宇宙作家クラブ
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No.1266 :JAXAタウンミーティング@岸和田
投稿日 2008年8月25日(月)20時34分 投稿者 笹本祐一

 2008年8月23日、大阪府岸和田市で第47回SF大会が開催されました。
 岸和田市浪切ホールで開催された今回のSF大会では、「宇宙でなにが出来る?日本の宇宙開発」と題してJAXAのタウンミーティングが行なわれました。
 タウンミーティングは、JAXAが一般への広報と宣伝を兼ねて行っている意見交換会です。今回は二部構成、第一部は小澤秀司によるJAXAの活動についてのプロモーション、第二部はJAXA宇宙科学研究本部教授、阪本成一による宇宙探査方面のプロモーションのあと、それぞれ会場との質疑応答が行なわれました。
 小澤理事、阪本教授によるプロモーションはいつもとあまり変わりませんので省略します。
 なにせSF大会で行なわれるタウンミーティングですから、会場からの質問はマニアックに特化したものが多くありました。
 以下に笹本の現場でのメモをもとに要約します。

 はやぶさ関連
「はやぶさはほんとうに帰ってこれるんでしょうか」
阪本教授「(自分に出来ることは)祈るしかありません。通常なら諦めているところを、運用スタッフはベストを尽してやっています。帰還までのあと二年、辛抱強く運用していく覚悟です」
「はやぶさ2の計画はどうなっていますか?」
小澤理事「いろんな計画があり、なるべく早く射ちたいと思っていますが、これから5年間の間には打ち上げ計画はありません。その次の5年には打ち上げたいと思っている」
阪本教授「全てのミッションを適切な次期に行うのは難しいので検討を進めているところです。然るべき時に備えて着々と準備を進めているので、ご期待下さい」
 この件については、笹本が質問して確認してみたところ以下のような答えを得ました。
小澤理事「今の中期、2006年から11年までの5年間のあいだには打ち上げ計画はありません。JAXAとしては、2012年から17年の次の中期においてはやぶさ2をぜひ打ち上げたいと思っています」
「なんでH2Aロケットではやぶさを打ち上げないんですか?官需だし、打ち上げ機会の増大にも繋がると思うんですが」
小澤理事「H2Aではやぶさ打ち上げというオプションも、もちろん検討しています。H2Aでさまざまな衛星を打ち上げたいと考えています。科学衛星も、ものによっては上げます。用途に合わせて効率良くロケットを上げていきたいと考えています」


 宇宙開発基本法について
小澤理事「宇宙基本法は、8月27日に施行されます。小澤の解釈としては、日本の宇宙開発は今まで研究開発中心だったので、これからは国の利益のための宇宙開発を行うための法律です。国の利益のひとつとしての安全保障、日本経済、宇宙産業の振興発展に繋げられないかということです。
 将来計画に国際協力が多いのは、各国とも予算が厳しいからなので、もっと効率的な宇宙開発が出来ないか。
 宇宙機関からだけではなく、国家の外交政策とマッチした宇宙開発も出来ないか。
 国からトップダウンの形の宇宙開発だけでなく、ボトムアップとしての研究者からの成果も大事にしたい。
 JAXAの存在も一年後に見直しという計画もあります。
 長期ビジョンをもとにJAXAの考えを述べていきます。そういった意味でも、内閣府の宇宙開発戦略本部開設などの動きを注視しています。


 GXロケットについて

小澤「GXロケットは、JAXAも入って計画そのものの見直しの最中です。今年の概算要求にはまだ間に合っていません。
 宇宙開発基本法施行後は、戦略本部、事務局でも議論が行なわれるはずです。JAXAはGXロケットとしては当事者なのでまな板の上の鯉の心境ですが、当事者の立場としての議論をしている最中です」


 広報関連について。
舘広報部長「一番の広報は、すべてがうまくいくことです。それがなによりの広報になります。
 成功した報道はCMとしての効果になります。この前の調査では、打ち上げのニュースはCM換算で二億円相当の効果があるそうです。
 広報としては、テレビが一番のメディアになります。その次が新聞です。もっとも国民に訴えるのはメディアへの露出です。その中で広報を拡げていくべきだと考えています。
 今日は女性が多くて安心しました。女性の認知度が低いのが問題だと考えていますので、全体的な認知度を上げていきたい」


 厳しい予算について。
「惑星探査のようなチャレンジングな計画に対して、寄付、あるいは宝くじ運用のような予算集めは考えていないんですか?」
 舘広報部長が小澤理事、阪本教授のどちらに答えを求めるべきか目配せし、二人ともそちらが、みたいな譲り合いのあと。
小澤理事「答えを譲り合っておりますが 国民の支持さえあればそういうことも出来るが、宇宙宝くじなんてのはこれからの検討課題だと思います。現状では、考えてもいません。今、JAXAが考えているのは、実用衛星方面に置いて実際に衛星ビジネス、通信事業者との共同計画にして国家との共同事業に出来ないか、ということです。民間との共同計画が立ち上げられれば、JAXAが予算を全額負担ではなく何割か、という形になるので、余った分をチャレンジャブルな計画に廻せます」
阪本教授「確かに宇宙探査には魂を揺さぶるところがあります。国立天文台にいた頃も予算が厳しくて、個人的な寄付を申し出てくれる人もいたがしかし学者として断っていました。
 人気があるところは、国民の理解があれば寄付金が集るということになってしまうと、人気のない基礎科学が潰れてしまうのではないかという心配があります。人気があるところだけ抜け駆けして寄付を貰ってしまうと、人気のない基礎科学はますます人気が無くなり、結果として全体が潰れてしまうのではないか、と思っています」


 セキュリティについて。
「どんどん金網が増えていって、見学に行っても見えにくくなってるんです。こないだ内之浦に行ってロケット見せてくれっていったら、とんでもないって断られちゃった。もっとみんなに触って、見てもらうことが広報だと思う。ロケットというのは楽しいものであるってもっと宣伝すべきだと思うんです」
 この質問をしたのは、宇宙研のロケット班長として2003年に退官するまで430本のロケットを打ち上げた林紀幸氏。
小澤理事「ロケットに触れないという意見があるのは承知してます。だから、古いロケットは展示して直接手で触れるような機会も作ってます。
 最近はセキュリティも重視しなければならず、世界でもそういう趨勢になっています。前ならフェンスがなかったに今それがあるのは、想定される危機に備えなければならないという意見もあるからです。
 ロケットに触れたいという気持ちは、展示品の方で触って欲しい。
 実際の打ち上げにおいてのセキュリティ強化は、どこにどんな悪い人がいるか解りませんから、テロのために我慢して欲しいと考えています」


 HTV関連
「HTVがHTVがシャトル後継機になるんじゃないかってニュースをみたんですが?」
小澤理事「2010年にシャトルが引退すると、ステーションへの輸送は貨物がプログレス、人員がソユーズで、ロシアのロケットだけになってしまいます。もしロシア側でなにかロケットが打ち上げられないような問題が出るとステーションが干上がってしまうので、代替としての輸送手段はアメリカが開発中です。それが間に合わない開発中の過渡期の段階に、補給機として使えないかという話がNASAからりました。NASAがHTVを採用というところまではいっていません」
「国際宇宙ステーションへの補給であるHTVは、どこの予算で打ち上げられるんですか?」
小澤理事「今の宇宙ステーションには、日本モジュールが接続されており、この先日本人宇宙飛行士が滞在する予定です。なのに、日本は宇宙ステーションで発電していない。維持に必要なリソースも提供していない。他の国は、ステーション運用のための資源を提供している。
 各国が運用のための分担のため、8分の1の共益費を供出しなければならない。そのためにJAXAは、宇宙ステーションの運用サービスとして補給機を打ち上げるということなので、打ち上げ費用は日本持ちです。
 JAXAの予算の中で、ISSの運用コストは年間四〇〇億円になります。今までは開発費として計上されていたものを運用費に廻すので、全体としての予算割合は変更ありません」


「せっかくSF大会で行なわれるタウンミーティングなので聞いてみたいのですが、軌道エレベーターについての質問です。軌道エレベーターが実用化後も開発すべき技術、陳腐化する技術の切り分けなどは行っているのでしょうか。実用化後の世界についてどんなヴィジョンを描いているのか聞かせてください」
小澤理事(苦笑混じりに)「JAXAの中では、わたしの知る限り軌道エレベーターについての検討は行われていません。実用化後のビジョンも考えろという叱咤激励はありがたく持って帰らせていただきます。
 長期ビジョンのアップデートの時には、もう少しロングスパンで夢を持ったビジョンを提出したいと考えています」

No.1265 :ISS日本モジュールきぼう・運用ブリーフィング7/18 ●添付画像ファイル
投稿日 2008年7月24日(木)14時06分 投稿者 松浦晋也

 7月18日、国際宇宙ステーション日本モジュール「きぼう」の運用ステータスのプレス向けブリーフィングがありました。メイン会場は筑波宇宙センター、私はテレビ会議回線で東結ばれた丸の内のJAXA東京事務所で参加しました。

 少し遅くなりましたが、概要を以下に掲載します。

 説明者は横山哲朗・JEM運用プロジェクトチーム・サブマネージャー

●活動状況
 初期機能チェックが進んでいる。船内実験室を結合後、先に船内保管室で運んでいた8基の実験ラックを移設した。その接続と機能チェック。その後実験支援システムのチェック。冷却システムのサンプル(松浦注:動作流体らしい)をとって成分確認を実施。

●地上側の官制の体制について。
 当初フライトディレクター4人の4チームで運用を行っていたが、6月中旬からフライトディレクターを2人追加して6チーム体制に移行した。運用は8時間3交代で24時間で行っている。

 運用チームのシフトは5日同じ時間帯で勤務、2日休んで、次は違う時間帯をまた5日間勤務というもの。

 各チーム間の情報共有、メンバーの体調の維持など、運用に必要なノウハウは蓄積されつつある。

 今後に向けた活動として、7月初めにペイロードシミュレーションというリハーサルを行い、最初の実験テーマをどう実施するかを確認した。7月末から8月にかけての実験装置のチェックアウトに備える。

●今後に向けた準備の状況
 2Jミッション(船外実験プラットホームを輸送するシャトルミッション)のための準備を進めている。

 今後の予定。皆さんご存知の通り、シャトルの飛行予定が発表された。

 長期滞在を行う若田・野口両飛行士の最後の訓練が9月にある。


 きぼうはおおむね設計通りに動いていると認識している。ただし、いくつかの不具合が存在し、個々に対応を検討している。


●ステーション全体のトピックスについて
 ロシアの船外活動。4月に地上に帰還したソユーズTMA11が弾道突入というトラブルを起こした影響で、ソユーズの部品を回収する2回の船外活動を実施した。このとき、エアロックの先に緊急避難用のソユーズが接続されているという位置関係上、船外活動時に船内に残るクルーの緊急避難経路を確保するために、船内側クルーをソユーズに待避させざるを得なくなった。

 船外活動時にステーション部分が無人になるので、船外活動を行っている期間中、きぼうとコロンバスはハッチを閉じた。7月中旬の一週間、きぼうとコロンバスは人が入れない状態だった。このため作業遅れが生じている。1J(船内保管室を輸送したシャトルミッション)の打ち上げが一週間遅れだったので、トータルでは、当初予定から2週間の遅れが生じている。

 ただしハッチを閉じた完全に無人の状態での環境維持系のチェックが行えたので、決して悪いことだけではなかった。

●ステーション全体のステータス
 左舷の太陽電池パドルの不具合が昨年来続いている。次のULF2でさらに処置を行う。

 ソユーズの帰還時のトラブル。前回の船外活動で一応の処置をした。




●きぼうに発生しているトラブルについて

●トラブルその1
 きぼうのロボットアームから、輸送用の熱防護カバーをはずした時に、カバーと本体を覆う熱防護材との間をつないでいたボンディングタグがはみ出してしまった。

 ロボットアームの関節などにかみこむ可能性はないことは確認した。

 ただし、エンドエフェクタ(松浦注:ロボットアーム先端の“手”の部分)前のカメラの視野にはみ出したタグは、カメラの視野を若干遮る可能性あり。

 次の船外活動で対処すべくNASAと交渉を開始している。

●トラブルその2
 地上側の管制システムで不安定が出た。ソフトのバグ。
 きぼうが取り付けられる一週間前から、NASA側機器を経由してきぼうのデータダウンリンクを開始した。まだきぼうが付いていないのでするとNASA側はダミーデータを流す仕様になっていた。
 それを地上機器は「不正データ」と認識し、異常が起きているというログを出力し続けた。ログが巨大化してメモリーを圧迫、別のプロセスに支障を来した。

 メモリー使用量監視とメモリー増設を行う。ダウンリンクはつなぎっぱなしではなく、通信開始前20分から開始することにした。恒久的的対策としては、ソフトウエアにパッチをあてることになるだろう。

●トラブルその3
 ハッチを閉じるまえのチェックで、船内実験室の16個の蛍光灯のうち3つが切れていた。2つは断線で、1つがどこか故障している。船内保管室の蛍光灯も1つ切れているので、合計4個の照明が使えなくなっている。
 ステーションではランプがよく切れており、軌道上に保管してある予備がすでにない。補給待ち。欧州の補給機ATVのランプをはずして使い回すことを検討。また、次のフライトで、シャトルの貨物モジュール内で使用している同型の蛍光灯をはずしておいてくることも検討している。



●きぼう運用の現在のスケジューリング
 3週間単位でパートナーと協議しながら進めている。7月末から機能チェックを行う。実際の実験開始は8月18日の週からということで協議中。8月初めに確定。
 クルーの時間的リソースが一番貴重で、その取り合いになっている。現在滞在しているクルーではグレッグ・シャミトフ飛行士が日本モジュールのスペシャリストで彼の時間の取り合い。

 ロボットアームの初期動作確認。なるべくはやくやりたい。4回のチェックアウト8月4日の週、2回目が下旬。ステーション・アームとの位置関係でこの時期になった。なるべくはやくやりたい。

 クルーのリソースがとれない部分は地上からの遠隔でやれるところはやりたい。

●以下、質疑応答

読売新聞:8月18日の実験開始の実験の種類は
横山:マランゴニ対流をテーマにしたものでPIは河村先生(東京理科大学の河村洋教授)

NHK:カメラ視野を遮っているという不具合の詳細は知りたい
横山:そんなに大きく覆っているわけではない。カメラ視野左上にひも状に写っている。

NHK:メモリーの圧迫は具体的にどの程度なのか。
横山:1.5Gのメモリーに100M程度のデータが入る予定が900Mぐらいになってしまって別のタスクを阻害していた。メモリーの1G増設で対処。何かの時に障害が起きることを懸念したが、もう収まっている。

同:電灯が切れることへの根本的な対処は。
横山:蛍光灯はアメリカ製の共通品で。10年前に調達したもの。蛍光灯で二重になっている特殊な品でもう製造していないはずだ。中期的にはHTV用に開発しているLEDライトに移設していきたい。

朝日新聞:最初の実験の期間は?
横山:10月までに5回実施する。クルーが実験に直接かかわる時間は少ない。実験をセットするだけ。対流を撮影してダウンリンクすることは筑波から行うことができる。

不明:最初の実験の後、年内の実験実施予定はどうなっているか。
横山;10月以降の運用プランに付いての審査会がちょうど昨日あったところ。内容については別途説明する機会は作りたい。

共同通信:管制チームについて。
横山:今後6人のディレクターをあと2人年内に増やそうと思っている。8人いると回せると思っているが、来年以降にあと2人は増やしたい。回すだけなら8人。6チーム各10人で60人。60人という枠を増やさずにやりたい。長期的にはアウトソーシングしてJAXA職員は開発業務に回るようにしたい。

読売:船内実験室をISS本体に取り付けた時に、冷却系統の流体に泡が入っているというトラブルが出たがその後の状況は。
横山:作業記録にはきちんと水をチャージしたということになっている。その後正常に動いている。現場でのこのようなトラブルはまあま起こることであり、どこまで突っ込んで追求するかはお互いさまのところもあるので難しい。

日刊工業;LEDライトの開発状況を知りたい。
横山:HTV低コスト化の方策としてJAXAオープンラボで松下電工とが連携したスタートしたもの。近くデザインレビューを行う。

 以上です。今後1ヶ月に1回の割合で、きぼうステータスの記者向けブリーフィングを行うとのこと。


No.1264 :上空の14号機 ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月26日(火)05時55分 投稿者 柴田孔明

少し淡い写真になりますが、上空を飛行するH-IIAロケット14号機です。


No.1263 :射点に一番近い集落のその後 ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月26日(火)05時50分 投稿者 柴田孔明

 宇宙センター周辺に集落の跡地があった(過去記事No.917参照)が、今回そこに各メーカーの建物ができていた。見えた範囲では三菱重工、カワサキ、IHIがありました。
 柴田がここに来たときは既に暗かったので、2/15に撮影されたものを掲載します。(撮影者:日高真紅)


No.1262 :記者会見第2部 ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月25日(月)14時33分 投稿者 柴田孔明

第1部に引き続き行われた、打ち上げおよび衛星経過記者会見(第2部)の様子です。

出席者
種子島から西田隆JAXA企画管理主任、前村孝志三菱重工打ち上げ執行責任者、中村安雄JAXA衛星管理主任、岡野直樹総務省課長、高橋卓NICT研究マネージャー。
筑波から中原潤次朗JAXA追跡主任。
司会は福井名航総務部長。

福井:第1部で打ち上げ結果報告がなされているので、衛星系経過説明から。
中村:衛星の現状について簡単にご報告いたします。上がった直後のため数字等その他について若干荒い数値で説明することをご容赦いただきたい。本日きずなを打ち上げたH-IIA14号機は17時55分に打ち上げられた。そのあと約28分後の18時23分にロケットから切り離されて人工衛星になった。その時点で打ち上げられたきずなは、最終的には静止軌道に入るが、その前の段階の非常に大きな長い楕円軌道・トランスファー軌道に投入されて飛んでいると考えている。
 分離後約10分、18時33分頃、チリのサンチャゴで衛星からの信号を受信。この時の衛星は太陽電池パドルが計画通り開いていたと考えている。
 衛星は楕円軌道を大きな楕円軌道を飛んでいるが、模型を使って説明します。
(※ここできずなの模型を使った説明を行う)
 この衛星が静止軌道ではこういう姿(太陽電池を広げた形)になる。皆さんを地球とするとこういった形で24時間でひとまわりするような静止軌道に入る。この丸い2つのマルチビームアンテナが日本や東南アジアをカバーするが、これが打ち上げ時にはこのように畳まれている。太陽電池も畳まれている。この状態でロケットに乗っている。打ち上げられた後、このようにロケットから分離して、今は太陽電池を開いている。
 皆様を太陽とすると、太陽電池がこのような状態(記者に平行となる)で、このように(太陽電池が太陽を向いたまま)ゆっくり回転しながら地球の周りを非常に長い軌道を今飛んでいる。今、衛星の状態を確認しているが、全て正常に機能している。
 このあと静止軌道にのせる作業が、約1週間かけて行われる。
 その静止軌道にもっていく作業というのは、楕円軌道の一番遠いところで衛星のおしりにあるアポジキックエンジンを4回噴射し、軌道をだんだん丸くしてゆく。約一週間後に大体最終的な円形の軌道に入るという流れになっている。衛星の現状と今後の大きな流れについて簡単ではありますが説明いたしました。

中原:衛星の状態はプロマネの説明の通り。私の担当としては衛星を追跡し、テレメトリを取得し、それからコマンドを送信する。それから衛星の軌道を決定する作業のための運用もやっている。サンチャゴ局でほぼ予定通り捕捉し、現在はサンチャゴとマスパロマスという局でレンジングという作業をやっている。約5時間後に軌道決定をする。その後は4回のアポジエンジン噴射のために必用な軌道決定、それから噴射計画などの作業を行う。
これまでのところ順調です。
 
総務省岡野:超高速インターネット衛星「きずな」の利用実験について。リリース資料の通り。災害時の通信確保、在宅医療システムなどの実験が示されている。
 
高橋:ウインズが無事打ち上がって大きな関門がクリアされ喜びたいと思っている。我々の情報通信研究機構では衛星にのせるような交換機をウインズに搭載しており、静止化後、機能確認を行い実験を全力で行い成果を出していきたい。これからも関係する皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

質疑応答 種子島から
 
南日本新聞:今回の14号機からSRB-Aと第2段エンジンの改良型が初めて運用に入ったが、今回の成功でその性能は、まわりにも伝達されると考えてよいか。またその2点はこれまで抱えていた問題だったが、今後の信頼性向上で残っている課題はあるか。
前村:まだクイックレビューの段階で把握していないが、飛行計画通り飛行したため性能を発揮したと思われる。第2段エンジンは速報で振動が計画通り軽減していると聞いている。大きなものは混合器で、ほほ完了したと考えている。今後はまだまだ信頼性を上げていきたい
西田:今後ともJAXAの役割として持っている技術の信頼性向上やエンジン系などの対応をしていきたい。
 
毎日新聞:2点お聞きしたい。船舶進入の件で、事前にどう漁業関係者に伝え、どういった理由で進入してしまったか。遅れたことによるおおよその目安の金額。
西田:船舶の進入の件について。海上保安庁には水路通報で申請して伝えている。海上の警戒は4時間半前から行っている。警戒船とJAXAのレーダーで海上を監視している。今回は風が強く波が高くて船舶の最適な配置がやりにくかった。また波の影響でレーダー補足が難しかった。対象が小型の船舶であったため実際に確認ができたのは直前になってしまった。船舶での確認が難しいため航空機で船舶(漁船)を確認し連絡したが、時間的に厳しかったため打ち上げ時間を延ばした。コストはまだ精査中だが、延期コストは大きな数十億というような金額にはならない。1日延期で数千万と言われるがメーカーの休日を使うなどして最小限にしており、大きな金額にはならないと認識している。
 
朝日新聞:最後の5分延期でどういったことがあったか。またそこでの心境。
前村:最後の5分は、風の制限を超える可能性があり、ロンチウインドウぎりぎりまで粘ろうと延ばした。心境としては天候なので、RCCでまさに手をあげて声をだして神に祈るしかなかった。ブロックハウスの我々のスタッフも同じ気持ちだったと思います。
朝日新聞:その時点では超えていなかったのか。
ロケットの打ち上げは可能な限りチャンスを待つということで、17時50分で風の制限を超える可能性が高いと判断し、最後の5分を待とうとした。結果的に功を奏した。
 
先ほどの質問で漏れていたが、船舶の所属など、判っている点を明らかにしてもらいたい。
西田:小型漁船である。その他船名所属は差し控えさせていただく。
 
産経新聞:今回成功したが、あえて今後の教訓などは。
前村:学んだこととしては打ち上げ延期となったガスジェットの件は、昭和63年から20回以上のフライト経験があったがそれでもまだ不適合の要素はあると教えてくれた。起こったことはしょうがないが、これをばねにして更にH-IIAの信頼性向上のきっかけになったのではないか。前向きにとらえたい。
西田:風の関係で打ち上げ執行の三菱の立場、船舶の関係で安全管理のJAXAの立場の立場、その2つの責任がしっかり役割を果たした。総合力で打ち上げを成功させた。これからも総合力を高めていきたい。
 
共同通信:漁船の進入理由。
西田:どういった理由かは不明。通報はいっていたが、私の感覚では海域から(規制前に)抜けられると思っていたのではないか。波が高く進まなかったのではないか。
 
質疑応答 東京から
 
日刊工業新聞:最後の5分の延期前に風の制限を超えていたのか、それとも可能性があるとの予測か。何秒前から打ち上げ不可能か。
前村:今日の打ち上げでは設定値を超えた時間は結構あった。最初16時20分から55分に延ばした。これは風の収まりを待とうとしたもの。残り1時間あるので万が一ここで止まっても、もう一度トライできる。
規定では打ち上げ前300秒以降に規定値を超えるとカウントダウンを止める。
 
今回は2024型だが、他の型式では風の制限はどうなるか。
前村:202型の場合は、より風の制限が緩和されるので少し楽になる。
 
航空新聞社:学んだ件でガスジェットがあったが、実績あるものの信頼性を改めて確認する難しい作業だが、どのようなものがあるか。
前村:決められた手順、製造工程、検査で物を作ってもまだ今回のようなことがある。これは何度も使っているからOKだとはならないと学んだ。今回8回連続成功したが、更に連続成功の可能性が高まった。今回学んだことをフィードバックすることが大事だ。
 
共同通信:最後5分のカウントダウンの前の中断はいつか。
約300秒前に再度5分間の延長をした。
 
高橋さんに質問ですが、衛星分離の確認はクリスマス島か。
高橋:これは西田さんに答えていただきます。
西田:衛星の分離はJAXAのクリスマス島の施設で確認しています。
 
質疑応答 筑波から無し
 
質疑応答 再度種子島から
 
船舶進入について、海保から漁協などを通じてそれぞれの船に伝わっているということで良いのか。
西田:海上保安庁を通じて水路通報として情報として伝わっていると理解している。

以上です
 
尚、掲載が遅れたことをお詫びします。


No.1261 :記者会見第1部 ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月24日(日)08時07分 投稿者 柴田孔明

23日19時40分から行われた、打ち上げおよび衛星経過記者会見(第1部)の様子です。

出席者
種子島から河内山治郎JAXA理事、川井昭陽三菱重工航空宇宙事業本部長、青山伸文部科学省審議官、池上徹彦宇宙開発委員会委員、側面列席者として、前村打ち上げ執行責任者、森打ち上げ運営副長、西田企画管理主任、中村文部科学省課長、岡野総務省課長、大森情報通信研究機構理事。
筑波から堀川康JAXA理事。
司会は福井名航総務部長。

青山伸審議官:文部科学大臣談話読み上げ。リリースの通り。
池上徹彦委員:宇宙開発委員会談話読み上げ。リリースの通り。
川井航空宇宙本部長:H-IIAロケット14号機による打ち上げ結果報告リリース読み上げ。

川井:本日17時55分にH-IIAロケット14号機を種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げました。ロケットは正常で、きずなを所定の軌道に投入することに成功した。今後きずなの初期機能確認を終了し宇宙航空研究開発機構と情報通信研究等での実験が成功裏に実施されることを願っている。今回は当社にとって2回目の打ち上げ。この成功によって当社の打ち上げサービスが万全であることを示すことが出来た。H-IIAの連続成功は8機となった。商業衛星打ち上げについて数多くの引き合いをいただいている。
今回の成功により受注活動にさらに弾みがつくものと信じている。
第2段のタンク不適合により当初打ち上げ日の延期を余儀なくされたが、諸関係者の真摯な対応により、予定された打ち上げ期間内に打ち上げることができましたことを感謝しています。これまでの多くのご協力ご支援をいただいたJAXAをはじめとする文部科学省、宇宙開発委員会など関係官庁の皆様、パートナー企業の皆様、地元の皆様に心からお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

河内山:今回の打ち上げに関して準備段階でガスケット不具合があったが、三菱さんと関係各社が協力して非常に素晴らしいリカバリをしていただいた。今日、一番厳しかったのは、厳しい風の中でいかにきちんと上げるかということで三菱さんと頑張った結果、ウインドウの最後に見事に打ち上げを成功することができた。今後打ち上げの成功を続けていくことにより、いつでも成功と言われるロケットにしていきたい。

堀川:サンチャゴ局で正常に電波を受信し太陽電池パネル展開を確認。地球の食から出たあと、正常に太陽捕捉をし発生電力が正常に出ていることを確認。衛星は正常に飛行して
おり、今後約一週間のクリティカルフェーズで静止衛星化に向けて作業を進めていきたい。
今回の打ち上げに関して関係の皆様に心から感謝を申し上げたい。

青山:非常に長い1日でしたが、昨年秋のかぐやに続いて、きずなの成功で私個人としても立ち会えたことを嬉しく思います。H-IIの技術Aが成熟し、民間に移管され、二回続けて成功したことを大変嬉しく思っている。また技術の水準がそこまで達したことを実感した。引き続き宇宙の開発利用に向けて努力します。

池上:非常に喜んでいます。今回の成功に直接タッチされた三菱重工さんJAXAさん、支援していただいた種子島地元の皆さんにお礼を申し上げます。
ひやひやしたが最後の最後に打ち上げられ、更に喜びをあげています。
打ち上げは民間に移管し、二回見事に成功した。これは恐らく日本の宇宙産業にとって大きなインパクトを与えるのではないかと期待している。
また衛星のミッションがうまくいくと大変なことが起きる。ビームは東南アジアをカバーしている。インドではブロードバンド化が問題だとのこと。途上国では衛星通信がインフラになっている。そのブロードバンド化が重要となっている。日本の産業界ができる大きな仕事がそこにある。日本は地上のネットワークが発達していてもしかすると感謝されないかもしれないが、東南アジアでは大変な技術である。

質疑応答 種子島から

鹿児島テレビ:ウインドウの最後、風が15Mと厳しかったが率直な感想は。
川井:率直な気持ちとしては本当に喜んでいる。今回のように強い風は記憶にない。打ち上げ制限ぎりぎりで成功したのは本当にほっとしている。
河内山:ガスジェットの不具合から皆頑張っている。風も時間を最大限に利用して対応できた。苦労しているが皆と力を合わせて乗りきれたのは非常に良かった。
 
毎日新聞:かぐやは従来通りのロケットだが、今回はコストダウンをしている。その自己評価と、更なるコストダウン、信頼性を下げないためには。
川井:世界的に見て日本で打ち上げるときに、コストダウンはいろんな局面でやる必用がある。しかし種子島での打ち上げはある程度の制限があるのも事実。まだまだ足らないことがあるので、詰めていく必用がある。世界的な意味で日本のもつ制限への対策が必要。
  
朝日新聞:打ち上げ受注の見込みと、どんな活動をしていくか
川井:商業衛星の受注を積極的にやっていきたい。しかしアリアンやアメリカの企業は経験豊かなところであり、経験豊富なところに立ち向かうことの難しさを感じる。
 今回、ロケットはスムーズだ。強風で条件ぎりぎりで打ち上げに成功したため、お客様に大きな成果として示すことができる。
 
南日本新聞:三菱の来年度の商業衛星受注の可能性は。あと1年だが。
川井:確かに時間が無い。具体的なパーセントはひかえさせていただきたいが、来年ぜひとも打ち上げられるようにもっていきたい。
 
朝日新聞:受注するための値下げは。海外の基準価格に合わせることは
川井:ターゲットは全世界レベル並に。しかし乗り越える必用がある課題がある。

NHK:H2Aの信頼性は、どの水準にあるか。
川井:信頼性についてはガスジェット以外は非常にスムーズにいった。連続8機成功し、成熟には足らないが信頼性から言うとかなり上がってきている。ただパーフェクトは難しいが、それを目指したい。
 
今回のきずなの日本での意義は。
池上:日本でもインフラとして使われること。日本は地上のブロードバンドの稼働率が高いが、残り数パーセントの対策も必用だ。産業として大化けすることができれば貢献できる。直接ではないがワンテンポ置いて日本に貢献することを期待している。
 
共同通信:実利用計画が無い中で、どういったビジョン・取り組みを行うか。
堀川:きずなの利用は国内の基幹通信のバックアップ、国内外のデジタルデバイドの解消、高性能なデータ転送ができる、降雨に合わせたデータ転送ができる、高い交換機能を持っている等を駆使して、インターネットに加え遠隔医療、遠隔教育の応用が考えられる。
総務省岡野:世界のどこでもやっていない技術実証を行える。民間の後押しになる。10カ国から53件の利用実験の公募があった。実用化を進めていきたい。
 
質疑応答 東京から
 
読売新聞:打ち上げ延期の追加費用の負担はどちらが行うか。
河内山:分担は開発ならばJAXA、製造ならば三菱。現在精査中です。
川井:同じです。

読売新聞:精査の時間はどれくらいかかるか。
河内山:打ち上げ直後で未定。

共同通信:今日の延期の理由は何か。
川井:最後の5分前に延ばしたのは、風の状況が厳しかったことと、ランチウインドウがぎりぎりであったため。風が収まるのを待ったということ。
河内山:漁船は波が高くレーダーで見つけにくく、航空機で発見し時間を延ばした。
 
打ち上げコストの合計が全体ではいくらか。
河内山:109億。プラスアルファとして今調整している金額がある。
 
 筑波 無し
 
 以上です。


No.1260 :衛星分離しました
投稿日 2008年2月23日(土)18時24分 投稿者 柴田孔明

きずな、分離しました。打ち上げは成功です。

No.1259 :打ち上げ ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月23日(土)18時09分 投稿者 柴田孔明

直前までホールドがありましたが、17時55分に打ち上げられました。
現在順調に飛行しています。


No.1258 :船の種類について
投稿日 2008年2月23日(土)16時58分 投稿者 柴田孔明

船種は漁船とのことです。

No.1257 :更に変更
投稿日 2008年2月23日(土)16時45分 投稿者 柴田孔明

警戒水域に船舶が確認されたため、打ち上げ時刻を17時50分に変更すると連絡がありました。

No.1256 :X−60分
投稿日 2008年2月23日(土)15時59分 投稿者 柴田孔明

X−60分です。打ち上げ判断はGoです。
時間変更の理由は強風です。
現在も強い風が吹いていますが、打ち上げが決定しました。

No.1255 :時間変更
投稿日 2008年2月23日(土)15時34分 投稿者 柴田孔明

打ち上げ時刻は午後4時55分に変更されました。

No.1254 :強風の続報
投稿日 2008年2月23日(土)15時03分 投稿者 柴田孔明

強風のピークは過ぎていると思われるが、30分程度状況を見るとのことです。

No.1253 :強風に関する情報
投稿日 2008年2月23日(土)13時46分 投稿者 柴田孔明

13時35分に強風情報が発表されました。
射点付近で15m/sの風速を観測しています。
この状態がしばらく続くと予想されています。

No.1252 :No1250の再投稿です ●添付画像ファイル
投稿日 2008年2月23日(土)13時22分 投稿者 松浦晋也

 掲示板バグで写真が狂いましたので、No1250を再投稿します。


No.1250 :準備は順調
投稿日 2008年2月23日(土)12時57分 投稿者 柴田孔明

打ち上げまで4時間を切りました。ロケットと衛星の準備は順調に進んでいます。
気になる天候ですが、昼頃に長谷公園に行ってみたところ、歩くのも大変な強風でした。
また霧かもやがかかったような状態でロケットがよく見えないほどです。
写真は竹崎から見た昼過ぎの射点です。