投稿日 2003年5月7日(水)19時18分 投稿者 松浦晋也
午前9時過ぎから記者室で開かれたブリーフィングの様子です。説明は的川教授
本日は夜中から電波テストを開始して午前9時を打ち上げに想定して電波テスト実施中。電波テストとはリハーサルのこと。
午前7時半頃にいったんロケットを出したが、雨雲が垂れ込めているので、再度閉めた。この後打ち上げまで整備塔からロケットが出ることはない。電波テストはロケットを整備塔の中においたままで行った。
前回打ち上げに失敗した4号機と今回の5号機の変更点。
・前回のM-V4号機の打ち上げ時に損傷して打ち上げ失敗の原因となったノズルスロート部材質を、グラファイトから、3次元カーボン・カーボンに変更した。第1段から第4段まですべてのロケットモーターで材質変更をしている、
前回の失敗はグラファイト内部の欠陥だったと推定されたため。グラファイトは脆い材料だが過去40年以上安定して使われてきた。M−Vの事故のようなグラファイトのスロート破損は、アメリカのスカウトロケット上段が30年以上昔に事故を起こしたことがある。M-Vの事故はそれ以来だった。グラファイトは非破壊検査が不可能だが、カーボン・カーボンは可能。価格が高いのだが、今回3年の時間をかけて燃焼試験を行いすべての段で変更した。
・第2段ロケットモーター:金属削りだしからカーボン・カーボン系のフィラメントワインディングに変更した。2段目のロケットモーターの燃焼圧力を2倍近く上げることができた(60気圧から100気圧へ)。
また2段姿勢制御を可動ノズルに変更。これまでは固定したノズル内に液体を噴射することで流体力学的に推力方向を変更していた。これにより姿勢制御能力が向上した。
第1段と第2段との継ぎ手を今までは開傘型(傘のように開く)だったが、これを非開傘型に変えた。これにより信頼性を向上させた。
軽量化した分、ほかの部分で補強を入れたりしたので重量は変わらない。信頼性は向上している。
ロケット価格は約70億円。
打ち上げ参加スタッフは約300人。うち100人程度が衛星。
セキュリティは情報収集衛星以降きびしくなっています。NASDA、NALとの統合を控えて、セキュリティをきびしく管理すべしということになっていて、報道にも今まで通りにお見せできないことがあります。
##打ち上げ準備で必死になっている職員の横で、地元のおばさん達がカラフルなエプロンでお弁当を作っていたりする、「手作り宇宙開発」の雰囲気が内之浦の大きな魅力でした。セキュリティ強化でこの宇宙と人間の体温が同居した雰囲気がなくなってしまうとしたら大変残念なことです。
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