投稿日 2006年1月21日(土)16時55分 投稿者 松浦晋也
本日午後3時から、プレスセンターでYマイナス1ブリーフィングが行われました。
出席者は、園田昭眞JAXA企画主任、遠藤守H-IIAプロマネ、ロケット班の泉達司氏、富岡健治衛星主任。写真は質問に答える泉氏。
(最初のアップで、泉氏のお名前を、東氏と誤記していました。謹んで訂正し、お詫びいたします。以下再アップします)
まず園田主任から
本日午前10時からの主任会議で、最初のY-1で出たテレメータ送信機の不適合と、天候を検討し、23日午前10時33分の打ち上げを決定した。
本日午後から残っていたY-1の作業を進めている。明日未明までかけて終わらせる予定。明日の午後6時半に機体移動のGO/NO GO判断を行い、午後9時半から機体移動を行う。
泉氏から。ロケットのトラブルの説明。1月17日にテレメータ送信機3台のうち1台の電源を投入したところ、正常に電波を発信しないというトラブル発生。電源を再投入したところ正常に動作した。
18日に送信機を交換。18日夕刻から、トラブルを起こした送信機を工場に送り返して試験を実施。数百回の電源投入を実施したが、トラブルは再現せず。
この結果、トラブルは電源投入時にのみ起きるもので、かつ起きる可能性が極めて低いと判明。また電源再投入できちんと動作すれば以後は健全に動作すると判断した。
園田主任:機体移動は午後9時半から。燃料注入のGO/NO GO判断は午前0時半、GOなら午前1時から燃料注入。
天気について。24日のほうが天候が安定しているが、23日にも打ち上げ条件を満たすということで23日に決定した。ただし、22日時点の気象によってはまた1日延期する可能性がある。
23日は、北寄りの風邪7〜9m/s、のち5〜7m/s 曇り時々晴れ、にわか雨。このにわか雨は小雨であり、打ち上げに支障があるものではないだろうと判断している。
富岡主任から衛星の状況について。
バッテリーの補充電と、モニターを継続している。本日午前中モニター項目を増やしてチェックした。すべて健全。本日夜からロケットと共に、アーミング(火工品関連の結線)を行う予定。
以下質疑応答です。
共同通信 送信機不具合について。原因は分からないけれども、低頻度でやむを得ないものと判断されたのか。今日の作業でもう一度発生しても問題にしないのか。天気の状況を見ると22日と23日とでは大して違いがないように見えるのだけれども、なぜ23日か。
泉 トラブルは、送信機内の特定の部位で特定の条件で起きるというところまで分かっている。万一起動時に同じ現象が発生したならば、電源再投入で作業を進める。
園田 22日打ち上げのためには20日に打ち上げを決断しなければならない。20日の段階では雷雲を伴う低気圧の通過が予報されていたので、22日は打ち上げができないと判断した。
西日本新聞社 作業スケジュールについて。通信機器トラブルで作業ストップしていたということだと思うが、作業は再開したのか。それとも作業手順の組み直しがあったのか。
明日の機体移動の前に23日打ち上げを延期する可能性があるとすれば、最終判断は明日の午後9時半と思えばいいか。
トラブルの起きた送信機だが、電源起動はいつ行うことになっていたのか。
遠藤 ロケットに関しては、作業ストップのところから再開している。ただし、電波系の試験は、トラブル部位以外もすべて終了していたのだが、これだけは改めて本日やりなおしている。
園田 午後6時半の段階で判断する。
泉 送信機は打ち上げ前に電源を投入してそのまま入れっぱなしだ。正常作動が確認できれば、問題はないと判断している。電源投入は前日午後11時から0時にかけて行う。ここで確認を行えば、その後は電源は入れっぱなしとなる。
東京新聞 「送信機内の特定の部位で特定の条件で起きる」の詳細を知りたい。これは、前回の送信機固有のものなのか、それとも送信機全般に起こりうるものなのか。
泉 送信機発振部で起きていることは確認できている。送信機全般にあり得ることだが、可能性は非常に低いと考えている。
東京新聞 つまり前回トラブルを起こした送信機は異常ではなかったのか。
泉 トラブルを起こした送信機も、工場での試験では一回も起きなかった。このため起きる頻度が非常に低いと判断している。
東京から
毎日新聞 機体移動の判断。午後6時半に判断を行うということでいいか確認したい。送信機のトラブルについての判断を行ったのはいつか。
園田 そうだ。この時点での判断は天候が主体になると思う。
泉 送信機の判断は昨日午後に行った。
時事通信 9号機とM-Vの日程に影響が出るか。
園田 まだ分からない。まずは8号機が、出るかもしれない。
NHK 本日Y-1の作業をもう少し詳しく知りたい。
遠藤 推進系クローズアウトは、エンジン回りのアクセスドアを閉じるという意味。飛行系アンビリカル離脱系の最終準備は、アンビリカルケーブル、第1段のタンク間部に機体を支えるための装置の、最終的なセッティングを行う。ランヤードという綱が引っ張られるとアンビリカルが外れるという仕組みだが、準備時はわざとランヤードをゆるく張っている。これはぴんとはるということ。
NHK 送信機トラブルの内容をもうすこしかいつまんで教えてほしい。天候も23日はパーフェクトではないようだが。ALOSのウインドウが午前10時33分から43分の10分間の理由を知りたい。
泉 電源投入時で、送信機発振部が正常に動作しなかった。
園田 週間予報では23日に雨ということになっているが、実際には雲の切れ間もあり、雨雲が来たときに小雨がぱらつく程度。また冬のこの時期は最大瞬間風速は、平均風速の1.5〜1.7倍程度であることが経験上分かっている。このため平均風速10m/sであれば打ち上げは大丈夫と判断した。
富岡 ALOSは赤道を通過する時刻を午前10時30分とすることになっている。これはセンサーと太陽光の地上への入射角で決まっている。ウインドウは、初期のクリティカルフェーズの軌道制御の効率で決めている。例えば姿勢センサーの視野に月が入らないというようなことだ。これにより43分までというウインドウが決まった。
NHK もう少し送信機のトラブルを書きやすいように教えて欲しい。
泉 トラブル時には「故障の木解析(FTA)」という手法でトラブルの出る場所を特定していく。これにより、発振部がトラブルを起こしたことは突き止めている。電源の温度、電圧、電流などのデータから、発振部がトラブル源だと突き止めたわけだ。
発振部内部の一体どこがトラブルを起こしたのか、水晶発振部なのか周波数制御部なのかは、現象が再現できていないこともあって、まだ特定できていない。
種子島にマイク戻る
西日本新聞 送信機の原因確認作業は終了したいうことか。それともより一層の解析を続けるのか。
泉 引き続き検討を進める。
遠藤 打ち上げに関する検討については、問題なしという結論を出している。しかし、先ほど話したようにまだ特定できていない問題もあるので将来的には、どう信頼性を向上させるかで今後検討を行うことになるだろう。
西日本新聞 福島の工場に返送した送信機を使って、引き続き原因究明を行うのか。
泉 とりあえず今のところ、その予定はない。
以上です。
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