宇宙作家クラブ
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No.1081 :雨がぽつぽつ
投稿日 2006年9月23日(土)04時08分 投稿者 松浦晋也

 慣性誘導の基準がセットされました。ランチャーの角度セットが進行中です。


 ただいま午前4時7分、報道の周辺は雨がぽつぽつ降り始めました。

No.1080 :気球放球
投稿日 2006年9月23日(土)04時00分 投稿者 松浦晋也

 午前4時、風向風速を調べるための気球が放球されました。

No.1079 :ロケットが出てきました
投稿日 2006年9月23日(土)03時51分 投稿者 松浦晋也

 ただいま午前3時50分です。ロケットが完全に姿を現しました。打ち上げ準備作業は続行しています。

No.1078 :打ち上げ準備作業は順調
投稿日 2006年9月23日(土)03時44分 投稿者 松浦晋也

 ただいま午前3時39分です。内之浦の射場上空の天候は曇り。

 一般の見学席は記録的な混みようです。深夜の内之浦の町を、自動車が列を成して走っています。見学席の駐車場に自動車が入りきらず、路上駐車の列が伸びているそうです。

 打ち上げ準備作業は順調に進んでいます。ただいま、ランチャーに乗ったM-Vロケットを整備棟から出す作業が始まりました。

No.1077 :日本が衛星打ち上げ能力を失う日
投稿日 2006年9月21日(木)13時39分 投稿者 笹本祐一

 これは、予測される最悪のシナリオである。

 MV代替機は、2010年の第一回打ち上げが予定されている。
 開発が難航しているGXロケットが実用化に失敗し、さらにMVロケット代替機が現在のJAXA構想通りのSRB−Aを一段目に使う固体2段式という効率の悪い方式で開発に入った場合、日本は打上げ能力を失う可能性がある。

 H-IIAロケットがある?確かに、2010年までにはH-IIAロケットは多数の打ち上げを重ね、その信頼性を上げるかもしれない。今回10号機の打ち上げから主契約企業となった三菱は、H-IIAを盤石のロケットに育て上げるだろう。
 しかしその場合、3トン以下の小型衛星を地球低軌道にH-IIAで打上げるのだろうか。
 民間では80年代にはじまった電子技術の高度化、超小型化は、信頼性至上主義の宇宙業界にもようやく波及している。秋葉原の電気街で購入された民生部品でも衛星は立派に作動することは実証されているし、なにより今スタンダードな衛星に使われる予定の高信頼性だがとことん旧式な電子部品は、どんどん入手が困難になっている。
 そして、衛星の小型化、高性能化は世界的なトレンドでもある。かつて、大型衛星でなければ実現できなかった性能が小さくて軽い衛星でもっと安く手に入るのであれば、顧客は誰も大型衛星など欲しがらない。
 小型化された衛星は、主に姿勢制御用燃料を大きく搭載できないという問題で、確かに大型衛星よりも軌道上の運用寿命が短くなる。しかし、これだけ電子技術の進歩が激しい昨今では、寿命の短さは装備のアップデートの機会にはなっても運用上の不利にはならない。
 また、小型衛星を簡単に打上げられるのであれば、打上げに失敗しても簡単に代替機を用意できるし、あらかじめ失敗率を見込んで多めに衛星を用意して予備機として用意しても大型機より安く付く、などという事態も発生しうる。
 2006年現在、静止軌道に2トンならともかく、低軌道に10トンなどという衛星の需要は民間にはほとんどないと言っていい。情報収集衛星や防災衛星などは、H-IIAロケットを打上げるために無理矢理大型化された節もある。
 なにより、衛星は大きくて重いほうがJAXAにとってもメーカーにとっても利幅が大きい。逆に小型衛星は利幅が小さく、JAXAにもメーカーにも将来的に大きな業績は期待できない。
 そして、予定されている2010年以降、もし小型衛星打ち上げロケットを日本が失った場合、500キログラムから3トン級の小型衛星を上げるロケットが国内に存在しない、という事態になることが想像できる。
 H-IIAロケットがある?
 3トン級の小さな衛星を、MVロケットより高価な大型ロケットで打上げるのは、どう考えても不経済である。
 一基のH-IIAに複数の衛星を搭載して打上げる?
 衛星は、一基ごとに目的が違う。顧客が打上げたいという時期も希望する軌道も、一致することの方がまれである。そして、複数衛星搭載の打ち上げは、ロケット一基の失敗が複数の衛星に波及するというリスクが高まる。何よりJAXA自身がH-IIA6号機で情報収集衛星を光学衛星、レーダー衛星二基同時に喪失するという経験をして、10号機では光学衛星単独での打ち上げが行われた。
 小型衛星の需要は、商用、学術問わずこれからもいっぱい出てくることが予想される。しかし、それを顧客の希望通りに上げるシステムを日本が失っていたら?

 海外には、小型衛星の打ち上げに特化したロケットが多数ある。現在イタリアが主導して開発中の固体小型四段式ロケット「ベガ」のスタッフとは、ISASも交流しており、その中にはMシリーズの遺伝子も受継がれるだろうという。
 海外に打上げロケットがあれば、顧客も関係者も必ずしも国内打上げにこだわる必要はない。現に今計画中の日欧合同水星探査計画の探査機は、ソユーズロケットで打ち上げられることが決定している。
 H-IIAがある?
 官の需要のみを頼りに大型ロケットを上げ続け、信頼性を上げたとしても、世界水準で高価でありしかも売り込みの努力もしていないロケットは少量生産の高コスト体質から逃れ得ない。主契約者がJAXAから三菱に移った以上、民間企業たる三菱には不採算部門を切り捨てる自由がある。

 もし、中型、小型ロケットがかつてのJ1ロケットのような失敗に終わったら、JAXAもメーカーも嬉々として新型の中型、小型ロケットの開発を開始するだろう。それは、多額の契約金が見込める打ち出の小槌である。
 しかし、そこには顧客が求める衛星を上げるロケットに最適な設計を考える思想も、かつてペンシルロケットにはじまる世界レベルのロケットを開発してきた技術の伝統もない。

 2010年の日本政府の財政状況は、今よりさらに危機的状況になっているだろうことは想像に難くない。
 補助金まみれの第三セクターの末路は、今までにいくつも報道されている。
 日本の宇宙業界だけが例外となる保証は、どこにもない。

No.1075 :終演のシナリオ
投稿日 2006年9月21日(木)09時29分 投稿者 笹本祐一

 MVロケット廃止の報を受けて、最後の打ち上げ取材に来た内之浦でいろんな人から話を聞いている。
 見えてきたのは、MVロケット廃止だけではなく、もっと厄介で暗い話だった。

 そもそも、なぜMVロケットが廃止されなければならないのか。
 Mシリーズロケットが、日本の宇宙開発史の中でどういうポジションにあるのか、その説明は省く。
 問題は、ISASが三機関合同でJAXAという組織に呑み込まれ、ペンシルロケット、おおすみ以来連綿と積み上げてきた文化すら崩壊しようとしていることと、そのJAXAが自ら描いた大型、中型、小型の三本立てロケット構想に固執していることにある。
 現在のJAXAにとっては、H-IIAロケットこそが日本の宇宙開発の象徴であり、守るべきリーダーである。H-IIAは低軌道に10トンから、将来には増強して16トンものペイロードを上げる大型ロケットである。
 三トンから五トンという、H-IIAの半分の性能しか必要でない中型衛星には、現在開発中のギャラクシーエキスプレスことGXロケットがある。第一段に酸素/ケロシン系のアトラスロケットをロッキード・マーチンから輸入し、第二段に酸素/LNGという新型の液体ロケットを使うGXロケットは、二〇〇五年度の打ち上げを目指して官民合同での開発が進行中である。
 そして、500キロ級の小型衛星のために、MVロケット代替機が小型ロケットとして開発されることになった。

 GXロケットは二段式で、上段に酸素/水素より性能は劣るもののコストに優る酸素/LNGを使う。LNGとは皆さん御存知の液化天然ガスであり、これを使ったロケットはまだ世界に実用例がない。
 その開発は石川島播磨重工を中心に進められているが、前例のない新規開発の例に漏れず開発は難航している。つい昨日の9月20日に行なわれた宇宙開発委員会では、開発が難航しているために当初構想からのシステム変更と、二〇一〇年以降の打ち上げ目標が再設定されたらしい。
http://www.jaxa.jp/press/2006/09/20060920_sac_lng.pdf
(リンク先はPDFです)
 軌道速度を出すためのロケットは、三段構成にするのがいちばん効率が良い。段数を減らせばそれだけコストを削減できるが、三段で飛ばす性能を二段で実現するためには各部分への要求が高くなり、開発は難しくなる。
 H-IIAロケットは二段ではないかという話もあるかもしれない。公式発表では確かに二段式であるが、それはいわばレトリックであり、離床時にメインエンジンの5倍の推力を発生するブースターを入れれば三段式、あるいは二段半ともいうほうが正確だろう。
 GXロケットは、ブースターなしの二段構成の液体ロケットである。開発が難航したため、目標性能は下げられており、今のところそのペイロードは三トン。
 ISASが提案し、しかしJAXA内部で一度も本気で検討された検討がないというMVロケット改良案では、軽量化、効率化も達成されるため、MVロケットの低軌道投入能力はやはり三トンに達する。
 つまり、まだ実機も飛んでおらず、その性能の実現も危ぶまれているGXロケットと、すでに実績のあるロケットを改良するMVロケットは宇宙輸送系としてほぼ同じポジションに並んでいるのである。
 四五〇億円を投入しながら開発が遅れているGXロケットと、165億円で開発され、すでに2トン級の性能を確立しているMVロケットを同列に語ることは難しい。そしてここに企業論理、官の論理が加わると、話はさらに難しくなる。
 ISASは、政治献金など行っていない。しかし、GXの中心企業である石川島播磨は多額の政治献金を行い、政治家の支持も取り付けている。そして、MVロケット三基分の開発予算が投じられた官民合同の第三セクターで開発されているGXロケットは、もし失敗を認めれば責任問題に発展する公共事業なのである。
 だから、実績もあり、発展性もあるMVロケットがそのままの姿で存続していると、邪魔なのである。

 かくして、組織としては当然帰結する論理により、MVロケットの廃止は決定された。
 MV最期の日まで、あと二日。

No.1074 :午前8時30分からの懇談会
投稿日 2006年9月20日(水)15時22分 投稿者 松浦晋也

 射場プレスツアーの後、午前8時30分過ぎから、的川、森田、中島所長による、懇談会がありました(追記:所長名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします)。


質問 先ほどのプレスツアーで小杉SOLAR-Bプロマネから衛星の軽量化に成功したと聞いたが、どこの部分がもっとも軽量化に貢献したのか。

的川
 ここには今、衛星担当者がいないので、後ほど聞いて欲しい。


質問 M-Vの経験が新型固体ロケットに引き継げるとすれば、どれはどのようなところか。

森田
 ロケットのシステム設計です。SRB-Aは、あくまでブースターでロケットでない。全段固体のロケットを開発するには、ブースターの設計とは異なる、システム設計の技術が必要になる。
 何段式にするか、各段の増速量を決定するといった技術です。その経験を生かさなければ良いロケットにはならない。
 もう一つは、上段の高性能ロケットだ。M-Vの第3段や第4段はそんじゃそこらの液体ロケット以上の高い性能を出してる。そういうものは、継承し、より高性能化していかなくてはならない。

質問 M-V以降の科学衛星の打ち上げはどうするのか。

森田 新ロケットの初飛行は2010年度。今後1年ぐらいはじっくり時間をかけて研究を行って、システム設計を行い、残りの3年で作っていく。研究1年、開発3年だ。
 新固体ロケットによって、小型の500kgクラスの科学衛星を打ち上げられるようにする。その次の段階として、新ロケットを核として、大きなSOLAR-Bのような科学衛星を打ち上げられるようなロケットを目指す。それは、M-Vよりもずっと安いというロケットになる。


質問 打ち上げに外国のロケットは使うことは考えないのか。

森田 ロシアのミサイル転用ロケットでも失敗が起きている。海外のロケットでは、ユーザーから見えないところできちんと管理できていない可能性がある。だからきちんと安全性を追求するにはJAXAで開発した自前のロケットを使う必要がある。

質問 2010年までの間、内之浦ではなにをするのか。

森田 観測ロケットを打ち上げる。

質問 観測ロケットの打ち上げ回数を増やしたいということだったが、年間何機まで増やしたいのか。

中島 予算要求次第である。現在は年間2機を打ち上げている。

質問 新型固体ロケットの開発期間が短いように思えるが。

森田
 予算的、スケジュール的に2010年に着地せざるを得ない。

的川
 過去にもM-3SIIロケットをハレー彗星探査に合わせて、第1段以外すべて新設計で4年で開発した実績がある。

質問 ロケットの設計思想はM-Vと新ロケットでは変えるのか。

森田 
 運用性を変える必要がある。M-Vは打ち上げに向けたオペレーションを2次に分けて2〜3ヶ月かけている。これをもっと短期間にできるようにしなくてはならない。また、M-Vの打ち上げには500人ぐらいがかかわっているが、それをもっと少ない人数で打ち上げられるようにしなくてはならない。

質問 現在、新ロケットで打ち上げる500kg級の科学衛星はどの程度検討されているのか。

森田
 現在、宇宙科学研究本部の内部では、500kgクラスの科学衛星の提案が約20件あって、うち5つは予算さえ付けば開発に移行できる段階にある。現在、例えば小さな衛星を半年に1度、大きなものを1年半に1度というような体制を構築しようとしているところである。そのためには予算も含めて考えていかなければならない。

質問 研究1年、開発3年ということだが、研究に1年かけるということは現在公表されているSRB-Aを第1段に使用する案は確定ではないのか。

森田
 確定ではない。予算と期間の制限があるので、ありものの各段を組み合わせていくしかないが、その中で最適かつ将来性のある組み合わせを選ばなくてはならない。そのために時間をかけてじっくり検討したいと考えている。

的川
 予算が関係してくるので、どういうペースで打ち上げを行えるかは難しい問題である。あちらを立てればこちらが立たなくなる。それでも実施頻度と規模をうまく両立させて世界一線級の研究を維持発展させなくてはならない。 

質問 的川先生、M-Vが終わることに対する感想を。

的川
 ペンシルから50年、今年は51年目で、今、新しい固体ロケットを作ろうという段階に来ているの。
 我々年寄りとしても、このM-Vは最後だけれども、新しいロケットへの出発点だな、というとらえ方をせざるを得ないなと感じている。予算のことも考えつつ、一番良いロケット案が出来ればいいなと考えている。
 M-Vを作ってきた先輩達は忸怩たる思いがあるとは思うけれどもこれからの森田先生を中心とした若い人たちの体制を是非とも応援して欲しい。

質問 極軌道打ち上げは「あかり」に続けて2回目だが、前回との相違はあるか。

森田
 季節的に西風が強いので、やや東寄りの飛行コースを通す程度である。ちょっと東にロケットを出してから南を向けるのは、種子島の上空を避けるため。

No.1072 :20日午前 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月20日(水)11時53分 投稿者 松浦晋也

 午前7時からの記者会見の様子です。

 出席者は的川泰宣教授と森田泰弘教授。

森田
 昨夜8時からスケジュール。内之浦10KM南に停滞した前線があり、ロケットを格納せざるを得なかった。ロケットはしまったが、そのまま打ち上げのための準備作業は無事行えた。今、ロケットが実際に飛んだ状態のタイマー試験を終了したところである。
 今後、電池充電などの作業が残っているが、明後日の打ち上げに向けての準備は万端整った。

的川
 リハーサル、電波テストと呼んでいるものは、ロケットに火を入れる以外のことを行う。それぞれの作業にかかる時間を計って本格的にスケジュールを組む。

森田
 今回は「あかり」とほぼ同じ重さの衛星を、あかりと同じ軌道に打ち上げる。異なるのは第三段燃焼終了後の姿勢反転は行わないということ。
 姿勢反転は、衛星を分離するための姿勢マニューバーで、その後に衛星を分離する。M-Vの場合、衛星スラスターとロケットが協力して目的の軌道に投入する。このためロケット側が、衛星のスラスター噴射方向に姿勢を変えてから衛星を分離する。
 姿勢反転は、衛星のエンジン噴射方向にあらかじめ衛星を向けておくという意味がある。
 今回のSOLAR-Bの場合、分離直後に太陽を検出して三軸制御を確立する。これには時間がかかるので、姿勢反転をしてスラスターを吹かす時間的余裕がない。
 ただし、ロケットの軌道が大きくずれ、衛星スラスターで補正が必要になる緊急事態に備えて、当初は姿勢反転をシーケンスに組み込んでおいた。
 しかし、その後の詳細な軌道解析の結果、姿勢反転よりも三軸姿勢確立を優先したほうが衛星の安全にとって有効であることが判明した。

 このため、姿勢反転を行わないことにした。

質問:打ち上げ時刻は

森田
 国際宇宙ステーションとの衝突解析がまだである。ステーションの軌道は時折代わるのでぎりぎりまで計算できない。午前6時30分〜40分に打ち上げたいと考えている。

質問:最後のMロケット打ち上げに対して感想は。

森田
 まず、今回の打ち上げ目的は世界最高の太陽観測衛星を打ち上げること。もうひとつ、思い出せばということで話すと、1997年の1号機打ち上げ以降、10年目である。今回の太陽観測衛星で、宇宙科学のほぼすべての全領域に対して、Mロケットが貢献することになる。この2つの面で節目の年であると思う。
 去年の今頃は固体ロケットの研究開発をやめてしまえというような乱暴な議論がされていたが、皆さんの応援もあって、次の新しい固体ロケットの研究開発は継続することになった。過去50年の固体ロケットの研究開発をしてきた人たちは色々残念に感じていると思おう。Mロケットは惑星探査機を打ち上げられる世界最高の固体ロケットだ。それが価格が高いというということで引退するのは耐え難いことと感じていると思う。
 M-Vは第2段を高圧燃焼にした5号機から数えると今回で4機目。ここで終了ということは、運動選手としては現役絶好調で引退するようなものだ。だが、次のロケットお我々が開発していくことになる。
 我々は、次の小さな固体ロケットが、やがてMロケットよりも良いロケットへと発展していけるようにしたい。次期固体ロケットがMロケットと称しうる立派なものになるか、それともしょうもないものとして消え去るかは、私達にかかっている。期待していてほしい。
 よく「残念ですね」と言われるけれども、今回の打ち上げは有終の美を飾るというのではなく、次のロケットへのロケットスタートとしたい。


No.1071 :本日リハーサル、雨の可能性のためロケットは整備棟内に
投稿日 2006年9月20日(水)06時13分 投稿者 松浦晋也

 午前6時現在、内之浦では打ち上げリハーサルが進行中です。ロケットは一度は整備棟の外にでましたが、雨の可能性がでてきたため、午前6時少し前。整備棟に引き込まれました。

No.1070 :最後のMVロケット ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月18日(月)17時00分 投稿者 笹本祐一

 MVロケットは、ペンシルロケットから開発開始された日本の科学ロケットの最終進化型である。
 全長23センチ、重量200グラムの小さなペンシルロケットからはじまった宇宙研のロケットは、誕生からわずか15年後に重量9・4トンのL(ラムダ)L-4Sとなって世界で4番目の人工衛星打ち上げに成功、さらに15年後には61トンのM(ミュー)M-3SIIがハレー彗星観測のためのさきがけを地球の重力を振り切る惑星間軌道に投入した。
 Mシリーズの最新型となるMVロケットは、1955年のペンシルロケットから32年目となる1997年に電波天文衛星はるかを打上げた。その重量は140トン、ペンシルロケットから70万倍にも成長した世界最大の固体ロケットであり、世界で唯一の月軌道のみならず惑星間軌道にまで探査機を飛ばせる高性能ロケットである。

 ところが、JAXAは今回打ち上げられるMVロケット7号機を最後に、MVロケットの運用を終了するという。
 次の科学探査衛星であるセレーネは当初の予定通りH-IIAロケットで、金星探査を目的とするPLANET-CもH-IIAで、現在計画中の日欧水星探査衛星ベピ・コロンボはソユーズで打ち上げられることになっている。
 今回の打ち上げを最後にMVロケットはなくなってしまうのか、せっかく新しい道路までついた内之浦宇宙センターもその役目を終えてしまうのか。
 接近する台風13号のために内之浦宇宙センターのほぼすべての業務が停止してしまったため、我々は宇宙研関係者の常宿である福乃家で、前日到着したばかりの的川泰宣先生にいろいろ聞いてみた。

 的川先生とMロケットといえば、日本惑星協会のメールマガジン、TPS/Jメールで連載されいてるYMコラム349回
http://www.planetary.or.jp/magazine/060802.txt
 に、MVロケットの終了が宇宙開発委員会に提出され、既定事項として進んでいることが危機感を持って書かれている。
 MVロケットといえばH-IIAと並ぶ日本が世界に誇るロケット、しかも固体ロケットとしては世界最大、最高性能であり、日本独自の発展を遂げてきた科学ロケットの頂点にあることを考えれば、それがあっさりと代替ロケットの開発計画とともに消し去られてしまうというのは理解しがたい展開である。しかも、現段階で構想されている代替機は、第一段としてMVロケット1段であるM14モーターとほぼ同寸法ながら推力に劣るH-IIAロケット用SRB(単体比較でM14が推力380トンに対しSRB−Aは225トン)を使用、二段目以降は新規開発で、軌道投入重量500キロを実現するという。
 MVロケット終了の理由が、それが一回の打ち上げコストが約70億円と世界水準からみても高価であるからというのは解るが、代わりに開発される新型機は一回25億円のコストで低軌道に500キログラムのペイロードを投入が出来るという。
 いまあるMVロケットは、一回70億円で2・2トンのペイロードを軌道に投入できる。とすれば、高価だからという理由で新規開発される新型機のほうが、重量あたりのコストはMVよりも高いということである。
 しかも、性能に劣るSRB−Aを単体で持ってきて、どんな二段目を持ってくれば液体ロケットですら難しい二段での軌道投入が固体ロケットで可能になるのか、宇宙開発委員会はそのあたりに関して満足できる説明をしてくれていない。また、納得できるような説明があったとしてもそのロケットが予定通りの性能を予定通りの費用と期間で開発できるかどうかはまた別の問題である。
 そして、MVロケットが宇宙研の目的にふさわしいロケットか、という問題も実は存在する。
 MVは固体ロケットの極北だが、固体ロケットだけに打上げ時の加速Gも大きく(最大8G)、振動も液体ロケットより激しい。軌道上に出れば真空、無重量状態の宇宙空間で運用される探査機に、打上げ時の振動と加速に耐えられるだけの強度が必要なのか。もっとスムーズに上げられるH-IIAやスペースシャトルなら、探査機の製作も楽に、簡単に、軽くなるのではないか。
的川「全国にMロケットのファンがいて、宇宙研のOBもいて、でもJAXAからは発言が封じられてるんだよ。でも、僕なら圧力がかからないから、宇宙研が全員あれに賛成したわけじゃないって、何らかの抵抗のあとを見せておかないと言い訳が立たないから、
 そして的川先生が話してくれたのは、予想外に根深い、複雑に絡み合った問題だった。

 MVロケットは、固体燃料ロケット特有の振動、加速などの問題を持っているロケットである。しかし、そのレベルは、「科学衛星ならこれでも大丈夫」というレベルになっている。
 そしてロケットとしての出来以前に、宇宙研の特質として衛星を作る側とロケットを作る側がすぐそばにいる、という利点がある。これは、衛星の都合に応じてロケットがすぐに変更できるし、相談にも行けるし垣根が低いから機動性が高いということにもなる。
 地球低軌道を廻る衛星、高軌道を廻る衛星、惑星間を飛ぶ衛星ではロケットに要求される性能がまったく違ってくる。MVロケットはそれら全ての要求に有機的に対応できるようになっており、またロケットを作る側がすぐそばにいるために衛星側の都合に応じた構成の変更や相談がすぐに出来る。
 NASDAの衛星も、スペースシャトルの搭載ペイロードも、定められた規格に合わせて作らなければならない。ロケットも、衛星も、規格に合わせて作られているから、まず規格ありきで衛星もロケットも作らなければならない。それに対して、宇宙研は衛星もロケットも同じところで仕事をしているので、相談しながら最適なものを作ることが出来るのである。
 旧NASDAでは、いちばん偉いのはロケット部門だったという。ところが、宇宙研では衛星とロケットがどっちが偉い、という認識はなかった。現在では、衛星側のほうが威張ってきている。
的川「20世紀のうちは、衛星とロケットは対等だったんだ。でも21世紀になって、はっきりと衛星とそれを使うサイエンスが至上だ、という流れになってきた。でもこれは、輸送系としてのMVロケットが成熟してきたからで、それはそれでいい流れだったんだよね」
 そして、これは他の職員からも聞いたのだが、宇宙研としてはMロケットを守らなければならないという雰囲気ではないらしい。
 サイエンスの側としては、衛星や探査機を目指す軌道に持っていってもらえるのであれば、輸送手段はなんでもいい。アリアンでも、ソユーズでも、もちろんH-IIAでも構わない。MVでなければ、MVでは上げられないような大型の探査機を惑星間に投入することも出来る。
 宇宙研にとって、MVロケットは目的のための手段のひとつでしかない。
 ところが、現在のJAXAの大勢を占める旧NASDAにとってH-IIAロケットは守るべき唯一無二の牙城であり、発展させるべき将来の象徴である。ISASの10倍の大きさの組織としてH-IIAを守っていくという体制が出来ている。
 そして、JAXAは基幹ロケットとしてのH-IIA、中型ロケットとしてのGX、小型ロケットとしてのMV代替機という構想を頑として崩していない。
「100億掛ければ、MVロケットのコストダウンが出来るんだよ。それだけが心残りで」
 MVロケットのコストダウン策は、一段目のケーシングをFRP化することに始まり、いろいろと考えられていたという。聞いて驚いたのは、その結果。
「目標コストは35億円で、軽量化も出来るから、低軌道に3トン上げられることになる」
 35億で3トンなら、コスト的に充分世界と戦える!
「でもねえ、もう禅問答なんだよ。MVロケットは高価だから廃止しますって言われるから、100億かければ半額になりますって言っても、いや、MVは廃止してその100億で新型を開発します、その新型が性能低いからMV改良した方がいいんじゃないのっていっても、MVは高価だから廃止しますって、またそこに戻っちゃう」
 それは禅問答ですらないような……。

 新型ロケットの開発は、現在MVロケットの実験主任もしておられる森田泰弘さんが指揮を執るそうである。そして、SRB−Aを一段目に使う二段式というのも、現時点では確定した形式ではないらしい。
 そして、当初種子島から打上げ予定だった新型代替機を内之浦から打つ、というのも、やっとそこまでは持ってきたのだという。
「だけども、もう、かなり大きな力が働かない限り、MVの廃止は避けられないでしょうねえ」
 最終号機となるMVロケット7号機の打ち上げまで、あと、5日。


No.1069 :成功祈願の折り鶴贈呈 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月16日(土)17時26分 投稿者 笹本祐一

 毎回恒例の旧内之浦町婦人会、現肝付町女性地域連絡会による折り鶴贈呈が、このランチャーテスト中に行なわれました。


No.1068 :ランチャーテスト終了 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月16日(土)17時16分 投稿者 笹本祐一

 そしてランチャーテストは心配されていた突然の雨に降られることもなく、15時前には再び7号機を無事格納しました。

 やー、暑かった。


No.1067 :打上げ一週間前の7号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月16日(土)16時59分 投稿者 笹本祐一

 打ち上げはまだ先の話なので、ランチャーテストといって7号機を外に出しても戻してからやらなければならない作業はまだいろいろと残っております。そのため、機体各部のアクセスパネルは閉じられておらず、防塵のためにビニールを掛けてテープで留めてあります。
 このテープは普通のガムテープではなく、粘着力強すぎず、弱すぎずのものを使っているとのこと。


No.1066 :ランチャーテスト、写真再掲載 ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月16日(土)16時52分 投稿者 笹本祐一

 すいません、またサーバー側のエラーでこちらの意図しない画像がアップされてしまいました。
 下の画像はあかり打上げ時のものですが無視して下さい。
 今度はちゃんと上がってくれるかな?


No.1065 :ランチャーテスト ●添付画像ファイル
投稿日 2006年9月16日(土)16時50分 投稿者 笹本祐一

 ランチャーテストとは、発射台上のMVロケットを80度前後に今回の場合は六つの角度で傾け、それぞれの姿勢変化が正確にロケット側、衛星側に伝えられているか確認、正確でなければ精度を出すために調整する作業で、発射時の姿勢制御を正確に行うために必要な手順です。