H-IIAロケット49号機/情報収集衛星レーダ8号機の打上げ前プレスブリーフィング

 2024年9月9日午後に種子島宇宙センターの竹崎展望台記者会見室にてH-IIAロケット49号機/情報収集衛星レーダ8号機の打上げ前プレスブリーフィングが行われました。
 打上げ日に関して、予定していた9月11日は気象状況が条件を満たさないとして延期になっています。また、新たな打上げ予定日について、この段階では未定です。
(※一部敬称を省略させていただきます)

・登壇者
内閣官房 内閣情報調査室 内閣衛星情報センター 管理部付調査官 三野 元靖
三菱重工業株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 MILSET長 鈴木 啓司

・打ち上げ日について(三野)
 令和6年9月11日(水)に予定しておりました、H-IIAロケット49号機によります情報収集衛星レーダ8号機の打上げにつきましては、打上げ時の気象状況が条件を満たさないと予想されることから、打上げの延期が決定されましたので、お知らせをいたします。新たな打上げ予定日につきましては、決定し次第お知らせをいたします。

・準備状況について(鈴木) ※配付資料より抜粋

 打上げ日:未定
 打上げ時間帯:13時00分~15時00分(日本標準時)
 打上げ予備期間:2024年9月12日~2024年10月31日
 ロケットの仕様:H-IIA202型 4Sフェアリング

 9月7日(土) Y-3作業(良好に完了)
  ・1/2段推進系・電気系・機構系点検作業
 9月8日(日) Y-2作業(良好に完了)
  ・火工品結線
  ・2段ガスジェット推進薬充填
 9月9日(月) Y-1作業(作業中)
  ・電波系統点検
  ・推進系最終クローズアウト
  ・機体アーミング
  ・機構系/アンビリカル離脱系最終準備
  ・射点/貯蔵所系設備準備
 未定 Y-0作業(予定)
  ・機体移動
  ・射点設備系最終準備
  ・ターミナル・カウントダウン
 打上げシーケンスについては前号機から特に変更無し。

 ・気象状況について
 現在、大気の状態が不安定で断続的に雨が降ったり止んだりしている。
 当面はこのまま雨が降ったり止んだりが続く。雨脚に関しては今後次第に強くなっていくと予想している。
 週間気象情報では、現在の雨の状況は明日いっぱい、そして当初予定していた9月11日のお昼くらいまで続くと予想されていて、雷それから大雨の可能性がある。
 これらの気象状況に基づきまして本日打上げの実施に向けた判断会議を実施しておりますけども、その中で主に3点が制約条件に抵触する可能性があるという事で打上げの延期を決定しております。ひとつは機体移動を予定している9月10日から9月11日にかけて発雷と大雨が予想されているという状況に関して、機体が射点に起立した状態での発雷等の懸念があるということがひとつ。二つ目は打ち上げ当日の9月11日のお昼辺りで氷結層を含む雲の厚さの条件、これが規定値を超過する見通しであることを可能性として考えている。3つめは、9月11日に関しては上空で強い東寄りの風が吹くことが予想され、これに関しても打上げの条件に抵触する可能性があると評価している。以上3点を含め総合的に評価した結果、11日の打上げに関しては延期とさせていただく判断をいたしました。

・質疑応答
読売新聞・情報収集衛星はH-IIAで打ち上げ続けて来たが、宇宙基本計画の工程表によると今年度でH-IIAは退役する。この後はH3での打上げに切り替わると思うが、工程表によると情報収集衛星は光学多様化衛星という多様化とついたものが打ち上がることになっているが、これまでとの違いと、打上げロケットが変わることでどう変化するのか。
三野・ご指摘の通りH-IIAロケットを私共の情報収集衛星が使わせていただくのは今回が最後という事になります。これまでH-IIAロケットについては私共の情報収集衛星を沢山打ち上げていただいたということで感謝を申し上げたいと思います。今後、令和8年度以降に打ち上げる衛星からはH3ロケットを使うという事になっています。今後、光学多様化衛星ですとかレーダ多様化衛星を打ち上げることになりますが、多様化衛星だからH3ロケットで打ち上げるという訳ではなく、ここは切り離して考えていただければと思います。多様化衛星につきましては、私共が今運用しているのは基幹衛星というものでして、これによって地球上のあらゆる任意の地点を1日1回以上撮像できるが、光学多様化とレーダ多様化を導入することによって同様の条件で1日に複数回、2回以上の撮像ができるようになる。これによって我が国の情報収集体制の強化を図っていこうと考えているものであります。

フリーランス鳥嶋・平成27年の資料で当時開発中だったレーダ7号機にAIS受信機を実証搭載するとあったが、実際に搭載されたのか。また今回の8号機にも搭載されているのか。また7号機に搭載されている場合、ユーザーからのニーズとしてAISの情報とレーダの画像を組み合わせた情報が欲しいというニーズがあっての事だと説明があるが、実際に融合させた情報を配付されているのか。またユーザーの反応はどうか。
三野・ご指摘の通りレーダ7号機、それからこれから打ち上げるレーダ8号機につきましてはAISを実証搭載しております。実証でございますので、実際に使ってみて、その結果を踏まえて今後実際に搭載するかを判断していきたいと考えています。ユーザー省庁の方からこういったニーズが寄せられて、私共が開発を行っている。実際に配付されていると考えていただいて結構かと思います。AISの搭載に関しては関係省庁から高い期待が寄せられていると言えるのではないかと考えています。

MBC・H-IIAは残り2機となったが、あらためて今回の打上げに関する思いをお聞かせ下さい。
鈴木・H-IIAに関しては残り2機となっています。これまで48機という非常に沢山の号機に関しまして、多大なるご協力ご支援をいただきました関係各機関の皆様、お客様の皆様、パートナー会社の皆様、更には地域の方々、及びこれまで数々の応援をしてくださったファンの皆様に心から御礼申し上げたいと思っておりますし、最終号機に近づくにつれて日に日にそういった方々への感謝の思いをあらためて思い起こしているところでございます。ではございますけども、私共はまだまだ感傷に浸れる状態ではございませんで、まずは目の前に迫っている49号機を必ず成功させないといけないという事で、これに集中して取り組んでいるという事でございます。今号機もこれまで通り一つ一つの作業を確実に実施して必ず打上げを成功させたいと考えています。

産経新聞・あと2機という事で、49号機は特別な思いや位置付けはあるか。最後の50号機にどう続けていきたいか。
鈴木・残り2機のうちの1機だからという所で特段の意味づけは正直ございません。残り2機という事で、それを理由で手を緩めることはなく、これまで積み上げた改善をここまででいいやとか、これまで起きてきた不適合の再発防止と恒久対策を終わるからここまででいいやとか、そういう風に気を緩める方向に繋げてはならないという事に関しては強く意識しながら作業を進めているところでございます。

産経新聞・あとたった2機しかないという事に関しての感慨みたいなものはあるか。
鈴木・正直、無くは無い。私もH-IIAロケットに関しましては、開発当初から携わらせていただいて、ずっとここまで参画してきていますので、いよいよあと2機になってきたというのは思いとしてはございますけども、先程申し上げたように、だからといって何か変わったことをするという事は無くて、1機1機確実に打ち上げるという事に尽きるという事でございます。

産経新聞・かえってプレッシャーが高まるような事はないか。
鈴木・プレッシャーに関しては毎号機十分なプレッシャーをいただいておりますので変わる事はございません。

JSTサイエンスポータル・H-IIAの47号機と48号機は、H3ロケット試験機初号機の打上げ失敗を受けて、原因と考えられるシナリオのうちH-IIAロケットと共通する要素に関して対策を施した上での打上げ成功に至ったと記憶している。今回の49号機も全く同じ対策が継続しているという理解で良くて、またそこも含めていつもの202型という理解で良いか。
鈴木・ご理解の通りでございます。H3TF1の失敗からの反映という意味では47号機と48号機でとった対策と同じ対策を49号機にも実施しています。

時事通信・気の早い質問かもしれないがH-IIAが50機という、日本のロケットの中でこれだけの機数を打ったものは無かったと思うが、長く成功率が高く続けたという事で、ロケットの運用とか定常的に打ち上げることで三菱重工さんが得られた教訓といったものがあったか。
鈴木・50機が無事に打ち上がった後にまたしっかり総括はしていきたいと思っておりますけども、これまで私が携わった範囲で感じているのは、やはりロケットの打上げに向けた作業というのは、本当に細かな作業の積み重ねでございますし、多くの関係者が携わるものでもございますので、そういったところでひとつの緩みも抜かりも無く確実に作業を積み上げて行く事が重要だと考えております。またそれを組織としてどう確認して漏れが無いように管理していくかという所も気を遣ってここまで積み上げてきているものがございますので、そういった観点では弊社としていろいろなノウハウを蓄積する事が出来ているのではないかと思います。

NHK・今回のレーダ8号機は、6号機の後継として打ち上げられるとのことだが、スペック的に同じなのか、それともアップデートした部分があるのか。
三野・ご指摘の通りレーダ8号機はレーダ6号後の継機となっております。レーダ6号機と比較しまして、例えば分解能の向上ですとか、私共がアジリティと呼んでいる俊敏性の向上、それからレーダ6号機には搭載していなかったデータ中継機能が搭載されておりますので、即時性の向上などが見込まれます。

NVS・延期になると打上げ時刻はどうなっていくか。後ろにずれたりするか。
鈴木・後ろにずれたり戻ったりは今回のミッションではございません。

宇宙作家クラブ柴田・先月に南海トラフ地震への臨時情報で観測ロケットが延期になっているが、H-IIAロケットも同様の対応をとるのか。
鈴木・南海トラフ地震の臨時情報が出た場合の対応については関係先の皆様と協議を進めているところでございますが、基本的には発表された情報の内容に応じまして、その時点であらためて関係先の皆様と調整させていただいて必要な対応をとるという事のレベルでございます。現在の時点で南海トラフ臨時情報で前回と同じような巨大地震への注意が発表された時点で自動的に打ち上げ中止に至るようなプロセスを決定しているものでは現在の所ございません。

日経ビジネス・来月20日にH3の4号機の打上げが予定されていて、今回の49号機が近く三菱重工さんとしても大きなチャレンジと思うが、人的リソースなどが限られている中でどのように回しているのか。また今回は悪天候で延期になったが、来月のH3にどのように影響するか。またこの日までに打ち上げないと(H3を)延期しなければならいなといった判断基準はあるか。
鈴木・4号機との間隔が短いことに関しては、この1ヶ月余りの間に2機という事に関しては、これまでに経験の無いレベルという事ではございませんで、これまでも実施出来ている範囲の間隔であると考えております。とはいえ間隔が短いのは事実でございますけども、例えば質問にありました人的リソースに関しましては、例えば今回で言うと、49号機と4号機は多少早めに射場に持ってきていて、49号機の作業を進める中で一定期間の休止期間を設けまして、その間でF04号機の作業を進めるという作業の進め方をしております。ですので49号機が終わってから4号機の準備を一から始めていくという事ではなくて、4号機の準備も相当な所まで既に進めてきていますので、現有のリソースのメンバーで無理なく進められるようにスケジュールを設定しています。延期の影響ですが、先程無理なく進められると申し上げましたが余裕のあるスケジュールという訳でもございませんので、ご指摘の通り49号機が大きく延期となる場合には4号機の打上げの時期に関しても併せて検討(キャッチアップ)していかなければならないのは事実でございますけども、現時点でいつまで打ち上げたら影響が無いとは一律に申し上げるのは難しい。というのは延期の理由等によりますので、難しいのですけども、当社といたしましては4号機の打上げに関しましてはJAXAさんとよくご相談させていただいた上で極力スケジュール通り打ち上げられるように進めさせていただきたいと考えております。

日経ビジネス・どの程度の期間が空けば次の打上げに影響が出ないか。
鈴木・今ノミナルで設定しているスケジュールで、数日の余裕を含んでいるというくらいのイメージでございます。

朝日新聞・機体は問題が無くて天候の理由だけで延期と理解しているが、前日に機体移動があるので、週間予報を見ると打上げは最速でも13日になるのか。
鈴木・今日決定して発表しているのは11日の打上げは延期するという事と、新たな打ち上げ日に関しては決まり次第お知らせしますという事で、次の打上げが最速でいつになるかに関しては、この場での回答は差し控えさせていただきたいと思います。

朝日新聞・延期を決めた3つの要件から、このままの予報なら13日に打上げが可能なのか、それともここに書いていない支障が出るものが予報で可能性が出て来ているのか。
鈴木・13日に関しても必ずしも楽観できる状態ではないと考えております。加えて気象予報というのは様々な要因で変わる事もございますので、日々最新の気象予報に基づきながら判断をしていきたいと思っております。

以上です。

ブリーフィング当日は曇り時々雨、そして晴れと豪雨を繰り返していました。

しかし晴れの時間はとても短い。

H-IIAなので右の第1射点を使います。