H3ロケット8号機打上げと打上げ後記者会見

2025年12月22日10時51分30秒に打上げられたH3ロケット8号機は、打上げ25分後の第2段エンジン第2回燃焼開始後、予定された推力に達せずエンジン停止、ロケットは衛星を所定の軌道に投入出来ず、打上げは失敗しました。

以下は打上げ後に行われた記者会見の様子です。(以下敬称略)

登壇者

  • 文部科学省 研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 近藤 潤(こんどう じゅん)
  • 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 審議官 渡邉 淳(わたなべ あつし)
  • JAXA 理事長 山川 宏(やまかわ ひろし)
  • JAXA 理事/打上げ実施責任者 岡田匡史(おかだ まさし)
  • JAXA H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ/打上げ執行責任者 有田 誠(ありた まこと)
  • JAXA 鹿児島宇宙センター所長/打上げ安全監理責任者 砂坂 義則(すなさか よしのり)

概要説明

山川: H3ロケット8号機の打ち上げにつきましてご報告をいたします。本日10時51分30秒に「みちびき5号機」を搭載しましたH3ロケット8号機を打ち上げましたが、第2段エンジン第2回燃焼が正常に立ち上がらず早期に停止したことから、予定した軌道に「みちびき」5号機を投入することが出来ず、打上げに失敗いたしました。

準天頂衛星システムの整備そして運用を行う内閣府様、および搭載衛星であります「みちびき5号機」に関係された皆様、地元地域を始め関係する皆様、そして国民の皆様からのご期待に答えることができず心よりお詫びを申し上げます。

今回のこの事態を真摯に受け止め、私、理事長を長とする対策本部を設置し、原因究明を行うように指示をいたしました。状況につきましては随時おしらせをいたします。

岡田: 皆様のお手元には記者発表資料ということで、本日の8号機の打上げ失敗、そして対策本部の設置につきましてのプレスリリースをお配りしております。内容につきましては今、山川理事長からお話させていただいた通りの内容ですので説明は割愛させていただきますけれども、私の方からは、今回の状況につきまして少し技術的な内容について補足させていただこうと思います。

この資料の中には第2段エンジン第2回燃焼が正常に立ち上がらず早期に停止した、とございます。今回は第2段エンジンが2回着火するフライトです。左の方にはロケットの飛んでいく様子が描いてありまして、右の方に、それを追いかけるような形で、リフトオフから順次どのようなシーケンスが進むかというのを説明しています。

打上げ後の実際の経過時間、そして真ん中には解析としてあらかじめ予測していた時間、そしてそれらの引き算が1番右にあります。順次説明しますと、このリフトオフから、SRB3分離、衛星フェアリング分離、そして第1段エンジン燃焼停止、第1段・第2段分離、ここまでは予想された範囲の中で飛行したような時間差に見えます。詳細はこれからしっかり検討しないといけないんですけれども、そのように見えます。

6番目の第2段エンジン第1回推力立ち上がり。ここの時間差が3秒になっていますが、これも時間差そのものとしてはそんなに大きな時間差ではないのですが、この第1段・第2段分離からの時間を考えると少し大きめにも見えます。

そして決定的に大きく予測値と異なる作動結果というのは、この7番あたりから出てくるんですけれども、これは第2段エンジンの第1回推力立ち上がりから第1回燃焼停止が行われるまで、ここはロケットは自分で考えて軌道修正をしながら飛んでいますが、この停止の時間が27秒ずれている点は大きな違いだという風に考えています。

第1回の燃焼停止が終わりますと、しばらくは無推力の飛行いうことで、エンジンを止めた状態で、しばらく飛行して、あらかじめの計画に沿って第2段エンジンの第2回推力立ち上がりが行われますが、ここが15秒差になっていると、こういったことから、大きくはこの赤枠で囲んだ部分について違いがあるということです。

もう少しこの表を補足しますと、私もここまでの時間である程度のデータを見ていて、主たるデータだけなんですけれども、この第1段フェーズの途中から第2段水素タンクの圧力が徐々に減少しているというデータが確認されています。

水素タンクの圧力が落ちますと、第2段エンジンのパワー、推力ですね、ここに直接関係していますので、この水素タンクの圧力の低下と、実際エンジンの推力が少し小さかったのですが、その結果を持って先ほど説明したこの7番にあるような時間差が生じている、というのは辻褄のあうことですが、ここは詳細に検討していきたいと思っています。に

近藤: 本日H3ロケット8号機の打上げにつきまして、第2段エンジン第2回燃焼が正常に立ち上がらず早期に停止したことから、予定した軌道に「みちびき5号機」を投入することができず失敗したとの報告を受けました。H3ロケット8号機の打上げが失敗したことは大変残念であり、国民の皆様のご期待に沿えないことを申し訳なく思います。

今回の事態を受けまして、松本文部科学大臣より文部科学省内に小林副大臣を本部長、清水政務官を本部長代理とする対策本部を設置し対応するよう指示があり、先ほど第1回対策本部の開催をしたところでございます。今回の失敗原因を確実に究明し、早急に対策を立て、H3ロケットに対する信頼を取り戻せるよう関係機関と共に全力で対応してまいります。以上です。

質疑応答(第一部)

共同通信・上坂: 資料の方に第2段燃焼終了時間の記載がなかった一方で、早期で停止という説明だった。中継の方では確か1秒ぐらいで停止しているように見えたがどのように評価しているか

岡田: すみません、その件の説明をしていませんでした。この第2段エンジン第2回停止、SECO2と呼ぶのですが、このSECO2という信号そのものがまだはっきり捉えられているわけではありませんが、推力を見ますと今おっしゃられた通り、第2回の推力立ち上がりがあった直後、つまりエンジンには着火しましたが、その直後に停止しているという状態です。

共同通信: 着火はしたけどすぐ停止した、という理解でよいか?

岡田: はい。そうです。

共同通信: 確認だが衛星は喪失したということでよいか?

岡田: こういう停まり方がロケットとして通常の停まり方ではないので、衛星が分離したかどうか、という信号そのものが実際にまだ把握できていません。従いまして、喪失したかどうかということも含めて現在ロケット側で調査を進めているところです。

産経新聞・伊藤: 喪失したかは分かっていないとのことだが、生き換える可能性はあるのか

岡田: 私の方からお答えできる話として、ロケットから分離したかどうかというのをまず初めに見極めるべきだと思いますので、それをもってのお話かな、という風に思っています。

産経新聞: 第2段エンジン第2回燃焼が1秒で終わったとしても分離がその後できている可能性はあるのか

岡田: 0ではないと思っています。

産経新聞: 0ではない。

岡田: はい。

産経新聞: 低い。

岡田: 高いか低いかというと、データが無いというのが事実でして、そこは見極めないといけないと思ってます。色々な情報を集めて、それが実際どういう風になっているのかというのをロケット側でしっかり検討していきたいと思います。

産経新聞: 原因究明終わり対策の見通しが立たないと次の打ち上げはできないのか

岡田: 基本はそうだと思います。信頼性の高い状態にロケットを作り込まない限り、打ち上げというのはそんなに簡単なものではないという風に思っています。

産経新聞: 工程表や年度末の打上げに影響する可能性もあるか

岡田: それは原因次第というところで、まずはとにかくデータをくまなく見まして、その上で一体何が起きたか、というのを割り出して調査していかないといけない。本当に今は手前のところなので、まずはそこをやった上で、そういう今後のお話をさせていただくことになると思います。

産経新聞: 現頑張ってください。

岡田: はい、頑張ります。

読売新聞・岩瀬: 延期やMIUの交換の影響は考えられるか

岡田: 軽々に申し上げるわけにははいかないのですが、第一感としては無関係だと思います。ただ、それも含めて原因究明の中で潜入感を持たずに取り組んでいきたいとは思っています。

読売新聞: 衛星の状況を今確認中ということだが、仮に分離されていた場合生き返るのか。アポジエンジンで準天頂軌道に投入可能か

岡田: まずはJAXAというかロケット側で、どういう状態で分離出来たのかということをきちっとご説明した上で、ご検討ただく内容だと思っています。

フリーランス・宇推: 衛星分離信号が取れているか分からないとのことだが、テレメトリが取れていなかったのか、その場合どこまで取れていたのか

岡田: 詳しくはこの後有田の方から説明させていただきますけれども、いわゆる通常の衛星分離のタイミングと違う、あるいは2段エンジンの停まり方そのものも異なっておりますので、通常のようなデータでないことは確かだと思うんですね。ですから、色々なデータを組み合わせて実際に分離したかどうかというのを確認する必要があるという風に思っています。

宇推: 所定のタイミングでは分離していないということか

岡田: ……そうですね。分離というのは第2段エンジンが燃焼を停止してからそこからストップウォッチを押すような形で分離していく、ということを考えると、第2段エンジンの停止が正しいトリガーになっているかどうかによるわけですね。そういうことで実際の時間がどうなっているか、ということも含めて確認しないといけないという思っています。

読売新聞・石川: 水素タンクの圧力低下の意味するところは、水素燃料が必要量流されていなかったということか?もしくはその時点でタンクの中の水素が異常に少ない値を示していたのか?

岡田: これも詳しくはあとで有田から説明させていただくことになると思いますが、ロケットのエンジンというのは、その前段って言いますか、燃料タンクからターボンプというものでプロペラを回して吸い込みながら燃焼室に送るという仕組みです。

で、そのためにはタンクにある程度の圧力を持っておかないと空回りしてしまうとか、前段のプロペラの部分がうまく動作しなくなります。その入り口の圧力によってエンジンの動作はまた変わってきます。動作というのは、例えば推力に影響が出てきます。従いまして、この水素タンクの圧力が少ない、それはエンジンの作動に何らかの影響を与えるということです。

タンクからエンジンに押し込むという感じではなくて、ある程度タンクの圧力をかけておいてあげて、エンジンが吸い込む、というイメージと取っていただければと思います。

読売新聞: H-IIAからH3に変わる時にターボンプ関連の方式が変わっていたかと思うがその影響は

岡田: 2段エンジンに関してはほとんど変えていません。ですから、ほぼ全く同じ設計という風にご理解いただければと思います。今回2段エンジンのお話ですので、そこに関しては。

読売新聞: 変わっていない。

岡田: 変わっていない。改良というイメージで捉えていただければと思います。

読売新聞: イプシロンSの打上げが滞っている状況で、H3も打上げが厳しくなるということは基幹ロケットが手段として手持ちがなくなってしまう事態になるが、その件について所管を

山川: 我々としては、まずはイプシロンロケットについてもですし、今回のH3ロケットの事象についても原因究明に全力で取り組むことによって、早期のリターン・トゥ・フライトに向けてまずは集中していきたいと思います。

どちらのロケットに関しても徹底的に救命をし、徹底的な対策を打っていくといきたいという考えております。それが引いては早期の打上げ再開、そして信頼性を積み上げる、ということにつながっていきますので、そういった覚悟で取り組んでいくという風に考えております。

読売新聞: 日本の宇宙開発に与える影響をどのように受け止めているか

山川: 基幹ロケットに関して、今回のように原因究明する事態となってることについては改めて大変深くお詫びを申し上げたいのですが、我が国として一番重要なことは自立性を持って宇宙活動を続けていくということであり、この基幹ロケットは、まさにそれを支えるロケットであるという風に考えています。ですので我々JAXAとしてはとにかく技術的に真摯に取り組んでいくということで、宇宙へのアクセスの自立性を担保していくということに引き続き貢献していきたいという風に考えております。

時事通信・神田: H3ロケット初号機に続いて今回も、新規開発要素の多い第1段第1弾ではなく、第2段の方にトラブルが起きたことをどのように受け止めているか。また初号機と異なり第2段固有の問題ではなく、H3全体というシステムになったことを受けてスコープを広げて調べていくのか

岡田: この第1段に関しては飛行状態を見ていただくと分かるように、非常に予定通り飛んでいたように思われます。その上で、第2段がこういう状況なんですけれども、今回の原因が果たして第2段にあるのかどうかということ自体もこれからの原因究明に寄るところです。

ですから、そこを徹底的に究明していきながら、今おっしゃられたように、H3をいいロケットにしていく為にはどこまでを考えていかないといけないか、我々もそこを並行して考えていくべきだと思っています。

時事通信: 一応確認だが、打上げ前の点検・試験等で第2段水素タンク周りに気になるような情報は特になかったか

岡田: 無いと思いますね。あったら打上げはしておりませんので無かったと理解していますが、我々に見落としがなかったかどうかも含めて確認する必要があるとは思います。また、この第2段で何か起きたのかどうか、ということを含めて、まずそこから取り組まないといけないと思っています。

フリーランス・小玉: 5号機を喪失した場合、準天頂衛星システム7機体制完成までにどのような影響があると考えるか

渡邊: 岡田理事からも説明がありました通り、状況確認をしているというところですので、喪失してるかどうかについては今後の確認次第だという風に思っています。今年度中に5号機、7号機を打ち上げて7機体制を目指してきたわけですが、そういった状況を踏まえて、我々といたしましては出来るだけ早期に7機体制を完成させるよう務めたい、現状言えるのはそこまでかと思っています。

フリーランス・大塚: ノミナルでは近地点370km、遠地点3万5586kmという数字があったが、現時点で何か分かってる数字はあるか

岡田: 数字はまだ詳細に検討中ですので、今私の方からこれですと申し上げられない状況です。

大塚: 確認だが、第2段の2回目の燃焼で軌道の反対側の遠地点高度を3万6000kmぐらいまで上げるつもりだったのが、ほとんどできずに終わった、というイメージか

岡田: 第1回の2段燃焼が終了した時点で地球周回軌道に入っていて、そこから先がエンジンが十分働かなかったので行けなかった、という状況です。

大塚: これも確認だが現状ではロケットとも通信できていない状態か

岡田: ロケットはクリスマス局を過ぎますと、十分確認がいるのですが、どこかで電源を遮断するようなことになっていて、今時点はもう通信ができない状態になってます。

大塚: そうすると今まで降りてきたテレメから解明する感じになるのか

岡田: おそらくそうなると思います。

日経ビジネス・斎藤: 今回の8号機は打上げ前から二段目の不具合や注水設備のトラブルなどトラブルが立て込んでいた気がする。打上げ回数増加に対して試験、射場整備など全体の疲弊感がなかったか。ロケット打上げはプレッシャーのある作業。その現場の疲労感、疲弊感といったものをどう理解しているか

山川: 現場はしっかり管理をしながら作業計画を立てておりますので、気持ちの上ではしっかり打ち上げに向けて取り組んでいるという状況でありました。当然ながら作業の効率性を見ながら、設備を充実させつつ、打ち上げの回数を増やしていく、という戦略で進めているところでございます。ですので、一言で申せば、そういう意味での疲弊感はなかったという風に言えるかと思います。

日経ビジネス: リソースや政府の予算なども総合して、改めて今後年間打上げ回数を増やしていくことが可能であると考えているのか

山川: H3ロケットというのは元々国際競争力を確保し、同時に政府あるいは民間の衛星、海外の衛星も含めてその打上げ需要に答えていくロケットとしてスタートしてるので、打上げ回数というのは最初から非常に重要なファクターの1つです。

その中で、コスト競争力、あるいは部品点数をできるだけ少なくする、作業効率を高めていくなど色々な工夫をしながら進めているところですので、改めて、今回起こった事象も含めて、そこに何か見落としがないのか、いうことを改めて確認していく必要があると思っています。

先ほど技術的に真摯に取り組んでいくという話をさせていただきましたけれども、今回改めてそういった観点も含めてまず原因究明を進めていきたいと考えております。

南日本新聞・上岡: 気持ち的にはどんな状況にあるのか、何をしなくてはいけないのか改めて聞かせてほしい

岡田: こういう状況になりましたけれども、今我々がやるきことは全力での原因究明、これに尽きます。ですから今、ロケットの管制室ではデータと首っ引きになりまして、おそらくエンジニアが検討を進めています。私もどこかでそこに合流することになると思うんですけれども、まずは全力でそこに取り組んだ上で、今後のH3ロケットが信頼性の高いロケットとして再び役目を果たせるように私も全力で取り組みたいという風に思っています。

それ以上でもそれ以下でもありません。

質疑応答(第二部)

JSTサイエンスポータル・草下: 今回の打ち上げ結果に関して失敗と発表しているが、失敗という断定でよいのか。予定された軌道ではないとはいえ衛星が分離したかどうかもわからない。スラスタを吹くなどのリカバーが将来あり得る可能性もないわけではない段階で失敗と言い切ってよいのか。

古い話だが、1998年の「かけはし」では第二段の燃焼が早く終わりGTOには投入できなかったが関係者が奮闘して活用するような経緯があったように、今回もそういったようなことが可能性としてないわけではないという点で、ロケットとして失敗という言い切りでよいのか確認したい

有田: 今回の事象に関しては先ほど岡田からも説明があったように、第2段の2回目の燃焼がほとんど行われなかったということで、当初予定していた軌道とは異なった軌動になってしまった。今例に上げていただいたH-II 5号機の時と比べましても、遠地点をそれなりの高さに上げるということが出来ていないという状況がございましたので、ロケットとしては、所定の軌道に届けられなかったということで失敗、という風に発表させていただきました。

JSTサイエンスポータル: 趣旨としては、これから先どうなろうとロケットの仕事として考えた時に失敗と断言せざ得ない、という趣旨でよいか

有田: はい。結構です。

朝日新聞・枝松: みちびき5号機は今後リカバーに取り組んだとしても準天頂軌道に乗ることはもうないと言っていいか?その可能性はまだ残っているのか?

有田: そこは衛星分離の状況が今まだ把握できてない状況ですので、現時点では何とも申し上げられないというところです。

朝日新聞: 分離されていればゼロではないのか

有田: いずれにしても、どのような状態で分離したか、単なる軌道だけでなく、どういう姿勢で分離がされているか、こういったことも含めて情報をしっかりロケット側で把握をした上で、衛星さんの方に情報をお渡しして、何ができるのか考えていただく、というに順番になると思いますので、今、現段階はその前段階という認識でおります。

朝日新聞: 「みちびき5号機」の開発費。個別に公表できないということであればその理由。

(司会): みちびき5号機に関しましてはJAXA側でお答えできないので、内閣府に確認したいと思います。少々お時間をください。

産経新聞・伊藤: 今回2度の延期があり1度目は機体側、2度目は設備側、それぞれ徹底的に原因を救明して十分対策を立てても成功に至れなかったのはなぜか

有田: 結果としてこういう形になりまして、今まで8号機の打上げに向けて本当にみんなで努力をしてきたわけで、その結果を実らせることが出来なかったというのは大変残念で、申し訳ないことではあるのですけれども、この「なぜ」という問いに対しては、現時点ほとんどまだ分かっていない状況であり、第2段に問題があったという風に断じられる状況でもないので、余談を持たずに、H3全体として見落としがないのか、というところについて、しっかり究明してまいりたいと思いますので、現事点ではなかなかお答えにくいところでございます。

産経新聞: 第2段だけの原因ではないとのことだが、他にどこが関連した可能性があるのか

有田: 岡田の方からもありましたように、LE-9が燃えている1段のフライトフェーズから、2段の水素タンクの圧力が徐々に落ちていくという現象が見られているところまで確認できています。これが1・2段が分離した後に2段の推力が足りない、あるいは1号機のように点火しないとかですと2段単独の問題といったことも十分考えられるわけですけれども、今回の事象につきましては、2段の異常が1段の飛行フェーズから現れている、というところがありますので、2段だけではない理由もある、かもしれない。そういうことで、網を広げてと言いますか、しっかり全体をもう一度見てみる必要がある、という風に思っています。

産経新聞: 現在通信は途絶してる状態であるという理解でよいか

有田: 途絶という言い方は若干あれかもしれませんが、元々のフライトシーケンスとしてクリスマス局から見えなくなるような秒時になった時には自ずと送信機の電源を切るというシーケンスになっている、ということですので、電源が落とされて通信ができなくなっているという

読売新聞: 水素タンクの圧力が1段のフェーズから落ちているということだが、打上げ後の経過時間で言うと何秒後から落ちているのか

有田: 詳細のところは現在調査してるところですけれども、およそ200秒を過ぎてから、という風に考えてます。今ざくっと見たところですけれども。

読売新聞: 分離したのが309秒ということだが、200秒から309秒の間という理解でよいか

有田: はい、結構です。

読売新聞: 文科省の対策本部が本日の夕方以降に第2回ということだが、それまでにJAXAで何らかの新たな情報を出す目標を立てているのか

有田: その辺りを現時点で詳しく存じ上げておりませんが、今もうLCCの方にエンジニアたちが詰めて今分かることを整理をしていると思いますので、その中で分かってきたことがあれば、まとめてお示しをする。できる範囲していく、ということになるのではないかと思います。

東京とびもの学会・渡邊: 2段目の水素が漏れ始めたのが200何秒ということだが、充填する際に漏れる量が多いといった挙動はあったのか

有田: 漏れ始めた、というのが正しいかどうか、これも含めて確認が必要ですけれども、圧力が下がり始めた、というのが今私どもが把握している事象で、その原因としては確かに漏れているということもあるかもしれませんが、そこまで今私共断定したものではありません。圧力が徐々に減り始めているということです。

打ち上げる前にその兆項がなかったのか、というところについては、現時点で把握している限りではそのような兆項は見つけておりません。岡田が申し上げた通り、そういうものを検知していれば当然打ち上げないです。ただし、そういうことも含めて今後の調査の中で明らかにしていく。本当に見落としがなかったのか、ということについても改めて調べていくことになると思います。

NHK鹿児島・財前: ロケットが通信できない状態になっているということで、今後新しくデータが取れることはあるのか。また「みちびき」から何かしらデータが取れないのか

有田: 一度シーケンスの中で電源を止めたものが何かの拍子に復活することは基本的にありませんので、これから先ロケットから新たな情報が送られてくるということは期待できないと考えています。それから(データを)「みちびき」から得られないか、というご趣旨かと思いましたけれども、ロケットのデータを「みちびき」に衛星に上げて送るというシステムにはなっていませんので、仮に「みちびき」との通信ができたとしても、そこは難しいと考えます。

NHK鹿児島: 天候以外で遅れて打上げた上での今日の結果だということで、プロマネとしての今の受け止めを

有田: 試験機1号機で大事な「だいち3号」を落としてしまったのが本当に痛恨の出来事だったわけですが、それに続いて国の大事な「みちびき5号機」を所定の軌道に届けることができなかったということについて、本当に大変申し訳ないという気持ちです。まだこの先どうなるか分かりませんけれども、ロケットととしての使命をきちんと果たせなかったというところは間違いないところでありますので、そこについては、やはりH3が国の基幹ロケットとして信頼していただけるように、ネジを巻き直してしっかり原因究明に取り組んでいきたいと思います。

NHK鹿児島: 2月1日に打上げが計画されている「みちびき7号機」への影響

有田: いずれにしても原因究明が全てですので、そこについては現時点で何とも申し上げられないという状況です。

NHK鹿児島: 世界を見ると1週間に何度もロケットを打上げて成功させている国もあるわけだが、その中で日本の基幹ロケットとして、自律性というところもあるが、ちょっと聞きづらいが、ここを今どのように危機感を持ってやっているのか

有田: おっしゃるように、海外のライバルと言っていいか、というところありますけれども、私どもはライバルと捉えている訳ですけれども、彼らの力とはかなり差をつけられてるんじゃないか、と思われるかもしれませんけれども、やはりひとつひとつのロケットが持っている技術力だとか、衛星を宇宙に届ける打上げ能力だとか、こういったものについて決してH3が遜色のあるものではありません。

まだH3も運用を始めて浅い段階です。彼らも最初の頃は色々失敗もしてきました。ですので私どももこのH3をしっかり立て直して、彼らとの差をつけられないようにしっかり原因究明をしっかりやって、もう一度、このH3を軌道にのせていきたいという思っています。

宇宙作家クラブ・渡部: 1段燃焼中に下がり始めた2段水素タンクの圧力のその後の推移、例えば2回目の推力立ち上がり時の圧力などわかっているものがあれば

有田: 1段の燃焼中から徐々に下がり始めて、それが2段目の燃焼中にどんどん下がっていくという状況でした。2回目の燃焼停止時には通常の状態よりはかなり低い状態になっていたということまで分かっています。

宇宙作家クラブ: どの程度まで下がっていたのか

有田: すいません、数字が頭に入っていないのと、入っていても申し上げにくい数字かもしれません。で、岡田が申し上げていましたように、このタンクの圧力がエンジンとの間で決められた、インターフェース圧って言ってるんですけれども、そういう取り決めの圧力より下回っていると、エンジンが燃料、この場合は液体水素ですけれども、それを吸い込むことができなくなるという現象に至ります。そういった状況に近くなっていた可能性もあるかな、という風に思います。

宇宙作家クラブ: それはデータとして確認されているのか

有田: はい。このLE-5Bエンジンというのはその辺りも非常に耐性が高くて、たとえば同系統のエンジンですけれども、H-IIの8号機、第1段LE-7エンジンの不具合で姿勢が非常に乱れた状態だったんですけれども、2段にはうまく着火していった、といった事例もございました。そういったオフノミナルな、通常とは違った状態でも立ち上がっていけるエンジンなんですけれども、今回は第2回の燃焼については非常に短時間で終わってしまうという状況でしたので、エンジンにとって、相当厳しい状況があったんではないかなという風に推測しています。

宇宙作家クラブ: 水素タンクの加圧側にデータ的な異常は確認されていないのか

有田: 本来、水素タンクの圧力というのはある幅の中に入るようにバルブで制御していくんですね。そういった動きが途中から見られなくなっている、というのがあって、1段フェーズから徐々に下がり始めているという状況が見て取れています。

南日本新聞・上岡: ロケットからのデータが打上げから何秒ぐらい継続して確認できていたのか

砂坂: そこは計画通り、概ね11〜12分、クリスマス局の追備終了まで正常に受信できています。

南日本新聞: H-IIAから使ってきたLE-5のエンジンで今回こういった自象があったということについて率直に考えるか

有田: 先ほど申し上げましたけれども、必ずしもエンジンに原因があるかどうかもまだ分かっていません。先ほど申し上げたようにエンジンにとっては非常に厳しい状況になってた可能性があります。これはエンジンのせいではなくて、という可能性もあります。こういったところも予断を持たずにきちんと調査をしていきたいと思ってます。いずれにしても2段エンジンと限れる状況でもないし、2段だけとも限られない状況でもあって、その意味で、最初に申し上げましたようにH3全体として今回の事象をきちんと調査してまいりたいと考えています。

砂坂: ひとつ訂正、先ほどの11〜12分というのはクリスマスが追備を始めてからの時刻でして、あの、打上げからの時刻に換算すると、今数字を手元に持っていませんけれども、ほぼ計画通り最後まで追尾出来ています。30分程度まで受信出来た。

南日本放送・藤本: ロケットは現在その追尾または捕捉出来ているのか、JAXAとしては捕捉出来ていないということなのか、高度が下がって落ちてくる可能性はないのか。あと原因が分かなければ次の打ち上げはないと考えてもよいのか

有田: まず追備できてるのかというご質問については、答えとしては、出来ていないです。少なくともロケットに関しては、繰り返しになりますけども、ロケットの送信機は既に電源を落とされておりますので、追尾ができる状況にはないというところです。

それから、落ちてくるか、ということにつきましては、現在ロケットの最終的な状況がきちんと捉えられていない、というところもあって、どういう状況にあるか必ずしも十分分かりきっていない、というところで、これも今まさに調査中という風にお考えいただければと思います。

それから、原因究明が終わらなければ次は打ち上げられないのか、ということについては、やはり、そうだと思います。この原因をきちんと特定して対策を打たない状態、つまり同じ不具合が起こるかもしれないという状態を内在したまま、次の打ち上げをするということはあり得ないという風に考えます。

日本経済新聞・黒田: YouTubeでは最終的な機体高度が370kmであったり、機体の速度が2,6000kmといった情報が出ていたと思うが、もし「みちびき」が分離されていなかった場合、宇宙ゴミとして漂う可能性が高いのか、それとも降下してしまう可能性が高いのか

有田: 今のご質問につきましては、繰り返しになってしまいますけども、最後のロケットの状態が現状分かっておりませんので、何とも答えにくいところです。すいません。

日本経済新聞: データを取得するのが今後難しいとのことだが、今後はまず今手元にあるデータを分析した後、地上で何か試験等できることもあるのか、また高度化等の開発も一時ストップして原因究明に当たるのか

有田: まずは、おっしゃっていただいたように、ロケットから送ってきているテレメーターデータ、これを中心にどういった原因が考えられるのかということを突き詰めていくのが最初になるかと思います。その結果次第ではありますけれども、例えば再現試験を行うとか、そういった試験が有効という風に考えられれば、そういうことも考えていくことになるかな、と思います。高度化への影響については原因によるところが大きいと思いますので、現時点では何とも申し上げにくいところでございます。

読売新聞・石川: 200秒過ぎから第1段エンジン燃焼中から水素タンク圧力の減少が見られたということだが、第1段と第2段の水素タンクは別だという理解で正しいか

有田: はい。結構です。全く別物です。

読売新聞: そうすると水素タンクの圧力低下は2段機体の水素タンクか

有田: はい、その通りです。

読売新聞: それでも2段エンジンではなく、1段も影響しているかもしれないということか

有田: 現象が起き始めてるのが1段のエンジンが燃焼している間だということで、その1段の飛行フェーズにも何か原因があった可能性は排除できない、という風に申し上げました。

読売新聞: 1段の水素タンクと2段の水素タンクは別

有田: はい。1段の水素タンクについては正常でした。

読売新聞: 第2段の水素タンクが稼動し始めるのは、第2段のエンジンが燃焼し始めてから、という思い込みがあるせいでちょっとうまく理解できない

有田: 失礼しました。打上げの実況放送を聞いていただいてると、もしかしたら記憶にある方もいらっしゃるかもしれませんけれども、カウントダウンシーケンス中に「1段LOX地上与圧」とか「2段LH2地上与圧」といった言葉が出てくるかと思います。というようにロケットは1段も2段も飛び上がる前に、所定の圧力に地上から加圧します。その加圧した圧力を飛行中も維持するために、2段目も飛行中にその圧力がきちんと保たれるように制御し続けています。これは機体が地上設備と切り離されてからもですね。

ということで、本来であれば、ある一定の範囲にあるべき2段水素タンクの圧力が、1段フェーズ200秒過ぎあたりから突然落ち始めるという事象があった、ということでご理解いただけますでしょうか?

読売新聞: 電気系統なりなんらかが稼働することによってその圧力を維持し続けるのが本来のシーケンスとなるのか

有田: 本来は2段水素タンクに設けられている圧力センサーの信号をフィードバックして、水素タンク(の圧力)をある一定の範囲に保つ制御が行われているということで、そこには当然電気系統の制御系も含まれているわけです。

読売新聞: 第2段エンジンが原因かどうかわからないという説明の意図するところは、第2段の機体の中でトラブルがあって、第2段のエンジンでトラブルがあったかどうかは分からない、ということか

有田: はい。現時点で余談を持ってお話をしてはいけないと思いますので、2段エンジンに原因があったかもしれないけれども、2段の機体の方にも異常が見られているという状況です。2段のエンジンについては、推力が予定よりも小さかったということが分かっています。それが燃焼秒時の長さにつながっていると考えると辻間が合います。

一方、機体のタンクの圧力が低くなれば、エンジンが水素を吸い込みにくい状況になって推力が出にくいということも説明できるというような状況があります。ただ、それが何を起点にして起きているのか、というところは現時点では一概に断定することは難しいかなと。ここを慎重に見極めていく必要があるかなと思っています。

読売新聞: H-II 8号機の事例を踏まえると、どこにトラブルがあったか部品の回収がかなり重要になるかもしれないが、部品の回収がなかなか難しそうな上にテレメトリーが追加で取れないという状況になる中で今後どのように原因特定を進めるのか

有田: おっしゃっていただいたように、8号機の時と違ってエンジンを回収するというのはなかなか困難ではないかなと、1度は軌動に乗っているという状況もありますので、先ほどと繰り返しになりますけれども、この原因究明においてまず最初にやるべきことは、今送られてきているテレメーターデータを精緻に分析をすることが最初にやることかな、と思っています。

フリーランス・秋山:** 2段の機体は計画上ミッションが終わった後に近地点高度を下げて自然に落下して再突入することになっていたと思う。予定の計画の通りでなかった場合には、これが早まるということだが、再突入が早まるような状況にもうすでに実質的になっているという風に考えてよいか。あと落下地点等の予測がですね今後どのようになっていくのか

有田: 現時点、最後にロケットがどういう状況になったのか分かっていないというところで、断定的なことは申し上げられませんけれども、今おっしゃっていただきましたように本来3万6000km近くに行っている遠地点がそこまで到達していないという状況になっている、ということはおそらく間違いないであろうという風に思いますので、本来ですとその遠地点を下げるなり、近地点を下げるなりというマニューバをして起動上寿命を短くしてデブリ化を防ぐということをやるわけですけれども、ま、今回この状態でロケットのマニューバがどのように行えているか、というところはちょっと分からないので、どういう形になっているかは正直分からないところなんですけれども、全体としては軌道がだいぶ低くなってるという風に考えられますので、起動上の寿命は正規の軌道よりは短くなる側ではないかな、という風に考えます。

秋山: 今後どのように追跡していくのか

有田: このロケットには追備するための何かリフレクターみたいなものがついてるわけではないので、特別な追尾は難しいかなと思います。私共、通常ですとこういった宇宙物体を追跡するアメリカの機関がありますので、そういったところのデータを用いるのが現実的かな、という風に思います

砂坂: はい、今話された内容かなと思いますけれも、国内でも我が社でできるものについては出来るだけ活用して追跡をトライしたいと思います。

フリーランス・鳥嶋: 第1回目燃焼停止の時点で地球周回に入っているという話があったが、これは計画値というか正常に飛んでいれば第1回燃焼終了時で地球周回軌道に入っている、というというある意味だという理解でよいか

有田: 正常に行けばもちろん入っていますし、今回、27秒遅れにはなりましたけれども、地球周回軌道には入っているものという風に考えています。

鳥嶋: この周回軌道は正常に飛んでいたとすれば何周もできるぐらいの高度なのか、つまり遠地点400km、近地点は300km以上あるような軌道と考えてよいか

有田: この辺りですね、まさに具体的な数字は今調査をしてるところですので、現時点ちょっと具体的な数字は持ち合わせていません。

鳥嶋: 正常に飛んでたとしたという家庭でも開示が難しいということか

有田: そうですね、ちょっと今手持ちではないので、これから調査をして、ということになるかと思います。

鳥嶋: 今回2段の第1回燃焼終了が計画値よりも27秒遅れというのは、27秒長く燃えてしまったという解釈でいいのか、正常な状態で入るはずの周回軌道よりも若干高めの軌道に入っているのか

有田: 27秒遅れはSECO1というところですので、いわゆる3万6000kmまで遠地点を上げるのはSECO2の段階ですね。第2回の燃焼によって遠地点を高く上げるということになりますので、SECO1の段階ではそこまで高くはなっていないという風に考えてます。

鳥嶋: 27秒長く燃えた分は高いかもしれないという

有田: いいえ、27秒余計に燃えたのは、先ほど少し申し上げましたけれども、2段の推力が若干正常な時よりも小さかったということが分かっています。ですので加速がそれだけ弱くて、投入軌動に投入するのに時間がかかったという風に今解釈しております。

鳥嶋: 第2段機体が衛星と一緒に再突入する可能性もあると思うが、その場合に再突入で燃え尽きて地上へ破片が落下する危険性というのはないと解釈でよいか

有田: すいません、申し訳ないのですが、衛星の方はどういう形になるのかは存じ上げておりません。ロケットの方ですけれども、例えばエンジンに使っている耐熱合金、こういったものは一部燃えつきずに落ちてくるものがあるという風に認識しています。

ただしこれにつきましては、地上の人に当たったり、物に当たったりというのは確率的には極めて小さい、という世界の標準的なレベルと言われている値と比べても、遜色ない値に抑えられているということで、例えば普通のGTOに上げる時には25年以内には地上に再突入させるというガイドラインがあるんですけれども、その時と同じような状況になるものという風に考えています。特に今回がそれで特別な状態になってしまっているという風には考えておりません。

鳥嶋: 推進薬が満タンの状態で再突入する可能性があるわけだが、それによる被害が推進薬が満タンであるということで変わる、ということは一般的に考えられるのか。以前アメリカで推進薬満タンの状態で再突入する衛星があるというので、地上からミサイルで破壊するということもあったが

有田: すいません。私自身不勉強でその事例を残念ながら存じ上げていないのですが、推進薬自体は基本的に可燃性のものだと思いますので、再突入した時にそれが問題になるのかは私では分かりかねるところです。

フリーランス・大貫: H-IIA高度化の時から第2段のリテンションは水素タンクの圧力を使うという改良がされていたと思うが、この点はH3も同じか。その場合、リテンションが正常に行われたかといったデータは取れているのか。

有田: リテンションにつきましては蒸発する水素をうまく使ってやるのと、ガスジェットを併用するというところは高化での技術をH3で継承しています。今回それがうまく働いたかどうかについては、すいません、私今そこまでのデータのチェックができていない状況です。

朝日新聞・竹ノ内: 想定よりも圧力が下がるのが早かったのは、普通に考えると、やはり漏出していた可能性があるということか

有田: その可能性も否定はできないと思います。一方、制御しているものが、制御は効かなくなっているようなことも得うるのか、その辺り、まだ現時点、圧力が下がってきてるというデータしかないものですから、そこも予断を持たずにしっかり調査していきたいと思います。

朝日新聞: 漏出していたとすれば、燃料である水素が減って、第2段の第1段燃焼で推力が下がっていたことは合理的か

有田: 漏れたことでタンクの圧力が低くなってしまったことで推力が下がる、ということはありえるかなという風には思います。

朝日新聞: 圧力を元にした噴出力で対応しているということか

有田: いわゆるガス押し式のロケットエンジンと違って、タンクの圧力がダイレクトに推力になるわけではないんですけれども、ターボポンプが吸い込みやすくするために高圧をかけている、という形です。このインターフェースの圧力、入り口の圧力というものも推力にそれなりに効きはありますので、今回のように圧力が下がってくると推力も下がるということを説明はできると思っています。ただそこを定量的にきちんと説明できるかはこれからということになります。

朝日新聞: 第1段の燃焼による振動等が第2段の制御系に影響した、という風な意味での関連と考えてよいか

有田: おっしゃる通りで、第1段の圧力が下がり始めるフェーズで一体何があったのか、というその起点のところですね。ここのところががやはり調査の中心になってくるんではないかなという風には思います。

朝日新聞: 再突入とその破片の可能性ですね。第1段であれば司令破壊等があるが、第2段がこういう風に落ちてくる場合コントロールできる要素はもうないと理解すればいいのか

有田: はい。既にロケットとの交信もできないという……まあ元々ロケットと交信して何かやる、というのはまさに司令破壊しかないわけで、例えば2号機、3号機でやったような、あるいは7号機でもやりましたようなコントロールドリエントリーというものがありますが、これはもうまさに最初から計画したシーケンスでやっていくというものです。

今回はミッションの特性上そういったことは元々計画しておりませんでしたので、そのコントロールドリエントリーの機能は元々この号機については持っておりませんでしたので、それが今この状態でできるようにするのは不可能と言ってもいいと思います。

NVS・斎藤: 第2段の推進薬は今回の状態でも排出することになっているか。ブレイクアップを心配している

有田: 第2回の燃焼がほとんど行われなかったということは、中に燃料が残っている可能性があるというのはおっしゃる通りかなと思います。その場合に宇宙空間にある第2段が破裂してデブリになることを防止するために、おっしゃるようにベント機能、ベントリリーフバルブというものがついておりまして、規定の圧力以上にタンクの圧力が上がると自動的にバルブが開いて水素を外に排出するという仕組みが備っておりますので、その点はご心配には及ばないかなと思います。