宇宙作家クラブ
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No.941 :午後3時からの説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月23日(月)16時02分 投稿者 松浦晋也

 本日午後3時から、昨夜から今日にかけて起きたトラブルの解説と、本日からの作業の説明がありました。

 出席者は、的川泰宣執行役と、ロケット系担当の青木宏氏。

青木氏から
 本日午後8時から打ち上げ作業を再開。
  22日から23日のY-0作業で、移動発射台を固定し、酸素、水素、ヘリウムなどの配管を接合してリークチェックを行った。

 推進剤の充填作業は完全に自動で行う。そのため手動の弁が多数あり、これらは射点設備の最終準備で作業者が空けていく。午前1時の段階で、これらの作業は終わっていた。

 設備側は当初、酸素配管に窒素ガスを配管に封入してあるが、それを酸素に置換して、設備側配管の予冷まで行っていた。水素側は、ヘリウムガスを配管を封入してあるが、それを水素に置換するところまではやった。
 機体側は当初ヘリウムを詰めてあるが、これらは置換していない。また機体側電源は落としてあった。

 今夜からは、再度地上系配管の予冷から行う。午後6時に天候判断を行う。
 午後8時から打ち上げ準備作業再開、0時半に推進剤の充填に向けたGO NO GO判断を行う。

 朝7時のブリーフィングで答えられなかった事項の一部を回答する。
 モニターは地上系と機体系を合わせて500チャンネルをモニターしている。
 トラブルはブロックハウス内の設備空調系のコンソールでのみ発生した。原因解析は、このコンソールに対して集中的に行っている。
 同コンソールには、LBからの緊急自動停止を行うモニタリング項目5つ、フェアリング空調関係の監視員にアラートを出すだけの項目が8つ、移動発射台からの緊急停止自動停止項目2つ(LE-7A噴射ガス中の未燃水素ガスを消却するトーチの温度)、の合計18項目の信号が入力されている。昨晩から今早朝にかけてこれら18項目をチェックした。チェックは3時間あまりかかり、終了は午前4時過ぎになっていた。

質疑応答

西日本新聞 早朝午前4時過ぎ以降の作業は行われていないのか。

青木 そうだ。明日の打ち上げに向けて打ち上げ隊メンバーが引き上げているので今朝の記者会見以降の進展はない。

不明 午前7時以降、状況に変化なし、でいいのか。

青木 そうだ。

共同通信、アラートを出した項目は監視しているだけか。

青木 そうだ。

共同通信 となるとその項目は価値が低いわけか。

青木 緊急停止項目はその条件を満たさないと自動で止める項目だ。モニター項目は人間の判断する余地がある項目である。

時事通信 細かいトラブルでじりじり延期していくというのはどういう気分か

青木 我々としては非常に残念、その一方で、あまり何も出ないと逆に心配という心情もある。

以上です。


No.940 :今朝のH-IIA8号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月23日(月)08時23分 投稿者 松浦晋也

 このまま組立棟に戻さずに、明日の打ち上げを迎えます。


No.939 :23日午前7時からの延期記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月23日(月)08時21分 投稿者 松浦晋也

 午前7時からの延期記者会見です。出席者は、園田企画主任と遠藤H-IIAプロマネ。写真撮影:牧野知弘

遠藤マネージャーからの説明

 トラブルを出したのはフェアリング空調温度監視センサー。ブロックハウスから、温度センサーに対して「20℃プラスマイナス4℃。これをはずれたらアラームを出せ」とセットしてあった。22日午後11時28分。アラームが出た。しかし別系統でフェアリング空調空気の温度を確認したところ18℃だった。午前1時から、射点のタワー(LB)に作業者が登っていって、温度センサーの監視温度設定部のメモリーを直接読んだところ、「14℃」と設定されていた。14℃と設定されて、実際は18℃だったのでアラームが出た。
 確認作業は午前4時5分頃終了した。

 これらの確認で打ち上げに向けた予備時間を使い果たした。ほかにトラブルがなければ、ぎりぎり23日に打ち上げができる状況だったが、1)まだ推進剤を入れていないので、1日の延期が可能である、2)打ち上げのウインドウが、午前10時33分から43分の10分と短い、3)今日から明日にかけての天候が安定している、という3つの理由から、延期を決定した。

質疑応答

NHK フェアリング内の窒素温度は18℃と確認できたのか

遠藤 窒素ではなく空気だ

NHK センサーは正常、監視装置に問題があると言うことか。

遠藤 そうだ。

NHK 明日の打ち上げではどうするのか。

遠藤 本日検討を実施するが、この部分についてはアラームを切っても支障はないと考えている。

時事通信 20℃に設定したはずなのに、実際のメモリー内の設定値が14℃になっているとはどういうことか。

遠藤 現在まだ不明。コンピュータの信号のやりとりやソフトウエアの問題だと思っている。

時事通信 入力時の人為ミスの可能性は

遠藤 ログが残っており、その部分に間違いはなかった。

西日本新聞 20℃プラスマイナス4℃という設定のインプットは正しく行われていたが、コンピューターのミスで14℃の設定になってしまっていたということか。

遠藤 設定のメモリーを読み出したところ14℃になっていた。

西日本新聞 午前4時5分に確認が終わったが、その他の時間を知りたい。

遠藤 午後11時28分に事象発生。確認に午前1時頃までかかった。午前1時からの予冷を延期し、射点のタワーに直接出向いてチェックした。

西日本新聞 極低温などの事前試験で該当部位はチェックしているのか。

遠藤 今回が最初である。

西日本新聞 推進剤充填は行っていなかったということだが、その行程に入っていたのか。

遠藤 酸素側の地上側設備配管の予冷は始めていた。ロケット側の配管は冷えていない。

西日本新聞 準備作業に入っていたということでいいのか。

遠藤 そうだ。

共同通信 監視機能はほかの部分もチェックしているというが項目の点数はいくつか。監視機能が信用できないとなると、すべてマニュアルで行うのか。空調の目的は。

遠藤 監視機能には自動的にシーケンスを止める重要な機能と、オペレーターの注意を喚起するものとある。前者は7項目あるが、これらについて内部のメモリーを読んで正常であることを確認した。
 空調は、打ち上げまで衛星側から温度湿度を一定に保つことを用給油されている。打ち上げまでのあいだその温度湿度を保つためだ。

共同通信 空調の目的は何なのか。

遠藤 通常の家電製品と同じく、動作を保証するためだ。衛星の要求は家電製品より厳しい。

朝日新聞 基本的に打ち上げに向けた問題はないということか。

遠藤 現在調査中で、原因が分かれば直したいところだが、今回のことがこれ以上の延期の理由にはならない。

NHK 実際の温度とされる18℃という数値が間違っていたという可能性は。

遠藤 フェアリングに空気を送るダクトは長く、フェアリングに入る空気の温度と送り出した空気の温度はどうしても異なる。このため何カ所かで温度を測定している。冬の場合空気は流されるほどに外気で冷やされて下がる。
 これらその他のセンサーで検証したところ18℃という温度は妥当なものだった。

NHK 空調の設備には問題ないということか。

遠藤 そうだ。監視機能のアラームを出す温度の設定値に問題が出たということである。

不明 今日打ち上げが可能だったんだけれども、万全を期するためにというニュアンスで受け止めたが、物理的に間に合うのに中断と判断したのか。

遠藤 なかなか難しいところ。我々は極低温点検などで作業時間を大体把握している。なにもトラブルが起きなければぎりぎり間に合うというものだった。今回はウインドウが狭いので、10分過ぎると次ということになってしまう。推進剤を入れてしまうと、点検があるので次の打ち上げまで時間がかかってしまう。それで中止を判断した。

不明 本日の作業はどの部分から再開するのか。

遠藤 基本的に推進剤充填の手前で止まっているので、その部分から再開する。一部安全措置を施している、正確にはプラスアルファの作業がある。おそらく本日夜10時か11時か…検討中だがそのあたりから再開になると思う。

不明 園田主任に聞きたい。ケアレスミスではないということでよろしいか。

園田 今回、入力のログも残っているので人為ミスではない。しかし、温度監視システムとしては、今後チェックする体制を今後考えなくてはならないだろう。

不明 過去に同様の問題はあったか。

園田 打ち上げ延期に繋がったことは記憶する限りない。

東京新聞 読み出したメモリーというのはLBというところにあるのか。また20℃プラスマイナス4℃というのは衛星一般の設定か。

園田 共にそのとおり。

共同通信 入力をした数値と示す数値が違うということだが、本当にこのソフトウエアをそのまま使って打ち上げていいのだろうか。

遠藤 当該部分は、「この値になったらアラームをだせ」という部分。アラームが出たらシーケンスを止めたり、アラートをだしてしまうという機能がある。
 問題が出たのは数値を設定する部分。
 アラートを出すか否かという判断側については正常に機能しているので、少なくとも値が正しければ正しい結果をだす。

共同通信 設定とアラーム部分が分離しているということか。

遠藤 干渉はしていない。

西日本新聞 2度の延期について園田主任からコメントを。打ち上げを続けることに不安はないのか。

園田 結果的に大きな問題ではなかったかもしれないが、2回の延期は残念である。テレメーター送信機については、非常に起きる確率はまれということだ。空調装置については本日十分な検討時間があるので、自信を持って打ち上げに臨むことができるだろう。

東京から
産経新聞 監視機能のスイッチを入れたのは何時頃か。

遠藤 設定をした時だ。

産経新聞 スイッチを入れたらエラーが出たということか。

遠藤 そうだ。


種子島に戻って

読売新聞 このソフトウエアは以前から使っていたものか。

遠藤 機器は以前から使っている。今回何らかの変更が加えたかどうかは現在確認中。

読売新聞 温度モニターの機能はなにか。

遠藤 打ち上げまでのすべての期間、衛星周囲の環境は監視することになっている。そのためのものだ。

読売新聞 事前のシステムチェックは可能なのだろうか。

園田 ブロックハウスとLBはつながっているのでできる。今後、エンド・トゥ・エンドで監視する機能を検討したい。

鹿児島読売テレビ 2/15の9号機打ち上げの延期は確定的なのか。M-Vはどうなるのか。

園田 かなりきびしくなったことは事実だが、今後検討しなくてはならない事項だ。

西日本新聞 確認だ。同時並行で進んでいたシーケンスに問題はなかったのか。

遠藤 若干の反省として、この問題を深刻な問題ととらえはじめたのが、2回目のGO/NO GO判断の後だった(午前0時半以降)ということがある。これは要改善事項だ。

西日本新聞 このトラブルがRCCに伝達されたのは、2回目のGO/NO GO判断の後ということか。

遠藤 午前1時過ぎにLBに行って調査する段階で、私からRCCに伝達した。これは反省している。

NHK 確認だ。実際の空気温度が18℃だということは別のセンサーで確認したということは、どのセンサーを使ったのか。午前4時過ぎまでチェックしたということだが、何項目のチェックしたのか。過去H-II/H-IIAで同様のモニター異常はあったのか。

遠藤 フェアリングのモニター異常は過去なかった。温度センサーは発射台の中のダクトや送風機の出口に空気の温度を測定するセンサーがある。これらを使って確認した。
 その他は後ほど調べて回答する。

鹿児島テレビ ロケットが発射台に移動しているが組み立て棟には戻さないのか。戻さないことによる影響は。

遠藤 推進剤を入れてしまうと、氷結など様々な状態変化があるので、一端組立棟に戻して点検する。今回は推進剤を入れてはいない。また今日から明日にかけて天候が安定している。またロケット内部の必要な部分は温度を一定に保つようにしている。
 必要十分なことを行って打ち上げができる状態である。

鹿児島テレビ 短期間の数回の打ち上げと、トラブルの関連性はあるか。

園田 それはない。一機ずつ確実に打ち上げるという方針で進めている。

鹿児島テレビ 9号機の打ち上げをずらさざるを得なくなる、最終的な8号機と9号機のデッドラインとなる間隔は存在するのか。

園田 検討しておりデッドラインは存在する。しかしここでは言うのを差し控えたい。

鹿児島読売テレビ 打ち上げを楽しみににしている子供達、県民国民にメッセージをお願いしたい。

園田 こういう結果になってお詫びをしたい。ただ、我々、確実な打ち上げを目指して作業を行っており、明日は確実に打ち上げたいと思っている。期待して頂ければと思う。

毎日新聞 先ほどの説明からすると、メモリーハードの問題ということはありえないか。非常に気持ち悪いトラブルなのだが。

遠藤 徹底的に調べたいと思っている。そう言うしかない状況だ。

NHK 今夜の作業再開にあたって安全装置をかけているというがどんなことをしているのか。

遠藤 安全装置ではなく、安全措置である。高圧部の圧力を抜くといったとことだ。後は水配管の手動バルブの状態を戻すというということもある。

 以上です。


No.938 :S-310-36号機の成功記者会見の模様 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月23日(月)00時25分 投稿者 松浦晋也

 内之浦に詰めていた喜多充成さんから、22日午後3時からのS-310-36号機の成功をうけての記者会見の模様が届きました。

 写真は、実験装置から送信された写真を手に説明する稲谷教授 写真撮影:喜多充成

出席者

神戸大学教授 賀谷信幸
東京大学教授 中須賀真一
観測ロケットプロマネ 稲谷芳文
実験主任 樋口健
保安主任 石井信明
(敬称略)

樋口 (発表文に続いて)鹿児島県、肝付町はじめ地元関係各位の協力に感謝致します。大きな成果が上がったものと考えております。

石井 今朝、ドームの中から打つか外から打つかを検討した。晴天だったが風が強かった。風が強いと(落下エリアに収めるため)発射角で調整することになるが、それも制約がある。10mを越えると打ち上げ中止となるところだった。平均約8mだったが、風向が安定していたのでGOとなった。

稲谷 補正量としては大きい方(発射角は上下角72度)だが、風向が安定していたので、比較的安心して打てた。ロケットの飛翔としてはおおむね計画どおり。

中須賀 今回の実験は親機から子機を分離しダイナミクス(どう動いたか)に関するデータを得ることだった。3つの子機は17mまで網が伸びきったことが数値でも確認できた。構成された網の「面」がどのように維持されたかはこれからの解析による。

賀谷 (太陽光発電所の実現を何年ぐらい近づけたか?)将来につながる重要な一歩であるのは間違いないが、「何年」と答えるのはちょっと大ぶろしきすぎる(笑い)。

樋口 ただ、次の段階の実験プランは確実に実施に近づいた。衛星に乗せて、こんなふうにやりたいという話が具体化してくるでしょう。

賀谷 実現に向けて関係方面に働きかけていきたいし(メディアの)皆さんのご支援をお願いしていきたい。

中須賀 (教育者としての立場から)まずこの場所に来ることができたことで、学生たちは確実にステップアップしている。「何でそんな細かいことまで」というところまでビシビシ指摘されながら、納得してモノを仕上げ、ここに持ち込むことができた。雨で順延となり、同じ作業を連日繰り返すことになったが、モチベーションを高く保っていられた。

賀谷 教育効果は中須賀先生もおっしゃったとおり。(リアルタイムの画像伝送を可能にした)Kuバンド(雨に弱い)のトランスミッターは、ある女子学生が一人で担当した。途中何度も挫折したが、やりとげた。(無事画像が届き、喜びのあまり)座り込んでいた。

稲谷 カメラは親機に2台、子機に1台。展開中の様子を公開する。子機からの動画はキレイにとれた。地球を背景に親機と子機2機が映っている。

樋口 じつは画像伝送それ自身もチャレンジだった。テレメトリデータと画像の両方が入手でき、実験結果が信頼できるものになっている。

稲谷 学生さんには厳しいこともいいましたが、大型ロケットに比べれば二桁以上少ないお金(約2億円との概算値提示あり)でできる実験だ。これからも「新しいことを、楽しく」やっていきたい。

以上です。


No.937 :正面から見たH-IIA ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)23時58分 投稿者 松浦晋也

 機体を正面から見ることのできるポジジョンに移動して撮影しました。
写真撮影:牧野知弘


No.936 :機体移動その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)23時57分 投稿者 松浦晋也

 写真撮影:牧野知弘


No.935 :機体移動 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)23時55分 投稿者 松浦晋也

 1月22日午後9時36分から、射点への機体移動が始まりました。満天の星空の元、移動はスムーズに進み、午後10時過ぎに、H-IIA8号機は射点に到着しました。これまでのところ、明日の午前10時33分に向けた準備作業は順調です。写真撮影:牧野知弘


No.934 :S-310実験装置からの画像公開 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)17時54分 投稿者 松浦晋也

 S-310に搭載した実験装置からの画像が公開されました。4分割画面のうち3つに画像が写っています。実験開始から56秒後の映像のようです(公開されたファイルのファイル名が56秒.jpgでした)。

 1と2が親衛星から撮影した子衛星。網の端を持って引っ張っている子衛星が写ってます。
 3は子衛星の一つから、親衛星と残る2つの子衛星を撮影したもの。地球を背景に中央に親衛星、上下に子衛星が写っています。


No.933 :非常に多い打ち上げ隊人数
投稿日 2006年1月22日(日)16時38分 投稿者 松浦晋也

 広報から、打ち上げ隊の正確な人数が出てきました。

JAXA200人、メーカー600人の合計800人

 この数は非常に多いです。覚えている限りでもH-IIの1号機が500人でしたし、その後運用にはいると300人前後でした。

 よほどJAXAが、念には念を入れてメーカーに人を派遣するように要請しているのでしょうか。ロケットは今回初めてロングノズルを使いますし、衛星はといえば「みどり」「みどり2」と2連続軌道上で1年もたなかった地球観測衛星の続きです。

 にしても、人数が多いというのはコストがかさむということです。今回は1日延期で4000万円ほどがかかるそうですが。

 また、これだけの人数がどこに泊まっているのか。かなり南種子町の宿泊事情はきびしそうです。

No.932 :本日午後3時40分の宇宙センター ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)16時16分 投稿者 松浦晋也

 午後3時40分の種子島宇宙センター上空です。

 願わくば明日の打ち上げ時刻も、これぐらい晴れていますように。


No.931 :22日午後3時からのY-0ブリーフィング ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)16時07分 投稿者 松浦晋也

 午後3時から、種子島宇宙センターのプレスセンターで開催されたY-0ブリーフィングの様子です。出席者は、園田昭眞JAXA企画主任、富岡健治衛星主任。写真は説明を行う園田主任

 配付資料によると、種子島地方は冬型気圧配置で上空に冷たい空気が流入しています。今日から明日にかけては北よりの風やや強く曇り。晴れ間もあるが、一時にわか雨の変わりやすい天候になるとのこと。
 明日の打ち上げは午前10時33分ですが、予報によると午前11時台に雨のマークが付いています。

まず園田主任から打ち上げ準備状況について。

園田 打ち上げまで20時間を切った。追跡管制システム、ロケットの追尾システム、推進剤注入システム、すべて準備が整った。会場と陸上の警備も準備終了。今後午後6時半のGO/NO GO判断を経て、午後9時半の機体移動になる。

 本日も打ち上げられそうな天気となったが、明日も同様の天候という予報が出ているので、問題はないだろう。

 本日午後2時から地上系の一部の準備が整う。現在衛星のパドル駆動系に窒素ガスをパージしているが、じきに配管を外して衛星系がクローズアウトとなる。

 機体移動の後、午前0時半に推進剤注入のGO /NO GO判断を行い、ターミナルカウントダウン開始。

 打ち上げ60分前から、X-60ターミナルカウントダウン。

 X-270秒から自動カウントダウン開始。以後は自動シーケンスが進行する。

 打ち上げ後、985秒、16分25秒後に衛星を分離する。

続いて富岡主任から。

 パドル駆動へのパージは午後4時に切り離し。射点へ移動後、午前0時頃に衛星に電源の投入して立ち上げる。姿勢制御プログラムのアップロードが午前3時頃、午前7時ごろにパラメータ更新を行う。

 打ち上げ後は、太陽電池パドルを打ち上げ後25分で展開する。データ中継衛星「こだま」との通信を行うアンテナを23時間後に展開する。ついで合成開口レーダーのパネル展開に移る。打ち上げ後48時間から2時間、3周回をかける。
 打ち上げ後89時間でクリティカルフェーズを終了し、定常制御のもーどにはいる。23日打ちあげの場合27日に定常制御モードに入る。
 打ち上げ後3ヶ月は初期機能確認フェーズ、ついでデータ校正のための基礎データを得る初期校正運用段階を5ヶ月。打ち上げ後9ヶ月目から、校正済みデータを配布する定常運用段階に入る。

 メインのデータ伝送は「こだま」経由の240Mbps通信で鳩山の地球観測センターに降ろす。サブの伝送ルートとしてはXバンド120Mbpsの地上直接通信で、海外の局や、地球観測利用推進センターで受信する。

質疑応答

共同通信 まず今日のスケジュールで終わっているのはなにか。衛星搭載モニタで何を取っているのか。

園田 機体移動準備

富岡 衛星には6台のCCDカメラが搭載してあり、最大秒7コマの動画が撮影できる。おもに展開部分の展開確認を行う。太陽電池パドルなどは地上から確認できない部分で展開するので、その確認を行う。
 カメラの1台は地球を向いている。マクロで衛星の軌道を監視するのが目的だが、同時に「地上を見る」という意味もある。

共同通信。衛星間通信アンテナ展開の発表が午後11時半だがもう少し早くならないか。

富岡 考える

不明 3機連続打ち上げの意気込みを園田さんに、また「みどり」「みどり2」失敗を受けての「だいち」打ち上げの意気込みを富岡さんに、それぞれ聞きたい

園田 まずは明日の打ち上げを成功させたい。

富岡 ALOSは10ヶ月をかけて総点検をおこない、37項目を改善した。地上でできることはすべてやったと思っている。しかし、現在我が国の地球観測衛星は軌道上に一機もない。国際貢献という意味も含めて是非とも成功させて、世界中のそれぞれの国や人々に還元したい。

園田 本日S-310も成功しているので、鹿子島宇宙センターとしては4機ですよ。

東京にマイク移るが質問なし。

筑波広報より 衛星間通信アンテナの展開について。質問があったけれども午後11時半というのは最短時間と思って欲しい。

再び種子島

時事通信 打ち上げ体制の人員

園田、ブロックハウスに150名、RCCが100名、渉外など含めて総勢600名程度。

鹿児島MTV あらためて8号機にかける意気込みを。

園田 4日延期だけれども、たとえテレメータ送信機のトラブルがなくても、天気で23日に延期されたのではないかと思う。天候が悪かったので、さほど気落ちはなかった。私としても明日に打ち上げると決めて

西日本新聞社 資料によると燃料充填の打ち上げ直前まで続いているが、それでいいのか。

園田 それで正しい。まず常温の設備に液体酸素と水素を流して予冷する。設備が推進剤と同じ温度になったところで充填が始まる。ただし、機体タンクへの充填でもまずは予冷からだ。午前6時前後に100%充填となる。その後は蒸発分を打ち上げ直前まで補給し続ける。
 なお打ち上げシーケンスには予備時間が組み込んであり、オンタイムで進めるのは打ち上げ1時間前からだ。

南日本放送 今回の延期で9号機への影響はあるのか。

園田 微妙なところ。正式には明日の打ち上げ後に検討する。

読売新聞 打ち上げ後25分で太陽電池パドルを展開するが、これは時間が遅れる可能性があるのか。

富岡 自動シーケンス。ALOSの展開物で自動展開するのは太陽電池パドルだけ。地上で27回ほど展開試験を行っているが、展開は最短で3分、最長で5分かかっていた。25分後というのは最長の時間を見越したものだ。

以上です。


No.930 :別方向から撮影したS-310 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)16時04分 投稿者 松浦晋也

 別方向から撮影したS-310の写真を提供して貰いました。撮影:柴田孔明


No.929 :内之浦の光景
投稿日 2006年1月22日(日)16時03分 投稿者 松浦晋也

 内之浦に詰めていた喜多充成さんから電話がありました。実験に従事してきた学生さんは感激しているとのこと。「感激のあまり座り込んじゃった学生さんもいるそうですよ」。

 先ほど「16時30分より会議室で多目的検討会を開催します」という構内アナウンスがあったそうです。続けて「会費は1000円です」。

No.928 :S-310成功の報道文が出る ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)15時58分 投稿者 松浦晋也

 S-310-36号機打ち上げの発表文が出ました。詳細はJAXA/ISASページに出るでしょうから、概要のみを。

 打ち上げ後83秒で実験装置部を切り離し、姿勢安定化の後130秒後、高度117kmで展開動作を開始。

 計画通りの網展開を実施。アクティブ・フェーズド・アレイアンテナ実験も良好なデータを取得。網状移動装置も動作を確認。

 当初計画通りのデータを十分に取得。

 完全な成功といえるでしょう。写真は、JAXA/ISAS提供の、打ち上げ時画像。


No.927 : 種子島最北端から見たS-310打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2006年1月22日(日)14時35分 投稿者 松浦晋也

 種子島最北端、喜志鹿岬から見たS-310-36号機打ち上げです。撮影:牧野知弘