっと記者室で質問に答えられていた的川先生、竹前さんにはお世話になりました。

 宇宙研は、今後M-Vロケットにおいて5基の衛星の打ち上げを計画しています。
 今回の失敗により、その原因究明、次のM-Vロケットの打ち上げへの反映において苦労するであろうことを覚悟している、との松尾所長の弁と、幸いにしてその打上げまであと丸2年ほどの歳月があるので、対策をとる時間はじゅうぶんにある、それまでにはなんとかなるでしょうとの的川教授の言葉を最後にお伝えして、今回の取材を終えたいと思います。

 なお、宇宙作家クラブニュース掲示板は、これからもその活動を続行する予定です。

 今も、ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースシャトルの中で、毛利宇宙飛行士が仕事をしているはずです。

 この戦いに勝利はないかもしれない。だが、わたしは勝ち目がなくても、挑戦する側に与したいと思うのである。(小松左京)