投稿日 2007年9月14日(金)13時54分 投稿者 松浦晋也
記者会見第二部の様子です。
出席者は、前村孝志三菱重工打ち上げ執行責任者、河内山治朗JAXA理事、相模原から滝澤悦貞セレーネプロジェクトマネージャー、佐々木進JAXA/ISAS宇宙情報・エネルギー工学研究系教授。
前村:セレーネの分離軌道要素の速報が出ている。遠地点23万3306km、近地点281.303km、非常に高精度の軌道投入ができた。
河内山:今回は天候が悪く非常に苦労した。世の中の雲がすべて集まってきたような状態だったが、熱帯低気圧と台風の隙間に晴れ間ができるという予報がでて、予報以上の好天気で打ち上げることが出た。非常にうれしかった。
滝澤:衛星は正常で、予定されたシーケンスを実行している。分離は予定通りの時刻に実行、太陽捕捉、太陽電池パドル展開が11時45分頃に確認。ここまでは自動シーケンス。クリティカルな第一段階が終わったところである。
質疑応答
朝日新聞:パドル展開が予定より早いということは、良いことなのか。
滝澤:良いと言うよりも正常であったということ。衛星は分離後、太陽センサーで太陽の方向を探す。分離時の姿勢が狂っていたりと回転がかかっている太陽を探すのに時間がかかる。ロケットからの分離が穏やかに行われたとのではないかと推測している。
時事通信:滝澤、佐々木に、個人的感想を。
滝澤:衛星は上がってからが本番なので、しっかり今後の作業をこなしていきたい。セレーネのデータは優れたものになるはずなので、日本、世界の科学者、さらには今後の月探査に使われていくことになる。きちんとしたデータを出していけるようにしたい。
佐々木:昨日からはらはらしながら見守っていた。天気が悪いので難しいかなと思っていたが、良い決断で良い打ち上げができたことに感謝したい。セレーネは大規模なミッションなので、アポロ以来の成果を上げられるものと私たちは信じている。おおむね300名の科学者が搭載センサー開発に参加した。セレーネならではのデータが得られると考えている。機器のチェックと立ち上げに3ヶ月かかる。これからきちんとやっていかねばならない。
中日新聞:前村さんに。民営化1号機でこれまでと違う感想はあるか。
前村:ロケットの打ち上げは一人ではできない。関係する全員の努力があって初めてなしえたのである。JAXA、パートナーメーカーの力が集約された結果である。
毎日新聞:滝澤プロマネに。どこでどうやって見守っていたか。
滝澤:相模原のセレーネ管制室にいた。天候が良くなかったので、なんとか回復して欲しいと考えていた。
NHK:前村さんに。今回の打ち上げで三菱として得たものは?次の打ち上げに向けてどんなチャレンジをしていくつもりか。
前村:今回はロケットだけではなく、渉外や企画も担当した。これは大変な業務であると身をもって知った。天候判断は従来JAXAがやっていたが、今回私が判断することになり大変な任務であると身にしみた。
NHK:具体的にコストを抑える手段があれば教えて欲しい。
前村:今回は成功に重点を置いたのでコストダウンはあまり考えてはいなかった。ただし点検の重複をはぶいてコストダウンを図れるという部分が2,3あることに気づいている。
南日本新聞:月周回軌道投入はいつになるのか。
滝澤:(しばらく書類を探す)。月周回軌道投入は10月4日、衛星分離は、リレーが10月9日、ブイラドが10月12日。
東京から。日刊工業新聞:次の山場はどこか。
滝澤:月周回軌道投入である。
青木:プロマネが相模原にいるというのはなぜか。管制室では何をモニターしているのか。
滝澤;セレーネは月に飛ぶので、静止衛星や地球観測衛星などより打ち上げ直後にやることが多い。そのようなイベントをしっかりこなすために相模原にいることにした。打ち上げた後の衛星の状態を確認するのは、相模原の役割である。衛星の状態に応じてコマンドを相模原から打っている。
エイビエーションウィーク:太陽電池パドルの展開が早かったわけだが、月に到着させるためのマニューバーなどのタイミングは変わらないのか。
滝澤:時間は変わらない。今後衛星システムを動作確立が早く進んでいるということである。
ここで、滝澤、佐々木は衛星運用のために中座。
西日本新聞:H-IIAのライバルロケットに対する有利点と不利点は。
前村:10,11,12号機は三菱がプライムとなって責任を持って製造した。その前はJAXAがやっていた。ロケットの売りは信頼性であり、信頼性のひとつに「決められた日にきちんと上がる」というのが大きなファクターである。今回ロケットの都合で打ち上げが伸びたというのがほとんどなかった。今回はウインドウの幅がないことで運用上はきびしかったが。無事にあげることができた。今回きちんと時刻通りあげることができたのがH-IIAの売りであると考えている。
南日本新聞:昨日夜からの作業は順調だったのか。
前村:設備の関係で不適合はあった。しかし時間内に処置して解決することができた。これはチームワークのたまものである。
朝日新聞:8月の打ち上げが9月に伸びたことによる影響は。
前村:技術的な影響はなかった。これまでにも例があり、確立された技術で対応できた。コストは、休止保管ということで少人数で行ったのでそんなにはかかっていないはずである。具体的な数字は手元にない。
朝日新聞:衛星分離確認の時の気持ちは。
前村:第2回のエンジン着火の前は、手を合わせて眼をつぶって祈るばかりだった。成功時は感慨無量だった。これまでの苦労がすべて報われた気がした。
南日本新聞:今後の改良はいつ投入されるのか。
河内山:第2段は14号機から、SRB-AはH-IIBからという予定で準備している。
南日本新聞:三菱の打ち上げに点数をつけると何点か。
河内山:100点に近いのではないか。落ちないロケットを続けるという努力を続けていきたい。
以上です。
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