準天頂衛星システムみちびき6号機機体公開

2024年11月27日、三菱電機株式会社 鎌倉製作所にて準天頂衛星システムみちびき6号機(QZS-6)の機体公開が行われた。

準天頂衛星システムとは

準天頂軌道に3機の衛星を8時間毎に順に現れるように配置すると、24時間365日常に1機以上が天頂付近に滞在する。これに静止軌道の1機を加えた合計4機の衛星から、GPSと同じ周波数・同じ時刻の測位信号を送信することで、可視範囲にあるGPS衛星の数を増やし安定した衛星測位を実現するのが準天頂衛星システム・みちびきだ。2024年現在みちびきは4機体制だが、これに5号機(準天頂軌道)、6号機(静止軌道・東経90.5度)、7号機(準静止軌道・ハワイ南西側)の計3機を加えたみちびき7機体制が2026年から始まる。7機体制が完成すると、GPSやガリレオなど他国のシステムを用いずに、みちびきだけで持続測位が可能となる。

静止軌道: 赤道上空約36,000kmを秒速約3.1kmで周回させた衛星は、地球の自転と同じ24時間周期で周回する。これを地上から見ると上空の一点に止まっているように見える

準天頂軌道: 軌道面を40〜50度傾けた傾斜静止軌道を地上から見ると衛星は8の字を描く。みちびきの場合は北半球側を地球から遠ざけることで北半球=日本側が小さくなる南北非対称な8の字となり、日本上空に約8時間滞在すると共に、高い仰角を得られる時間も長くなる

準静止軌道: 軌道面を3度程度傾けた軌道。測位衛星では軌道修正を実施中は測位サービスを停止するが、準静止軌道は静止軌道に比べて軌道保持のための軌道修正の頻度が減るためサービスの可用性が向上する

衛星/地上間測距システムと衛星間測距システム

みちびきをはじめとする衛星測位システムのユーザ測位精度は衛星の軌道時刻の精度に大きく左右される。5、6、7号機にはこの軌道時刻の精度を大きく向上する高精度測位システム「衛星/地上間測距システム」および「衛星間測距システム」が新たに搭載される。

みちびきでは衛星からL帯で送信される信号を世界各地の監視局で受信して衛星・地上間の距離を測定しているが、5、6、7号機ではこれに加えて新たにC帯の信号を衛星・地上間で双方向にやりとりすることで、衛星と地上側それぞれの時刻誤差に起因する距離誤差を打ち消し、軌道時刻推定精度を大きく向上させる。これが「衛星/地上間測距システム」だ。衛星側はバス機器のアンテナを、地上側は既存の追跡管制局に機能を追加して用いる。

一方、衛星から見ると地上の監視局群(地球)は20度程度の視差に収まってしまう。そこで衛星間でS帯の信号を送受信することで、衛星が見かけ上の監視局となり、監視局の配置を空間的に大きく広がり軌道位置の推定精度が向上する。これが「衛星間測距システム」だ。衛星間測距システムは5号機に送信機能が、6号機と7号機には受信機能が搭載される。

高精度測位システムは7号機打上げ後、3年間かけて実証運用が行われる予定だ。高精度測位システムの結果が衛星からの信号に反映されるようになるのは実証運用終了後だが、衛星/地上間測距システムと衛星間測距システムのデータは衛星の軌道時刻精度、つまり標準信号の内容そのものに反映されるので受信機の更新なしに測位精度が向上する。将来7機全ての衛星にこの衛星/地上間測距システムと衛星間測位システムが搭載されると、ユーザ測位精度は現状の5〜10mから1mに向上する見込みだ。

標準プラットフォーム・DS2000

赤い直方体のカバーで保護されているのが22Nスラスタで合計12基搭載している。衛星の基部(スタンドに固定されている側)にはアポジエンジンが搭載されている

準天頂衛星は初号機から7号機に至る計8機(初号機後継機を含む)全て三菱電機のDS2000衛星バスがベースになっている。DS2000衛星は2002年に打ち上げられたデータ中継技術衛星「こだま」(DTRTS)、2006年に打ち上げられた技術試験衛星VIII型「きく8号」(ETS-VIII)を皮切りに合計18機が打ち上げられ順調に運用中だ(うち4機は既に運用終了)。現在開発中の技術試験衛星9号機(ETS-9)では化学推進を無くして電気推進のみを用いることでDS2000の「全電化」が図られる。全電化は搭載推薬の大幅削減をもたらし、搭載ペイロードの増加や衛星の小型化によるデュアルローンチ等が可能になる。

5号機、6号機、7号機は測位ペイロードの機能向上や高精度測位システムの追加などにより搭載ミッションの質量が増加、衛星全体の質量もドライ1.8〜2t、打上時4.8〜5tと2〜4号機(ドライ1.6〜1.7t、打上時4〜4.7t)に比べて120〜170kg程度増加しているが、これにはロケットがH-IIA 202(静止軌道の3号機はH-IIA 204)からH3-22Sに変わったことによる打上能力の向上が寄与している。

記者説明

登壇者(敬称略)

  • 三菱電機株式会社 宇宙システム事業部 事業部長 市川 卓
  • 三菱電機株式会社 鎌倉製作所 宇宙インフラシステム部技術統括 柳生 伸二
  • 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 室長 三上 建治
  • 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 企画官 岸本 統久
  • 宇宙航空研究開発機構 高精度測位システムプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 松本 暁洋
  • 宇宙航空研究開発機構 高精度測位システムプロジェクトチーム サブマネージャ 明神 絵里花
  • 三菱電機株式会社 鎌倉製作所 宇宙インフラシステム部 衛星測位事業統括 二木 康徳
  • 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室 参事官補佐 細田 聡史

はじめに

準天頂衛星については3機の打上げを予定している。準天頂衛星システムの7機体制による持続測位の実現を目指したものになり、これを通して安定的かつ高精度な測位の実現に貢献していきたい。また衛星データの利活用については弊社としても高精度測位ソリューション事業として様々な利用ソリューションを開発している。本日はそうした背景も念頭に視察いただきたい。(市川)

準天頂衛星システムみちびき6号機の完成(内閣府)

世界には衛星測位システムを展開している国が我が国を含めて6つあり、米国のGPSが一番有名だが、ロシアと欧州も展開している。日本とインドは地球全体をめぐる形ではなく、その地域の上空にのみ衛星があるというリージョナルな形になっている。デジタル社会・スマート社会を実現する上で、位置と時刻を正しく知るということは大変貴重。そういった観点から、最近では韓国や英国、トルコなど他の国も自らの測位衛星システムの保持を計画している。

4つの衛星を用いる際に見える位置や角度が重用。特に都市部においては高いビルに囲まれているので衛星が見えないことがある。準天頂衛星はその名の通り、日本から見て頭の上に必ず1機(測位衛星が)ある状態を作ろうと考えられた仕組みである。

気象衛星ひまわりは静止軌道にあって日本から見て1点に止まって見えるが、その静止軌道をちょっと傾けることによって地上から見て8の字を描くようになり、衛星は日本の上に8時間とどまることになる。これを3機打ち上げることで順繰りに常に頭の上にいる、という仕組みが準天頂衛星であり、この準天頂軌道に3機と静止軌道に1機の4機体制が2018年からサービスを運用している。

今回、今年度から来年度にかけて3機を追加することにより7機体制を実現し、先程市川部長からもあった持続測位、つまりGPSやガリレオ等他国のシステム、他国の衛星を必要とせず、みちびきだけで測位可能な体制とすることで、政府として衛星測位のひとつのマイルストーンに達すると考えている。

2017年に2、3、4号機を打上げ、2018年度から現在の4機体制がスタートした。5、6、 7号機を今年度〜来年度にかけて打上げることで、2026年度から7機体制のサービスインを予定している。

準天頂衛星のサービスの概要だが、まず測位衛星サービス。GPSと全く同じ電波を出して、ある意味GPSを補完する形となる。GPSの機数が増えて衛星がより見やすくなり精度がよくなるという観点。

そして我が国のみちびきだけが持つサービスがふたつ。ひとつはGPSを補強する信号。GPSの信号は誤差10mほどあるが、これを補強する信号を出すことでセンチメートル級、あるいは1m級のより高精度な測位を可能としている。10mといえばテニスコートのハーフコートが大体10m。これに対して、国内のみであるがセンチメートル級の精度、つまりテニスボールのサイズまでピンポイントで押さえられるサービスを無料で提供している。

もうひとつはメッセージサービス。測位信号と測位信号の隙間を利用して、そこに災害情報、たとえば津波や地震、Jアラートなどのテキストメッセージを配信できる。それらの情報は都市部で地上通信が使えるエリアであればスマホで得られるが、もしそれらの通信が使えなくなったり、あるいはそれらの電波が通じない山の中や海上ではみちびきが配信する電波を利用してそれらのメッセージを受け取ることができる。

おかげさまで、みちびきの高精度測位を利用した様々なサービスも展開している。自動運転のアシストであったり、あるいはドローンの管制、インフラ、物流、海洋、土木分野など様々なサービスで無人化・省人化といった生産性向上に寄与し、未来の我が国のデジタル社会、スマート社会を作っていくインフラのひとつになろうとしている。

ひとつ現状の問題として、みちびきからの信号は専用受信機・アンテナが必要となっている。GPSも昔は高額で大きく重いものだったが、今はスマホの中に入るサイズになっている。みちびきの受信機アンテナについても今後低価格・低サイズ・軽量化が進んでドローンやスマホに入る時代もまもなく来ると考えている。

Society 5.0、G空間情報社会において、みちびきは位置情報、時刻情報など貴重な情報を、GPSやガリレオ等他国のシステムに頼ることなく、我が国が独自に作ったシステムで貢献し、日本の社会を作っていく。そのためのシステムを内閣府としてサポートしている。

みちびきは現在7機体制構築を目指しているところだが、この持続測位という状況は1機でも欠けてしまうと6機になってしまいサービスが断絶してしまう。そのためのバックアップを用意したいと考え、政府としては長期的に11機体制を求めている。かなり先の話にはなるが、我々としてはシステムを充実させていきたい。(三上)

高精度測位システム(JAXA)

高精度測位システムは従来の準天頂衛星のシステムに二つの大きな機能を追加した。一つ目は衛星間測距機能、二つ目は衛星地上間測距機能、これらを加えることで、より正確に、その測位衛星の位置と時刻を特定することが可能になり、ユーザーはより正確な測位が可能になる。JAXAはこの高精度測位システムの開発と実証を行う。

将来全ての準天頂衛星にこの機能が搭載されると、ユーザー測位精度は現在の5〜10mから1m程度へと飛躍的に向上する。この精度はスマートフォンや一般的な受信機で受信できる標準的な測位信号により実現される測位精度。JAXAはまず実証を行い、3機の衛星打上げ後3年ほどかけて性能出しを行っていく。その間3機からは従来と同じ精度の信号が出るので、すぐにこの精度をユーザーが使えるわけではない。

準天頂衛星5、6、7号機には、既に運用中の4機の衛星にも搭載されている測位ペイロードに加えて「衛星間測距システム」と「衛星/地上間測距システム」を新たに搭載する。また地上設備として、衛星と対向する「衛星/地上間測距システム地上系」、そして「地上検証システム」を開発し、測位信号の高度化の実証を行う。これらを総称して「高精度測位システム」と呼ぶ。

そもそもユーザー測位の原理を簡単に説明すると、測位衛星からの距離が描く円、これを複数重ねると1点で交わり、その位置を知ることが出来る。衛星からの距離は電波の進む時間で測るが、そのためには時刻が必要となる。4つの変数を解くために4つの衛星からの距離を使い、ユーザーの位置を特定する……という仕組みになる。

では衛星の位置と時刻はどのように決めるのか。地上に置かれた複数の監視局との距離が描く円の交点、これが衛星の位置となる。こうして位置と時刻を決め、そこから配信される信号を使ってユーザーが測位出来る……という仕組みになっている。

つまりユーザー測位精度を向上させるためには、測位衛星の軌道と時刻をより正確に推定する必要がある。そのために、まず衛星と監視局による距離の測定に加えて、衛星間で測距する機能を追加する。これにより衛星間の軌道面内の位置誤差が改善する。加えて衛星と地上間でも測距を行うことで、時刻の誤差に起因する位置誤差を除去することが出来る。

衛星の位置と時刻を特定するのは地上の監視局だが、衛星間測距システムはこの監視局を宇宙空間にも置くような効果となる。衛星から見ると地球のサイズは非常に小さく、大体20度くらいの角度しかない。視差が少ないので距離方向だけでなく横方向にも誤差が広がってしまう。そこで地上に加えて軌道上の衛星から距離を測ると、横方向から見ることになるので視差も大きくなり誤差も小さくなる。

衛星・地上間は現状1方向(衛星から地上に送信)の信号で測距するが、これでは様々な誤差が乗ってくる。これを双方向の信号を使う形にすると、衛星側と地上側が持っている時刻の誤差をキャンセルすることが出来る。

衛星間測距に関しては5号機が信号の送信衛星になっていて、6、7号機は受信のみとなる。衛星/地上間測距は5、6、7号機それぞれが行う。衛星間測距の信号が一方向になっているのは周波数干渉を避けるために国債上の取り決めで調整された結果。

外見上の特徴としては、測位信号用のアンテナに加えて、衛星間測距信号を受けるためのアンテナ。衛星/地上間測距の信号のやりとりはバス機器のC帯アンテナを共通利用する。なお地上側では衛星/地上間測距機能を備えた追跡管制局を4局整備。(松本)

準天頂衛星システム衛星概要(三菱電機株式会社)

準天頂衛星システムの概要。4〜50度軌道面を傾けて楕円にして、地球から一番遠い地点を日本上空に持ってくると、日本から見て南北に非対称な8の字を描く。このような軌道を作り出すと日本上空に7〜8時間滞在する。この軌道に複数の衛星を投入することにより、日本上空に常に1機は見える。現在2号機、4号機、初号機後継機の3機がこの軌道にいる。静止軌道には西から東へ6号機、3号機、7号機を配置する。

諸元を簡単に説明すると、準天頂衛星は推進薬を詰めないドライの重量で大体2トン程度。射場で推進薬を充填して5トン程度で打ち上げる。重量の中で搭載ミッションは質量500〜600kg程度、消費電力は2.4〜3kw台後半。

本日は太陽電池パドルを畳んだ状態でご覧戴くが、広げた状態では均整のとれたプロポーションをしている。直方体のボディの両サイドに太陽電池パドルが両腕のように生えている形になるが、人間でいうと頭の部分にアンテナが集合して載っている。特徴的なのが真ん中にある直径1.8mほどのL帯アンテナで、その周りに各種アンテナやセンサ類を効率良く配置している。本日はこの辺りがよく見えるように傾けてあるのでじっくり見てほしい。

構成としては直方体の部分の内側に色々なミッション機器を搭載している。底面には大きなアポジエンジンがあり、人間でいうところの背骨にあたる部分を推進モジュールが貫いている。推進モジュールの中心には直径1.3mのセントラルシリンダーと呼ばれる円柱があり、シリンダーの内側には推進薬を詰めるタンクを2本直列に入れている。充填が終わると3トンの推薬が入るので、その荷重をロケット側にうまく逃がすような構造上の工夫もこの推進モジュールが担っている。

四方からはペイロードパネルが囲んでいて、ミッション機器を多く載せているのは南面と北面。これに東と西のパネルも加わりボディが出来上がる。

当社では2010年に打ち上げた初号機から数えて合計8機の準天頂衛星を開発している。現在初号機は23年にデオービットして軌道上の4機は2号機、4号機、3号機、初号機後継機の4機。これに5、6、7号機を加えることで7機体制を実現していく。

現在の4機体制では準天頂軌道3機に静止軌道1機、7機体制では準天頂軌道に1機加わり静止軌道に2機加わり、準天頂軌道に4機、静止軌道に3機で自律測位の実現を目指している。打上げロケットは今回5、6、7号機からH3ロケットになる。

搭載ミッションとしては、5号機は2号機、4号機の後継、7号機は3号機の後継を担うような形となるが、質量や消費電力を見てみると2、3、4号機の頃に比べて5、6、7号機は搭載ミッションが1.3倍となり、測位ペイロードの機能向上、高精度測位システムが新たに搭載されるなど性能アップしている。また太陽電池パドルが5、6、7号機から新しい材料とナリ、パドルの発生電力が若干高効率となっている。

衛星システムは大きく分けて衛星バスとペイロードから成り立っているが、衛星バスとして当社は準天頂衛星初号機からDS2000という標準プラットフォームを使っている。

衛星バス側にはテレメトリ・コマンド&レンジング系、衛星制御系、姿勢・軌道制御系といったサービスシステムが構成されている。その他、骨組みである構体系などの主構体、その他バス機器などを標準化したプラットフォームとして作り、ペイロード固有の要求やミッション要求、機器の特性にバス側を適応差せていくといったような設計手法をとっている。こういった設計・製造の仕方をトータルで標準プラットフォームと呼び、準天頂衛星8機は全てこのDS2000ベースで開発している。

データ中継衛星「こだま」や技術試験衛星「きく8号」で開発された静止衛星バスを活用し、我々なりの趣向を付け加えたのがDS2000。これまで18機のDS2000衛星を軌道上に打上げ、2002年から2024年までの累積動作年数は今年160年。24年3月時点で引退した4機を除いて14機を順調に運用している。

我々は数十年に渡る衛星プロジェクトと成功実績の中で培われた通信衛星技術と最新の設計手法を投入することで、DS2000という標準プラットフォームでは非常に高い信頼性を提供している。

開発中のETS-9はオールエレクトリック。準天頂衛星5、6、7号機は化学推進衛星ということで推進薬を使っているが、今後はオール電化の衛星も視野に入れて開発を進め、DS2000をしっかりと進化させていきたい。(柳生)

質疑応答

  • 7機体制は高精度にすることではなく、安定して測位が出来るようになることに意味があると(産経新聞)
    • 我々は既にCLASというセンチメートル級サービスを提供しているが、それを配信する衛星が増えることで、信頼性、電波を受けられるエリアが増える効果があると考えている(三上)
    • 捕捉すると、現在5〜10mと書かれている準天頂衛星の測位精度はGPSと組み合わせた時のもので、これが7機体制になるとみちびきのみで同程度の精度。これに加えてセンチメートル補強情報を活用してもらえると6センチぐらいになる。L6は特殊な信号であり、標準信号(L1信号等)を使った場合が5〜10m。5、6、7号機は衛星間測位などを組み込みながら5〜10mのところを1mとかに改善しようと考えている。(岸本)
  • 測位誤差がGPSの10mに対してみちびきは6cm、これは4機体制で実現しているものだが、7機体制だとどの程度小さくなるのか(産経新聞)
    • 4機体制でも2機は南の方に隠れていて、4機必ず見れている状況ではない。7機体制になると必ず4機見えるようになり、電波をよりしっかり得ることが出来る。今以上に安定して信号を受けることが出来る。精度があがることはあまりないが、より安定してあらゆる方向からみちびきの信号を得られることで信頼性が増すと考えてもらえれば。(三上)
  • GPSに頼らなくても6センチの精度を実現できるようになると(産経新聞)
    • 6cm精度はGPSやガリレオがいる場合。5〜10mがGPSに頼らなくても達成出来る場合。(岸本)
  • 5号機の前に6号機を打上げる理由(日刊工業新聞)
    • 6号機は静止軌道衛星ということがまずひとつ。西側に置かれるので西側のサービスが出来る。また5号機に比べて6、7号機は機能が多い。L1SbやL5Sなど航空機用のサービスを提供するようなサービスが載っているので、残念ながらH3が遅れてしまい数少ない打上げ機会の中で優先して打上げようと考えた(岸本)
  • GPSでジャミングやスプーフィングが問題になっているが、みちびきでの対策は(日経クロステック)
    • 信号認証サービスや公共専用信号サービスがある。たとえば飛行機からのGPS受信状況を示したGPS JAMを見ると、たとえばイスラエルやトルコ、エストニア等は受信状況が悪くなっている。これは地政学的にすこし危ういところであり、ドローンによる攻撃を避けるために自らジャミングを出して妨害しているといった話も聞いている。これらは昨今まで考えられなかった状況であり、GNSSにおいてこうした工作が行われる、あるいは犯罪目的で行われる世の中になっている。
    • 偽のGPS電波を出してドローンを誘導して荷物を奪う、あるいは別の場所へ向かわせる、自動運転している車を間違ったインターチェンジから下ろすといった、なりすましによる妨害(スプーフィング)に対して、降ってくる信号が正しいかどうかを判別する信号認証サービスを行っている。これはGPS等にはない日本独自のサービスであり、ユニークな機能として宣伝していきたい。
    • 公共専用信号サービスは防衛省や海上保安庁など(測位で)騙されてはいけない公的機関に対しては、BSのスクランブル放送のような暗号化処理をして送るサービス。(三上)
  • 2009年から14年以上運用を重ねている準天頂軌道ならではの運用の特徴や、それが衛星に反映された部分があれば教えてほしい(秋山)
    • 準天頂軌道の特徴として斜めに一定以上いることがあるので太陽の当たり方が静止軌道と違って直射的に受けることがあるので、熱的なものを避けたり、太陽電池をしっかり正面に向けるために、太陽光を直接まっすぐ受けるためのヨーステアリングというものを実施している。
    • もともと太陽光の圧力を受けても軌道が変化する測位衛星では、複雑な軌道時刻推定を行っている。最初はヨーステアリングのような特殊な動きをすると悪影響があると思い、半分は静止軌道と同じような動き、残りはヨーステアリングを行っていたが、常にヨーステアリングを行う方がより精度が出ることがわかり、2号機以降に反映し実施している。
    • 準天頂軌道としては初号機で培った経験を元に、2号機以降5号機、6号機を含めて反映してきた。(岸本)
  • 打上げへの意気込みは(NHK)
    • 日本の測位インフラとして非常に重要な衛星なので、確実に成功させたい。軌道上で確実に24時間365日サービスが出来る衛星が完成したので、打上げに向けて最終的な作業を頑張っていきたい。(市川)
    • 衛星測位は内閣府が運用しているが、水や空気と同じように市民、国民、色々な方々の日常に溶け込んでいるサービスである。24時間365日止めてはいけない、もし無くなったらどうなるか、を考えてシステムを整備していかなくてはならない。
    • また5、6、7号機の最初の号機であるので、今年度中の打上げを目指して努力していく。(三上)
    • 測位衛星の信号は日本国民全員が使っていると言っても過言では無い、そのくらい当たり前に溶け込んでいるものなので、今回4機から7機となる中で、JAXAが行う新しい技術実証は準天頂衛星の完成形としてこの先につながる大事なステップだと思う。今後の運用へ向けて全力で向かっていきたい。
  • 6号機の開発費、準天頂衛星にこれまでかかった予算(NHK)
    • 6号機だけといった個別の契約までは控えさせていただきたいが、5、6、7号機の3機分は開発期間約6年間で1000億。
    • また衛星だけでなく地上システムの整備やその維持運用費用を必要になる。既存4機も含めて開発期間数年プラス15年運用すると言うことで、地上システムの開発と運用に約1700億かかっている。(岸本)
  • 1700億円は地上システムの運用だけでなく開発費も含んでいるのか(NHK)
    • 開発費も含んでいる。サーバを多数置いたり、サイトダイバーシティを考えて主管制局も二つ、追跡管制局もトータル7機体制で10局置いている。各監視局も全世界で30局置いているので、これらも含めたものとなっている。
  • 衛星間測距システムの場合どのくらいの頻度で補正をかけていくのか(宙畑)
    • 今回は5、6、7号機しかないので、5号機から6号機、5号機から7号機に測距信号は常に流す。全ての衛星がこの機能を備えるようになった場合は時分割で出したり止めたりして運用するが、その状態で性能が出るように作られている。(松本)
    • 測位衛星は常に同じサービスをしているかというと、衛星の寿命が15年なので、2017年に打上げられた2、3、4号機の次の後継機は2033年頃になる。それを開発する時期においては、その時点における最高水準の技術を組み込む。これは日本だけでなく他国も同じなので、それら他国のシステムと劣後しないように我々もJAXA、三菱と一緒に協力して開発していく方向である。(三上)
  • 6号機・7号機の位置とその理由(宇宙作家クラブ)
    • 6号機は東経90.5度、7号機はハワイ南西側にあるが、これは頭の上にある3号機に加えて、出来るだけ東と西に1機ずつ置きたい。11機体制では更に東西に8の字が増えるが、これにより精度は変わらないがDOP値が向上する(衛星の配置が偏らず、測位精度が高くなる)。(三上)
    • 静止衛星同士のバックアップも兼ねている。(細田)
  • (聞き逃しました)
    • 大体インドの東側、オーストラリア、ハワイの西のオセアニア諸国、北は北海道より上の方といったエリアでみちびきの電波が適切な強度で得られるということがシミュレーションで得られている。タイや東南アジア諸国でみちびきの受信機やMADOCAサービスを活用して測量や測位を用いた各種サービスができないか実証、ビジネス化も進めている。(市川)
  • DS2000のオール電化の利点(CQ出版)
    • オール電化は燃料の効率が良い。燃料が半分程度で済むので、現在約5tの衛星を打上げているところを2.5tにして、同じミッションの衛星を2台打ち上げることも出来る。その特性を活かすと共に、推力が弱いという弱点も補ったシステム確立に向けて現在開発している。(二木)
  • 7機体制で期待されている活用分野(日経新聞)
    • 位置情報サービスにおいてはスマート農業、ドローン物流、ICT、自動運転などにおいて、4機体制で既に使えているが、まだパーフェクトではないと認識されている方が多い。
    • 7機になるとこれでフルパフォーマンスが発揮できます、ということを周知し、利用者が増えることで受信機も安く小さくなるという好循環を期待している。
    • 特にスマート農業。あるいは国交省の無人除雪機や無人除草機などのスマートインフラ整備、またスマート農業としては北海道で盛んな大規模・広域エリアでの無人化が目に見えてくると良い。(三上)
    • 三菱電機としてもセンチメートル級利用拡大に取り組んでいる。農業分野、自動運転支援、ドローンといった分野でセンチメートル測位を用いた自動化・無人化、AI技術が進展する中での移動体の自律化に広がりが出てくると考え、弊社も利用開拓を支援・展開している。(市川)
  • 衛星/地上間測距はCバンドを用いているがそのメリット、コーナーリフレクタのような軌道決定は測位衛星には向いていないのか(秋山)
    • 衛星/地上間測距では既存の追跡管制局を利用している。既存設備に測距機能を付加することで実現出来るのがメリット。
    • レーザーリフレクタは初号機から5、6、7号機まで搭載しているが、こちらは地上・衛星間の距離が正しく求められているか精度の検証に用いる。(明神)
    • 衛星側の位置軌道を正確に求めるのは大変重要。電波を出すところが10mずれていれば地上も10mずれるが、これを1mの誤差に抑えられれば地上での精度も上がる。(三上)
  • 格納時のサイズとバス部の重さ(片岡)
    • パドルを折りたたんだ格納時のサイズは手元に無いが、主構体は高さ3.8m、縦横2.3mとマイクロバスやワンボックスカー程度のサイズ。6号機では全体の重さが約1.9t、ペイロードが600kg程度なのでバス部の重さは約1.3t(二木)
  • 高精度測位サービスは受信機の更新は必要ないのか(片岡)
    • 実証期間を3年間予定しているが、これが終わるとみちびきから放送する軌道時刻の精度が上がり、受信機の更新不要で精度も向上する。(明神)
  • 地上の測位精度が5〜10mから1mに向上するが、そもそも測位衛星の位置の精度は衛星間測距の前後でどれだけ向上するのか(片岡)
    • センチメートル級などの補強サービスを用いない、一般的なスマホやカーナビにおけるユーザー側の測位精度が現状5-10mだが、衛星側の位置・時刻誤差は現状2.6m以下で提供している。これが、7機体制において全ての衛星に衛星/地上間測距・衛星間測距機能が備われば0.3mが実現出来ると見込み。(明神)